説明

ワイヤハーネス製造補助装置及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】ワイヤハーネスの製造時の移動時間を削減して作業性を向上させるとともに、ワイヤハーネスの検査を効率的に行うことができるワイヤハーネス製造補助装置を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス製造補助装置10は、基台21と、回転テーブル22と、布線板23と、を備える。回転テーブル22は、基台21に回転可能に支持される。布線板23は、回転テーブル22に取り付けられるとともに、曲面状の作業面を有する。この作業面は、前記回転テーブル22の回転軸線22cの周囲を取り囲むようにほぼ全周に配置される。ワイヤハーネス製造補助装置10は、回転テーブル22を回転駆動するステッピングモータ31を備える。更に、ワイヤハーネス製造補助装置10は、作業面の画像を取得するために布線板23に対面して配置されるカメラ25と、カメラ25により得られた画像を解析することにより作業の異常を検知する制御装置26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを製造するための製造補助装置及びワイヤハーネスの製造方法に関するものであり、詳細には、ワイヤハーネスの布線を行う際に使用する布線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられるワイヤハーネスは、端子付き電線、ワイヤハーネスを固定するための固定部材、ワイヤハーネスをまとめるための結束具、及び絶縁テープ等、多種多様な部品によって構成されている。このようなワイヤハーネスの製造方法として、ワイヤハーネスを広げた状態で電線の布線や部品の取付けを行う方法が知られている。例えば、電線及び部品の位置を示した図面を布線板に貼り付けて、この図面に基づいてワイヤハーネスを布線板に配置する方法が知られており、この種の布線板を開示したものに特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、複数の電線からなるワイヤハーネスを該ワイヤハーネス製造用の布線板上に布線することにより、ワイヤハーネスを組み立てる組立方法を開示する。この特許文献1の組立方法において、前記布線板上には、前記ワイヤハーネスを布線する布線パターンが形成されている。前記布線パターンには、幹線部と、この幹線部から分岐した第1枝線部と、第1枝線部から分岐した第2枝線部とが設けられている。前記布線パターンの幹線部と第1枝線部と第2枝線部の色を互いに異ならせておき、前記電線は前記布線板に布線される際に幹線部と第1枝線部と第2枝線部のうち少なくとも一つの線部を通るようになっている。そして、前記電線の外表面を前記布線板に布線される際に通る線部の色に対応させて着色する。前記外表面の色に対応する色の線部に前記電線を布線して、ワイヤハーネスを布線板上に布線する。
【0004】
特許文献1は、上記の方法によって、容易にワイヤハーネスを布線板上に布線することができるとしている。
【特許文献1】特開2004−356064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両の形態は複雑化し、それに伴ってワイヤハーネスも多様化している。コンベアを用いた流れ作業でワイヤハーネスを製造する場合、製造するワイヤハーネスの種類が変わるごとにコンベア上の一連の布線板を交換しなければならないため、布線板の取替えに時間と手間が掛かってしまう。そこで、多種類のワイヤハーネス製造を効率的に行うため、単独の作業者又は作業チームごとに布線板を用意して、所謂セル生産方式でワイヤハーネスの布線及び部品の取付けを行うことがある。
【0006】
しかし、セル生産等のように1人の作業者がワイヤハーネス全体の製造に関わる割合が大きい生産方法では、作業者は、作業工程ごとに目標の作業位置まで移動しなければならない。特にワイヤハーネスの製造においては、電線の固定、部品の取付け、絶縁テープの巻付けごとに布線板の特定位置の間で移動しなければならないため、移動に作業時間がとられてしまう。この点、上記特許文献1の構成は、布線が容易にできるものの、移動時間の短縮という点で改善の余地があった。
【0007】
また、定められた仕様どおりにワイヤハーネスが完成しているかを検査するための検査方法の1つに外観検査があるが、この検査は人間の目視によって行うため、不具合を見落とすこともあった。また、製造工程が終了した後に検査によってワイヤハーネスの不具合が見つかった場合、大きな手戻りとなって、取り付けた部品を取り外す等しなければならないため、生産効率の低下の一因ともなっていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスの製造時の移動時間を削減して作業性を向上させるとともに、ワイヤハーネスの検査を効率的に行うことができるワイヤハーネス製造補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のワイヤハーネス製造補助装置が提供される。即ち、このワイヤハーネス製造補助装置は、基台と、支持体と、布線板と、を備える。前記支持体は、前記基台に回転可能に支持される。前記布線板は、前記支持体に取り付けられるとともに、少なくとも一部が曲がった作業面を有する。
【0011】
これにより、作業を行い易い位置に布線板を容易に移動させることができる。従って、作業者が作業位置まで移動しなくても良いので、移動時間を短縮して作業効率を向上させることができる。また、布線板の作業面が少なくとも一部曲がっているので、小さなスペース内で布線板を回転させることができ、コンパクトな構成を実現できる。
【0012】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、前記布線板の作業面は、前記支持体の回転軸線の周囲を取り囲むようにほぼ全周にわたって配置されることが好ましい。
【0013】
これにより、作業面積が拡大し、作業者はスペースを有効に使ってワイヤハーネスの布線等を行うことができる。また、支持体の周囲を取り囲むように布線板を配置することで、ワイヤハーネス製造補助装置の設置面積を小さくすることができる。
【0014】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、前記支持体を回転させる支持体駆動部を備えることが好ましい。
【0015】
これにより、支持体駆動部によって支持体の回転を自動的に行うことができるので、作業者の負担を更に軽減でき、ワイヤハーネスの製造作業を一層効率化できる。
【0016】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、前記支持体駆動部の運転及び停止の少なくとも何れか一方を指示するために作業者が操作することが可能な操作具を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、作業者は操作具を操作することによって所望位置に布線板を容易に移動させることができ、作業効率が一層向上する。
【0018】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このワイヤハーネス製造補助装置は、画像取得部と、異常検知部と、を備える。前記画像取得部は、前記作業面の画像を取得するために前記布線板に対面して配置される。前記異常検知部は、前記画像取得部により得られた画像を解析することによりワイヤハーネス製造作業の異常を検知する。
【0019】
これにより、布線板に取り付けられたワイヤハーネスの外観に基づいて製造工程の異常を検知することができる。また、ワイヤハーネスの製造作業を行いながら当該作業の異常を検知することができるので、異常の早期発見が容易になって手戻りを少なくでき、生産効率を向上させることができる。また、支持体が回転するので、画像取得部を移動させたり多数配置したりする必要もなく、簡素な構成でワイヤハーネス製造作業の異常を検知できる。従って、製造コストを削減するとともに、ワイヤハーネス製造補助装置の構成を簡素化できる。
【0020】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、以下の構成とすることが好ましい。ワイヤハーネス製造補助装置は、前記作業面の特定箇所の状態を取得するために、前記布線板の作業者との対面部分以外の部分に対面して配置されるセンサと、前記センサからの信号に基づいてワイヤハーネス製造作業の異常を検知する異常検知部と、を備える。
【0021】
これにより、ワイヤハーネスの製造作業を行いながらワイヤハーネス製造作業の異常を検知することができる。また、支持体が回転するので、センサを移動させたり多数配置したりする必要もなく、簡素な構成でワイヤハーネス製造作業の異常を検知できる。従って、製造コストを削減するとともに、ワイヤハーネス製造補助装置の構成を簡素化できる。
【0022】
前記のワイヤハーネス製造補助装置においては、前記異常検知部からの信号に基づいてワイヤハーネス製造作業の異常を作業者に報知するための報知部を備えることが好ましい。
【0023】
これにより、作業者はワイヤハーネス製造作業の異常発生を容易に把握し、素早く対応することができる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、以下の工程を含むワイヤハーネスの製造方法が提供される。即ち、布線工程では、少なくとも一部が曲がった作業面を備える布線板を内側の回転軸線を中心として回転させることにより、作業者の作業エリアに対面する前記作業面を変化させながら電線を布線する。組付工程では、前記布線板を前記回転軸線を中心として回転させることにより、対象箇所の電線を前記作業エリアに対面させ、当該対象箇所において電線に部品を組み付ける。
【0025】
これにより、作業者は移動することなく布線板の特定の箇所に対して電線の布線及び部品の組付けを行うことができ、作業効率が向上する。
【0026】
前記のワイヤハーネスの製造方法においては、前記作業エリアに対面していない作業面における電線の状態を取得することで、前記布線工程で電線が正常に布線されたか否かを検査する布線検査工程を含むことが好ましい。
【0027】
これにより、ワイヤハーネスの製造を行いながら、同時並行的にワイヤハーネスの検査を行うことができる。従って、異常の早期発見が容易になって手戻りを少なくできるので、製造工程全体を通した製造時間を短縮できる。
【0028】
前記のワイヤハーネスの製造方法においては、前記作業エリアに対面していない作業面における部品の状態を取得することで、前記組付工程で部品が正常に組み付けられたか否かを検査する組付検査工程を含むことが好ましい。
【0029】
これにより、異常の早期発見が容易になって手戻りを少なくできるので、製造工程全体を通した製造時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス製造補助装置10を概略的に示した斜視図である。
【0031】
図1に示すように、ワイヤハーネス製造補助装置10は、基台21と、回転テーブル(支持体)22と、布線板23と、フットスイッチ(操作具)24と、カメラ(画像取得部)25と、制御装置(異常検知部)26と、報知部としてのブザー51及びLEDランプ52と、を備えている。
【0032】
ワイヤハーネス製造補助装置10の正面側には、作業者1が各種作業をするための領域(作業エリア2)が設定されている。作業者1はこの作業エリア2に立って、前記ワイヤハーネス製造補助装置10の布線板23に対面してワイヤハーネスの製造作業を行う。なお、前記作業エリア2はワイヤハーネス製造補助装置10の周囲を取り囲むように配置されるのではなく、ワイヤハーネス製造補助装置10の一側(正面側)にのみ設置されている。
【0033】
以下、ワイヤハーネス製造補助装置10の各部について詳細に説明する。
【0034】
基台21はワイヤハーネス製造補助装置10の本体側底部に配置されており、その上面には回転テーブル22が回転可能に支持されている。また、基台21はステッピングモータ(支持体駆動部)31を内部に備えており、このステッピングモータ31の駆動軸は、適宜の減速機構を介して前記回転テーブル22に接続されている。この構成で、ステッピングモータ31が駆動されることによって、回転テーブル22を基台21に対して回転させることができる。
【0035】
回転テーブル22は円板状に形成されており、その上面に布線板23が垂直に設置されている。従って、この回転テーブル22が回転することによって布線板23が回転テーブル22と一体的に回転し、布線板23の所望位置を作業者1に対面させるように移動させることができる。
【0036】
布線板23は、全体が緩やかに曲がった曲面状(円弧面状)に形成された作業面を有している。この作業面には所定の布線パターンが設定されており、ワイヤハーネスを固定するための固定治具32がこの布線パターンに従って複数配置されている。また、ワイヤハーネスを構成する電線、部品及び絶縁テープ等は、赤色、青色、黄色、黒色、白色等の適宜の色で着色されており、この着色された色に対応付けるようにして、布線板23上での固定位置が定められている。作業者1は、この布線パターン及び設定された色に従って、ワイヤハーネスの電線、部品及び絶縁テープ等を配置する。
【0037】
回転テーブル22の回転中心(回転軸線22c)は、布線板23が有する湾曲状の作業面の内部に配置されている。また、前記作業面は、前記回転軸線22cの周囲を取り囲むようにほぼ全周にわたって配置される。これにより、ワイヤハーネス製造補助装置10を省スペース化しつつ、作業面を広く確保することができる。また、後述のワイヤハーネスの製造作業において回転テーブル22を回転させたときに作業面が殆ど途切れないので、作業効率を向上させることができる。
【0038】
また、布線板23は回転テーブル22に対し着脱可能に構成されており、異なる仕様のワイヤハーネスを製造する場合には他の布線板23に簡単に交換できるようになっている。なお、平板状に形成される作業面に全ての布線パターンが形成されるような従来の布線板を交換する場合に比べ、本実施形態の布線板23の交換作業は狭いスペース内でも容易に行うことができる。
【0039】
フットスイッチ24は、作業者1が作業を行う作業位置近傍に配置されるスイッチ式の操作具であり、後述する制御装置26に電気的に接続されている。このフットスイッチ24は、作業者1が踏むことでONするように構成されている。そして、フットスイッチ24のON状態が一定時間以上継続したことを制御装置26が検知すると、制御装置26から所定の数の駆動パルス信号がステッピングモータ31に送信され、送信されたパルス信号の分だけステッピングモータ31が駆動する。なお、フットスイッチ24のON状態が所定時間継続することを条件とするのは、作業者が不意にフットスイッチ24に触れてしまった場合に誤動作することを防ぐためである。
【0040】
カメラ25は、その撮像領域が作業者1に重ならないように、作業者1の作業位置(前記作業エリア2)を避けて布線板23に対面配置される。本実施形態のカメラ25はカラー画像を撮像可能に構成されており、固定治具32に固定される電線、部品及び絶縁テープ等の画像情報をカラーで取得することができる。なお、カメラ25の視野が狭くても布線板23の回転によって作業面の全体を捉えることができれば十分であるので、カメラ25としては安価なものを採用することができる。カメラ25は制御装置26に電気的に接続されており、取得した画像情報を制御装置26に送信することができる。
【0041】
制御装置26はプログラマブルコントローラにより構成されており、制御装置26全体を制御して各種データのやり取りや計算を行うためのCPU41と、各種の設定値等を記憶可能な記憶部42と、を備える。また、制御装置26は、カメラ25、フットスイッチ24からの信号を受信する受信部43と、ステッピングモータ31、ブザー51、LEDランプ52等、外部の装置に駆動信号等を出力するための出力部44と、を備える。なお、制御装置26としては、プログラマブルコントローラを用いることに代えて、例えばマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等を用いる構成に変更することもできる。
【0042】
前記カメラ25が取得した画像情報は、検知ポイントごとに制御装置26によって判定される。ここでいう検知ポイントとは、カメラ25が布線板23のどの固定治具32を撮像しているかを示すものであり、特定の固定治具32に対応して定められる。前記記憶部42はメモリ等からなり、この検知ポイントごとに、配置されるべき電線、部品及び絶縁テープ等の色を検知するタイミング(回転テーブル22の周回数)が、例えばテーブル形式で記憶されている。
【0043】
CPU41は、カメラ25によって取得した画像情報に基づいて色判定を行う。そして、記憶部42を参照して検知ポイントごとに判定した色を比較し、仕様どおりにワイヤハーネスの電線や部品が配置されているかを調べる。色判定の結果、仕様と異なる電線等が配置されていると判定された場合は、前記出力部44を介してブザー51及びLEDランプ52に適宜の信号を送信する。
【0044】
ブザー51及びLEDランプ52は、制御装置26の出力部44から信号を受信することにより、発音又は点灯する。これにより、作業者1は聴覚及び視覚を通じてワイヤハーネスの組立作業に異常が発生していることを把握できる。
【0045】
次に、図2及び図3を参照してカメラ25による検知方法について説明する。図2は検知ポイントごとに判定されるべき色の一例を示した表である。図3は図2で示した検知ポイントAの様子を段階的に示した模式図である。
【0046】
図2に示す例では、特定の4つの固定治具32に対応した検知ポイントA、B、C及びDのそれぞれについて、検出されるべき判定色が、回転テーブル22の周回数ごとに設定される。なお、周回数とは、回転テーブルが360°回転するごとに1回カウントされる数である。本実施形態の回転テーブル22は途中で回転方向が変わることがないので、回転テーブル22が周回を重ねるごとに作業を行い、その都度色を判定していくことで、指示手順に沿ったワイヤハーネスの製造が行われているか否かを小刻みに検査することができる。
【0047】
次に、図3を参照して、図2で示した検知ポイントAでの色判定について説明する。指示されたワイヤハーネスの製造手順に従い、図3(a)に示すように、作業者1によって固定治具32Aに赤色電線61が固定される。その後、固定治具32Aがカメラ25の位置に差し掛かると、当該固定治具32Aがカメラ25によって撮像される。カメラ25は撮像した画像情報を制御装置26へ送信し、CPU41が記憶部42を参照して判定を行う。
【0048】
なお、制御装置26は、ステッピングモータ31に送信した駆動パルス信号の数に基づいて所定の計算を行うことで、回転テーブル22の回転角度を取得可能に構成されている。これにより制御装置26は、現在の周回数が何回か、及び、どの検知ポイントがカメラ25に対面しているか等を調べることができる。
【0049】
図2に示す判定テーブルでは、検知ポイントAでは、回転テーブル22の周回数が0のときは赤色か否かを判定するように設定されている。これに従い、CPU41は画像解析を行って、当該検知ポイントAに赤色が検出されているか否かを判定する。赤色が検出された場合は、製造手順どおりの電線が配置されていることを意味するので、特に処理は行わない。一方、例えば緑色等の他の色が検出された場合は、他の色の電線が配置されている等の異常が考えられるのでNG判定となり、制御装置26はブザー51及びLEDランプ52によって作業者1に報知する。
【0050】
なお、前述の検知ポイントAでの検査と前後して、作業者1は他の場所の固定治具(例えば、検知ポイントB、C、Dに相当する固定治具)に対する組付作業を行う。このように、本実施形態では作業者1による組付工程とカメラ25による自動検査工程をその場で同時並行的に行うことができるので、高品質のワイヤハーネスを短時間で製造することができる。
【0051】
図3(a)のように赤色電線を組み付けてから回転テーブル22が1周し、再び固定治具32Aが作業者1に対面すると、作業者1はワイヤハーネスの製造手順に従い、図3(b)に示すように固定治具32Aに黄色電線62を固定する。その後、固定治具32Aがカメラ25の位置に差し掛かると、前回と同様に当該固定治具32Aがカメラ25によって撮像される。
【0052】
図2に示すように、周回数が1のときは、検知ポイントAでは黄色か否かを判定するように設定されている。また、検知ポイントAでは過去に赤色を検出したことが図2のテーブルから判るので、今回は、画像情報の解析により赤色の画素が検出されても、当該画素を除外して色を判定するようにする。これにより、赤色と黄色の混在した画像が得られた場合でも、今回組み付けられた電線の色である黄色を的確に検知することができる。色が黄色であると判定された場合、制御装置26は特に処理は行わない。黄色以外の色と判定された場合(NG判定の場合)は、制御装置26はブザー51及びLEDランプ52によって作業者1に報知する。
【0053】
図3(b)のように黄色電線を組み付けてから回転テーブル22が1周し、再び固定治具32Aが作業者1に対面すると、作業者1はワイヤハーネスの製造手順に従い、図3(c)に示すように、固定治具32Aの部分において赤色電線61及び黄色電線62を覆うように緑色の絶縁テープ63を巻き付ける。その後、固定治具32Aがカメラ25の位置に差し掛かると、当該固定治具32Aの部分がカメラ25によって撮像される。
【0054】
図2に示すように、周回数が2のときは、検知ポイントAでは緑色か否かを判定するように設定されている。また、検知ポイントAでは過去に赤色及び黄色を検出したことが図2のテーブルから判るので、今回は、赤色の画素及び黄色の画素を除外して色の判定を行う。色が緑色であると判定された場合、制御装置26は特に処理は行わない。緑色以外の色と判定された場合(NG判定の場合)は、制御装置26はブザー51及びLEDランプ52によって作業者1に報知する。
【0055】
検知ポイントB、検知ポイントC及び検知ポイントDでも同様の判定が行われ、固定治具32に固定すべき電線、部品及び絶縁テープ等が配置されているかを調べる。これによって、設定と違う色の電線、部品及び絶縁テープ等が配置されている場合を検知することができる。また、回転テーブル22の周回数とともに判定すべき色が設定されているので、細かい組付作業を行うごとに回転テーブル22を回転させるようにし、組付と検査を交互に細かく行うことができる。従って、組付ミスを早期に発見して対応することができる。
【0056】
以上の構成で、作業者1は、布線板23に設定された布線パターンに従ってワイヤハーネスの配置を行う。対面している作業面での作業が終了すると、次の目標の作業面が作業者1の正面に来るようにフットスイッチ24を操作して回転テーブル22を回転させる。また、制御装置26はカメラ25からの画像情報を検知ポイントごとに監視し、ワイヤハーネスの電線や部品等の配置が正しく行われているかを検査する。電線や部品等の配置ミスが検出された場合には、ブザー51及びLEDランプ52によって作業者1に通知される。従って、作業者1はワイヤハーネス製造作業を行いながらワイヤハーネスが正しく配置されているか否かを検査することができる。
【0057】
以上に示したように、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10は、基台21と、回転テーブル22と、布線板23と、を備える。回転テーブル22は、基台21に回転可能に支持される。布線板23は、回転テーブル22に取り付けられるとともに、全体にわたって緩やかに曲がった円弧状の作業面が形成されている。
【0058】
この構成により、作業を行い易い位置に布線板23を容易に移動させることができる。従って、作業者1が作業位置まで移動しなくても良いので、移動時間を短縮して作業効率を向上させることができる。また、布線板23の作業面が湾曲しているので、小さなスペース内で布線板23を回転させることができ、コンパクトな構成を実現できる。
【0059】
また、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10においては、前記布線板23の作業面は、前記回転テーブル22の回転軸線22cの周囲を取り囲むようにほぼ全周にわたって配置される。
【0060】
この構成により、作業面積が拡大し、作業者はスペースを有効に使ってワイヤハーネスの布線等を行うことができる。また、回転テーブル22の周囲を取り囲むように布線板23を配置することで、ワイヤハーネス製造補助装置10の設置面積を小さくすることができる。
【0061】
また、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10は、回転テーブル22を回転させるステッピングモータ31を備える。
【0062】
この構成により、ステッピングモータ31によって回転テーブル22の回転を自動的に行うことができるので、作業者1の負担を更に軽減でき、ワイヤハーネスの製造作業を一層効率化できる。
【0063】
また、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10は、ステッピングモータ31の運転及び停止を指示するために作業者1が操作することが可能なフットスイッチ24を備える。
【0064】
この構成により、作業者1はフットスイッチ24を操作することによって所望位置に布線板23を容易に移動させることができ、作業効率が一層向上する。
【0065】
また、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10は、カメラ25と、制御装置26と、を備える。前記カメラ25は、作業面の画像を取得するために布線板23に対面して配置される。制御装置26は、カメラ25により得られた画像を解析することにより、ワイヤハーネス製造作業の異常を検知する。
【0066】
この構成により、布線板23の特定の箇所(例えば、特定の固定治具32)における電線、部品及び絶縁テープ等の取付けの正否を、カメラ25から得られた画像情報に基づいて検知することができる。また、ワイヤハーネスの製造作業を行いながら、当該作業の異常をその場で同時並行的に検知することができる。従って、不具合の早期発見が容易になるので手戻りを少なくでき、取り付けた部品を多数取り外したり、製造をやり直したりすることを防止できる。この結果、製造工程全体を通した製造時間を短縮できる。また、回転テーブル22が回転するので、カメラ25を移動させたり多数配置したりする必要もなく、簡素な構成でワイヤハーネス製造作業の異常を検知できる。従って、製造コストを削減するとともに、ワイヤハーネス製造補助装置10の構成を簡素化できる。
【0067】
また、本実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10は、制御装置26からの信号に基づいてワイヤハーネス製造作業の異常を作業者1に報知するためのブザー51及びLEDランプ52を備える。
【0068】
この構成により、作業者1はワイヤハーネス製造作業の異常発生を容易に把握し、素早く対応することができる。
【0069】
また、本実施形態において、ワイヤハーネスは以下の工程によって製造されている。即ち、布線工程では、曲がった作業面を備える布線板23を内側の回転軸線22cを中心として回転させることにより、前記作業エリア2に対面する前記作業面を変化させながら電線を布線する。組付工程では、前記布線板23を前記回転軸線22cを中心として回転させることにより、対象箇所の電線を前記作業エリア2に対面させ、当該対象箇所において電線に部品を組み付ける。
【0070】
これにより、作業者は移動することなく布線板23の特定の箇所に対して電線の布線及び部品の組付けを行うことができ、作業効率が向上する。
【0071】
また、本実施形態では、前記作業エリア2に対面していない作業面における電線の状態をカメラ25により取得することで、前記布線工程で電線が正常に布線されたか否かを検査する布線検査工程を行いながら、ワイヤハーネスが製造されている。
【0072】
これにより、ワイヤハーネスの製造を行いながら、同時並行的にワイヤハーネスの検査を行うことができる。従って、異常の早期発見が容易になって手戻りを少なくできるので、製造工程全体を通した製造時間を短縮できる。
【0073】
また、本実施形態では、前記作業エリア2に対面していない作業面における部品の状態を取得することで、前記組付工程で部品が正常に組み付けられたか否かを検査する組付検査工程を行いながら、ワイヤハーネスが製造されている。
【0074】
これにより、異常の早期発見が容易になって手戻りを少なくできるので、製造工程全体を通した製造時間を短縮できる。
【0075】
なお、上記実施形態ではカメラ25によって電線、部品及び絶縁テープ等の画像を取得しているが、これに代えて、前記検知ポイントにおける色を測定する測色センサ(センサ)を設ける構成とすることもできる。この測色センサは、前記カメラ25と同様に、布線板23の作業者との対面部分以外の部分に対面して配置されることが好ましい。
【0076】
この構成により、ワイヤハーネスの製造作業を行いながらワイヤハーネス製造作業の異常を検知することができる。また、回転テーブル22が回転するので、測色センサを移動させたり多数配置したりする必要もなく、簡素な構成でワイヤハーネス製造作業の異常を検知できる。従って、製造コストを削減するとともに、ワイヤハーネス製造補助装置の構成を簡素化できる。
【0077】
なお、上記第1実施形態のワイヤハーネス製造補助装置10の構成は以下のように変更することもできる。以下に第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態について説明する。なお、これらの実施形態において前記第1実施形態と同一及び類似する構成には、図面に同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0078】
図4を参照して第2実施形態の構成について説明する。図4は第2実施形態のワイヤハーネス製造補助装置70の様子を示した平面図である。このワイヤハーネス製造補助装置70は、平面視で弓形に形成された基台71と、この基台71上に設置された円弧状のスライダ(支持体)72と、このスライダ72の上面に取り付けられる布線板73と、を備える。前記スライダ72は、基台71の周縁に設置される円弧状のレール(図略)に沿って移動可能に構成され、この構成によってスライダ72は布線板73の円弧中心を中心として所定角度の範囲で回転(回動)することができる。これにより、作業者1は作業位置を移動せずに目標の作業面を作業者の正面に移動させることができる。
【0079】
次に図5を参照して第3実施形態の構成について説明する。図5は第3実施形態のワイヤハーネス製造補助装置80の様子を示した平面図である。このワイヤハーネス製造補助装置80は、8角柱状に形成されて垂直に配置される回転柱(支持体)82と、この回転柱82を回転可能に支持する図略の基台と、前記回転柱82の側面部分に取り付けられる布線板83と、を備えている。布線板83は、8角形の角部に相当する箇所で屈曲された(曲がった)作業面を有している。
【0080】
このワイヤハーネス製造補助装置80においても、回転柱82が回転することによって、作業者1は効率的にワイヤハーネスの製造作業を行うことができる。また、8角形の角部(屈曲部分)を境に布線板83の作業面を分割することで、布線板分割体のそれぞれを平板状に形成することができるので、布線板83の製造及び保管等が容易となる。なお、回転柱は8角柱に限らず、例えば6角柱等、適宜の多角柱の形状に変更することができる。また、角柱に限らず、円柱状の回転柱として構成することができる。
【0081】
次に図6を参照して第4実施形態の構成について説明する。図6は第4実施形態のワイヤハーネス製造補助装置90の様子を示した側面図である。このワイヤハーネス製造補助装置90は、基台91と、この基台91に支持される回転ドラム(支持体)92と、を備える。基台91には支柱が固定されるとともに、この支柱の先端に、前記回転ドラム92の軸部が回転可能に支持されている。回転ドラム92は円柱状に形成されており、その軸方向が水平になるように配置されている。この回転ドラム92の周面には、曲面状(円弧面状)の作業面を有する布線板93が取り付けられている。
【0082】
この構成によっても作業者1は回転ドラム92とともに布線板93を回転させて作業面を移動させ、効率的にワイヤハーネスの製造を行うことができる。なお、円柱状の回転ドラムに代えて、例えば6角柱、8角柱等の多角柱形を有する回転ドラムに変更することができる。この場合、布線板は、当該多角柱の側面を形成するように折り曲げられた平面状のものを用いれば良い。
【0083】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0084】
上記実施形態の構成に加えて、制御装置26によってNG判定がなされた場合は、フットスイッチ24のスイッチを無効にする所謂インターロック機構を採用することもできる。これにより、ワイヤハーネスの製造において、異常をそのままにして作業を進めることを強制的に防止することができる。
【0085】
また、制御装置26によって前記NG判定がなされた場合は、自動的にステッピングモータ31を駆動して、当該NG判定に係る検知ポイント(異常検知箇所)を作業者1に対面させるように布線板23を動かす制御を行うこともできる。
【0086】
上記実施形態では、回転テーブル22を駆動させる支持体駆動部としてステッピングモータ31を用いる構成であるが、この構成に代えて、サーボモータ等適宜の駆動源を用いる構成とすることができる。また、ステッピングモータ31を省略して、作業者1がハンドルを手動で回転することにより回転テーブル22が回転する構成に変更することができる。
【0087】
上記実施形態ではステッピングモータ31が一方向にのみ回転する構成であるが、必要に応じてステッピングモータ31を逆転制御可能な構成に変更することができる。
【0088】
前記回転テーブル22にエンコーダ等の適宜の回転センサを備えて、この回転センサによって布線板23の回転位置を取得する構成に変更することができる。
【0089】
前記フットスイッチ24に代えて、例えば手や指で操作するレバーやボタン等に変更することができる。また、ブザー51を例えばベルやチャイムに変更したり、LEDランプ52を例えばパイロットランプに変更したり、ブザー51又はLEDランプ52の何れかを省略することができる。
【0090】
1台のワイヤハーネス製造補助装置につき1人が作業することに代えて、例えばワイヤハーネス製造補助装置の正面側と背面側にそれぞれ作業者が配置され、2人の作業者が協同して1つのワイヤハーネスを製造するようにすることもできる。また、回転テーブルを上下に可動させる機構を追加することもできる。これにより、布線板を上下に調整することができ、作業性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス製造補助装置の構成を概略的に示した斜視図。
【図2】検知ポイントごとに設定された判定色の一例を示した表。
【図3】カメラによる電線及び部品の検知の様子を示した模式図。
【図4】第2実施形態のワイヤハーネス製造補助装置を示した平面図。
【図5】第3実施形態のワイヤハーネス製造補助装置を示した平面図。
【図6】第4実施形態のワイヤハーネス製造補助装置を示した側面図。
【符号の説明】
【0092】
1 作業者
2 作業エリア
10 ワイヤハーネス製造補助装置
21 基台
22 回転テーブル(支持体)
22c 回転軸線
23 布線板
24 フットスイッチ(操作具)
25 カメラ(検知部)
26 制御装置(異常検知部)
31 ステッピングモータ(支持体駆動部)
51 ブザー(報知部)
52 LEDランプ(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に回転可能に支持される支持体と、
前記支持体に取り付けられるとともに、少なくとも一部が曲がった作業面を有する布線板と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記布線板の作業面は、前記支持体の回転軸線の周囲を取り囲むようにほぼ全周にわたって配置されることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記支持体を回転させる支持体駆動部を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記支持体駆動部の運転及び停止の少なくとも何れか一方を指示するために作業者が操作することが可能な操作具を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記作業面の画像を取得するために前記布線板に対面して配置される画像取得部と、
前記画像取得部により得られた画像を解析することによりワイヤハーネス製造作業の異常を検知する異常検知部と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記作業面の特定箇所の状態を取得するために、前記布線板の作業者との対面部分以外の部分に対面して配置されるセンサと、
前記センサからの信号に基づいてワイヤハーネス製造作業の異常を検知する異常検知部と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のワイヤハーネス製造補助装置であって、
前記異常検知部からの信号に基づいてワイヤハーネス製造作業の異常を作業者に報知するための報知部を備えることを特徴とするワイヤハーネス製造補助装置。
【請求項8】
少なくとも一部が曲がった作業面を備える布線板を内側の回転軸線を中心として回転させることにより、作業者の作業エリアに対面する前記作業面を変化させながら電線を布線する布線工程と、
前記布線板を前記回転軸線を中心として回転させることにより、対象箇所の電線を前記作業エリアに対面させ、当該対象箇所において電線に部品を組み付ける組付工程と、
を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記作業エリアに対面していない作業面における電線の状態を取得することで、前記布線工程で電線が正常に布線されたか否かを検査する布線検査工程を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記作業エリアに対面していない作業面における部品の状態を取得することで、前記組付工程で部品が正常に組み付けられたか否かを検査する組付検査工程を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−238699(P2009−238699A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86510(P2008−86510)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)