説明

ワイヤーラインサンプラー

【課題】振動機を使用した場合でもインナーチューブアッセンブリーが所定のセット位置から外れないようにすると共に、所定の位置にセットされたか否かを簡単・確実に確認できるようにする。
【解決手段】ロッド11を右側に動かすとラッチ9はケース14から突出せずに格納された状態となり、ロッド11を左側に動かすとラッチ9はテーパー状蟻溝22、23によってアウターチューブアッセンブリー1の内壁面の溝5に嵌まり込んでインナーチューブアッセンブリー2がアウターチューブアッセンブリー1に固定される。振動力がロッド11を右に移動させると、ラッチ9が閉じようとしてインナーチューブアッセンブリー2の固定が解除されようとするが、通水口12、15が塞がれて送水圧が上昇し、ロッド11が水圧で左側に押されて固定状態を維持するので、振動によってインナーチューブアッセンブリー2が外れることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイブレーション機の振動に対応したワイヤーラインサンプラーに関し、更に詳しくは、掘削中の振動力によるインナーチューブアッセンブリーのラッチ外れによる所定位置にセット不能状態となるのを防止し、インナーチューブアッセンブリーが所定位置にセットされたか否かを確認し、加えて良質の土壌サンプルを採取することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤーラインサンプラーのインナーチューブアッセンブリー2のアウターチューブアッセンブリー1内へのセット方法は、図6に示すように、インナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセンブリー1側のリング19とインナーチューブアッセンブリー側のリング20が接触して停止するまで挿入する。この時、アウターチューブアッセンブリー1の内面に形成された溝21にバネ32で外側に付勢されたV字型ラッチ31が外側に開いて入り、インナーチューブアッセンブリー2がアウターアッセンブリー1に固定される。
この状態で保持用のコイルバネ33がV字型ラッチ31を図面において左側に付勢してインナーチューブアッセンブリー2の固定状態を保持する。
V字型ラッチ31を閉じて固定を解除するには、コイルバネ33の保持力以上の力でスライドパイプ36を右側に移動させてV字型ラッチ31をバネ32による拡開力に対抗して閉じることによって、スライドパイプ36の中に収納するとV字型ラッチ31が溝21から外れるのでインナーチューブアッセンブリー2の固定が解除される。
スライドパイプ36は、コイルバネ33の弾発力によって図において左側に押されており、振動しない通常のロータリー掘削ではV字型ラッチが解除されることはなく、掘削中は、水をアウターチューブアッセンブリー1内部に常に送水し、シュー101とビット10の隙間からビット先端に排出させながら掘削をおこなっている。6は土壌サンプルを採取するためのコアチューブである。
【特許文献1】特開平10−159477号公報
【特許文献2】特開平10−169356号公報
【特許文献3】特開平11−43930号公報
【特許文献4】特開2001−234686号公報
【特許文献5】特開平11−61793号公報
【特許文献6】特開2002−266585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来機構のワイヤーラインサンプラーを振動を利用して掘削をおこなうバイブレーション機で使用した場合、掘削中に発生する振動力がV字型ラッチ31を拡開方向に付勢しているバネ32の力よりも、対抗してV字型ラッチ31を閉じようとする力が過大に作用し、溝21から外れてしまう現象が発生する。また、スライドパイプ36に使用している保持用のコイルバネ33の保持力も掘削中に発生する振動力に耐えられず、スライドパイプ36が右側に移動してV字型ラッチ31を閉じ、溝21から外れてしまうため、掘削中にインナーチューブアッセンブリー2の固定が解除されてしまうことがあり、振動を利用するバイブレーション機での使用が困難であった。
【0004】
また、インナーチューブアッセンブリー2が所定位置にセットされたか否かを確認するには、インナーチューブアッセンブリー2とアウターチューブアッセンブリー1の間の間隙に形成される送水ラインに設けた逆止弁22を開く送水圧によって確認しているが、掘削中は逆止弁22を常に開いていないといけないので、一定の高い送水圧が必要であり、送水ポンプの効率が悪かった。
V字型ラッチ31に関しては、セット位置でバネ32のバネ力にて開く構造であり、V字型ラッチ31が開いたか否かの確認を、溝21にV字型ラッチ31がセットされるときに発生する音で判断するしかなく、作業者の経験に頼る部分が多く、確実性が低かった。
【0005】
更に、掘削中に使用する水をシュー101とビット10の隙間から排出させながら掘削を行うため、採取する土壌中に含まれている水で流されやすい性質の砂や粘土等の土壌が流されてしまって採取することができず、近年の土壌調査に求められている原位置における状態のままの良質な土壌サンプルを採取できないという問題があった。
以上のことから、本発明は、インナーチューブアッセンブリーを所定位置に固定するラッチが振動機を使用した場合でも簡単に外れることがないようにし、インナーチューブアッセンブリーが所定の位置にセットされたか否かを簡単に、かつ、確実に確認できるようにすると共に、原位置における状態のままの良質な土壌サンプルを採取できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アウターチューブアッセンブリーとその内部にセットされるインナーチューブアッセンブリーを有するワイヤーラインサンプラーであって、アウターチューブアッセンブリーの内壁面にはインナーチューブアッセンブリーを固定する溝が形成してあり、インナーチューブアッセンブリーにはロッド先端の蟻溝テーパー面によって開閉するラッチ、アウターチューブに通ずる通水口が設けてあり、ラッチがインナーチューブアッセンブリーより突出してアウターチューブアッセンブリーの溝に嵌め込まれて固定される位置にあるときに、通水口が開放され、水がアウターチューブアッセンブリーとインナーチューブアッセンブリーの間の間隙を流れるようにしたものであり、振動によってインナーチューブの固定が外れる方向に力作用すると、通水口が閉じて水圧が作用して固定状態を自動的に維持するものである。
また、アウターチューブアッセンブリーの先端には、先端部に通水口が設けてあるビットを連結し、ビット内壁とコアチューブ先端外壁の隙間にパッキングを設けることによって土壌サンプルが掘削水によって洗い流されるのを防止したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、掘削中に使用する水の水圧力を利用し、ラッチ外れによる所定位置でのセット不能状態を防止し、インナーチューブアッセンブリーが所定位置にセットされているかの確認が、掘削中の送水圧を監視するというだけで簡単にできるようになる。また掘削中に使用する水に影響されない良質の土壌サンプルを採取することができる。
また、更に、ビットとコアチューブ先端の隙間にパッキングを設けて止水し、ビット側面の通水口から水を外に排出することにより、コアチューブ内の土壌サンプルが水で洗い流されるのを防止し、現状のままの良質な土壌サンプルを採取することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例
図1に示すように、ワイヤーラインサンプラーは、アウターチューブアッセンブリー1とその内部にセットされるインナーチューブアッセンブリー2とインナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセンブリー1から外して回収するためのオーバーショットアッセンブリー3からなる。
【0009】
アウターチューブアッセンブリー1の先端部には、ビット10が連結固定してあり、その上部の内部にはインナーチューブアッセンブリー2を所定位置に停止させるリング4があり、さらに上部にはインナーチューブアッセンブリー2を固定させるラッチを引っ掛ける溝5が設けてある。
【0010】
図1及び図2に示すように、インナーチューブアッセンブリー2の先端部には土壌サンプルを収容するためのコアチューブ6が設けてあり、コアチューブ6の先端外周には掘削中に使用する水がコアチューブ6内に入るのを防止するパッキング7が設けてある。
コアチューブ6の上側には、ラッチ9が出没する収納口16、通水口15及び上部外周にパッキング17が設けてあるケース14が連結してある。ケース14の先端にはインナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセンブリー1内において所定位置に停止させるリング8が設けてあり、ケース14内部にはインナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセブリー1に固定するためのラッチ9が設けてある。ラッチ9の構造の詳細は後述するが、ケース14内に挿入されているロッド11の軸方向の移動によって開閉するものであり、ロッド11の先端にはラッチ9を開閉するためのテーパー面と蟻溝凸23が形成してある駆動部が設けてある。ロッド11は、オーバーショットアッセンブリー3と連結されるために中空であり、この中空部は掘削用の送水路ともなるものである。ロッド11の通水口12の周囲にはパッキング13が設けてあり、ロッド11が軸方向に移動して通水口12とケース14の通水口15の位置が合致すると、ロッド11の送水路内の水は、インナーチューブアッセンブリー2とアウターチューブアッセンブリーの間の間隙に送り出される。
【0011】
図2及び図3に示すように、ラッチ9は、テーパー状の蟻溝凹部22が形成されているテーパー面を有するブロックであり、ケース14の収納口16に対称に2箇配置されている。ロッド11の先端に形成されているテーパー状の蟻溝凸23にラッチ9の蟻溝凹22が互いの凹凸にかみ合うように組み込まれており、図においてロッド11を左右に動かすことでラッチ9がテーパー状の蟻溝に沿って収納口16より出し入れする動作をする。
ロッド11を右側に動かしたときは、図2の状態となりラッチ9は収納口16から突出せずにケース14内に格納された状態となり、ロッド11を左側に動かしたときは、図3の状態となり、ラッチ9は収納口16から突出し、アウターチューブアッセンブリー1の内壁面の溝5に嵌まり込んでインナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセンブリー1に固定する。
【0012】
ロッド11の通水口12の周囲に設けたパッキング13は、図2の状態ではケース14の通水口15を内側から塞いでいるため、ロッド11内の水は、流れ出さない。ロッド11を左側に動かして図3の状態とすると、通水口12と通水口15が合致し、ロッド11内の水が通過できるようになる。
【0013】
オーバーショットアッセンブリー3は、スピアー18とスピアー18内部に組み込まれたV字型ラッチ31で構成されており、インナーチューブアッセンブリー2のロッド11内部にスピアー18を挿入して接続し、回収する方向に引く力を利用してインナーチューブアッセンブリー2を固定しているラッチ9をケース14内に格納し、インナーチューブアッセンブリー2をアウターチューブアッセンブリー1から切り離して回収することに使用するものである。
【0014】
図2に示す状態のインナーチューブアッセンブリー2を、アウターチューブアッセンブリー1内部に投入していくと、アウターチューブアッセンブリー1のリング4とインナーチューブアッセンブリーのリング8が接触し、インナーチューブアッセンブリー2が所定位置に停止し、コアチューブ6先端がビット10内部に挿入され、パッキング7が、ビット10とコアチューブ6先端の隙間に組み込まれた状態となり、図1に示す状態となる。
【0015】
図1に示す状態で、アウターチューブアッセンブリー1内部に送水ポンプで掘削用の水を送ると、水はインナーチューブアッセンブリー2とアウターチューブアッセンブリー間隙を通過しようとするが、ケース14のパッキング17が間隙を通過するのを阻止し、ロッド11内部の中空部を流れようとする。ロッド11の通水口12はパッキング13によって塞がれているため、行き場を失った水は送水ポンプの力により水圧が上昇し、水圧が上昇するとロッド11内面を押す力が発生するので、図において、ロッド11が水圧力により左側に移動する。ロッド11が左側に移動したことによりラッチ9が収納口16より突出してアウターチューブアッセンブリー1の溝5に嵌まり込み、図4の状態となる。
【0016】
通水口12及び通水口15が合致して開通し、ロッド11内の水がアウターチューブアッセンブリー1内壁とインナーチューブアッセンブリー2の外壁の隙間に流れこみ水圧が低下する。この低圧の水はリング8に設けられた通水口20を通過し、ビット10に設けられた通水口21を通過し、アウターチューブアッセンブリー1より外に排出され、ビット10に掘削用の水を供給する。コアチューブ6の先端はパッキング7によって止水されており、コアチューブ内部には掘削用の水が入り込むことはない。
【0017】
図4の示す状態で、アウターチューブアッセンブリー1内部に継続的に送水しながら掘削サンプリングを実行する。掘削中の送水圧は低い状態でアウターチューブアッセンブリー1内部とインナーチューブアッセンブリー2内部の各通水口を流れるので、送水に要するエネルギーを節約することができる。
【0018】
掘削時に使用する振動体の振幅方向は、図においてロッド11の左右に動く方向と同じであるため、振動力は、ロッド11を右側に移動させ、ラッチ9をケース14内に格納しようとする動作を発生させ、インナーチューブアッセンブリー2の所定位置の固定を解除しようとする。
【0019】
ロッド11が右側に移動すると同時に、開いた状態の通水口12及び通水口15を塞ぐ動作が発生し、通水口12、15の塞がれた割合に応じて送水圧が上昇するため、再びロッド11内面を押す水圧力が発生し、ロッド11を左側に移動させる力が作用する。この結果、ロッド11に対して掘削中の振動力により発生する右方向の押し力と、送水圧力による左方向の押し力がバランスするようにしてあれば、ロッド11は図4の状態の位置を常に維持することになる。
【0020】
従って、ロッド11の軸方向への移動によって動作するラッチ9は、バイブレーション掘削中でもケース14より突出吐出した状態(図3参照)を保つことができるため、ラッチ9が溝5から外れることがなく、インナーチューブアッセンブリー2は、所定位置に固定し続けられることになる。
【0021】
水圧力によってロッド11が左側に移動し、ラッチ9がケース14より突出した時に通水口12と通水口15が合致して通水口が開通して水圧が低下する機構としたので、ラッチ9がケース14より突出した時はインナーチューブアッセンブリー2が固定された状態であり、インナーチューブアッセンブリー2を固定する位置である溝5が設けてある位置でのみでラッチ9がケース14より突出可能であり、溝5以外の位置ではアウターチューブアッセンブリー1の内壁によってラッチ9は、ケース14より突出することができない。
【0022】
従って、ラッチ9がケース14より突出している時は送水圧が低下し、ラッチ9がケース14内に格納されている時は送水圧が上昇することから、送水圧を圧力ゲージで確認することにより、インナーチューブアッセンブリー2が所定位置に固定されたか否かの判断が可能となる。また、掘削中の送水圧を監視することでインナーチューブアッセンブリー2の状態を常に把握することが可能となる。
【0023】
また、掘削中の送水圧は低い状態でインナーチューブアッセンブリー2内の各通水口を流れており、掘削中の送水圧を常に高く維持する必要がなく送水ポンプの効率を高めることができる。
【0024】
更に、ビット10とコアチューブ6先端の隙間にパッキング7を設けて掘削中の水を止水し、ビット10側面の通水口21から水を外に排出することにより、コアチューブ6の先端への水流出によって掘削中の土壌サンプルを水で洗い流す現象を防止し、良質の土壌を採取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のワイヤーラインサンプラーの断面図。
【図2】ラッチが格納状態のインナーチューブアッセンブリーの断面図。
【図3】ラッチが突出状態のインナーチューブアッセンブリーの断面図。
【図4】インナーチューブアッセンブリーがアウターチューブアッセンブリーに固定された状態の断面図。
【図5】オーバーショットアッセンブリーの平面図。
【図6】従来のワイヤーラインサンプラーの断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 アウターチューブアッセンブリー
2 インナーチューブアッセンブリー
3 オーバーショットアッセンブリー
4 リング
5 溝
6 コアチューブ
7 パッキング
8 リング
9 ラッチ
10 ビット
11 ロッド
12、15 通水口
13 パッキング
14 ケース
17 パッキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブアッセンブリーとその内部にセットされるインナーチューブアッセンブリーを有するワイヤーラインサンプラーであって、アウターチューブアッセンブリーの内壁面にはインナーチューブアッセンブリーを固定する溝が形成してあり、インナーチューブアッセンブリーにはロッド先端の蟻溝テーパー面によって開閉するラッチ、アウターチューブに通ずる通水口が設けてあり、ラッチがインナーチューブアッセンブリーより突出してアウターチューブアッセンブリーの溝に嵌め込まれて固定される位置にあるときに、通水口が開放され、水がアウターチューブアッセンブリーとインナーチューブアッセンブリーの間の間隙を流れるようにしたワイヤーラインサンプラー。
【請求項2】
請求項1において、アウターチューブアッセンブリーの先端には、先端部に通水口が設けてあるビットが連結してあり、ビットの内部にコアチューブが挿入してあり、ビット内壁とコアチューブ先端外壁の隙間にパッキングが設けてあるワイヤーラインサンプラー。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかのワイヤーサンプラーの使用方法であって、掘削時にアウターチューブに送水し、送水圧力を監視することによってインナーチューブアッセンブリーがアウターチューブアッセンブリー内の所定位置にセットされているかを監視する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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