説明

並行処理対応画像符号化装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリや電子ファイルなどにおいて、可変長符号化方式により画像信号の符号化を行なう符号化装置に係り、特に、複数の種類の符号化処理を効率良く行なうのに好適な符号化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ファクシミリや電子ファイル装置などの画像処理装置においては、画像情報の効率の良い伝送や、記録を目的とし、符号化装置を用いて、画像信号の符号化を行なっている。
【0003】このような画像信号の符号化処理を効率良く行なうための従来技術としては、例えば、特開昭62−237868号公報に記載のように、画像信号を圧縮変換して得た符号データを、一時的に蓄積する出力バッファを複数個用い、かつ、一連の符号化処理部を複数個用いて、それらを並行動作させることにより符号化処理を高速に行なうものがある。
【0004】しかし、例えば、ファクシミリにおいては、それぞれ関連のない異なる画情報処理を同時に符号化処理したい場合がある。すなわち、送信、受信、送信原稿のメモリへの蓄積、各種レポート類の出力、そしてコピーなど、これら、それぞれ独立した単一動作を、システム資源の配分上、可能な範囲で、二つ以上、同時に実行するマルチアクセスと呼ばれる動作形態であり、近年、装置のサービス性向上を目的として、一般的になってきたものである。
【0005】例えば、メモリに蓄積した画情報をメモリ送信するファクシミリを用いて、メモリ送信中に、ユーザが、自分が送信する原稿の受け付けを優先したい場合、それを可能とするマルチアクセスの形態として、メモリ送信時の送信原稿のメモリへの蓄積が必要となる。
【0006】ここで、メモリ送信動作は、圧縮符号化状態でメモリに蓄積されている送信原稿画情報をメモリから取りだし、一旦復号化し、送信用相手先ファクシミリが受信できる符号化方式で再符号化し、その後に送信する動作モードである。また、送信原稿のメモリ蓄積動作は、スキャナで送信原稿を読み取り、メモリに、その画情報を蓄積する動作であるが、通常、蓄積できる原稿枚数を増やすために、画情報は、圧縮符号化処理した後に蓄積される。このように、このマルチアクセス形態においては、二種類の符号化処理が同時に行われることになる。
【0007】従来の単一の符号化処理を前提とした符号化装置で、このようなマルチアクセスに応えるためには、符号化装置が二台必要になる。しかし、その内の一台は常時使用される訳ではなく、非常に不経済である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特開昭62−237868号公報に記載の従来の符号化処理を並行に行なう符号化装置は、一連の単位の画像情報処理、例えば、一ページ分の画像情報の並行符号化処理であり、それぞれ異なる単位の複数の画像情報処理、例えば、複数ページの符号化処理を、ページ別に、順次に行なうものではない。そのために、マルチアクセス形態において必要とされるページ間での並行符号化処理を行なう場合は、符号化装置が並行処理の数の分だけ必要となる。
【0009】本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、それぞれ独立した複数の符号化処理をそれぞれの処理毎に時分割して行ない、一台で複数の符号化処理の並行実行を可能とする効率の良い画像符号化装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の画像符号化装置は、(1)ライン単位で切り替えて入力する複数種類の符号化処理の対象となる各画情報を、それぞれに対応する符号化方式に切り替えて符号化する画像符号化装置であって、複数種類の各符号化処理をライン単位で時分割して切り替える時分割処理制御部と、この時分割処理制御部で切り替えた符号化処理で符号化した画情報をシステムバスのバス幅に対応してシリアル・パラレル変換して送出する際に、可変長符号化方式での符号化で発生する半端なコードを保存し、次の当該符号化方式で符号化された画情報を、保存した半端なコードの末尾に続けてシリアル・パラレル変換し送出する複数個のシリアル・パラレル変換レジスタと、この複数個のシリアル・パラレル変換レジスタの出力のいずれか一つを選択するマルチプレクサと、各画情報の入力切り替え制御と、この入力切り替えに対応しての各画情報の複数個のシリアル・パラレル変換レジスタへの出力先の割り付けマルチプレクサの選択動作のタイミング制御を行なう制御部とを有することを特徴とする。また、(2)3種類以上の各符号化処理を、各符号化処理別のライン単位で時分割して切り替える時分割処理制御部と、この時分割処理制御部で切り替えた符号化処理で符号化した画情報をシステムバスのバス幅に対応してシリアル・パラレル変換し送出する複数個のシリアル・パラレル変換レジスタと、各シリアル・パラレル変換レジスタの出力のいずれか一つを選択するマルチプレクサと、各画情報の入力切り替え制御と、この入力切り替えに対応しての、時分割処理制御部による各符号化処理の切り替え動作、各画情報の複数個のシリアル・パラレル変換レジスタへの出力先の割り付け、および、マルチプレクサの選択動作の各タイミング制御を行なう制御部とを有することを特徴とする。また、(3)上記(1)もしくは(2)のいずれかに記載の画像符号化装置であって、利用者からの指示に基づき各画情報のライン単位での入力の切り替えタイミングの設定を行なう分割設定部を有し、この設定に基づき、制御部による各タイミング制御を行なうことを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明においては、シリアル・パラレル変換レジスタを複数個設け、それぞれのシリアル・パラレル変換レジスタを介して、ライン単位に時分割した複数種類の符号化処理を行なう。そして、符号化処理の切り替えタイミングに合わせて、シリアル・パラレル変換レジスタからの出力選択を切り替え、複数種類の符号化処理を並行処理する。このように、複数種類の符号化処理をライン単位に時分割して行なうために、複数種類の符号化処理の切替時に、シリアル・パラレル変換レジスタによるコードのシステムバスのバス幅に対応したシリアル・パラレル変換で、半端なワードが発生する。しかし、複数個のシリアル・パラレル変換レジスタのそれぞれで、この半端なワードを保存し、再び、自符号化処理に制御が戻ったとき、その半端なワードの末尾に続けてコードを詰めることができる。また、複数種類の符号化処理の切り替えタイミングと、シリアル・パラレル変換レジスタのそれぞれへの割り付けとを、利用者からの指示入力に基づき設定する。このことにより、利用者は、符号化処理の切り替えを自由に行なうことができる。このようにして、一つの符号化装置で、複数の符号化処理を自在に並列動作させることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図面により詳細に説明する。
【0013】図1は、本発明を施した画像符号化装置の本発明に係る構成の一実施例を示すブロック図である。
【0014】本実施例の画像符号化装置は、ファクシミリに設けられたものであり、ホストシステムバスからの二値化された原画情報の入力を制御する入力部1と、この二値化情報をシリアルデータに変換するパラレル・シリアル変換部(図中、並直変換部と記載)2と、シリアルデータから白と黒の二値化の変化点の検出を行なう変化点検出部3と、変化点の検出に基づき、一次元符号化時におけるランレングス、および、二次元符号化時におけるモード信号などを検出するランレングス・モード信号検出部4と、検出したランレングスやモード信号などに基づき、入力した信号に対応するコードやコード長情報を抽出するコード発生部5と、コード発生部5で抽出したコードを順次に排出するシフトレジスタ6と、コードをホストシステムバスの幅に合わせてシリアル・パラレル変換出力すると同時に、符号化対象の処理の切り替え時に発生するコード化画情報の半端なワードを記憶する二つのシリアル・パラレル変換シフトレジスタ(図中、直並変換シフトレジスタと記載)7、8と、シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8のいずれかからの出力を選択して、ホストシステムバスに送出するマルチプレクサ9、そして、本発明に係る符号化処理の時分割処理動作を制御する時分割処理制御部10と時分割設定部11を有し、ホストシステムバスを介して入力される利用者からの指示に基づき、本発明に係る動作を含む装置全体の動作を制御する制御部12とから構成されている。
【0015】尚、例えば、ファクシミリにおける画情報の可変長符号化方式としては、交信性および互換性を確保する意図から、国際規格で制定されているMH(Modified Huffmann)方式や、MR(Modified Relative Element Address Designate)方式、および、MMR(Modified MR)方式などの符号化方式が広く用いられており、本実施例も、これらの方式による符号化に基づくものとする。
【0016】このような構成により、本実施例の画像符号化装置は、マルチアクセス形態において必要とされる複数の符号化処理を、時分割して並行して行ない、従来技術の課題を解決することができる。以下、制御部12の制御に基づく各処理部の本発明に係る処理動作を説明する。
【0017】まず、入力部1は、ホストシステムバスからライン単位で交互に送られてくる複数の符号化処理対象の白黒レベルに二値化された画情報を取り込み、パラレル・シリアル変換部2に出力する。パラレル・シリアル変換部2は、入力された二値化情報をシリアルデータに変換して変化点検出部3に送る。変化点検出部3は、このシリアルデータから、白と黒の二値化の変化点を検出する。
【0018】変化点検出部3で変化点を検出すると、ランレングス・モード信号検出部4は、その時点で、一次元符号化モードにおいてはランレングスを、また、二次元符号化モードにおいては、参照ライン上の最寄りの変化点と符号化ライン上の注目変化点との相対位置関係を示すモード信号を確定し、それらの結果信号をコード発生部5へ送出する。すなわち、一次元符号化モード(MH符号化方式およびMR符号化方式において発生する)においては、白黒の別を示すカラー信号とランレングスが、また、二次元符号化モード(MR符号化方式およびMMR符号化方式において発生する)においては、モード信号が、それぞれ、コード発生部5に送られる。
【0019】コード発生部5は、入力された信号に対応するコードを、図示されていないROM(Read Only Memory、読みだし専用メモリ)などに格納されたコード表から検索し、検索したコード化画情報を次段のシフトレジスタ6にパラレルロードする。尚、シフトレジスタ6は、コードの最大長である13ビット以上の幅を持つ必要がある。また、コード発生部5は、シフトレジスタ6へのパラレルロードと同時に、時分割処理制御部10に、コード表から検索したコード長情報を送る。このコード長情報に基づき、時分割処理制御部10は、シフトレジスタ6から検索済みのコードが次段に排出されるまで、コード発生部5による次のコード発生を抑制するように、タイミングを調整する。
【0020】次に、シフトレジスタ6からシリアル出力されるコード化画情報は、ホストシステムバス(並列バス)に送出される前に、バスの並列幅に合わせて区切られ、シリアル・パラレル変換されなければならない。しかし、本実施例は、符号化処理の切り替えを行なうために、この時に生じる問題に留意する必要がある。すなわち、符号化処理を切り替える場合、ラスタスキャニングにおける一ライン単位で行なうのが簡単であるが、どのような単位で符号化処理を切り替えるにしても、いずれの符号化方式も可変長符号化方式であるために、一つの符号化処理の最後のコード化画情報のワードは、ちょうどコードで満たされるとは限らない。このようなワードが転送された場合、受信側では復号化することができなくなる。このような問題を解決するために、シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8を設けた。すなわち、シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8は、このような半端なワードを、符号化処理の切り替えが再び行なわれて、元の符号化処理に制御が戻ったとき、再び、その末尾に続けて、コードが詰められるように保存する。そして、マルチプレクサ9は、シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8のいずれかからの出力を選択し、このコード化画情報をホストシステムバスに送出する。
【0021】時分割設定部11は、ホストシステムバスを介して入力されたファクシミリの利用者からの指示信号に基づき、時分割処理制御部10の符号化処理の切り替えタイミングと、シリアル・パラレル変換レジスタ7、8のそれぞれの符号化処理への割り付けとを設定する。そして、時分割処理制御部10は、その設定に基づき、各符号化処理別に、シフトレジスタ6からのコード化画情報の出力先(シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8のいずれか)の選択と、マルチプレクサ9の選択(シリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8のいずれかの選択)を、入力部1で入力した符号化対象の処理別に対応して行なう。
【0022】このようにして、本実施例の画像符号化装置は、時分割処理制御部10と時分割設定部11、および、二つのシリアル・パラレル変換シフトレジスタ7、8、そして、マルチプレクサ9を設けることにより、それぞれ異なる二つの符号化処理を並行に行なうことができる。また、利用者は、どのシリアル・パラレル変換レジスタを用いるかを指定することにより、符号化処理の切り替えを自在に行なうことも容易にでき、例えば、メモリ送信中に、送信用原稿の蓄積を行なう場合に、原稿読み取りの符号化処理を優先して行なうことができる。
【0023】尚、本実施例では、ファクシミリにおけるMH符号化方式、MR符号化方式、MMR符号化方式などの符号化方式を前提として説明した。しかし、可変長符号化方式であれば、ファクシミリ以外の画像処理システムに本発明を適用することができる。また、本実施例では、二種類の符号化処理を同時に並行動作させることで説明したが、さらに多くの符号化処理を同時に動作させるためには、シリアル・パラレル変換レジスタを符号化処理の数だけ用意すれば良い。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、それぞれ独立した複数の符号化処理を、それぞれの処理毎に時分割して行ない、一台で複数の符号化処理を並行して行なうことが可能となり、ファクシミリなどの画像処理システムを、より経済的に構成することができる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を施した画像符号化装置の本発明に係る構成の一実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 入力部
2 パラレル・シリアル変換部
3 変化点検出部
4 ランレングス・モード信号検出部4
5 コード発生部
6 シフトレジスタ
7,8 シリアル・パラレル変換シフトレジスタ
9 マルチプレクサ
10 時分割処理制御部
11 時分割設定部
12 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ライン単位で切り替えて入力する複数種類の符号化処理の対象となる各画情報を、それぞれに対応する符号化方式に切り替えて符号化する画像符号化装置であって、上記複数種類の各符号化処理をライン単位で時分割して切り替える時分割処理制御手段と、該時分割処理制御手段で切り替えた符号化処理で符号化した画情報をシステムバスのバス幅に対応してシリアル・パラレル変換して送出する際に、可変長符号化方式での符号化で発生する半端なコードを保存し、次の当該符号化方式で符号化された画情報を上記保存した半端なコードの末尾に続けてシリアル・パラレル変換し送出する複数個のシリアル・パラレル変換手段と、該複数個のシリアル・パラレル変換手段の出力のいずれか一つを選択する出力選択手段と、上記各画情報の入力切り替え制御と、該入力切り替えに対応しての各画情報の上記複数個のシリアル・パラレル変換手段への出力先の割り付けと上記出力選択手段の選択動作のタイミング制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする画像符号化装置。

【請求項2】 ライン単位で切り替えて入力する3種類
以上の各符号化処理の対象となる各画情報を、それぞれに対応する符号化方式に切り替えて符号化する画像符号化装置であって、上記3種類以上の各符号化処理を、各符号化処理別のライン単位で時分割して切り替える時分割処理制御手段と、該時分割処理制御手段で切り替えた符号化処理で符号化した画情報をシステムバスのバス幅に対応してシリアル・パラレル変換し送出する複数個のシリアル・パラレル変換手段と、該複数個のシリアル・パラレル変換手段の出力のいずれか一つを選択する出力選択手段と、上記各画情報の入力切り替え制御と、該入力切り替えに対応しての上記時分割処理制御手段による上記各符号化処理の切り替え動作、各画情報の上記複数個のシリアル・パラレル変換手段への出力先の割り付け、および、上記出力選択手段の選択動作の各タイミング制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする画像符号化装置。
【請求項3】 請求項1、もしくは、請求項2のいずれ
かに記載の画像符号化装置であって、利用者からの指示に基づき上記各画情報のライン単位での入力の切り替えタイミングの設定を行なう分割設定手段を有し、該分割設定手段での設定に基づき、上記制御手段による上記各タイミング制御を行なうことを特徴とする画像符号化装置。

【図1】
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【特許番号】特許第3070770号(P3070770)
【登録日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【発行日】平成12年7月31日(2000.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−409933
【出願日】平成2年12月11日(1990.12.11)
【公開番号】特開平4−213968
【公開日】平成4年8月5日(1992.8.5)
【審査請求日】平成9年11月28日(1997.11.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】特開 平3−267883(JP,A)