中空部品とその製造方法及び製造装置
【課題】薄肉の板材により成形されていても、強度的にも作業環境的にも問題のない、コスト的にも有利な中空部品と、その製造方法を提供する。
【解決手段】相互間に隙間を有する一対の板材20,21の一方の板材20に対しフロードリル加工を施して第1カラー部C1を形成し、他方の板材21にフロードリル加工を施すとき、第2カラー部C2を形成すると共に、第2カラー部C2の内方側先端部と第1カラー部C1の内方側先端部とを融着させて円筒状連結体Cを形成し、扁平な両板材を補強するようにしたことを特徴とする。
【解決手段】相互間に隙間を有する一対の板材20,21の一方の板材20に対しフロードリル加工を施して第1カラー部C1を形成し、他方の板材21にフロードリル加工を施すとき、第2カラー部C2を形成すると共に、第2カラー部C2の内方側先端部と第1カラー部C1の内方側先端部とを融着させて円筒状連結体Cを形成し、扁平な両板材を補強するようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロードリル加工を用い成形した中空部品と、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両部品は多々あるが、その内、相互に対向する一対の板材を連結しているものとしては、例えば、自動車のブレーキペダル装置に使用されているブレーキペダルがある。最近のブレーキペダルは、軽量化の要請から、中空状をしたものが使用されるようになっており、相互に対向された一対の板材の外周部分を連結することにより成形している。
【0003】
従来から使用されている自動車のブレーキペダル装置は、ダッシュパネルに取り付けられたブラケットと、このブラケットに回動可能に設けられた支持軸に上端部が装着されたブレーキペダルと、このブレーキペダルの上部位を貫通するピンに一端が連結され、他端がマスターバック(不図示)と連結されたロッドと、を有している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
このようなブレーキペダル装置において、ブレーキペダルを踏むと、この踏力がブレーキペダルから、該ブレーキペダルとロッドとの連結部分を介してマスターバックに伝達されるが、この連結部分には、大きな力が作用することになる。したがって、この連結部分は、従来からブレーキペダルに下孔を明け、この下孔にパイプを溶接した後、このパイプにピンを挿通し、ピンにロッドの端部を連結するという構成とし、十分な強度を確保している。このブレーキペダル装置は、製造に当り、ブレーキペダルに下孔加工や、パイプの溶接などの作業を要することになるため、パイプ代や溶接費用が嵩むのみでなく、作業工数的にも、また作業環境的にも好ましくない。
【0005】
したがって、最近のブレーキペダルは、車両部品の軽量化の要請もあることから、予めプレス成形した一対の薄肉の板材を、最中合わせした状態で、外周縁部を折り曲げて成形したものが使用されるようになっている。このようなブレーキペダルは、全体が中空状であるため軽量化でき、外周縁部も溶接せず両板材を連結することができることから、溶接作業を必要とせず、作業環境的にも好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3892653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このブレーキペダルは、薄肉の板材により成形されているので、前述したブレーキペダルとロッドの連結部分における強度が問題となり、また、ここにパイプを溶接すると、軽量化の要請を十分満足させることができないのみでなく、作業環境的にも好ましくないという不具合がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたもので、薄肉の板材により成形されていても強度的に問題がなく、コスト的にも有利で、作業環境的にも問題のない、中空部品とその製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品であって、いずれか一方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部と、いずれか他方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部と、を有し、前記第1カラー部の内方側先端部と前記第2カラー部の内方側先端部とを相互に融着させ、前記第1の板材と第2の板材とを相互に連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品の製造方法は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造方法であって、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対しフロードリル加工を施して第1カラー部を形成し、前記フロードリルを孔部から退去させた後、前記一対の板材のいずれか他方の板材にフロードリル加工を施すことにより第2カラー部を形成し、この第2カラー部の内方側先端部と前記第1カラー部の内方側先端部とを融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品の製造装置は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造装置であって、ボール盤の平坦なテーブルを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した少なくとも一対の主軸と、一方の前記主軸に取り付けられ、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し第1孔明け加工を施し第1カラー部を形成する第1フロードリルと、他方の前記主軸に取り付けられ、前記一対の板材の他方の板材に対し第2孔明け加工を施し第2カラー部を形成する第2フロードリルと、を有し、前記第2カラー部の内方側先端部を前記第1カラー部の内方側先端部に融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、フロードリル加工により形成された一方の板材の第1カラー部の内方側先端部と、他方の板材に同様に形成された第2カラー部の内方側先端部とを相互に融着させて円筒状連結体を形成し、両板材を連結するようにしたため、薄肉の板材からなる軽量な中空部品であっても、円筒状連結体がこれを補強し、強度的に優れたものとなり、また、製作に当ってもこの円筒状連結体がパイプに相当するものとなり、パイプを取り付ける溶接作業も必要としないため、材料コスト的、作業工数的、及び作業環境的にも好ましいものとなる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記中空部品を、前記円筒状連結体に挿通したピン部材の突出端部に、一端がマスターバックと連結されたロッドの他端部を連結してなるブレーキペダルとしたので、薄肉の板材により成形されたブレーキペダルであっても、前記円筒状連結体によりロッドの連結部分における強度が高められ、この連結部分にパイプを溶接する必要もなく、軽量で強度的に優れたブレーキペダルとなる。
【0014】
より具体的にいえば、プレス成形した一対の薄肉の板材を、最中合わせし、外周部分はヘム加工などにより連結した中空状ブレーキペダルのような中空部品において、板材の表面から内方に突出する円筒状連結体により一対の薄肉板材を連結すると、板材全体が高強度を備えることになり、ブレーキペダルに大きな力が作用しても、これに対処できる。特に、ブレーキペダルには、3次元的に屈曲されたものがあるが、このようなブレーキペダルであっても、円筒状連結体で内部連結すれば、ブレーキ操作時に大きな力がブレーキペダルに作用しても、ブレーキペダルの捩じれや変形を防止できる。
【0015】
また、ブレーキペダルにおいて、マスターバックと連結される部分は、ブレーキ操作時に極めて大きな力が作用することになるが、この部分に円筒状連結体を設けると、内部にピンを挿通して、これにマスターバック側から伸延されたロッドと連結でき、最も力の作用する部分を円筒状連結体により補強でき、軽量で高強度のブレーキペダルが得られる。
【0016】
請求項3の発明によれば、相互間に対設された一対の板材に相互に反対方向からフロードリル加工を施すことにより生じた各カラー部の内方側先端部を相互に融着させ、円筒状連結体を形成するようにしたため、簡単に円筒状連結体を形成し、この円筒状連結体により両板材を連結することができる。また、この円筒状連結体により扁平で薄肉の板材であっても、その強度を大幅に向上させることができ、高強度が要求される中空部品に適用すれば、極めて有効なものとなる。
【0017】
請求項4の発明によれば、ボール盤のテーブルを中心として同軸的に対向配置された一対の主軸に第1フロードリルと第2フロードリルを取り付け、一対の板材からなる中空状のワークに対しフロードリル加工を施し、各カラー部の内方側先端部を相互に融着させ、前記両板材連結する円筒状連結体を形成するようにしたので、きわめて容易にフロードリル加工用の設備を構築でき、また、上下からフロードリル加工を施すので、作業性がよく、コスト的にも有利なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】同ブレーキペダル装置の概略正面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図1の4−4線に沿う断面図である。
【図5】図1の5−5線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る製造装置であって、フロードリル加工開始前の状態を示す断面図である。
【図7】フロードリル加工開始後の状態を示す要部断面図である。
【図8】第1孔明け工程完了時の状態を示す要部断面図である。
【図9】フロードリルの後退工程を示す要部断面図である。
【図10】第2孔明け工程の状態を示す要部断面図である。
【図11】曲げ強さと隙間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る車両用部品としては、例えば、ブレーキペダル装置に使用されるブレーキペダルがある。ブレーキペダル装置は、概して、図1に示すように、ダッシュパネル1に取り付けられたブラケット2と、ブラケット2に設けられた支持軸3に回動可能に装着されたブレーキペダル4と、ブレーキペダル4の上部位を貫通するピン5と、このピン5に一端が連結され、他端がマスターバック(不図示)と連結されたロッド6と、を有している。
【0021】
ブレーキペダル4は、軽量化のために薄肉の板材をプレス加工して成形して形成され、図1,2に示すように、3次元的に屈曲されている。このブレーキペダル4は、図3〜5に示すように、予めそれぞれ独立にプレス成形された一対の板材20,21、あるいは一体的に連結された状態でプレス成形された両板材20,21を、いわば最中合わせし、その外周部分をヘム加工などにより折り曲げて連結したもので、内部は中空状となっている中空部品である。
【0022】
例えば、ブレーキペダル4の上端部は、図3に示すように、支持通孔部7が開設された一対の板材20,21を折り曲げ部22を中心に折り曲げ、最中合わせした後、一方の端縁部23をヘム加工し他方の端縁部24を取り囲むようにプレス成形し、支持通孔部7内部に、ブラケット2間に設けられた支持軸3を貫通することにより形成している。なお、両板材20,21の連結は、必ずしもヘム加工などの折り曲げに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0023】
ブレーキペダル4の上部位は、図4に示すように、ロッド6の端部に設けられた連結具11とピン5を介して連結されている。この連結部分は、いわゆるクレビス部分と称され、一対の板材20,21には、ピン5が挿通するクレビス通孔部13が開設されている。
【0024】
特に、本実施形態のブレーキペダル4では、クレビス通孔部13は、板材20の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部C1の内方側先端部と、板材21の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部C2の内方側先端部とを相互に融着させ、板材20と板材21とを相互に連結する円筒状連結体Cが形成されている。なお、このフロードリル加工については、後に詳述する。
【0025】
クレビス通孔部13は、大きな力が作用することになるので、一対の板材20,21を成形する場合に、フロードリル加工により筒状連結体Cを形成すれば、中空部品の表面から内方に向う筒状連結体Cを簡単に形成することができ、この筒状連結体Cを中空ブレーキペダル4の補強体とすれば、軽量で高強度のブレーキペダルを簡単に得ることができる。
【0026】
ブレーキペダル4の下部も、図5に示すように、一対の板材20,21を折り曲げ部22を中心に折り曲げ、最中合わせした後、一方の端縁部23をヘム加工し他方の端縁部24を取り囲むようにプレス加工することにより形成されているが、一対の板材20,21の下端には、最中合わせ時に踏み板14を形成する部分が設けられている。
【0027】
次に、本実施形態に係る中空部品の製造方法及び製造装置を説明する。ブレーキペダル4を製造するには、概して、予めプレス成形された一対の板材20,21を合体連結した中空状のワークWに対しフロードリル加工を施すことにより行う。ここに、フロードリル加工とは、フロードリルDを、高速回転させつつ板材20又は21の面に直交する方向から各板材を加圧することにより板材に孔明けすると共にカラー部Cを形成する加工である。
【0028】
つまり、図6に示すように、一対の板材20,21からなるワークWを、テーブルT上に設置した状態で、フロードリルDを用いて一対の板材20,21の上面側から第1孔明け工程を行い、第1カラー部C1を形成し、次に、同様に下面側からフロードリルDを用いて第2孔明け工程を行い、第2カラー部C2を形成する。特に、本実施形態では、この第2孔明け工程時に、図10に示すように、第1カラー部C1と第2カラー部C2の内方側先端部を相互に融着させ、板材20と板材21とを相互に連結する円筒状連結体Cを形成し、両板材20,21の強度を向上させるようにしている。
【0029】
さらに詳述する。本実施形態に係る製造装置は、図6に示すように、基本的にはボール盤を使用したもので、中空状のワークWが設置される平坦なテーブルTと、テーブルTを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した一対の主軸Sと、上方の主軸S1の下端にチャックなどを介して取り付けられ、ワークWに対し第1孔明け加工を施し第1カラー部C1を形成する第1フロードリルD1と、下方の主軸S2の上端にチャックなどを介して取り付けられ、ワークWに対し第2孔明け加工を施し第2カラー部C2を形成する第2フロードリルD2と、を有している。このようにボール盤を使用して製造装置としているので、特別の専用機とすることがなく、コスト的にもきわめて有利なものとなる。
【0030】
フロードリルDは、図6に示すように、円錐状の尖端部30と、これに続くストレート部31と、ストレート部31より大径のフランジ部32と、ストレート部31と同じ径を有するシャンク部33とからなり、タングステンカーバイトなどの耐熱性材料から構成されている。
【0031】
一方、板材20,21からなるワークWは、両板材20,21を合体連結する前であれば、図6に示すように、相互に平行に対設された両板材20,21間に隙間Gが生じるようにスペーサ34を介在し、支持体35により支持した状態でテーブルT上に水平に設置する。なお、スペーサ34の位置は、フロードリルDによる加圧時に板材20,21が撓まない位置とすることが好ましい。ただし、予め両板材20,21を合体連結している場合は、スペーサ34を介在させる必要はなく、支持体35により支持すればよい。
【0032】
そして、まず、第1孔明け工程を行なう。第1孔明け工程は、第1フロードリルD1を高速回転させつつ下降し、尖端部30により上方の板材20を板材の面に直交する方向から加圧する。加圧当初、先端部分が円弧状に丸み付けされている尖端部30と板材20との間で摩擦熱が発生する。この摩擦熱は、板材20を局部的に軟化させることになるが、この軟化により第1フロードリルD1との接触面積が次第に増大する。また、尖端部30は、外形が円錐状であるため、板材20の軟化により次第に下降することになるが、この下降により板材20と第1フロードリルD1との接触面積がさらに増大し、軟化部分は径方向に広がる。
【0033】
この軟化部分は、ついには図7に示すように、尖端部30により突き破られ、尖端部30に続くストレート部31により押し広げられる。尖端部30は、円錐状をしているが、軸直角断面形状が単純な円形ではなく、例えば、円弧状角部を有する三角形状あるいは四角形状をしているので、高速回転させても板材と熱融着することなく、孔明け加工できる。この結果、第1の孔部O1が開けられると共に、第1フロードリルD1に沿って板材20の上下に突出部R1,R2が形成される。
【0034】
さらに、第1フロードリルD1を下降すると、第1の孔部O1は、図8に示すように、尖端部30に続くストレート部31の軸径dに対応する大きさとなり、上方の突出部R1は、第1フロードリルD1のフランジ部32に加圧され、平坦な第1ボス部B1となり、下方の突出部R2は、ストレート部31の外周面に沿って軸線方向に伸びる第1カラー部C1となる。第1カラー部C1などが形成されると、第1孔明け工程は完了する。
【0035】
このようにフロードリルDを用いて行なう加工は、切粉を出すことなく孔明けできるという利点があるのみでなく、摩擦熱により開設された孔の内周縁部分からカラー部分を突出成形することができるという利点も有している。
【0036】
次に、図9に示すように、一旦、第1フロードリルD1を、開設された第1の孔部O1から後退させ、当初の位置まで戻す。
【0037】
そして、次の第2孔明け工程を開始する。第2孔明け工程は、図10に示すように、下方に配置された第2フロードリルD2を上昇させて、板材21に孔明けするが、基本的には第1孔明け工程と同様である。ただし、第2フロードリルD2の押し付け位置は、第1の孔部O1が形成された位置に対向する位置である。この場合も、板材21の面に直交する方向から高速回転する第2フロードリルD2により板材21を加圧する。この結果、図10に示すように、第1孔明け工程で形成されたものと同様の、第2ボス部B2、第2の孔部O2及び第2カラー部C2が形成される。
【0038】
しかし、第2カラー部C2は、その成長過程において、その内方側先端部が先の第1カラー部C1の内方側先端部に融着する。上下両板材20,21の間隔G及びフロードリルの径を所定の値にしているので、第2カラー部C2は、第1カラー部C1の内方側先端部まで到達する程度の長さとなる。また、その内方側先端部は、軟化状態がさらに進んだ一種の溶融状態となっているので、第1カラー部C1の内方側先端部に接すると、これに融着し、第1カラー部C1と第2カラー部C2が一体化する。この結果、上下両板材20,21は、円筒状連結体Cにより連結されたものとなり、強度が大幅に向上することになる。
【0039】
このように上下に配置したフロードリルD1、D2を用いて孔明け加工を行うと、ワークWを反転させる必要がなく、作業の迅速化を図ることができ、自動化も可能で、量産に適したものとなる。ただし、本発明は、これのみに限定されるものではなく、一対の板材20,21からなるワークWをテーブルT上において、上下反転させて孔明け加工を行ってもよいことはいうまでもない。
【0040】
最後に、第2フロードリルD2を、開設された第2の孔部O1から後退させ、当初の位置まで戻すと、作業は完了する。
【0041】
ここにおいて、円筒状連結体Cにより接合した両板材20,21の曲げ強さFと、両板材20,21の隙間Gとの関係を調べる実験を行った結果、図11に示すようになった。
【0042】
実験は、ドリル径が8mmのフロードリルDを用い、ヘム加工により相互に連結された中空状の板材20,21で、その板厚が1.60mmの鋼板に対し孔開けを行った。両板材20,21間の隙間Gを、2.8mm、4.8mm、6.8mm、8.8mmの4種類とした。隙間Gの大小により曲げ強さFは多少相違したが、隙間Gが、2.8mm、4.8mm、6.8mmの場合は、第1カラー部C1と第2カラー部C2の内方側先端部が全周に亘り融着し、円筒状連結体Cが形成されたが、8.8mmの場合は、両カラー部C1、C2の内方側先端部が全周に亘っては融着しなかった。
【0043】
両板材20,21が円筒状連結体Cにより接合されていると、隙間Gの大小に拘わらず比較的良好な曲げ強さFとなったが、両カラー部C1、C2の内方側先端部が全周に亘って接合しない8.8mmの場合あるいは部分的に接合している状態のものは、曲げ強さFが急激に低下することが判明した。
【0044】
この実験からすれば、特定の板厚の材料であれば、所望する曲げ強さFの大きさに応じて両板材20,21の隙間Gを選定できることになる一方、両板材20,21の隙間Gを選定すれば、両板材20,21を所定の曲げ強さFを有するものを成形できることになり、中空部品の製造に当っての利便性が大いに高まることになる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態は、乗用車のブレーキペダルについて説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、サイドブレーキペダル、各種中空メンバーあるいはフレームなど、種々の中空部品に同様に実施可能である。また、上述した実施形態は、同じ板厚である一対の板材にフロードリル加工を施すものであるが、板厚が相違する板材あるいは多数対向設置された板材を用いることもできる。さらに、上述した実施形態は、クレビス通孔部13に円筒状連結体Cを形成したものであるが、場合によっては、ブレーキペダル4の上端部の支持通孔部7に円筒状連結体Cを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、強度のある中空部品の製造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
10,11…板材、
C…円筒状連結体、
C1…第1カラー部、
C2…第2カラー部、
D‥フロードリル、
D1‥第1フロードリル、
D2‥第2フロードリル、
G‥隙間、
O…孔部、
S1‥第1主軸、
S2‥第2主軸、
T‥テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロードリル加工を用い成形した中空部品と、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両部品は多々あるが、その内、相互に対向する一対の板材を連結しているものとしては、例えば、自動車のブレーキペダル装置に使用されているブレーキペダルがある。最近のブレーキペダルは、軽量化の要請から、中空状をしたものが使用されるようになっており、相互に対向された一対の板材の外周部分を連結することにより成形している。
【0003】
従来から使用されている自動車のブレーキペダル装置は、ダッシュパネルに取り付けられたブラケットと、このブラケットに回動可能に設けられた支持軸に上端部が装着されたブレーキペダルと、このブレーキペダルの上部位を貫通するピンに一端が連結され、他端がマスターバック(不図示)と連結されたロッドと、を有している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
このようなブレーキペダル装置において、ブレーキペダルを踏むと、この踏力がブレーキペダルから、該ブレーキペダルとロッドとの連結部分を介してマスターバックに伝達されるが、この連結部分には、大きな力が作用することになる。したがって、この連結部分は、従来からブレーキペダルに下孔を明け、この下孔にパイプを溶接した後、このパイプにピンを挿通し、ピンにロッドの端部を連結するという構成とし、十分な強度を確保している。このブレーキペダル装置は、製造に当り、ブレーキペダルに下孔加工や、パイプの溶接などの作業を要することになるため、パイプ代や溶接費用が嵩むのみでなく、作業工数的にも、また作業環境的にも好ましくない。
【0005】
したがって、最近のブレーキペダルは、車両部品の軽量化の要請もあることから、予めプレス成形した一対の薄肉の板材を、最中合わせした状態で、外周縁部を折り曲げて成形したものが使用されるようになっている。このようなブレーキペダルは、全体が中空状であるため軽量化でき、外周縁部も溶接せず両板材を連結することができることから、溶接作業を必要とせず、作業環境的にも好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3892653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このブレーキペダルは、薄肉の板材により成形されているので、前述したブレーキペダルとロッドの連結部分における強度が問題となり、また、ここにパイプを溶接すると、軽量化の要請を十分満足させることができないのみでなく、作業環境的にも好ましくないという不具合がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたもので、薄肉の板材により成形されていても強度的に問題がなく、コスト的にも有利で、作業環境的にも問題のない、中空部品とその製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品であって、いずれか一方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部と、いずれか他方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部と、を有し、前記第1カラー部の内方側先端部と前記第2カラー部の内方側先端部とを相互に融着させ、前記第1の板材と第2の板材とを相互に連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品の製造方法は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造方法であって、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対しフロードリル加工を施して第1カラー部を形成し、前記フロードリルを孔部から退去させた後、前記一対の板材のいずれか他方の板材にフロードリル加工を施すことにより第2カラー部を形成し、この第2カラー部の内方側先端部と前記第1カラー部の内方側先端部とを融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る中空部品の製造装置は、予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造装置であって、ボール盤の平坦なテーブルを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した少なくとも一対の主軸と、一方の前記主軸に取り付けられ、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し第1孔明け加工を施し第1カラー部を形成する第1フロードリルと、他方の前記主軸に取り付けられ、前記一対の板材の他方の板材に対し第2孔明け加工を施し第2カラー部を形成する第2フロードリルと、を有し、前記第2カラー部の内方側先端部を前記第1カラー部の内方側先端部に融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、フロードリル加工により形成された一方の板材の第1カラー部の内方側先端部と、他方の板材に同様に形成された第2カラー部の内方側先端部とを相互に融着させて円筒状連結体を形成し、両板材を連結するようにしたため、薄肉の板材からなる軽量な中空部品であっても、円筒状連結体がこれを補強し、強度的に優れたものとなり、また、製作に当ってもこの円筒状連結体がパイプに相当するものとなり、パイプを取り付ける溶接作業も必要としないため、材料コスト的、作業工数的、及び作業環境的にも好ましいものとなる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記中空部品を、前記円筒状連結体に挿通したピン部材の突出端部に、一端がマスターバックと連結されたロッドの他端部を連結してなるブレーキペダルとしたので、薄肉の板材により成形されたブレーキペダルであっても、前記円筒状連結体によりロッドの連結部分における強度が高められ、この連結部分にパイプを溶接する必要もなく、軽量で強度的に優れたブレーキペダルとなる。
【0014】
より具体的にいえば、プレス成形した一対の薄肉の板材を、最中合わせし、外周部分はヘム加工などにより連結した中空状ブレーキペダルのような中空部品において、板材の表面から内方に突出する円筒状連結体により一対の薄肉板材を連結すると、板材全体が高強度を備えることになり、ブレーキペダルに大きな力が作用しても、これに対処できる。特に、ブレーキペダルには、3次元的に屈曲されたものがあるが、このようなブレーキペダルであっても、円筒状連結体で内部連結すれば、ブレーキ操作時に大きな力がブレーキペダルに作用しても、ブレーキペダルの捩じれや変形を防止できる。
【0015】
また、ブレーキペダルにおいて、マスターバックと連結される部分は、ブレーキ操作時に極めて大きな力が作用することになるが、この部分に円筒状連結体を設けると、内部にピンを挿通して、これにマスターバック側から伸延されたロッドと連結でき、最も力の作用する部分を円筒状連結体により補強でき、軽量で高強度のブレーキペダルが得られる。
【0016】
請求項3の発明によれば、相互間に対設された一対の板材に相互に反対方向からフロードリル加工を施すことにより生じた各カラー部の内方側先端部を相互に融着させ、円筒状連結体を形成するようにしたため、簡単に円筒状連結体を形成し、この円筒状連結体により両板材を連結することができる。また、この円筒状連結体により扁平で薄肉の板材であっても、その強度を大幅に向上させることができ、高強度が要求される中空部品に適用すれば、極めて有効なものとなる。
【0017】
請求項4の発明によれば、ボール盤のテーブルを中心として同軸的に対向配置された一対の主軸に第1フロードリルと第2フロードリルを取り付け、一対の板材からなる中空状のワークに対しフロードリル加工を施し、各カラー部の内方側先端部を相互に融着させ、前記両板材連結する円筒状連結体を形成するようにしたので、きわめて容易にフロードリル加工用の設備を構築でき、また、上下からフロードリル加工を施すので、作業性がよく、コスト的にも有利なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】は本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】同ブレーキペダル装置の概略正面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図1の4−4線に沿う断面図である。
【図5】図1の5−5線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る製造装置であって、フロードリル加工開始前の状態を示す断面図である。
【図7】フロードリル加工開始後の状態を示す要部断面図である。
【図8】第1孔明け工程完了時の状態を示す要部断面図である。
【図9】フロードリルの後退工程を示す要部断面図である。
【図10】第2孔明け工程の状態を示す要部断面図である。
【図11】曲げ強さと隙間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る車両用部品としては、例えば、ブレーキペダル装置に使用されるブレーキペダルがある。ブレーキペダル装置は、概して、図1に示すように、ダッシュパネル1に取り付けられたブラケット2と、ブラケット2に設けられた支持軸3に回動可能に装着されたブレーキペダル4と、ブレーキペダル4の上部位を貫通するピン5と、このピン5に一端が連結され、他端がマスターバック(不図示)と連結されたロッド6と、を有している。
【0021】
ブレーキペダル4は、軽量化のために薄肉の板材をプレス加工して成形して形成され、図1,2に示すように、3次元的に屈曲されている。このブレーキペダル4は、図3〜5に示すように、予めそれぞれ独立にプレス成形された一対の板材20,21、あるいは一体的に連結された状態でプレス成形された両板材20,21を、いわば最中合わせし、その外周部分をヘム加工などにより折り曲げて連結したもので、内部は中空状となっている中空部品である。
【0022】
例えば、ブレーキペダル4の上端部は、図3に示すように、支持通孔部7が開設された一対の板材20,21を折り曲げ部22を中心に折り曲げ、最中合わせした後、一方の端縁部23をヘム加工し他方の端縁部24を取り囲むようにプレス成形し、支持通孔部7内部に、ブラケット2間に設けられた支持軸3を貫通することにより形成している。なお、両板材20,21の連結は、必ずしもヘム加工などの折り曲げに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0023】
ブレーキペダル4の上部位は、図4に示すように、ロッド6の端部に設けられた連結具11とピン5を介して連結されている。この連結部分は、いわゆるクレビス部分と称され、一対の板材20,21には、ピン5が挿通するクレビス通孔部13が開設されている。
【0024】
特に、本実施形態のブレーキペダル4では、クレビス通孔部13は、板材20の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部C1の内方側先端部と、板材21の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部C2の内方側先端部とを相互に融着させ、板材20と板材21とを相互に連結する円筒状連結体Cが形成されている。なお、このフロードリル加工については、後に詳述する。
【0025】
クレビス通孔部13は、大きな力が作用することになるので、一対の板材20,21を成形する場合に、フロードリル加工により筒状連結体Cを形成すれば、中空部品の表面から内方に向う筒状連結体Cを簡単に形成することができ、この筒状連結体Cを中空ブレーキペダル4の補強体とすれば、軽量で高強度のブレーキペダルを簡単に得ることができる。
【0026】
ブレーキペダル4の下部も、図5に示すように、一対の板材20,21を折り曲げ部22を中心に折り曲げ、最中合わせした後、一方の端縁部23をヘム加工し他方の端縁部24を取り囲むようにプレス加工することにより形成されているが、一対の板材20,21の下端には、最中合わせ時に踏み板14を形成する部分が設けられている。
【0027】
次に、本実施形態に係る中空部品の製造方法及び製造装置を説明する。ブレーキペダル4を製造するには、概して、予めプレス成形された一対の板材20,21を合体連結した中空状のワークWに対しフロードリル加工を施すことにより行う。ここに、フロードリル加工とは、フロードリルDを、高速回転させつつ板材20又は21の面に直交する方向から各板材を加圧することにより板材に孔明けすると共にカラー部Cを形成する加工である。
【0028】
つまり、図6に示すように、一対の板材20,21からなるワークWを、テーブルT上に設置した状態で、フロードリルDを用いて一対の板材20,21の上面側から第1孔明け工程を行い、第1カラー部C1を形成し、次に、同様に下面側からフロードリルDを用いて第2孔明け工程を行い、第2カラー部C2を形成する。特に、本実施形態では、この第2孔明け工程時に、図10に示すように、第1カラー部C1と第2カラー部C2の内方側先端部を相互に融着させ、板材20と板材21とを相互に連結する円筒状連結体Cを形成し、両板材20,21の強度を向上させるようにしている。
【0029】
さらに詳述する。本実施形態に係る製造装置は、図6に示すように、基本的にはボール盤を使用したもので、中空状のワークWが設置される平坦なテーブルTと、テーブルTを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した一対の主軸Sと、上方の主軸S1の下端にチャックなどを介して取り付けられ、ワークWに対し第1孔明け加工を施し第1カラー部C1を形成する第1フロードリルD1と、下方の主軸S2の上端にチャックなどを介して取り付けられ、ワークWに対し第2孔明け加工を施し第2カラー部C2を形成する第2フロードリルD2と、を有している。このようにボール盤を使用して製造装置としているので、特別の専用機とすることがなく、コスト的にもきわめて有利なものとなる。
【0030】
フロードリルDは、図6に示すように、円錐状の尖端部30と、これに続くストレート部31と、ストレート部31より大径のフランジ部32と、ストレート部31と同じ径を有するシャンク部33とからなり、タングステンカーバイトなどの耐熱性材料から構成されている。
【0031】
一方、板材20,21からなるワークWは、両板材20,21を合体連結する前であれば、図6に示すように、相互に平行に対設された両板材20,21間に隙間Gが生じるようにスペーサ34を介在し、支持体35により支持した状態でテーブルT上に水平に設置する。なお、スペーサ34の位置は、フロードリルDによる加圧時に板材20,21が撓まない位置とすることが好ましい。ただし、予め両板材20,21を合体連結している場合は、スペーサ34を介在させる必要はなく、支持体35により支持すればよい。
【0032】
そして、まず、第1孔明け工程を行なう。第1孔明け工程は、第1フロードリルD1を高速回転させつつ下降し、尖端部30により上方の板材20を板材の面に直交する方向から加圧する。加圧当初、先端部分が円弧状に丸み付けされている尖端部30と板材20との間で摩擦熱が発生する。この摩擦熱は、板材20を局部的に軟化させることになるが、この軟化により第1フロードリルD1との接触面積が次第に増大する。また、尖端部30は、外形が円錐状であるため、板材20の軟化により次第に下降することになるが、この下降により板材20と第1フロードリルD1との接触面積がさらに増大し、軟化部分は径方向に広がる。
【0033】
この軟化部分は、ついには図7に示すように、尖端部30により突き破られ、尖端部30に続くストレート部31により押し広げられる。尖端部30は、円錐状をしているが、軸直角断面形状が単純な円形ではなく、例えば、円弧状角部を有する三角形状あるいは四角形状をしているので、高速回転させても板材と熱融着することなく、孔明け加工できる。この結果、第1の孔部O1が開けられると共に、第1フロードリルD1に沿って板材20の上下に突出部R1,R2が形成される。
【0034】
さらに、第1フロードリルD1を下降すると、第1の孔部O1は、図8に示すように、尖端部30に続くストレート部31の軸径dに対応する大きさとなり、上方の突出部R1は、第1フロードリルD1のフランジ部32に加圧され、平坦な第1ボス部B1となり、下方の突出部R2は、ストレート部31の外周面に沿って軸線方向に伸びる第1カラー部C1となる。第1カラー部C1などが形成されると、第1孔明け工程は完了する。
【0035】
このようにフロードリルDを用いて行なう加工は、切粉を出すことなく孔明けできるという利点があるのみでなく、摩擦熱により開設された孔の内周縁部分からカラー部分を突出成形することができるという利点も有している。
【0036】
次に、図9に示すように、一旦、第1フロードリルD1を、開設された第1の孔部O1から後退させ、当初の位置まで戻す。
【0037】
そして、次の第2孔明け工程を開始する。第2孔明け工程は、図10に示すように、下方に配置された第2フロードリルD2を上昇させて、板材21に孔明けするが、基本的には第1孔明け工程と同様である。ただし、第2フロードリルD2の押し付け位置は、第1の孔部O1が形成された位置に対向する位置である。この場合も、板材21の面に直交する方向から高速回転する第2フロードリルD2により板材21を加圧する。この結果、図10に示すように、第1孔明け工程で形成されたものと同様の、第2ボス部B2、第2の孔部O2及び第2カラー部C2が形成される。
【0038】
しかし、第2カラー部C2は、その成長過程において、その内方側先端部が先の第1カラー部C1の内方側先端部に融着する。上下両板材20,21の間隔G及びフロードリルの径を所定の値にしているので、第2カラー部C2は、第1カラー部C1の内方側先端部まで到達する程度の長さとなる。また、その内方側先端部は、軟化状態がさらに進んだ一種の溶融状態となっているので、第1カラー部C1の内方側先端部に接すると、これに融着し、第1カラー部C1と第2カラー部C2が一体化する。この結果、上下両板材20,21は、円筒状連結体Cにより連結されたものとなり、強度が大幅に向上することになる。
【0039】
このように上下に配置したフロードリルD1、D2を用いて孔明け加工を行うと、ワークWを反転させる必要がなく、作業の迅速化を図ることができ、自動化も可能で、量産に適したものとなる。ただし、本発明は、これのみに限定されるものではなく、一対の板材20,21からなるワークWをテーブルT上において、上下反転させて孔明け加工を行ってもよいことはいうまでもない。
【0040】
最後に、第2フロードリルD2を、開設された第2の孔部O1から後退させ、当初の位置まで戻すと、作業は完了する。
【0041】
ここにおいて、円筒状連結体Cにより接合した両板材20,21の曲げ強さFと、両板材20,21の隙間Gとの関係を調べる実験を行った結果、図11に示すようになった。
【0042】
実験は、ドリル径が8mmのフロードリルDを用い、ヘム加工により相互に連結された中空状の板材20,21で、その板厚が1.60mmの鋼板に対し孔開けを行った。両板材20,21間の隙間Gを、2.8mm、4.8mm、6.8mm、8.8mmの4種類とした。隙間Gの大小により曲げ強さFは多少相違したが、隙間Gが、2.8mm、4.8mm、6.8mmの場合は、第1カラー部C1と第2カラー部C2の内方側先端部が全周に亘り融着し、円筒状連結体Cが形成されたが、8.8mmの場合は、両カラー部C1、C2の内方側先端部が全周に亘っては融着しなかった。
【0043】
両板材20,21が円筒状連結体Cにより接合されていると、隙間Gの大小に拘わらず比較的良好な曲げ強さFとなったが、両カラー部C1、C2の内方側先端部が全周に亘って接合しない8.8mmの場合あるいは部分的に接合している状態のものは、曲げ強さFが急激に低下することが判明した。
【0044】
この実験からすれば、特定の板厚の材料であれば、所望する曲げ強さFの大きさに応じて両板材20,21の隙間Gを選定できることになる一方、両板材20,21の隙間Gを選定すれば、両板材20,21を所定の曲げ強さFを有するものを成形できることになり、中空部品の製造に当っての利便性が大いに高まることになる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態は、乗用車のブレーキペダルについて説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、サイドブレーキペダル、各種中空メンバーあるいはフレームなど、種々の中空部品に同様に実施可能である。また、上述した実施形態は、同じ板厚である一対の板材にフロードリル加工を施すものであるが、板厚が相違する板材あるいは多数対向設置された板材を用いることもできる。さらに、上述した実施形態は、クレビス通孔部13に円筒状連結体Cを形成したものであるが、場合によっては、ブレーキペダル4の上端部の支持通孔部7に円筒状連結体Cを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、強度のある中空部品の製造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
10,11…板材、
C…円筒状連結体、
C1…第1カラー部、
C2…第2カラー部、
D‥フロードリル、
D1‥第1フロードリル、
D2‥第2フロードリル、
G‥隙間、
O…孔部、
S1‥第1主軸、
S2‥第2主軸、
T‥テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品であって、
いずれか一方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部と、いずれか他方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部と、を有し、前記第1カラー部の内方側先端部と前記第2カラー部の内方側先端部とを融着させ、前記第1の板材と第2の板材とを相互に連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする中空部品。
【請求項2】
前記中空部品は、前記円筒状連結体に挿通したピン部材の突出端部に、一端がマスターバックと連結されたロッドの他端部を連結してなるブレーキペダルである請求項1に記載の中空部品。
【請求項3】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造方法であって、
相互間に隙間を介在させて対設された前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し、当該板材の面に直交する方向から内方に向けてフロードリルを前記板材に加圧した状態で回転させて孔明けしつつ、当該孔部の内周面に第1カラー部を形成する第1孔明け工程と、
前記フロードリルを後退させ、開設された孔部から退去させる工程と、
前記一対の板材のいずれか他方の板材の前記孔部に対向する位置に、前記他方の板材の面に直交する方向から内方に向けてフロードリルを前記板材に加圧した状態で回転させて孔明けしつつ、当該孔部の内周面に第2カラー部を形成すると共に、当該第2カラー部の内方側先端部と前記第1カラー部の内方側先端部とを相互に融着させ円筒状連結体を形成する第2孔明け工程と、
からなる中空部品の製造方法。
【請求項4】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造装置であって、
ボール盤の平坦なテーブルを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した少なくとも一対の主軸と、
一方の前記主軸に取り付けられ、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し第1孔明け加工を施し第1カラー部を形成する第1フロードリルと、
他方の前記主軸に取り付けられ、前記一対の板材の他方の板材に対し第2孔明け加工を施し第2カラー部を形成する第2フロードリルと、
を有し、
前記第2カラー部の内方側先端部を前記第1カラー部の内方側先端部に融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成するようにしたことを特徴とする中空部品の製造装置。
【請求項1】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品であって、
いずれか一方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第1カラー部と、いずれか他方の前記板材の外面から内方に向かってフロードリル加工を施すことにより形成された第2カラー部と、を有し、前記第1カラー部の内方側先端部と前記第2カラー部の内方側先端部とを融着させ、前記第1の板材と第2の板材とを相互に連結する円筒状連結体を形成したことを特徴とする中空部品。
【請求項2】
前記中空部品は、前記円筒状連結体に挿通したピン部材の突出端部に、一端がマスターバックと連結されたロッドの他端部を連結してなるブレーキペダルである請求項1に記載の中空部品。
【請求項3】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造方法であって、
相互間に隙間を介在させて対設された前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し、当該板材の面に直交する方向から内方に向けてフロードリルを前記板材に加圧した状態で回転させて孔明けしつつ、当該孔部の内周面に第1カラー部を形成する第1孔明け工程と、
前記フロードリルを後退させ、開設された孔部から退去させる工程と、
前記一対の板材のいずれか他方の板材の前記孔部に対向する位置に、前記他方の板材の面に直交する方向から内方に向けてフロードリルを前記板材に加圧した状態で回転させて孔明けしつつ、当該孔部の内周面に第2カラー部を形成すると共に、当該第2カラー部の内方側先端部と前記第1カラー部の内方側先端部とを相互に融着させ円筒状連結体を形成する第2孔明け工程と、
からなる中空部品の製造方法。
【請求項4】
予め成形された一対の板材を合体させると共に相互に連結し中空状となるように成形した中空部品の製造装置であって、
ボール盤の平坦なテーブルを中心として対向する位置にそれぞれ同軸的に配置した少なくとも一対の主軸と、
一方の前記主軸に取り付けられ、相互間に隙間を有する前記一対の板材のいずれか一方の板材に対し第1孔明け加工を施し第1カラー部を形成する第1フロードリルと、
他方の前記主軸に取り付けられ、前記一対の板材の他方の板材に対し第2孔明け加工を施し第2カラー部を形成する第2フロードリルと、
を有し、
前記第2カラー部の内方側先端部を前記第1カラー部の内方側先端部に融着させ、前記両板材相互を連結する円筒状連結体を形成するようにしたことを特徴とする中空部品の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−187626(P2012−187626A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55478(P2011−55478)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000253455)株式会社ヨロズ (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000253455)株式会社ヨロズ (22)
【Fターム(参考)】
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