説明

上包み包装機の物品保持移送装置

【課題】食品の変形を抑制すると共にフィルムを密着した状態で食品を自動包装する。
【解決手段】搬送体14に、通気孔18a,20aと連通孔18b,20bが形成される。フィルム供給ステーションとその下流側ステーションとに臨んで連通孔18b,20bに連通可能な第1、第2吸引チャンバーと、物品供給ステーションに臨んで連通孔18b,20bに連通可能な第3、第4吸引チャンバー32,34に、第1ブロワが接続される。第3、第4吸引チャンバー32,34に連通孔18b,20bが連通したときの通気孔18a,20aを介して作用するエア吸引力は、第1、第2吸引チャンバーに連通孔18b,20bが連通したときのエア吸引力より小さく設定される。通気孔20aは、フィルムシートfを吸引保持し、また搬送体14に収容した食品の外部に延出するシート縁部にエアを噴出して立ち上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば蒸しパン等の如く柔らかで変形し易い食品をフィルムシートで包装する上包み包装機の物品保持移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
餅饅頭等の柔らかく変形し易い食品を、従来の角折り包装形態に代えて、薄手のフィルムシートで食品全体を密着するように覆って自動包装する上包み包装装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の上包み包装装置では、物品収容部を形成した搬送体上面にフィルムシートを供給載置し、該フィルムシートの上方から食品を物品収容部に押し込んで収容することで食品の外部を該フィルムシートで密着するように覆った後、物品収容部外に延出するシート縁部を食品の上面側に折り畳み、その折畳み部をシールすることで食品が包装されるようになっている。
【0003】
前記上包み包装装置では、搬送体の上面に供給載置されたフィルムシートが搬送中に位置ズレするのを防止するべく、搬送体に通気孔を形成し、該搬送体に供給載置されたフィルムシートを、通気孔を介して作用するエア吸引力により搬送体上面に吸引保持するようにしている。また搬送体にエアの噴出孔を別途形成し、物品収容部外に延出するシート縁部を折り畳む以前にエアを上方に噴出して該シート縁部を上向きに立ち上げることで、ポリエチレン素材からなる薄く柔軟性のあるフィルムであっても、食品の上面に沿って良好に折り畳み得るようにした構成が採用されている。
【特許文献1】特許第3742988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の上包み包装装置では、物品収容部を覆うように載置されたフィルムシートが搬送体上面にエアの吸引力により吸引保持され、食品を物品収容部に押し込んで収容することでフィルムシートを密着させることができるようになっている。しかしながら、三角柱状や四角柱状の蒸しパン等の如く柔らかく変形し易い複数の角部を有する食品を、例えばポリエチレンの12μ程度のストレッチフィルムの如き厚みが薄くかつ伸長性があるフィルムで包装しようとすると、フィルムシートが搬送体上面に吸引保持されていることで、フィルムシートと共に物品収容部に押し込まれる食品に加わる負荷が大きくなり、角部が過度に変形して著しく商品価値が低下してしまう等の問題があった。従って、このような特許文献1に開示の上包み包装装置により良好に包装することは困難であり、柔らかく変形し易い食品の包装は手作業に頼っている。
【0005】
また前記上包み包装装置では、フィルムシートを吸引保持するための通気孔と、シート縁部を立ち上げるための噴出孔とを搬送体に別々に設け、エア吸引力を付与する吸引手段と通気孔およびエア噴出を行なうエア噴出手段と噴出孔の夫々の連通位置が異なるように設定されているため、通気孔および噴出孔の形成位置が限定される難点が指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、例えば蒸パン等の柔らかく変形し易い食品の変形を抑制すると共に食品表面にフィルムを密着した状態で良好に自動包装できる上包み包装機の物品保持移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の上包み包装機の物品保持移送装置は、
立体形状からなる食品の下面および側面を覆ったフィルムシートの縁部を食品の上面において重合するよう折り畳んで食品を表面に沿ってフィルムシートで覆うようにした上包み包装機において、
前記食品の表面に沿う形状に形成されて上部が開口するよう凹設された物品収容部を備えた搬送体が所定間隔毎に配設され、物品収容部の上部開口を覆うように搬送体上に供給載置されたフィルムシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送体におけるフィルムシートの載置面に開設され、エアを吸引および噴出するよう機能する通気孔と、
前記搬送体に供給載置されたフィルムシートの上方より食品を物品収容部へ収容するまでの搬送体移動区間において、前記通気孔を介してフィルムシートを搬送体の載置面に吸引保持するエア吸引手段と、
前記食品を物品収容部に収容した後の搬送体の移動区間において、前記通気孔からエアを噴出し、物品収容部外に延出するフィルムシートの縁部を立ち上げるエア噴出手段とを備え、
前記物品収容部に食品が収容される時の前記通気孔によるフィルムシートのエア吸引力が弱くなるように、少なくとも食品が供給される位置でフィルムシートに食品が接触する時点では、該食品が供給される位置より前までにおける前記通気孔による搬送体へのフィルム吸引力より弱いエア吸引力となるように設定されていることを特徴とする。
これによれば、物品供給ステーションまでは、搬送体が移動するときに該搬送体にフィルムシートを位置ズレやめくり上がりすることなく確実に吸引保持し、また食品を物品収容部に押し込む際のフィルムシートに作用するエア吸引力は弱く、フィルムシートを適度に張った状態に維持しつつ食品に加わる負荷を軽減することができる。すなわち、例えば8〜15μ程度の食品包装用ストレッチフィルムであっても、蒸しパンの如き角部を有する柔らかく変形し易い食品の変形を抑制して手作業での包装と遜色なくフィルムが食品表面に密着した状態で良好に自動包装できる。また、フィルムシートにエア吸引力を作用させる通気孔を、エア噴出のための孔として兼用するよう構成したから、食品を物品収容部に押し込む際に物品収容部内に引き込まれるフィルムの適度な保持と、物品収容部に収容された後の物品収容部外に延出するシート縁部の立ち上げを確実になし得る適正な位置に通気孔を設けることができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記搬送体におけるフィルムシートとの接触面には、フィルムシートとの粘着を抑制する粘着抑制処理が施されていることを要旨とする。
これによれば、食品を物品収容部に押し込む際に、物品収容部に引き込まれるフィルムと搬送体の接触面との粘着を抑制し得るから、ストレッチフィルム等の自己粘着性を有するフィルムであっても、フィルムに対する引張抵抗が発生することなく食品に加わる負荷を軽減して、食品の変形を抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記食品は、柔らかで変形し易く、かつ角部を有し、前記フィルムシートは8〜15μの厚みからなる食品包装用ストレッチフィルムであることを要旨とする。
これによれば、例えば厚さ12μ程度の薄手のストレッチフィルムによって、商品価値が低下する程角部が変形することなく食品表面にフィルムが密着した包装体を得ることができる。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記物品収容部における食品の角部収容空間部に近接して載置面に形成される前記通気孔の形成間隔は、他の部位に形成される通気孔の形成間隔より密に設定されていることを要旨とする。
これによれば、食品の角部を収容する角部収容空間部に多方向から引き込まれるフィルムシートを、他の部位よりも単位面積当たりで多数設けられた通気孔を介して作用するエア吸引力によって適正に張った状態に維持したもとで物品収容部内へ食品を押し込むことができるので、押し込む途中で食品の角部付近のフィルムの保持が不用意に解除されてしまうことで角部においてフィルムにだぶつきが生ずるのを防止し得る。また、物品収容部に食品を押し込んだ後、収容部外に延出しているフィルムの縁部を立ち上げる際に、角部の付近に寄せ集められているシート縁部を、他の部位よりも単位面積当たりで多数設けられた通気孔から多くのエアを噴出して確実に立ち上げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る上包み包装機の物品保持移送装置によれば、例えば蒸しパン等の柔らかく変形し易い食品であっても、その変形を抑制してフィルムが食品表面に密着した包装の自動化を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、蒸しパン、スポンジケーキ、サンドイッチ、その他の柔らかく変形し易い各種パン・ケーキ類からなる食品に好適な上包み包装機の物品保持移送装置につき、実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお実施例では、上面および下面が三角形状を呈する三角柱状の蒸しパンを包装する場合で説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、実施例に係る上包み包装機の物品保持移送装置の概略構成を示すものであって、該装置は、図示しないフィルム供給装置が配置されたフィルム供給ステーションの下方に配設された搬送手段10を有する。搬送手段10は、チェン・スプロケットからなる駆動機構を備え、図2に示すように幅方向に離間する一対の無端チェン12,12間に、走行方向に複数の搬送体14が所定間隔で架設され、図示しない駆動モータによってスプロケットを回転駆動することで、無端チェン12,12と共に搬送体14が所定速度で移動するよう構成される。そして搬送手段10では、フィルム供給装置から受け渡された矩形状のフィルムシートfを搬送体14に載置保持すると共に、該フィルム上から搬送体14へ押し込むようにして供給された食品16をフィルムシートfと共に下流側に搬送するよう構成される。なお、フィルムとしては、伸長性の、例えば12μ前後のポリエチレン製の自己粘着性を有するストレッチフィルムが使用されるが、必要に応じて、8〜15μ程度、好ましくは10〜13μの厚みのものが使用される。またフィルム素材としては、塩化ビニルやポリオレフィン系のポリプロピレンあるいはその他各種材質が挙げられ、これら各種材質からなるフィルムを、単層あるいは積層した食品包装用ストレッチフィルムを用いることが可能である。
【0014】
前記フィルム供給ステーションの物品搬送方向下流側には、上流側から下流側へ、物品供給ステーション、フィルム起立ステーション、フィルム折り畳みステーション、シールステーションおよび排出ステーションがこの順で設けられ、前記搬送手段10は、搬送体14を各ステーションで間欠停止するよう駆動制御される。実施例の搬送手段10は、搬送体14の配設ピッチで該搬送体14を間欠停止するよう設定され、その間欠停止時には、物品供給ステーションに2つの搬送体14,14が臨み、フィルム供給ステーション、フィルム起立ステーション、フィルム折り畳みステーション、シールステーションおよび排出ステーションに夫々1つの搬送体14が臨むようになっている(図1参照)。なお、フィルム供給ステーションと物品供給ステーションとの間には、実施例では搬送体14が間欠停止する1つのステーションが設定されている。
【0015】
前記各搬送体14は、図2に示す如く、前記無端チェン12,12に連結固定された本体18と、該本体18に着脱自在に配設された収容部材20とを備え、本体18および収容部材20の上面は同一レベルに位置するよう構成される。収容部材20の略中央位置には、食品16の形状に対応して平面視三角形状で上下方向に向けた貫通穴48が形成されている。また本体18には、図2に示す如く、収容部材20を装着した際に貫通穴34の下部側に臨む下面支持部材22が配設されており、該下面支持部材22と収容部材20の貫通穴34を形成する内側壁20cとにより、食品16の立体形状に沿った形状で上部に開口する凹状の物品収容部24が画成され、該物品収容部24に食品16を収容保持するようになっている(図5参照)。物品収容部24は、実施例では外側に向けた角部16aを有する三角柱状の食品16を収容するべく略三角柱状の中空部とされ、下面支持部材22の上面で、食品16の下面をフィルムシートfを介して保持すると共に、収容部材20における貫通穴34を形成する内側壁20cで、食品16の各辺に対応する外側面をフィルムシートfを介して保持し得るようになっている。
【0016】
前記物品収容部24には、該物品収容部24内に食品16が収容された際の食品16の各角部16aと対応する位置に、該角部16aが収容される角部収容空間部26が形成されている。この角部収容空間部26は、図5に示すように、物品収容部24に収容された食品16の角部16aから外側方に向けて拡開するよう形成された空所とされるよう構成してある。また角部収容空間部26は、各角部16aの外側方に向けて夫々の頂部から同一半径の円弧で拡開するよう設定された略円柱状の中空部とされて、物品収容部24の上部で円弧状に開口している。収容部材20におけるフィルム載置面となる上面と貫通穴48を形成する内側壁20cの交わる部位(物品収容部24の上部開口縁)は曲面で形成され、フィルムシートfの引き込み抵抗を低減すると共にフィルムの破れや裂け等の発生を防止するよう構成してある。また、収容部材20の表面および前記搬送体14の本体上面等、フィルムシートfとの接触面に、梨子地加工あるいはフッ素樹脂コーティング等の粘着抑制処理が施され、ストレッチフィルムからなるフィルムの自己粘着作用によってフィルムシートfが搬送体14に粘着するのを抑制し得るようにしてある。なお、食品16の角部16aとは、該食品16の上面と下面との各頂点を結ぶ稜線に沿う部分を指称するものである。
【0017】
前記下面支持部材22は、食品16の下面形状に沿った形状に形成されて、前記物品収容部24内を上下動し得るよう搬送体14の本体18に配設されている。また下面支持部材22は、前記フィルム供給ステーションからシールステーションまでの間は、食品16の下面を所定高さ位置で支持する物品支持位置に保持され、排出ステーションにおいて後述する排出装置で作動されて、包装された食品16を物品収容部24から押し出すよう構成される。なお、下面支持部材22が物品支持位置に保持されている状態で、物品収容部24の深さ寸法は、食品16の高さ寸法より僅かに長く設定され、物品収容部24内に収容した食品16の上面にシート縁部を折り畳む際に、食品16の変形を抑制すると共に食品16を損傷させることなく、食品16の表面にフィルムが密着して折り畳まれるようにしている。
【0018】
前記搬送体14の本体18は、図2に示す如く、前記収容部材20が配設される主体部材50と、該主体部材50の物品搬送方向前後に位置してフィルムシートfの前後の端縁部を支持する補助部材52,52とに3分割された構成となっている。実施例では、物品搬送方向に隣り合う搬送体14,14の主体部材50,50の間に位置する1つの補助部材52が、両側の搬送体14,14の補助部材を兼用しているが、各搬送体14が夫々2つの補助部材52,52を備える構成であってもよい。そして、搬送体14の本体18を3分割して個々の部材50,52,52を無端チェン12,12間に架設することで、搬送体14を上方のキャリア側と下方のリターン側とに回動させるスプロケットの径を小さくすることができ、装置の大型化を抑制し得るようにしてある。
【0019】
前記搬送体14の本体18における各補助部材52は中空箱状に形成され、該補助部材52のフィルムシートfが載置される載置面である上板52aに、補助部材52の内部空間に連通する複数の通気孔18aが形成されると共に、補助部材52の下板52bには、幅方向に離間する位置において搬送体14の移動方向に所定間隔で離間して補助部材52の内部空間に連通する連通孔18bが形成される(図2,図4参照)。通気孔18aは、図2に示す如く、補助部材52における物品搬送方向の前端縁および後端縁に沿って形成されており、一方の端縁に近接位置する通気孔群がフィルムシートfの前端縁部に対してエア吸引力を作用するべく機能し、他方の端縁に近接位置する通気孔群がフィルムシートfの後端縁部に対してエア吸引力を作用するべく機能する。また前記収容部材20は中空箱状に形成されており、フィルムシートfが載置される載置面である上板20dにおける物品収容部24の形成位置を除く部位に、収容部材20の内部空間に連通する複数の通気孔20aが形成されると共に、下板20eには、前記本体18の連通孔18bに対応する幅方向に離間する位置において、搬送体14の移動方向に所定間隔で離間して収容部材20の内部空間に連通する連通孔20bが形成されている(図2,図4参照)。
【0020】
前記角部収容空間部26に近接する部位に形成される前記通気孔20aの形成間隔は、他の部位に形成される通気孔20aの形成間隔より密となるよう設定され、後述するように角部収容空間部26に引き込まれるフィルムシートfあるいは角部収容空間部26の外方に延出するシート縁部に対して作用するエアの吸引量および噴出量を単位面積当たりで多く作用させ得るようになっている。なお、搬送体14の移動に伴ない後述する第1噴出チャンバー36,36が連通孔20b,20bに連通した際に各通気孔20aから噴出されるエアの噴出力は略同じであり、物品収容部24から延出しているシート縁部は、物品収容部24から離間する開放端側から順次立ち上がるようになっている。
【0021】
前記搬送体14の通路上には、前記本体18の連通孔18bおよび収容部材20の連通孔20bに連通可能な長穴状の開口54が搬送体14の移動方向に沿って複数設けられた複数のチャンバー28,30,32,34,36,38が、移動方向に並ぶ各連通孔群に対応して移動方向に並んで複数配設されている。実施例では、図3および図4に示す如く、各連通孔群毎に6つのチャンバーが配設されており、上流側から順に第1吸引チャンバー28、第2吸引チャンバー30、第3吸引チャンバー32、第4吸引チャンバー34、第1噴出チャンバー36および第2噴出チャンバー38と指称する。そして、第1〜第4吸引チャンバー28,30,32,34には、エア吸引源としての第1ブロワ40に接続する第1エア分配器56の吸引口が夫々独立した管路系を介して接続されている。また、第1および第2噴出チャンバー36,38には、エア噴出源としての第2ブロワ42にエアフィルタ58を介して接続する第2エア分配器60の吐出口が夫々独立した管路系を介して接続されている。
【0022】
前記第1吸引チャンバー28および第2吸引チャンバー30が前記フィルム供給ステーションおよびその下流側ステーションに亘って臨むと共に、第3吸引チャンバー32および第4吸引チャンバー34が前記物品供給ステーションに臨み、フィルム供給ステーションおよび物品供給ステーションに間欠停止または通過する搬送体14の各連通孔18b,20bが対応する吸引チャンバー28,30,32,34に開口54を介して連通して(図4参照)、フィルム供給ステーションから物品供給ステーションまでの間に亘り、搬送体14の各通気孔18a,20aを介してエア吸引力が作用するよう構成される。すなわち、フィルム供給装置から供給されたフィルムシートfを、搬送体14の通気孔18a,20aを介して作用するエア吸引力によって搬送体14の上面に吸引保持した状態で物品供給ステーションまで(フィルムシートfの上方より食品16を物品収容部24へ収容するまでの搬送体移動区間)搬送し得るようになっている。また、第1噴出チャンバー36が前記フィルム起立ステーションに臨むと共に、第2噴出チャンバー38が前記フィルム折り畳みステーションに臨み、フィルム起立ステーションおよびフィルム折り畳みステーションに間欠停止または通過する搬送体14の各連通孔18b,20bが対応する噴出チャンバー36,38に開口54を介して連通して(図4参照)、フィルム起立ステーションおよびフィルム折り畳みステーション(食品16を物品収容部24に収容した後の搬送体14の移動区間)においては搬送体14の各通気孔18a,20aからエアが上向きに噴出するよう構成される。すなわち、物品収容部24に食品16をフィルムシートfの上方から押し込んだ際に物品収容部24外に延出するシート縁部を、通気孔18a,20aから噴出されるエアによって上向きに立ち上げるようになっている。実施例では第1ブロワ40と吸引チャンバー28,30,32,34とでエア吸引手段が構成され、第2ブロワ42と噴出チャンバー36,38とでエア噴出手段が構成される。
【0023】
前記第1〜第4吸引チャンバー28,30,32,34に連通孔18b,20bが連通したときに、通気孔18a,20aを介して作用するエア吸引力は、異なるように設定されている。すなわち、第1および第2吸引チャンバー28,30に連通孔18b,20bが連通したときの通気孔18a,20aを介して作用するエア吸引力より、第3および第4吸引チャンバー32,34に連通孔18b,20bが連通したときのエア吸引力が小さくなるよう設定される。実施例では、第3および4吸引チャンバー32,34と第1ブロワ40との間に設けた前記第1エア分配器56内に吸引力調節手段としての調節弁(図示せず)が配設され、該調節弁によってエア吸引力が前述した条件となるよう調節されている。なお、第1および第2吸引チャンバー28,30による搬送体14の上面へのフィルムシートfの吸引保持力は、過度な吸引によってフィルムシートfを変形させることなく、該搬送体14の移動により位置ズレしない程度の適度な値に設定されていればよい。フィルムシートfを搬送体14に吸引保持するエア吸引力を変える手段としては、調節弁等エア吸引手段側で行なうものに限られるものでなく、例えば搬送体14の位置に応じて切換手段によって通気孔18a,20aの開口寸法を変更する等、通気孔18a,20aを介してフィルムシートfに作用するエア吸引力が変化するものであれば、その他各種の方式が採用できる。
【0024】
前記フィルム起立ステーションにおいて前記エア噴出手段で立ち上げられて搬送方向前方に臨むシート縁部に向けて、搬送方向下流側からエアを噴き付けるエア噴射手段44が配設される。具体的には、三角柱状の食品16を収容する物品収容部24における一辺が、物品搬送方向下流側において幅方向に斜めに延在するように物品収容部24が形成されており、該辺から上方に立ち上がったシート縁部に向けてエア噴射手段44からエアが噴き付けられることで、そのフィルム延出部が食品16の上面に押し付けられるように折曲げられる補助折込みを実施し得るようになっている。
【0025】
前記フィルム折り畳みステーションでは、物品収容部24に収容された食品16の外周縁から延出しているシート縁部を食品上面に沿って折り畳むと共に、フィルム折り畳み装置で折り畳まれたフィルムの折り畳み重合部に仮シールを施すようになっている。また、その下流側のシールステーションにおいて仮シールされたフィルムの折り畳み重合部を完全にシールすると共に、その後排出ステーションにおいて前記下面支持部材22を作動して物品収容部24から押し出された食品16は、排出コンベヤ46で次工程に搬送されるよう構成されている。
【0026】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る上包み包装機の物品保持移送装置の作用につき説明する。
【0027】
前記フィルム供給ステーションにて間欠停止した搬送体14に対し、フィルム供給装置から矩形状のフィルムシートfが供給される。フィルム供給ステーションに位置する搬送体14の連通孔18b,20bは、前記第1吸引チャンバー28に連通し、搬送体14に供給されたフィルムシートfは、搬送体14の通気孔18a,20aを介して作用する強いエア吸引力によって、搬送体14上に物品収容部24の上部開口を覆うように搬送体14上に吸引保持される。
【0028】
前記フィルムシートfを吸引保持した搬送体14がフィルム供給ステーションから物品供給ステーションに移動する間、前記連通孔18b,20bには第2吸引チャンバー30が連通して、フィルムシートfを過度に吸引することなく、かつフィルムシートfが位置ズレせず、まためくれ上がることのない適度なエア吸引力によってフィルムシートfが搬送体14上に吸引保持されるようになっている。従って、搬送体14がフィルム供給ステーションから物品供給ステーションに移動する間に、フィルムシートfが位置ズレして物品収容部24に対する位置が変わってしまったり、あるいはフィルムシートfがめくれ上がって自己粘着性を有するストレッチフィルム同士が重なり合ってしまうといった不具合が防止される。
【0029】
前記フィルムシートfが吸引保持された搬送体14が物品供給ステーションで間欠停止したときには、搬送体14の連通孔18b,20bは第3吸引チャンバー32または第4吸引チャンバー34に連通し、前記通気孔18a,20aを介して作用する弱いエア吸引力によってフィルムシートfが搬送体14上に吸引保持される。この物品供給ステーションにおいて、フィルムシートfの上方から表裏反転状態(蒸しパンとしての商品の上面となる面を下向きにした姿勢)の食品16を物品収容部24に押し込むことにより、食品16は上面を除く物品収容部24に沿う下面および側面がフィルムシートfで覆われると共に、該フィルムシートfの縁部は物品収容部24から外方に所定長さだけ延出する(図5参照)。このときフィルムシートfは適度に張った状態で食品16と共に物品収容部24に引き込まれ、物品収容部24内において食品16の下面および側面を覆っているフィルムは食品16とのだぶつきがなく、密着した状態となる。しかも、物品供給ステーションにおいてフィルムシートfに作用するエア吸引力は、搬送体14が移動する際の値より小さく、蒸しパン等の柔らかく変形し易い食品16の変形を抑制し得る適度なエア吸引力に設定されているので、食品16に加わる負荷も小さくなる。すなわち、食品16がフィルムシートfに接触する時点においては、エア吸引力が弱くなっているので、そのような柔らかく変形し易い食品16の殊に角部16aが、商品価値が低下する程変形するのは防止される。更に、搬送体14のフィルム接触面には自己粘着抑制処理が施してあるから、ストレッチフィルムの如き自己粘着性を有するフィルムであっても、物品収容部24への引き込み抵抗を低減でき、食品16の角部16aに加わる負荷をより軽減し得る。
【0030】
なお、物品収容部24における食品16の角部16aが収容される角部収容空間部26では、収容される角部16aから収容部材20の内側壁が離間するようになっているから、この構成によってもフィルムシートfが角部収容空間部26に角部16aと共に引き込まれる際に、該角部16aに加わる負荷は軽減される。
【0031】
前記物品収容部24に食品16が収容された搬送体14が物品供給ステーションからフィルム起立ステーションに至る間に、前記連通孔18b,20bには第1噴出チャンバー36が連通し、通気孔18a,20aからエアが上方に噴出され、前記物品収容部24から外方に延出しているシート縁部は上向きに立ち上げられる。また、搬送体14における前記角部収容空間部26付近の通気孔20aは、他の部位より密に形成されており、角部16aの付近に寄せ集められているシート縁部を、単位面積当たりで他の部位より多く噴出されるエアによって確実に立ち上げることができる。更に、シート縁部が立ち上げられたタイミングに合わせて、前記エア噴射手段44から物品収容部24における下流側の辺から延出するシート縁部に向けてエアが噴き付けられ、搬送方向前方に位置する三角柱状の食品16における一辺から立ち上がったシート縁部が食品16の上面に押し付けられるように折り曲げられる。
【0032】
なお、連通孔20b,20bに第1噴出チャンバー36が連通したときの各通気孔20aから噴出されるエアの噴出量は略同じであるので、物品収容部24から延出しているシート縁部は、物品収容部24から離間する側から順次立ち上がり、シート縁部は確実に立ち上げられる。
【0033】
前記食品16が収容された搬送体14の物品収容部24がフィルム折り畳みステーションに到来するタイミングに合わせて、フィルム折り畳み装置が作動し、複数の折り畳み片によって食品16の外周縁から立ち上げられているフィルムシートfの縁部が、食品16の上面に沿って折り畳まれる。このとき、搬送体14の連通孔18b,20bは第2噴出チャンバー38に連通して、通気孔18a,20aからのエア噴出は継続しているからシート縁部は上方に立ち上がった状態に維持されているのでフィルムの折り畳みは確実に行なわれる。フィルム折り畳み後に、フィルム折り畳み重合部に仮シールが施され、シート縁部の折り畳み状態が維持される。なお、前記第2ブロワ42から吐出されるエアは、前記エアフィルタ58を通って各噴出チャンバー36,38に供給されるから、前記通気孔20aから噴出されてシート縁部に噴き付けられるエアは清浄であり、フィルムが汚損される恐れはない。
【0034】
仮シールが施された食品16がシールステーションに移動して、フィルム折り畳み重合部がシールされ、角部16aを有する柔らかく変形し易い食品16に薄手のフィルムシートfが密着した状態で覆われた包装体が得られる。次いで前記食品16を搬送する搬送体14が排出ステーションに達した際に前記下面支持部材22が物品収容部24内を上部開口に向けて移動して包装された食品16を物品収容部24から押し出して、該食品16(包装体)は排出コンベヤ46で搬出される。
【0035】
このように、物品供給ステーションでフィルムシートfに作用するエア吸引力を、フィルム供給ステーションから物品供給ステーションに移動する搬送体14上でフィルムシートfが位置ズレするのを防止し得るエア吸引力より小さく設定したから、食品16を物品収容部24に押し込む際に角部16aに加わる負荷を小さくでき、角部16aの変形を抑制し得る。従って、食品16が蒸しパン、スポンジケーキ、サンドイッチ、各種パン・ケーキ類からなる柔らかく変形し易い食品においても、該食品16における角部16aの変形を抑制し、手作業による包装と遜色ない仕上がり状態となるように自動包装ができる。しかも、食品16と共に物品収容部24に引き込まれるフィルムシートfは弱いエア吸引力によって張った状態に維持されているから、食品16との間にだぶつきがなく密着した包装ができる。
【0036】
また、前記食品16の角部16aが収容される角部収容空間部26に近接する通気孔20aの形成間隔を他の部位より密に設定してあるから、食品16を物品収容部24に押し込む際に角部収容空間部26に多方向から一気に絞り込まれるようにして引き込まれるフィルムシートfを適正に張った状態に保持でき、食品16における角部16aの変形を抑制したもとでフィルムを密着させ得る。更に、物品収容部24から延出するシート縁部の立ち上げに際し、角部16aの付近に寄せ集められているシート縁部を、他の部位よりも単位面積当たりで多数設けられた通気孔20aから多くのエアを噴出して確実に立ち上げることができるから、その後のシート縁部の折り畳みを確実に行なわせ得る。
【0037】
なお、前記搬送体14に形成される通気孔18a,20aは、フィルムシートfに対してエア吸引力を作用する孔およびシート縁部に対してエアを噴出する孔として兼用するよう構成したから、吸引チャンバー28,30,32,43と噴出チャンバー36,38の配設位置をずらす必要はない。すなわち、吸引チャンバー28,30,32,43および噴出チャンバー36,38を物品搬送方向に整列して配置し、該チャンバー28,30,32,43,36,38に連通可能な位置に連通孔18b,20bを設ければ、通気孔18a,20aに関しては、食品16を物品収容部24に押し込む際に物品収容部24内に引き込まれるフィルムの適度な保持と、物品収容部24に収容された後の物品収容部24の外部に延出するシート縁部の立ち上げを確実になし得る適正な位置に設けることができる。
【0038】
(変更例)
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1. 実施例では食品16として外側に向けた角部を有する三角柱状のものの場合で説明したが、四角柱状等の複数の角部を有する食品に適用できる。
2. 実施例では、各吸引チャンバー28,30,32,34に作用するエア吸引力を調節する吸引力調節手段として調節弁を挙げたが、管路径を変えたり、あるいはエア吸引源を別々に設ける等、その他の手段を採用し得る。
3. 実施例では、物品供給ステーションを搬送体14の2つのステーション分の間欠停止位置として設定したが、1ステーション分のみとしたり、あるいは3ステーション分にする等、装置の処理能力等によって数を任意に設定し得る。また、搬送体14を間欠停止させる場合に限らず、搬送体14を連続移動するようにしてもよい。そして、搬送体14を間欠停止させる場合は、装置をコンパクトかつ単純な構造とすることができ、搬送体14を連続移動する場合は、作業効率が高くなる。
4. 実施例では、4つの吸引チャンバー28,30,32,34と2つの噴出チャンバー36,38を配設した構成で説明したが、これら各チャンバーの数については、フィルム供給ステーションから物品供給ステーションまで、並びにその下流側のフィルム起立ステーョンとフィルム折り畳みステーションの相互の間隔等に応じた配設数とすることができる。
5. 実施例では、フィルムシートfの吸引保持のためのエア吸引源と、シート縁部の立ち上げのためのエア噴出源とを別々に設けたが、エア吸引源としての第1ブロワ40の排気をシート縁部の立ち上げに利用することが可能である。すなわち、第1ブロワ40の排気を噴出チャンバー36,38に引き込み、噴出チャンバー36,38と連通孔18b,20bとが連通状態となったときに、エアが通気孔18a,20aから上方に噴出されるようにする構成を採用し得る。
6. 実施例では、搬送体14に収容部材20を着脱自在に配設したが、該収容部材20を搬送体14に一体に形成してもよい。
7. 実施例では、全ての通気孔18a,20aについて、エアの吸引および噴出を兼用させるよう構成したが、例えば吸引チャンバーや噴出チャンバーを2系統とする等により、一部の通気孔18a、20aを、エアの吸引および噴出の何れか一方の専用として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例に係る上包み包装装置の搬送手段を示す概略平面図である。
【図2】実施例に係る搬送手段を、搬送体が下流側の物品供給ステーションに臨んでいる状態で示す要部概略平面図である。
【図3】実施例に係る吸引チャンバーおよび噴出チャンバーと対応するブロワの接続関係を示す概略平面図である。
【図4】実施例に係る吸引チャンバーおよび噴出チャンバーと搬送体との関係を示す要部概略側面図である。
【図5】実施例に係る収容部材を、物品収容部に食品およびフィルムシートが収容されている状態で示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 搬送手段,14 搬送体,16 食品,16a 角部
18a 通気孔,20a 通気孔,20d 上板(載置面),24 物品収容部
26 角部収容空間部,28 第1吸引チャンバー(エア吸引手段)
30 第2吸引チャンバー(エア吸引手段),32 第3吸引チャンバー(エア吸引手段)
34 第4吸引チャンバー(エア吸引手段),36 第1噴出チャンバー(エア噴出手段)
38 第2噴出チャンバー(エア噴出手段),40 第1ブロワ(エア吸引手段)
42 第2ブロワ(エア噴出手段),52a 上板(載置面),f フィルムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状からなる食品(16)の下面および側面を覆ったフィルムシート(f)の縁部を食品(16)の上面において重合するよう折り畳んで食品(16)を表面に沿ってフィルムシート(f)で覆うようにした上包み包装機において、
前記食品(16)の表面に沿う形状に形成されて上部が開口するよう凹設された物品収容部(24)を備えた搬送体(14)が所定間隔毎に配設され、物品収容部(24)の上部開口を覆うように搬送体(14)上に供給載置されたフィルムシート(f)を搬送する搬送手段(10)と、
前記搬送体(14)におけるフィルムシート(f)の載置面(20d,52a)に開設され、エアを吸引および噴出するよう機能する通気孔(18a,20a)と、
前記搬送体(14)に供給載置されたフィルムシート(f)の上方より食品(16)を物品収容部(24)へ収容するまでの搬送体移動区間において、前記通気孔(18a,20a)を介してフィルムシート(f)を搬送体(14)の載置面(20d,52a)に吸引保持するエア吸引手段(28,30,32,34,40)と、
前記食品(16)を物品収容部(24)に収容した後の搬送体(14)の移動区間において、前記通気孔(18a,20a)からエアを噴出し、物品収容部(24)外に延出するフィルムシート(f)の縁部を立ち上げるエア噴出手段(36,38,42)とを備え、
前記物品収容部(24)に食品(16)が収容される時の前記通気孔(18a,20a)によるフィルムシート(f)のエア吸引力が弱くなるように、少なくとも食品(16)が供給される位置でフィルムシート(f)に食品(16)が接触する時点では、該食品(16)が供給される位置より前までにおける前記通気孔(18a,20a)による搬送体(14)へのフィルム吸引力より弱いエア吸引力となるように設定されている
ことを特徴とする上包み包装機の物品保持移送装置。
【請求項2】
前記搬送体(14)におけるフィルムシート(f)との接触面には、フィルムシート(f)との粘着を抑制する粘着抑制処理が施されている請求項1記載の上包み包装機の物品保持移送装置。
【請求項3】
前記食品(16)は、柔らかで変形し易く、かつ角部(16a)を有し、前記フィルムシート(f)は8〜15μの厚みからなる食品包装用ストレッチフィルムである請求項1または2記載の上包み包装機の物品保持移送装置。
【請求項4】
前記物品収容部(24)における食品(16)の角部収容空間部(26)に近接して載置面(20d)に形成される前記通気孔(20a)の形成間隔は、他の部位に形成される通気孔(20a)の形成間隔より密に設定されている請求項3記載の上包み包装機の物品保持移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−308226(P2008−308226A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160794(P2007−160794)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000136387)株式会社フジキカイ (129)
【出願人】(000178594)山崎製パン株式会社 (42)
【Fターム(参考)】