説明

不溶性電極及び電気化学的液体処理装置

【解決課題】フッ素成分等の腐食性成分を含む電極液中でも腐食を伴うことなく、長期間安定した運転を可能とする不溶性電極及び電気化学的液体処理装置を提供する。
【解決手段】不溶性電極は、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体aと;基体aの少なくとも一側面上に形成されている金又は金合金からなる第一中間層bと;第一中間層bに積層して形成されている白金又は白金合金からなる第二中間層cと;第二中間層cに積層して形成されている酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化白金又はこれらの任意の組み合わせを含む金属酸化物皮膜層dと;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性電極及び電気化学的液体処理装置に関し、特に、腐食性の高いフッ化物等を含む液体を処理する電気化学的液体処理装置に適する不溶性電極に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工程から副生成物または廃棄物として排出される排水中に含まれる中性塩、廃酸、廃アルカリによる環境負荷を小さくし、かつ副生成物または廃棄物中の有用成分を回収して再利用できる技術を開発することは種々のプラントにおける大きな課題である。また、排水中から環境に負荷を与える物質を除去した際に得られる処理水がプラント内で再利用可能となればさらに望ましいことはいうまでもない。
【0003】
例えば、半導体、液晶または電子部品の製造工程からは、製造に使用した0.5%〜10%程度のフッ素を含む濃厚なフッ素含有使用済み薬品と、1リットル当たり数十〜数百mgのフッ素を含む希薄なフッ素含有排水が発生する。
【0004】
濃厚なフッ素含有使用済み薬品については、使用済み薬品の特性に応じて、再利用の技術開発が進められている。既に使用済み薬品の一部は、鉄鋼業での酸洗浄用薬品、セメント原料、蛍石(CaF)を製造してフッ酸、ガラスの原料として使用されている。
【0005】
一方、希薄なフッ素含有排水については、フッ素濃度があまりにも希薄なためにそのままでは再利用の用途がなく、従来は、希薄な排水のまま、あるいは濃厚なフッ素含有使用済薬品と混合して廃棄のための処理がされていた。しかし、フッ素含有排水は大量に発生するため、廃棄処分されるフッ素量は再利用されるフッ素量を大幅に上回る。
【0006】
フッ素イオンは人の健康に関わる被害を生じるおそれがある有害な物質として排水規制の対象物質であり、日本では、一律排水基準として海域以外の公共用水域に排出されるもので8mg/L以下、海域に排出されるもので15mg/L以下と定められている。また、人の健康の保護を目的とした環境基準では0.8mg/Lと定められている。したがって、フッ素含有排水の処理水中のフッ素濃度は一律排水基準を満たすだけでなく、可能な限り環境基準に近づけることが望ましい。このため、処理水中のフッ素をカルシウム(Ca)やリン(P)と反応させて、水への溶解度が小さい化合物とするフッ素固定化処理、たとえば水酸化カルシウム(Ca(OH))を用いる凝集沈殿法などにより処理されている。しかしながら、処理水中のフッ素濃度を環境基準に近づけようとすると凝集沈殿に必要な薬品の使用量が急激に増加し、汚泥の発生量が著しく増加するという問題がある。凝集沈殿法により発生したフッ素を含む汚泥は埋設処分されており、フッ素が再利用されることはない。さらに、凝集沈殿法により発生するフッ素由来の汚泥量は、フッ素含有排水の水量とともに増加するため、希薄なフッ素含有排水の濃縮減容化が検討されているが、効率的に濃縮する技術は未だ実用化されていない。また、処理水もCaを多量に含んでいるため再利用が困難であり、外部に放流されるのが通常であった。
【0007】
一方、フッ素含有排水からフッ素を除去して純水製造用の原水として再利用を図る試みがなされている。この場合は、処理水のフッ素濃度はおよそ1mg/L以下にまで低減されることが望ましい。処理水中のフッ素濃度が1mg/Lを超えると、例えば地下水や水道水などのCa含有水と混合して純水製造用原水とした場合に、純水製造の過程での不純物の分離・濃縮操作でフッ化カルシウムが生成されて純水製造装置を閉塞させてしまうおそれがあるからである。
【0008】
しかし、水溶液の濃縮操作に用いられる通常の水処理技術をフッ素含有排水の処理に適用するには種々の問題があることが知られている。例えば、フッ素含有排水を逆浸透(RO)膜処理すると、フッ化水素酸(HF)は膜透過性が高いので膜透過水側にリークするHFが多くなり、効率的に濃縮できないばかりでなく、処理水中のフッ素濃度が高いという問題がある。また、蒸発濃縮法は、10,000mg/L程度以上の濃厚な排水をさらに濃縮するには有効な方法であるが、希薄排水の濃縮には水蒸発に関わるエネルギー消費が大きくなるために適用しにくい。その上、蒸留水中にもフッ素イオンがキャリーオーバーするため、蒸留水のフッ素濃度が高くなり、そのままでは再利用しにくいという欠点もある。
【0009】
これらの方法に対して、電気透析法は、イオン濃度が1,000mg/L〜10,000mg/L程度の濃度の排水を濃縮または脱塩することができる優れた方法であり、かん水から飲料水の製造、酸の回収、塩類の濃縮技術として広く実用化されている。また、電気透析槽にイオン交換体を充填した電気式脱塩装置が開発され、純水製造分野で実用化されている。電気式脱塩装置は、従来型のイオン交換体を充填していない電気透析装置では処理が困難であった希薄な水溶液、たとえばイオン濃度が1mg/L〜1,000mg/L程度の希薄な水溶液であっても、水溶液中の不純物イオンを分離して処理水を純水にまで浄化することができる。さらに消費エネルギーも低いという利点がある。
【0010】
しかしながら、電気透析法をフッ素含有排水の処理に適用しようとすると、排水中のフッ素イオンが陽極側に移動してフッ酸を発生するため、電気透析槽の電極がフッ酸で腐食してしまうという問題があり、これまでフッ素含有排水の処理に電気透析法を適用することは困難であった。電気透析槽の陽極には、通常はチタン材に白金めっきした電極(チタン−白金電極)が使用されている。陽極液中のフッ素濃度が1mg−F/L未満の場合には、チタン−白金電極は、フッ化水素酸による腐食があまり進行せず安定した運転を継続できる。しかし、フッ素濃度が1mg−F/Lを超えると、ごく短時間で電極の腐食が観察されるようになり、次第に電極が消耗して基材のチタンの溶解が進行し、同時に電気透析槽の運転電圧も上昇するというという不具合が生じる。このため、フッ化水素酸による浸食に耐える電極が要望されているが、これまでは長時間安定して実用可能な電極は存在せず、フッ素含有排水の処理に電気透析法を用いる場合には、短時間で電極を交換しなければならなかった。
【0011】
フッ化水素酸に耐える金属として、金と白金が知られている。
金は非常に安定した金属で耐食性に優れ、電気抵抗も小さい金属であるが、高価である。電極としての金の使用量を低減するために導電性の基体の上に金めっきを施して使用しようとすると、薄い金めっきはピンホールが多く存在して、そこから基体が腐食されるという問題がある。めっき厚を厚くしても、ピンホールは少なくなるがゼロになるわけではなく、腐食の問題が解決されないばかりでなく、金の使用量が増えるので高価となる。さらに、金めっき電極は陽極としての耐食性が小さく、金の消耗が速い。このため、これまで金めっき電極は使用されていなかった。
【0012】
白金は、導電性の基体、特にチタンにめっきすることで、(1)電気伝導率が非常に良い、(2)中性電解液に限らず、酸性、アルカリ性の電解液に対しても耐食性が優れている、(3)陽極としての耐食性が高い、(4)電気めっき法による加工はプロセス的にもっとも簡便な方法であり、めっき技術の向上で、0.1〜10μmの範囲を自由自在にめっき出来るようになっている、(5)白金はチタンから再生加工が容易である、などの電極として優れた特徴を有しているので、高価であるにもかかわらず、万能型電極として広く使われている。
【0013】
ところが、白金めっき皮膜は、デンドライトが成長しやすく、凹凸の大きいピンホールや水素吸蔵等の問題から、欠陥が多いめっきを形成しやすい。欠陥部ではチタンが露出した状態となり、特に腐食性の強いフッ素化合物存在下で電極として使用するとチタン自身の腐食が生じやすい。チタンの腐食は、白金めっきの下を平面方向に進み(アンダーカッティング腐食)、白金めっきとチタンとの結合力を失わせて白金を脱落させる。このアンダーカッティング腐食は、加速度的に進行し、電極寿命に至る。このように、純白金板をフッ素化合物存在下で陽極として使用した際の白金の溶出・損耗は非常に小さいにもかかわらず、白金めっきチタン電極の場合には実際のめっき厚みに相当した寿命が発揮されないという問題があった。
【0014】
このため、フッ化水素酸環境下での電極の長寿命化を目的として、緻密で欠陥のないめっき層を形成する技術の開発が試みられてきた。
たとえば、チタン母材の表面に白金めっきを1μmの厚みで施し、次いでIr−Ru−Rhからなる塩を白金めっき面に塗布し、380℃〜600℃の還元性雰囲気下で乾燥させた後に、500℃〜600℃の酸化性雰囲気で加熱処理をして、熱分解で生成した金属を白金めっき中に拡散させて、白金めっき面のピンホールを被覆する、電気めっきと塗布めっきを組み合わせた電極の製造方法がある(特許文献1)。しかし、塗布めっきでは有効な皮膜厚さを得るために多くの工程が必要であり、1μmの塗布めっき厚を得るためには40回もの塗布、乾燥、加熱の作業サイクルが必要となり、多大の製造コストを要するという問題がある。
【0015】
また、チタン母材に白金めっきを1μm施し、次いで、白金の塩化物をアルコールで溶解した後、還元性の有機溶媒に分散させた溶液を白金めっき面に塗布して380℃〜600℃の還元炎下で乾燥加熱する熱分解めっきを繰り返し行い、熱分解で生成した金属で電気めっき層の欠陥部を被覆し、さらに白金族酸化物により被覆する、電気めっき、熱分解めっき及び耐食性皮膜の3層構造として白金めっき層のピンホールをシールした電解用不溶性陽極を製造する方法がある(特許文献2)。しかし、0.5μmの熱分解めっき厚を得るために20回もの塗布および乾燥・加熱が必要で、多大の製造コストを必要とする。またこうして製造した電極は、めっき損耗量が2μm厚の白金めっき電極の1/6まで減少したが、純白金の腐食速度に比べると腐食速度がまだ大きく、実用化には不十分なものであった。
【0016】
さらに、チタン母材に白金めっきを1μm施し、真空槽内で窒素、アルゴン、酸素等の加速イオンを打ち込むイオン照射処理、あるいはこれらの加速イオンと蒸発させた金属あるいは半金属の蒸気をミキシングしながら電極表面に打ち込むイオンミキシング処理により緻密で欠陥の少ない表面に改質した不溶性電極を製造する方法がある(特許文献3)。しかし、電極製作に高価な大型イオン照射処理装置が必要となること、およびエキスパンドメタルのような複雑な形状をした電極には均一なイオン照射処理が困難であるという問題がある。
【0017】
また、放電管を設けた真空槽内でプラズマ放電により、チタン板上にダイヤモンド薄膜を形成するプラズマCVD成膜法により製造した耐食性が高く緻密なCVDダイヤモンド薄膜を製膜した電極を用いて、フッ素濃度が高い被処理水であっても処理することができる電気脱イオン装置も提案されている(特許文献4)。しかし、CVDダイヤモンド薄膜電極の製造には、高価な大型CVD装置が必要となるという問題がある。
【0018】
以上のように、これまで白金メッキによる電極の改良が提案されているが、純白金と同等までの長寿命化は達成できていない。また、従来の白金めっきチタン電極に比較して寿命が延びた電極の報告もあるが、(1)電極の製造方法が複雑でコストが高い、(2)製造可能な電極の大きさや形状に制約がある、(3)純白金と同等の寿命には程遠い、などの問題がある。
【0019】
一方、電極と接触する液体中のフッ素濃度を予め低減させることで電極の腐食を防止する方法も提案されている。たとえば、フッ素を含む原水を電気式脱塩装置の脱塩室に通過させてフッ化水素酸濃度を低減させた処理水を電極室への供給水として使用する電気式脱塩装置が提案されている(特許文献5)。しかし、フッ素濃度が高い排水の処理を行おうとすると、電極が腐食するという問題が生じてくる。例えば半導体製造工程でフッ酸を使用してエッチングを行った際の最終リンス水のようにフッ素濃度が1mg/L未満の使用済み超純水を処理する場合には、電気透析槽の内部でのフッ素の濃度がせいぜい数十mg/Lと低いため、極室にリークするフッ素の量は少ないので、極室のフッ素濃度が高まることはない。ところが、数十mg/Lのフッ素濃度の排水を処理しようとすると、電気透析槽の濃縮室のフッ素濃度は数百〜数千mg/Lのフッ素濃度となり、電極室へのフッ素のリーク量が多くなるので、電極室でのフッ素濃度が高まるという問題が生じる。また、電極室のフッ素濃度を下げるために希釈しようとすると、電極室へ脱塩室からの処理水の供給量を増加させる必要が出てくるという問題が生じる。
【0020】
また、フッ素含有排水を電気脱イオン装置で処理する際に、電気脱イオン装置の前段にフッ素吸着樹脂装置を設置してあらかじめフッ素を除去することにより電極の腐食を防止する方法が提案されている(特許文献6)。電子産業分野の工場で洗浄水として使用した後の使用済み超純水(回収水)を、回収・処理する際に、電気脱イオン装置の前段に逆浸透膜とCeを担持したフッ素キレート樹脂を配置して処理することにより、電気脱イオン装置の陽極近傍でのHFの濃縮を防止する。しかし、被処理水中のフッ素をフッ素吸着樹脂で吸着除去するため、フッ素で飽和したフッ素吸着樹脂は薬品を用いて再生する必要があり、被処理水中のフッ素濃度が高い場合は、多量の再生廃水が発生するという問題が生じる。
【0021】
これら従来の電気透析技術では、電気透析法によりフッ素含有排水を処理しようとすると、イオン交換膜のフッ素透過性が高いために極室にフッ素イオンが流入して、電極を腐食するため、安定した運転が継続できないという問題もあった。このため、フッ素成分等の腐食性成分を含む電解液中でも電極腐食を伴うことなく、長期間安定した運転を行うことのできる電極が必要とされている。また、電極の頻繁な交換を不要として、長時間安定にフッ素含有排水を処理することができる電気透析装置が必要とされている。
【特許文献1】特公昭57−49636号公報
【特許文献2】特公昭59−35439号公報
【特許文献3】特公平3−43354号公報
【特許文献4】特開2003−126863号公報
【特許文献5】特開2001−121152号公報
【特許文献6】特開2001−170658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、フッ素成分等の腐食性成分を含む電極液中でも腐食を伴うことなく、長期間安定した運転を可能とする不溶性電極を提供することを第1の目的とする。
【0023】
また、本発明は、フッ素含有排水を長期間安定して処理することができる電気化学的液体処理装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体に、金又は金合金被膜をめっき又はスパッタ、蒸着などの手法により形成し、その表層側に白金被膜を形成し、更にその表層側に酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化白金又はこれらの任意の組み合わせを含む金属酸化物被膜を形成した電極が有効であることを見出した。
【0025】
すなわち、本発明によれば、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体と;当該基体上に形成されている金又は金合金からなる第一中間層と;当該第一中間層に積層して形成されている白金又は白金合金からなる第二中間層と;当該第二中間層に積層して形成されている酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化白金又はこれらの任意の組み合わせを含む金属酸化物皮膜層と;を具備する不溶性電極が提供される。
【0026】
本発明の不溶性電極において、第一中間層、第二中間層及び金属酸化物被膜層は、基体の全面を覆うように形成されていることが好ましい。全面に被膜層を設けることによって、フッ素のような浸透性の高い腐食媒の進入を防ぐことができる。
【0027】
本発明の好適な不溶性電極の構成を図1に概略図示する。図1において、不溶性電極は、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体aと、基体aの少なくとも一側面上に形成されている金又は金合金からなる第一中間層bと、第一中間層bに積層して形成されている白金又は白金合金からなる第二中間層cと、第二中間層cに積層して形成されている酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化白金又はこれらの任意の組み合わせを含む金属酸化物皮膜層dとを具備する。第一中間層b、第二中間層c及び金属酸化物被膜層dは、基体aの全面を覆うように形成されている。
【0028】
本発明の不溶性電極を構成する基体の材質としては、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金のバルブ金属を好ましく挙げることができる。チタン合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金を好ましく用いることができ、例えばTi−Ta−Nb、Ti−Zrなどの組み合わせからなる通常の電極材料として使用されているチタン合金を挙げることができる。また、タンタル、ニオブなどの耐食性のある導電性金属も基体として好ましく使用することができる。また、基体の形態としては、通液性及び通ガス性を有することが好ましく、板状、棒状、線状、管状、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、斜交網状、格子状、発泡状、焼結シート状など所望の形態を任意に選択できる。
【0029】
本発明の不溶性電極において、第一中間層及び第二中間層の厚みは、0.1μm以上であればよいが、10μm以下であることが好ましい。第一中間層の厚みが0.1μm未満であると基体に十分な耐食性を付与できないおそれがあり、一方、10μmを超えると製造コストが著しく高くなる。第二中間層の厚みが0.1μm未満であると第一中間層に対する被覆が不充分になるおそれがあり、一方、10μmを超えると製造コストが著しく高くなる。また、金属酸化物皮膜層の厚みは0.01μm以上であればよいが、20μm以下であることが好ましい。金属酸化物皮膜層の厚みが0.01μm未満では第二中間層に対する被覆が不充分になるおそれがあり、一方、20μmを超えると製造コストが著しく高くなる。
【0030】
本発明の不溶性電極において、基体と第一中間層との界面には、基体を構成する成分と第一中間層を構成する成分との合金が存在し、第一中間層と第二中間層との界面には、第一中間層を構成する成分と第二中間層を構成する成分との合金が存在することが好ましい。これらの合金は、各層を積層させた後の熱処理によって各層を構成する金属が相互拡散することにより形成される。
【0031】
また、本発明の不溶性電極は、基体と第一中間層の間に、基体の全面又は一部に形成された白金、タンタル又はこれらの任意の合金からなる薄膜層をさらに具備していてもよい。このような薄膜層は、第一中間層の基体への密着性を向上させる。
【0032】
さらに、本発明の不溶性電極は、基体と第一中間層との間、第一中間層と第二中間層との間、第二中間層と金属酸化物被膜層との間に、他の層を具備していてもよい。
本発明の不溶性電極は、電極基体に対して、緻密でフッ素の侵入を防止する第一中間層と、高耐食性の第二中間層と、第二中間層(白金メッキ層)のピンホールを埋めて電解中の酸素過電圧を低減させる耐久性に優れる金属酸化物被膜層とが密着積層形成されているので、フッ化水素酸などの腐食性物質に優れた耐性を示し、特に電気分解反応における電極として適している。
【0033】
本発明の不溶性電極は、チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体を準備する工程と;当該基体上に、金又は金合金からなる第一中間層を積層させる第一積層工程と;当該第一中間層に、白金又は白金合金からなる第二中間層を積層させる第二積層工程と;当該第二中間層にイリジウム、ルテニウム、白金又はこれらの任意の組み合わせを積層させる第三積層工程と;酸素含有雰囲気下で350℃〜650℃の熱処理を行う酸化熱処理工程と;を含み、基体の少なくとも一側面上に第一中間層と第二中間層と金属酸化物皮膜層を積層形成させることによって製造することができる。
【0034】
第一積層工程の前に、基体を清浄化することが好ましい。清浄化は通常公知の方法で行うことができ、たとえば、基体表面を有機溶剤とアルカリで脱脂洗浄し、次いで、陰極電解処理又はブラスト処理を行い、さらに数%濃度のフッ化水素酸を含む混酸で浸漬処理をして基体表面の粗面化と清浄化を行う方法を好ましく用いることができる。基体表面の粗面化と清浄化により、第一中間層を構成する金属の基体に対する付着性を向上させることができる。
【0035】
第一積層工程において、表面清浄化された基体に、金又は金合金をメッキ法又はスパッタ法などの公知の方法により積層させる。
第二積層工程において、第一中間層に対して、白金又は白金合金をメッキ法又はスパッタ法などの公知の方法により積層させる。
【0036】
第三積層工程において、第二中間層に対して、イリジウム、ルテニウム、白金又はこれらの任意の組み合わせを電気メッキ法により積層させるか又はイリジウム、ルテニウム、白金又はこれらの任意の組み合わせを含む化合物を塗布して積層させることが好ましい。
【0037】
次いで、酸化熱処理工程を酸素含有雰囲気下、好ましくは空気中で、350℃〜650℃の温度範囲で行い、イリジウム、ルテニウム及び/又は白金を酸化させ金属酸化物被膜層を形成させる。熱処理温度が350℃未満では酸化反応が十分に進行せず、所望の金属酸化物被膜層が得られないおそれがある。熱処理温度が650℃を超えると、基体を構成する金属の酸化が進行し、また第一中間層を構成する金属が基体及び第二中間層へ過度に拡散することになり、第二中間層の厚みすなわち実効白金メッキ層の厚みが薄くなってしまう。酸化熱処理工程により、基体と第一中間層との間及び各層間の密着性が向上し、第一中間層が緻密化され、基体を構成する金属と第一中間層を構成する金属との相互拡散が進行するので、フッ化水素酸などの腐食性物質に対する優れた耐性を基体(電極)に付与する。
【0038】
また、本発明によれば、上述の不溶性電極を具備する電気化学的液体処理装置が提供される。ここで、不溶性電極は陽極及び/又は複極として機能することが好ましい。また、電気化学的液体処理装置は、陽極と陰極との間に少なくとも1枚のイオン交換膜を設けてなる電気透析装置であることが好ましく、陽極及び/又は陰極とイオン交換膜との間にイオン交換体をさらに設けてなる電気式脱塩装置であることがより好ましい。特に、陽極と、陽極に接するカチオン交換体と、カチオン交換体に接するカチオン交換膜とを具備する陽極室;及び陰極と、陰極に接するアニオン交換体と、アニオン交換体に接するアニオン交換膜とを具備する陰極室を具備する電気式脱塩装置などの電気化学的液体処理装置であることが好ましい。さらに、陽極と陰極との間に複極を設け、陽極側の複極側面にはアニオン交換体とアニオン交換膜とを設け、陰極側の複極側面にはカチオン交換体とカチオン交換膜とを設けてなる電気化学的液体処理装置であってもよい。また、陽極室と陰極室との間に、イオン交換膜で区画される複数の処理室(濃縮室、脱塩室、バッファ室など)を具備する電気化学的液体処理装置であることが好ましい。
【0039】
本発明の電気化学的液体処理装置において用いることができるイオン交換体としては、繊維状材料を基材としてイオン交換官能基を放射線グラフト重合法により導入してなるイオン交換繊維体を好ましく挙げることができる。基材となる繊維状材料としては、高分子繊維基材が好ましく、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、均一な厚みに製造できるので、イオン交換繊維体として好ましい。イオン交換繊維体の形態としては、織布や不織布、斜交網等を好ましく挙げることができる。織布や不織布は、樹脂ビーズと比較してイオン交換基の導入量を大きくすることができる。また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポアまたはマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、すべてのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中のターゲットイオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散して、イオン交換によって吸着される。
【0040】
次に、図面を参照しながら、本発明の電気化学的液体処理装置をさらに具体的に説明する。図2は、本発明の不溶性電極を用いた電気化学的液体処理装置である電気透析槽1の一例を示す模式図である。図2に示すように、電気透析槽1は、陽極2と陰極3との間に、複数のイオン交換膜CM1、CM2、AM1、CM3、AM2によってそれぞれ区画された複数の処理室(陽極側から、陽極室10、バッファ室20、濃縮室30、脱塩室40、濃縮室31、陰極室50)を備えている。各処理室にはイオン交換膜CM、AMの間にイオン交換体CF、CS、AF、ASが配置されている。図中、CMとはカチオン交換膜を表し、AMとはアニオン交換膜を表し、CFとはカチオン交換不織布を表し、CSとはカチオン交換スペーサを表し、AFとはアニオン交換不織布を表し、ASとはアニオン交換スペーサを表す。陽極室10には、本発明の不溶性電極が陽極2として設けられ、陽極2に接してカチオン交換体CF1が設けられ、カチオン交換体CF1に接してカチオン交換膜CM1が設けられている。バッファ室20は、カチオン交換膜CM1とカチオン交換膜CM2とによって区画され、その間に、カチオン交換体CF2、カチオン交換スペーサCS1及びカチオン交換不織布CF3が設けられている。濃縮室30は、カチオン交換膜CM2とアニオン交換膜AM1とによって区画され、その間に、カチオン交換不織布CF4、カチオン交換スペーサCS2、アニオン交換不織布AF1が設けられている。脱塩室40は、アニオン交換膜AM1とカチオン交換膜CM3とによって区画され、その間に、アニオン交換不織布AF2、アニオン交換スペーサAS1、カチオン交換不織布CF5が設けられている。濃縮室31は、カチオン交換膜CM3とアニオン交換膜AM2とによって区画され、その間に、カチオン交換不織布CF6、カチオン交換スペーサCS3、アニオン交換不織布AF3が設けられている。陰極室50には、陰極3と、陰極3に接してアニオン交換不織布AF4が設けられ、アニオン交換不織布AF4に接してアニオン交換膜AM2が設けられている。イオン交換不織布は細くて表面積が大きい繊維で密に構成された不織布状のイオン交換体であるので、イオンの捕捉能力および伝導能力が高いが、電気透析槽に充填した場合に圧損が大きくなるという問題がある。一方、イオン交換スペーサは従来の電気透析槽に通常用いられている網状のスペーサの表面にイオン交換機能を導入したものであり、水の分散性に優れ、圧損が低いがイオンの捕捉能力は低いという問題がある。この例における電気透析槽1では、イオン交換不織布とイオン交換スペーサを組み合わせて充填することで、イオンの捕捉能力と伝導能力を高く維持したまま、圧損を低くすることができる。なお、図2において、イオン交換膜の両側に位置するパッキンの図示は省略してある。
【0041】
陽極室10には陽極液としての純水が供給され、陰極室50には陰極液としての純水が供給される。陽極室10において水の電気分解反応で生成した水素イオン(H)は、カチオン交換体CF1、CM1、CF2、CS1、CF3、CM2、CF4、CS2上をイオン伝導し、バッファ室20を経由して濃縮室30まで到達する。したがって、陽極室10およびバッファ室20にかかる電圧は、陽極液およびバッファ水のイオン濃度に依存せず、低く維持することが可能となる。一方、陰極室50において水の電気分解反応で生成した水酸化イオン(OH)は、アニオン交換体AF4、AF3上をイオン伝導し、濃縮室31に至る。脱塩室40にはフッ素を含有する原水(被処理水)が供給され、脱塩室40にてフッ素イオンが除去(脱塩)された後、フッ素濃度が低減した処理水が流出する。脱塩されたフッ素イオン(F)はアニオン交換体AS1、AF2、AF1上をイオン伝導し、濃縮室30に至る。バッファ室20にはバッファ水が供給され、原水中のフッ素イオン(対象イオン)が濃縮室30から直接陽極室10に流入しないように遮断する。
【0042】
このように陰イオンを含む水を電気透析処理する場合は、原水中の陰イオンが濃縮水中に濃縮される。通常、濃縮された陰イオンが陽極2側のカチオン交換膜CM2、CM1を透過して例えばバッファ室20や陽極室10に漏洩することはほとんどないが、濃縮対象がフッ素イオンである場合は、濃縮水中のフッ素イオンの一部が濃縮室30とバッファ室20を隔てているカチオン交換膜CM2を透過して、濃縮室30よりも陽極2側に位置するバッファ室20ひいては陽極室10に達する現象が起きる場合がある。たとえば、数十mg/Lのフッ素濃度の排水を処理する場合には、電気透析槽1の濃縮室30のフッ素濃度は数百mg/L〜数千mg/Lとなり、陽極室10へのフッ素イオンのリーク量が多くなるので、陽極室10でのフッ素濃度が数mg/L〜数十mg/L程度、多い場合は、数百mg/L程度まで高まる。このような高濃度のフッ素イオンを含む液に接触すると通常の電極では腐食が進行するが、本発明の不溶性電極を陽極2として用いている電気化学的液体処理装置では、電極の腐食が防止され、フッ素濃度が高まった場合においても安定して長期間の継続使用が可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の不溶性電極及び電気化学的液体処理装置によれば、高濃度のフッ素等腐食性成分を含む電極液中でも電極腐食を伴うことなく、長期間安定した運転を行うことができ、フッ素含有排水を長期間安定して処理することが可能となる。
【実施例1】
【0044】
[不溶性電極の作製]
電極の基材としてTiを母材とするエキスパンデットメタル(開口部3×6mm)に、白金をストライクメッキ処理した後、金を0.5μm厚に電気メッキすることにより第一中間層を積層させた。次いで、第一中間層に対して、白金を2μm厚に電気メッキすることにより第二中間層を積層させた。第一中間層及び第二中間層を積層させた基材にイリジウムを1μm厚に電気メッキし、さらに、酸素雰囲気下(大気開放下)450℃で熱処理して、金属酸化物被膜層を形成させ、Ti(基体)/Pt/Au/Pt/IrO不溶性電極を作製した。
[不溶性電極の耐久試験]
作製した不溶性電極を陽極、SUS316で作製したエキスパンデットメタル(開口部3×6mm)を陰極として、陽極側にカチオン交換膜C、陰極側にアニオン交換膜Aを設けて両電極の間にバッファ室を区画し、図3に示す電気透析セルを組み立てた。陽極を含む陽極室には50ppmHF水溶液を通液させ、陰極を含む陰極室及びバッファ室には純水を通液させ、印加電流密度を2A/cmとして、陽極の耐久試験を行った。
【0045】
比較のために、Tiを母材とするエキスパンデットメタル(開口部3×6mm)に白金をストライクメッキ処理した後、金を0.5μm厚にメッキ処理して第一中間層を積層させ、次いで白金を2μm厚及び5μm厚にそれぞれメッキ処理して第二中間層を積層させた2種類の対照電極1及び2(金属酸化物被膜層なし)、Tiを母材とするエキスパンデットメタル(開口部3×6mm)に白金を2μm厚にメッキ処理して、その後イリジウムを1μm厚にメッキ処理し、さらに、酸素雰囲気下(大気開放下)450℃で熱処理して、金属酸化物被膜層を形成させた対照電極3(第一中間層なし)、並びにTiを母材とするエキスパンデットメタル(開口部3×6mm)にイリジウムを1μm厚にメッキ処理し、さらに、酸素雰囲気下(大気開放下)450℃で熱処理して、金属酸化物被膜層を形成させた対照電極4(第一中間層、第二中間層なし)を用いて、同様の耐久試験を行った。
【0046】
耐久試験結果を表1に、耐久試験中の電解電圧の経時変化を図4に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1及び図4から、本発明の不溶性電極は運転初期から5000時間経過後も略一定の電解電圧(約8V)を安定して維持しており、電極基体/金又は金合金からなる第一中間層/白金又は白金合金からなる第二中間層/イリジウムなどの金属酸化物被膜層の構成が非常に優れたフッ素耐性を示すことがわかる。
【実施例2】
【0049】
図5に示す本発明の電気式脱塩装置の陽極及び複極に本発明の不溶性電極を用いて、200〜300ppmのフッ素を含む希薄フッ化水素酸溶液(BHF)を処理した。
図5に示す電気式脱塩装置は、陽極と陰極との間に複数枚のイオン交換体で区画された複数の処理室及び1の複極室を具備する。カチオン交換膜で区画された陽極室には陽極と、陽極に接してカチオン交換体が設けられている。陽極室の隣には、カチオン交換膜で区画されカチオン交換体を充填してなるバッファ室が設けられている。バッファ室の隣には、カチオン交換膜で区画され、カチオン交換体、アニオン交換体、アニオン交換膜がこの順番で配置されてなるHF濃縮室が設けられている。HF濃縮室の隣には、アニオン交換膜で区画され、アニオン交換体、カチオン交換体、カチオン交換膜がこの順番で配置されてなる脱塩室が設けられている。脱塩室の隣には、カチオン交換膜で区画され、カチオン交換体、アニオン交換体、アニオン交換膜がこの順番で配置されてなるアルカリ塩濃縮室が設けられている。アルカリ塩濃縮室の隣には、アニオン交換膜で区画され、アニオン交換体、複極、カチオン交換体、カチオン交換膜がこの順番で配置されてなる複極室が設けられている。複極室と陰極室との間には、同様にバッファ室、HF濃縮室、脱塩室、アルカリ塩濃縮室が設けられている。
【0050】
図5に示す電気式脱塩装置の陽極室、複極室及び陰極室に純水を通液させ、脱塩室に200〜300ppm−Fの希薄フッ化水素酸溶液(BHF)を通液させ、バッファ室にバッファ液を通液させて、約4000時間(一時的な停止時間を含む)運転させ、10000ppm−HF濃縮水及び1ppm−HF処理水を得た。
【0051】
複極室のフッ素濃度は最大で50ppmに達する場合があったが、運転後の開放点検では複極の腐食は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の不溶性電極の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の不溶性電極を陽極として用いた電気化学的液体処理装置の一実施形態を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の不溶性電極の耐久性試験に用いた試験装置の概略を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の不溶性電極の耐久性試験における電圧の経時変化を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の不溶性電極を陽極及び複極として用いた電気化学的液体処理装置(電気式脱塩装置)の一実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
a:基体
b:第一中間層
c:第二中間層
d:金属酸化物被膜層
1:電気化学的液体処理装置
2:陽極(不溶性電極)
3:陰極
10:陽極室
20:バッファ室
30、31:濃縮室
40:脱塩室
50:陰極室
AM:アニオン交換膜
CM:カチオン交換膜
AF:アニオン交換不織布
CF:カチオン交換不織布
AS:アニオン交換スペーサ
CS:カチオン交換スペーサ
A:アニオン交換膜
C:カチオン交換膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体と、
当該基体上に形成されている、金又は金合金からなる第一中間層と、
当該第一中間層に積層して形成されている、白金又は白金合金からなる第二中間層と、
当該第二中間層に積層して形成されている、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化白金又はこれらの任意の組み合わせを含む金属酸化物皮膜層と、
を具備する不溶性電極。
【請求項2】
前記第一中間層及び前記第二中間層の厚みは0.1μm以上10μm以下であり、前記金属酸化物皮膜層の厚みは0.01μm以上20μm以下である、請求項1に記載の不溶性電極。
【請求項3】
前記基体と前記第一中間層との界面には、基体を構成する成分と第一中間層を構成する成分との合金が存在し、
前記第一中間層と前記第二中間層との界面には、第一中間層を構成する成分と第二中間層を構成する成分との合金が存在する、請求項1又は2に記載の不溶性電極。
【請求項4】
チタン、ニオブ、タンタル又はこれらの任意の合金を含む基体を準備する工程と、
当該基体上に、金又は金合金からなる第一中間層を積層させる第一積層工程と、
当該第一中間層に、白金又は白金合金からなる第二中間層を積層させる第二積層工程と、
当該第二中間層に、イリジウム、ルテニウム、白金又はこれらの任意の組み合わせを積層させる第三積層工程と、
酸素含有雰囲気下で350℃〜650℃の熱処理を行う酸化熱処理工程と、
を含み、基体上に第一中間層と第二中間層と金属酸化物皮膜層を積層形成させる、請求項1〜3のいずれかに記載の不溶性電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の不溶性電極を具備する、電気化学的液体処理装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の不溶性電極を陽極及び/又は複極として具備する、請求項8に記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項7】
陽極と陰極との間に少なくとも1枚のイオン交換膜を設けてなる、請求項5又は6に記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項8】
陽極及び/又は陰極とイオン交換膜との間にイオン交換体をさらに設けてなる、請求項7に記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項9】
陽極と、陽極に接するカチオン交換体と、カチオン交換体に接するカチオン交換膜とを具備する陽極室;及び
陰極と、陰極に接するアニオン交換体と、アニオン交換体に接するアニオン交換膜とを具備する陰極室
を具備する、請求項5〜8のいずれかに記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項10】
陽極と陰極との間に複極を設け、陽極側の複極側面にはアニオン交換体とアニオン交換膜とを設け、陰極側の複極側面にはカチオン交換体とカチオン交換膜とを設けてなる、請求項5〜9のいずれかに記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項11】
前記陽極室と前記陰極室との間に、イオン交換膜で区画される複数の処理室を具備する、請求項5〜10のいずれかに記載の電気化学的液体処理装置。
【請求項12】
前記イオン交換体は、繊維状材料を基材としてイオン交換官能基を放射線グラフト重合法により導入してなるイオン交換繊維体である、請求項5〜11のいずれかに記載の電気化学的液体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−142733(P2009−142733A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321570(P2007−321570)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)
【Fターム(参考)】