説明

両面テープ・ディスペンサ

【課題】簡単な構造で、被貼付面に対して両面粘着剤層をスポット状あるいはライン状のいずれにも選択して貼付できるようにすること。
【解決手段】ケース20に摺動可能に嵌装されるディスペンサ本体10をばね部材30の弾性力に抗してケース内に押し付けて支持部材14が両面テープ1の両面粘着剤層を被貼付面7に押圧した後、ディスペンサ本体の押し付けを解除することにより、支持部材によって被貼付面に押圧された両面粘着剤層を剥離紙2から剥離して被貼付面にスポット状に貼付する。また、両面粘着剤層を被貼付面に押圧した状態でディスペンサ本体及びケースを被貼付面上に沿って移動することにより、両面粘着剤層を被貼付面上にライン状に押圧し、その後、ディスペンサ本体の押し付けを解除することにより、支持部材によって被貼付面に押圧された両面粘着剤層を剥離紙から剥離して被貼付面上に所定の長さのライン状に貼付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は両面テープ・ディスペンサに関するもので、更に詳細には、被貼付面に両面粘着剤層をスポット状あるいは所定の長さのライン状に貼付可能にした両面テープ・ディスペンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばポスターや写真等の貼付や封筒の糊付け等に両面テープが使用されている。この両面テープには、心材の両面に粘着剤層を形成した両面粘着剤層と剥離紙を積層したロール状のものが使用されている。
【0003】
上記両面テープを貼付するディスペンサとして、両面テープを支持するテープ保持体と、剥離紙を支持する剥離紙保持体と、テープ保持体及び剥離紙保持体にそれぞれ設けられて互いに噛合するギアと、テープ保持体から引き出された両面テープから分離された両面粘着剤層を切断する切断刃ホルダと、を具備するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別のディスペンサとして、ケース内に内蔵されている両面テープと、両面テープが巻き掛けられており、両面テープ本体を被貼付面に貼付するとき当該部分で両面テープ本体と剥離テープとが分離される転移部と、転移部で分離された剥離紙をケース外に排出する剥離紙排出部と、ケース外に排出された剥離紙を切断する切断手段と、を具備するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−252010号公報(段落番号0016〜0020、図4,図5)
【特許文献2】特開2000−302316号公報(特許請求の範囲、図1,図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者すなわち特開平7−252010号公報に記載のものは、テープ保持体から引き出された両面テープの両面粘着剤層を剥離紙から分離して被貼付面に貼付した後、切断刃ホルダの切断刃で切断する構造であるため、構造が複雑な上、貼付作業が面倒であった。特に、両面粘着剤層をスポット状に貼付する場合において長さのコントロールが難しいという問題があった。
【0006】
また、後者すなわち特開2000−302316号公報に記載のものは両面テープを支持する保持体を具備し、両面テープから分離された剥離紙を外部に排出する構造であるため、前者に比べて構造を簡単にすることができる。しかし、特開2000−302316号公報に記載のものにおいても、両面粘着剤層を必要な長さまで貼付した後、指でケースの両側面のほぼ中央を押圧してテープロール体の回転を停止させた状態で、排出口から排出された剥離紙を切断刃によって切断するため、貼付作業が面倒であった。また、特に、両面粘着剤層をスポット状に貼付する場合において長さのコントロールが難しいという問題があった。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、被貼付面に対して両面粘着剤層をスポット状あるいはライン状のいずれにも選択して貼付できるようにした両面テープ・ディスペンサを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、剥離紙に両面粘着剤層が積層されたロール状の両面テープを保持する回転可能な両面テープ保持体と、上記両面テープから剥離される剥離紙を巻き取る回転可能な剥離紙保持体と、上記両保持体にそれぞれ設けられ互いに噛合するギアと、上記両面テープ保持体から引き出された両面テープを被貼付面に押圧する支持部材と、を具備するディスペンサ本体と、 上記ディスペンサ本体を摺動自在に嵌装する筒状のケースと、 上記ディスペンサ本体とケースとの間に介在され、上記ディスペンサ本体を常時ケースから離反する方向へ弾性力を付勢するばね部材と、 上記ばね部材の弾性力に抗して上記ディスペンサ本体を上記ケース内に押し付けた際に、ケースに取り付けられたラックに噛合すると共に、上記剥離紙保持体に設けられたギアに噛合し、上記支持部材により両面テープの両面粘着剤層が被貼付面に押圧された状態で噛合が解かれるピニオンと、を具備する、ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、剥離紙に両面粘着剤層が積層されたロール状の両面テープを保持する回転可能な両面テープ保持体と、上記両面テープから剥離される剥離紙を巻き取る回転可能な剥離紙保持体と、上記両保持体にそれぞれ設けられ互いに噛合するギアと、上記両面テープ保持体から引き出された両面テープを被貼付面に押圧する支持部材と、を具備するディスペンサ本体と、 上記ディスペンサ本体を摺動自在に嵌装する筒状のケースと、 上記ディスペンサ本体とケースとの間に介在され、上記ディスペンサ本体を常時ケースから離反する方向へ弾性力を付勢するばね部材と、 上記ばね部材の弾性力により上記ディスペンサ本体が上記ケースから離反する際に、ケースに取り付けられたラックに噛合すると共に、上記剥離紙保持体に設けられたギアに噛合し、かつ、上記ばね部材の弾性力に抗してディスペンサ本体をケース内に押し付けた際に、上記支持部材により両面テープの両面粘着剤層が被貼付面に押圧された状態で噛合が解かれるピニオンと、を具備する、ことを特徴とする。
【0010】
この発明において、上記両面テープにおける両面粘着剤層に、両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて切り込みを形成しておく方が好ましい(請求項3)。また、上記両面テープにおける両面粘着剤層を、剥離紙の全面に均一なドット状に積層してもよく(請求項4)、あるいは、上記両面テープにおける両面粘着剤層を、円形,四角形,三角形又はハート形等のパターン形状に形成すると共に、各パターン形状を両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて剥離紙に積層してもよい(請求項5)。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項1,3,4又は5に記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記ピニオンは、ディスペンサ本体に対して該ディスペンサ本体の摺動方向に移動可能な軸に装着されると共に、ディスペンサ本体がケースから離反した状態において剥離紙保持体に設けられたギアと接触すべく補助ばね部材の弾性力が付勢されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、請求項2,3,4又は5に記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記ピニオンは、ディスペンサ本体に対して該ディスペンサ本体の摺動方向に移動可能な軸に装着されると共に、ディスペンサ本体がケース内に押し付けられた状態において剥離紙保持体に設けられたギアと接触すべく補助ばね部材の弾性力が付勢されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記発明において、上記ケースの先端側端部の左右両側に、被貼付面上を走行可能なガイド車輪を更に具備する方が好ましい(請求項8)。
【0014】
また、上記両面テープに、外側に両面粘着剤層を有するロール状を用いることができ、この場合は、両面テープ保持体から引き出される両面テープが支持部材を介して剥離紙保持体に案内されている方がよい(請求項9)。また、上記両面テープに、内側に両面粘着剤層を有するロール状を用いた場合は、両面テープ保持体から引き出される両面テープがガイドによって表裏反転された後、支持部材を介して剥離紙保持体に案内されている方がよい(請求項10)。
【0015】
また、上記剥離紙保持体に設けられるギアは、両面テープ保持体に設けられるギアと噛合するギアと、ピニオンと噛合するギアの二つであっても差し支えなく、両面テープ保持体に設けられるギアとピニオンと共に噛合する一つのギアで兼用してもよい(請求項11)。
【0016】
また、請求項12記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記両面テープ保持体又は剥離紙保持体のいずれか一方に、逆転防止機構を具備すると共に、上記両面テープ保持体は、両面テープの引き出し方向に過剰な力が加わった際に回転が可能に形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項13記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記両面テープ保持体及び剥離紙保持体は、両面テープの引き出し方向及び剥離紙の巻き取り方向に過剰な力が加わった際に各保持体に設けたギアに対して回転が可能に形成され、かつ、両面テープ保持体の回転摩擦力に対して剥離紙保持体の回転摩擦力を大きくなるように形成してなる、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項14記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なテープ移動量調整用のローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢される回転停止用の係止爪を装着し、上記係止爪を上記剥離紙保持体に設けられたギアに係合可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項15記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢され、かつ、該ローラの回転によりピニオンに係合して該ピニオンをラックとの噛合を解除する方向に移動するカムを装着してなる、ことを特徴とする。
【0020】
加えて、請求項16記載の発明は、請求項1ないし15のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、上記ディスペンサ本体は、両面テープ保持体に予め両面テープを保持すると共に、両面テープの引き出し側端部を巻き取る剥離紙保持体を内蔵しており、上記ディスペンサ本体をケースに着脱可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明の両面テープ・ディスペンサによれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0022】
(1)請求項1,2,9,10記載の発明によれば、ケースに摺動可能に嵌装されるディスペンサ本体をケース内に押し付けて支持部材が両面テープの両面粘着剤層を被貼付面に押圧した後、ディスペンサ本体の押し付けを解除することにより、支持部材によって被貼付面に押圧された両面粘着剤層が被貼付面にスポット状に残る。また、両面粘着剤層を被貼付面に押圧した状態でディスペンサ本体及びケースを被貼付面上に沿って移動することにより、両面粘着剤層を被貼付面上にライン状に押圧することができ、その後、ディスペンサ本体の押し付けを解除することで、被貼付面上に両面粘着剤層を所定の長さのライン状に貼付することができる。したがって、切断手段を必要とすることなく、ディスペンサ本体の押し付けと押しつけの解除の簡単な操作のみによって、被貼付面上に両面粘着剤層をスポット状あるいは所定の長さのライン状に貼付することができる。
【0023】
(2)請求項3〜5記の載発明によれば、両面テープにおける両面粘着剤層に、両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて切り込みを形成するか、両面粘着剤層を、剥離紙の全面に均一なドット状に積層、あるいは、円形,四角形,三角形又はハート形等のパターン形状に形成された両面粘着剤層を、両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて剥離紙に積層するので、剥離紙と被貼付面に押圧された両面粘着剤層との分離を容易にすることができ、上記(1)に加えて、更に両面粘着剤層の貼付を容易かつ正確にすることができる。
【0024】
(3)請求項6,7記載の発明によれば、ピニオンは、ディスペンサ本体に対して該ディスペンサ本体の摺動方向に移動可能な軸に装着されると共に、ディスペンサ本体がケースから離反した状態、又は、ディスペンサ本体をケース内に押し付けた状態において剥離紙保持体に設けられたギアと接触すべく補助ばね部材の弾性力が付勢されているので、上記(1),(2)に加えて、更にディスペンサ本体の押し付け操作時又は離反時に、剥離紙保持体に設けられたギアとピニオンとの衝撃を緩和することができ、また、ピニオンとギアとの噛合を円滑にして両面テープの引き出しを確実にすることができる。また、支持部材を横方向や上方向に向けて操作する際、外れたピニオンが不用意に移動してラックに噛み合わなくなるトラブルを回避することができる。
【0025】
(4)請求項8記載の発明によれば、ケースの先端側端部の左右両側に、被貼付面上を走行可能なガイド車輪を具備するので、ケースの移動をスムースにすることができると共に、方向性をもたせることができる。したがって、上記(1)〜(3)に加えて、更にライン状の貼付を容易かつ正確に行うことができる。
【0026】
(5)請求項11記載の発明によれば、剥離紙保持体に設けられるギアを、両面テープ保持体に設けられるギアとピニオンと共に噛合する一つのギアで兼用することにより、上記(1)〜(4)に加えて、更に構成部材の削減が図れる。
【0027】
(6)請求項12記載の発明によれば、両面テープ保持体又は剥離紙保持体のいずれか一方に、逆転防止機構を具備することにより、両面テープ保持体から引き出される両面テープの弛みを防止することができる。また、両面テープ保持体は、両面テープの引き出し方向に過剰な力が加わった際に回転が可能に形成されることにより、両面テープ保持体と剥離紙保持体との間に緊張状態にある両面テープに、該両面テープの引き出し方向に過剰な力が加わったとしても両面テープ保持体が回転するので、両面テープが切断する虞がなく、貼付作業に支障をきたすことがない。
【0028】
(7)請求項13記載の発明によれば、両面テープ保持体及び剥離紙保持体は、両面テープの引き出し方向及び剥離紙の巻き取り方向に過剰な力が加わった際に各保持体に設けたギアに対して回転が可能に形成され、かつ、両面テープ保持体の回転摩擦力に対して剥離紙保持体の回転摩擦力を大きくなるように形成することにより、両面テープ保持体と剥離紙保持体との間に緊張状態にある両面テープに、該両面テープの引き出し方向及び剥離紙保持体の巻き取り方向に過剰な力が加わったとしても、剥離紙保持体より先に両面テープ保持体が回転するので、両面テープが切断する虞がなく、貼付作業に支障をきたすことがない。
【0029】
また、両面テープ保持体のギアと剥離紙保持体のギアが噛合して、剥離紙を巻き取り、両面テープが引き出される際に、両面テープの引き出し量(送り量)が剥離紙の巻き取り量より少なくなるように、この送り量のギャップを両面テープ保持体と該保持体のギアをスリップ構造とすることによって調整するので、両面テープの弛みを防止することができる。
【0030】
また、剥離紙保持体をスリップ構造とすると共に、両面テープの引き出し量(送り量)のギャップを両面テープ保持体のスリップにより調整することができるので、両面テープ・ディスペンサの使い始めと使い終わりでの両面テープの引き出し量(送り量)を一定にすることができる。
【0031】
(8)請求項14記載の発明によれば、支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なテープ移動量調整用のローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢される回転停止用の係止爪を装着し、係止爪を剥離紙保持体に設けられたギアに係合可能に形成することにより、上記(1)〜(7)に加えて、更に剥離紙保持体が巻き取る剥離紙の量によって径が変化した場合でも両面テープを一定量引き出すことができ、所定の長さの両面粘着剤層を貼付することができる。
【0032】
(9)請求項15記載の発明によれば、支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢され、かつ、該ローラの回転によりピニオンに係合して該ピニオンをラックとの噛合を解除する方向に移動するカムを装着することにより、上記(1)〜(7)に加えて、更に両面テープの引き出し長さを任意の長さにして、両面粘着剤層を貼付することができる。
【0033】
(10)請求項16記載の発明によれば、ディスペンサ本体は、両面テープ保持体に予め両面テープを保持すると共に、両面テープの引き出し側端部を巻き取る剥離紙保持体を内蔵しており、ディスペンサ本体をケースに着脱可能に形成することにより、上記(1)〜(9)に加えて、更にディスペンサ本体をカートリッジ式にすることができるので、両面テープの交換を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
◎第1実施形態
図1は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第1実施形態の全体を示す概略断面図である。
【0036】
上記両面テープ・ディスペンサは、剥離紙2に両面粘着剤層3が積層されたロール状の両面テープ1を収容する一端(図面では下端)が開口する略矩形箱状のディスペンサ本体10と、このディスペンサ本体10を摺動可能に嵌装する両端(図面では上下端)が開口する矩形筒状のケース20と、ディスペンサ本体10とケース20との間に介在され、ディスペンサ本体10を常時ケースから離反する方向へ弾性力を付勢するばね部材30とを具備している。
【0037】
この場合、両面テープ1は、図2に示すように、内側に両面粘着剤層3を有するロール状に形成されている。ここで、両面粘着剤層3は、例えば不織布,和紙あるいはフィルム等からなる心材4の両面に粘着剤5を積層したサンドイッチ構造に形成されており、一方の粘着剤5に剥離紙2が積層されている。なお、この場合、両面粘着剤層3の厚さは心材4の厚さ5〜50μmを含めて約20〜200μmであり、剥離紙2の厚さは40〜200μmである。また、両面テープ1における両面粘着剤層3は、両面テープ1の長さ方向に沿って適宜間隔例えば2mm間隔に切り込み6が形成されている。
【0038】
上記ディスペンサ本体10には、両面テープ1を保持する回転可能な両面テープ保持体11と、両面テープ1から剥離される剥離紙2を巻回する回転可能な剥離紙保持体12と、両面テープ保持体11の回転軸部11aと剥離紙保持体12の回転軸部12aにそれぞれ設けられ互いに噛合する第1及び第2のギア13a,13bと、両面テープ保持体11から引き出された両面テープ1を被貼付面7に押圧する略矩形板状の支持部材14と、両面テープ保持体11から引き出される両面テープ1の剥離紙側に係合して両面テープ1の表裏を反転して支持部材14側に案内するガイド15が設けられている。
【0039】
また、両面テープ保持体11には、両面テープ1の引き出し側の弛み防止するために逆転防止機構例えばラチェット機構16が設けられている。この場合、ラチェット機構16は、ディスペンサ本体10に固定される面方向に歯部を有するラチェットホィール16aと、両面テープ保持体11に突設される弾性変形可能なアーム16bの先端部に設けられてラチェットホィール16aに一方向(両面テープ保持体11の逆転方向)に係合する爪部16cとで構成されている。なお、このラチェット機構16を両面テープ保持体11に設ける代わりに剥離紙保持体12に設けてもよい。また、両面テープ保持体11は回転軸部11aに適度な摩擦で嵌合されており、両面テープ1の引き出し方向に過剰な力が加わるとスリップするようになっている。このように構成することにより、両面テープ保持体11と剥離紙保持体12との間に緊張状態にある両面テープ1に、該両面テープ1の引き出し方向に過剰な力が加わったとしても両面テープ保持体11が回転することで、両面テープ1の切断を防止することができ、貼付作業に支障をきたすことがない。
【0040】
また、ディスペンサ本体10の先端の開口部側には、ディスペンサ本体10のケース20に対する移動方向に沿うガイド溝17aが設けられており、このガイド溝17a内に摺動可能に嵌挿される可動部材17bに突設される軸17cにピニオン18が装着されている。このピニオン18を支持する可動部材17bと、上記支持部材14を取り付けるために、ディスペンサ本体10の開口部に架設された取付部材14aとの間には、補助ばね部材19が縮設されている。これにより、補助ばね部材19の弾性力の付勢によって、ピニオン18は常時ディスペンサ本体10の基端側(図面では上方側)に移動されて、ディスペンサ本体10がケース20から離反した状態においても上記剥離紙保持体12に設けられた第2のギア13bに接触している。
【0041】
また、上記ケース20には、上記ディスペンサ本体10がケース20内に押し付けられる過程において、上記ピニオン18が噛合するラック21が取り付けられている。この場合、ラック21は、上記ばね部材30の弾性力に抗してディスペンサ本体10をケース20内に押し付けた際に、ピニオン18と噛合し、支持部材14により両面テープ1の両面粘着剤層3が被貼付面7に押圧された状態で噛合が解かれるようになっている。
【0042】
また、ケース20の先端側端部(図面では下端側端部)の左右両側の4箇所には、被貼付面7上を走行可能なガイド車輪22が取り付けられている。このように、ケース20の左右両側の4箇所にガイド車輪22を設けることにより、ケース20の移動をスムースにすることができると共に、方向性をもたせることができるので、ライン状の貼付作業を簡単かつ正確に行うことができる。
【0043】
なお、ケース20の対向する側壁20aには、それぞれディスペンサ本体10の押し付け方向に沿うガイド孔23が設けられており、ガイド孔23よりディスペンサ本体10側の側壁10aの外面に突設される上部支持ピン24と、ディスペンサ本体10の対向する側壁10aから突出してガイド孔23内を移動自在に貫通する下部支持ピン25との間に、上記ばね部材30が張設されている。したがって、ばね部材30の引っ張りによる弾性力が付勢してディスペンサ本体10が常時ケース20から離反した状態となっている。
【0044】
なお、ディスペンサ本体10の基端部(図面では上端部)の表面に、両面粘着剤層3をライン状に貼付する場合の両面テープ・ディスペンサの移動を示唆する矢印(図示せず)を施しておく方が望ましい。
【0045】
次に、第1実施形態の両面テープ・ディスペンサの動作態様について、図3ないし図6を参照して説明する。
【0046】
<スポット貼付>
被貼付面7に両面粘着剤層3をスポット状に貼付するには、まず、両面テープ・ディスペンサを被貼付面7の貼付する位置にセットする(図3(a)参照)。この状態で、ディスペンサ本体10をばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込む。すると、ピニオン18がラック21に噛合して時計方向に回転すると共に、第2のギア13bが反時計方向に回転し、かつ、第2のギア13bと噛合する第1のギア13aが時計方向に回転する(図3(b),(c)参照)。これにより、両面テープ保持体11から両面テープ1が引き出され、剥離紙保持体12側に巻き取られる。更に、ディスペンサ本体10を押し下げると、ピニオン18とラック21の噛合が解かれて剥離紙保持体12の巻き取りが停止し、支持部材14によって両面テープ1の両面粘着剤層3が被貼付面7に押圧される(図3(d),図5参照)。この状態でディスペンサ本体10の押し込みを解除すると、ばね部材30の弾性力の付勢によってディスペンサ本体10はケース20から離反する一方、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3は支持部材14の端部近傍に位置する切り込み6を境にして被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10と共に被貼付面7から離れる(図3(e),図6参照)。このディスペンサ本体10がケース20から離反する過程において、ピニオン18が再びラック21と噛合するが、この際に生じる抵抗力で第2のギア13bから離反する方向に移動し、第2のギア13bとの噛合が解かれる。その後、ディスペンサ本体10は、ばね部材30の弾性力(弾発力)によってケース20から離反して使用初期の状態に戻り、次の貼付に備える(図3(f)参照)。
【0047】
<ライン貼付>
被貼付面7に両面粘着剤層3をライン状に貼付するには、スポット状に貼付する場合と同様に、両面テープ・ディスペンサを被貼付面7の貼付する位置にセットした状態で、ディスペンサ本体10をばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込んで、支持部材14により両面テープ1の両面粘着剤層3を被貼付面7に押圧する(図4(a)参照)。この状態のままディスペンサ本体10及びケース20をディスペンサ本体10に施された矢印(図示せず)に従って移動して、両面粘着剤層3をライン状に被貼付面7に貼付する(図4(b)参照)。両面粘着剤層3を所定の長さ貼付した後、ディスペンサ本体10の押し込みを解除すると、ばね部材30の弾性力の付勢によってディスペンサ本体10はケース20から離反する一方、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3は支持部材14の端部近傍に位置する切り込み6を境にして被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10と共に被貼付面7から離れる(図4(c),図6参照)。このディスペンサ本体10がケース20から離反する過程において、ピニオン18が再びラック21と噛合するが、この際に生じる抵抗力で第2のギア13bから離反する方向に移動し、第2のギア13bとの噛合が解かれる。その後、ディスペンサ本体10は、ばね部材30の弾性力(弾発力)によってケース20から離反して使用初期の状態に戻り、次の貼付に備える(図4(d)参照)。
【0048】
◎第2実施形態
図7は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第2実施形態の全体を示す概略断面図、図8は、第2実施形態に使用される両面テープの要部拡大断面図である。
【0049】
第2実施形態は、基本構成は第1実施形態と同じであり、以下の点で第1実施形態と相違している。すなわち、図8に示すように、剥離紙2の外側に両面粘着剤層3を積層した両面テープ1Aを使用する点で第1実施形態と相違している。この場合、両面テープ1Aは、図8に示すように、外側に両面粘着剤層3を有するロール状に形成されており、第1実施形態の両面テープ1と同様に、両面粘着剤層3は、例えば不織布,和紙あるいはフィルム等からなる心材4の両面に粘着剤5を積層したサンドイッチ構造に形成され、一方の粘着剤5に剥離紙2が積層されている。また、両面テープ1における両面粘着剤層3は、両面テープ1の長さ方向に沿って適宜間隔例えば2mm間隔に切り込み6が形成されている。
【0050】
また、第2実施形態では、ディスペンサ本体10Aの基端部(図面では上端部)がロール状の両面テープ1Aに沿う円弧状に形成される点、両面テープ保持体11から引き出される両面テープ1が支持部材14を介して剥離紙保持体12に巻き取られるようにした点、ディスペンサ本体10Aとケース20との間に介在される圧縮ばね部材30Aの弾性力(弾発力)によって常時ディスペンサ本体10Aとケース20との間をケース20から離反させるようにした点、及び剥離紙保持体12の回転軸部12aに装着される第3のギア13cをピニオン18に噛合させる点で第1実施形態と相違している。
【0051】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に逆転防止機構(図示せず)が具備されている。また、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0052】
次に、第2実施形態の両面テープ・ディスペンサの動作態様について、図9及び図10を参照して説明する。
【0053】
<スポット貼付>
被貼付面7に両面粘着剤層3をスポット状に貼付するには、第1実施形態と同様に、まず、両面テープ・ディスペンサを被貼付面7の貼付する位置にセットする(図9(a)参照)。この状態で、ディスペンサ本体10Aをばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込む。すると、ピニオン18がラック21に噛合して時計方向に回転すると共に、第3のギア13cが反時計方向に回転し、かつ、第2のギア13bと噛合する第1のギア13aが時計方向に回転する(図9(b),(c)参照)。これにより、両面テープ保持体11から両面テープ1Aが引き出され、剥離紙保持体12側に巻き取られる。更に、ディスペンサ本体10Aを押し下げると、ピニオン18とラック21の噛合が解かれて剥離紙保持体12の巻き取りが停止し、支持部材14によって両面テープ1Aの両面粘着剤層3が被貼付面7に押圧される(図9(d)参照)。この状態でディスペンサ本体10Aの押し込みを解除すると、ばね部材30の弾性力の付勢によってディスペンサ本体10Aはケース20から離反する一方、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3は支持部材14の端部近傍に位置する切り込み6を境にして被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10Aと共に被貼付面7から離れる(図9(e)参照)。このディスペンサ本体10Aがケース20から離反する過程において、ピニオン18が再びラック21と噛合するが、この際に生じる抵抗力で第2のギア13bから離反する方向に移動し、第3のギア13cとの噛合が解かれる。その後、ディスペンサ本体10Aは、ばね部材30Aの弾性力(弾発力)によってケース20から離反して使用初期の状態に戻り、次の貼付に備える(図9(f)参照)。
【0054】
<ライン貼付>
被貼付面7に両面粘着剤層3をライン状に貼付するには、スポット状に貼付する場合と同様に、両面テープ・ディスペンサを被貼付面7の貼付する位置にセットした状態で、ディスペンサ本体10Aをばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込んで、支持部材14により両面テープ1の両面粘着剤層3を被貼付面7に押圧する(図10(a)参照)。この状態のままディスペンサ本体10A及びケース20をディスペンサ本体10Aに施された矢印(図示せず)に従って移動して、両面粘着剤層3をライン状に被貼付面7に貼付する(図10(b)参照)。両面粘着剤層3を所定の長さ貼付した後、ディスペンサ本体10Aの押し込みを解除すると、ばね部材30の弾性力の付勢によってディスペンサ本体10Aはケース20から離反する一方、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3は支持部材14の端部近傍に位置する切り込み6を境にして被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10Aと共に被貼付面7から離れる(図10(c)参照)。このディスペンサ本体10Aがケース20から離反する過程において、ピニオン18が再びラック21と噛合するが、この際に生じる抵抗力で第3のギア13cから離反する方向に移動し、第3のギア13cとの噛合が解かれる。その後、ディスペンサ本体10Aは、ばね部材30Aの弾性力(弾発力)によってケース20から離反して使用初期の状態に戻り、次の貼付に備える(図10(d)参照)。
【0055】
◎第3実施形態
図11は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第3実施形態の全体を示す概略断面図である。
【0056】
第3実施形態は、剥離紙保持体12が巻き取る剥離紙2の量によって径が変化した場合でも両面テープ1Aを一定量引き出し、被貼付面7に所定の長さの両面粘着剤層3を貼付可能にした場合である。
【0057】
すなわち、第3実施形態の両面テープ・ディスペンサは、図11に示すように、第2実施形態における両面テープ・ディスペンサにおける支持部材14と剥離紙保持体12との間に、剥離紙2に接触して回転可能なテープ移動量調整用のローラ40を配設し、このローラ40の回転軸40aに、図示しないばね部材によってローラ40の回転方向と反対方向に弾性力が付勢される回転停止用の係止爪41を装着し、係止爪41を剥離紙保持体12に設けられた第4のギア13dに係合可能に形成されている。このように構成することより、剥離紙保持体12が巻き取る剥離紙2の量によって径が変化した場合でも両面テープ1Aを一定量引き出すことができ、所定の長さの両面粘着剤層3を被貼付面7に貼付することができる。
【0058】
また、第3実施形態の両面テープ・ディスペンサは、両面テープ保持体11は回転軸部11aに適度な摩擦で嵌合されると共に、剥離紙保持体12は回転軸部12aに適度な摩擦で嵌合されており、両面テープ1の引き出し方向及び剥離紙2の巻き取り方向に過剰な力が加わるとスリップするようになっている。この場合、図11に示すように、両面テープ保持体11の回転軸部11aの径に対して剥離紙保持体12の回転軸部12aを大きくすることにより、両面テープ保持体11の回転摩擦力に対して剥離紙保持体12の回転摩擦力を大きくなるように形成されている。これにより、両面テープ保持体11と剥離紙保持体12との間に緊張状態にある両面テープ1Aに、該両面テープ1Aの引き出し方向及び剥離紙保持体12の巻き取り方向に過剰な力が加わったとしても、剥離紙保持体12より先に両面テープ保持体11が回転するので、両面テープ1Aが切断する虞がない。
【0059】
また、両面テープ保持体11の第1のギア13aと剥離紙保持体12の第2のギア13bが噛合して、剥離紙2を巻き取り、両面テープ1が引き出される際に、両面テープ1の引き出し量(送り量)が剥離紙2の巻き取り量より少なくなるように、この送り量のギャップを両面テープ保持体11と該保持体11の第1のギア13aをスリップ構造とすることによって調整するので、両面テープ1の弛みを防止することができる。
【0060】
また、剥離紙保持体12をスリップ構造とすると共に、両面テープ1の引き出し量(送り量)のギャップを両面テープ保持体11のスリップにより調整することができるので、両面テープ・ディスペンサの使い始めと使い終わりでの両面テープ1の引き出し量(送り量)を一定にすることができる。
【0061】
なお、第3実施形態において、その他の部分は上記第2実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0062】
次に、第3実施形態の両面テープ・ディスペンサの動作態様について、図11及び図12を参照して説明する。
【0063】
被貼付面7に両面粘着剤層3を貼付するには、まず、両面テープ・ディスペンサを被貼付面7の貼付する位置にセットする(図11参照)。この状態で、ディスペンサ本体10Aをばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込む。すると、ピニオン18がラック21に噛合して時計方向に回転すると共に、第3のギア13cが反時計方向に回転し、かつ、第2のギア13bと噛合する第1のギア13aが時計方向に回転する(図12(a)参照)。これにより、両面テープ保持体11から両面テープ1Aが引き出され、剥離紙保持体12側に巻き取られると共に、ローラ40がばね部材(図示せず)の弾性力に抗して時計方向に回転する。更に、ディスペンサ本体10Aを押し下げると、ピニオン18とラック21の噛合が解かれると共に、係止爪41が第4のギア13dに係合して剥離紙保持体12の巻き取りが停止する(図12(b)参照)。すると、剥離紙保持体12は剥離紙2を巻き取る力がなくなることで、剥離紙2に係る張力が緩まるので、ローラ40及び係止爪41はばね部材の弾性力で元の位置に復帰する(図12(c)参照)。更に、ディスペンサ本体10Aを押し下げると、支持部材14によって両面テープ1Aの両面粘着剤層3が被貼付面7に押圧される(図12(d)参照)。この状態でディスペンサ本体10Aの押し込みを解除すると、ばね部材30の弾性力の付勢によってディスペンサ本体10Aはケース20から離反する一方、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3は支持部材14の端部近傍に位置する切り込み6を境にして被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10Aと共に被貼付面7から離れる(図12(e)参照)。このディスペンサ本体10Aがケース20から離反する過程において、ピニオン18が再びラック21と噛合するが、この際に生じる抵抗力で第2のギア13bから離反する方向に移動し、第3のギア13cとの噛合が解かれる。その後、ディスペンサ本体10Aは、ばね部材30Aの弾性力(弾発力)によってケース20から離反して使用初期の状態に戻り、次の貼付に備える(図12(f)参照)。
【0064】
◎第4実施形態
図13は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第4実施形態の要部を示す概略斜視図である。
【0065】
第4実施形態は、両面テープの引き出し長さを任意の長さにできるようにした場合である。
【0066】
すなわち、図13に示すように、第4実施形態のテープ移動量調整用のローラ40に代えて、支持部材14と剥離紙保持体12との間に、剥離紙2に接触して回転可能なローラ50を配設し、このローラ50の回転軸50aに、図示しないばね部材の弾性力によってローラ50の回転方向と反対方向に弾性力が付勢され、かつ、該ローラ50の回転によりピニオン18に係合して該ピニオン18をラック21との噛合を解除する方向に移動するカム51を装着した場合である。なお、この場合、カム51は回転軸50aにスリップ可能に装着されている。
【0067】
また、カム51の外周面には突起51aが突設されており、ローラ50の回転に伴ってカム51が回転することによりピニオン18をラック21との噛合を解除した状態で、突起51aがディスペンサ本体10Aの内壁に突設された係止突起52に当接して待機位置に停止される。なお、カム51をローラ50と一体に形成するようにしてもよい。この場合は、両面テープ1が引き出されている間、ピニオン18とラック21との噛合を解除し続けるだけの円周長が必要となる。
【0068】
上記のように構成される第4実施形態の両面テープ・ディスペンサにおいて、ディスペンサ本体10Aをばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込むと、ピニオン18がラック21に噛合して時計方向に回転すると共に、第3のギア13cが反時計方向に回転し、かつ、第2のギア13bと噛合する第1のギア13aが時計方向に回転する。これにより、両面テープ保持体11から両面テープ1Aが引き出され、剥離紙保持体12側に巻き取られると共に、ローラ50及びカム51がばね部材(図示せず)の弾性力に抗して時計方向に回転し、これに伴ってカム51によってピニオン18が移動し、ラック21との噛合が解かれて剥離紙保持体12の巻き取りが停止する。更に、ディスペンサ本体10Aをばね部材30の弾性力に抗してケース20内に押し込んで、支持部材14により両面テープ1の両面粘着剤層3を被貼付面7に押圧した状態で、ディスペンサ本体10A及びケース20を移動して、両面粘着剤層3の任意の長さをライン状に被貼付面7に貼付することができる。そして、両面粘着剤層3を所定の長さ貼付した後、ディスペンサ本体10Aの押し込みを解除することで、被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3を被貼付面7に粘着して残り、剥離紙2はディスペンサ本体10Aと共に被貼付面7から離れる。
【0069】
◎第5実施形態
図14は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第5実施形態の全体を示す概略断面図である。
【0070】
上記第1ないし第4実施形態では、ディスペンサ本体10,10Aをケース20内に押し付ける際に両面テープ1,1Aの引き出しを行う構造について説明したが、第5実施形態は、ディスペンサ本体10Aをケース20から離反する際に両面テープ1Aの引き出しを行うようにした場合である。
【0071】
すなわち、図14に示すように、ディスペンサ本体10Aに取り付けられるピニオン18と、ケース20に取り付けられるラック21を、剥離紙保持体12に設けられた第3のギア13cの中心部より上部側に位置させ、ばね部材30Aの弾性力によりディスペンサ本体10Aがケース20から離反する際に、ピニオン18をラック21に噛合すると共に、剥離紙保持体12に設けられた第3のギア13cに噛合し、かつ、ばね部材30Aの弾性力に抗してディスペンサ本体10Aをケース20内に押し付けた際に、支持部材14により両面テープ1Aの両面粘着剤層3が被貼付面7に押圧された状態で噛合が解かれるように構成されている。
【0072】
なお、ディスペンサ本体10の中間部には、ディスペンサ本体10Aのケース20に対する移動方向に沿うガイド孔17dが設けられており、このガイド孔17d内に摺動可能に嵌挿される可動部材17bに突設される軸17cにピニオン18が装着されている。このピニオン18を支持する可動部材17bと、ガイド孔17dの上端部との間には、補助ばね部材19Aが縮設されている。これにより、補助ばね部材19Aの弾性力の付勢によって、ピニオン18は常時ディスペンサ本体10Aの先端側(図面では下方側)に移動されて、ディスペンサ本体10Aがケース20から離反した状態においても剥離紙保持体12に設けられた第3のギア13cに接触している。
【0073】
なお、第5実施形態において、その他の部分は、第2実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0074】
◎第6実施形態
図15は、この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第6実施形態を示す概略斜視図である。
【0075】
第6実施形態は、ディスペンサ本体をカートリッジ式にして、両面テープの交換を容易に行えるようにした場合である。
【0076】
第6実施形態の両面テープ・ディスペンサは、図15に示すように、ディスペンサ本体10に、予め両面テープ1を保持する両面テープ保持体11と、両面テープ1の引き出し側端部を巻き取る剥離紙保持体12と、支持部材14及びピニオン(図示せず)を内蔵したカートリッジ式に形成されている。また、カートリッジ式のディスペンサ本体10をケース20に着脱可能に取り付けるために、ディスペンサ本体10の対向する側壁10aには、略矩形状の切欠き60が設けられており、ケース20の対向する側壁20aには、切欠き60に係合可能な係合爪61を先端に有するフック62が図示しないばね部材の弾性力が係止方向に付勢された状態で揺動可能に取り付けられている。なお、ディスペンサ本体10の側壁10aの一部にはラック21との干渉を避けるためのスリット63が設けられている。
【0077】
上記のように構成される両面テープ・ディスペンサによれば、ディスペンサ本体10をケース20内に挿入してフック62をばね部材の弾性力に抗して外側に変位させた後、切欠き60内に係合爪61を突入させた状態で、ディスペンサ本体10をケース20に取り付けた状態で、使用することができる。また、両面テープ1の全てが引き出された場合は、フック62をばね部材の弾性力に抗して外側に変位させた状態で、ディスペンサ本体10をケース20から取り出すことができる。したがって、両面テープ1の交換を容易にすることができる。
【0078】
なお、第6実施形態において、圧縮ばね部材30Aが用いられているが、その他の部分は第1ないし第5実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0079】
◎その他の実施形態
(1)上記実施形態では、両面テープ1,1Aの両面粘着剤層3に切り込み6を設ける場合について説明したが、この構造以外の両面テープを使用することも可能である。
【0080】
例えば、図16(a)に示すように、両面粘着剤層3Aを、例えば幅が約10mmの剥離紙2の全面に均一な例えば直径が1〜2mmのドット状に積層した構造、あるいは、円形の両面粘着剤層3B,四角形の両面粘着剤層3C,三角形の両面粘着剤層3D又はハート形の両面粘着剤層3E等の任意のパターン形状に形成された両面粘着剤層を、両面テープ1の長手方向に沿って適宜間隔をおいて剥離紙2に積層する構造としてもよい(図16(b)〜(e)参照)。このような構造においても、剥離紙2と被貼付面7に押圧された両面粘着剤層3A〜3Eとの分離を容易にすることができ、両面粘着剤層3A〜3Eの貼付を容易かつ正確にすることができる。
【0081】
(2)上記第1実施形態では、ピニオン18が、両面テープ保持体11に設けられた第1のギア13aと噛合する剥離紙保持体12に設けられた第2のギア13bと噛合し、第2,3,5実施形態では、ピニオン13が、剥離紙保持体12に設けられた第3のギア13cと噛合する場合について説明したが、ピニオン18は、第2のギア13b又は第3のギア13cのいずれに噛合するものであってもよい。ただ、ピニオン18を第2のギア13bと噛合させることにより、構成部材を削減することができる点で有利である。
【0082】
(3)上記第1実施形態では、ディスペンサ本体10をケース20から離反させるばね部材30が引っ張りばねであり、第2,3,5,6実施形態では、ディスペンサ本体10Aをケース20から離反させるばね部材30Aが圧縮ばねである場合について説明したが、第1実施形態と第2,3,5,6実施形態のばね部材を逆にしてもよい。
【0083】
(4)この発明において、使用する両面テープ1,1Aは、心材を含むものや、心材を含まない剥離紙2と両面粘着剤層3とからなる両面テープいわゆるテープのりも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第1実施形態の全体を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態における両面テープの要部拡大断面図である。
【図3】第1実施形態の両面テープ・ディスペンサにより両面粘着剤層をスポット状に貼付する場合の動作態様を示す概略断面図である。
【図4】第1実施形態の両面テープ・ディスペンサにより両面粘着剤層をライン状に貼付する場合の動作態様を示す概略断面図である。
【図5】この発明における支持部材によって両面粘着剤層を被貼付面に押圧した状態を示す要部断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図6】この発明における両面テープの両面粘着剤層を被貼付面にスポット状に貼付した状態を示す要部断面図(a)及び(a)の要部を示す拡大断面図(b)である。
【図7】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第2実施形態の全体を示す概略断面図である。
【図8】第2実施形態における両面テープの要部拡大断面図である。
【図9】第2実施形態の両面テープ・ディスペンサにより両面粘着剤層をスポット状に貼付する場合の動作態様を示す概略断面図である。
【図10】第2実施形態の両面テープ・ディスペンサにより両面粘着剤層をライン状に貼付する場合の動作態様を示す概略断面図である。
【図11】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第3実施形態の全体を示す概略断面図である。
【図12】第3実施形態の両面テープ・ディスペンサの動作態様を示す概略断面図である。
【図13】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第4実施形態の要部を示す概略斜視図である。
【図14】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第5実施形態の全体を示す概略断面図である。
【図15】この発明に係る両面テープ・ディスペンサの第6実施形態の要部を示す概略斜視図である。
【図16】この発明における両面テープの別の形態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1,1A 両面テープ
2 剥離紙
3,3A〜3E 両面粘着剤層
6 切り込み
7 被貼付面
10,10A ディスペンサ本体
11 両面テープ保持体
11a 回転軸部
12 剥離紙保持体
12a 回転軸部
13a 第1のギア
13b 第2のギア
13c 第3のギア
13d 第4のギア
14 支持部材
15 ガイド
16 ラチェット機構(逆転防止機構)
18 ピニオン
19,19A 補助ばね部材
20 ケース
21 ラック
22 ガイド車輪
30,30A ばね部材
40 テープ移動量調整用ローラ
41 係止爪
50 ローラ
51 カム
60 切欠き
61 係合爪
62 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離紙に両面粘着剤層が積層されたロール状の両面テープを保持する回転可能な両面テープ保持体と、上記両面テープから剥離される剥離紙を巻き取る回転可能な剥離紙保持体と、上記両保持体にそれぞれ設けられ互いに噛合するギアと、上記両面テープ保持体から引き出された両面テープを被貼付面に押圧する支持部材と、を具備するディスペンサ本体と、
上記ディスペンサ本体を摺動自在に嵌装する筒状のケースと、
上記ディスペンサ本体とケースとの間に介在され、上記ディスペンサ本体を常時ケースから離反する方向へ弾性力を付勢するばね部材と、
上記ばね部材の弾性力に抗して上記ディスペンサ本体を上記ケース内に押し付けた際に、ケースに取り付けられたラックに噛合すると共に、上記剥離紙保持体に設けられたギアに噛合し、上記支持部材により両面テープの両面粘着剤層が被貼付面に押圧された状態で噛合が解かれるピニオンと、を具備する、
ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項2】
剥離紙に両面粘着剤層が積層されたロール状の両面テープを保持する回転可能な両面テープ保持体と、上記両面テープから剥離される剥離紙を巻き取る回転可能な剥離紙保持体と、上記両保持体にそれぞれ設けられ互いに噛合するギアと、上記両面テープ保持体から引き出された両面テープを被貼付面に押圧する支持部材と、を具備するディスペンサ本体と、
上記ディスペンサ本体を摺動自在に嵌装する筒状のケースと、
上記ディスペンサ本体とケースとの間に介在され、上記ディスペンサ本体を常時ケースから離反する方向へ弾性力を付勢するばね部材と、
上記ばね部材の弾性力により上記ディスペンサ本体が上記ケースから離反する際に、ケースに取り付けられたラックに噛合すると共に、上記剥離紙保持体に設けられたギアに噛合し、かつ、上記ばね部材の弾性力に抗してディスペンサ本体をケース内に押し付けた際に、上記支持部材により両面テープの両面粘着剤層が被貼付面に押圧された状態で噛合が解かれるピニオンと、を具備する、
ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープにおける両面粘着剤層に、両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて切り込みを形成してなる、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項4】
請求項1又は2記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープにおける両面粘着剤層が、剥離紙の全面に均一なドット状に積層されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項5】
請求項1又は2記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープにおける両面粘着剤層が、円形,四角形,三角形又はハート形等のパターン形状に形成されると共に、各パターン形状が両面テープの長手方向に沿って適宜間隔をおいて剥離紙に積層されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項6】
請求項1,3,4又は5に記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記ピニオンは、ディスペンサ本体に対して該ディスペンサ本体の摺動方向に移動可能な軸に装着されると共に、ディスペンサ本体がケースから離反した状態において剥離紙保持体に設けられたギアと接触すべく補助ばね部材の弾性力が付勢されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項7】
請求項2,3,4又は5に記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記ピニオンは、ディスペンサ本体に対して該ディスペンサ本体の摺動方向に移動可能な軸に装着されると共に、ディスペンサ本体がケース内に押し付けられた状態において剥離紙保持体に設けられたギアと接触すべく補助ばね部材の弾性力が付勢されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記ケースの先端側端部の左右両側に、被貼付面上を走行可能なガイド車輪を更に具備する、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープが外側に両面粘着剤層を有するロール状であって、両面テープ保持体から引き出される両面テープが支持部材を介して剥離紙保持体に案内されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープが内側に両面粘着剤層を有するロール状であって、両面テープ保持体から引き出される両面テープがガイドによって表裏反転された後、支持部材を介して剥離紙保持体に案内されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記剥離紙保持体に設けられるギアを、両面テープ保持体に設けられるギアとピニオンと共に噛合する一つのギアで兼用した、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープ保持体又は剥離紙保持体のいずれか一方に、逆転防止機構を具備すると共に、上記両面テープ保持体は、両面テープの引き出し方向に過剰な力が加わった際に両面テープ保持体に設けたギアに対して回転が可能に形成されている、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記両面テープ保持体及び剥離紙保持体は、両面テープの引き出し方向及び剥離紙の巻き取り方向に過剰な力が加わった際に各保持体に設けたギアに対して回転が可能に形成され、かつ、両面テープ保持体の回転摩擦力に対して剥離紙保持体の回転摩擦力を大きくなるように形成してなる、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なテープ移動量調整用のローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢される回転停止用の係止爪を装着し、上記係止爪を上記剥離紙保持体に設けられたギアに係合可能に形成してなる、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記支持部材と剥離紙保持体との間に、剥離紙に接触して回転可能なローラを配設し、このローラの回転軸に、ローラの回転方向と反対方向に弾性力が付勢され、かつ、該ローラの回転によりピニオンに係合して該ピニオンをラックとの噛合を解除する方向に移動するカムを装着してなる、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の両面テープ・ディスペンサにおいて、
上記ディスペンサ本体は、両面テープ保持体に予め両面テープを保持すると共に、両面テープの引き出し側端部を巻き取る剥離紙保持体を内蔵しており、上記ディスペンサ本体をケースに着脱可能に形成してなる、ことを特徴とする両面テープ・ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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