説明

ロール網戸

【課題】 構造の簡素化、部品点数及びコストの低減、意匠性の向上が図れるロール網戸を提供する。
【解決手段】 建物の開口の一側部に設けられ網体2を巻取り方向に付勢された巻取軸3に巻取って収納する網体収納部4と、該網体収納部4から引き出された網体2の端部に設けられた可動框5と、前記開口の上部と下部に設けられ可動框5の両端部をスライド可能に案内するガイドレール6,7と、可動框5の両端部に設けられ各端部から突出する方向へ付勢された制動部材8,8を前記ガイドレール6,7に押し当てて可動框5を停止状態に保持する停止機構9と、前記可動框5の略中央部に設けられ回動操作により連動されて前記制動部材8,8をガイドレール6,7から引き離して可動框5の停止状態を解除する操作部10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール網戸に係り、特に可動框を停止させる構造を改良したロール網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロール網戸としては、例えば特開2001−207755号公報に記載されているものが知られている。このロール網戸は、網体を巻取り方向に付勢された巻取軸に巻き取って収納した収納ケースを可動框として開口部上下枠の上下枠レール間に横引きスライド可能に設け、収納ケースから引き出された網体の一端を開口部縦枠に固定し、収納ケース内に、駆動ハンドルの操作により上下枠レールを挟持又は開放することで収納ケースを左右方向へのスライド及び任意の位置での静止固定を自在とする収納ケース移動停止安全機構を設けて構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−207755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ロール網戸においては、収納ケース移動停止安全機構が駆動ハンドルの操作による解除方向(上下方向)と、上下枠レールを挟持する保持方向(室内外方向)とが異なり、複雑な構造になっているため、部品点数の増加及びコストの上昇を余儀なくされる問題がある。また、収納ケース自体を可動框としているため、可動框が太くなってしまうと共に、その上下端部も網体の巻取り構造、調整機構、停止機構等が組込まれて大きくなってしまい、意匠性に欠ける。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、構造の簡素化、部品点数及びコストの低減、意匠性の向上が図れるロール網戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の開口の一側部に設けられ網体を巻取り方向に付勢された巻取軸に巻取って収納する網体収納部と、該網体収納部から引き出された網体の端部に設けられた可動框と、前記開口の上部と下部に設けられ可動框の両端部をスライド可能に案内するガイドレールと、可動框の両端部に設けられ各端部から突出する方向へ付勢された制動部材を前記ガイドレールに押し当てて突っ張ることで可動框を停止状態に保持する停止機構と、前記可動框の略中央部に設けられ回動操作により連動されて前記制動部材をガイドレールから引き離して可動框の停止状態を解除する操作部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建物の開口の一側部に設けられ網体を巻取り方向に付勢された巻取軸に巻取って収納する網体収納部と、該網体収納部から引き出された網体の端部に設けられた可動框と、前記開口の上部と下部に設けられ可動框の両端部をスライド可能に案内するガイドレールと、可動框の両端部に設けられ各端部から突出する方向へ付勢された制動部材を前記ガイドレールに押し当てて突っ張ることで可動框を停止状態に保持する停止機構と、前記可動框の略中央部に設けられ回動操作により連動されて前記制動部材をガイドレールから引き離して可動框の停止状態を解除する操作部とを備えているため、構造の簡素化、部品点数及びコストの低減、意匠性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を基に詳述する。図1は本発明の実施の形態であるロール網戸を概略的に示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、図2は図1のB−B線断面図、図3は可動框の停止機構の一例を示す分解斜視図、図4は可動框の縦断面図、図5は停止機構の動作を示す図で、(a)は保持状態の断面図、(b)は解除状態の断面図である。
【0009】
これらの図において、1は建物の開口に直接又は窓枠(サッシ枠)を介して取付けられるロール網戸で、このロール網戸1は、建物の開口(図示省略)の一側部(例えば縦枠)に設けられ、網体2を巻取り方向に付勢された巻取軸3に巻取って収納する網体収納部4と、該網体収納部4から引き出された網体2の端部に設けられた可動框5と、前記開口の上部と下部に設けられ、可動框5の両端部を左右方向にスライド可能に案内するガイドレール6,7と、可動框5の両端部に設けられ、各端部から突出する方向へ付勢された制動部材8,8を前記ガイドレール6,7に押し当てて突っ張ることで可動框5を停止状態に保持する停止機構9と、前記可動框5の略中央部に設けられ、回動操作により連動されて前記制動部材8,8をガイドレール6,7から引き離して可動框5の停止状態(保持状態)を解除する操作部10とを備えている。
【0010】
図2は片引き窓11にロール網戸1を取付けた一例を示している。この片引き窓11は、上枠(図示省略)、下枠12b及び左右の縦枠12c,12dからなる窓枠(サッシ枠ともいう)12と、該窓枠12内の片側に設けられた嵌め殺し部(フィックスともいう)13と、窓枠12内にスライド開閉可能に設けられた片引き障子14とを備えている。この片引き窓11における嵌め殺し部13とは反対側の縦枠12cと、開放された片引き障子14の戸先部(戸先框)との間を遮蔽するために、ロール網戸1が取付けられている。
【0011】
前記網体収納部4は、例えば略角柱状で内部が中空のケース(収納部本体)4aからなり、ケース4a内の両端部には巻取軸3の両端部を回転可能に支持する軸受が設けられ、ケース4a内の少なくとも一端には巻取軸3に巻取り方向の付勢力を付与する付勢手段であるバネと、そのバネ力等を調整する調整機構が設けられている(図示省略)。ケース4aには網体21を引き出すためのスリット15が設けられている。図2の図示例では、縦枠12cの内側面にケース4aが設けられている。また、上下のガイドレール6,7は、窓枠12の上枠及び下枠12bに設けられている。ロール網戸20の可動框23には、片引き障子4の戸先部の室内面との隙間を塞いで虫の侵入を防ぐためのヒレ状の縦虫除け部材16が設けられていることが好ましい。
【0012】
上部のガイドレール6は横断面逆U字状で、その両側下縁部が相対向して接近して幅の狭いスリット6aを形成している。下部のガイドレール7は横断面U字状で、その両側上縁部が相対向して接近して幅の狭いスリット7aを形成している。
【0013】
上下のガイドレール6,7内には網体2の上辺と下辺を案内する上下のインナーレール17,18がそれぞれ上下移動可能に収容されて設けられている。前記網体2の上辺と下辺には例えばバンクテープを縫い付けることにより横断面方形ないし略円形の縁部19,19が長手方向に沿って設けられ、上下のインナーレール17,18にはその縁部19,19を長手方向に沿ってスライド可能に支持するガイド溝17a,18aが設けられている。縁部19は網体2と一体に屈曲し得る弾性材により形成されている。インナーレール17,18は、例えば合成樹脂製又はアルミ製の形材からなっている。
【0014】
前記ロール網戸1の可動框5は、例えばアルミ押出形材製であり、その長手方向の上端部と下端部には、前記上下のガイドレール6,7のスリット6a,7aに沿ってスライド可能に係合する横断面略T字状の係合部20aを有する端部ピース(端部部材)20が設けられている。端部ピース20は、室内外方向に分解可能な合成樹脂製のケース20bとカバー20cからなり、端部ピース20内に制動部材(ストッパー軸)8が所定の範囲で上下移動可能に支持されている。制動部材8を所定の範囲で上下移動可能とするため及び制動部材8の軸回りの回転を防止するために、制動部材8には軸方向に長い長穴21が設けられ、ケース20cにはその長穴に挿通されて制動部材8の上下移動を所定の範囲に規制する規制軸22が突設されている。この規制軸22の端部には制動部材8の横振れを規制するためのネジ23が螺着されている。
【0015】
前記端部ピース20には制動部材8を突出させる方向(ガイドレール6,7に押し当てる方向)へ付勢する付勢手段である圧縮バネ24が設けられている。上部の制動部材8は上部のガイドレール6の下面に押し当てられ、下部の制動部材8は下部のガイドレール7内の下部のインナーレール18の上面に押し当てられている。下部の制動部材8を下部のガイドレール7の上面でなく下部のガイドレール7内のインナーレール18の上面に押し当てるのは、押し当て面が擦れたり変色しても見えにくくするためである。上部の制動部材8を上部のインナーレール17の下面に押し当てないのは、もし上部の制動部材8を上部のインナーレール17の下面に押し当てると、重力で降下しているインナーレール17を押し上げてしまい制動効果が得にくくなるためである。制動効果を上げるために、制動部材8の先端部には摩擦抵抗の大きい例えばゴム等の制動片25が取付けられていることが好ましい。
【0016】
前記操作部10は、回動可能な操作レバー26と、該操作レバー26により回動される回動ピース27と、該回動ピース27によって互いに反対の上下方向に操作される一組のスライドピース28,28と、各スライドピース28,28と制動部材8,8を連結する連動部材(例えば連動棒)29,29とを備えている。具体的には、操作部10は可動框5の室内面に取付けられる合成樹脂製のケース部30を有し、このケース部30に、操作レバー26の支軸26aに嵌合されて一体に回動する回動ピース27と、スライドピース28,28と、操作レバー26を図1の(a)に仮想線で示す操作位置から図1の(b)に実線で示す非操作位置(待機位置)に復帰させる付勢手段である復帰バネ31とが設けられている。ケース部30の裏面にはプレート32がネジ33で固定され、このプレート32の軸穴34に対して前記操作レバー26の支軸26aがワッシャー35及びネジ36により回動可能に支持されている。
【0017】
操作性の向上を図るために、操作レバー26の近傍には固定レバー37が設けられていることが好ましい。図5の(b)に示すように片手で操作レバー26と固定レバー37を摘んで操作レバー26を下方へ回動操作することにより停止状態を解除でき、この解除状態で可動框5を左右方向にスライド操作(網戸を開閉操作)することができ、図5の(a)に示すように操作レバー26を解放して非操作位置に復帰させることにより停止機構9の制動部材8を突出作動させて停止状態(保持状態)にすることができるようになっている。前記スライドピース28,28と連動部材29,29の連結部には網戸停止状態で初期遊びを有する構造、例えばスライドピース28に突設された突軸28aに対し、連動部材29には突軸28aが所定の遊びを持って嵌合する長穴状の係合穴38が設けられ、これにより上下枠ないし上下のガイドレール6,7の施工のばらつきを吸収できるようになっている。前記プレート32には突軸28aを移動可能に挿通する切欠部39が設けられ、可動框5の室内面には突軸28aを移動可能に挿入する開口部40が設けられている。
【0018】
以上の構成からなるロール網戸1によれば、建物の開口の一側部に設けられ、網体2を巻取り方向に付勢された巻取軸3に巻取って収納する網体収納部4と、該網体収納部4から引き出された網体2の端部に設けられた可動框5と、前記開口の上部と下部に設けられ可動框5の両端部をスライド可能に案内するガイドレール6,7と、可動框5の両端部に設けられ、各端部から突出する方向へ付勢された制動部材8,8を前記上下のガイドレール6,7の対向面に押し当ててその突っ張り作用で可動框5を停止状態に保持する停止機構9と、前記可動框5の略中央部に設けられ、回動操作により連動されて前記制動部材8,8をガイドレール6,7から引き離して可動框5の停止状態を解除する操作部10とを備えているため、構造の簡素化、部品点数及びコストの低減、意匠性の向上が図れる。
【0019】
すなわち、このロール網戸1においては、操作部10の操作により停止機構9を解除する解除方向(上下方向)と、停止機構9の制動部材8,8を上下のガイドレール6,7に押し当てて保持する保持方向(上下方向)とが同一である(統一されている)ため、構造の簡素化が図れ、部品点数及びコストの低減が図れる。また、網体収納部4を可動框5に設けるのではなく開口一側部に配置したので、可動框5を細く(スリム化)することができると共に、可動框5の両端部も停止機構9の制動部材8を突っ張り方式にすることより簡素化して小型化でき、意匠性の向上が図れる。
【0020】
前記上下のガイドレール6,7には網体2の両側縁部19,19を案内するインナーレール17,18が上下移動可能に設けられているため、網体2が風等に煽られてガイドレール6,7から外れて隙間が発生するのを防止することができる。また、上部の制動部材8は上部のガイドレール6の下面に押し当てられるため、重力で降下しているインナーレール17の下面に押し当てるよりも突っ張り力(制動力ないし保持力)を効かせることができ、下部の制動部材8は下部のインナーレール18の上面に押し当てられるため、下部のガイドレール7の上面に押し当てる場合よりも押し当て面が擦れたり変色しても見えにくくすることができ、意匠性の向上が図れる。
【0021】
可動框5の両端部には該両端部を上下のガイドレール6,7にスライド可能に係合する係合部20aを有する端部ピース(端部部材)20,20が設けられ、該端部ピース20,20には制動部材8,8が上下移動可能に設けられていると共に、該制動部材8,8をガイドレール6,7に押し当てる方向に付勢する付勢手段である圧縮バネ24,24が設けられているため、可動框5の両端部に停止機構9を容易に組込むことができ、構造の簡素化が図れる。
【0022】
操作部10は、回動可能な操作レバー26と、該操作レバー26によって回動される回動ピース27と、該回動ピース27によって互いに反対の上下方向に操作される一組のスライドピース28,28と、各スライドピース28,28と制動部材8,8を連結する連動部材29,29とを備えているため、簡単な構成で解除操作力を停止機構9の制動部材8に伝えることができる。また、操作レバー26の近傍に固定レバー37が設けられているため、操作性の向上が図れる。スライドピース28と連動部材29の連結部が網戸停止状態で初期遊びを有する構造とされているため、上下枠ないしガイドレール6,7の施工のばらつきを吸収できる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態ないし実施例を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態ないし実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、本発明のロール網戸は、窓枠内の中央部に嵌め殺し部を設け、窓枠内の両袖部に片引き障子をスライド開閉可能に設けた中央嵌め殺し両袖片引き窓やその他の窓サッシにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態であるロール網戸を概略的に示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】図1のB−B線断面図である。
【図3】可動框の停止機構の一例を示す分解斜視図である。
【図4】可動框の縦断面図である。
【図5】停止機構の動作を示す図で、(a)は保持状態の断面図、(b)は解除状態の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ロール網戸
2 網体
3 巻取軸
4 網体収納部
5 可動框
6,7 ガイドレール
8 制動部材
9 停止機構
10 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口の一側部に設けられ網体を巻取り方向に付勢された巻取軸に巻取って収納する網体収納部と、該網体収納部から引き出された網体の端部に設けられた可動框と、前記開口の上部と下部に設けられ可動框の両端部をスライド可能に案内するガイドレールと、可動框の両端部に設けられ各端部から突出する方向へ付勢された制動部材を前記ガイドレールに押し当てて突っ張ることで可動框を停止状態に保持する停止機構と、前記可動框の略中央部に設けられ回動操作により連動されて前記制動部材をガイドレールから引き離して可動框の停止状態を解除する操作部とを備えたことを特徴とするロール網戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−16815(P2006−16815A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194261(P2004−194261)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】