一対のフルPC部材の接合構造、一対のフルPC部材の接合方法、床構造、フルPC板材
【課題】フルPC床板を接続して床面を構築する際にコンクリートの打設量を減らす。
【解決手段】フルPC床板の接合構造110は、一方のフルPC部材40は、接合鉄筋44と、接合鉄筋44の近傍において接合端面及び上面に開口する切り欠き部42Aとを備え、他方のフルPC床板30は、接合端面より突出する接合鉄筋31Aを備え、他方のフルPC床板30を、その接合鉄筋31Aが一方のフルPC床板40の切り欠き部42A内に位置するとともに、一対のフルPC床板30、40の接合鉄筋31A,43が部分的に重なり合うように建て込み、切り欠き部42Aにグラウト13を充填してなる。
【解決手段】フルPC床板の接合構造110は、一方のフルPC部材40は、接合鉄筋44と、接合鉄筋44の近傍において接合端面及び上面に開口する切り欠き部42Aとを備え、他方のフルPC床板30は、接合端面より突出する接合鉄筋31Aを備え、他方のフルPC床板30を、その接合鉄筋31Aが一方のフルPC床板40の切り欠き部42A内に位置するとともに、一対のフルPC床板30、40の接合鉄筋31A,43が部分的に重なり合うように建て込み、切り欠き部42Aにグラウト13を充填してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルPC床板同士又はフルPC床板とフルPC梁部材とを接合するための接合構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、施工期間を短縮するため、予め工場等で形成したフルPC床板同士を接合することにより床構造を構築することが行われている。このようなフルPC床板同士の接合部には、隣接するフルPC床板同士の間で応力伝達が確実に行われるようにしなければならない。そこで、例えば、特許文献1には、フルPC床板間で確実に応力伝達が行われるように、隣接するフルPC床板の端部が載せられる鉄骨梁の上面にスタッドを設けるとともに、両フルPC床板の接合側の端面よりU字型に湾曲させた鉄筋を突出させておき、鉄筋の湾曲部が鉄骨梁に設けられたスタッドに嵌装されるようにフルPC床板を設置し、隣接するフルPC床板の間にコンクリートを打設することによりフルPC床板同士を接合する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9―158377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、特許文献1記載の方法では、フルPC床板を接合する際に、フルPC床板の間にコンクリートを打設するため、打設するコンクリートの量が多く、ポンプ車などを用いなければならず、施工に手間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、フルPC床板を用いて床面を構築する際にコンクリートの打設量を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と、を備え、他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋の突出部分が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
なお、上記の接合鉄筋同士が部分的に重なり合うとは、接合鉄筋が接触していても、接触していなくてもよく、要するに、接合鉄筋同士が近傍に位置するとともに、接合鉄筋の一部がその長さ方向に並ぶように配置された状態をいう。
【0006】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、 他方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出する接合鉄筋とを備え、前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、前記凹部内に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部は先端が前記切り欠き部近傍に埋設され、残りは接合端面より突出するように埋設された接合鉄筋と、を備え、一方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部が前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられ、残りは接合端面より突出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、一方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0010】
上記のフルPC部材の接合構造において、前記一対のフルPC部材は、前記一対のフルPC部材は、一対のフルPC床板又はフルPC壁部材であってもよい。
また、前記一対のフルPC部材は、フルPC床板又はフルPC壁部材と、フルPC梁部材とであってもよい。
また、前記一対のフルPC部材は、フルPC壁部材及びフルPC柱部材であってもよい。
【0011】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに前記切り欠き部の近傍に接合鉄筋を埋設しておき、他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一対のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部の近傍に又は切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、他方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部を設けるとともに、接合鉄筋を前記切り欠き部の近傍に埋設し、又は切り欠き部内に端部が露出するように設けておき、前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、前記凹部内に充填材を充填することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の床構造は、上記の接合構造により接合されてなることを特徴とする。
また、本発明のフルPC板材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備えたフルPC梁部材、フルPC柱部材又はフルPC床板に接合されるフルPC板材であって、前記接合鉄筋に対応する位置に表面及び接合端面に開口するように切り欠きが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フルPC部材に設けられた切り欠き部内にグラウトを充填することにより、フルPC部材を接合することができるため、コンクリートの打設量を減らすことができ、施工性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のフルPC部材の接合構造の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1(A)は、本実施形態の接合構造を用いて構築した床面100を示す平面図であり、(B)は(A)におけるI部の拡大図である。床面100は、鉄筋コンクリート造のラーメン架構1内の梁2により囲まれた矩形状の空間に、平面視長方形状の一対のフルPC床板30、40が接合構造110により接合され、これらのフルPC床板30、40の外周部が接合構造120により周囲の梁2に接合されて構成されている。梁2はフルPC梁部材を用いて構築されている。また、後述するように、フルPC床板30、40は接合端面に切り欠き部42Aを有するフルPC床板40が先行して建て込まれ、接合端面より突出する接合鉄筋31Aを有するフルPC床板30が後行して建て込まれている。本実施形態では、フルPC床板30、40同士の接合構造110及び、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との接合構造120に本発明が適用されている。
【0017】
図2及び図3は、フルPC床板30、40の構成を示す図であり、図2は、先行して建て込まれるフルPC床板40を示し、図3は、後行して建て込まれるフルPC床板30を示す図である。なお、図2において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。また、図3において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【0018】
図2に示すように、先行して建て込まれるフルPC床板40を構成するコンクリート43のフルPC梁部材10と接合される側の端部には、接合端面より突出するように接合鉄筋41Bが埋設されている。また、コンクリート43のフルPC床板30と接合される側の接合端部には、上面及び接合端面に開口するように所定の間隔で切り欠き部42Aが設けられており、この切り欠き部42Aの下方には接合鉄筋44が埋設されている。
【0019】
また、図3に示すように、後行して建て込まれるフルPC床板30のコンクリート33のフルPC梁部材10と接合する側の端部には、フルPC床板40と同様に、接合端面より突出するように接合鉄筋31Bが埋設されている。また、フルPC床板30のフルPC床板40と接合される側の端部には、フルPC床板30の接合端面に設けられた切り欠き部42Aに対応するように端面より突出するように、接合鉄筋31Aが埋設されている。
【0020】
以下、これらフルPC床板同士30、40を接合するとともに、フルPC床板30、40と梁部材10とを接合することにより、床面1を構築する流れを説明する。図4〜図7は、フルPC床板30、40を用いて床面1を構築する工程を示す図である。なお、図4及び図5において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図6及び図7において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【0021】
図4は、フルPC床板30、40を建て込む前の状態を示す図である。同図に示すように、床面1を構築するにあたり、予め、梁2に当たる位置にはフルPC梁部材10が建て込まれており、これら建て込まれたフルPC梁部材10は柱部材20に接合されている。フルPC梁部材10を構成するコンクリート11のフルPC床板30、40の接合される側の接合端部には、上面及び接合端面に開口するように切り欠き部12が設けられ、切り欠き部12の下方には接合鉄筋14が埋設されている。なお、切り欠き部12は、フルPC床板30、40の接合端面より突出する接合鉄筋31B、41Bに対応する位置に設けられている。
【0022】
図5に示すように、まず、揚重機(不図示)を用いて、フルPC床板40を、PC梁部材10と接合される側の端面より突出する接合鉄筋41Bが、フルPC梁部材10に設けられた切り欠き部12内に位置するように上方から建て込み、下方より仮設の支持部材5により支持する。
【0023】
次に、図6に示すように、揚重機を用いて、フルPC床板30をフルPC梁部材10と接合される側の端面より突出する接合鉄筋31Bが、フルPC梁部材10に設けられた切り欠き部12内に位置するとともに、フルPC床板40と接合される側の接合端面より突出する接合鉄筋31AがフルPC床板40に設けられた切り欠き部42A内に位置するように上方から降下させて建て込み、下方より仮設の支持部材5により支持する。これにより、フルPC床板30の接合鉄筋31Aと、フルPC床板の接合鉄筋44とが部分的に重なりあうこととなる。
【0024】
次に、図7に示すように、フルPC梁部材10及びフルPC床板40の切り欠き部12、42Aにグラウト13を充填する。この充填したグラウト13が硬化することにより、フルPC床板30、40の接合鉄筋31A,42の一方に作用した応力はグラウト13及びコンクリート43を介して他方に伝達され、すなわち、接合鉄筋31A,42同士が重ね継手により接合されることとなり、フルPC床板同士30、40が強固に接合される。また、これと同様に、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との間も強固に接合される。このようにして、フルPC床板30、40同士及びフルPC床板30、40と梁2が接合構造110、120により接合され、梁10により囲まれる空間内に床面1が構築されることとなる。なお、本実施形態では、フルPC床板30、40同士の間の目地やフルPC床板とフルPC梁部材10との間の目地の処理を行っていないが、これらの目地の処理を行ってもよい。目地処理の方法としては、目地にコンクリート、グラウト、又はエポキシなどの充填材を充填してもよいし、目地にゴムなどの弾性体を介装させてもよい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の接合構造110、120によれば、接合端面に形成された切り欠き部12、42Aにグラウト13を充填することにより、フルPC床板30、40同士、又はフルPC床板30、40とフルPC梁部材10とを接合することができる。このため、グラウト12の打設量が少なく、ポンプ車などを用いなくても施工を行うことができ、施工の手間を削減することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、フルPC床板30の接合端面より突出する接合鉄筋31Aに対応する位置に、フルPC床板40に切り欠き部42Aを設けることとしたが、これに限らず、図8に示すように、切り欠き部42Aを連続して(すなわち、複数の接合鉄筋31Aが内部に位置することができるように)設ける構成としてもよい。
【0027】
なお、上記実施形態では、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との接合部において、フルPC梁部材10に切り欠き部12を設け、フルPC床板30、40に接合端面より突出するように接合鉄筋31B,41Bを埋設する構成としたが、これに限らず、フルPC梁部材に接合端面より突出するように接合鉄筋を埋設し、フルPC床板の接合端面に切り欠き部を設ける構成とすることもできる。ただし、このような場合には、フルPC梁部材を先行して建て込むと、接合端面より突出している接合鉄筋とフルPC床板とが干渉してしまい、フルPC床板を建て込むことができなくなるため、フルPC梁部材に先行してフルPC床板を建て込む必要がある。
【0028】
また、上記実施形態では、フルPC床板40の接合鉄筋44を切り欠き部42Aの下方に埋設する構成としたが、例えば、接合鉄筋を切り欠き部の側方に埋設する構成としてもよい。図9は、接合鉄筋144を切り欠き部142Aの側方に埋設した場合のフルPC床板140の接合構造150を示し、(A)は、接合する前のフルPC床板130、140の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板130、140を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、接合鉄筋144は、フルPC床板140を構成するコンクリート143の切り欠き部142Aの側方の近傍に埋設されている。また、フルPC床板130は、接合端面より突出するようにコンクリート133に埋設された接合鉄筋131Aを備える。接合構造150は、接合鉄筋131Aが切り欠き部142A内に位置するように、フルPC床板130、140を建て込み、切り欠き部142A内にグラウト113を充填することにより構築される。接合構造150によっても、フルPC床板130、140同士の接合鉄筋131A、144同士の間で重ね継手が形成されるため、フルPC床板130、140を強固に接合することができる。なお、接合構造150は、フルPC梁部材とフルPC床板とを接合する場合にも適用することができる。
【0029】
さらに、接合鉄筋244を切り欠き部240内に露出させる構成とすることも可能である。図10は、切り欠き部242A内に接合鉄筋244を露出させた場合のフルPC床板230、240の接合構造250を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板230、240を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、フルPC床板230には、接合端面より突出するように接合鉄筋231Aが埋設されており、フルPC床板240には、上面及び接合端面に開口するように切り欠き部242Aが設けられ、この切り欠き部242A内に露出するように接合鉄筋244が設けられている。これらのフルPC床板240を接合する際には、まず、切り欠き部242Aが設けられたフルPC床板240を建て込み、次に、接合端面より突出するように接合鉄筋231Aが埋設されたフルPC床板230を、接合鉄筋231Aが切り欠き部242A内に位置するように建て込む。そして、切り欠き部242A内にグラウト113を充填する。このグラウト113が硬化することにより、フルPC床板230、240の接合鉄筋231A、244同士が重ね継手により継手され、フルPC床板230、240が接合構造250により接合される。なお、接合構造250は、フルPC梁部材とフルPC床板とを接合する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の接合構造250においても、上記実施形態において図8を参照して説明したのと同様に、切り欠き部242Aを連続して設ける構成としてもよい。
【0030】
また、図1〜図7を参照して説明した実施形態では、フルPC床板40の接合端部には切り欠き部42Aのみを設け、フルPC床板30の接合端部には端面より突出するように接合鉄筋31Aのみを設け、フルPC床板40側で接合鉄筋31A,44を継手する構成としたが、これに限らず、図11に示すように、フルPC床板30にも接合端面に切り欠き部32Aを設け、この近傍に接合鉄筋を埋設するとともに、フルPC床板40にも接合端面より突出するように接合鉄筋31Aを突出させておいてもよい。これらのフルPC床板30、40は、フルPC床板30の接合鉄筋31Aが、フルPC床板40の切り欠き部42A内に位置するとともに、フルPC床板40の接合鉄筋41AがフルPC床板30の切り欠き部32A内に位置するように建て込み、切り欠き部32A,42A内にグラウトを充填することにより接合することができる。なお、これと同様に、図9及び図10を参照して説明した接合方法を用いる場合にも、切り欠き部を一対のフルPC床板の両方に設けておき、切り欠き部の設けられた側のフルPC床板内において重ね継手を形成して接合することも可能である。
【0031】
また、これに限らず、一対のフルPC床板の接合端面及び上面に開口するように切り欠き部を設けておき、これら切り欠き部を跨ぐように重ね鉄筋を設置し、切り欠き部内にグラウトを充填することにより接合鉄筋と重ね鉄筋との間を重ね継手により継手することにより接合することも可能である。図12は、かかる構成の接合構造350によりフルPC床板330、340を接合する方法を説明するための図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板330、340の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板3340、340を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、各フルPC床板330、340の接合端部には接合端面及び上面に開口するように切り欠き部332A、342Aが設けられており、これら切り欠き部332A、342Aの下方には接合鉄筋334,344が埋設されている。これらの切り欠き部332A、342AはフルPC床板330、340の接合端面同士を当接させた状態において、一体となって凹部を形成するように形成されている。
【0032】
これらのフルPC床板330、340を接合する際には、まず、フルPC床板330、340を接合端面が互いに当接するように建て込む。これにより、一対のフルPC床板330、340の切り欠き部332A、342Aが一体となって凹部を形成することとなる。なお、この際、接合鉄筋334、344が端部より突出しておらず、他の部材に干渉することがなく、何れのフルPC床板330、340を先行して建て込んでもよい。次に、切り欠き部332A、342Aにより形成された凹部に各フルPC床板330、340の接合鉄筋334、344と部分的に重なりあうように重ね鉄筋350を設置する。次に、凹部内にグラウト313を充填する。このグラウト313が硬化することにより、各フルPC床板330,340の接合鉄筋334、344と重ね鉄筋350との間で重ね継手が形成され、フルPC床板330、340の接合鉄筋334、344同士の間で応力の伝達が可能となる。これにより、接合構造360が形成され、フルPC床板330、340が強固に接合される。なお、接合構造360は、フルPC梁部材とフルPC床板との接合にも適用することができる。また、本実施形態では、接合鉄筋334、344をコンクリート333、343に埋設する構成としているが、これに限らず、切り欠き部332A,342A内に露出するように設ける構成としてもよい。また、本実施形態の接合構造350においても、上記実施形態において図8を参照して説明したのと同様に、切り欠き部332A,342Aを連続して設ける構成としてもよい。
【0033】
かかる構成の接合構造は、接合端面より接合鉄筋を突出させなくてもよいので、フルPC部材を建て込む際に、他の部材に干渉することがない。このため、PC部材の建て込み順序が自由になるという利点がある。
【0034】
なお、上記の各実施形態では、接合鉄筋をスラブ筋や梁筋とは別に設ける構成としたが、これに限らず、スラブ筋や梁筋を接合鉄筋として用いることも可能である。
【0035】
また、図9を参照して説明した実施形態では、接合鉄筋として直線状の鉄筋を用いることとしたが、これに限らず、図13に示すような先端がフック状に形成された接合鉄筋431A,444や、平面視においてU字型に形成された接合鉄筋を用いてもよく、要するに接合鉄筋が重ね継手を形成すればよい。また、これと同様に、図1〜7を参照して説明した実施形態や、図10、図12を参照して説明した実施形態においても、先端がフック状に形成された接合鉄筋や、平面視においてU字型に形成された接合鉄筋を用いてもよい。
【0036】
また、図9を参照して説明した実施形態では、フルPC床板の厚さ方向の中央近傍において、重ね継手により接合鉄筋を継手する構成としたが、これに限らず、厚さ方向上面及び下面近傍において、接合鉄筋を継手する構成としてもよい。図14は、かかる構成の接合構造を説明するための図であり(A)は接合端面を横切る方向の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるII−II´断面図である。同図(A)に示すように、一方のフルPC床板130の上面及び下面近傍には、接合鉄筋531A、541Aが接合端面より突出するように設けられている。また、他方のフルPC床板130には切り欠き部142Aが設けられており、切り欠き部142Aの側部の上面及び下面近傍には、接合鉄筋544、554が埋設されている。
【0037】
そして、図14(B)に示すように、接合鉄筋531A、541Aが切り欠き部142A内に位置するようにフルPC床板130、140を建て込み、切り欠き部142A内にグラウトを充填するとともに目地を処理する。かかる構成によってもフルPC床板130、140同士を強固に接合することができる。また、これと同様に、図1〜7を参照して説明した実施形態や、図10、図12を参照して説明した実施形態においても、接合鉄筋をフルPC床板の上面及び下面付近において継手することも可能である。
【0038】
また、上記の各実施形態では、図1を参照して説明したように、一対のフルPC床板を用いて床構造を構築する場合について説明したが、これに限らず、図15に示すように、縦横複数列にフルPC床板430を接続して床構造を構築してもよく、各フルPC床板430を接合するのに用いる接合構造は、上記説明した接合構造のうち何れか一つに限定されることなく、異なる接合構造を組み合わせてもよい。このような場合にはフルPC床板430として、図16に示すような、各端面に切り欠き部431が形成されたフルPC床板430を用い、図12を参照して説明した接合方法により各フルPC床板430を接合するとよい。これにより、フルPC床板の建て込み順序の制約が少なくなる。
【0039】
また、上記の各実施形態では、平板状のフルPC床板を接合する場合について説明したが、これに限らず、図17に示すような、リブ810を有するフルPC床板800を接合して床面を構築する場合にも適用することができる。
【0040】
なお、上記の各実施形態では、切り欠き部にグラウトを充填するものとしたが、これに限らず、エポキシやコンクリートなどの材料を充填することとしてもよい。
【0041】
なお、上記の各実施形態では、梁により囲まれた空間内に床を構築する場合について説明したが、これに限らず、図18に示すような、柱501、梁502及び床503により囲まれた空間内にフルPC部材からなる板状の壁材530、540を建て込み、壁面を構築する場合にも、壁材530、540同士の間、壁材530、540と柱501との間、及び壁材530、540と梁502との間を接合する接合構造として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は、本実施形態の接合構造を用いて構築した床面を示す平面図であり、(B)は(A)におけるI部の拡大図である。
【図2】先行して建て込まれるフルPC床板を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。
【図3】後行して建て込まれるフルPC床板を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図4】フルPC床板を建て込む前の状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図5】先行して一方のフルPC床板を建て込んだ状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図6】後行する他方のPC床板を建て込んだ状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図7】PC梁部材及びフルPC床板の切り欠き部にグラウトを充填した状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図8】切り欠き部を連続して設けたフルPC床板を示す図である。
【図9】接合鉄筋を切り欠き部の側方に埋設した場合のフルPC床板の接合構造を示し、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図10】切り欠き部内に接合鉄筋を露出させた場合のフルPC床板の接合構造を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図11】一対のフルPC床板の両方に接合端面より突出する接合鉄筋と、切り欠き部を設けた場合の接合構造を示す図である。
【図12】一対のフルPC床板に切り欠き部を設けておき、これら切り欠き部を跨ぐように重ね鉄筋を設置し、切り欠き部内にグラウトを充填することによりこれらフルPC床板を接合する場合を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図13】先端がフック状に形成された接合鉄筋を用いた場合の接合構造を示す図である。
【図14】上面及び下面近傍において、接合鉄筋を継手した場合の接合構造を示す図である。
【図15】縦横に複数列にフルPC床板を敷き詰めて構築した床構造を示す図である。
【図16】縦横に複数列にフルPC床板を敷き詰めて床構造を構築する場合に好適なフルPC床板を示す図である。
【図17】リブを有するフルPC床板を用いて構築した床面を示す図である。
【図18】本発明の接合構造を用いて構築した壁を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 柱梁架構
2 梁
10 フルPC梁部材
12 切り欠き部
13、113、213,313 グラウト
14 接合鉄筋
20 柱
30、130、230 (後行して建て込まれる)フルPC床板
31A、31B、131A、231A 接合鉄筋
33、133,233、333、343 コンクリート
40、140、240 (先行して建て込まれる)フルPC床板
41B 接合鉄筋
42A、142A、242A、332A、342A 切り欠き部
43、143、243、333、343 コンクリート
44、144、244、334、344 接合鉄筋
110、120、150、250、360 接合構造
330、340 フルPC床板
350 重ね鉄筋
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルPC床板同士又はフルPC床板とフルPC梁部材とを接合するための接合構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、施工期間を短縮するため、予め工場等で形成したフルPC床板同士を接合することにより床構造を構築することが行われている。このようなフルPC床板同士の接合部には、隣接するフルPC床板同士の間で応力伝達が確実に行われるようにしなければならない。そこで、例えば、特許文献1には、フルPC床板間で確実に応力伝達が行われるように、隣接するフルPC床板の端部が載せられる鉄骨梁の上面にスタッドを設けるとともに、両フルPC床板の接合側の端面よりU字型に湾曲させた鉄筋を突出させておき、鉄筋の湾曲部が鉄骨梁に設けられたスタッドに嵌装されるようにフルPC床板を設置し、隣接するフルPC床板の間にコンクリートを打設することによりフルPC床板同士を接合する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9―158377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、特許文献1記載の方法では、フルPC床板を接合する際に、フルPC床板の間にコンクリートを打設するため、打設するコンクリートの量が多く、ポンプ車などを用いなければならず、施工に手間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、フルPC床板を用いて床面を構築する際にコンクリートの打設量を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と、を備え、他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋の突出部分が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
なお、上記の接合鉄筋同士が部分的に重なり合うとは、接合鉄筋が接触していても、接触していなくてもよく、要するに、接合鉄筋同士が近傍に位置するとともに、接合鉄筋の一部がその長さ方向に並ぶように配置された状態をいう。
【0006】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、 他方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出する接合鉄筋とを備え、前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、前記凹部内に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部は先端が前記切り欠き部近傍に埋設され、残りは接合端面より突出するように埋設された接合鉄筋と、を備え、一方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフルPC部材の接合構造は、一対のフルPC部材の接合構造であって、 前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部が前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられ、残りは接合端面より突出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、一方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする。
【0010】
上記のフルPC部材の接合構造において、前記一対のフルPC部材は、前記一対のフルPC部材は、一対のフルPC床板又はフルPC壁部材であってもよい。
また、前記一対のフルPC部材は、フルPC床板又はフルPC壁部材と、フルPC梁部材とであってもよい。
また、前記一対のフルPC部材は、フルPC壁部材及びフルPC柱部材であってもよい。
【0011】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに前記切り欠き部の近傍に接合鉄筋を埋設しておき、他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一対のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のフルPC部材の接合方法は、一対のフルPC部材を接合する方法であって、一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部の近傍に又は切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、他方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部を設けるとともに、接合鉄筋を前記切り欠き部の近傍に埋設し、又は切り欠き部内に端部が露出するように設けておき、前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、前記凹部内に充填材を充填することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の床構造は、上記の接合構造により接合されてなることを特徴とする。
また、本発明のフルPC板材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備えたフルPC梁部材、フルPC柱部材又はフルPC床板に接合されるフルPC板材であって、前記接合鉄筋に対応する位置に表面及び接合端面に開口するように切り欠きが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フルPC部材に設けられた切り欠き部内にグラウトを充填することにより、フルPC部材を接合することができるため、コンクリートの打設量を減らすことができ、施工性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のフルPC部材の接合構造の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1(A)は、本実施形態の接合構造を用いて構築した床面100を示す平面図であり、(B)は(A)におけるI部の拡大図である。床面100は、鉄筋コンクリート造のラーメン架構1内の梁2により囲まれた矩形状の空間に、平面視長方形状の一対のフルPC床板30、40が接合構造110により接合され、これらのフルPC床板30、40の外周部が接合構造120により周囲の梁2に接合されて構成されている。梁2はフルPC梁部材を用いて構築されている。また、後述するように、フルPC床板30、40は接合端面に切り欠き部42Aを有するフルPC床板40が先行して建て込まれ、接合端面より突出する接合鉄筋31Aを有するフルPC床板30が後行して建て込まれている。本実施形態では、フルPC床板30、40同士の接合構造110及び、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との接合構造120に本発明が適用されている。
【0017】
図2及び図3は、フルPC床板30、40の構成を示す図であり、図2は、先行して建て込まれるフルPC床板40を示し、図3は、後行して建て込まれるフルPC床板30を示す図である。なお、図2において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。また、図3において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【0018】
図2に示すように、先行して建て込まれるフルPC床板40を構成するコンクリート43のフルPC梁部材10と接合される側の端部には、接合端面より突出するように接合鉄筋41Bが埋設されている。また、コンクリート43のフルPC床板30と接合される側の接合端部には、上面及び接合端面に開口するように所定の間隔で切り欠き部42Aが設けられており、この切り欠き部42Aの下方には接合鉄筋44が埋設されている。
【0019】
また、図3に示すように、後行して建て込まれるフルPC床板30のコンクリート33のフルPC梁部材10と接合する側の端部には、フルPC床板40と同様に、接合端面より突出するように接合鉄筋31Bが埋設されている。また、フルPC床板30のフルPC床板40と接合される側の端部には、フルPC床板30の接合端面に設けられた切り欠き部42Aに対応するように端面より突出するように、接合鉄筋31Aが埋設されている。
【0020】
以下、これらフルPC床板同士30、40を接合するとともに、フルPC床板30、40と梁部材10とを接合することにより、床面1を構築する流れを説明する。図4〜図7は、フルPC床板30、40を用いて床面1を構築する工程を示す図である。なお、図4及び図5において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。また、図6及び図7において、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【0021】
図4は、フルPC床板30、40を建て込む前の状態を示す図である。同図に示すように、床面1を構築するにあたり、予め、梁2に当たる位置にはフルPC梁部材10が建て込まれており、これら建て込まれたフルPC梁部材10は柱部材20に接合されている。フルPC梁部材10を構成するコンクリート11のフルPC床板30、40の接合される側の接合端部には、上面及び接合端面に開口するように切り欠き部12が設けられ、切り欠き部12の下方には接合鉄筋14が埋設されている。なお、切り欠き部12は、フルPC床板30、40の接合端面より突出する接合鉄筋31B、41Bに対応する位置に設けられている。
【0022】
図5に示すように、まず、揚重機(不図示)を用いて、フルPC床板40を、PC梁部材10と接合される側の端面より突出する接合鉄筋41Bが、フルPC梁部材10に設けられた切り欠き部12内に位置するように上方から建て込み、下方より仮設の支持部材5により支持する。
【0023】
次に、図6に示すように、揚重機を用いて、フルPC床板30をフルPC梁部材10と接合される側の端面より突出する接合鉄筋31Bが、フルPC梁部材10に設けられた切り欠き部12内に位置するとともに、フルPC床板40と接合される側の接合端面より突出する接合鉄筋31AがフルPC床板40に設けられた切り欠き部42A内に位置するように上方から降下させて建て込み、下方より仮設の支持部材5により支持する。これにより、フルPC床板30の接合鉄筋31Aと、フルPC床板の接合鉄筋44とが部分的に重なりあうこととなる。
【0024】
次に、図7に示すように、フルPC梁部材10及びフルPC床板40の切り欠き部12、42Aにグラウト13を充填する。この充填したグラウト13が硬化することにより、フルPC床板30、40の接合鉄筋31A,42の一方に作用した応力はグラウト13及びコンクリート43を介して他方に伝達され、すなわち、接合鉄筋31A,42同士が重ね継手により接合されることとなり、フルPC床板同士30、40が強固に接合される。また、これと同様に、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との間も強固に接合される。このようにして、フルPC床板30、40同士及びフルPC床板30、40と梁2が接合構造110、120により接合され、梁10により囲まれる空間内に床面1が構築されることとなる。なお、本実施形態では、フルPC床板30、40同士の間の目地やフルPC床板とフルPC梁部材10との間の目地の処理を行っていないが、これらの目地の処理を行ってもよい。目地処理の方法としては、目地にコンクリート、グラウト、又はエポキシなどの充填材を充填してもよいし、目地にゴムなどの弾性体を介装させてもよい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の接合構造110、120によれば、接合端面に形成された切り欠き部12、42Aにグラウト13を充填することにより、フルPC床板30、40同士、又はフルPC床板30、40とフルPC梁部材10とを接合することができる。このため、グラウト12の打設量が少なく、ポンプ車などを用いなくても施工を行うことができ、施工の手間を削減することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、フルPC床板30の接合端面より突出する接合鉄筋31Aに対応する位置に、フルPC床板40に切り欠き部42Aを設けることとしたが、これに限らず、図8に示すように、切り欠き部42Aを連続して(すなわち、複数の接合鉄筋31Aが内部に位置することができるように)設ける構成としてもよい。
【0027】
なお、上記実施形態では、フルPC床板30、40とフルPC梁部材10との接合部において、フルPC梁部材10に切り欠き部12を設け、フルPC床板30、40に接合端面より突出するように接合鉄筋31B,41Bを埋設する構成としたが、これに限らず、フルPC梁部材に接合端面より突出するように接合鉄筋を埋設し、フルPC床板の接合端面に切り欠き部を設ける構成とすることもできる。ただし、このような場合には、フルPC梁部材を先行して建て込むと、接合端面より突出している接合鉄筋とフルPC床板とが干渉してしまい、フルPC床板を建て込むことができなくなるため、フルPC梁部材に先行してフルPC床板を建て込む必要がある。
【0028】
また、上記実施形態では、フルPC床板40の接合鉄筋44を切り欠き部42Aの下方に埋設する構成としたが、例えば、接合鉄筋を切り欠き部の側方に埋設する構成としてもよい。図9は、接合鉄筋144を切り欠き部142Aの側方に埋設した場合のフルPC床板140の接合構造150を示し、(A)は、接合する前のフルPC床板130、140の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板130、140を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、接合鉄筋144は、フルPC床板140を構成するコンクリート143の切り欠き部142Aの側方の近傍に埋設されている。また、フルPC床板130は、接合端面より突出するようにコンクリート133に埋設された接合鉄筋131Aを備える。接合構造150は、接合鉄筋131Aが切り欠き部142A内に位置するように、フルPC床板130、140を建て込み、切り欠き部142A内にグラウト113を充填することにより構築される。接合構造150によっても、フルPC床板130、140同士の接合鉄筋131A、144同士の間で重ね継手が形成されるため、フルPC床板130、140を強固に接合することができる。なお、接合構造150は、フルPC梁部材とフルPC床板とを接合する場合にも適用することができる。
【0029】
さらに、接合鉄筋244を切り欠き部240内に露出させる構成とすることも可能である。図10は、切り欠き部242A内に接合鉄筋244を露出させた場合のフルPC床板230、240の接合構造250を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板230、240を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、フルPC床板230には、接合端面より突出するように接合鉄筋231Aが埋設されており、フルPC床板240には、上面及び接合端面に開口するように切り欠き部242Aが設けられ、この切り欠き部242A内に露出するように接合鉄筋244が設けられている。これらのフルPC床板240を接合する際には、まず、切り欠き部242Aが設けられたフルPC床板240を建て込み、次に、接合端面より突出するように接合鉄筋231Aが埋設されたフルPC床板230を、接合鉄筋231Aが切り欠き部242A内に位置するように建て込む。そして、切り欠き部242A内にグラウト113を充填する。このグラウト113が硬化することにより、フルPC床板230、240の接合鉄筋231A、244同士が重ね継手により継手され、フルPC床板230、240が接合構造250により接合される。なお、接合構造250は、フルPC梁部材とフルPC床板とを接合する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の接合構造250においても、上記実施形態において図8を参照して説明したのと同様に、切り欠き部242Aを連続して設ける構成としてもよい。
【0030】
また、図1〜図7を参照して説明した実施形態では、フルPC床板40の接合端部には切り欠き部42Aのみを設け、フルPC床板30の接合端部には端面より突出するように接合鉄筋31Aのみを設け、フルPC床板40側で接合鉄筋31A,44を継手する構成としたが、これに限らず、図11に示すように、フルPC床板30にも接合端面に切り欠き部32Aを設け、この近傍に接合鉄筋を埋設するとともに、フルPC床板40にも接合端面より突出するように接合鉄筋31Aを突出させておいてもよい。これらのフルPC床板30、40は、フルPC床板30の接合鉄筋31Aが、フルPC床板40の切り欠き部42A内に位置するとともに、フルPC床板40の接合鉄筋41AがフルPC床板30の切り欠き部32A内に位置するように建て込み、切り欠き部32A,42A内にグラウトを充填することにより接合することができる。なお、これと同様に、図9及び図10を参照して説明した接合方法を用いる場合にも、切り欠き部を一対のフルPC床板の両方に設けておき、切り欠き部の設けられた側のフルPC床板内において重ね継手を形成して接合することも可能である。
【0031】
また、これに限らず、一対のフルPC床板の接合端面及び上面に開口するように切り欠き部を設けておき、これら切り欠き部を跨ぐように重ね鉄筋を設置し、切り欠き部内にグラウトを充填することにより接合鉄筋と重ね鉄筋との間を重ね継手により継手することにより接合することも可能である。図12は、かかる構成の接合構造350によりフルPC床板330、340を接合する方法を説明するための図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板330、340の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板3340、340を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。同図に示すように、各フルPC床板330、340の接合端部には接合端面及び上面に開口するように切り欠き部332A、342Aが設けられており、これら切り欠き部332A、342Aの下方には接合鉄筋334,344が埋設されている。これらの切り欠き部332A、342AはフルPC床板330、340の接合端面同士を当接させた状態において、一体となって凹部を形成するように形成されている。
【0032】
これらのフルPC床板330、340を接合する際には、まず、フルPC床板330、340を接合端面が互いに当接するように建て込む。これにより、一対のフルPC床板330、340の切り欠き部332A、342Aが一体となって凹部を形成することとなる。なお、この際、接合鉄筋334、344が端部より突出しておらず、他の部材に干渉することがなく、何れのフルPC床板330、340を先行して建て込んでもよい。次に、切り欠き部332A、342Aにより形成された凹部に各フルPC床板330、340の接合鉄筋334、344と部分的に重なりあうように重ね鉄筋350を設置する。次に、凹部内にグラウト313を充填する。このグラウト313が硬化することにより、各フルPC床板330,340の接合鉄筋334、344と重ね鉄筋350との間で重ね継手が形成され、フルPC床板330、340の接合鉄筋334、344同士の間で応力の伝達が可能となる。これにより、接合構造360が形成され、フルPC床板330、340が強固に接合される。なお、接合構造360は、フルPC梁部材とフルPC床板との接合にも適用することができる。また、本実施形態では、接合鉄筋334、344をコンクリート333、343に埋設する構成としているが、これに限らず、切り欠き部332A,342A内に露出するように設ける構成としてもよい。また、本実施形態の接合構造350においても、上記実施形態において図8を参照して説明したのと同様に、切り欠き部332A,342Aを連続して設ける構成としてもよい。
【0033】
かかる構成の接合構造は、接合端面より接合鉄筋を突出させなくてもよいので、フルPC部材を建て込む際に、他の部材に干渉することがない。このため、PC部材の建て込み順序が自由になるという利点がある。
【0034】
なお、上記の各実施形態では、接合鉄筋をスラブ筋や梁筋とは別に設ける構成としたが、これに限らず、スラブ筋や梁筋を接合鉄筋として用いることも可能である。
【0035】
また、図9を参照して説明した実施形態では、接合鉄筋として直線状の鉄筋を用いることとしたが、これに限らず、図13に示すような先端がフック状に形成された接合鉄筋431A,444や、平面視においてU字型に形成された接合鉄筋を用いてもよく、要するに接合鉄筋が重ね継手を形成すればよい。また、これと同様に、図1〜7を参照して説明した実施形態や、図10、図12を参照して説明した実施形態においても、先端がフック状に形成された接合鉄筋や、平面視においてU字型に形成された接合鉄筋を用いてもよい。
【0036】
また、図9を参照して説明した実施形態では、フルPC床板の厚さ方向の中央近傍において、重ね継手により接合鉄筋を継手する構成としたが、これに限らず、厚さ方向上面及び下面近傍において、接合鉄筋を継手する構成としてもよい。図14は、かかる構成の接合構造を説明するための図であり(A)は接合端面を横切る方向の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるII−II´断面図である。同図(A)に示すように、一方のフルPC床板130の上面及び下面近傍には、接合鉄筋531A、541Aが接合端面より突出するように設けられている。また、他方のフルPC床板130には切り欠き部142Aが設けられており、切り欠き部142Aの側部の上面及び下面近傍には、接合鉄筋544、554が埋設されている。
【0037】
そして、図14(B)に示すように、接合鉄筋531A、541Aが切り欠き部142A内に位置するようにフルPC床板130、140を建て込み、切り欠き部142A内にグラウトを充填するとともに目地を処理する。かかる構成によってもフルPC床板130、140同士を強固に接合することができる。また、これと同様に、図1〜7を参照して説明した実施形態や、図10、図12を参照して説明した実施形態においても、接合鉄筋をフルPC床板の上面及び下面付近において継手することも可能である。
【0038】
また、上記の各実施形態では、図1を参照して説明したように、一対のフルPC床板を用いて床構造を構築する場合について説明したが、これに限らず、図15に示すように、縦横複数列にフルPC床板430を接続して床構造を構築してもよく、各フルPC床板430を接合するのに用いる接合構造は、上記説明した接合構造のうち何れか一つに限定されることなく、異なる接合構造を組み合わせてもよい。このような場合にはフルPC床板430として、図16に示すような、各端面に切り欠き部431が形成されたフルPC床板430を用い、図12を参照して説明した接合方法により各フルPC床板430を接合するとよい。これにより、フルPC床板の建て込み順序の制約が少なくなる。
【0039】
また、上記の各実施形態では、平板状のフルPC床板を接合する場合について説明したが、これに限らず、図17に示すような、リブ810を有するフルPC床板800を接合して床面を構築する場合にも適用することができる。
【0040】
なお、上記の各実施形態では、切り欠き部にグラウトを充填するものとしたが、これに限らず、エポキシやコンクリートなどの材料を充填することとしてもよい。
【0041】
なお、上記の各実施形態では、梁により囲まれた空間内に床を構築する場合について説明したが、これに限らず、図18に示すような、柱501、梁502及び床503により囲まれた空間内にフルPC部材からなる板状の壁材530、540を建て込み、壁面を構築する場合にも、壁材530、540同士の間、壁材530、540と柱501との間、及び壁材530、540と梁502との間を接合する接合構造として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は、本実施形態の接合構造を用いて構築した床面を示す平面図であり、(B)は(A)におけるI部の拡大図である。
【図2】先行して建て込まれるフルPC床板を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII−II´断面図である。
【図3】後行して建て込まれるフルPC床板を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図4】フルPC床板を建て込む前の状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図5】先行して一方のフルPC床板を建て込んだ状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図である。
【図6】後行する他方のPC床板を建て込んだ状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図7】PC梁部材及びフルPC床板の切り欠き部にグラウトを充填した状態を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)は(A)におけるII部の拡大図である。
【図8】切り欠き部を連続して設けたフルPC床板を示す図である。
【図9】接合鉄筋を切り欠き部の側方に埋設した場合のフルPC床板の接合構造を示し、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図10】切り欠き部内に接合鉄筋を露出させた場合のフルPC床板の接合構造を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図11】一対のフルPC床板の両方に接合端面より突出する接合鉄筋と、切り欠き部を設けた場合の接合構造を示す図である。
【図12】一対のフルPC床板に切り欠き部を設けておき、これら切り欠き部を跨ぐように重ね鉄筋を設置し、切り欠き部内にグラウトを充填することによりこれらフルPC床板を接合する場合を示す図であり、(A)は、接合する前のフルPC床板の接合端面近傍の鉛直断面図であり、(B)は(A)におけるI−I´断面図であり、(C)はフルPC床板を接合した状態における接合端面近傍の鉛直断面図であり、(D)は(C)におけるII−II´断面図である。
【図13】先端がフック状に形成された接合鉄筋を用いた場合の接合構造を示す図である。
【図14】上面及び下面近傍において、接合鉄筋を継手した場合の接合構造を示す図である。
【図15】縦横に複数列にフルPC床板を敷き詰めて構築した床構造を示す図である。
【図16】縦横に複数列にフルPC床板を敷き詰めて床構造を構築する場合に好適なフルPC床板を示す図である。
【図17】リブを有するフルPC床板を用いて構築した床面を示す図である。
【図18】本発明の接合構造を用いて構築した壁を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 柱梁架構
2 梁
10 フルPC梁部材
12 切り欠き部
13、113、213,313 グラウト
14 接合鉄筋
20 柱
30、130、230 (後行して建て込まれる)フルPC床板
31A、31B、131A、231A 接合鉄筋
33、133,233、333、343 コンクリート
40、140、240 (先行して建て込まれる)フルPC床板
41B 接合鉄筋
42A、142A、242A、332A、342A 切り欠き部
43、143、243、333、343 コンクリート
44、144、244、334、344 接合鉄筋
110、120、150、250、360 接合構造
330、340 フルPC床板
350 重ね鉄筋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋の突出部分が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項2】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項3】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出する接合鉄筋とを備え、
前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、
前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、
前記凹部内に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項4】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部は先端が前記切り欠き部近傍に埋設され、残りは接合端面より突出するように埋設された接合鉄筋と、を備え、
一方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項5】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部が前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられ、残りは接合端面より突出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
一方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項6】
前記一対のフルPC部材は、一対のフルPC床板又はフルPC壁部材であることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項7】
前記一対のフルPC部材は、フルPC床板又はフルPC壁部材と、フルPC梁部材とであることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項8】
前記一対のフルPC部材は、フルPC壁部材及びフルPC柱部材であることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項9】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに前記切り欠き部の近傍に接合鉄筋を埋設しておき、
他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項10】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、
他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一対のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項11】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部の近傍に又は切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、
他方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部を設けるとともに、接合鉄筋を前記切り欠き部の近傍に埋設し、又は切り欠き部内に端部が露出するように設けておき、
前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、
前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、
前記凹部内に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項12】
請求項9から11のうち何れかに記載の接合方法により接合されてなることを特徴とする床構造。
【請求項13】
接合端面より突出する接合鉄筋を備えたフルPC梁部材、フルPC柱部材又はフルPC床板に接合されるフルPC板材であって、
前記接合鉄筋に対応する位置に表面及び接合端面に開口するように切り欠きが設けられたことを特徴とするフルPC板材。
【請求項1】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋の突出部分が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項2】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面より突出する接合鉄筋を備え、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋と部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項3】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
一方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
他方のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部と、前記切り欠き部の近傍に埋設された又は切り欠き部内に端部が露出する接合鉄筋とを備え、
前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、
前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、
前記凹部内に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項4】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部は先端が前記切り欠き部近傍に埋設され、残りは接合端面より突出するように埋設された接合鉄筋と、を備え、
一方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出した接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部近傍に埋設された接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項5】
一対のフルPC部材の接合構造であって、
前記一対のフルPC部材は、接合端面及び表面に開口する切り欠き部と、一部が前記切り欠き部内に端部が露出するように設けられ、残りは接合端面より突出するように設けられた接合鉄筋と、を備え、
一方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が他方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記他方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うとともに、前記他方のフルPC部材の接合端面より突出する接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の切り欠き部内に露出する接合鉄筋と部分的に重なり合うように前記一対のフルPC部材を建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填してなることを特徴とする一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項6】
前記一対のフルPC部材は、一対のフルPC床板又はフルPC壁部材であることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項7】
前記一対のフルPC部材は、フルPC床板又はフルPC壁部材と、フルPC梁部材とであることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項8】
前記一対のフルPC部材は、フルPC壁部材及びフルPC柱部材であることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の一対のフルPC部材の接合構造。
【請求項9】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに前記切り欠き部の近傍に接合鉄筋を埋設しておき、
他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一方のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項10】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、
他方のフルPC部材に、接合端面より突出するように接合鉄筋を設けておき、
前記他方のフルPC部材を、その接合鉄筋が前記一方のフルPC部材の前記切り欠き部内において、前記一対のフルPC部材の接合鉄筋が部分的に重なり合うように建て込み、
前記切り欠き部に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項11】
一対のフルPC部材を接合する方法であって、
一方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口するように切り欠き部を設けるとともに、前記切り欠き部の近傍に又は切り欠き部内に端部が露出するように接合鉄筋を設けておき、
他方のフルPC部材に、接合端面及び表面に開口して、前記一対のフルPC部材の接合端面を当接させた際に、前記一方のフルPC部材の切り欠き部とともに表面に開口する凹部を形成する切り欠き部を設けるとともに、接合鉄筋を前記切り欠き部の近傍に埋設し、又は切り欠き部内に端部が露出するように設けておき、
前記一対のフルPC部材を夫々の接合端面が対向するように建て込み、
前記凹部に前記一対のフルPC部材の接合鉄筋と夫々部分的に重なりあうように鉄筋を設置し、
前記凹部内に充填材を充填することを特徴とする一対のフルPC部材の接合方法。
【請求項12】
請求項9から11のうち何れかに記載の接合方法により接合されてなることを特徴とする床構造。
【請求項13】
接合端面より突出する接合鉄筋を備えたフルPC梁部材、フルPC柱部材又はフルPC床板に接合されるフルPC板材であって、
前記接合鉄筋に対応する位置に表面及び接合端面に開口するように切り欠きが設けられたことを特徴とするフルPC板材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−68237(P2009−68237A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236993(P2007−236993)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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