説明

ワークサポート

【課題】 ワークサポートのサポートロッドの後退状態を確実に検出できるようにする。
【解決手段】 ハウジング(2)にサポートロッド(9)を上下方向へ移動可能に支持し、そのサポートロッド(9)に弾性変形可能なスリーブ部材(27)を外嵌する。そのスリーブ部材(27)を縮径させるロック作動室(35)を設け、そのロック作動室(35)にロックポート(37)を連通させる。上記ハウジング(2)に設けたエア供給ポート(44)を、上記ハウジング(2)及び上記サポートロッド(9)に設けたエア通路(55)を介して上記サポートロッド(9)の上部に設けた出口路(45)へ連通させる。上記サポートロッド(9)の上昇がワーク(W)によって停止されたときに当該ワーク(W)を介して上記出口路(45)が閉じられるように構成する。また、上記サポートロッド(9)が下降位置に後退されたときに上記エア通路(55)を閉じる弁機構(56)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリーブ部材を縮径させてサポートロッドをロックする形式のワークサポートに関し、より詳しくいえば、上記サポートロッドの後退状態を確実に検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワークサポートには、従来では、特許文献1(日本国・特開2001−96435号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
ハウジングにサポートロッドを上下方向へ移動可能に支持し、そのサポートロッドに弾性変形可能なスリーブ部材を外嵌し、そのスリーブ部材を縮径させるロック作動室を上記ハウジング内に設け、上記サポートロッドの上部に、加圧エアの出口路を開閉するための常開式の弁部材を設け、サポートロッドが上方へ進出して弁部材がワークに接当したときに上記ワークが弁部材を介して出口路を閉じるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2001−96435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、サポートロッドの後退状態では常開式の弁部材が出口路を開いたままであるためエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇しないのに対して、上記サポートロッドが上方へ進出したときにワークが弁部材を介して出口路を閉じてエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇する。このため、その圧力上昇を検出することにより、サポートロッドが進出状態であることを検出できる点で優れる。
しかしながら、何らかの原因により、ワークに対してサポートロッドが進出途中で停止した場合や、上記サポートロッドの上側にワークが搬入されていない状態でサポートロッドを上方へ進出させた場合にも、前記の後退状態と同様に、常開式の弁部材が出口路を開いたままであるため、エア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇しない。
このため、サポートロッドの後退状態を他の状態と区別して検出できない。
【0005】
そこで、本発明者は、本発明に先立って、上記エア供給ポートに加圧エアの圧力検出手段を接続し、かつ、前記ロック作動室に連通するロックポートにロック用圧力流体の圧力検出手段を接続することを考えた。
その先提案例のワークサポートにおいて、ロック作動室から圧力流体を排出すると共にサポートロッドを後退させた後退リリース状態では、エア供給ポートに供給された加圧エアが出口路を通って外部へ排出されるので、そのエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇しない。また、ロック作動室に圧力流体を供給すると共にサポートロッドをワークへ進出させた進出ロック状態では、上記ワークを介して出口路が閉じられるため、エア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇する。さらに、何らかの原因により、ワークに対してサポートロッドが進出途中で停止した場合や、上記サポートロッドの上側にワークが搬入されていない状態でサポートロッドを上方へ進出させた場合には、エア供給ポートに供給された加圧エアが出口路を通って外部へ排出されるので、そのエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇せず、かつ、ロックポートの圧力が設定圧力に上昇する。
そして、エア供給ポートの検出圧力及びロックポートの検出圧力について、上記の各種状態における検出圧力を相互に比較することにより、サポートロッドの後退状態を他の状態と区別して検出できる。
【0006】
しかしながら、上記ロック作動室の圧力流体を排出してワークサポートを上記の進出ロック状態から後退リリース状態へ切換えるときに、例えば、サポートロッドの摺動面に異物が噛み込んで当該サポートロッドの摺動抵抗が大きくなっている場合には、上記サポートロッドが下降途中で停止してしまうおそれがある。この場合、エア供給ポートに供給された加圧エアが出口路を通って外部へ排出されるので、そのエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇せず、かつ、ロックポートの圧力が設定圧力よりも下降している。このため、上記エア供給ポートの検出圧力及びロックポートの検出圧力は、前記の後退リリース状態と同じであると判断されてしまう。
以上の理由により、サポートロッドの後退状態を確実に検出するうえでは改善の余地が残されていた。
本発明の目的は、サポートロッドの後退状態を確実に検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図3に示すように、ワークサポートを次のように構成した。
ハウジング2に上下方向へ移動可能に支持されてワークWに対して進退されるサポートロッド9と、そのサポートロッド9に外嵌されると共に縮径側に弾性変形可能なスリーブ部材27と、そのスリーブ部材27を縮径させるように上記ハウジング2内に設けたロック作動室35と、を備える。また、上記ロック作動室35へ連通するように上記ハウジング2に設けたロックポート37と、上記ハウジング2に設けられて加圧エアが供給されるエア供給ポート44と、上記サポートロッド9の上部に設けられて外部空間へ連通可能な出口路45と、その出口路45に上記エア供給ポート44を連通させるように上記ハウジング2及び上記サポートロッド9に設けたエア通路55と、上記サポートロッド9が下降位置に後退されたときに上記エア通路55を閉じる弁機構56と、を有する。上記サポートロッド9の上昇が上記ワークWによって停止されたときに当該ワークWを介して上記出口路45が閉じられるように構成する。
【0008】
ここで、上記出口路は、後述の実施形態に示すようにサポートロッドの上部に設けた弁部材によって開閉される場合や、サポートロッドの上端に開口されてワークによって直接に開閉される場合などが考えられる。
【0009】
本発明は、上記ロックポート37にロック用圧力流体の圧力検出手段を接続可能に構成すると共に、上記エア供給ポート44に加圧エアの圧力検出手段を接続可能に構成した場合には、次の作用効果を奏する。
ワークサポートの後退リリース状態では、サポートロッドが下降位置に後退されると共にロック作動室の圧力流体が排出されている。このため、弁機構がエア通路を閉じてエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇すると共に、ロックポートの圧力が消失している。
また、ワークサポートの進出ロック状態では、サポートロッドの上昇がワークによって停止されると共にロック作動室へ圧力流体が供給されている。このため、上記ワークを介して出口路が閉じられてエア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇すると共に、ロックポートの圧力も設定圧力に上昇する。
さらに、上記ワークサポートを後退リリース状態から進出ロック状態へ切り換えるときに、何らかの原因により、サポートロッドが進出途中で停止した場合や上記サポートロッドの上側にワークが搬入されていない場合には、前記出口路が開かれたままであり前記エア通路も開かれているため、エア供給ポートの圧力が設定圧力よりも低くなる。これに対して、ロックポートの圧力は設定圧力に上昇している。
また、ロック作動室の圧力流体を排出して上記ワークサポートを進出ロック状態から後退リリース状態へ切り換えるときに、何らかの原因により、サポートロッドが後退途中で停止した場合には、前記出口路が開かれると共に前記エア通路も開かれているため、エア供給ポートの圧力が設定圧力よりも低くなり、また、ロックポートの圧力も設定圧力よりも低くなっている。
このため、本発明によれば、エア供給ポートの検出圧力及びロックポートの検出圧力について、上記の各種状態における検出圧力を相互に比較することにより、「エア供給ポートの圧力が設定圧力に上昇し、かつ、ロックポートの圧力が設定圧力よりも低いとき」にワークサポートが後退リリース状態に切り換えられていると判別でき、その後退状態を他の状態から明確に区別できる。しかも、上記効果を達成するにあたり、ワークサポートが備える既存の構造を利用して検出装置の一部を構成できるので、その構成が簡素ですむ。
【0010】
また、本発明は、上記エア供給ポート44に加圧エアの圧力検出手段を接続可能に構成することに代えて、当該エア供給ポート44に加圧エアの流量検出手段を接続可能に構成した場合にも、上記と同様の作用効果を奏する。
即ち、上記エア供給ポートに供給された加圧エアの流量が設定量以上であることを流量検出手段が検出したときには、その加圧エアが出口路から外部へ多量に排出され、前記エア通路および出口路が開いていると判断できる。これに対して、エア供給ポートの流量が殆ど無いことを流量検出手段が検出したときには、上記の出口路またはエア通路が閉じていると判断できる。このため、「エア供給ポートの流量が殆ど無く、かつ、ロックポートの圧力が設定圧力よりも低いとき」にワークサポートが後退リリース状態に切り換えられていると判別でき、その後退状態を他の状態から明確に区別できる。
【0011】
本発明においては、前記ハウジング2の下部に中央部材3を上向きに設け、その中央部材3に前記サポートロッド9を外嵌めし、上記中央部材3と上記サポートロッド9との間に前記エア通路55の一部を形成することが好ましい。これにより、エア通路は、既存のサポートロッドを利用して簡素に構成できる。
【0012】
また、本発明においては、前記の弁機構56は、前記サポートロッド9に設けた下向きの弁面61と、前記中央部材3に設けた上向きの弁座62とを有することが好ましい。これにより、弁機構は、サポートロッドと中央部材とを利用して簡素に構成できる。
【0013】
さらに、本発明においては、前記弁面61を、前記サポートロッド9の上下方向の途中部に設けた内周段部15の下面に形成し、前記弁座62を、前記中央部材3の上端面に形成することが好ましい。これにより、弁機構をさらに簡素に構成できる。
【0014】
また、本発明には次の構成を加えることが好ましい。
前記サポートロッド9の上部に、前記ワークWに接当される弁部材46を昇降可能に支持し、上記弁部材46に設けた下向きの弁面51と上記サポートロッド9の上部に設けた上向きの弁座52とによって前記の出口路45を開閉するように構成する。
この場合、上記の出口路に塵埃等の異物が侵入するのを防止できる。
【0015】
さらに、本発明には次の構成を加えることが好ましい。
前記サポートロッド9を進退させる手段は、前記ハウジング2の下部の筒孔に上下移動可能に挿入された進出ピストン19と、その進出ピストン19の下側に配置されると共に前記ロックポート37に連通された進出用圧力室40と、前記サポートロッド9を上向きに付勢する進出バネ24と、その進出バネ24の付勢力に抗して上記進出ピストン19を介して上記サポートロッド9を下降位置に付勢する後退バネ25とを有する、ことを特徴とするものである。
この場合、上記の進出ピストンと複数のバネにより、サポートロッドを確実に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の一実施形態を示し、ワークサポートの後退リリース状態の立面視断面図である。
【図2】 上記ワークサポートの進出途中の状態を示し、図1に類似する図である。
【図3】 上記ワークサポートの進出ロック状態を示し、図1に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1から図3によって説明する。まず、図1の縦断面図によってワークサポート1の構造を説明する。上記ワークサポート1は、以下に詳しく説明するとおり、油圧力によってロックされると共にバネ力よってロック解除される。
【0018】
上記ワークサポート1のハウジング2は、上端壁2aと下端壁2bと胴部2cとを有し、複数の締結ボルト(図示せず)によってテーブルTの上面に固定される。上記ハウジング2の下部中央に筒状の中央部材3が上向きに設けられ、その中央部材3の下フランジ4が下端壁2bによって押圧固定される。
【0019】
上記ハウジング2にサポートロッド9が上下方向へ移動自在に支持される。そのサポートロッド9は、筒状のロッド部材10と上端ブロック11とを有している。上記ロッド部材10は、上向きに順に形成された大径の第1孔12とテーパ孔13と中径の第2孔14と内周段部15と小径の第3孔16とを有している。その第3孔16の上部に上端ブロック11がネジ止めされている。
なお、上記ロッド部材10の上部と上端壁2aとの間に、スクレーパの機能を備えたロッドシール17が装着されている。
上記ロッド部材10の下半部が上記の中央部材3に所定の隙間をあけて外嵌めされる。その隙間によって後述のエア通路55の一部が構成されている。
【0020】
上記の中央部材3の筒孔に進出ピストン19のピストン部分20が保密状に挿入され、そのピストン部分20からピストンロッド21が上向きに突出される。そのピストンロッド21の上部に設けた係止部22が、上記サポートロッド9の内周段部15に上側から接当している。上記の係止部22と上端ブロック11との間で第3孔16内に、サポートロッド9を上向きに付勢する進出バネ24が設けられる。また、中央部材3の上端壁3aとピストン部分20との間に、進出ピストン19を下向きに付勢する後退バネ25が設けられる。その後退バネ25の付勢力は、上記の進出バネ24の付勢力よりも大きい値に設定してある。
【0021】
上記サポートロッド9の外周面に設けた狭持固定領域Aに、筒状のコレットによって構成したスリーブ部材27が外嵌される。そのスリーブ部材27は、上すぼまりのテーパ外周面28と上下方向へ延びる1つのスリット29とを有し、そのスリット29によって弾性的に縮径可能になっている。上記スリーブ部材27の外周側に環状の伝動具31が配置され、その伝動具31のテーパ内周面32が上記テーパ外周面28に上側から対面される。そのテーパ外周面28と上記テーパ内周面32との間に形成した環状テーパ隙間には多数のボールBが挿入される。
【0022】
上記の伝動具31から径方向の外側へロック用ピストン34が突出され、そのロック用ピストン34の上側にロック作動室35が形成されると共に下側にバネ室36が形成される。上記ロック作動室35にロックポート37が連通され、上記バネ室36に復帰バネ38が装着される。上記ロックポート37は、ハウジング2の左上部に形成されており、端面ポート37aと側面ポート37bとのいずれか一方を選択できるようになっている。ここでは、端面ポート37aに圧油が供給および排出されると共に、側面ポート37bをプラグ(図示せず)で閉じるようになっている。
また、前記の進出ピストン19の下側に形成された進出用圧力室40が、前記ハウジング2の胴部2c内の接続路41を介して上記ロックポート37へ連通される。
【0023】
上記ハウジング2の右上部に、加圧エアが供給されるエア供給ポート44が設けられる。
また、サポートロッド9の上端ブロック11内に貫通孔が上下方向に形成され、その貫通孔内に出口路45が形成される。この実施形態では、上記出口路45の周壁に弁部材46のロッド部分47が昇降可能に支持され、そのロッド部分47の外周に溝状の連通路48が上下方向に形成される。また、弁部材46の上部に設けた拡径部49の外周が下向きに突出され、その下向き突出部に下向きの弁面51が形成される。これに対応して、上端ブロック11の上端に上向きの弁座52が設けられる。
上記の弁部材46は、自重によって下向きに押圧され、上記の拡径部49の下側の圧力室50の空圧力によって自重に抗して上方の開き位置へ切換えられる。この開き位置では、図2に示すように、上記の弁面51と弁座52との間に、平面視で環状の隙間Gが形成される。
【0024】
上記エア供給ポート44と出口路45とがエア通路55によって連通され、そのエア通路55に弁機構56が配置される。
上記エア通路55は、この実施形態では、ハウジング4の右上部の斜め路58と、バネ室36と、スリーブ部材27のスリット29の下部と、サポートロッド9のロッド部材10の下端部の外周空間および下側空間と、ロッド部材10の下半部内周面と中央部材3の外周面との間に形成された隙間と、ロッド部材10の内周段部15に設けた縦溝15aと、ロッド部材10の第3孔16の下半部を備える。
上記弁機構56は、図2に示すように、前記ロッド部材10の内周段部15の下面に形成した下向きの弁面61と、前記中央部材3の上端壁3aの上面に形成した上向きの弁座と62とを有する。
【0025】
上記サポートロッド9の進退状態を検出する検出装置は、ロック用圧力流体の圧力検出手段(図示せず)に接続される前記ロックポート37と、前記出口路45と、加圧エアの圧力検出手段(図示せず)に接続される前記エア供給ポート44と、前記エア通路55と、前記弁機構56等を有する。なお、上記の各圧力検出手段としては、圧力スイッチまたは圧力センサ等が考えられる。
以下、上記ワークサポート1及び上記の検出装置の動作を説明する。
【0026】
図1に示す後退リリース状態では、前記ロック作動室35の圧油が前記ロックポート37から排出され、ロック用ピストン34及び伝動具31が復帰バネ38によって上向き移動してスリーブ部材27の縮径を解除している。また、前記進出ピストン19が後退バネ25によって下降され、その進出ピストン19の係止部22が前記サポートロッド9を下降させている。これにより、そのサポートロッド9の内径段部15に設けた弁面61(図2を参照)が前記弁座62(図2を参照)に接当し、前記弁機構56が閉じられる。
また、サポートロッド9の上部に設けた前記の弁部材46が自重によって下降し、弁面51が弁座に接当している。
【0027】
上記の後退リリース状態では、上記弁機構56が閉じているため、エア供給ポート44へ供給された加圧エアの圧力が所定圧力に上昇し、その圧力上昇状態を、加圧エアの圧力検出手段(図示せず)が「ON」信号として検出している。また、上記ロックポート37の圧力低下状態は、ロック用圧力流体の圧力検出手段(図示せず)が「OFF」信号として検出している。
【0028】
上記図1の後退リリース状態において、ワークW(図3を参照)を上側から搬入して、そのワークWの本体部分を支持台(図示せず)に受け止める。
その後、ロックポート37に圧油を供給する。
すると、図2の進出途中状態に示すように、まず、絞り機構が付与されたロック作動室35の圧力よりも先に進出用圧力室40の圧力が上昇し、進出ピストン19が後退バネ25に抗して上昇していき、これと同時に、進出バネ24がサポートロッド9を上昇させていく。これにより、サポートロッド9の内径段部15に設けた弁面61が前記弁座62から離れ、前記弁機構56が開かれる。
【0029】
このため、上記の図2の進出途中状態では、エア供給ポート44へ供給された加圧エアは、エア通路55と弁部材46の連通路48と前記圧力室50と前記隙間Gとを順に通って外部空間へ排出される。より詳しくいえば、上記隙間Gの絞り作用により、圧力室50の圧力が高まるので、その圧力室50の空気圧力が弁部材46を上向きに押圧して、その弁部材46を開き位置に保持させる。
【0030】
その結果、エア供給ポート44の圧力が設定圧力に上昇せず、その低圧状態を、加圧エアの圧力検出手段(図示せず)が「OFF」信号として検出している。また、上記ロックポート37は、圧力上昇の途中状態であり、設定ロック圧力に到達してないため、その状態をロック用圧力流体の圧力検出手段(図示せず)が「OFF」信号として検出している。
【0031】
次いで、図3の進出ロック状態に示すように、前記の弁部材46がワークWに下側から接当し、その弁部材46の弁面51が弁座52に接当し、前記の出口路45が閉じられる。
引き続いて、前記ロック作動室35の圧力が設定ロック圧力へ高まり、そのロック作動室35からロック用ピストン34へ作用する油圧力によって前記の伝動具31が下向きに移動し、その伝動具31のテーパ内周面32が前記ボールBを転動させながらスリーブ部材27のテーパ外周面28にスムーズに係合していき、前記ハウジング2の下部によって受け止められた上記スリーブ部材27を縮径させる。これにより、その縮径されたスリーブ部材27がサポートロッド9の狭持固定領域Aを求心方向へ押圧し、そのサポートロッド9を狭持固定する。上記の進出ロック状態でワークWの上面を機械加工し、その加工時の押し下げ力を上記サポートロッド9のサポート力によって軸心方向に強力に受け止めるのである。
【0032】
上記図3の進出ロック状態では、弁部材46の弁面51が弁座52に接当して前記の出口路45が閉じられるので、エア供給ポート44へ供給された加圧エアの圧力が所定圧力に上昇し、その圧力上昇状態を、加圧エアの圧力検出手段(図示せず)が「ON」信号として検出する。また、ロックポート37の圧力も設定ロック圧力に上昇するので、その圧力上昇状態を、ロック用圧力流体の圧力検出手段(図示せず)が「ON」信号として検出している。
【0033】
上記ワークWの機械加工が終了した後、前記ロック作動室35から圧油を排出する。すると、まず、ロック用ピストン34及び伝動具31が復帰バネ38によって上側へ押圧され、その伝動具31のテーパ内周面32が前記ボールBを転動させながらスムーズに上向き移動し、スリーブ部材27のテーパ外周面28の前記の押圧状態が解除される。これにより、上記スリーブ部材27が自己の弾性復元力によって拡径されて、上記サポートロッド9のロック状態が解除される。その後、前記の後退バネ25の付勢力が進出ピストン19の係止部22を介して上記サポートロッド9を図1の後退位置へ下降させる。
【0034】
なお、図2の進出途中状態において、何らかの原因により、ワークサポート1の上側にワークWが搬入されてない場合には、その図2において、進出用圧力室40の圧力が進出ピストン19を上限位置まで上昇させると同時にサポートロッド9も上限位置まで上昇し、その後、ロックポート37の圧力が設定ロック圧力に上昇してサポートロッド9をロックする(空動作状態)。
上記の空動作状態では、エア供給ポート44の圧力が設定圧力に上昇せず、その状態を、加圧エアの圧力検出手段(図示せず)が「OFF」信号として検出する。また、ロックポート37の圧力は設定ロック圧力に上昇するので、その圧力上昇状態を、ロック用圧力流体の圧力検出手段(図示せず)が「ON」信号として検出する。これにより、ワークサポート1が空動作状態であることを検出できる。
また、図2の進出途中状態において、何らかの原因によりサポートロッド9が上昇途中で停止した場合も、上記と同様に、エア供給ポート44の圧力が設定圧力に上昇せず、ロックポート37の圧力が設定ロック圧力に上昇する。
【0035】
また、ロック作動室35の圧力流体を排出して上記ワークサポート1を図3の進出ロック状態から図1の後退リリース状態へ切り換えるときに、サポートロッド9の摺動面に異物が噛み込んで当該サポートロッド9の摺動抵抗が大きくなっている場合や進出用圧力室40に背圧が発生している場合には、上記サポートロッド9が下降途中で停止してしまうことがある。この場合、前記の図2の進出途中状態と同様に、前記出口路45が開かれると共に前記エア通路55も開かれているため、エア供給ポート44の圧力が設定圧力よりも低くなり、また、ロックポート37の圧力も設定圧力よりも低くなる。
【0036】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
加圧エアの圧力検出手段の出力信号とロック用圧力流体の圧力検出手段の出力信号とは、それぞれ、図1の後退リリース状態では「ON」と「OFF」になり、図2の進出途中状態では「OFF」と「OFF」になり、図3の進出ロック状態では「ON」と「ON」になる。さらには、図2の進出途中状態で空動作した状態では「OFF」と「ON」になる。また、サポートロッド9が下降途中で停止した場合には、図2の進出途中状態と同様に、「OFF」と「OFF」になる。
このため、サポートロッド9の上記の後退状態を、他の状態から明確に区別して検出できる。しかも、上記の長所を達成するにあたり、ワークサポート1が備える既存の構造を利用して検出装置を構成できるので、その構成が簡素ですむ。
なお、本発明においては、サポートロッド9の進出状態と後退状態とを区別して検出可能であればよく、圧力上昇時に「ON」信号を出力することに代えて「OFF」信号を出力するようにしてもよい。
【0037】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
前記の弁機構56は、例示した構造に代えて、下記(a)又は(b)のように変更可能である。
(a)サポートロッド9の下端面に弁面を形成すると共に、中央部材3の下フランジ4の上端面に弁座を形成する。この場合、サポートロッド9の内周段部15の下面と中央部材3の上端壁3aの上面との間には隙間が形成されることになる。
(b)サポートロッド9のテーパ孔13に下向きの弁面を形成すると共に、中央部材3の途中高さ部に上向きの弁座を形成する。この場合、サポートロッド9の下端面と中央部材3の下フランジ4の上端面との間に隙間が形成されると共に、サポートロッド9の内周段部15の下面と中央部材3の上端壁3aの上面との間にも隙間が形成されることになる。
【0038】
前記エア通路55は、ハウジング2の上端壁2aに形成した横向き通路と、その横向き通路に連通可能なようにサポートロッド9の周壁上部に設けた横向き貫通孔と、を備えたものであってもよい。この場合、前記弁機構をスプール式に構成すればよい。即ち、サポートロッド9が後退位置に下降したときには上記サポートロッド9の外周面がハウジング2の横向き通路を閉じ、上記サポートロッド9が上昇したときには当該サポートロッド9の横向き貫通孔が連通溝を介してハウジング2の横向き通路に連通するように構成することが考えられる。
【0039】
前記の出口路45は、サポートロッド9の内部空間を外部へ連通させるものであればよく、例示した構造に限定されないことは勿論である
前記の弁部材46は、前述した従来公報(特開2001−96435号公報)に記載された種々の形態を利用できることは勿論である。
また、サポートロッド9から前記の上端ブロック11を省略してもよい。この場合、前記の弁部材46は、サポートロッド9のロッド部材10に直接に支持されることになる。
さらに、上記サポートロッド9から上記の弁部材46を省略して、そのサポートロッド9の上端面に、細径に形成した前記の出口路45を、直接に開口させてもよい。この場合、上記サポートロッド9の上端面が前記ワークWに接当したときに上記出口路45の開口部が塞がれて当該出口路45が閉じられることになる。
【0040】
加圧エアの検出手段は、例示した圧力検出手段に代えて、流量検出手段であってもよい。
即ち、エア供給ポート44に供給された加圧エアの流量が設定量以上であることを流量検出手段が検出したときには、その加圧エアが出口路45から外部へ多量に排出され、前記エア通路55および出口路45が開いていると判断できる。これに対して、エア供給ポート44の流量が殆ど無いことを流量検出手段が検出したときには、上記の出口路45またはエア通路55が閉じていると判断できる。そして、エア供給ポート44の流量が殆ど無い場合は、そのエア供給ポート44の圧力が前記の設定圧力以上である場合に相当する。また、エア供給ポート44の流量が設定量以上である場合は、エア供給ポート44の圧力が前記の設定圧力よりも低い場合に相当する。
このため、「エア供給ポート44の流量が殆ど無く、かつ、ロックポート37の圧力が設定圧力よりも低いとき」にワークサポート1が後退リリース状態に切り換えられていると判別でき、その後退状態を他の状態から明確に区別できる。
【0041】
前記スリーブ部材27は、例示したコレットに代えて、薄肉スリーブによって構成してもよい。この場合、ロック作動室35は、上記薄肉スリーブの外周に形成されることになる。
ロック用圧力流体は、例示した圧油に代えて、圧縮空気等の気体であってもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
2:ハウジング,3:中央部材,9:サポートロッド,10:ロッド部材,15:内周段部,19:進出ピストン,24:進出バネ,25:後退バネ,27:スリーブ部材,35:ロック作動室,37:ロックポート,40:進出用圧力室,44:エア供給ポート,45:出口路(貫通孔),46:弁部材,51:弁面,52:弁座,55:エア通路,56:弁機構,61:弁面,62:弁座,W:ワーク.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)に上下方向へ移動可能に支持されてワーク(W)に対して進退されるサポートロッド(9)と、そのサポートロッド(9)に外嵌されると共に縮径側に弾性変形可能なスリーブ部材(27)と、そのスリーブ部材(27)を縮径させるように上記ハウジング(2)内に設けたロック作動室(35)と、を備えたワークサポートであって、
上記ロック作動室(35)へ連通するように上記ハウジング(2)に設けたロックポート(37)と、上記ハウジング(2)に設けられて加圧エアが供給されるエア供給ポート(44)と、上記サポートロッド(9)の上部に設けられて外部空間へ連通可能な出口路(45)と、その出口路(45)に上記エア供給ポート(44)を連通させるように上記ハウジング(2)及び上記サポートロッド(9)に設けたエア通路(55)と、上記サポートロッド(9)が下降位置に後退されたときに上記エア通路(55)を閉じる弁機構(56)と、を有し、
上記サポートロッド(9)の上昇が上記ワーク(W)によって停止されたときに当該ワーク(W)を介して上記出口路(45)が閉じられるように構成した、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項2】
請求項1に記載したワークサポートにおいて、
前記ハウジング(2)の下部に中央部材(3)を上向きに設け、その中央部材(3)に前記サポートロッド(9)を外嵌めし、上記中央部材(3)と上記サポートロッド(9)との間に前記エア通路(55)の一部を形成した、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項3】
請求項2に記載したワークサポートにおいて、
前記の弁機構(56)は、前記サポートロッド(9)に設けた下向きの弁面(61)と、前記中央部材(3)に設けた上向きの弁座(62)とを有する、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項4】
請求項3に記載したワークサポートにおいて、
前記弁面(61)を、前記サポートロッド(9)の上下方向の途中部に設けた内周段部(15)の下面に形成し、前記弁座(62)を、前記中央部材(3)の上端面に形成した、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載したワークサポートにおいて、
前記サポートロッド(9)の上部に、前記ワーク(W)に接当される弁部材(46)を昇降可能に支持し、上記弁部材(46)に設けた下向きの弁面(51)と上記サポートロッド(9)の上部に設けた上向きの弁座(52)とによって前記の出口路(45)を開閉するように構成した、
ことを特徴とするワークサポート。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載したワークサポートにおいて、
前記サポートロッド(9)を進退させる手段は、前記ハウジング(2)の下部の筒孔に上下移動可能に挿入された進出ピストン(19)と、その進出ピストン(19)の下側に配置されると共に前記ロックポート(37)に連通された進出用圧力室(40)と、前記サポートロッド(9)を上向きに付勢する進出バネ(24)と、その進出バネ(24)の付勢力に抗して上記進出ピストン(19)を介して上記サポートロッド(9)を下降位置に付勢する後退バネ(25)とを有する、
ことを特徴とするワークサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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