説明

ロール媒体給送装置及び記録装置

【課題】ロール媒体の軸部材を支持した状態でロール媒体収容部に対してスライド自在な引き出し部材側から、ロール媒体の軸部材を支持するための軸受け部が設けられたロール媒体収容部側に、ロール媒体を円滑に移送することが可能なロール媒体給送装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】ロール媒体給送装置は、ロール紙13の軸部材13aを支持するための軸受け部が設けられたロール紙収容部15と、該ロール紙収容部15に対してスライド移動自在に設けられた引き出し部材16とを備える。ロール紙収容部15には、軸部材13aの両端部を支持可能な各上面49a,48a,50aを軸受け部から引き出し部材16のスライド方向に沿って延びるように設ける一方、引き出し部材16には、軸部材13aの両端部を支持可能な引き出し傾斜面60を上面50aに対して軸部材13aの延びる方向から見て鈍角に交わるように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置及び該記録装置に備えられるロール媒体給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロール媒体に記録処理を施す記録装置としてインクジェット式プリンターが広く知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1のプリンターでは、ロールペーパー(ロール媒体)を保持するスライド台(引き出し部材)が筐体内に設けられたロールペーパー収容室(ロール媒体収容部)に対してスライド自在に取り付けられている。すなわち、このプリンターでは、ロールペーパーの交換作業ができるように、スライド台をスライド移動させることで、ロールペーパー収容室に対してロールペーパーが出し入れできるようになっている。
【0003】
スライド台は、その左右両側の側壁に設けられた支持溝(軸受け部)でロールペーパーの巻芯ローラー(軸部材)の両端を支持している。そして、筐体内で2つの圧着ローラーとの間でロールペーパーを挟持する搬送駆動ローラーの回転駆動により、ロールペーパー収容室からロールペーパーが引き出されてプリント部(記録手段)側へ搬送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1プリンターでは、スライド台に設けられた支持溝がロールペーパーの巻芯ローラーの軸受け部として機能するようになっている。このため、巻芯ローラーを回転駆動させることでロールペーパーをプリント部側へ巻き出しながら搬送する場合には、スライド台に巻芯ローラーを回転駆動させるための駆動手段を設ける必要があるが、こうした駆動手段をスライド移動するスライド台に設けることは非常に困難であった。
【0006】
このため、筐体内のロールペーパー収容室側に巻芯ローラーの軸受け部と巻芯ローラーを回転駆動させるための駆動手段とを設けることが考えられる。しかしながら、このようにした場合には、ロールペーパーが巻かれて重くなった巻芯ローラーをスライド台からロールペーパー収容室側の軸受け部へ移送することが困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ロール媒体の軸部材を支持した状態でロール媒体収容部に対してスライド自在な引き出し部材側から、ロール媒体の軸部材を支持するための軸受け部が設けられたロール媒体収容部側に、ロール媒体を円滑に移送することが可能なロール媒体給送装置及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のロール媒体給送装置は、ロール媒体の軸部材を支持するための軸受け部が設けられたロール媒体収容部と、該ロール媒体収容部に対してスライド移動自在に設けられた引き出し部材とを備え、前記ロール媒体収容部には、前記軸部材の両端部を支持可能な第1支持面を前記軸受け部から前記引き出し部材のスライド方向に沿って延びるように設ける一方、前記引き出し部材には、前記軸部材の両端部を支持可能な第2支持面を前記第1支持面に対して前記軸部材の延びる方向から見て鈍角に交わるように設けた。
【0009】
この発明によれば、第2支持面は第1支持面に対して軸部材の延びる方向から見て鈍角に交わるため、ロール媒体の軸部材を第2支持面から第1支持面に移動する際の衝撃が効果的に低減される。したがって、ロール媒体の軸部材を支持した状態でロール媒体収容部に対してスライド自在な引き出し部材側から、ロール媒体の軸部材を支持するための軸受け部が設けられたロール媒体収容部側に、ロール媒体を円滑に移送することが可能となる。
【0010】
本発明のロール媒体給送装置において、前記第2支持面は、前記ロール媒体収容部に近い側の面部位の方が遠い側の面部位よりも重力方向で下方となるように傾斜している。
この発明によれば、ロール媒体の軸部材を第2支持面に載置するだけで、該軸部材が自重で第1支持面側に向かって転がるため、該軸部材を第2支持面から第1支持面に容易に移送することが可能となる。
【0011】
本発明のロール媒体給送装置において、前記引き出し部材には、前記第2支持面上から前記第1支持面上に位置を移動した前記軸部材に対して前記引き出し部材の前記ロール媒体収容部側へのスライド移動に伴い前記軸受け部側への押圧力を付与可能な収容方向押圧部が設けられている。
【0012】
この発明によれば、軸部材が第2支持面から第1支持面へ移動した後に引き出し部材をロール媒体収容部側にスライド移動させるだけで、収容方向押圧部によって第1支持面上に位置する軸部材に対して軸受け部側に向かう押圧力が付与されるため、軸部材を軸受け部へ容易に導くことが可能となる。
【0013】
本発明のロール媒体給送装置において、前記軸受け部は、前記引き出し部材のスライド方向における前記軸部材の移動を規制して保持する軸受け面を備えている。
この発明によれば、軸部材を軸受け部に位置決め状態で保持することが可能となる。
【0014】
本発明のロール媒体給送装置において、前記引き出し部材には、前記軸受け部に支持された状態にある前記軸部材に対して前記引き出し部材の前記ロール媒体収容部からの引き出し方向へのスライド移動に伴い前記引き出し方向への押圧力を付与可能な引き出し方向押圧部が設けられている。
【0015】
この発明によれば、ロール媒体収容部から引き出し部材を引き出すだけで、引き出し方向押圧部によって軸受け部に支持された状態の軸部材に対して引き出し部材の引き出し方向に向かう押圧力が付与されるため、軸受け部から軸部材を容易に取り出すことが可能となる。
【0016】
本発明の記録装置は、上記構成のロール媒体給送装置と、該ロール媒体給送装置から給送される前記ロール媒体に記録処理を施す記録手段とを備えた。
この発明によれば、上記と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態におけるインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】同プリンターのロール紙収容部にロール紙をセットしたときの状態を示す模式図。
【図3】同プリンターのロール紙収容部からロール紙を引き出したときの状態を示す模式図。
【図4】同プリンターにおけるロール紙収容部の斜視図。
【図5】同プリンターにおいて、引き出し部材が引き出し位置にあるときの引き出し部材とロール紙収容部との位置関係を示す模式図。
【図6】同プリンターにおいて、ロール紙の軸部材が引き出し側板の凹部の前面に当接したときの状態を示す模式図。
【図7】同プリンターにおいて、ロール紙の軸部材が引き出し側板の凹部の後面によって前方側へ押圧されるときの状態を示す模式図。
【図8】同プリンターにおいて、引き出し部材が収容位置にあるときの引き出し部材とロール紙収容部との位置関係を示す模式図。
【図9】同プリンターにおいて、ロール紙の軸部材が引き出し側板の凹部の前面によって後方側へ押圧されるときの状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1において矢印で示す「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいうものとする。なお本実施形態では、上下方向を鉛直方向(重力方向)と同一方向として規定している。
【0019】
図1及び図2に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11は、直方体状をなす本体フレーム12を備えている。本体フレーム12の後面下部には、該本体フレーム12内にロール媒体としてのロール紙13をセットしたり、該本体フレーム12内にセットされたロール紙13を交換したりする際に開閉される扉14が設けられている。すなわち、本体フレーム12内における下方の位置であって扉14の内側の位置には、ロール紙13を収容するためのロール媒体収容部としてのロール紙収容部15が設けられている。
【0020】
図2及び図3に示すように、ロール紙収容部15には、該ロール紙収容部15に対して前後方向(スライド方向)にスライド移動自在に構成された引き出し部材16が設けられている。すなわち、扉14を開けた状態では、ロール紙収容部15に対して引き出し部材16が出し入れ可能になっている。引き出し部材16の後端下部には、該引き出し部材16をスライド移動させる際に掴むための把手16aが設けられている。
【0021】
そして、ロール紙収容部15から引き出し部材16を引き出した状態で該引き出し部材16にロール紙13の軸部材13aを支持させた後、再びロール紙収容部15に引き出し部材16を収容すると、ロール紙収容部15にロール紙13の軸部材13aが左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に支持されるようになっている。なお、軸部材13aは、左右方向に延びているとともに、その右端には後述する歯車13b(図4参照)が設けられている。
【0022】
そして、ロール紙収容部15から引き出し部材16を引き出した時の引き出し部材16の位置(図3に示す位置)は引き出し位置とされるとともに、ロール紙収容部15に引き出し部材16を収容したときの引き出し部材16の位置(図2に示す位置)は収容位置とされている。なお、本実施形態では、ロール紙13の軸部材13a、ロール紙収容部15、及び引き出し部材16によってロール媒体給送装置が構成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、本体フレーム12内におけるロール紙収容部15の上方の位置には、ロール紙収容部15から巻き出されたロール紙13を支持する平板状のプラテン20が水平状態で配置されている。プラテン20の上方には該プラテン20と対向するようにキャリッジ21が設けられるとともに、該キャリッジ21の下面には記録手段としての記録ヘッド22が支持されている。そして、キャリッジ21は駆動手段(図示略)によって左右方向に往復移動可能に構成される一方、記録ヘッド22には本体フレーム12内に配置されたインクカートリッジ(図示略)からインクが供給されるようになっている。
【0024】
また、本体フレーム12内には、ロール紙収容部15に支持されたロール紙13を該ロール紙13の搬送経路に沿ってプラテン20上に搬送する搬送機構23が設けられている。搬送機構23は、ロール紙収容部15から巻き出されたロール紙13をその搬送経路に沿ってガイドするガイド板24と、該搬送経路に沿って配設されるとともに該ロール紙13をプラテン20側へ搬送する複数の搬送ローラー25〜31とを備えている。
【0025】
そして、ロール紙収容部15に支持されたロール紙13を搬送機構23によってプラテン20上に順次搬送するとともにキャリッジ21を駆動手段(図示略)によって左右方向に往復移動しながら、該プラテン20上のロール紙13に記録ヘッド22からインクを噴射することで、該ロール紙13に記録処理である印刷が施されるようになっている。なお、印刷後のロール紙13は、その搬送経路におけるプラテン20よりも下流側に配置された乾燥装置(図示略)によって乾燥された後、巻取軸(図示略)によって順次巻き取られる。
【0026】
次に、ロール紙収容部15の構成について詳述する。
図4に示すように、ロール紙収容部15は、本体フレーム12(図1参照)の平板状の基台40上に左右方向に所定間隔を置いて対向するように配置された一対の矩形状をなす収容部側板41,42を備えている。両収容部側板41,42の上端部間には上板43が架設されるとともに、該上板43の前端縁、両収容部側板41,42の内面、及び基台40の上面で囲まれた開口を塞ぐように前板44が両収容部側板41,42間に架設されている。
【0027】
図4及び図8に示すように、右側の収容部側板42の後端部における上下方向の中央部には、前後方向に延びる切欠溝45が形成されている。切欠溝45は、後端側が開口する一方、前端側が閉塞されている。切欠溝45の下面45aにおいて、前端部は前方側に向かって下降するように傾斜している一方、前端部以外の部分は水平に延びている。また、切欠溝45の前面45bは上下方向に延びているとともに、切欠溝45の上面45cは後方に向かって上昇するように斜めに延びている。そして、切欠溝45の下面45a上には、該下面45aに合わせて前後方向に延びる帯状の支持部材46が該下面45aを覆うように設けられている。
【0028】
支持部材46は、その前端部に切欠溝45の下面45aにおける前端部の傾斜に合わせて傾斜させてなる前側傾斜部47が設けられる一方、後端側が切欠溝45の後端側の開口から後方に向かって突出している。支持部材46の後端部には後方に向かって上昇するように傾斜させてなる後側傾斜部48が設けられるとともに、支持部材46における後側傾斜部48よりも後方側の部分は後方に向かって真っ直ぐ水平に延びている。
【0029】
そして、支持部材46において、前側傾斜部47と後側傾斜部48との間の水平な部分は前側水平部49とされる一方、後側傾斜部48よりも後方側の水平な部分は後側水平部50とされている。なお、左側の収容部側板41の内側の面(右面)にも、上記と同様の支持部材46が右側の収容部側板42の支持部材46と対応するように設けられている。さらに、左側の収容部側板41の内側の面(右面)には、切欠溝45の前面45bと対応する当接面52aを有する当接部材52が設けられている。
【0030】
なお、本実施形態では、両支持部材46における前側水平部49、後側傾斜部48、及び後側水平部50の各上面49a,48a,50aによって軸部材13aの左右両端部を支持可能な第1支持面が構成されている。さらに本実施形態では、両支持部材46の前側傾斜部47の上面47a、切欠溝45の前面45b、及び当接部材52の当接面52aによって軸部材13aの前後方向の移動を規制して保持する軸受け部を構成する軸受け面が構成されている。
【0031】
また、図4及び図8に示すように、右側の収容部側板42の外側の面(右面)上における切欠溝45の前面45bに対して前側に隣り合う位置には、本体フレーム12内に設けられたモーター(図示略)によって左右方向に延びる軸線を中心として正逆両方向に回転駆動可能な駆動歯車51が回動可能に支持されている。そして、ロール紙13の軸部材13aが支持部材46の前側傾斜部47の上面47aと切欠溝45の前面45bとで支持された状態では、軸部材13aの歯車13bと駆動歯車51とが右側の収容部側板42の外側(右側)で噛合するようになっている。
【0032】
次に、引き出し部材16の構成について詳述する。
図4に示すように、引き出し部材16は、左右方向に所定間隔を置いて対向するように配置された一対の矩形状をなす引き出し側板55,56と、該両引き出し側板55,56の後端部における下端部間に架設された直方体状のフレーム57とを備えている。両引き出し側板55,56間の幅は両収容部側板41,42間の幅よりも若干小さくなっている。したがって、引き出し部材16は、後側から両収容部側板41,42間に挿入可能になっている。
【0033】
以下、両引き出し側板55,56の構成を詳述するが、該両引き出し側板55,56は全く同一の構成であるため、右側の引き出し側板56の構成についてのみ説明する。
図5及び図8に示すように、引き出し側板56の上面における前後方向の中央部には、凹部58が形成されている。引き出し側板56の上面において、凹部58よりも前方側は水平な引き出し水平面59になっている一方、凹部58よりも後方側は前方に向かって下降するように傾斜した引き出し傾斜面60になっている。すなわち、引き出し傾斜面60は、ロール紙収容部15に近い側の面部位の方が遠い側の面部位よりも重力方向(上下方向)で下方となるように傾斜している。
【0034】
引き出し傾斜面60は、前端が引き出し水平面59よりも高さが低くなっている一方、後端は引き出し水平面59よりも高さが高くなっている。したがって、凹部58は、その収容方向押圧部としての後面58aの高さよりも引き出し方向押圧部としての前面58bの高さの方が高くなっている。また、引き出し部材16が引き出し位置(図5に示す位置)にある場合、凹部58の後面58aは、支持部材46の後側水平部50の後端部と対応する位置に位置している。
【0035】
この場合、凹部58の後面58aの上端は、支持部材46の後側水平部50の上面50aよりも低く、且つ支持部材46の前側水平部49の上面49aよりも高い位置に位置している。さらにこの場合、左右方向から見た場合における支持部材46の後側水平部50の上面50aと引き出し傾斜面60とのなす角度Aは鈍角(本実施形態では170度程度)になっている。
【0036】
また、引き出し部材16が収容位置(図8に示す位置)にある場合、引き出し側板56の凹部58における後面58aと前面58bとの間の距離は、該後面58aと切欠溝45の前面45bとの間の距離よりも長くなっている。この場合、凹部58の後面58aと切欠溝45の前面45bとの間の距離は、軸部材13aの外径よりも若干長くなっている。なお、本実施形態では、両引き出し側板55,56の各引き出し傾斜面60により軸部材13aの両端部を支持可能な第2支持面が構成されている。
【0037】
次に、インクジェット式プリンター11にロール紙13をセットする際の動作について説明する。
インクジェット式プリンター11にロール紙13をセットする場合には、まず、扉14を開いた状態で、ロール紙収容部15に収容されている引き出し部材16を引き出し方向である後方へ向かって引き出すことで、引き出し部材16を収容位置から引き出し位置へ移動させる。続いて、図5に示すように、引き出し部材16の両引き出し側板55,56の各引き出し傾斜面60上に、ロール紙13が両引き出し側板55,56間に配置されるように、軸部材13aの両端部を載置する。
【0038】
すると、ロール紙13及び軸部材13aの自重により軸部材13aが両引き出し側板55,56の各引き出し傾斜面60上を前方に向かって転がる。そして、軸部材13aは、ロール紙13とともに各引き出し傾斜面60の前端まで転がった後、両支持部材46の後側水平部50の上面50a上に移る。このとき、左右方向から見た場合において上面50aと引き出し傾斜面60とが鈍角に交わっているため、軸部材13aは、衝撃などによる振動を抑えつつ各引き出し傾斜面60から各上面50a上へと滑らかに移動する。
【0039】
因みに、各引き出し傾斜面60と各上面50aとの間に段差があった場合には、ロール紙13とともに軸部材13aが各引き出し傾斜面60から各上面50aへ落下する際の衝撃によってインクジェット式プリンター11全体が振動することで、該インクジェット式プリンター11が悪影響を受けるおそれがある。
【0040】
続いて、図6に示すように、各上面50a上へ移動した軸部材13aは、各後側傾斜部48の上面48a上を転がって各前側水平部49の上面49a上に移動するとともに両引き出し側板55,56の凹部58の前面58bに当接する。この当接により、引き出し部材16が若干前方へ向かって移動する。続いて、引き出し部材16を収容位置へ向かって前方にスライド移動させると、両引き出し側板55,56の凹部58の後面58aが軸部材13aに後方側から当接する。
【0041】
引き続き、引き出し部材16を前方へスライド移動させると、図7に示すように、軸部材13aに対して各後面58aから前方側への押圧力が付与される。これにより、軸部材13aが各前側水平部49の上面49a上を前方側へ向かって速やかに転がって移動する。そして、図8に示すように、引き出し部材16を収容位置まで移動させると、軸部材13aの両端部が、両支持部材46の前側傾斜部47の上面47aにそれぞれ支持されるとともに当接部材52の当接面52a及び切欠溝45の前面45bにそれぞれ当接する。
【0042】
このとき、各上面47aの傾斜と、ロール紙13及び軸部材13aの自重とにより、軸部材13aの両端部は常に当接面52a及び前面45bに押し当てられた状態に維持されるので、軸部材13aの前後方向の移動が規制される、すなわち軸部材13aの位置決めがなされる。さらにこのとき、図4に示すように、軸部材13aの歯車13bと駆動歯車51とが噛合する。その後、扉14を閉じることで、インクジェット式プリンター11へのロール紙13のセットが完了する。
【0043】
そして、駆動歯車51を正方向または逆方向に適宜回転駆動させると、歯車13bを介して軸部材13aがロール紙13とともに駆動歯車51と逆の方向に適宜一体的に回転されるので、ロール紙13がプラテン20側へ巻き出されたり、搬送経路でのロール紙13の弛みが解消されたりする。なお、軸部材13aは、該軸部材13aに設けられたフランジ(図示略)によって左右方向の位置決めがなされる。
【0044】
また、上述のインクジェット式プリンター11にロール紙13をセットする場合において、両引き出し側板55,56の各引き出し傾斜面60上にロール紙13の軸部材13aを載置した後、軸部材13aが転がって両支持部材46の後側水平部50の上面50a上に移る前に引き出し部材16を収容位置までスライド移動させた場合には、各引き出し傾斜面60の前端が両支持部材46の前側傾斜部47の上面47aに臨む位置にあるため、軸部材13aが各引き出し傾斜面60上から直接各上面47aへ転がって移動される。
【0045】
一方、インクジェット式プリンター11にセットされたロール紙13を交換する場合には、まず、扉14を開いた状態で、ロール紙収容部15に収容されている引き出し部材16を引き出し方向である後方へ向かって引き出す。すると、図9に示すように、両引き出し側板55,56の凹部58の前面58bが軸部材13aに前方側から当接するとともに、該軸部材13aに対して該各前面58bから後方側への押圧力が付与される。これにより、軸部材13aは、各上面47a上から各前側水平部49の上面49a上に移動されるとともに、該各上面49a上を後方側へ向かって速やかに転がって移動される。
【0046】
そして、図6に示すように、引き出し部材16を引き出し位置まで移動させると、軸部材13aは各前側水平部49の上面49a上における後端部まで移動された状態となる。この状態で、軸部材13aとともにロール紙13を取り出した後、交換したいロール紙13の軸部材13aの両端部を両引き出し側板55,56の各引き出し傾斜面60上に載置し、上述と同様にしてインクジェット式プリンター11にセットすればよい。
【0047】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)引き出し部材16が引き出し位置(図5に示す位置)にある状態で、左右方向(軸部材13aの延びる方向)から見た場合における両支持部材46の後側水平部50の上面50aと両引き出し傾斜面60とのなす角度Aは鈍角(170度程度)になっている。このため、ロール紙13の軸部材13aが両引き出し傾斜面60上から各上面50a上に転がって移動する際の衝撃を効果的に低減することができる。したがって、ロール紙13の軸部材13aを支持した状態でロール紙収容部15に対してスライド自在な引き出し部材16側から、ロール紙13の軸部材13aを支持するための軸受け部が設けられたロール紙収容部15側に、ロール紙13を円滑に移送することができる。
【0048】
(2)両引き出し傾斜面60は、ロール紙収容部15に近い側(前側)の面部位の方が遠い側(後側)の面部位よりも重力方向(上下方向)で下方となるように傾斜している。このため、ロール紙13の軸部材13aの両端部を両引き出し傾斜面60に載置するだけで、該軸部材13aが自重で両支持部材46の後側水平部50の上面50aに向かって転がるため、該軸部材13aを両引き出し傾斜面60上から各上面50a上に容易に移送することができる。
【0049】
(3)引き出し部材16には、両引き出し傾斜面60上から各前側水平部49の上面49a上に位置を移動した軸部材13aに対して、引き出し部材16のロール紙収容部15側(前方側)へのスライド移動に伴って軸受け部側(前方側)への押圧力を付与する凹部58の後面58aが設けられている。このため、両引き出し傾斜面60上から各前側水平部49の上面49a上に軸部材13aが移動した後に、引き出し部材16をロール紙収容部15側にスライド移動させるだけで、両凹部58の後面58aによって各上面49a上に位置する軸部材13aの両端部に対して軸受け部側に向かう押圧力を付与することができる。この結果、軸部材13aを軸受け部へ容易に導くことができる。
【0050】
(4)両支持部材46の前側傾斜部47の上面47a、切欠溝45の前面45b、及び当接部材52の当接面52aによって軸部材13aの前後方向(引き出し部材16のスライド方向)の移動を規制して保持する軸受け部を構成する軸受け面が構成されている。このため、軸部材13aをその自重によって軸受け部に位置決め状態で保持することができる。
【0051】
(5)引き出し部材16には、軸受け部に支持された状態にある軸部材13aに対して引き出し部材16のロール紙収容部15からの引き出し方向(後方)へのスライド移動に伴って引き出し方向への押圧力を付与する凹部58の前面58bが設けられている。このため、ロール紙収容部15から引き出し部材16を引き出し方向に向かって引き出すだけで、各凹部58の前面58bによって軸受け部に支持された状態の軸部材13aに対して引き出し方向に向かう押圧力を付与することができる。この結果、軸受け部から軸部材13aを容易に取り出すことができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・両引き出し側板55,56の凹部58の前面58b及び後面58aのうち少なくとも一方を省略してもよい。
・両支持部材46の前側傾斜部47を前後方向から見て軸部材13aの下面側と対応する半円状に形成し、両前側傾斜部47の各上面47aのみで軸受け部を構成する軸受け面を構成するようにしてもよい。この場合、両前側傾斜部47のみで軸部材13aの前後方向への移動を規制することができるので、軸部材13aを切欠溝45の前面45bに当接させる必要はない。
【0053】
・軸部材13aの歯車13b及び駆動歯車51を省略してもよい。
・ロール紙13の代わりに、ロール状のプラスチックフィルム、ロール状の布、ロール状の金属箔などをロール媒体として用いてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンター、13…ロール媒体としてのロール紙、13a…ロール媒体給送装置を構成する軸部材、15…ロール媒体給送装置を構成するロール媒体収容部としてのロール紙収容部、16…ロール媒体給送装置を構成する引き出し部材、22…記録手段としての記録ヘッド、45b…軸受け部を構成する軸受け面を構成する前面、47a…軸受け部を構成する軸受け面を構成する上面、48a,49a,50a…第1支持面を構成する上面、52a…軸受け部を構成する軸受け面を構成する当接面、58a…収容方向押圧部としての後面、58b…引き出し方向押圧部としての前面、60…第2支持面を構成する引き出し傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体の軸部材を支持するための軸受け部が設けられたロール媒体収容部と、該ロール媒体収容部に対してスライド移動自在に設けられた引き出し部材とを備え、
前記ロール媒体収容部には、前記軸部材の両端部を支持可能な第1支持面を前記軸受け部から前記引き出し部材のスライド方向に沿って延びるように設ける一方、
前記引き出し部材には、前記軸部材の両端部を支持可能な第2支持面を前記第1支持面に対して前記軸部材の延びる方向から見て鈍角に交わるように設けたことを特徴とするロール媒体給送装置。
【請求項2】
前記第2支持面は、前記ロール媒体収容部に近い側の面部位の方が遠い側の面部位よりも重力方向で下方となるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のロール媒体給送装置。
【請求項3】
前記引き出し部材には、前記第2支持面上から前記第1支持面上に位置を移動した前記軸部材に対して前記引き出し部材の前記ロール媒体収容部側へのスライド移動に伴い前記軸受け部側への押圧力を付与可能な収容方向押圧部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロール媒体給送装置。
【請求項4】
前記軸受け部は、前記引き出し部材のスライド方向における前記軸部材の移動を規制して保持する軸受け面を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のロール媒体給送装置。
【請求項5】
前記引き出し部材には、前記軸受け部に支持された状態にある前記軸部材に対して前記引き出し部材の前記ロール媒体収容部からの引き出し方向へのスライド移動に伴い前記引き出し方向への押圧力を付与可能な引き出し方向押圧部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のロール媒体給送装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のロール媒体給送装置と、該ロール媒体給送装置から給送される前記ロール媒体に記録処理を施す記録手段とを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173331(P2011−173331A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39235(P2010−39235)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】