説明

中空押出形材および形材の係合構造

【課題】分割形成した複数の形材構成部材を強固に係合して、一体成形されたものと遜色のない性能を有する中空押出形材と、形材の係合構造を提供すること。
【解決手段】係合して中空押出形材を構成する一方の型材構成部材1と他方の型材構成部材2とを備えており、一方の形材構成部材1には、係合部3a,3bを、他方の形材構成部材2には、被係合部4a,4bを有しており、係合部3a,3bと被係合部4a,4bとの当接部の対峙する箇所には、それぞれ孔形成溝を有しているとともに、挿入孔を形成しており、挿入孔には、この挿入孔の孔長とほぼ同一の長さを有し且つ弾性又は軟性の棒材を挿入してあり、挿入孔の一方の孔開口と他方の孔開口には、棒材の長手方向の両端部を挿入孔の孔奥側に向けて押圧する押込具をそれぞれ嵌入し、各押込具の押圧力により棒材が挿入孔内で拡がる方向に変形し、棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割した複数部材を係合してなる中空押出形材と、複数の形材を係合して搬送パレット等の比較的大型の構造体を形成する係合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な直接押し出し法による押出機によりビレットを押し出して、例えば、アルミ製カーポートの桁材などの比較的大径の中空押出形材を一体成形品として得るには、押し出し能力(圧力)の高い押出機を用いる必要があった。ところが、前述したような高い能力を有する押出機は、費用対効果の面などから、標準的な能力を有する押出機と比較して製造者側の保有数が極端に少ないのが現状である。そこで、複数の形材構成部材を係合して比較的大径の中空押出形材を得る方法が採られており、具体的には、広く汎用される標準的な押し出し能力を有する押出機により、分割した一端部と他端部に係止部もしくは被係止部を有する形材構成部材を複数押し出して、各形材構成部材を係合して一つの比較的大径の中空押出形材を得るものであった。
【特許文献1】特開平11−280175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数の形材構成部材を係合して大型の中空押出形材を形成している都合上、各形材構成部材の係合箇所が不意にガタつく問題点があり、この種の一体成形されたものと比較しても耐久性などの性能面に劣る欠点があったことから、この手法で形成される中空押出形材には、大きさ、形状など様々な制限が課せられる不都合があった。また前述した係合箇所のガタツキを抑えるために、例えば係合箇所を溶接したり、あるいは係合箇所を可占めるといった二次的な加工を施す対策も考えられたが、製造コストや製品の体裁の面を鑑みるに、一体成形品と遜色のないものを得るには至っていない。
【0004】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、分割形成した複数の形材構成部材を強固に係合して、一体成形されたこの種のものと遜色のない性能を有する中空押出形材と、形材の係合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明は、係合して中空押出形材を構成する一方の型材構成部材と他方の型材構成部材とを備えており、一方の形材構成部材には、係合部を有しており、他方の形材構成部材には、係合部と係合する被係合部を有しており、係合した係合部と被係合部との当接部の対峙する箇所には、それぞれ孔形成溝を有しているとともに、各孔形成溝が対面して挿入孔を形成しており、挿入孔には、この挿入孔の孔長とほぼ同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材を挿入してあり、挿入孔の一方の孔開口と他方の孔開口には、棒材の長手方向の両端部を挿入孔の孔奥側に向けて押圧する押込具をそれぞれ嵌入してあり、各押込具の押圧力により棒材が挿入孔内で拡がる方向に変形するとともに、変形した棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に当接し、係合した一方の形材構成部材と他方の形材構成部材とが離れる方向に押圧力を付与するように形成してあることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の発明は、複数の形材を係合して所望の構造体を構成する形材の係合構造であって、連接する一方の形材には、被係合部を有しており、他方の形材には、被係合部と係合する係合部を有しており、係合した係合部と被係合部との当接部の対峙する箇所には、孔形成溝をそれぞれ設けてあるとともに、各孔形成溝が対面して挿入孔を形成しており、挿入孔には、この挿入孔の孔長と略同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材を挿入してあり、挿入孔の一方の孔開口と他方の孔開口には、棒材の長手方向の両端部を挿入孔の孔奥側に押圧する押込具をそれぞれ嵌入してあり、
各押込具の押圧力により棒材が挿入孔内で拡がる方向に変形するとともに、変形した棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に当接し、係合した一方の形材と他方の形材とが離れる方向に押圧力を付与するように形成してあることを特徴とする。
ここで構造体とは、形材を複数組み合わせて構成するもの、例えば搬送パレットや建築用壁材、パーテーションなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、所望する大きさ・形状の中空押出形材を複数の形材構成部材に分割して押出成形し、各形材構成部材を係合することで、通常、押出成形をすることが困難とされる大きさや形状の中空押出形材が得られる。しかも、挿入孔に挿入した棒材の長手方向の両端部に対し、それぞれ押込具により孔奥側に向けて押圧することで、一方の形材構成部材と他方の形材構成部材との係合箇所の全体に渡り、挿入孔内で孔の径方向に拡がる方向に変形した棒材から挿入孔の孔内周壁に対して押圧力が加わることになる。これにより、一方の形材構成部材と他方の形材構成部材とは、例えるなら、係合したまま離れる方向に引っ張られる状態となるので、各形材構成部材が隙間なく密接に係合し、各形材構成部材を複合して構成しているにも関わらず、ガタツキなく一体成形品と遜色のない耐久性を有する中空押出形材を自在な大きさ・形状で得ることができる。また請求項2記載の発明によれば、連接した形材同士の係合状態が強固な比較的大型の構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の中空押出形材の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の中空押出形材の縦断面図であり、図2は、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2との係合箇所を拡大して示す縦断面図であり、図3は、本中空押出形材の係合箇所を横断面し、挿入孔内に挿入した棒材の変形する状態を示す説明図であり、図4は、本発明の棒材の他の実施形態を示す横断面図であり、図5は、本発明の形材の係合構造を有する搬送パレットを示す縦断面図である。
【0009】
本中空押出形材は、図1のように、縦断面した形状が略コ字型をなす二つの形材構成部材1、2からなっており、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2との端部同士がそれぞれ係合して断面略矩形状をなすものである。
【0010】
さらに詳しくは、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2との係合箇所は、図1および図2のように、一方の形材構成部材1および他方の形材構成部材2の図面から見て左右の両側端部には、中空部S側に向けて突出した略鉤型をなす係合部3a,3b(一方の形材構成部材1の側)と被係合部4a,4bをそれぞれ有しており、この係合部3a,3bと被係合部4a,4bは、すべてが略同一の構成をなすため、代表して図面左側の係合部3aおよび被係合部4aについてのみ説明すると、この係合部3aは、係合する被係合部4aと当接する側の端面(以下、当接端面と記す)Pにおける内側の端縁部から垂直方向の下向きに突出する垂直片5aと、この垂直片5aの下端部から当接端面Pと平行して水平方向左側に向けて突出する水平片6aとを有している。さらに、当接端面Pの外側の端縁部は、水平方向外側に向けて伸びる水平突出片7aを有している。そして、当接端面Pおよび垂直片5a、水平片6aによって略コ字型に囲まれた受入溝8aには、被係合部4aの水平片6bが当接端面Pと平行する方向に差し込まれて凹凸に嵌り込むとともに、当接端面P外側の端縁部の水平突出片7bは、被係合部4aの係合部3aとの当接端面Qおよび水平片6b、垂直片5bによって略コ字型に囲まれた受入溝8bに凹凸に嵌り込み、これにより、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2とが係合する。さらに、一方および他方の形材構成部材1、2の係合した各係合部3a,3bおよび各被係合部4a,4bの当接端面P,Qにおける互いが対峙する箇所には、略半円状をなす一対の孔形成溝10a,10bを有しており、各孔形成溝10a,10bが対面して合わさって孔開口12a,12bが略円形状をなす挿入孔10を形成する。この挿入孔10には、一方あるいは他方の形材構成部材1、2の長手方向の長さ(図1における一方および他方の形材構成部材1、2の水平方向の長さ)と略同一の長さの棒材11を挿入してあり、さらに挿入孔10の両方の孔開口12a,12bには、押込具13a,13bをそれぞれ螺合・嵌入してある(図3もあわせて参照)。
ここで、図面右側の係合部3bおよび被係合部4bについては、前述した図面左側の係合部3aおよび被係合部4aと左右に対称な形状をなしており、相違する点としては、水平片6aと水平突出片7aがそれぞれ水平方向右側に突出するものである(図面左側の係合部3bおよび被係合部4bは、水平片6aと水平突出片7aが水平方向左側に突出している)。
【0011】
以上のように本発明の中空押出形材を形成すると、図3のように、押込具13a,13bを挿入孔10の両方の孔開口12a,12bにそれぞれ羅合・嵌入することで、この挿入孔10に挿入してある棒材11の長手方向の一端部14と他端部15を挟む位置から各押込具13a,13bが挿入孔10内に嵌入していく。そして、各押込具13a,13bの差込先端部側がそれぞれ棒材11の長手方向の一端部14と他端部15とを孔奥側Dに向けてそれぞれ押圧すると、棒材11が挿入孔10内で湾曲変形し、ここで湾曲・蛇行した棒材11の一部が挿入孔10の孔内周壁20に断続的に当接する。これにより、棒材11が当接した箇所では、挿入孔10を拡げる方向に押圧力が付与されるので、係合した一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2は、互いが離れる方向に常に押圧されることになる。従って、一方の形材構成部材1の水平片6aの受入溝8aに面する側と他方の形材構成部材2の水平突出片7b、および一方の形材構成部材1の水平突出片7aと他方の形材構成部材2の水平片6aの受入溝8bに面する側のそれぞれが圧接し、結果、係合したときのガタツキがなく係合状態が強固な中空押出形材が形成される。また、本発明のような係合構造を有する中空押出形材によれば、例えばカーポートの桁材などの比較的大型の形材や、あるいは、複雑な断面形状を有する形材であっても、係合箇所のガタツキがなく一体成型品と略同等の強度を有するため、十分な耐久性を確保できると推測される。
尚、本実施形態では、弾性を有する棒材11が湾曲変形した場合について説明したが、棒材11の材料の選定によっては、例えば、塩化ビニールのように一定の軟性を有する材料で成形した棒材11を適用した場合、押込具13a,13bの押圧により潰れて棒材11の径方向に拡がるように棒材11が変形し、変形した棒材11が挿入孔10の孔内周壁20に当接することも想定される。
【0012】
本発明の他の実施形態として、図4に示すように、棒材19の長手方向の略中央部を分断し、分断した各端面を互いに平行な角度に傾斜する傾斜面T,Tに形成したものである。このように形成すると、挿入孔10の両側の孔開口12a,12bに押込具13a,13bがそれぞれ羅合・嵌入したときに、分断した一方の棒材構成部19aと他方の棒材構成部19bとが当接した傾斜面T,Tに沿って、挿入孔10の径方向外側に互いに摺動して挿入孔10の孔内周壁20に当接し、挿入孔10が拡がる方向に常に押圧力を付与することになり、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2とを強固に係合する。
【0013】
また図5に示すものは、本発明の係合構造を適用した搬送パレットを示すものであり、一方のパレット用形材16aと他方のパレット用形材16bの係合箇所の詳細な構成説明は、前述した中空押出形材にて記しているために、ここでは省略するが、搬送パレットを構成している連接した一方のパレット用形材16aと他方のパレット用形材16bとの互いが当接する端面(当接端面)Qに、係合部3cおよび被係合部4cを設け、前述した本発明による中空押出形材と同様に、挿入孔17に挿入した棒材18が挿入孔17内で拡がる方向への変形により、挿入孔17の孔内周壁20に押圧力を付与してパレット用形材16a,16bの係合力を高めている。
尚、本実施では形材同士の係合構造として具体的に搬送パレットを挙げて説明したが、例えば形材を複数連接して係合した建築用壁材やパーテーションなど、本発明の係合構造については様々な適用可能性を有している。
【0014】
本発明の係合部3a,3b,3cおよび被係合部4a,4b,4cは、互いが係合したときに押込具13a,13bの嵌入によって棒材11,18,19が変形・押圧し、一方の形材構成部材(または形材)1,16aと他方の形材構成部材(または形材)2,16bとが離れる方向に押圧力を付与しても係合状態が解除されないものであれば、前述した実施形態の態様(例えば、垂直片5aと水平片6aにより略鉤状をなすもの等)に限定されない。棒材11,18,19は、前述したような弾性又は軟性を有する材料が適用されているが、具体的に、アルミニウム合金、銅、真鍮などの金属製棒材、あるいはポリエチレン、ABS樹脂、ナイロン、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂、各種の硬質ゴム等の樹脂製棒材などから選択される。また押込具13a,13bは、挿入孔10に挿入した棒材11,18,19に対し、孔開口12a,12bから抜け出すことなく押圧力を付与するものであればよく、具体的には、スクリューネジやスプリングピン、六角穴付き止め螺子などを用いている。また本発明では連接した一方の形材構成部材(または形材)1,16aと他方の形材構成部材(または形材)2,16bとしているが、これは、少なくとも二部材以上が連接したものすべてを含んだものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の中空押出形材の縦断面図である。
【図2】本中空押出形材の係合箇所を拡大した縦断面図である。
【図3】本中空押出形材の係合箇所を横断面し、挿入孔内に挿入した棒材の変形状態を示す説明図である。
【図4】本発明の棒材の他の実施形態を示す横断面図である。
【図5】本発明の形材の係合構造を有する搬送パレットを示す要部を拡大した縦断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 一方の形材構成部材
2 他方の形材構成部材
3a,3b,3c 係合部
4a,4b,4c 被係合部
10a,10b 孔形成溝
10,17 挿入孔
11,18,19 棒材
12a,12b 孔開口
13a,13b 押込具
14 一端部(両端部)
15 他端部(両端部)
16a 一方のパレット用形材(形材)
16b 他方のパレット用形材(形材)
20 孔内周壁
D 孔奥側
P,Q 当接端面(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合して中空押出形材を構成する一方の型材構成部材と他方の型材構成部材とを備えており、
一方の形材構成部材には、係合部を有しており、他方の形材構成部材には、係合部と係合する被係合部を有しており、係合した係合部と被係合部との当接部の対峙する箇所には、それぞれ孔形成溝を有しているとともに、各孔形成溝が対面して挿入孔を形成しており、
挿入孔には、この挿入孔の孔長とほぼ同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材を挿入してあり、挿入孔の一方の孔開口と他方の孔開口には、棒材の長手方向の両端部を挿入孔の孔奥側に向けて押圧する押込具をそれぞれ嵌入してあり、
各押込具の押圧力により棒材が挿入孔内で拡がる方向に変形するとともに、変形した棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に当接し、係合した一方の形材構成部材と他方の形材構成部材とが離れる方向に押圧力を付与するように形成してあることを特徴とする中空押出形材。
【請求項2】
複数の形材を係合して所望の構造体を構成する形材の係合構造であって、
連接する一方の形材には、被係合部を有しており、他方の形材には、被係合部と係合する係合部を有しており、係合した係合部と被係合部との当接部の対峙する箇所には、孔形成溝をそれぞれ設けてあるとともに、各孔形成溝が対面して挿入孔を形成しており、
挿入孔には、この挿入孔の孔長と略同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材を挿入してあり、
挿入孔の一方の孔開口と他方の孔開口には、棒材の長手方向の両端部を挿入孔の孔奥側に押圧する押込具をそれぞれ嵌入してあり、
各押込具の押圧力により棒材が挿入孔内で拡がる方向に変形するとともに、変形した棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に当接し、係合した一方の形材と他方の形材とが離れる方向に押圧力を付与するように形成してあることを特徴とする形材の係合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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