説明

上げ下げ窓の釣合力調整装置及びこれを用いた上げ下げ窓

【課題】巻き締めはもとより巻き戻しに関して段階的調整を可能とした上げ下げ窓の釣合力調整装置において、捻り力の導入程度が一目で判別できるようにする。
【解決手段】釣合力調整装置6は、ケース20と、このケース内の所定位置に水平軸回りに回転自在に設置され、軸部周囲にラチェットギア23bが形成された水平ギア部材23と、前記水平ギア部材23の隣接位置に水平軸回りに所定角度範囲で回動自在に設置され、中間軸部の両側に夫々前記水平ギア部材23方向に延出する2つクリック24a、24bを備えたクリック部材24と、前記水平ギア部材23と噛合する鉛直ギア部材26と、この鉛直ギア部材26の軸部26cに螺合されるとともに、外周面に形成された凸部27bを前記ケース20に形成された縦方向スリット溝21mより外部に望ませ、前記鉛直ギア部材26の回転に伴って上下動するようにした初期導入力表示用インジケータ部材27とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に開閉される可動障子を備えた上げ下げ窓の釣合力調整装置及びこれを用いた上げ下げ窓に関する。
【背景技術】
【0002】
障子を上下方向に開閉する上げ下げ窓においては、障子を僅かな力で簡単に上下動させることができるようにするとともに、任意の開位置で静止させるようにするため、前記障子に対して障子重量と力学的平衡関係を保つ釣合装置を設けたものが知られている。この釣合装置は、捻りバネの捻り力を利用して窓障子に釣り合う平衡力を螺旋杆を介して作用させるように工夫された装置であり、公知のものとしては、たとえば下記特許文献1〜3等を挙げることができる。
【0003】
これらの発明は、主に前記捻りバネの調整に係るものである。具体的に、従来より提案されている調整機構としては、ラチェット機構によりスライド装置に設けられた調整軸を一方向にのみ回転させるようにしたものと、調整軸にコイル状のブレーキバネを巻き付けてその緊縛力により調整軸に制動力を与えるようにしたものとに大別される。
【0004】
しかしながら、前記ラチェット機構による調整構造のものは、捻りバネの巻き締めには非常に都合が良いが、巻き戻しができないために調整が一方向に限定されてしまうとともに、捻りバネの捻り力が一気に開放されてしまうなどの欠点があり、一方ブレーキバネを利用したものは、巻き締めと巻き戻しとの両方が可能である点で前記ラチェット機構のものより優れているが、ブレーキバネによる制動力に不安があり、スリップによって自然に巻き戻しが生じたり、時間の経過とともに緩みが生じるため長期に亘って十分な制動機能を維持できないなどの問題がある。さらに、ブレーキバネに抗して調整軸を回転させなければならず、調整に係る労が大きいなどの問題があった。
【0005】
前記特許文献3に記載された釣合装置は、調整軸の回転方向と楔効果とを巧みに利用して確実な制動力が得られるようにするとともに、巻き戻しも簡単に行えるようにした点で他のものより優れている。しかし、部品数も多く制動部の構造が複雑であるとともに、巻き戻しに際して段階的な調整ができないなどの問題があった。
【0006】
また、前述のように、巻き戻しを段階的に調整できず、捻りバネの捻り力が一気に全開放されてしまう釣合装置の場合、仮に可動障子を開けた状態で捻りバネの捻り力を開放した際、うっかり可動障子を支えるのを忘れていると、自重によって可動障子が急に落下してしまい、不慮の怪我や障子の破損が生じることがあるなどの問題があった。
【0007】
そこで、本出願人は下記特許文献4において、ケースと、このケース内の所定位置に水平軸回りに回転自在に設置され、軸部周囲にラチェットギアが形成された水平ギア部材と、前記水平ギア部材の隣接位置に水平軸回りに所定角度範囲で回動自在に設置され、中間軸部の両側に夫々前記水平ギア部材方向に延出する2つクリックを備えたクリック部材と、前記水平ギア部材と噛合する鉛直ギア部材とからなり、前記クリック部材は一方側クリックが前記水平ギア部材に形成されたラチェットギアと付勢的に噛合し、該一方側クリックの噛合が揺動操作によって解除された際、前記他方側クリックがラチェットギアに噛合するようになっており、捻りバネを1ギアづつ巻き戻しできるようにした釣合力調整装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−161683号公報
【特許文献2】特開平3−180683号公報
【特許文献3】特開平4−238984号公報
【特許文献4】特開2003−328636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献4記載の発明では、初期捻り力の導入および調整は、前記水平ギア部材のねじ回し係合部にドライバー等の工具を当て回転させるだけで簡単に作業が行えるようになるとともに、クリック部材をドライバー等によって左右方向に所定角度で往復回転することによって1ギアづつ巻き戻しできるようになるが、水平ギア部材を何回巻き締めしたか、前記クリック部材により何回巻き戻しを行ったかを数えていないと、初期導入力をどの程度導入したか全く分からなくなってしまうなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、巻き締めはもとより巻き戻しに関して段階的調整を可能とした上げ下げ窓の釣合力調整装置及びこれを用いた上げ下げ窓において、捻り力の導入程度が一目で判別できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明として、ケースと、このケース内の所定位置に水平軸回りに回転自在に設置され、頭部側にギアが形成されるとともに、軸部周囲にラチェットギアが形成され、かつケース外部に臨む軸端面にネジ回し係合部が形成された水平ギア部材と、前記水平ギア部材の隣接位置に水平軸回りに所定角度範囲で回動自在に設置されるとともに、ケース外部に臨む軸端面にネジ回し係合部が形成され、かつケース内において中間軸部の両側に夫々前記水平ギア部材方向に延出する2つクリックを備えるとともに、前記クリックの一方が前記水平ギア部材の軸部に形成されたラチェットギアと付勢的に噛合し、該クリックの一方の噛合が揺動操作によって解除された際、前記クリックの他方がラチェットギアに噛合する関係にあるクリック部材と、前記ケース内の所定位置に鉛直軸回りに回転自在に設置され、前記水平ギア部材頭部のギアと噛合するギアを備えるとともに、軸部を備え、前記水平ギア部材の回転により従動的に回転する鉛直ギア部材と、この鉛直ギア部材の軸部に螺合されるとともに、外周面に形成された凸部を前記ケースに形成された縦方向スリット溝より外部に望ませ、前記鉛直ギア部材の回転に伴って上下動するようにした初期導入力表示用インジケータ部材とから構成されることを特徴とする上げ下げ窓の釣合力調整装置が提供される。
【0012】
上記請求項1に係る本発明においては、先ず、初期捻り力の導入および調整は、前記水平ギア部材のねじ回し係合部にドライバー等の工具を当て回転させるだけで簡単に作業が行えるようになる。また、クリック部材をドライバー等によって左右方向に所定角度で往復回転することによって1ギアづつ巻き戻しできるようになるため、導入捻り力の調整が容易に行えるようになるとともに、調整中に可動障子が落下するような事態も完全に回避できるようになる。もちろん、ラチェット機構による噛合であるため、調整後には一切の緩みやスリップ等を発生させることが無くなる。
【0013】
また、鉛直ギア部材の軸部に螺合されるとともに、外周面に形成された凸部を前記ケースに形成された縦方向スリット溝より外部に臨ませ、前記鉛直ギア部材の回転に伴って上下動するようにした初期導入力表示用インジケータ部材を設けたため、前記凸部の上下位置により、捻り力の導入程度が一目で判別できるようになる。
【0014】
請求項2に係る発明として、前記ケースにおいて、インジケータ部材の凸部を外部に臨ませた縦方向スリット溝に沿って目盛りを設けてある請求項1記載の上げ下げ窓の釣合力調整装置が提供される。
【0015】
請求項3に係る本発明として、上下方向に開閉される可動障子に設けられ、該可動障子の重量と力学的平衡関係を保ち可動障子を任意の位置に静止させるとともに、開閉操作を容易化するための釣合装置を備えた上げ下げ窓であって、
前記釣合装置は、縦枠の上部位置に固定配置される請求項1、2いずれかに記載の釣合力調整装置と、
捻りバネ収納筒と、内部に収容される捻りバネと、捻りバネの下端部に設けられる回転作動体とから構成され、前記釣合力調整装置の鉛直ギア部材に連結されて鉛直配置で設けられ、釣合力調整装置における調整操作により少なくとも捻りバネが軸芯回りに回転操作され、捻りバネに対する釣合力の導入・調整が可能となっているとともに、可動障子の開閉時に前記捻りバネにより可動障子と釣り合う上方向力を与える釣合力発生装置と、
前記可動障子の下端がわ側部に固設され、可動障子の上下動に伴って昇降するスライド体と、
このスライド体に下端が固定され、先端部分が前記釣合力発生装置の回転作動体を貫いて捻りバネ収納筒の内部に挿入され、前記可動障子の上下動に伴って前記回転作動体に鉛直軸回りの回転力を与えることにより捻りバネを巻き締め・巻き戻し動作させる螺旋杆とから構成されたことを特徴とする上げ下げ窓が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、巻き締めはもとより巻き戻しに関して段階的調整を可能とした上げ下げ窓の釣合力調整装置及びこれを用いた上げ下げ窓において、捻り力の導入程度が一目で判別できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】釣合装置5を備えた上げ下げ窓1の正面図である。
【図2】釣合装置5の構造図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】釣合力調整装置6の全体斜視図である。
【図6】釣合力調整装置6の(A)は拡大半断面図、(B)は拡大正面図である。
【図7】釣合力調整装置6の分解図である。
【図8】水平ギア部材23を示す(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図9】クリック部材24を示す(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は裏面図である。
【図10】水平ギア部材23とクリック部材24の係合状態を示す図である。
【図11】鉛直ギア部材26を示す(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
上げ下げ窓1は、図1に示されるように、窓枠2の内部に縦枠2A,2Bに沿って昇降自在とされる内側障子3と外側障子4とを備え、前記縦枠2A,2B内に沿って配設された釣合装置5、5によって前記障子3、4が任意の位置に静止可能とされる。なお、前記釣合装置5は内側障子3と外側障子4とに夫々取付けられるが、両者は後述の捻りバネ収納筒9、捻りバネ10、螺旋杆12の長さ寸法、および内側障子3側に対してのみ釣合装置5の外側に着脱自在の戸当たり7が設けられる点で相違するだけで、基本的構造は同一であるため、内側障子3(以下、単に障子という。)についてのみ説明する。
【0020】
前記釣合装置5は、詳細には図2に示されるように、縦枠2A(2B)の上方側に固定配置されるとともに、釣合力を調整するための釣合力調整装置6と、釣合力を発生させるための釣合力発生装置8と、障子3の下框側部に固設され障子3と共に昇降するスライドブロック11と、このスライドブロック11と前記釣合力発生装置8とを動作的に連携させるために、下端が前記スライドブロック11に連結され、先端側は前記釣合力発生装置8の下端面より内部に挿入され、スライドブロック11の昇降に伴って前記釣合力発生装置8の内部に配設された捻りバネ10を巻き締め/巻き戻し動作させる螺旋杆12とから構成される装置である。
【0021】
前記釣合力調整装置6については後述するとして、先ず前記釣合力発生装置8は、鉛直配置で釣合力調整装置6より垂下された捻りバネ収納筒9の内部に、所定幅のバネ板を螺旋状に加工した捻りバネ10を内装させ、この捻りバネ10の下端部に前記螺旋杆12の上下動によって同位置で鉛直軸回りに回転される回転作動体13を設けたものである。前記回転作動体13は、その中央部に捻りバネ10の断面形状に相応するスリット孔13aが形成され、このスリット孔13aを貫通する前記螺旋杆12が障子3の上下動に伴って昇降されると、螺旋杆12の捻り面に案内されて前記回転作動体13が回転し、捻りバネ10を巻き締めたり、巻き戻したりする。
【0022】
実際には、前記螺旋杆12の下降に伴って回転作動体13を巻き方向に回転させて捻りバネ10を巻き締め、障子3の上昇に伴って回転作動体13を反対方向に回転させて捻りバネ10を巻き戻しする。従って、前記捻りバネ10に対して予め障子3の最大上昇位置において釣り合う捻り力を与えておくと、捻りバネ10は障子3がどの昇降位置にあっても障子3と釣り合うようになり、任意の障子開位置で静止できるようになるとともに、上下方向に力が均衡しているため僅かの力で障子3を昇降操作できるようになる。
【0023】
前記捻りバネ収納筒9は、ほぼ障子3の縦框相当の長さを有する筒体であり、上端部に固定配置された釣合力調整装置6より垂下され、釣合力調整装置6における調整により、内装された捻りバネ10とともに、鉛直軸を回転中心として回転することにより、初期釣合力の導入およびその後に捻りバネ10による釣合力を調整できるようになっている。
【0024】
前記釣合力調整装置6は、主に図5〜図7に示されるように、各構成部材を収納するケース20と、このケース20内の所定位置に水平軸回りに回転自在に設置される水平ギア部材23と、前記ケース20内の前記水平ギア部材23より上方位置に隣接して設置されたクリック部材24と、前記ケース20内の所定位置に鉛直軸回りに回転自在に設置され、上部を前記水平ギア部材23のギアに噛合させて配置することにより、前記水平ギア部材23の回転により従動的に回転される鉛直ギア部材26と、この鉛直ギア部材26の軸部26cに螺合されるとともに、外周面に形成された凸部27bを前記ケース20に形成された縦方向スリット溝21mより外部に望ませ、前記鉛直ギア部材26の回転に伴って上下動するようにした初期導入力表示用インジケータ部材27とからなる装置であり、ケース20の下方側に突出する前記鉛直ギア部材26の軸部26cが前記捻りバネ収納筒9内に挿入され、この軸部26cおよび捻りバネ収納筒9、捻りバネ10を貫いて挿通された連結ボルト14により相互に連結されている。
【0025】
以下、前記釣合力調整装置6について図5〜図11に基づいて詳述すると、前記ケース20は、図7に示されるように、半割構造のケースであり、一方側半割ケース片20Aと、他方側半割ケース片20Bとを対面合わせし、凸部22bを対向面に形成された凹部に嵌合させるとともに、ネジ孔22a、22cに螺入されるネジ15、15により両者が一体化される。前記半割ケース片20A、20Bは、合わせ面に形成される嵌設孔を含めて対象構造となっているため、一方側半割ケース片20Aについて説明する。
【0026】
前記半割ケース片20Aの合わせ面において、その上部側には水平方向に沿って、本釣合力調整装置6を縦枠2A、2Bに固定するために固定ねじの挿入孔21aが形成されている。この挿入孔21aの下側には、バネ25が挿入されるとともに、前記クリック部材24のバネ受け部24Dが嵌設される断面逆U字状のクリック部材用第1嵌設孔21bと、前記クリック部材24の本体部(中間軸部24B)が嵌設されるクリック部材用第2嵌設孔21cとが連続して形成されている。
【0027】
また、前記クリック部材用第2嵌設孔21cの下側に連続して、前記水平ギア部材23の本体部が嵌設される水平ギア用嵌設孔21dが形成され、この水平ギア用嵌設孔21dの下側に前記鉛直ギア部材26の頭部26bが嵌設される鉛直ギア用第1嵌設孔21eが形成され、更にその下側に前記鉛直ギア部材26の軸部26cが挿通されるとともに、この軸部26cに螺合された初期導入力表示用インジケータ部材27が嵌設されるインジケータ用嵌設孔21fが形成され、これに連続してやや小径の前記鉛直ギア部材26の軸部26cが嵌設される鉛直ギア用第2嵌設孔21gが形成されている。また、前記インジケータ用嵌設孔21f部位には、ケース20Aの側壁に縦方向に長いスリット用半溝21mが形成されるとともに、この半溝21mの脇に目盛り28が刻設されている。
【0028】
前記水平ギア部材23は、図8に示されるように、頭部23Aと、中間軸部23Bと、端軸部23Cとから構成される部材であり、前記頭部23Aには周方向に沿ってギア23a、23a…が形成されるとともに、前記中間軸部23Bに周方向に沿ってラチェットギア23b、23b…が形成されている。前記端軸部23Cは支軸となる軸であり、その先端面にはドライバー(ネジ回し)の差し込み十字溝23cが形成されている。組み立て状態では、図6及び図7に示されるように、前記端軸部23Cがケース20の軸受け部21iに嵌設され、前記頭部23Aが軸受け部21hに嵌設され、水平軸回りに回動自在に設置される。なお、前記端軸部23Cはケース20の外部に臨ませている。
【0029】
前記クリック部材24は、図9に示されるように、両側の端軸部24A、24Cと、中間軸部24Bと、この中間軸部24Bの上部側に一体的に延設されたバネ受け部24Dと、前記中間軸部24Bの下部側に延設された左右一対のクリック24a、24bとから構成された部材であり、前記端軸部24Cの端面にはねじ回しの差し込み十字溝24cが形成されている。組立状態では、図6及び図7に示されるように、前記バネ受け部24Dがバネ25と共にクリック部材用第1嵌設孔21bに嵌設され、前記中間軸部24Bが前記クリック部材用第2嵌設孔21cに嵌設され、前記端軸部24Aが軸受け部21jに嵌設され、前記端軸部24Cが軸受け部21kに嵌設され、水平軸回りに所定角度範囲で回動自在に設置される。なお、前記端軸部24Cはケース20の外部に臨ませている。また、図10に示されるように、水平ギア部材23側に延出する2つのクリック24a、24bの内、バネ25による付勢力によってクリック24aが水平ギア部材23のラチェットギア23bに噛合するようになっている。
【0030】
他方、前記鉛直ギア部材26は、図11に示されるように、上面側周囲にギア26a、26a…を有する頭部26bと、この頭部から連続する軸部26cと、この軸部26cの下端に形成された連結部26dからなる部材であり、前記軸部26cの上部側にはネジ部26eが形成されている。
【0031】
組立状態では、図6及び図7に示されるように、頭部26bがケース20の鉛直ギア用嵌設孔21eに嵌設され、前記軸部26cが鉛直ギア用第2嵌設孔21gに嵌設され、鉛直軸回りに回転自在に設置される。前記水平ギア部材23のラチェットギア23bと前記鉛直ギア部材26のギア26aとは互いに噛合し、水平ギア部材23の回転が鉛直ギア部材26に伝えられ、鉛直ギア部材26が従動的に軸芯回りに回転するようになっている。
【0032】
前記初期導入力表示用インジケータ部材27は、図7に示されるように、内面にネジが形成されたリング状部材であり、本体27aの外周面に1つの凸部27bが形成されている。この凸部27bには一目で判別し易いように、赤や緑等の着色を施すことが望ましい。組み立て状態では、図6及び図7に示されるように、前記鉛直ギア部材26の軸部26c(ネジ部26e)に螺合するとともに、凸部27bをスリット用半溝21mに係合させた状態で、インジケータ用嵌設孔21fに嵌設される。従って、前記鉛直ギア部材26が回転すると、インジケータ部材27は前記凸部27bの係合によって回動が規制されている結果、上下方向に移動するようになっている。初期状態では、図6に示されるように、前記インジケータ部材27の凸部27bがスリット溝21mの下端に位置するようになっている。
【0033】
以上のように構成される釣合力調整装置6において、上げ下げ窓1の設置時に捻りバネ10に対し初期捻り力を導入するには、図6に示されるように、前記水平ギア部材23の差し込み溝十字23cにドライバー30の先端をあてがい、付勢力に抗して前記水平ギア部材23を軸芯回りに右回転させると、この回転が直交配置の前記鉛直ギア部材26に伝達され、鉛直ギア部材26が軸芯回りに回転される。そして、鉛直ギア部材26の軸部26cの回転によって、捻りバネ収納筒9および捻りバネ10が、前記捻りバネ10の巻き締め方向に回転され、捻りバネ10に釣合力が付与されるようになる。
【0034】
逆に、前記捻りバネ10を緩めたい場合には、前記クリック部材24先端面の差し込み十字溝24cにドライバー30の先端をあてがい、前記クリック部材24を右方向に回転すると、クリック24aと水平ギア部材23のラチェットギア23bとの噛合状態が解かれる。しかし、この際には、他方側クリック24bが前記ラチェットギア23bと噛合するので、水平ギア部材23は1ギア分だけ回転して静止するようになる。従って、ドライバー30を左右方向に往復回転することによって、1ギアづつ巻き戻しできるようになるとともに、障子3の落下も防止できるようになる。
【0035】
また、前記巻き締め及び巻き戻しに伴って、前記鉛直ギア部材26は正方向及び逆方向に回転することになるが、この回転に伴って、初期導入力表示用インジケータ部材27は、巻き締めに際して上方向に移動し、巻き戻しに際して下方向に移動することになる。従って、初期導入力表示用インジケータ部材27の凸部27bがスリット溝のどの位置に定位しているかによって、捻り力の導入程度が一目で判別できるようになる。
【0036】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では直交配置される水平ギア部材23のギア23aと鉛直ギア部材26のギア26aとを夫々、直交面に形成したが、カサ歯車のように噛合面を夫々円錐面とすることもできる。また、釣合力発生装置8を釣合力調整装置6に吊持している関係上、鉛直ギア部材26の軸部26cを捻りバネ収納筒9、捻りバネ10と共に連結し、鉛直ギア部材26の回転によって捻りバネ10の他に捻りバネ収納筒9も一緒に回転させるようにしているが、たとえば捻りバネ収納筒9を別に支持し、前記軸部26cと捻りバネ10とを連結し、鉛直ギア部材26の回転によって捻りバネ10のみを回転させるようにしてもよい。
【0037】
(2)上記形態例では、前記鉛直ギア部材26の回転に伴って、初期導入力表示用インジケータ部材27は、巻き締めに際して上方向に移動し、巻き戻しに際して下方向に移動するようにしたが、例えば鉛直ギア部材26と初期導入力表示用インジケータ部材27との螺合を逆ネジとし、初期状態を上端とし、巻き締めに際して下方向に移動し、巻き戻しに際して上方向に移動するようにしてもよい。いずれにしても、インジケータ部材27の移動量が定量的に判別できればよい。
【0038】
(3)また、元々下段側に位置する障子3は、障子を閉めた状態(降ろした状態)で調整を行うことができ、この場合には捻りバネ力を一気に開放したとしても、障子3が落下することがないため、前記クリック部材24は水平ギア部材23のラチェットギア23bに常時噛合している一方側クリック24aのみの構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1…上げ下げ窓、2A・2B…縦枠、3…内側障子、4…外側障子、5…釣合装置、6…釣合力調整装置、7…戸当たり、8…釣合力発生装置、9…捻りバネ収納筒、10…捻りバネ、11…スライドブロック、12…螺旋杆、13…回転作動体、14…連結ボルト、20…ケース、23…水平ギア部材、23A…頭部ギア、23b…ラチェットギア、24…クリック部材、24a・24b…クリック、25…バネ、26…鉛直ギア部材、26a…ギア、27…初期導入力表示用インジケータ部材、27b…凸部(インジケータ用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケース内の所定位置に水平軸回りに回転自在に設置され、頭部側にギアが形成されるとともに、軸部周囲にラチェットギアが形成され、かつケース外部に臨む軸端面にネジ回し係合部が形成された水平ギア部材と、前記水平ギア部材の隣接位置に水平軸回りに所定角度範囲で回動自在に設置されるとともに、ケース外部に臨む軸端面にネジ回し係合部が形成され、かつケース内において中間軸部の両側に夫々前記水平ギア部材方向に延出する2つクリックを備えるとともに、前記クリックの一方が前記水平ギア部材の軸部に形成されたラチェットギアと付勢的に噛合し、該クリックの一方の噛合が揺動操作によって解除された際、前記クリックの他方がラチェットギアに噛合する関係にあるクリック部材と、前記ケース内の所定位置に鉛直軸回りに回転自在に設置され、前記水平ギア部材頭部のギアと噛合するギアを備えるとともに、軸部を備え、前記水平ギア部材の回転により従動的に回転する鉛直ギア部材と、この鉛直ギア部材の軸部に螺合されるとともに、外周面に形成された凸部を前記ケースに形成された縦方向スリット溝より外部に望ませ、前記鉛直ギア部材の回転に伴って上下動するようにした初期導入力表示用インジケータ部材とから構成されることを特徴とする上げ下げ窓の釣合力調整装置。
【請求項2】
前記ケースにおいて、インジケータ部材の凸部を外部に臨ませた縦方向スリット溝に沿って目盛りを設けてある請求項1記載の上げ下げ窓の釣合力調整装置。
【請求項3】
上下方向に開閉される可動障子に設けられ、該可動障子の重量と力学的平衡関係を保ち可動障子を任意の位置に静止させるとともに、開閉操作を容易化するための釣合装置を備えた上げ下げ窓であって、
前記釣合装置は、縦枠の上部位置に固定配置される請求項1、2いずれかに記載の釣合力調整装置と、
捻りバネ収納筒と、内部に収容される捻りバネと、捻りバネの下端部に設けられる回転作動体とから構成され、前記釣合力調整装置の鉛直ギア部材に連結されて鉛直配置で設けられ、釣合力調整装置における調整操作により少なくとも捻りバネが軸芯回りに回転操作され、捻りバネに対する釣合力の導入・調整が可能となっているとともに、可動障子の開閉時に前記捻りバネにより可動障子と釣り合う上方向力を与える釣合力発生装置と、
前記可動障子の下端がわ側部に固設され、可動障子の上下動に伴って昇降するスライド体と、
このスライド体に下端が固定され、先端部分が前記釣合力発生装置の回転作動体を貫いて捻りバネ収納筒の内部に挿入され、前記可動障子の上下動に伴って前記回転作動体に鉛直軸回りの回転力を与えることにより捻りバネを巻き締め・巻き戻し動作させる螺旋杆とから構成されたことを特徴とする上げ下げ窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−17181(P2011−17181A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162363(P2009−162363)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000155207)株式会社明工 (44)
【Fターム(参考)】