説明

ロール媒体保持装置、及び画像形成装置

【課題】簡単な構成で保持部材をロール紙の軸芯にあわせることができるものとする。
【解決手段】ロール紙10の芯管12に挿入可能な軸芯部52を備えたロール紙保持装置50と、軸芯部52の周囲に沿って配置される第1の位置及び軸芯部52から離間して配置される第2の位置にその取り付け位置を可変に配置される複数の増径部材53と、を備え、増径部材53を第1の位置として、増径部材53でロール紙10を支持する第1の保持状態と、増径部材53を前記第2の位置として軸芯部52で前記ロール媒体を支持する第2の保持状態に設定可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺の用紙を巻き取って形成したロール媒体を保持するロール媒体保持装置、及びこのロール媒体保持装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる記録媒体として長尺の用紙を巻き取って形成したロール紙(ロール媒体)を使用するものがある。このような画像形成装置は、ロール紙をロール媒体から送出される用紙を搬送するロール媒体搬送装置を備える。このようなロール媒体搬送装置では、搬送中のロール紙にたるみなどが生じてロール紙が斜行したり、ロール紙にしわが発生したりすることがある。そこで、このような現象の発生を防止するため、ロール媒体搬送装置には、ロール紙自体を巻き戻し方向に駆動してロール紙に適度な張力を付与する装置を配置するものがある。
【0003】
このようなロール紙の巻戻動作を行うため、ロール紙の芯管の内部に配置される保持部材(フランジと称される)を備えたロール媒体保持装置を配置し、このフランジを介してロール紙を回転駆動してその回転を制御するものがある。このロール媒体保持装置の保持部材を介してロール紙に駆動を伝達することにより、ロール紙への張力の付与や、ロール紙の巻戻動作といった回転制御を行うことができる。
【0004】
しかし、市場で流通しているロール紙の芯管の内径は、統一されておらず、メーカー等によって異なっている。そこで、保持部材の軸芯に別途アダプタを取り付けたり、保持部材の軸芯部に備えられた支持部材をロール紙半径方向に変位させてその外径を変更したりして、ロール紙の芯管の内径に保持部材の取り付け径を合致させるようにしている。
【0005】
特許文献1には、保持部材の軸芯部に別体のアダプタを取り付け、軸芯部の内径を変えるものが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、保持部材の軸芯部がロール紙の内周面を支持するリブをカムにより半径方向に変位させるものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のものは、保持部材の軸芯部にアダプタを設けだけであるので構成が簡易であるものの、アダプタが別体として構成されているため、取り扱いが煩雑になるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載のものは、当接支持部材の切り替えを安定的に行うため、ロック機構等を設ける必要があり、その構成が複雑になるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構成で保持部材をロール紙の軸芯に適合することができるロール媒体保持装置及びこのロール媒体保持装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ロール媒体の芯管に挿入可能な軸芯部と、前記軸芯部の周囲に沿って配置される第1の位置及び前記軸芯部から離間して配置される第2の位置にその位置を可変に配置される複数の増径部材と、を備え、前記増径部材を前記第1の位置として、前記軸芯部の外周面に配置した増径部材で前記ロール媒体を支持する第1の保持状態と、前記増径部材を前記第2の位置として前記保持部材の軸芯部で前記ロール媒体を支持する第2の保持状態に設定可能としたことを特徴とするロール媒体保持装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のロール媒体保持装置において、前記増径部材は、前記軸芯部の基部で軸支され、先端部が前記軸芯部から離間する方向に揺動して前記軸芯部から離間するよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載のロール媒体保持装置において、前記増径部材は、前記軸芯部の軸線に沿ってスライドして前記軸芯部から離間するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のロール媒体保持装置において、前記軸芯部の外周面に半径方向に変位可能な弾性部材を配置し、前記増径部材が第1の位置のとき前記増径部材がこの弾性部材に当接して半径方向に連動して変位することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のロール媒体保持装置において、前記増径部材を第1及び第2の位置のうち少なくとも一方の位置に保持する保持機構を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のロール媒体保持装置において、前記保持部材にロール媒体確認可能な透孔を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のロール媒体保持装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、別体のアダプタを用意することなく異なる芯管径のロール媒体を保持できる。また、支持部材の位置を切り替えて安定させるための複雑な機構を設ける必要がなく簡単な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施例に係るロール紙保持装置を示す斜視図である。
【図3】実施例に係るロール紙保持装置を示す部分断面図である。
【図4】実施例に係るロール紙保持装置を示す部分断面図である。
【図5】第2の実施例に係るロール紙保持装置を示す断面図である。
【図6】第2の実施例に係るロール紙保持装置を示す断面図である。
【図7】第3の実施例に係るロール紙保持装置を示す側面図である。
【図8】第3の実施例に係るロール紙保持装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る画像形成装置は、長尺の用紙を巻き取って形成したロール紙(ロール媒体)を使用する。ロール紙は、その芯管の両端をロール紙保持装置で保持されて画像形成装置に配置されている。ロール紙保持装置には、ロール紙の芯管内に挿入される軸芯部が形成され、この軸芯部には異なる径の芯管に対応するための増径部材が第1及び第2の位置に可変に設置されている。そして、軸芯部に増径部材を配置した状態で大経の芯管を備えたロール紙を保持し、軸芯部から増径部材を離間させた状態で小径の芯管を備えたロール紙を保持する。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例(以下では単に実施例と記載する)に係る画像形成装置について説明する。以下、画像形成装置としてロール紙を上下2段に備え、ロール紙から搬送した用紙にインクジェットヘッドで印刷するものについて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0021】
図1は実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。この画像形成装置100は、ロール紙10が配置される給紙部20と、給紙部20から搬送された用紙に印刷を行う画像形成部30と、原稿等の画像読取を行う画像読取部40とを備えて構成されている。給紙部20は、ロール給紙段を上下に2段備えており、それぞれのロール給紙段において画像形成装置100前方(図中左)からロール紙10を配置することができる。ロール紙10は、芯管12に長尺の用紙11が巻き取られて構成されており、ロール媒体保持装置であるロール紙保持装置50で保持されている。一方の給紙段のロール紙10から引き出された用紙11は給紙ローラ21と給紙加圧コロ22に挟持されて、給紙部20の上方に配置された搬送ローラ25及び加圧コロ26まで搬送される。そして、用紙11は前記搬送ローラ25によって水平搬送部31に送出され、インクジェットヘッドを備えた画像形成部30によって印字が行われる。なお、ロール媒体は、紙に限定されず、布、合成樹脂シート等、他の記録媒体であってもよい。また、画像形成部30は、電子写真方式、昇華方式等、他の方式で画像を形成するものであってもよい。
【0022】
前記画像形成部30が形成する画像は、前記画像読取部40によって読み取られた画像、もしくは、電子情報機器等の上位装置から送信された画像である。画像形成の終了後は、図示しない切断手段により用紙を所定長さに切断したあとに、前記搬送ローラ25、前記給紙ローラ21が逆回転し、用紙を巻き戻す。このとき、ロール紙10へは駆動軸13に駆動が伝達され、ロール紙の逆回転を行う。巻き戻された用紙は前記搬送ローラ25まで巻き戻される。また、他の給紙段部に切り替える際は、上段給紙部の用紙は前記給紙ローラ21まで巻き戻される。
【0023】
次に実施例に係るロール紙保持装置50について説明する。図2は実施例に係るロール紙保持装置を示す斜視図である。本実施例に係るロール媒体保持装置であるロール紙保持装置50は、ロール紙10の両端部に配置されロール紙10を保持する。ロール紙保持装置50は、ロール紙10の両端部に当接する円板状の当接板51と、この当接板51の中央部に立設配置され、ロール紙10の芯管12に挿入される軸芯部52と、を備えている。ロール紙保持装置50は、当接板51及び軸芯部52を一体、もしくは別体として構成される。また、ロール紙保持装置50には、軸芯部52の外周にその軸線に沿って4枚の増径部材53が配置されている。
【0024】
増径部材53は、軸芯部52の外周に沿って湾曲する略4角形の部材であり、軸芯部52の外周に略等間隔で配置される。また、増径部材53は、軸芯部52の基部に周方向に沿って配置される回転支点55から軸芯部52から拡開する方向に回動可能に配置される。さらに本実施例では、当接板51には、拡開した増径部材53を収納する収納部54が凹設されている。
【0025】
本実施例に係るロール紙保持装置50は、大小2種類の径の芯管に対応するものであり、軸芯部52の外形を小径の芯管の内径よりやや小さく設定し、軸芯部52の周囲に増径部材53を配置した状態で、増径部材53外周の最大径が大径の芯管の内径よりやや小さくなるよう増径部材53の厚さ寸法を設定している。
【0026】
そして、増径部材53は、前記回転支点55を中心として回動することにより、軸芯部52に沿って近接して配置される第1の位置、及び回転支点55を軸として外側に拡開して軸芯部52から離間した第2の位置に配置することができる。これにより、ロール紙10の芯管12の径に対応して、ロール紙保持装置50におけるロール紙10の保持径を変更する。本実施例に係るロール紙保持装置50よれば、増径部材53を第1の位置に設置することにより大径の芯管12に、増径部材53を第2の位置に設置することにより小径の芯管に対応することができる。この軸芯部52の直径及び増径部材53の厚さは、保持すべきロール紙10の芯管12の内径に応じて決定することができる。
【0027】
次に実施例に係るロール紙保持装置50を用いてロール紙10を保持する場合について説明する。図3及び図4は実施例に係るロール媒体保持装置の部分断面図である。まず、大径の芯管12を備えたロール紙10を保持する場合、図3に示すように、回転支点55を中心に増径部材53を回転して軸芯部52に近接する位置、即ち第1の位置に配置する。このようにすると、増径部材53は芯管12の内周面と軸芯部52の外周面とに挟まれた状態となり、増径部材53は位置が安定し、ロール紙10を確実に保持することができる。
【0028】
このとき、増径部材53を固定するロック装置等を設ける必要はないが、図3に示すように、増径部材53に保持機構として係止爪56を、軸芯部52に保持機構として係止穴57を設ければ、増径部材53を簡易的に保持することができる。さらに、軸芯部52と増径部材53との間にロール紙半径方向に変形する弾性部材59を設ければ、芯管12の内径が多少異なる場合でも、増径部材53による芯管12の内周面への当接圧を安定させることができる。
【0029】
一方、小径の芯管12を備えたロール紙10をロール紙保持装置50に取り付けるときは、図4に示すように、ロール紙保持装置50に設けられた増径部材53を回転支点55から回動させて第2の位置に配置する。この状態で、増径部材53は、収納部54内に収納される。この状態で増径部材53は、ロール紙10の端面と当接板51とが当接している面よりさらに奥に配置される。この状態で軸芯部52をロール紙の芯管12の内周と軸芯部52とが当接することで、ロール紙10が保持される。このとき、増径部材53は芯管12の当接しておらず、ロール紙10の端面からも離れた状態にあるので、ロール紙10の回転に影響することはない。
【0030】
また、増径部材53に係止爪56を、軸芯部52に保持機構として係止穴58を設ければ、増径部材53を簡易的に保持することができる。このとき、軸芯部52に弾性部材59を設けておけば芯管12の内径が多少異なる場合でも、内周面に安定した当接圧を与えることができる。そして、このロール紙保持装置50に、駆動軸13を接続すれば、駆動力を伝達することができる。
【0031】
<第2の実施例>
次に第2の実施例について説明する。図5及び図6は第2の実施例に係るロール紙保持装置を示す断面図である。本実施例に係るロール紙保持装置60は、当接板61と軸芯部62と増径部材63とを備えて構成されている。また、増径部材63は前記軸芯部62の外周面を軸方向に沿って移動できるように構成され、当接板61には増径部材63が挿通される孔部64が形成されている。また、増径部材63には、弾性部材69が配置されている。ここで、軸芯部62の径及び増径部材63の厚さ寸法は前記第1の実施例の場合と同様である。
【0032】
本実施例に係るロール紙保持装置60に大径の芯管12を備えたロール紙10を取り付けるには、図5に示すように、増径部材63を軸芯部62の外周面に沿ってロール紙10の端部より内側に配置する。この状態で、ロール紙の芯管12の内周面は増径部材63の外周面は、軸芯部52に備えられた弾性部材59と当接した状態となり、ロール紙10は芯管12で確実に保持される。
【0033】
この状態で、増径部材63は、弾性部材69で半径を広げる方向に付勢力が付与される。このため、増径部材63は、芯管12の内周面に当接した状態になり、ロール紙10は確実に保持される。
【0034】
一方、径の小さいロール紙10を取り付けるには、図6に示すように、増径部材63を孔部64から軸芯部62の外周面に沿ってロール紙10の端部より外側にスライドさせて退避させる。この状態で、ロール紙の芯管12の内周面は軸芯部52に備えられた弾性部材59と当接した状態となり、ロール紙10は確実に保持される。
【0035】
<第3の実施例>
次に第3の実施例について説明する。図7及び図8は第3の実施例に係るロール紙保持装置を示す側面図である。本実施例に係るロール紙保持装置70の当接板51には、ロール紙10の確認用の透孔71が設けられている。本実施例に係るロール紙保持装置70では、ロール紙10を保持した状態で透孔71からロール紙10を観察することができる。即ち、大径の芯管12を備えたロール紙10を保持している場合は、図7に示すように、透孔71から増径部材53が芯管12と軸芯部52との間に配置されていることが確認できる。
【0036】
一方、小さな径の芯管12のロール紙10を保持しているときには、図8に示すように、透孔71が増径部材53によってふさがれた状態になる。本実施例に係るロール媒体保持装置では、保持されているロール紙10の芯管12の径を確認することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ロール紙
11 用紙
12 芯管
13 駆動軸
20 給紙部
21 給紙ローラ
22 給紙加圧コロ
24 加圧コロ
25 搬送ローラ
30 画像形成部
31 水平搬送部
40 画像読取部
50 ロール紙保持装置(ロール媒体保持装置)
51 当接板
52 軸芯部
53 増径部材
54 収納部
55 回転支点
56 係止爪
57 係止穴
58 係止穴
59 弾性部材
60 ロール紙保持装置(ロール媒体保持装置)
61 当接板
62 軸芯部
63 増径部材
64 孔部
69 弾性部材
70 ロール紙保持装置(ロール媒体保持装置)
71 透孔
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特許第3928705号公報
【特許文献2】特開2009−173428号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体の芯管に挿入可能な軸芯部と、
前記軸芯部の周囲に沿って配置される第1の位置及び前記軸芯部から離間して配置される第2の位置にその位置を可変に配置される複数の増径部材と、
を備え、
前記増径部材を前記第1の位置として、前記軸芯部の外周面に配置した増径部材で前記ロール媒体を支持する第1の保持状態と、前記増径部材を前記第2の位置として前記保持部材の軸芯部で前記ロール媒体を支持する第2の保持状態に設定可能とした
ことを特徴とするロール媒体保持装置。
【請求項2】
前記増径部材は、前記軸芯部の基部で軸支され、先端部が前記軸芯部から離間する方向に揺動して前記軸芯部から離間するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロール媒体保持装置。
【請求項3】
前記増径部材は、前記軸芯部の軸線に沿ってスライドして前記軸芯部から離間するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロール媒体保持装置。
【請求項4】
前記軸芯部の外周面に半径方向に変位可能な弾性部材を配置し、前記増径部材が第1の位置のとき前記増径部材がこの弾性部材に当接して半径方向に連動して変位することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のロール媒体保持装置。
【請求項5】
前記増径部材を第1及び第2の位置のうち少なくとも一方の位置に保持する保持機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のロール媒体保持装置。
【請求項6】
前記保持部材にロール媒体確認可能な透孔を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のロール媒体保持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のロール媒体保持装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−35926(P2012−35926A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174835(P2010−174835)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】