説明

中敷き後付け用薬効シート

【課題】 中敷きに薬効を付与するとともに、中敷きの耐用期間が満了するまで薬効が効果的に発揮された状態を持続させる。
【解決手段】 本考案は、靴の中敷きとほぼ同形状に成形したシート状部材に、薬効成分を保持させて芳香シート1とし、これを両面接着テープ2によって中敷き3の裏面に取り外し可能に貼り付けて一体化し、これを革靴4内に敷いて使用することによって、中敷き3から芳香が発揮されるようにする。そして、一定期間使用して芳香シート1の薬効が失われた時点で、中敷き3から芳香シート1を剥がして新しいものと交換し、中敷き3を常時芳香が効果的に発揮された状態とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、靴用中敷きの裏側あるいは表側に添えるか取付けて、中敷きと共に使用する薬効シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
靴の内底部に敷いて使用する中敷きとして、消臭効果や抗菌効果を持たせた製品が広く普及している。しかし、これらの中敷きは、クッション材、芯材、吸湿材及び表皮材等を重ね合わせたもので、前記芯材あるいは吸湿材等に所定の薬効を有する薬剤等を含浸または付着させ、前記クッション材等と共に縫製あるいは接着等の手段により一体化したものである。
したがって、これらの製品は、製造に手間が掛かり価格も高くなるため、その価格に見合った耐用期間が設定されている。ところが中敷きに付与されている薬効の有効期間は、その殆どが中敷きの耐用期間より短い。その結果、薬効が失われた状態でその後も中敷きを使い続けるか、あるいは耐用期間の半ばで、薬効を具えた新しい中敷きに交換して使っているのが現状であった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
前述したように、薬効が付与された中敷きは、その耐用期間の途中で薬効が切れるものが多い。したがって、中敷きに付与された薬効の持続期間の延長が望まれるが、薬効を長期間持続させるためには、例えば薬効成分をマイクロカプセルに封入して中敷き内部に分散配置する等の方法をとる必要があるが、製品価格が更にアップするという問題があった。そこで、靴の中敷きを、安価で容易な手段によって常に薬効が発揮された状態で耐用期間が満了するまで快適に使用できるようにするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案の中敷き後付け用薬効シートは、靴の中敷きとほぼ同形状に成形したシート状部材に、芳香剤、消臭剤、防カビ剤あるいは殺菌剤等の薬効成分を保持させたことを特徴としている。
【0005】
【考案の実施の形態】
靴の中敷きとほぼ同形状に成形したシート状部材に薬効成分を保持させて薬効シートとすることによって、中敷きの裏側または表側に添えるか取付けて使用した際に、厚みが薄いので中敷きの厚みの増加によって足が圧迫されることがない。更に、シートの形状が中敷きとほぼ同じに成形されているので、足の裏に当たる部分に段差が生じず靴の履き心地が損なわれることがない。
そして、薬効の切れた中敷きまたは初めから薬効が付与されていない中敷きと共に使用すれば薬効を付与でき、また種類の異なる薬効が既に付与されている中敷きと共に使用すれば別種の薬効を追加することができる。さらに、薬効シートの薬効が失われるか弱まった時点で新しい薬効シートと交換することによって、薬効が効果的に発揮された状態を長期に亘って維持することができる。また、中敷きに取付けて使用すれば、薬効シートの破損や変形を防止できる。
【0006】
【実施例】
以下、この考案の実施例を図1乃至図8に基づいて説明する。
図1乃至図4はこの考案の第1実施例を示すもので、符号1は芳香シートであり、靴用の中敷きとほぼ同形状に成形した不織布に、薬効成分として液状の芳香剤を含浸させた後、乾燥させることにより芳香成分を保持させたものである。
前記芳香シート1は、図2に示すように靴内に配設した際に上側となる一方の面に両面接着テープ2を複数箇所に接着して設け、これらの両面接着テープ2によって芳香成分が付与されていない中敷き3の裏面(図2において下面)に取外し可能に貼り付けて中敷き3と一体化した状態(図3の状態)で使用する。
【0007】
芳香シート1を裏面に取付けた中敷き3は、例えば図4に示すように革靴4の内底部に敷いて使用する。そして、この革靴4を履いた際に、革靴4と足5との間に形成される半密閉状態の空間6内に、芳香シート1から蒸発した芳香成分の蒸気が充満し、かつ外部へ溢れ出る。その結果、気化した芳香成分が革靴4の内側面および履いている者の足15と靴下とに染込み、また歩行中に空間6内から吐出されて周囲に拡散する。
したがって、歩行時に放出された芳香が雰囲気中に拡散して快適な環境が形成されるとともに、靴等から発散する悪臭を緩和することができる。また革靴4を脱いだ際には、靴下に染み込んだ芳香成分が蒸発して、靴下から発散される悪臭を緩和することができる。さらに、革靴4内の芳香シート1からは芳香が常時蒸発しているため、この革靴4を脱いでシューズボックス等の収納場所に収容した際に、気化した芳香成分によって収納場所内にこもる不快臭を解消させることができる。
【0008】
そして、芳香シート1を取付けた中敷き3の使用を開始して一定期間が経過すると、芳香シート1の薬効が失われるが、その時点で芳香シート1を取付けている両面接着テープ2を中敷き3より剥がして古くなった芳香シート1を取り去り、新しい芳香シート1と交換すれば、中敷き3を芳香が効果的に発揮された状態に回復でき、耐用期間が満了するまで中敷き3を快適な状態で使用できる。また、中敷き3に貼り付けて使用するため、芳香シート1の破損や変形を防止することができる。
【0009】
また、本実施例においては、芳香シート1が中敷き3に対して両面接着テープ2よって取外し可能に取付けられているため、古くなった芳香シート1を容易に取り去ることができ、新しい芳香シート1と簡単に交換することができる。また、シート状部材として一重の不織布を採用し、これに薬効成分として芳香剤を含浸させて芳香シート1としたので、構造が簡単で安価に製造することができる。
【0010】
なお、本実施例においては、シート状部材として一重の不織布を採用したが、不織布の外に、例えばの和紙、織布、発泡樹脂シート、洋紙、フェルトシート、圧縮パルプシート、コルクシート等を一重もしくは複数枚重ねて用いることもできる。また、シート状部材を中敷きとほぼ同形状に成形した後に薬効成分を含浸させたが、ロール状のシート部材に薬効成分を含浸させた後に中敷きとほぼ同形状に成形してもよい。また、シート状部材の材料となる繊維あるいは原糸の状態で薬効成分を保持させてもよい。また本実施例においては、芳香シート1を中敷き3の裏面に貼り付けたが、貼り付けずに中敷き3の下側に配置して使用することができ、また中敷き3の表面に貼り付けて使用することもできる。
【0011】
また図5乃至図7はこの考案の第2実施例を示すもので、符号11は消臭シートであり、連通気泡の発泡樹脂シートに薬効成分として揮発生の消臭剤を保持させた後、靴用の中敷きとほぼ同形状に成形したものである。
この消臭シート11は、図5に示すように靴内に配設した際に下側となる一方の面の複数箇所に接着剤12が予め設けられており、これらの接着剤12の表面はそれぞれ剥離紙12aにより覆ってある。そして、剥離紙12aを除いた後、接着剤12によって消臭効果が減衰した中敷き13の表面(図5において上面)
に、取外し可能に貼り付けた状態(図6の状態)で使用する。
【0012】
消臭シート11を取付けた中敷き13は、例えば図7に示すようにスニーカ14の内底部に敷いて使用する。そして、このスニーカ14を履いた際に、スニーカ14と足15との間に形成される半密閉状態の空間16内に、消臭シート11から蒸発した消臭成分が充満して、空間16内の臭気を消臭するとともに、消臭成分がスニーカ14の内側面と、履いている者の足15および靴下とに浸透して効果的に消臭することができる。
【0013】
また、消臭シート11からは消臭成分が常時蒸発しているため、このスニーカ14を脱いでシューズボックス等の収納場所に収容した際に、気化した消臭成分によって収納場所内にこもる不快臭を効果的に消臭することができる。
そして、中敷き13に取付けた消臭シート11の薬効が弱まるか失われた時点で、消臭シート11を新しいものと交換すれば、中敷き13による消臭作用を回復でき、常に快適な使用状態を維持できる。
なお、本実施例においては、消臭シート11を中敷き13の表面に取付けたが、中敷き13の裏面に取り付けて使用しても同様の作用効果が得られる。
【0014】
次に、この考案の第3実施例を図8に基づいて説明する。符号21は防カビシートであり、靴用の中敷きとほぼ同形状に成形した不織布を、防カビ剤として例えば人体に無害な揮発性殺菌剤であるアルファーブロモシナムアルデヒド[(α−Bromocinnamaldehyde):医薬品製造承認番号(43AP)−第2003号]を、溶媒にエタノールを用いて溶かした溶液中に浸漬して薬効成分を含浸させたものである。この防カビシート21は、両面接着テープ等の取付け手段(図示せず)によって市販品の中敷き23の裏面に取り外し可能に取付けて使用する。
【0015】
そして、防カビシート21を取付けた中敷き23は、例えばブーツ24の内底部に配置することにより、防カビシート21からアルファーブロモシナムアルデヒドの蒸気が常時発生して、このブーツ24を履いた状態は勿論脱いだ状態においても、ブーツ24内に充満してカビの発生を効果的に防止することができる。
なお、中敷き23に取付けた防カビシート21の有効期間が切れて薬効が弱まるか失われた時点で、防カビシート21を新しいものと交換すれば、中敷き23を防カビ作用が発揮された状態に回復できる。
【0016】
さらに、ブーツ24は使用するシーズンが冬季に限定されるため、夏季等のシーズンオフには長期に亘って保管しておく必要があり、この不使用時にカビが発生し易かった。そこで、不使用状態が長期に亘る場合には、防カビシート21を取付けた中敷き23を内装したブーツ24を、ビニール袋25内に入れて密封しておけば、ブーツ24内の防カビシート21から蒸発したアルファーブロモシナムアルデヒドがビニール袋25内の空間26に充満するため、ブーツ24の内部及び外部のカビの発生を効果的に防止することができる。
【0017】
なお、本実施例においては、防カビシート21を取付けた中敷き23をブーツ24に内装した場合について説明したが、ブーツ24以外の革靴、ゴルフシューズ、登山靴あるいはスニーカ等に内装することもできる。また、ブーツ24を保管するためにビニール袋25を使用したが、ビニール袋25以外の密封容器内に収納して保管しても同様の効果が得られる。さらに、本実施例で防カビ剤の一例として用いたアルファーブロモシナムアルデヒドは、カビの一種である白癬菌に対する殺菌力にも優れているため、靴内に残留する水虫菌の殺菌にも効果がある。
上述の各実施例においては、本考案の中敷き後付け用薬効シートを芳香シート、消臭シート、防カビシートに適用した場合について説明したが、他に殺菌剤を保持させた各種殺菌シート、制汗剤を保持させた制汗シート、トウガラシエキス等の血行促進剤を保持させた温感シート等に好適に実施することができる。
【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案の中敷き後付け用薬効シートは、靴の中敷きとほぼ同形状に成形したシート状部材に薬効成分を保持させたので、薬効の切れた中敷きまたは初めから薬効が付与されていない中敷きと共に使用することにより中敷きに薬効を容易かつ安価に付与することができる。また種類の異なる薬効が既に付与されている中敷きと共に使用すれば別種の薬効を容易に追加することができる。
さらに、薬効シートの薬効が失われるか弱まった時点で新しい薬効シートと交換すれば、中敷きの耐用期間が満了するまで薬効が効果的に発揮された状態を持続させることができる。
また、中敷きとほぼ同形状に成形されているので、中敷きと共に靴に内装しても厚みの増加が少ないため足が圧迫されることがなく、また足の裏に当たる部分に段差が生じないため靴の履き心地が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の第1実施例の芳香シートを示す俯瞰図である。
【図2】芳香シートを中敷き裏面へ取付ける方法を示す説明図である。
【図3】芳香シートを中敷きに一体に取付けた状態を示す断面側面図である。
【図4】中敷きと一体化させた芳香シートを革靴内に配置した状態を示す断面側面図である。
【図5】本考案の第2実施例の消臭シートを中敷き表面へ取付ける方法を示す説明図である。
【図6】消臭シートを中敷きに一体に取付けた状態を示す断面側面図である。
【図7】中敷きと一体化させた消臭シートをスニーカ内に配置した状態を示す断面側面図である。
【図8】本考案の第3実施例の防カビシートを中敷きと一体化して内装したブーツをビニール袋内に収納した状態を示す一部切欠き断面側面図である。
【符号の説明】
1 芳香シート(薬効シート)
2 両面接着テープ
3 中敷き
4 革靴
11 消臭シート(薬効シート)
12 接着剤
13 中敷き
14 スニーカ
21 防カビシート(薬効シート)
23 中敷き
24 ブーツ
25 ビニール袋

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 中敷きとほぼ同形状に成形したシート状部材に薬効成分を保持させたことを特徴とする中敷き後付け用薬効シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【登録番号】第3050527号
【登録日】平成10年(1998)4月30日
【発行日】平成10年(1998)7月21日
【考案の名称】中敷き後付け用薬効シート
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−670
【出願日】平成10年(1998)1月13日
【出願人】(598022118)
【出願人】(598022129)