説明

両面粘着テープ

【課題】携帯電子機器の部材固定に用いた際に、皮脂等の油成分の侵入による膨張や厚み方向の変化が少ない両面粘着テープを提供する。
【解決手段】ある態様の両面粘着テープは、溶剤型アクリル系共重合体を含み、総厚が150μm以下であり、55℃の雰囲気下で人工皮脂に3日間浸漬した後の質量増加度が10質量%以上150質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープに関する。より具体的には、本発明は、携帯電子機器に組み込まれる部材の固定に用いられる両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PHS、デジタルカメラ、電子手帳、携帯音楽プレーヤー、携帯型ゲーム機、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯電子機器においては、画像表示モジュール表面に設けられる表示パネルと筐体の接合やタッチパネル部材の接合、LCD部材の接合をはじめ、各種部材やモジュールの接着固定に両面粘着テープが使用されている。
【0003】
携帯電話やPHS、スマートフォンでは通話時に耳周辺や頭髪への接触により皮脂や化粧品、整髪料などの油成分が付着し、長期間の使用によりパネルと筐体の接合部分から徐々に侵入し両面粘着テープまで侵入する場合がある。また、近年画像表示部分にタッチパネル機能を付与した携帯電子機器が増え、指から付着した皮脂が部材内部に侵入し部材固定用の両面粘着テープが皮脂により粘着特性が低下して剥がれを生じたり、皮脂によりテープの膨潤が発生する不具合が問題となっている。
【0004】
近年、携帯電子機器は薄型化しており、部材固定用の両面粘着テープも薄いテープが使用されていることや、タッチパネル部材など厚み方向の変化の少ないことが要求されてきている。特に抵抗膜式タッチパネルのITOフィルム/ITOガラスの固定では、厚み方向の変化がないことが重要性能である。
【0005】
一般に、両面粘着テープに使用されるアクリル型粘着剤のアクリルポリマーは皮脂を吸収する性質がある。吸油量が多いと膨潤により厚みが厚くなり接合部材の厚み変化が発生し、固定された厚みから画像表示エリアへ膨張した粘着剤がはみ出したり、抵抗膜式タッチパネルの固定用途など、厚み方向の変化にムラが生じるとニュートンリングが発生し、画像表示に不具合を発生してしまう。このことから、厚み方向の変化は少ないことが好ましいが、テープの厚みが厚いと、油による膨張量が大きく厚み方向の変化が大きくなってしまう。
【0006】
特許文献1には皮脂による幅方向への粘着剤のはみ出しの対策について開示しているが、厚み方向の変化についての言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−215355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、皮脂等の油成分の侵入により両面粘着テープの膨張が少なく、厚み方向の変化が少ないことで、携帯電子機器の部材固定に用いた際に、長期使用しても人間の皮脂などの油成分の侵入により、テープの画像表示エリアへのはみ出しや、厚み方向の変化によるニュートンリング等の画像表示の不具合を発生させない両面粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、両面粘着テープである。当該両面粘着テープは、携帯電子機器の部材固定用途に用いられる両面粘着テープであって、溶剤型アクリル系共重合体を含み、総厚が150μm以下であり、55℃の雰囲気下で人工皮脂に3日間浸漬した後の質量増加度が10質量%以上150質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
上記態様の両面粘着テープにおいて、溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量が400000以上700000以下であってもよい。被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に浸漬しない状態で、23℃、50%RHで72時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をAとし、 被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に55℃で72時間浸漬した後、人工皮脂を拭き取り、23℃、50%RHで1時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をBとしたとき、B/Aが0.4以上であってもよい。また、透明導電性フィルムの接着に用いられてもよい。
【0011】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の両面粘着テープによれば、携帯電子機器の部材固定に用いた際に、皮脂等の油成分の侵入による膨張や厚み方向の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事項であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に、基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
実施の形態に係る両面粘着テープは携帯電子機器の部材固定用途に用いられる。当該両面粘着テープは、粘着剤組成物として溶剤型アクリル系共重合体を含み、総厚が150μm以下であり、55℃の雰囲気下で人工皮脂に3日間浸漬した後の質量増加度が10質量%以上150質量%以下である。
【0015】
本実施の形態に係る両面粘着テープは、55℃の雰囲気下で人工皮脂に3日間浸漬した後の質量増加度(以下、吸油量という場合がある)が10質量%以上150質量%以下である。吸油量は少ない程好ましいが、アクリル粘着剤は油との親和性が高く、吸油を防止することは困難である。吸油量が10質量%未満の場合は、吸油できなかった油が接着界面へブリードアウトすることにより、両面粘着テープとしての接着性が著しく低下する。特に、吸油量が0質量%未満の場合は、接着剤が溶出して接着力が低下したり、溶出した粘着剤が画像表示エリアにはみ出してしまう。また、溶出成分が電子回路に溶出してしまうと抵抗値の増大などの悪影響が生じてしまう。
【0016】
吸油量が150質量%より多いと、両面粘着テープが携帯電子機器に組み込まれた際に許容された厚みに収まり切らない粘着剤が画像表示エリアにはみ出したり、厚みのムラによってニュートンリングが発生したりしてしまう。また、150質量%より多く吸油すると両面粘着テープの粘着剤が著しく可塑化され、粘着力や凝集力の低下によって剥がれが発生してしまう。
【0017】
両面粘着テープの厚みの変化は、20μm以下が好ましい。携帯電子機器は構造上若干の厚み方向の余裕を設けているが、近年薄型化が進んでおり、厚み方向の余裕も少なくなっており、20μmより大きい厚みの変化があると、組み込まれた厚みに収まらない粘着剤が画像表示エリアにはみ出したり、厚みのムラによってニュートンリングが発生したりしてしまう。
【0018】
両面粘着テープの総厚が150μmより厚いと、皮脂に浸漬した場合の吸油量が少なくても厚みの変化量が20μmより大きくなってしまい、厚み方向の変化によるニュートンリングや、糊はみ出しが発生してしまう。このことから両面粘着テープの総厚は150μm以下が好ましく、さらに100μm以下であることがより好ましい。
【0019】
吸油量は、両面粘着テープを皮脂に浸漬させた前後の重量変化に基づいて、以下の手順で求められる。
[吸油量算出方法]
両面粘着テープを幅50mm、長さ100mmに切断し、両面の剥離紙を除いた試料の重量(質量:Wa)を量り、これを人工皮脂に試料の両面全体が浸漬するようにして55℃の雰囲気下で3日間浸漬させる。3日間浸漬させた後、両面粘着テープの表面に付着した油を油取りフィルム(例えばカネボウ化粧品社製;プチガーデン オイルクリアフィルムN)を使用して、油取りフィルムの変色がなくなるまで十分拭き取る。こうして表面の油を拭き取った試料の重量(質量:Wb)を量る。これらの値を用いて、次式により実吸油量が算出される。
実吸油量(質量%)=[(Wb−Wa)/Wa]×100
【0020】
ここでいう人工皮脂とは、皮脂の代用として用いるもので、成分としては皮脂と近似した物理特性を有するものであれば特段の限定はされないが、トリオレインやトリパルミチンなどのトリグリセライド、スクワレン、ミリスチルオクタデシレート等のエステル、オレイン酸等の脂肪酸の混合物が好ましく、その混合比としては、トリグリセライド5〜50質量%、スクワレン5〜20質量%、エステル5〜50質量%、脂肪酸5〜35質量%の混合物が好ましく、中でも、次の組成の人工皮脂が特に好ましい。
人工皮脂:トリオレイン33.3質量%、オレイン酸20.0質量%、スクワレン13.3質量%、ミリスチルオクタデシレート33.4質量%
【0021】
実施の形態に係る両面粘着テープは粘着剤組成物として溶剤型アクリル系共重合体を含む。本明細書において、「溶剤型アクリル系共重合体」は、溶液重合で得られたアクリル系共重合体を意味する。溶剤型アクリル系共重合体は溶液重合による公知の重合方法により共重合することで得られる。なお、溶液重合以外の重合法で得られるアクリル系共重合体、例えは、乳化重合で重合したアクリル系共重合体の場合は、人工皮脂に浸漬した場合に粘着剤層が溶出してしまう。このことから溶剤型アクリル系共重合体が粘着剤組成物として好適である。また、粘着剤組成物として溶剤型アクリル系共重合体に換えて、例えば、合成ゴム系や天然ゴム系の粘着剤組成物を用いた場合は、人工皮脂に浸漬したときに、粘着剤層が溶出してしまう。このことから溶剤型アクリル系共重合体が本発明の目的を達成する粘着剤組成物として好適である。
【0022】
溶剤型アクリル系共重合体を構成するモノマーは、溶剤型アクリル系共重合体のガラス転移温度が−56℃〜−20℃になるように選択することが好ましい。溶剤型アクリル系共重合体のガラス転移温度をこの範囲に調整することで、両面粘着テープとして求められる基本的な粘着物性である粘着力やタックや、被着体として用いられる発泡体に代表されるような粗面への投錨性を両立することが可能である。
【0023】
ここで、Tg(ガラス転移温度)とは、モノマー原料を構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび当該モノマーの質量分率(共重合割合)に基づいてフォックス(FOX)の式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgとしては、公知資料である日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」またはWiley−Interscienceの「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」に記載の値を採用するものとする。たとえば、ここに開示される技術におけるホモポリマーのTgとして、2−エチルヘキシルアクリレートについては−70℃、ブチルアクリレートについては−54℃、メチルアクリレートについては8℃、メタクリル酸メチルについては105℃、メタクリル酸シクロヘキシルについては66℃、酢酸ビニルについては32℃、アクリル酸については106℃、メタクリル酸については228℃を採用するものとする。さらに、上記公知資料に記載のないモノマーのホモポリマーのTgについては、以下の方法で求められた値を採用するものとする。すなわち、対象となるモノマーを溶液重合して重合平均5×10〜10×10のホモポリマーを合成し、得られたホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延乾燥させて試験サンプルを作製する。この試験サンプルにつき、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の示差走査熱量計(DSC)、型式「DSC6220」を用いて、10℃/分の昇温速度で−80℃から280℃まで温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、初期の吸熱開始温度を当該ホモポリマーのTgとして採用するものとする。
【0024】
溶剤型アクリル系共重合体のガラス転移温度が−56℃未満では、凝集力が不足して、長時間貼着した後に剥がす場合に糊残りを発生してしまう。また、溶剤型アクリル系共重合体のガラス転移温度が−20℃より高いと被着体への粘着力が低下したり、湾曲した曲面への貼着性が低下してしまう。
【0025】
溶剤型アクリル系共重合体を構成するモノマーは、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が80.0質量%以上であり、少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の含有量が0.5〜10.0質量%、その他共重合性モノマーの含有量が19.5質量%以下であることが好ましい。溶剤型アクリル系共重合体を構成するモノマー中におけるアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量80.0質量%以上であれば、吸油量を10〜150質量%になるように調整することができる。さらに好ましくは、溶剤型アクリル系共重合体を構成するモノマーは、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が90.0質量%以上であり、少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の含有量が0.5〜10.0質量%、その他共重合性モノマーの含有量が9.5質量%以下である。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
【0026】
アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。より好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルであり、さらに好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルである。
【0027】
溶剤型アクリル系共重合体は、後述する架橋剤との反応に関与する官能基として、少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の含有量が0.5〜10.0質量%であることが好ましい。
【0028】
少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられ、これらのうち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、アクリル酸である。
【0029】
上記少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の量は、全モノマー100質量%に対して0.5〜10.0質量%が好ましい。少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の量が0.5質量%以上であれば、得られるポリマー中においてカルボキシル基含有モノマーが架橋点としての機能を十分に果たすことができ、粘着剤層の凝集力の低下を抑制し、長時間貼着した後に剥離する際に糊残りを生じにくくすることができる。また、水分散型粘着剤としての溶液安定性が低下する傾向にある。一方少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の量が10.0質量%以下であれば、ガラス転移温度が高くなり過ぎず、被着体への粘着力の低下や湾曲した曲面への貼着性の低下を抑制することができる。
【0030】
溶剤型アクリル系共重合体を構成する上記単量体と共重合可能な他の単量体としては、α,β−不飽和化合物と呼ばれる分子内に重合性二重結合を保有する化合物が挙げられ、アクリル系モノマーが共重合性や粘着物性の面から好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの(メタ)アクリル酸環状エステル類;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−ジメチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、(メタ)アクリル酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−トリブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などの(メタ)アクリル酸誘導体類;
(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルなどの(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル類;
トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパン トリアクリル酸等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸トリパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
等のアクリル系モノマーが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0031】
また、アクリル系モノマーと共重合可能なビニル系モノマー等のその他のモノマーも用いることができる。
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1−ブチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩などの芳香族ビニル系モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのトリアルキルオキシシリル基含有ビニル系モノマー類;
γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー類;
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;
パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有モノマー類;等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。これらのうち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、酢酸ビニルである。
【0032】
なお、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニルなどの、アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは吸油量が増加してしまうため、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは含有しないことが好ましい。
【0033】
上記重合方法に用いる開始剤としては、たとえば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系、ベンゾイルパーオキサイド、t‐ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカンなどの過酸化物系などの油溶性開始剤が挙げられ、これらのうち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの開始剤の使用量は、上記重合方法において通常使用されている量であればよく、例えば、モノマー100質量%に対して0.01〜1.0質量%である。
【0034】
また、得られるポリマーが適切な分子量を有するように、上記重合の際に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらのうち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、上記重合方法において通常使用されている量であればよく、例えば、モノマー100質量%に対して0.01〜15質量%程度である。
【0035】
溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量は、400000〜700000の範囲が好ましい。溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量が400000以上であれば、粘着剤層の凝集力が低下し易くなることを抑制し、長時間貼着した後に剥離する際に糊残りが生じにくくなる。溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量が700000以下であれば、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、被着体への粘着力の低下や湾曲した曲面への貼着性の低下を抑制することができる。溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量は、より好ましくは400000〜650000、さらに好ましくは400000〜600000である。
【0036】
なお、本明細書でいう重量平均分子量とは、得られたアクリル系共重合体の不揮発分をテトラヒドロフラン(以下、THF)で抽出した可溶分(ゾル分の重量平均分子量とも言う)をGPCの測定で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0037】
また、両面粘着テープに含まれる粘着剤組成物は、ゲル分率が20〜90%であることが好ましい。粘着剤組成物のゲル分率が20%以上であれば、凝集力がより向上し、人工皮脂に浸漬した場合に溶出することをより抑制することができる。また、粘着剤組成物のゲル分率が90%以下であれば、被着体への粘着力を向上させ、湾曲した曲面への貼着性をより向上させることができる。粘着剤組成物のゲル分率は、より好ましくは20%〜70%であり、さらに好ましくは20%〜60%である。
【0038】
なお、本明細書でいうゲル分率とは、水分散型粘着剤組成物を乾燥させた後の不揮発分を酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合を意味し、下記方法にて算出される。
剥離ライナー上に塗工、乾燥後の粘着剤約0.1gを、0.2μm径を有するテフロン(登録商標)シート(商品名「NTF1122」、日東電工社製)に包み、凧糸で縛り、酢酸エチルを満たした50ml容器1本に1個の割合で入れ、室温にて1週間静置する。その後、容器からテフロンシートを取り出し、130℃×2時間乾燥機で乾燥させて酢酸エチルを除去した後のサンプル質量を測定し、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)={(乾燥後の、テフロン+凧糸+ゲル分の質量)−(初期の、テフロン+凧糸の質量)}/{(初期の、テフロン+凧糸+粘着剤の質量)−(初期の、テフロン+凧糸の質量)}×100
【0039】
粘着剤組成物のゲル分率を上昇させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記ポリマーに架橋剤を添加することが挙げられる。架橋剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系、イソシアネート系、オキサゾリン系、アジリジン系、親水化処理カルボジイミド系、活性メチロール、活性アルコキシメチル、金属キレート系、シランカップリング剤等などが挙げられる。これらの架橋剤は単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、ポリマー100質量部に対して、通常0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部である。
【0040】
上記粘着剤組成物には粘着付与剤が配合されてもよい。かかる粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与樹脂から選択される一種類または二種類以上を用いることができる。粘着付与剤の添加量は、溶剤型アクリル系共重合体100質量%に対して10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%である。
【0041】
次に、実施の形態に係る両面粘着テープのより具体的な態様について説明する。
両面粘着テープの第1の態様は、非剥離性のシート状基材の両方の面に、上述した粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層がそれぞれ積層された多層構造(粘着剤層/非剥離性シート状基材/粘着剤層)を有する。なお、使用に供される前の両面粘着テープの各粘着剤層の粘着面には剥離性シート状基材が積層される。
両面粘着テープの第2の態様は、粘着剤層のみからなる、いわゆる芯材レスの単層構造を有する。使用に供される前の両面粘着テープの粘着剤層の各粘着面には剥離性シート状基材が積層される。
【0042】
非剥離性シート状基材としては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハンなどのプラスチックからなるプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等を発泡させてなる発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。また、これらはその片面または両面にコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0043】
剥離性シート状基材は、セパレーターとも言われ、このような剥離性シート状基材としては、例えば、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッソ樹脂やシリコーン樹脂等を塗布してなるものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0044】
なお、両面粘着テープの粘着剤層上に剥離性シート状基材を積層する場合においては、作業性の向上のために、両面に積層される剥離性シート状基材の剥離力が異なるようにそれぞれの剥離性シート状基材を選択することが好ましい。例えば、両面粘着テープの初めに貼着する面側の剥離性シート状基材の剥離力は、次に貼着する面側の剥離性シート状基材の剥離力より軽剥離である剥離性シート状基材を選択すると作業性が向上する。
【0045】
実施の形態の両面粘着テープは、種々の方法で得ることができる。
例えば、非剥離性シート状基材の一方の面に粘着剤溶液を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面に剥離性シート状基材を重ねたり、あるいは剥離性シート状基材の一方の面に粘着剤溶液を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面に非剥離性シート状基材を重ねたりすることによって得ることができる。
【0046】
粘着剤を種々のシート状基材に塗布する際に用いる塗布装置は、通常使用されている塗布装置であり特に限定されるものではないが、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーターなどが挙げられる。
【0047】
また、乾燥条件は、乾燥時に粘着剤溶液の溶剤や残留モノマーが乾燥し除去され、かつ、溶剤型アクリル系共重合体が有する官能基と架橋剤とが反応し、架橋構造が形成され得る条件であればよい。乾燥条件として、例えば、60〜120℃、1〜5分程度が好ましいが、これに限定されるものではない。乾燥後、シート状基材で粘着剤層を挟んだ状態で熟成し、さらに架橋反応を進行させることができる。
【0048】
また、実施の形態に係る両面粘着テープは、ロール状で提供することもでき、枚葉状態で提供することもでき、あるいはさらに種々の形状に加工することもできる。
【0049】
実施の形態に係る両面粘着テープは、被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に浸漬しない状態で、23℃、50%RHで72時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をAとし、被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に55℃で72時間浸漬した後、人工皮脂を拭き取り、23℃、50%RHで1時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をBとしたとき、B/Aが0.4以上であることが好ましい。B/Aが0.4以上であれば、皮脂等の油成分が侵入しても、十分な粘着力を保持することができる。
【0050】
実施の形態に係る両面粘着テープは、皮脂等の油成分の侵入による膨張や厚み方向の変化が従来の両面粘着テープに比べて大幅に改善されている。このため、特にタッチパネルなどの透明導電性フィルムの接着に好適に用いられる。実施の形態に係る両面粘着テープをタッチパネルなどの透明導電性フィルムの接着に用いることにより、長期使用しても透明導電性フィルムを含めた厚み方向の変化を少なくすることができ、ひいては、透明導電性フィルムによるタッチ検出の精度の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本実施の形態の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等の説明において、「部」、「%」と記載されている場合には、特に説明がない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
(アクリル系共重合体I)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器にアクリル酸2.9質量部、酢酸ビニル5質量部、アクリル酸ブチル92質量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、および重合溶媒として酢酸エチル30質量部、トルエン120質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら、2時間撹拌した。
このようにして重合系内の酸素を除去した後、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.2質量部を加え、60℃に昇温して6時間重合反応を行った。得られたポリマーの固形分は40.0%、重量平均分子量は50万であった。
【0052】
(アクリル系共重合体II)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器にアクリル酸5質量部、アクリル酸ブチル95質量部および重合溶媒としてトルエン150質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。
このようにして重合系内の酸素を除去した後、過酸化ベンゾイル0.2質量部を加え、60℃に昇温して6時間重合反応を行った。得られたポリマーの固形分は40.0%、重量平均分子量は60万であった。
【0053】
(アクリル系共重合体III)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器にアクリル酸3質量部、アクリル酸ブチル70質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル27質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.05質量部および重合溶媒としてトルエン135質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。
このようにして重合系内の酸素を除去した後、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.1質量部を加え、60℃に昇温して6時間重合反応を行った。得られたポリマーの固形分は42.5%、重量平均分子量は40万であった。
【0054】
(アクリル系共重合体IV)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器にアクリル酸10質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル90質量部、および重合溶媒として酢酸エチル190質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。
このようにして重合系内の酸素を除去した後、過酸化ベンゾイル0.6質量部を加え、60℃に昇温して6時間重合反応を行った。得られたポリマーの固形分は34.4%、重量平均分子量は120万であった。
【0055】
(アクリル系共重合体V)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、蒸留水および乳化剤(商品名「ラテムルE−118B」、花王社製;以下、単に「乳化剤」と表記する。)0.1質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上撹拌して窒素置換を行った。この反応容器に、重合開始剤として2−2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレード(商品名「VA−057」和光純薬社製)0.1部を加えた。これを60℃に保ち、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル85質量部、アクリル酸メチル13質量部、アクリル酸1.25質量部、メタクリル酸0.75質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」信越化学工業社製)0.020質量部、ドデカンチオール0.033質量部、および乳化剤1.9質量部を蒸留水に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルション滴下後、さらに60℃に3時間保持して加熱を停止した。次いで、モノマー100質量部当たり10%過酸化水素水0.75質量部加え、その5分後にモノマー100質量部当たり0.5質量部のアスコルビン酸を加えた。これを室温まで冷却した後、10%アンモニア水を添加して液性をpH7.2に調整して、固形分57%のアクリル系ポリマーエマルションを得た。ゾル分の重量平均分子量は53万であった。
【0056】
(ゴム系粘着剤I)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器にSISブロック共重合体(商品名「JSR SIS5505P」、JSRシェルエラストマー社製、固形分100%)100g、石油樹脂(商品名「QuintoneC200S」、日本ゼオン社製、固形分100%)90g、テルペン樹脂(商品名「YSレジンTO−L」、ヤスハラケミカル社製、固形分100%)10g、トルエン300gを60℃で5時間撹拌し、固形分40%の粘着剤溶液を作製した。
【0057】
(実施例1)
アクリル系共重合体Iを100g、ロジン樹脂(商品名「ペンセルD−125」荒川化学工業社製、固形分100%)4g、ロジン樹脂(商品名「スーパーエステルA−100」荒川化学工業社製、固形分100%)4g、ロジン樹脂(商品名「フォーラリン8020F」イーストマンケミカル社製、固形分100%)2g、テルペンフェノール樹脂(商品名「タマノル803L」荒川化学工業社製、固形分100%)6gを添加し、樹脂が溶解するまで十分撹拌した。この調整粘着剤溶液に架橋剤として芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.1gを添加して十分撹拌した。この溶剤型粘着剤溶液(粘着剤1)を用い、PETセパレーター(商品名「ダイヤホイル MRF38」、三菱樹脂社製、厚み38μm)のシリコン処理面に乾燥塗膜厚さが34μmになるように塗布し、100℃、2分間で乾燥させ、この粘着剤層面にポリエステルからなるフィルム基材(商品名「ルミラー#12S10」、東レ社製、厚さ12μm)を貼りあわせ工程品1を得た。
【0058】
次いで、上述した粘着剤1をPETセパレーター(商品名「#75セラピール MDA(S)」、東レフィルム加工社製、厚み75μm)のシリコン処理面に乾燥塗膜厚さが34μmになるように塗布し、100℃、2分間で乾燥させ、この粘着剤層面と上述した工程品1のPET基材面を貼りあわせ、総厚80μmの両面粘着テープを作製した。得られた両面粘着テープを50℃雰囲気下で24時間経時させた後、評価を行った。
【0059】
(実施例2)
アクリル系共重合体I100gに、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.0gを添加した粘着剤を用い、基材としてフィルム基材(商品名「ルミラー#5AF53」、東レ社製、厚さ5μm)両面の乾燥塗膜厚さが27.5μmになるように塗布した以外は実施例1と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0060】
(実施例3)
アクリル系共重合体II100gに、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)0.5gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0061】
(実施例4)
アクリル系共重合体II100gに、テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS−145」ヤスハラケミカル社製、固形分100%)8g、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.6gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0062】
(実施例5)
アクリル系共重合体II100gに、テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS−145」ヤスハラケミカル社製、固形分100%)8g、エポキシ架橋剤(商品名「TETRAD−C」、三菱瓦斯化学社製、固形分100%)0.02gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0063】
(比較例1)
アクリル系共重合体III100gに、ロジン樹脂(商品名「ペンセルD−125」荒川化学工業社製、固形分100%)4g、テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS−145」ヤスハラケミカル社製、固形分100%)12.8g、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.1gを添加した粘着剤を用い、基材としてフィルム基材(商品名「ルミラー#25S105」、東レ社製、厚さ25μm)を用い、両面の乾燥塗膜厚さが27.5μmになるように塗布した以外は実施例1と同様にして総厚80μmの両面粘着テープを作製した。
【0064】
(比較例2)
アクリル系共重合体IV100gに、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)0.5gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0065】
(比較例3)
芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)の添加量を0.4gに変更した以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0066】
(比較例4)
アクリル系共重合体IV100gに、テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS−145」ヤスハラケミカル社製、固形分100%)6.9g、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.4gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0067】
(比較例5)
アクリル系共重合体V100gに、芳香族ポリイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75%)1.1gを添加した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0068】
(比較例6)
基材としてフィルム基材(商品名「ルミラー#25S105」、東レ社製、厚さ25μm)を用い、両面の乾燥塗膜厚さが67.5μmになるように塗布した以外は実施例1と同様にして総厚160μmの両面粘着テープを作製した。
【0069】
(比較例7)
粘着剤としてゴム系粘着剤Iを用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0070】
(比較例8)
粘着剤としてアクリル系粘着剤IVI100gに、水分散型ロジン樹脂(商品名「KE−802」、荒川化学工業社製、固形分50.1%)34.2gを添加し、さらに増粘剤としてポリアクリル酸を粘度が10Pa・sになるように調整した粘着剤を用いた以外は実施例2と同様にして総厚60μmの両面粘着テープを作製した。
【0071】
上記で得られた両面粘着テープを以下の評価試験に供した。得られた結果を表1、表2に示す。
【0072】
[粘着力]
両面粘着テープの一方の面(38μmのPETセパレーター側)の剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた両面粘着テープを幅5mm、長さ100mmのサイズにカットして試料片を作製した。上記試料片の他方の面から剥離ライナーを剥がし、該試料片を被着体に、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着した。被着体は、ITOフィルム(商品名「V270L−TFMP」、日東電工社製)を140℃で9時間加熱処理した後のITO処理面とした。
人工皮脂に浸漬しない場合には、この貼付から72時間後に温度23℃、相対湿度50%の測定環境下、引張試験機を使用して、引張速度300mm/分、引張角度180°の条件で粘着力A(N/5mm)を測定した。
人工皮脂に浸漬する場合には、この貼付試料片を人工皮脂に浸し、55℃で72時間経時する。経時後の試料片の表面に付着した人工皮脂を十分拭き取り、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下で1時間放置後、引張試験機を使用して、引張速度300mm/分、引張角度180°の条件で粘着力B(N/5mm)を測定した。
【0073】
[吸油量]
上述した[吸油量算出方法]に記載の方法によって測定した。なお、人工皮脂として、下記組成のものを用いた。
人口皮脂:トリオレイン33.3質量%、オレイン酸20.0質量%、スクワレン13.3質量%、ミリスチルオクタデシレート33.4質量%
【0074】
[厚み]
1/1000ダイヤルゲージを用いて、吸油量の測定試料の浸漬前後の厚みを計測した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
比較例7、8の吸油量は、皮脂浸漬後の粘着剤層が溶出し、著しく可塑化されていたため、人工皮脂を拭き取ることが出来なかったため測定できなかった。
【0078】
表1に示す各実施例の両面粘着テープは吸油量が10質量%以上150質量%以下の範囲内であり、厚みの変化が20μm未満である。また、各実施例の両面粘着テープは、粘着力B/粘着力Aが0.4以上であり、粘着力の低下が抑制されていることが確認された。以上のように、各実施例の両面粘着テープは油に浸漬しても厚み方向の寸法変化や粘着力変化が少ないことが確認された。
【0079】
一方、表2に示す比較例1、2、4、5の両面粘着テープは吸油量が150質量%より大きく、厚みの変化も20μmより大幅に大きくなっている。また、比較例1、2、4、5の両面粘着テープは、粘着力B/粘着力Aが0.4を下回っており、粘着力の低下が顕著である。また、比較例3、7、8の両面粘着テープは人工皮脂の浸漬によって粘着剤層が溶出することが確認された。比較例6の両面粘着テープは吸油量は少ないが、テープ厚が厚いために厚み方向の変化が20μmより大きくなることが確認された。
【0080】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電子機器の部材固定用途に用いられる両面粘着テープであって、
溶剤型アクリル系共重合体を含み、総厚が150μm以下であり、55℃の雰囲気下で人工皮脂に3日間浸漬した後の質量増加度が10質量%以上150質量%以下であることを特徴とする両面粘着テープ。
【請求項2】
溶剤型アクリル系共重合体の重量平均分子量が400000以上700000以下である請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に浸漬しない状態で、23℃、50%RHで72時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をAとし、
被着体となる透明導電性フィルムに接着後、人工皮脂に55℃で72時間浸漬した後、人工皮脂を拭き取り、23℃、50%RHで1時間経過した後の180°剥離方向に引張速度300mm/分で剥離したときの粘着力(N/5mm)をBとしたとき、
B/Aが0.4以上である請求項1または2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
透明導電性フィルムの接着に用いられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。

【公開番号】特開2013−100485(P2013−100485A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225397(P2012−225397)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】