説明

ワーク保持用治具取付装置

【課題】ワークに所定作業を行う機械において、ワーク保持用治具の交換作業時間ないし機械停止時間の短縮、生産性低下の解消を図る。
【解決手段】ワークに所定作業を行う機械へのワーク保持用治具50の取付装置20は、機械のワーク設置部に固定する基台30、基台30上に載置する治具台40、基台30の合せ面の磁石34、治具台40の合せ面の磁性体41、治具台40を基台30上に載置したときの基台30に対する治具台40の位置を決めるピン37及び孔42、治具台40を基台30上に載置したときに磁性体41と磁石34とが対向するロック位置Lと対向しないアンロック位置Uとに磁石34を移動させるスライドレバー33とを備える。治具台40は非磁性体でなり治具50を組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持用治具取付装置に関し、設置されたワークに対して印刷や加工あるいは検査等の所定の作業を行う機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品等に図柄や文字等を印刷するのに用いられるパッド印刷機は、例えば特許文献1に記載されるように、印刷パターンの凹刻溝が形成された印版とインキ溜めとが備えられたインキ皿、及びこのインキ皿に隣接して配置されたワーク設置台を有する。
【0003】
そして、印刷作業としては、インキ溜めのインキを印版に塗布し、印版上の余分なインキを除去し、転写パッドを印版に押し付けて該印版の凹刻溝に残ったインキを転写パッドに転写させた後、この転写パッドをワーク設置台に設置されたワークに押し付けて該パッドに転写されていたインキをワークに転写して印刷する。
【0004】
【特許文献1】特許第3464065号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記印刷作業においてワークが設置されるワーク設置台は、一般に、X方向(パッド印刷機の幅方向)及びY方向(パッド印刷機の長さ方向)に位置の調整が可能な可動テーブルを含み、この可動テーブルに、ワークを保持するための治具が複数のボルトを用いて取り付けられる。
【0006】
その場合に、治具は、転写パッドによる印刷がワークの所定部位に精度よく行われるようにワークを位置決めして保持するものであり、そのため、ワークの形状に応じて作製され、形状が相違するワークの種類毎にそれぞれ異なる治具が用いられる。
【0007】
したがって、ワークの種類を変更するときは、ワーク保持用治具を交換する必要があり、そのときに、複数のボルトを緩めて可動テーブルに固定されている治具を取り外し、次に、新しい治具を複数のボルトを締め付けて可動テーブルに取り付けなければならず、この複数のボルトの緩め作業や締め付け作業に時間がかかり、その期間中は、パッド印刷機の印刷作業が停止して生産性が阻害されるという問題がある。
【0008】
そして、このような問題は、パッド印刷機に限らず、ワーク保持用治具を用いてワークを設置するように構成された機械一般に起こり得る問題である。
【0009】
そこで、本発明は、ワークに対して所定の作業を行う機械において、ワーク保持用治具の交換作業時間を短縮し、機械の停止時間を短くして、生産性の低下を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。なお、以下の本発明の開示において、図面又は発明の実施の形態で使用した符号を参考までに付記する。
【0011】
まず、請求項1に記載の発明は、ワーク(W)に対して所定の作業を行う機械(1)にワーク保持用治具(50)を取り付けるための装置(20)であって、機械(1)のワーク設置部(5)に固定される基台(30)と、この基台(30)上に載置され、ワーク保持用治具(50)が組み付けられる治具台(40)とが備えられ、前記両台(30,40)の少なくとも一方は非磁性体でなると共に、前記治具台(40)が前記基台(30)上に載置されたときに相互に合せられる治具台(40)の合せ面(40a)及び基台(30)の合せ面(30a)のうちの非磁性体でなる一方の台の合せ面(40a)に設けられた磁性体(41)と、他方の台の合せ面(30a)に設けられた磁石(34)と、前記治具台(40)が前記基台(30)上に載置されたときに基台(30)に対する治具台(40)の位置を決める位置決め手段(37,42)と、前記治具台(40)が前記基台(30)上に載置されたときに前記磁性体(41)と前記磁石(34)とが対向するロック位置(L)と対向しないアンロック位置(U)とに前記磁性体(41)又は前記磁石(34)を移動させる移動手段(33)とが備えられていることを特徴とする。
【0012】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のワーク保持用治具取付装置(20)において、前記移動手段(33)で移動される前記磁性体(41)又は前記磁石(34)が設けられた前記基台又は前記治具台の合せ面(30a)に長穴(35)が形成され、前記磁性体(41)又は前記磁石(34)は、この長穴(35)に移動自在に嵌合されて、前記磁性体(41)又は前記磁石(34)がこの長穴(35)の一方の端部に当接する位置が前記ロック位置(L)に設定され、他方の端部に当接する位置が前記アンロック位置(U)に設定されていることを特徴とする。
【0013】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載のワーク保持用治具取付装置(20)において、前記移動手段(33)で移動される前記磁性体(41)又は前記磁石(34)が設けられた前記基台(30)又は前記治具台(40)に前記磁性体(41)又は前記磁石(34)を前記ロック位置(L)から前記アンロック位置(U)に付勢する弾性体(36)が備えられ、この弾性体(36)の付勢力は、前記磁性体(41)又は前記磁石(34)がロック位置(L)に移動されているときは、対向する前記磁性体(41)と前記磁石(34)との間に生じる磁力よりも小さくなり、前記磁性体(41)又は前記磁石(34)がアンロック位置(U)に移動されているときは、対向しない前記磁性体(41)と前記磁石(34)との間に生じる磁力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
まず、請求項1に記載の発明によれば、ワーク(W)に対して所定の作業を行う機械(1)において、ワーク保持用治具(50)を取り付けるための装置(20)は、機械(1)のワーク設置部(5)に固定される基台(30)上に、ワーク保持用治具(50)が組み付けられる治具台(40)が載置される構成を基本構成とし、そのうえで、基台(30)及び治具台(40)の一方の台の合せ面(40a)に磁性体(41)を設け、他方の台の合せ面(30a)に磁石(34)を設けて、治具台(40)が基台(30)上に載置されたときにこれらの磁性体(41)と磁石(34)とが対向するロック位置(L)と対向しないアンロック位置(U)とに磁性体(41)又は磁石(34)を移動させる移動手段(33)を備えている。
【0015】
したがって、治具台(40)を基台(30)上に載置した状態で磁性体(41)又は磁石(34)を移動手段(33)でロック位置(L)に移動すれば、磁性体(41)と磁石(34)とが対向して近接し、これらの磁性体(41)と磁石(34)との間に生じる磁力が相対的に大きくなって、治具台(40)が基台(30)に取り付けられることとなり、ひいてはワーク保持用治具(50)が機械(1)に取り付けられることとなる。
【0016】
一方、治具台(40)を基台(30)上に載置した状態で磁性体(41)又は磁石(34)を移動手段(33)でアンロック位置(U)に移動すれば、磁性体(41)と磁石(34)とが対向しなくなって離反し、これらの磁性体(41)と磁石(34)との間に生じる磁力が相対的に小さくなって、治具台(40)が基台(30)から取り外し可能となり、ひいてはワーク保持用治具(50)が機械(1)から取り外し可能となる。
【0017】
したがって、治具台(40)ひいてはワーク保持用治具(50)の取り付け・取り外しが、基台(30)又は治具台(40)に設けた磁性体(41)又は磁石(34)の移動操作だけで済むので、ワーク保持用治具(50)の交換作業時間が短縮し、機械(1)の停止時間が短くなり、生産性の低下が解消されることとなる。
【0018】
本発明においては、治具台(40)は1機の機械(1)に対して最低2つあればよい。つまり、1つの治具台(40)及び治具(50)を用いて機械(1)の作業中に、他の1つの治具台(40)に次に用いる治具(50)を予め組み付けておくのである。そして、治具交換が終われば、取り外した治具台(40)にさらに次の治具(50)を組み付けておくという作業を繰り返すのである。
【0019】
その場合に、治具台(40)が基台(30)上に載置されたときに基台(30)に対する治具台(40)の位置を決める位置決め手段(37,42)を設けたので、磁性体(41)又は磁石(34)をロック位置(L)又はアンロック位置(U)に移動したときの磁性体(41)と磁石(34)との対向・非対向がずれることなく確実に達成される。
【0020】
また、磁性体(41)は、非磁性体でなる台(40)に設けたので、磁性体(41)又は磁石(34)をアンロック位置(U)に移動して磁性体(41)と磁石(34)とを非対向としたときに、非磁性体の台(40)と磁石(34)との間に磁力が発生することが回避される。
【0021】
なお、磁石(34)は、磁性体でなる台に設けても、非磁性体でなる台に設けても、本発明の効果に影響を及ぼすものではない。
【0022】
次に、請求項2に記載の発明によれば、基台又は治具台の合せ面(30a)に形成した長穴(35)に移動自在に嵌合した磁性体(41)又は磁石(34)を長穴(35)の端部に当接させることにより、磁性体(41)又は磁石(34)をロック位置(L)又はアンロック位置(U)に移動するようにしたから、簡単な構成で、確実、容易に、磁性体(41)又は磁石(34)をロック位置(L)又はアンロック位置(U)に移動することが可能となる。
【0023】
次に、請求項3に記載の発明によれば、磁性体(41)又は磁石(34)がロック位置(L)に移動しているときは、磁性体(41)と磁石(34)との間に生じる相対的に大きな磁力よりも小さい力で磁性体(41)又は磁石(34)をロック位置(L)からアンロック位置(U)に付勢し、磁性体(41)又は磁石(34)がアンロック位置(U)に移動しているときは、磁性体(41)と磁石(34)との間に生じる相対的に小さな磁力よりも大きい力で磁性体(41)又は磁石(34)をロック位置(L)からアンロック位置(U)に付勢する弾性体(36)を備えたから、対向して近接したロック状態の磁性体(41)と磁石(34)とが弾性体(36)の付勢力で引き離されてアンロック状態に戻ることが回避されつつ、対向せず離反したアンロック状態の磁性体(41)と磁石(34)とが磁力で引き寄せられてロック状態に戻ることが回避される。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の最良の実施形態に係るパッド印刷機1の側面図、図2はその正面図である。このパッド印刷機1は従来周知の構成で、架台2と、この架台2上に設置された側面視で略逆L字状のフレーム3とを有している。フレーム3で保護された空間に、印刷パターンの凹刻溝が形成された印版4aとインキ溜め4bとが備えられたインキ皿4が配置され、インキ皿4の前方にワーク設置台5が配置されている。ワーク設置台5は、フレーム3の前部に備えられたZ方向(パッド印刷機1の高さ方向)に移動自在のベースプレート9上に固定されている。
【0025】
インキ皿4及びワーク設置台5の上方に、インキプレート6、ドクターブレード7及び転写パッド8がそれぞれロッド6a,7a,8aを介して配設されている。これらの部材6,7,8は、図示しないシリンダ等の適宜の駆動手段により、上下及び前後に移動される。
【0026】
そして、このパッド印刷機1による印刷作業としては、インキ溜め4bのインキをインキプレート6で印版4aに塗布し、印版4a上の余分なインキをドクターブレード7で除去し、転写パッド8を印版4aに押し付けて該印版4aの凹刻溝に残ったインキを転写パッド8に転写させた後、この転写パッド8をワーク設置台5に設置されたワークWに押し付けて該パッド8に転写されていたインキをワークWに転写して印刷する。
【0027】
このようなパッド印刷機1の構成及び動作は従来周知であり、本発明の特長部分でもないので、これ以上の説明は省略する。
【0028】
次に、図3は前記パッド印刷機1のワーク設置台5周辺の拡大側面図、図4はその正面図である。ワーク設置台5は、前述したように、ベースプレート9上に固定されているのであるが、詳しくは、下部から順に、ベースプレート9の上面に固定された固定ベース10、この固定ベース10の上面に固定された固定テーブル11、この固定テーブル11の上面にX方向(パッド印刷機1の幅方向)に移動自在に組み付けられた第1可動テーブル12、及びこの第1可動テーブル12の上面にY方向(パッド印刷機1の長さ方向)に移動自在に組み付けられた第2可動テーブル13を含んでいる。
【0029】
そして、このワーク設置台5に、本発明の特長部分であるワーク保持用治具取付装置20を介して、ワークWを保持するための治具50が取り付けられている。
【0030】
すなわち、ワーク保持用治具取付装置20は、下部から順に、ワーク設置台5の第2可動テーブル13の上面に固定された基台30、及びこの基台30の上面に着脱自在に載置された治具台40を含んでいる。そして、治具台40の上面にワーク保持用治具50が組み付けられている。
【0031】
ここで、ワーク保持用治具50は、平坦形状の基礎板50aの中央部に円錐台形状のワーク嵌合部50bが突設された構成で、前記基礎板50aが複数のボルト61…61(図6参照)で治具台40に締結されている。また、基台30は、複数のボルト62…62(図7参照)で第2可動テーブル13に締結されている。
【0032】
次に、図5は図4の矢印(v)に沿う縦断面図、図6は図4の矢印(vi)に沿う治具台40の底面図、図7は図4の矢印(vii)に沿う基台30の平面図である。
【0033】
まず、基台30及び治具台40は、相互に略同寸法の偏平な箱形状であり、治具台40が基台30上に載置されたときには、図6に示す治具台40の下面40aと、図7に示す基台30の上面30aとが相互に密着して合せられる。つまり、治具台40の下面40a及び基台30の上面30aはそれぞれ合せ面である。
【0034】
そして、図5、図6に明らかなように、治具台40の合せ面40aの中央部に、磁性体である鉄製のワッシャ41が埋め込まれ、ボルト65で締結されている。このとき、ワッシャ41及びボルト65は、合せ面40aから突出しないように略面一に組み付けられている。ここで、この鉄製ワッシャ41が設けられた治具台40は、非磁性体であるアルミニウム合金製である。
【0035】
一方、図5、図7に明らかなように、基台30の合せ面30aの中央部に、磁石34が具備されている。ここで、基台30は、詳しくは、下部から順に、底板31、及び本体ケース32を含んでいる。本体ケース32の下面に、前後方向に延びる凹溝33bが形成されている。この凹溝33bの後端部は、本体ケース32の内部で終わっているが、前端部は、本体ケース32の前面まで至っている(図4参照)。そして、この凹溝33bに、長尺形状のスライドレバー33が前後方向に移動自在に嵌合されている。スライドレバー33の前端部は、本体ケース32から突出し、その先端部にツマミ33aが設けられている。
【0036】
また、基台30の合せ面30aの中央部に、前後方向に延びる長穴35が形成されている。この長穴35は、前記凹溝33bと通じている。そして、この長穴35に、前記磁石34が嵌合され、かつ前記スライドレバー33にボルト64で締結されている。このとき、磁石34は、合せ面30aから突出しないように略面一に組み付けられている。ここで、この磁石34が設けられた基台30は、非磁性体でも磁性体でも構わないが、本実施形態では、前記治具台40と同じく非磁性体のアルミニウム合金製である。
【0037】
スライドレバー33を基台30の内側方向、つまり後方に押すと、磁石34が長穴35の後方の端部(図5では右側の端部、図7では上側の端部)に当接して停止する。この位置は、基台30上に載置された治具台40の中央部に設けられた鉄製ワッシャ41と磁石34とが相互に対向する位置、すなわちロック位置Lである。
【0038】
逆に、スライドレバー33を基台30の外側方向、つまり前方に引くと、磁石34が長穴35の前方の端部(図5では左側の端部、図7では下側の端部)に当接して停止する。この位置は、基台30上に載置された治具台40の中央部に設けられた鉄製ワッシャ41と磁石34とが相互に対向しない位置、すなわちアンロック位置Lである。
【0039】
したがって、スライドレバー33は、磁石34を、鉄製ワッシャ41と対向するロック位置Lと、対向しないアンロック位置Uとに移動させる移動手段を構成する。
【0040】
また、本体ケース32の内部に、前後方向に延びるコイルスプリング36が収容されている。このコイルスプリング36は、スライドレバー33の後端部に当接し、常に自然長から縮んだ状態にあり、スライドレバー33及び磁石34を後方のロック位置Lから前方のアンロック位置Uに付勢している。
【0041】
その場合に、このコイルスプリング36の付勢力は、磁石34がロック位置Lに移動しているときは、相互に対向する磁石34と鉄製ワッシャ41との間に生じる磁力よりも小さくなり、磁石34がアンロック位置Uに移動しているときは、相互に対向しない磁石34と鉄製ワッシャ41との間に生じる磁力よりも大きくなるように設定されている。
【0042】
そして、底板31は、前記凹溝33b、前記スライドレバー33、前記コイルスプリング36等を覆って、本体ケース32の下面に、複数のボルト63…63で締結されている。
【0043】
また、図5、図6に明らかなように、治具台40の合せ面40aに、複数(図例では2つ)の丸孔42,42が形成されていると共に、図5、図7に明らかなように、基台30の合せ面30aに、前記丸孔42,42と同数の突出ピン37,37が前記丸孔42,42と対応する位置に突設されている。これらの丸孔42,42及び突出ピン37,37は、治具台40が基台30上に載置されたときに基台30に対する治具台40の位置を決める位置決め手段を構成する。
【0044】
このワーク保持用治具取付装置20の用い方は、例えば次のようである。まず、パッド印刷機1のワーク設置台5の最上部の第2可動テーブル13に基台30をボルト62…62で固定しておく。治具台40は複数用意しておき、各治具台40…40に予め各種のワーク保持用治具50…50を1つづつボルト61…61で組み付けておく。そうすれば、ワークW種類の変更に伴うワーク保持用治具50の交換時には、パッド印刷機1側でスライドレバー33を引いてアンロックし、治具台40を取り外し、次の治具台40を基台30上に載置し、スライドレバー33を押してロックするだけで済み、治具50の交換作業時間の短縮が図れる。
【0045】
あるいは、治具台40を2つだけ用意して使い回ししてもよい。つまり、1つの治具台40及び治具50を用いてパッド印刷機1の印刷作業中に、他の1つの治具台40に次に用いる治具50を予め組み付けておくのである。そして、治具交換が終われば、取り外した治具台40にさらに次の治具50を組み付けておくという作業を繰り返すのである。こうすれば治具台40の数が少なくて済むという点で好ましい結果が得られる。
【0046】
このように、本実施形態では、ワークWに対して印刷作業を行うパッド印刷機1において、ワーク保持用治具取付装置20は、パッド印刷機1のワーク設置台5に固定される基台30上に、ワーク保持用治具50が組み付けられる治具台40が載置される構成を基本構成としている。
【0047】
そのうえで、治具台40の合せ面40aに鉄製ワッシャ41を設け、基台30の合せ面30aに磁石34を設けて、治具台40が基台30上に載置されたときに鉄製ワッシャ41と磁石34とが対向するロック位置Lと対向しないアンロック位置Uとに磁石34を移動させるスライドレバー33を備えている。
【0048】
したがって、治具台40を基台30上に載置した状態で磁石34をスライドレバー33でロック位置Lに移動すれば、鉄製ワッシャ41と磁石34とが対向して近接し、これら41,34の間に生じる磁力が相対的に大きくなって、治具台40が基台30に取り付けられることとなり、ひいてはワーク保持用治具50がパッド印刷機1に取り付けられることとなる。
【0049】
一方、治具台40を基台30上に載置した状態で磁石34をスライドレバー33でアンロック位置Uに移動すれば、鉄製ワッシャ41と磁石34とが対向しなくなって離反し、これら41,34の間に生じる磁力が相対的に小さくなって、治具台40が基台30から取り外し可能となり、ひいてはワーク保持用治具50がパッド印刷機1から取り外し可能となる。
【0050】
したがって、治具台40ひいてはワーク保持用治具50の取り付け・取り外しが、基台30に設けた磁石34の移動操作だけで済むので、ワーク保持用治具50の交換作業時間が短縮し、パッド印刷機1の停止時間が短くなり、生産性、つまり印刷作業性の低下が解消されることとなる。
【0051】
また、治具台40が基台30上に載置されたときに基台30に対する治具台40の位置を決める丸孔42,42及び突出ピン37,37を治具台40及び基台30の合せ面40a,30aに設けたので、磁石34をロック位置L又はアンロック位置Uに移動したときの磁石34と鉄製ワッシャ41との対向・非対向がずれることなく確実に達成される。
【0052】
また、鉄製ワッシャ41は、非磁性体であるアルミニウム合金製の治具台40に設けたので、磁石34をアンロック位置Uに移動して鉄製ワッシャ41と磁石34とを非対向としたときに、非磁性体の治具台40と磁石34との間に磁力が発生することが回避される。
【0053】
また、基台30の合せ面30aに形成した長穴35に移動自在に嵌合した磁石34を長穴35の端部に当接させることにより、磁石34をロック位置L又はアンロック位置Uに移動するようにしたから、簡単な構成で、確実、容易に、磁石34をロック位置L又はアンロック位置Uに移動することが可能となる。
【0054】
また、コイルスプリング36は、磁石34がロック位置Lに移動しているときは、磁石34と鉄製ワッシャ41との間に生じる相対的に大きな磁力よりも小さい力で磁石34をロック位置Lからアンロック位置Uに付勢するので、対向して近接したロック状態の磁石34と鉄製ワッシャ41とがコイルスプリング36の付勢力で引き離されてアンロック状態に戻ることが回避される。
【0055】
それよりも、コイルスプリング36は、磁石34がアンロック位置Uに移動しているときは、磁石34と鉄製ワッシャ41との間に生じる相対的に小さな磁力よりも大きい力で磁石34をロック位置Lからアンロック位置Uに付勢するので、対向せず離反したアンロック状態の磁石34と鉄製ワッシャ41とが磁力で引き寄せられてロック状態に戻ることが回避されるという顕著な効果が奏される。
【0056】
なお、治具台40側に磁石34を設け、基台30側、つまりスライドレバー33に鉄製ワッシャ41を設けてもよい。また、凹溝33b、スライドレバー33、長穴35、コイルスプリング36等を治具台40側に設けることもできる。
【0057】
また、本発明に係るワーク保持用治具取付装置20を、図8に示すようなパッド印刷システムに適用すればより一層効果が増強される(第2実施形態)。先の第1の実施形態と同じ符号を用いて説明する。
【0058】
すなわち、図8に示す印刷システムは、水平に載置された円形のターンテーブル90の周囲に、5機のパッド印刷機1…1を45°間隔で放射状に並べたものである。そして、ターンテーブル90の周縁部には、8つのワーク保持用治具取付装置20…20を45°間隔で配置している。ターンテーブル90は、45°づつ間欠的に矢印方向に回動し、パッド印刷機1…1の前方に到着した治具取付装置20…20に設置されたワークW…Wに対して、第2ステーションS2から第6ステーションS6に亘って、パッド印刷が段階的に行われる。これにより、パッド印刷でワークWに多重印刷や写真印刷をすることが可能となる。
【0059】
ここで、第1ステーションS1は、未印刷のワークWが最初に供給される供給ステーション、第7ステーションS7は、印刷済みのワークWが最後に排出される排出ステーションである。
【0060】
このようなマルチヘッドの印刷システムでは、ワークWの種類を変更するときは、8つのワーク保持用治具50…50を交換する必要があり、従来は交換作業時間がより一層長引くものであるが、本発明に係るワーク保持用治具取付装置20…20を用いたことで、ワーク保持用治具50…50の取り付け・取り外しが、スライドレバー33の操作だけで済むので、ワーク保持用治具50…50の交換作業時間が短縮し、印刷システムの停止時間が短くなり、生産性、つまり印刷作業性の低下が解消される効果がより一層顕著となる。
【0061】
なお、本発明は、パッド印刷機に限らず、ワーク保持用治具を用いてワークを設置するように構成された加工機械や検査機械等の機械一般に適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、ワーク保持用治具の交換作業時間を短縮し、機械の停止時間を短くして、生産性の低下を解消することが可能な技術であるから、設置されたワークに対して印刷や加工あるいは検査等の所定の作業を行う機械の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るパッド印刷機の側面図である。
【図2】前記パッド印刷機の正面図である。
【図3】前記パッド印刷機のワーク設置台周辺の拡大側面図である。
【図4】前記パッド印刷機のワーク設置台周辺の拡大正面図である。
【図5】図4の矢印(v)に沿う縦断面図である。
【図6】図4の矢印(vi)に沿う治具台の底面図である。
【図7】図4の矢印(vii)に沿う基台の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るパッド印刷システムの平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 機械(パッド印刷機)
5 ワーク設置部(ワーク設置台)
50 ワーク保持用治具
20 ワーク保持用治具取付装置
30 基台
30a 基台の合せ面(基台の上面)
33 移動手段(スライドレバー)
34 磁石
35 長穴
36 弾性体(コイルスプリング)
37 位置決め手段(突出ピン)
40 治具台
40a 治具台の合せ面(治具台の下面)
41 磁性体(鉄製ワッシャ)
42 位置決め手段(丸孔)
L ロック位置
U アンロック位置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して所定の作業を行う機械にワーク保持用治具を取り付けるための装置であって、
機械のワーク設置部に固定される基台と、
この基台上に載置され、ワーク保持用治具が組み付けられる治具台とが備えられ、
前記両台の少なくとも一方は非磁性体でなると共に、
前記治具台が前記基台上に載置されたときに相互に合せられる治具台の合せ面及び基台の合せ面のうちの非磁性体でなる一方の台の合せ面に設けられた磁性体と、
他方の台の合せ面に設けられた磁石と、
前記治具台が前記基台上に載置されたときに基台に対する治具台の位置を決める位置決め手段と、
前記治具台が前記基台上に載置されたときに前記磁性体と前記磁石とが対向するロック位置と対向しないアンロック位置とに前記磁性体又は前記磁石を移動させる移動手段とが備えられていることを特徴とするワーク保持用治具取付装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のワーク保持用治具取付装置において、
前記移動手段で移動される前記磁性体又は前記磁石が設けられた前記基台又は前記治具台の合せ面に長穴が形成され、
前記磁性体又は前記磁石は、この長穴に移動自在に嵌合されて、
前記磁性体又は前記磁石がこの長穴の一方の端部に当接する位置が前記ロック位置に設定され、他方の端部に当接する位置が前記アンロック位置に設定されていることを特徴とするワーク保持用治具取付装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のワーク保持用治具取付装置において、
前記移動手段で移動される前記磁性体又は前記磁石が設けられた前記基台又は前記治具台に前記磁性体又は前記磁石を前記ロック位置から前記アンロック位置に付勢する弾性体が備えられ、
この弾性体の付勢力は、前記磁性体又は前記磁石がロック位置に移動されているときは、対向する前記磁性体と前記磁石との間に生じる磁力よりも小さくなり、前記磁性体又は前記磁石がアンロック位置に移動されているときは、対向しない前記磁性体と前記磁石との間に生じる磁力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とするワーク保持用治具取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−110979(P2010−110979A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284971(P2008−284971)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000110642)ナビタス株式会社 (15)
【出願人】(000140591)株式会社下西製作所 (21)