説明

ロール温度調整装置

【課題】ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールを成形に適した温度に調整する。
【解決手段】ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロール1のくい込み点Pの近傍に、前記ロール1の外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体aが通過する空洞部12を有する金属製の細長い函体11からなり、該函体11は、少なくともロール1の外周面に対峙する底部13が円弧状に形成されると共にロール1の周縁部に対峙するスカート部14を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールを、前記成形物の成形に適した温度に温度調整するロール温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ガス、メタン、二酸化炭素などの原料ガスを水と水和反応させて生成した粉体状のハイドレートは、輸送及び貯蔵時のハンドリング性を向上させるために、圧縮成形してペレット状の成形物(以下、「ペレット」と称する。)に加工することが知られている。
【0003】
ペレットの製造には、図8に示すように、一対のロール1,1の上方にホッパ2を備えた所謂ブリケッティングロール方式のガスハイドレートペレット製造装置が用いられている。ホッパ2は、その内部に供給されたガスハイドレート粉体を昇圧しながら一対のロール1,1間へ押し出すスクリューフィーダー(図示せず)を備えている。ガスハイドレート粉体は、各ロール1のロール表面に設けられたポケット状の成形型3に食い込まれ、更に、ロール1,1間で圧縮成形されてペレットとなる。
【0004】
しかし、ガスハイドレート粉体を圧縮成形して造粒するときに、各ロール1の表面温度が圧縮仕事に伴って高くなり、ガスハイドレートの分解温度になると、ガスハイドレート粉体が分解する。
【0005】
そこで、図9に示すように、ホッパ2に冷却水wを供給し、各ロール1の外周面に冷却水を接触させ、ホッパ2の冷却水排出口4から処理後の冷却水wを排出することが出願されている(例えば、特許文献1の[図3]参照。)。図中、符号5は冷却水タンク、6はポンプ、7は冷却器、nはガスハイドレート粉体である。
【0006】
また、図10に示すように、各ロール1の下部に冷却槽8を配置し、この冷却槽8へ冷却水wを循環させ、冷却水wを各ロール1の外周部に接触させるようにしてロール表面を冷却しながらガスハイドレートペレットを製造する方法も出願されている(例えば、特許文献1の[図4]参照。)。
【0007】
しかしながら、前者のように、ホッパ2に冷却水wを供給する方法は、ホッパ2内にガスハイドレート粉体が充満しているために、各ロール1の外周面を冷却水wによってムラのないように均一に冷却することが難しい。また、後者の場合は、各ロール1の下方に冷却槽8が位置しているために、ホッパ2の下部開口部に対峙しているロール外周部分の温度をペレットの成形に適した温度にコントロールすることが難しい。
【0008】
他方、一対のロールを容器内に収容し、容器内の温度をホッパの外部に装備された加温・冷却装置によって一元的にコントロールすることが考えられている。その際、ペレットの成形性を向上させるためには、容器内温度をハイドレート平衡温度+4℃にコントロールする必要があるが、この場合は、ホッパ内でハイドレートが融解する現象が確認され、歩留りの低下が見られた。
【0009】
これとは反対に、ハイドレート平衡温度以下(0〜−2℃)にコントロールすると、ハイドレートがロールにへばりつく現象、また、ペレットにラミネーションが発生し、割れ等によりペレット成形が著しく劣る現象が目視確認されている。
【0010】
従来、ロールにへばりついたハイドレートを除去する方法として、外部から水を供給し、シャワー洗浄する方法が採られてきたが、シャワー水の温度により、結果的にロール温度が上昇する。また、容器内の湿度が上昇することによりサイトガラスが曇り、目視確認ができなくなる。更に、温度を持つ水が系内を循環することにより、プラント系のマスバランスを再考しなければならない等の問題が発生した。
【0011】
また、ヒータを使用して温度コントロールすることも考えられるが、防爆ヒータは、フランジを含め直管部分が多く、今回のようなロール形状にならうようにできない。また、ヒータ自体も大型化してしまい実用搭載には向かないことが容易に推察できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−262186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールを成形に適した温度に調整するロール温度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に係るロール温度調整装置は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に、前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備えている。
【0015】
本願の請求項2に係るロール温度調整装置は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備え、かつ、前記底部に凹凸状の放熱部を設けている。
【0016】
本願の請求項3に係るロール温度調整装置は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備え、かつ、前記底部に凹凸状の放熱部を設け、更に、前記函体内に隔壁を設け、前記函体の後端部に伝熱媒体供給口を設けると共に、前記函体の側方に伝熱媒体排出口を設けている。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本発明は、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に、前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備えているため、外部から細長い函体内の空洞部に一定温度の伝熱媒体を一定量循環させることにより、ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールの外周面の温度を成形に適した温度に精度良くコントロールすることができる。また、ロール温度調整装置を構成している細長い函体のみに伝熱媒体を注入するので、系内のマスバランスを乱すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るロール温度調整装置を採用したガスハイドレートペレット製造装置の主要部の斜視図である。
【図2】本発明に係るロール温度調整装置の斜視図である。
【図3】本発明に係るロール温度調整装置の一部断面を含む平面図である。
【図4】本発明に係るロール温度調整装置の側面図である。
【図5】本発明に係るロール温度調整装置の底面図である。
【図6】本発明に係るロール温度調整装置の正面図である。
【図7】本発明に係るロール温度調整装置の背面図である。
【図8】従来のガスハイドレートペレット製造装置の斜視図である。
【図9】従来のガスハイドレートペレット製造装置を模式的に示す説明図である。
【図10】従来のガスハイドレートペレット製造装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1において、符号100は、一対のロール1,1の上方にホッパ2を備えた所謂ブリケッティングロール方式のガスハイドレートペレット製造装置である。ホッパ2は、その内部に供給されたガスハイドレート粉体nを昇圧しながらロール1,1間へ押し出すスクリューフィーダー(図示せず)を備えている。ロール1,1間へ押し出されたガスハイドレート粉体nは、各ロール1のロール表面に設けられたポケット状の成形型(図示せず)に食い込まれ、更に、一対のロール1,1間で圧縮成形されてペレットn’となる。
【0021】
図1に示すように、ガスハイドレートペレット製造装置100は、ロール1のくい込み点Pの近傍にロール温度調整装置10を備えている。くい込み点Pとは、ロール1の速度と原料(ガスハイドレート粉体n)の流れ速度が同一になる点を言う。
【0022】
更に詳しく説明すると、上記ロール温度調整装置10は、ホッパ2の下部に取り付けたフィーダベースブロック30に装着されている。フィーダベースブロック30は、原料(ガスハイドレート粉体n)が通過する垂直な貫通孔33を備えた正方形の上板31と、上板31の下部に配置した一対のチークプレート装着部32,32から構成され、この一対のチークプレート装着部32,32の間に前記ロール温度調整装置10が装着されている。ロール温度調整装置10は、その先端部が前記貫通孔33内に若干突出するようになっている。
【0023】
上記チークプレート装着部32,32の内側に装着されたチークプレート(図示せず)は、ロール1,1の両端にあてがわれ、ロール1,1の谷間からガスハイドレート粉体nが溢れるのを防止するようになっている。
【0024】
上記ロール温度調整装置10は、図2〜7に示すように、内部に伝熱媒体が通過する空洞部12を有する中空状の細長い函体11であり、例えば、快削黄銅等の熱伝導率の高い金属によって構成されている。
【0025】
上記函体11は、少なくともロール1の外周面に対峙する底部13が円弧状に形成されると共に、ロール1の周縁部に対峙する一対のスカート部14,14を備えている。このため、函体11は、その横断面が凹形になっている。また、函体11の底部13は、凹凸状に加工された放熱部15となっている。この凹凸は、函体11の長手方向と交差するようになっている。
【0026】
更に、函体11は、その後端部に伝熱媒体供給口18,19を設けると共に、その側方に伝熱媒体排出口22,23を設けている。そのうえ、函体11は、内部の空洞部12を隔壁17によって二分している。
【0027】
図3に示すように、函体10の後端部に設けられた伝熱媒体供給口18,19から函体11内に一定温度(例えば、5〜60℃)に調整された伝熱媒体aを供給すると、伝熱媒体aは、細長い函体11の各空洞部12内を一巡して函体11の側部に設けられた排出口22,23から排出されるが、その間に函体11は、伝熱媒体aによって一定温度に温度調整される。
【0028】
温度調整された函体11の底部13とロール1との間には、常に、ロール1,1によって搾られたガスハイドレート粉末の圧搾水が存在するため、この圧搾水を媒介してロール1,1の表面温度(外周面温度)がペレットn’の成形に最適な温度に温度コントロールされる。
【0029】
以上の説明では、ガスハイドレートのペレット成形について説明したが、本発明は、これに限らず、ガスハイドレートをフレーク状に成形する場合にも適用できる。また、利用分野も、例えば、化学、鐵鋼、窯業、食品、薬品などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0030】
a 伝熱媒体
P くい込み点
1 ロール
11 函体
12 空洞部
13 底部
14 スカート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に、前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備えていることを特徴とするロール温度調整装置。
【請求項2】
ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備え、かつ、前記底部に凹凸状の放熱部を設けることを特徴とするロール温度調整装置。
【請求項3】
ブリケット状又はフレーク状の成形物を製造するロールのくい込み点の近傍に前記ロールの外周面に近接して設置され、かつ、内部に伝熱媒体が通過する空洞部を有する金属製の細長い函体からなり、該函体は、少なくともロールの外周面に対峙する底部が円弧状に形成されると共にロールの周縁部に対峙するスカート部を備え、かつ、前記底部に凹凸状の放熱部を設け、更に、前記函体内に隔壁を設け、前記函体の後端部に伝熱媒体供給口を設けると共に、前記函体の側方に伝熱媒体排出口を設けたことを特徴とするロール温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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