説明

ワイヤ類クランパー

【課題】コンパクト化を図った場合でもワイヤ類の締結力を確保でき、且つ、ワイヤ類が傷むことを抑制可能なワイヤ類クランパーを提供する。
【解決手段】ワイヤ類挿通孔117及びこれと直交するように連通するブロック収容孔が穿設されたガイドブロック11、ブロック収容孔の軸心方向に沿って進退自在に収容されブロック収容孔及びワイヤ類挿通孔117の軸心と直交するように貫通するカム収容孔とワイヤ類Wsを押圧する押圧部126aとが形成された可動ブロック12、可動ブロック12のカム収容孔に収容される偏心カム部134及びガイドブロック11に回動自在に軸支される操作摘み131が一体に設けられ、操作摘み131の回動操作によって偏心カム部134に可動ブロック12を駆動させてワイヤ類Wsのロック及びアンロックを切り替えるロック機構13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ類をロックするためのワイヤ類クランパーに関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の分野において、体内挿入カテーテル用のガイドワイヤは、カテーテル内に挿入しその先端をカテーテル先端から突出させながらカテーテル先端を目的とする体内局所まで挿入誘導するために利用されている。また、この種のガイドワイヤは、内視鏡を操作する用途でも多く利用されている。
【0003】
ワイヤ類をロックするためのワイヤ類クランパーとしては、特許文献1に記載のようなものが公知である。この従来のワイヤ類クランパーでは、ワイヤ挿通孔に挿通されたワイヤ類を、楕円偏心カムからなる押圧部材によってワイヤ挿通孔の周面に押圧することでワイヤ類を固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−150622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤ類クランパーに要求される基本性能として、ワイヤ類を堅固に締結する(締め付ける)ための高い締結力を発揮する必要がある。しかしながら、従来のワイヤ類クランパーでは、締結力を高めようとするとワイヤ類が傷付き易くなるという背反があった。また、医療技術分野で利用されるワイヤ類をクランプするためのワイヤ類クランパーでは装置の小型化(コンパクト化)が要求されることが多い。しかしながら、ワイヤ類クランパーの小型化を実現しようとするとその背反として装置の剛性不足が起こり易く、十分な締結力を確保することが難しくなる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、その目的は、装置のコンパクト化を図った場合においてもワイヤ類の締結力を十分に確保することができ、しかもワイヤ類を固定した際にそのワイヤ類が傷むことを抑制可能なワイヤ類クランパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を採用する。即ち、本発明に係るワイヤ類クランパーは、ワイヤ類を挿通させるワイヤ類挿通孔と、前記ワイヤ類挿通孔と直交するように該ワイヤ類挿通孔と連通する可動ブロック収容孔と、が穿設されたガイドブロックと、前記ガイドブロックの前記可動ブロック収容孔における軸心方向に沿って進退自在に収容された可動ブロックであって、前記可動ブロック収容孔及び前記ワイヤ類挿通孔における双方の軸心と直交するように貫通するカム収容孔と、一端面に前記ワイヤ類を押圧するための押圧部とが形成された可動ブロックと、前記可動ブロックの前記カム収容孔に収容されるカム部材及び前記ガイドブロックに回動自在に軸支される操作部が一体として設けられ、前記操作部が一方向に回動操作されると前記カム部材が前記可動ブロックを駆動して前記押圧部に前記ワイヤ類を押圧させることで前記ワイヤ類をロックし、前記操作部が他方向に回動操作されると前記押圧部による前記ワイヤ類への押圧を解放して前記ワイヤ類のロックを解除するロック機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成においては、例えば使用者によって操作部が回動操作されることによって、操作部と一体に設けられたカム部材が回動する。カム部材は可動ブロックに穿設されたカム収容孔に収容されているため、カム部材が回動することでカム部材と可動ブロックとの当接状態が変化することによって、この可動ブロックがガイドブロックに穿設された可動ブロック収容孔の軸心に沿って移動する。そして、操作部が一方向に回動操作されるとカム部材が可動ブロックを駆動して押圧部にワイヤ類を押圧させることでワイヤ類がロックされる。一方、操作部が他方向に回動操作されると押圧部によるワイヤ類への押圧が解放されることによりワイヤ類がフリーとなり、そのロックが解除される。
【0009】
本発明におけるワイヤ類クランパーによれば、所謂モノコック構造を採用することで装置全体の剛性を高めることができるので、装置をコンパクトにした場合においても高い締結力を発揮することができる。また、可動ブロックの端面の大部分に押圧部を設けることができるので、ワイヤ類と押圧部との接触面積を十分に確保することができる。そのため、ワイヤ類の締結力を高めることができ、また、局所的にワイヤ類を締め付けることがないのでワイヤ類が傷付いたり圧痕が付いたりすることも防止できる。
【0010】
また、本発明におけるワイヤ類クランパーによれば、ワイヤを挿通させるワイヤ類挿通孔と、可動ブロックを進退自在に収容する可動ブロック収容孔とを互いに直交するように設けたので、ワイヤ類を固定する際に、ワイヤ類挿通孔を形成するガイドブロックの内面に対してワイヤ類を垂直方向から押し付けることができる。これによれば、可動ブロックの押圧部がワイヤ類の表面に接触した際にワイヤ類が横方向にずれたりすることが無い。したがって、ワイヤ類が曲がって締め付けられることなどに起因して損傷を受けたり、或いは、塑性変形等が起こるなどの不具合が生じることを抑制することができる。
【0011】
本発明に係るワイヤ類クランパーにおいて、前記押圧部は、前記ワイヤ類挿通孔の軸心に沿って延設されるとよい。これによれば、上記の如くワイヤ類と押圧部との接触面積を十分に確保することができ、ワイヤ類の締結力を高めると共にワイヤ類の損傷を抑止できる。
【0012】
また、前記押圧部は、前記ワイヤ類を押圧する際に該ワイヤ類の外周面の一部が嵌合する凹所として形成されるとよい。これによれば、ワイヤ類を固定する際に、そのワイヤ類表面とガイドブロック側のワイヤ類挿通孔の壁面と、可動ブロック側の押圧部(凹所)との接触面積を容易に増やすことができる。その結果、ワイヤ類を固定する際、ワイヤ類が偏って変形し難くなり、ワイヤ類が傷むことがなく、しかもワイヤ類の締結力を一層高めることができる。
【0013】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。また、本明細書において、ワイヤ類とは、細長く延びた部材、即ち線材を全般的に含み、針金、電線などの意味で一般的にワイヤと称呼されている金属線材(金属線)の他に、樹脂などの非金属材料からなる線材なども含む。また、所謂シャフト部材(棒材)も線材として捉えることができ、ワイヤ類の範疇に属するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイヤ類クランパーのコンパクト化を図った場合においてもワイヤ類の締結力を十分に確保することができ、且つ、ワイヤ類を固定した際にそのワイヤ類が傷むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るクランパーの斜視図である。
【図2】実施形態に係るクランパーの分解斜視図である。
【図3】実施形態に係るガイドブロックの正面図である。
【図4】実施形態に係るガイドブロックの上面図である。
【図5】実施形態に係るガイドブロックの側面図である。
【図6】実施形態に係る可動ブロックの正面図である。
【図7】実施形態に係る可動ブロックの上面図である。
【図8】実施形態に係る可動ブロックの側面図である。
【図9】実施形態に係るロック機構の側面図である。
【図10】図9のA−A切断線でロック機構を切断した断面図である。
【図11】組み立て後におけるクランパーの断面図である。
【図12】可動ブロック収容孔軸と直交するクランパーの断面を示す断面図である。
【図13】軸受け孔軸と直交するクランパーの断面を示す断面図である。
【図14】カム回転角が180°のときの偏心カム部と可動ブロックとの相対関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るワイヤ類クランパー(以下、単に「クランパー」と記す)1の実施をするための形態について説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる例示に過ぎない。
【0017】
図1は、実施形態に係るクランパー1の斜視図である。また、図2は、実施形態に係るクランパー1の分解斜視図である。本発明に係るクランパー1は、ワイヤ類Wsを締結(固定、クランプ)する装置であり、この実施形態では、金属ワイヤを固定する場合を例に挙げて説明する。
【0018】
クランパー1は、ワイヤ類Wsを挿通させるワイヤ挿通孔を有するガイドブロック11、このガイドブロック11に収容される可動ブロック12、ガイドブロック11に装着されるロック機構13を備える。
【0019】
図3はガイドブロック11の正面図(背面図)、図4はガイドブロック11の上面図、図5はガイドブロック11の側面図である。図示のように、ガイドブロック11は正面111、背面112、左側面113、右側面114、上面115、下面116によって外形が画定された略直方体形状を有するケーシング部材である。ガイドブロック11には、ワイヤ類Wsを挿通させるための円形断面を有する横孔であるワイヤ類挿通孔117が、右側面114から左側面113まで貫通するように、ガイドブロック11の長辺に沿って形成されている。また、ワイヤ類挿通孔117の端部、即ちワイヤ類挿通孔117と左側面113の取り合い部分、及びワイヤ類挿通孔117と右側面114との取り合い部分には面取り加工が施されている。以下、ワイヤ類挿通孔117の軸心(軸中心)を「ワイヤ類挿通孔軸Hsc1」と称する。
【0020】
ガイドブロック11には、ワイヤ類挿通孔117に直交する縦孔である可動ブロック収容孔118が形成されている。可動ブロック収容孔118は、可動ブロック12を収容するとともに、可動ブロック12が可動される際にその動きをガイドするための空間である。以下、可動ブロック収容孔118の軸心を「可動ブロック収容孔軸Hsc2」と称する。この可動ブロック収容孔軸Hsc2は先述のワイヤ類挿通孔軸Hsc1と直交する。
【0021】
可動ブロック収容孔118は、その一端がワイヤ類挿通孔117に連通すると共に他端がガイドブロック11の上面115に形成された上面開口部115aに連通する。可動ブロック収容孔118において、可動ブロック収容孔軸Hsc2に直交する方向の断面形状は長方形の対向する短辺をR状に加工した形状となっている。但し、可動ブロック収容孔
118の上記断面形状は図示の例に限定されず、種々の形状を採用することができる。
【0022】
ガイドブロック11には、その正面111から背面112にかけて貫通する円形の軸受け用孔119が設けられている。以下、軸受け用孔119の軸心を「軸受け孔軸Hsc3」と称する。この軸受け孔軸Hsc3は、ワイヤ類挿通孔軸Hsc1及び可動ブロック収容孔軸Hsc2の双方に直交しており、後述するようにロック機構13が回転自在に装着される。図3に示すように、軸受け用孔119は、ブロック収容孔118を直交方向から貫通するように設けられている。なお、本実施形態におけるガイドブロック11は真鍮製としているが、他の材料を採用してもよい。
【0023】
次に、図6〜8を参照して可動ブロック12の詳細構成を説明する。図6は可動ブロック12の正面図(背面図)、図7は可動ブロック12の上面図、図8は可動ブロック12の側面図である。
【0024】
可動ブロック12は、その正面121、背面122、左側面123、右側面124、上面125、下面126によって外形が画定されている。可動ブロック12は、その正面121、背面122、左側面123、右側面124が、ガイドブロック11のブロック収容孔118にかかる内壁との間に僅かなクリアランスを設けて対向する(面する)ように可動ブロック収容孔118に収容される。可動ブロック12が可動ブロック収容孔118に収容された状態において、その下面126がワイヤ類挿通孔117に面し、その上面125がガイドブロック11の上面開口部115から外部に開放されている。
【0025】
可動ブロック12の下面126には、ワイヤ類挿通孔117に挿通されたワイヤ類Wsを固定する際にこのワイヤ類Wsをワイヤ類挿通孔117の周面に押し付けるための押圧部126aが曲面状に凹んだ凹所(凹部、窪み部)として形成されている。図示のように、押圧部126aは、左側面123から右側面124に渡って形成されており、後記するように可動ブロック12が可動ブロック収容孔118に収容された状態において押圧部126aがワイヤ類挿通孔軸Hsc1に沿うように延設されている。また、本実施形態において押圧部126aは、ワイヤ類Wsの外周面の一部が嵌るような円弧状曲面として形成される。
【0026】
可動ブロック12には、その正面121から背面122にかけて貫通する円形のカム収容孔129が形成されている。カム収容孔129は、ガイドブロック11に形成された軸受け用孔119と同径である。この実施形態における可動ブロック12はスチール製であるが、他の材料を採用してもよい。図1及び図2にも示すように、可動ブロック12は、ガイドブロック11の可動ブロック収容孔118を、その可動ブロック収容孔軸Hsc2に沿って進退自在に収容される。
【0027】
次に、図9、10を参照してロック機構13の詳細構成を説明する。図9は、ロック機構13の側面図であり、図10は、図9のA−A切断線でロック機構13を切断した断面図である。ロック機構13は、一体的に設けられた操作摘み131(操作部)及び軸部132から構成される。操作摘み131は円柱状の摘みであり、その径方向に操作補助用ロッドRdを挿入するための貫通孔131aが穿設されている。この貫通孔131aには、使用者(ユーザ)が操作摘み131を回動操作する際にその操作を容易にするための操作補助用ロッドRdが挿通可能となっている。
【0028】
一方、軸部132は、回動軸部133a,133bとこれらの間に設けられた偏心カム部134(カム部材)とによって構成されている。回動軸部133a,133b及び偏心カム部134は全て円柱体である。
【0029】
図9に示すように、ロック機構13は、一端側から操作摘み131、回動軸部133a、偏心カム部134、回動軸部133bの順に接続されている。操作摘み131、回動軸部133a、133bは共通の軸心を有しており、同軸構造となっている。また、回動軸部133a、133bは、ガイドブロック11に形成された軸受け用孔119及び可動ブロック12に形成されたカム収容孔129と同径、或いはこれらよりも僅かに小さな径を有する。
【0030】
一方、偏心カム部134は、回動軸部133a、133bに比べて一回り小さな径を有する。以下では、同軸配置された操作摘み131、回動軸部133a、133bの共通する軸心を「共通軸心Csc1」と称し、偏心カム部134の軸心を「偏心カム軸心Csc2」と称する。図9及び図10に示すように、同軸配置された操作摘み131、回動軸部133a、133bに対して、偏心カム部134が偏心配置されている。
【0031】
図10を参照して偏心カム部134、及び回動軸部133a,133bの接合部の態様を詳しく述べると、偏心カム部134及び回動軸部133a(133b)は互いの外周縁同士で接合されており、偏心カム部134及び回動軸部133aの接合部C1と、偏心カム部134及び回動軸部133bの接合部C2とは、軸心Csc1,Csc2への直交断面内において互いに位置が合致している。
【0032】
図11〜14は、組み立て後(組み付け後)におけるクランパー1の偏心カム部134と可動ブロック12との断面図である。図11はクランパー1においてワイヤ類挿通孔軸Hsc1と直交する断面を示し、図12はクランパー1において可動ブロック収容孔軸Hsc2と直交する断面を示し、図13はクランパー1において軸受け孔軸Hsc3と直交する断面を示す。
【0033】
クランパー1の組み立てに際しては、先ずガイドブロック11の可動ブロック収容孔118に可動ブロック12を収容する。次いで、ロック機構13の先端側に位置する回動軸部133bをガイドブロック11の正面111側から順次、軸受け用孔119、可動ブロック12のカム収容孔129に挿通させた上で、回動軸部133bをガイドブロック11の背面112側に位置する軸受け用孔119に挿入し、回動軸部133aをガイドブロック11の正面111側に位置する軸受け用孔119に挿入する。これによって、ロック機構13における回動軸部133a,133bがガイドブロック11に回動自在に軸支される。
【0034】
ロック機構13の偏心カム部134は、ロック機構13がガイドブロック11に軸支された状態において、ちょうどカム収容孔129に収容されるようになっている。カム収容孔129の内径は偏心カム部134の外径よりも大きいため、カム収容孔129は偏心カム部134を遊嵌した状態で収容することとなる。また、ロック機構13がガイドブロック11に装着された際、操作摘み131はガイドブロック11の外部に露出した状態となる。
【0035】
次に、クランパー1の動作について説明する。図11〜13は、ワイヤ類Wsの締結(固定)が解除された状態(以下、「アンロック状態」という)を示している。これら各図に示すアンロック状態では、自重によって可動ブロック12が下方(ガイドブロック11の下面116側)に下がり、ワイヤ類Wsは押圧部126aとワイヤ類挿通孔117の周面との間に挟まれた状態となっているが、可動ブロック12の自重に起因する以外の押圧力はワイヤ類Wsに加わっていないため、ワイヤ類Wsはクランパー1に対してその軸方向のいずれにも進退自在なアンロック状態にある。図12においてはワイヤ類挿通孔117に挿通されたワイヤ類Wsの図示を割愛している。
【0036】
図13に示した状態における偏心カム部134の回転角(以下、「カム回転角」という)θcを0°(以下、このときの「基準回転角」ともいう)とすると、カム回転角θcが0°のときに偏心カム軸心Csc2の高さ(ブロック収容孔軸Hsc2上の座標)が最も高くなる。
【0037】
クランパー1に対してワイヤ類Wsをロック(締結)するロック状態に切り替える場合、使用者は、アンロック状態からロック機構13の操作摘み131を時計回り、あるいは反時計回りに回転させる。その際、操作摘み131には貫通孔131aが設けられているので、貫通孔131aに予め差し込んでおいた操作補助用ロッドRdを把持することで操作摘み131を容易に回動操作することが可能である。もっとも、操作補助用ロッドRdを操作摘み131に装着するかどうかは任意であり、使用者は操作摘み131を直接把持してこれを回動操作しても構わない。
【0038】
使用者によって操作摘み131が一の方向に回動操作されると、これと一体の軸部132(回動軸部133a、133b及び偏心カム部134)も同様に回動する。ここで図14は、カム回転角θcが180°のときの偏心カム部134と可動ブロック12との相対関係を示す図である。なお、図中に破線で示した符号12´、134´は、カム回転角θcが0°のときにおける偏心カム部及び可動ブロックのそれぞれの位置関係を示したものである。
【0039】
図示のように、カム回転角θcが180°のときに偏心カム軸心Csc2の高さが最も低くなり、カム回転角θcが0°のときに比べて偏心量ΔCscの2倍に相当する距離だけ降下する。その際、偏心カム部134にカム収容孔129の内周面が押圧されるため、可動ブロック12はブロック収容孔軸Hsc2に沿って下方に向かって押し込まれる。
【0040】
ここで、共通軸心Csc1に対する偏心カム軸心Csc2の偏心量を符号ΔCscにて表すと、本実施形態における偏心量ΔCscは、回動軸部133a,133bの直径と偏心カム部134の直径との差(以下、「軸径差Dd」と称する)の半分以下の値となるように設定されている(ΔCsc≦Dd/2)。これによれば、カム回転角θcが90°の状態、すなわち、可動ブロック12の横幅方向への共通軸心Csc1に対する偏心カム軸心Csc2の偏心度合いが最大となるときにおいても、偏心カム部134によって可動ブロック12が横方向(ワイヤ類挿通孔軸Hsc1に沿った方向)に押されることがない。その結果、操作摘み131の回動操作に応じてカム回転角θcが0°〜180°の範囲内に変化するいずれの状態においても、可動ブロック12が可動ブロック収容孔118の内側面に強く押し付けられることがなく、可動ブロック収容孔118内を可動ブロック収容孔軸Hsc2に沿って円滑に降下させることができるのである。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るクランパー1においては、操作摘み131の回動操作に応じてカム回転角θcが0°〜180°の範囲で変化することにより、偏心量ΔCscの2倍に相当するストロークにて可動ブロック12がワイヤ類挿通孔117に挿通されたワイヤ類Wsに押し付けられる。その結果、ワイヤ類Wsが可動ブロック12の押圧部126a及びワイヤ類挿通孔117の内壁面との間に強く挟み付けられることで大きな摩擦力が発揮され、ワイヤ類Wsがその軸方向のいずれにも進退移動が規制されたロック状態となる。
一方、ロック状態からアンロック状態への切り替えは、偏心カム部134に係るカム回転角θcが基準回転角に近づくように、すなわち、ワイヤ類Wsをロックしたときとは逆方向(他の方向)への操作摘み131の回動操作を行う。そうすると、可動ブロック12の押圧部126aがワイヤ類Wsを挟み込んでいる押圧力が解放(除荷)されることで、ワイヤ類Wsがその軸方向のいずれにも進退移動可能な状態、すなわちアンロックの状態となる。
【0042】
本実施形態に係るクランパー1によれば、ガイドブロック11が強度部材を兼ねたモノコック構造の形態を採用しているので、装置全体の剛性を極めて高めることができる。これによれば、クランパー1のコンパクト化と高い締結力の確保を同時に高いレベルで実現することができる。また、クランパー1を構成する各部材の構造も単純であり加工性に優れ、且つ部品点数も少ないため、クランパー1を廉価に製造することが可能である。
【0043】
しかも、この実施形態においては、可動ブロック12に設けた押圧部126aをワイヤ類挿通孔軸Hsc1に沿って広範囲に分布させたので、押圧部126aによってワイヤ類Wsを押圧するときの接触面積を充分に確保できる。これによれば、ワイヤ類Wsの締結力をより一層高めることができると共に、局所的にワイヤ類Wsを挟み付けることがないためワイヤ類Wsが傷んだり圧痕が付いたりすることを回避できる。
【0044】
特に、押圧部126aの形状をワイヤ類Wsの外周面の一部が嵌合する凹所として形成するようにしたので、ワイヤ類Wsをロックする際にこれが偏って変形し難くなり、また、ワイヤ類Wsをロックする際の締結力を一層高める効果を奏する。
【0045】
更にクランパー1によれば、ワイヤ挿通孔117におけるワイヤ類挿通孔軸Hsc1と可動ブロック収容孔軸Hsc2が直交するように可動ブロック収容孔118を設けたので、可動ブロック12によってワイヤ類Wsを真上から押圧することができる。これにより、可動ブロック12の押圧部126aがワイヤ類Wsの表面に接触した際にそのワイヤ類Wsが横方向にずれたりすることが無い。その結果、ワイヤ類Wsが曲がって締め付けられることなどに起因して損傷を受けたり、或いは、塑性変形等が起こるなどの不具合が生じることを回避することが可能である。
【0046】
〈その他の実施形態〉
以上述べた実施形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態には種々の変更を加え得る。例えば、上述までの実施形態では、ワイヤ類Wsとして金属ワイヤを例に挙げているが、金属製棒鋼などのシャフト部材をクランパー1にて固定するようにしてもよい。また、本実施形態における偏心カム部134として真円形状を採用しているが、これに代えて楕円形状やその他の形状を有するカム部材として構成してもよい。
【0047】
また、ワイヤ類挿通孔117に挿通されたワイヤ類Wsに密着するなどして高摩擦を実現するフリクション部材を、可動ブロック12における押圧部126aに設置してもよい。このフリクション部材としては、押圧部126aに係る凹所に配置されるばね鋼や、押圧部126aの表面に微小な突起を形成することによって構成されてもよい。このようなフリクション部材によれば、クランパー1の姿勢が傾いた状態でワイヤ類Wsをアンロック状態とした場合においても、ワイヤ類挿通孔117に挿通されたワイヤ類Wsが滑り、これに起因してワイヤ類Wsの挿通位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るワイヤ類クランパーは種々の用途に使用されるワイヤ類Wsのクランプ装置として適用可能であり、ワイヤ類の径(太さ)の大小についても何ら限定されない。例えば医療技術分野における体内挿入カテーテル用や内視鏡を操作するために用いるガイドワイヤのクランプ装置として好適に適用することができるが、これらの用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1・・・ワイヤ類クランパー
11・・・ガイドブロック
12・・・可動ブロック
13・・・ロック機構
117・・・ワイヤ類挿通孔
118・・・可動ブロック収容孔
126a・・・押圧部
129・・・カム収容孔
131・・・操作摘み
134・・・偏心カム部
Ws・・・ワイヤ類
Hsc1・・・ワイヤ類挿通孔軸
Hsc2・・・可動ブロック収容孔軸
Hsc3・・・軸受け孔軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ類を挿通させるワイヤ類挿通孔と、前記ワイヤ類挿通孔と直交するように該ワイヤ類挿通孔と連通する可動ブロック収容孔と、が穿設されたガイドブロックと、
前記ガイドブロックの前記可動ブロック収容孔における軸心方向に沿って進退自在に収容された可動ブロックであって、前記可動ブロック収容孔及び前記ワイヤ類挿通孔における双方の軸心と直交するように貫通するカム収容孔と、一端面に前記ワイヤ類を押圧するための押圧部とが形成された可動ブロックと、
前記可動ブロックの前記カム収容孔に収容されるカム部材及び前記ガイドブロックに回動自在に軸支される操作部が一体として設けられ、前記操作部が一方向に回動操作されると前記カム部材が前記可動ブロックを駆動して前記押圧部に前記ワイヤ類を押圧させることで前記ワイヤ類をロックし、前記操作部が他方向に回動操作されると前記押圧部による前記ワイヤ類への押圧を解放して前記ワイヤ類のロックを解除するロック機構と、
を備えることを特徴とするワイヤ類クランパー。
【請求項2】
前記押圧部は、前記ワイヤ類挿通孔の軸心に沿って延設されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ類クランパー。
【請求項3】
前記押圧部は、前記ワイヤ類を押圧する際に該ワイヤ類の外周面の一部が嵌合する凹所として形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ類クランパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−19483(P2013−19483A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153689(P2011−153689)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(597137682)トークシステム株式会社 (12)