説明

ロール状媒体保持装置

【課題】簡易な方法でロール状媒体に取り付けることができ、かつ取り付け後にはロール状媒体を安定して保持する。
【解決手段】ロール状媒体保持装置のフランジ22は、ロール状媒体の中空軸部4aに挿入される内筒3を備える固定フランジ部材7と、フランジの外周の一部を構成する周縁部19を備え固定フランジ部材7に対して相対運動可能な可動フランジ部材5と、に分割されている。可動フランジ部材5は、内筒3の中心軸Xを含むいずれかの平面内で内筒の半径方向に測った中心軸Xと周縁部19との間の最大距離Yが、フランジが装着されるロール状媒体の半径rより小さくなる第1の状態と、固定フランジ部材7と可動フランジ部材5とが同一平面にあるときのフランジ22の外周と内筒3の中心軸Xとの間の内筒の半径方向における最小距離Zが、フランジ22が装着されるロール状媒体4の半径rより大きい第2の状態と、をとるように動くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール状媒体保持装置に関し、特に、インクジェットプリンタ等の画像形成装置の紙送り機構に装着可能なロール状媒体保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にロール紙をプリンタにセットする場合、ロール紙の側端部にフランジを取り付ける。フランジは、ロール紙をプリンタ本体に給紙する際にロール紙が大きく斜行することを防止し、あるいはロール紙をプリンタ本体から取り外す際に巻き戻しを正確に行う上で役に立つ。従って、フランジはロール紙の最大径より大きいことが望ましい。しかし、机上にロール紙を置いてフランジをセットする際にはフランジが机に当たってしまう。
【0003】
具体的には、図8に示すように、机17上にロール紙4を置いたまま、フランジ7をロール紙4にセットしようとすると、フランジ7の下端が机17に当たってしまう。このためロール紙4を持ち上げて片側ずつフランジ7をセットしなくてはならない。このようなセット方法では、特にロール紙が光沢紙である場合に、ロール紙に指紋が付着したり、指紋の付着を防止するために手袋を着用しなければならない、といった不便が生じる。
【0004】
この問題を解決する方法の一つとして、ロール紙を中空に浮かせた状態でフランジをセットする方法が知られている。例えば特許文献1には、ベルトでロール紙を中空に浮かせる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−68537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、そのための専用の設備が必要となる。プリンタ(特許文献1では複写機3)内に専用のスペースが必要となる場合もあり、プリンタ自体のコストや大きさに影響を与える。
【0007】
より簡便な方法として、図9に示すように、机17の上にリブ28を配置して、リブ28の上にロール紙4を仮置きすることが考えられる。しかし、図9(a)に示すようにリブ28の間隔が小さいと、リブ28がフランジと干渉しやすくなり、図9(b)に示すようにリブ28の間隔が大きいと、リブ28がロール紙4の側端部から離れている場合にリブ28上でロール紙4のバランスを取りにくい。従って、いずれの場合も、フランジをロール紙にセットしにくくなる可能性がある。
【0008】
本発明は、簡易な方法でロール状媒体に取り付けることができ、かつ取り付け後にはロール状媒体を安定して保持することができる、ロール状媒体保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロール状媒体保持装置は、ロール状媒体を保持しロール状媒体の側端面を規制するフランジを有している。フランジは、ロール状媒体の中空軸部に挿入される内筒を備える固定フランジ部材と、フランジの外周の一部を構成する周縁部を備え固定フランジ部材に対して相対運動可能な可動フランジ部材と、に分割されている。可動フランジ部材は、内筒の中心軸を含むいずれかの平面内で内筒の半径方向に測った中心軸と周縁部との間の最大距離が、フランジが装着されるロール状媒体の半径より小さくなる第1の状態と、固定フランジ部材と可動フランジ部材とが同一平面にあるときのフランジの外周と内筒の中心軸との間の内筒の半径方向における最小距離が、フランジが装着されるロール状媒体の半径より大きい第2の状態と、をとるように動くことができる。
【0010】
ロール状媒体にフランジを装着する際には、ロール状媒体とフランジを平坦面に配置する。第1の状態では、内筒の中心軸を含むいずれかの平面内で内筒の半径方向に測った中心軸と周縁部との間の最大距離が、フランジが装着されるロール状媒体の半径より小さくなる。従って、当該平面内で可動フランジ部材が平坦面と接触するように可動フランジ部材を配置し、可動フランジ部材を第1の状態とすれば、周縁部が平坦面と接触することはない。従って、ロール状媒体を平坦面上に配置したままフランジをロール状媒体に装着することができる。装着が終了すると、可動フランジ部材を第2の状態をとるように動かす。フランジの外周と内筒の中心軸との間の内筒の半径方向における最小距離が、フランジが装着されるロール状媒体の半径より大きいため、ロール状媒体の側端部の全面がフランジに対向し、ロール状媒体がフランジに安定して保持される。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、簡易な方法でロール状媒体に取り付けることができ、かつ取り付け後にはロール状媒体を安定して保持することができる、ロール状媒体保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロール状媒体保持装置の斜視図である。
【図2】図1に示すロール状媒体保持装置のロック解除状態の斜視図である。
【図3】図1に示すロール状媒体保持装置の第1の状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示すロール状媒体保持装置の第2の状態を示す斜視図である。
【図5】ロール紙にロール状媒体保持装置をセットする手順を示す手順図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るロール状媒体保持装置の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るロール状媒体保持装置の斜視図である。
【図8】従来のロール状媒体保持装置の課題を示す図である。
【図9】従来のロール状媒体保持装置の課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るロール状媒体保持装置21の斜視図であり、ロール状媒体であるロール紙4がロール状媒体保持装置21にロックされた状態を示している。ロール状媒体保持装置21は、ロール紙4を保持しロール紙4の側端面4b(図5参照)を規制するフランジ22と、フランジ22をロール紙4に対してロックするロックレバー1と、を有している。フランジ22は、固定フランジ部材7と、固定フランジ部材7に対して相対運動可能、具体的には上下方向Pにスライド移動可能な可動フランジ部材5と、に分割されている。固定フランジ部材7は、ロール紙4の中空軸部4a(図5参照)に挿入される内筒3と、内筒3に設けられた紙管ストッパ2と、を備えている。
【0014】
ロックレバー1は、軸Dを中心として固定フランジ部材7に対して回動することができる。ロックレバー1を図示のように固定フランジ部材7側に倒すと、固定フランジ部材7に設けられた内筒3の内部から、内筒3の外部に紙管ストッパ2が突出する。紙管ストッパ2はロール紙4の中空軸部4aを内部から押圧し、ロール紙4の中空軸部4aに係合することによって、固定フランジ部材7をロール紙4に固定する。同時に、ロックレバー1に設けられた爪6が可動フランジ部材5の上端を規制することで、可動フランジ部材5は固定フランジ部材7に対してスライドできないように固定される。
【0015】
固定フランジ部材7は、ロール紙4と対向する面の反対側の面に、当該反対側の面から垂直に延びるフランジ軸10を備えている。フランジ軸10の先端部にはフランジ軸ギア9が取り付けてある。フランジ軸ギア9の内部にはワンウェイトルクリミッタ(図示せず)が設けられており、フランジ軸ギア9はロール紙4に対して、図1における時計回りの方向には抵抗無く回り、反時計回りの方向にはトルクを発生させながら回る。このため、プリンタ本体に設けられた本体側駆動ギア8を固定した状態で、プリンタ本体に設けられた不図示のロール紙搬送ローラでロール紙4を方向Aに引っ張ると、ロール紙4は一定のトルクでバックテンションをかけられながらプリンタ本体に給紙される。
【0016】
ロール紙搬送ローラを逆転させてロール紙4を給紙方向と逆方向に搬送し、本体側駆動ギア8を反時計周りに駆動すると、ロール紙4は時計方向に回転しながら巻き取られる。紙詰まりや本体の故障などが発生した場合には、本体側駆動ギア8が動かなくなる可能性がある。この場合は、ユーザーの手動操作にて、ロール紙搬送ローラがロール紙4に接触しない状態とする。ユーザーは、固定フランジ部材7または可動フランジ部材5を持ってロール紙4を抵抗無く時計方向に回転させて巻き取ることができ、紙詰まり処理やエラー解除操作を容易に行うことができる。
【0017】
図2は、図1に示すロール状媒体保持装置21のロック解除状態の斜視図である。ロックレバー1を図示のように起こした状態にすると、内筒3の内側に紙管ストッパ2が収納される。紙管ストッパ2が内筒3の内側に収納されることでロール紙4に対する押圧も解除され、固定フランジ部材7をロール紙4に対して抜き差し自在な状態となる。同時に、爪6による可動フランジ部材5の規制が解除され、可動フランジ部材5は固定フランジ部材7に対して上下方向Pに自在に動くことが可能となる。ロール状媒体保持装置21をロール紙4に抜き差しする際には、ロック解除状態とする。固定フランジ部材7と可動フランジ部材5の間には、可動フランジ部拡張バネ11aが設けられている。
【0018】
可動フランジ部材5は、第1の状態と第2の状態をとるように動くことができる。図3,4は、図1に示すロール状媒体保持装置21の内部構造を示す斜視図であり、それぞれ第2の状態と第1の状態の一例を示している。これらの図は、図を見やすくするために、ロックレバー1を外した状態で示している。図3に示す第2の状態は、可動フランジ部材5に外力が加えられていない状態、またはロックレバー1が倒されてロック固定状態となっている場合に得られる。ロック固定状態では、爪6が可動フランジ部材5を第2の状態で固定するロック機構として機能する。図4に示す第1の状態は、ロックレバー1が起こされてロックが解除され、かつ可動フランジ部材5が固定フランジ部材7に対して相対的に上方に移動したときに得られる。
【0019】
図3に示す第2の状態では、可動フランジ部材5は可動フランジ部拡張バネ11aの弾性力により、下方に押されている。可動フランジ部拡張バネ11aは、可動フランジ部材5を第1の状態から第2の状態にむけて付勢する弾性体である。
【0020】
図4(b)に示すように、可動フランジ部材5は、内筒3の中心軸Xと直交する方向に、固定フランジ部材7に対して並進移動可能である。図4(b)は、図4(a)の方向Fから見た、固定フランジ部材7に対する可動フランジ部材5の相対移動の態様を模式的に示している。より詳細には、可動フランジ部材5は、固定フランジ部材7に設けられた溝12に沿って上下方向Pに動くことが可能である。溝12は下端部付近では、ロール紙4に近づく方向に斜めに形成されている。このため溝12の下端部付近では、可動フランジ部材5が固定フランジ部材7に対して相対的に上方に移動する際、ロール紙4から遠ざかる方向にも移動し、固定フランジ部材7の厚み分を当該方向に退避することができる。これによって、第1の状態では、可動フランジ部材5は固定フランジ部材7と異なる面上に位置する。より具体的には、可動フランジ部材5はロール紙4からみて固定フランジ部材7の裏側の位置で固定フランジ部材7と重なっている。
【0021】
可動フランジ部材5が固定フランジ部材7に対して相対的に下方に移動して第2の状態になると、ロール紙4に近づく方向にも移動し、可動フランジ部材5は固定フランジ部材7と同一平面上に位置する。この結果、第2の状態では、可動フランジ部材5はロール紙4の側端部4bに圧接する。このように、溝12は、可動フランジ部材5を内筒3の中心軸Xと平行な方向に案内する案内部材として機能する。
【0022】
次に、ロール紙4にロール状媒体保持装置21をセットする手順について、図5を参照して説明する。まず、図5(a)に示すように、机17上にロール紙4を置き、可動フランジ部材5の下端が机17の表面に接触するようにフランジ22を机上にセットする。可動フランジ部材5は、可動フランジ部拡張バネ11aの作用によって、第2の状態(図3参照)にある。
【0023】
次に、フランジ22を机17に対して押し付け、可動フランジ部拡張バネ11aを縮める。具体的には図5(b)に示すように、固定フランジ部材7を下方に押し付けることで、固定フランジ部材7を下方に移動させる(すなわち、可動フランジ部材5を固定フランジ部材7に対して相対的に上方に移動させる)。図3,4に示すように、可動フランジ部材5は、フランジ中心軸10を受け入れる凹部18を備えており、フランジ中心軸10が固定フランジ部材7の下降を妨害することはない。また、溝12の作用によって、可動フランジ部材5がロール紙4から見て固定フランジ部材7の裏側に退避するため、可動フランジ部材5が固定フランジ部材7の下降を妨害することもない。
【0024】
フランジ中心軸10が凹部18の下端に到達すると(または、可動フランジ部拡張バネ11aが縮小可能な最大量まで縮小すると)固定フランジ部材7は、それ以上下降することができなくなる。このようにして、可動フランジ部材5は図5(b)に示す第1の状態(図4参照)にされる。図2に示すように、可動フランジ部材5はフランジ22の外周23の一部を構成する周縁部19を備えている。第1の状態では、内筒3の中心軸Xを含むいずれかの平面内で内筒3の半径方向に測った中心軸Xと周縁部19との間の最大距離Yが、フランジ7が装着されるシート4の半径rより小さくなっている。本実施形態では、「いずれかの平面」は例えば、図4(b)に示す、紙面と直交方向に広がる平面P1であり、最大距離Yは、任意の一つの平面においては、周縁部19の幅方向のどの点に対しても一定値となる。本実施形態では、この平面は可動フランジ部材5の周縁部19のほぼ中央部を通る線である。しかし、この平面は可動フランジ部材5の周縁部19のどの点で得られても構わない。
【0025】
次に、図5(c)に示すように、固定フランジ部材7を上方に持ち上げながら、内筒3の中心軸Xとロール紙4の中空軸部4aの中心とが一致するように、固定フランジ部材7の位置を調整する。可動フランジ部拡張バネ11aの作用によって、固定フランジ部材7には上方を向く付勢力が作用しているため、ユーザーは固定フランジ部材7を押さえつけている力を緩めるだけでよい。内筒3の中心軸Xとロール紙4の中空軸部4aの中心とが一致したら、その状態でフランジ22を横に滑らせ、内筒3をロール紙4の中空軸部4aに挿入する。
【0026】
その後、図5(d)に示すように、ロール紙4及びフランジ22を持ち上げ、机17から離すと、可動フランジ部拡張バネ11aの作用によって、可動フランジ部材5が下方に移動する。この際、可動フランジ部材5は溝12によって案内され、固定フランジ部材7と同一平面上に復帰する。固定フランジ部材7と可動フランジ部材5とによって定まるフランジ22の外周23と内筒3の中心軸Xとの間の内筒3の半径方向における最小距離Zは、フランジ22が装着されるロール紙4の半径rより大きくなっている。その後、ロックレバー1を固定フランジ部材7側に倒し、爪6で可動フランジ部材5の上端を規制し、可動フランジ部材5を固定フランジ部材7に対して固定する。
【0027】
(第2の実施形態)
図6(a)は、本発明の第2の実施形態に係るロール状媒体保持装置21の斜視図である。図6(a)は、図を見やすくするために、ロックレバー1を外した状態で示している。図6(b)は、図6(a)の方向Fから見た、固定フランジ部材7に対する可動フランジ部材5の相対移動の態様を模式的に示している。本実施形態では、可動フランジ部材5は、内筒3の中心軸Xと直交する軸Cの周りを固定フランジ部材7に対して回動可能である。可動フランジ部材5は可動フランジ部拡張バネ11bの弾性力によって矢印Bの方向に押されている。外力が加えられていない場合は、可動フランジ部材5は固定フランジ部材7と同一平面上に位置するまで矢印Bの方向に回動し、ロール紙4の側端面4bに圧接する。
【0028】
ロール状媒体保持装置21をロール紙4にセットするときは、図5(a)に示したのと同様に固定フランジ部材7を下方に押し付ける。可動フランジ部材5には矢印Bと逆方向の外力が加えられ、矢印Bと逆方向に回転する。可動フランジ部材5が矢印Bと逆方向に最大に回転したときには、内筒3の中心軸Xを含むいずれかの平面内で内筒3の半径方向に測った中心軸Xと周縁部19との間の最大距離Yが、フランジ22が装着されるロール紙4の半径rより小さくなる。本実施形態では、「いずれかの平面」は例えば、図6(b)に示す、紙面と直交方向に広がる平面P2である。ここで、最大距離は図6(b)に示すように、可動フランジ部材5の上側の点5aではなく下側の点5bで得られる。このようにして、本実施形態でも図5(b)に示す状態を得ることができ、以下、図5(c),(d)に示す手順で、ロール紙4を机上に配置したままフランジ22をロール紙4に装着することができる。ロックレバー、紙管ストッパ、本体側駆動ギア、フランジ軸ギアの動作については第1の実施形態と同じである。
【0029】
(第3の実施形態)
図7(a)は、本発明の第3の実施形態に係るロール状媒体保持装置21の斜視図である。図7(a)は、図を見やすくするために、ロックレバー1を外した状態で示している。図7(b)は、図7(a)の方向Fから見た、固定フランジ部材7に対する可動フランジ部材5の相対移動の態様を模式的に示している。本実施形態では、可動フランジ部材5は、固定フランジ部材7との接続点20を通り内筒3の中心軸Xと平行な軸Eの周りを、固定フランジ部材7に対して回動可能である。可動フランジ部材5の回動運動を可能とするため、接続点20は1箇所だけ設けられている。可動フランジ部材5と固定フランジ部材7の接続点20は内筒3の中心軸Xと平行な方向に余裕を持たせてあり、可動フランジ部材5は軸Eに平行に移動することもできる。固定フランジ部材7と可動フランジ部材5の接続点20には軸バネ16が設けられ、可動フランジ部材5からロール紙の側端面4bを向く方向に、可動フランジ部材5に付勢力を加えている。
【0030】
可動フランジ部材5は可動フランジ部拡張バネ11cの弾性力により矢印Gの方向に付勢されており、外力が加えられていない場合は、可動フランジ部材5は矢印Gの方向に回動する。具体的には、固定フランジ部材7のテーパ部13と可動フランジ部のテーパ部15が接する位置まで可動フランジ部材5が回転し、さらに可動フランジ部材5が可動フランジ部拡張バネ11cによってG方向に押される。可動フランジ部材5のテーパ部15は固定フランジ部材7のテーパ部13に沿ってロール紙4に近づく方向に移動し、ロール紙4の側端面4bに圧接する。
【0031】
ロール状媒体保持装置21をロール紙4にセットするときは、図5(a)に示したのと同様に固定フランジ部材7を下方に押し付ける。可動フランジ部材5には矢印Gと逆方向の外力が加えられ、矢印Gと逆方向に回転する。同時に、固定フランジ部材7のテーパ部14に沿って、可動フランジ部材5がロール紙の側端面4bから離れる方向に固定フランジ部材7の厚み分だけ移動する。可動フランジ部材5が矢印Gと逆方向に最大に回転したときには、内筒3の中心軸Xを含むいずれかの平面内で内筒3の半径方向に測った中心軸Xと周縁部19との間の最大距離Yが、フランジ22が装着されるロール紙4の半径rより小さくなる。本実施形態では、「いずれかの平面」は例えば、図7(b)に示す、紙面と直交方向に広がる平面P3であり、最大距離Yは、任意の一つの平面においては、周縁部19の幅方向のどの点に対しても一定値となる。本実施形態でも図5(b)に示す状態を得ることができ、以下、図5(c),(d)に示す手順で、ロール紙4を机上に配置したままフランジ22をロール紙4に装着することができる。ロックレバー、紙管ストッパ、本体側駆動ギア、フランジ軸ギアの動作については第1の実施形態と同じである。
【0032】
以上説明したように、本発明においては、分割構造のフランジの分割された各部を並進運動または回動によって上下方向に相対移動させている。このため、リブやベルトなどの構造物を利用することなく、一般的に用いられる机などの任意の平坦面を利用するだけで、ロール状媒体保持装置をロール状媒体にセットすることができる。ロール状媒体の側端部を片側ずつ持ち上げてロール状媒体保持装置をセットする必要が無いので、指紋の付着や手袋の着用などの面倒を生じない。しかも、分割構造のフランジは、ロール状媒体にセットされた後は元の形状(第2の状態)に復帰するため、従来のロール状媒体保持装置と同様に、ロール状媒体を安定して保持できる。従って、ロール状媒体がプリンタ本体に給紙される際に大きく斜行する現象を防止し、ロール状媒体をプリンタ本体から取り外す際の巻き戻しを正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
3 内筒
4 ロール紙(ロール状媒体)
5 可動フランジ部材
7 固定フランジ部材
22 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状媒体を保持し前記ロール状媒体の側端面を規制するフランジを有するロール状媒体保持装置であって、前記フランジは、前記ロール状媒体の中空軸部に挿入される内筒を備える固定フランジ部材と、前記フランジの外周の一部を構成する周縁部を備え前記固定フランジ部材に対して相対運動可能な可動フランジ部材と、に分割されており、
前記可動フランジ部材は、前記内筒の中心軸を含むいずれかの平面内で前記内筒の半径方向に測った前記中心軸と前記周縁部との間の最大距離が、前記フランジが装着される前記ロール状媒体の半径より小さくなる第1の状態と、前記固定フランジ部材と前記可動フランジ部材とが同一平面にあるときの前記フランジの前記外周と前記内筒の前記中心軸との間の前記内筒の半径方向における最小距離が、前記フランジが装着される前記ロール状媒体の前記半径より大きい第2の状態と、をとるように動くことができる、ロール状媒体保持装置。
【請求項2】
前記可動フランジ部材は、前記内筒の中心軸と直交する方向に、前記固定フランジ部材に対して並進移動可能である、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記可動フランジ部材は、前記内筒の中心軸と平行な軸の周りを、前記固定フランジ部材に対して回動可能である、請求項1に記載の保持装置
【請求項4】
前記可動フランジ部材が前記第1の状態では前記固定フランジ部材と異なる面上に位置し、前記第2の状態では前記同一平面上に位置するように、前記可動フランジ部材を前記内筒の中心軸と平行な方向に案内する案内部材を有する、請求項2または3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記可動フランジ部材は、前記内筒の中心軸と直交する軸の周りを前記固定フランジ部材に対して回動可能である、請求項1に記載の保持装置。
【請求項6】
前記可動フランジ部材を前記第1の状態から前記第2の状態にむけて付勢する弾性体を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項7】
前記可動フランジ部材を前記第2の状態で固定するロック機構を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112475(P2013−112475A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260215(P2011−260215)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】