主成分分析方法、主成分分析装置、異種品検出装置、主成分分析プログラム、及び、主成分分析プログラムが記録された記録媒体
【課題】主成分分析における手順を自動化して、分析作業をさらに短縮するとともに、分析の品質のバラツキの発生を抑え、厳密な分析・識別を可能とする。
【解決手段】複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、選択された波長を用いて主成分分析する。前記分離度は以下の距離D(λ)とする。距離D(λ)=Max((MinX0(λ)−MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)−MinX0(λ))/σ0(λ)ただし、MinX0(λ):読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。MaxX1(λ):読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。σ0(λ):着目品目の波長域λでの標準偏差。Max(A,B):AとBの大きい方の値を選択する。
【解決手段】複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、選択された波長を用いて主成分分析する。前記分離度は以下の距離D(λ)とする。距離D(λ)=Max((MinX0(λ)−MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)−MinX0(λ))/σ0(λ)ただし、MinX0(λ):読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。MaxX1(λ):読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。σ0(λ):着目品目の波長域λでの標準偏差。Max(A,B):AとBの大きい方の値を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に際して利用できる主成分分析方法に関し、特には、前記主成分分析方法の実施に際して、前記複数の波長から適した波長を選択する技術に関するものである。
さらには、前記主成分分析手法を利用して、医薬品(錠剤、カプセル剤等)、ゴム栓等のように、ある一つの固定した形を持つ検査対象物(以下、「対象物」という。)に、同じ形の異種品が混入していないかどうかを検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主成分分析方法を用いた異種品検出装置としては、特許文献1に記載された発明などが提案されている。
この異種品検出装置は、搬送される対象物を平面分光器を用いて高い分解能で異種品の検出を可能とすることを目的とした発明であり、順次搬送される複数の対象物に近赤外線を照射して、前記対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光して、反射光のスペクトルデータを得て、主成分分析手法を用いて前記複数の対象物の中から異種品を検出するものである。
前記異種品検出装置に用いた主成分分析手法においては、スペクトルデータの所定の波長帯のデータだけを選択して主成分分析するように構成されている。
【0003】
前記異種品検出装置によれば、平面分光器を用いるとともに、主成分分析手法において特徴のあるアルゴリズムでデータの補間・平滑化等の処理を行うことにより高い分解能が得られ、広範囲にわたる複数点の成分分析をインラインで安定して行うことが可能となった。
このように、搬送される全品のインライン成分モニタリングが可能となり、異種品の混入していない安定した品質の製品を出荷することが可能となったのである。
さらに、前記異種品検出装置によれば、スペクトルデータの所定の波長帯のデータだけを選択して主成分分析を行うことにより、従来より精度の高い異種品検出が可能となったのである。
同様に、波長を選択して主成分分析に用いる方法として、青果物の品質検査において、近赤外線等を青果の中央と下部にあてて吸光度の差をとり、これを主成分分析して熟成を判断する場合において、使用される投射光の一定波長範囲のうちの2波長における吸光度の差を用いることにより、青果物の大小に関わらず正常果と異常果をより正確に判別することを可能した発明(特許文献2)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/038443号パンフレット
【特許文献2】特許第3481108号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記異種品検出装置によれば、主成分分析(Principal Component Analysis.以下においてはPCAと表記する。)におけるPCA図の作成や、計算対象とする波長を種々変更したり、微分回数などの条件を変更して試行錯誤する手順に、自動化できない部分があるので、分析作業を短縮できないという問題があった。また、分析者の違いなどによって判断がバラついてしまうと分析作業の効率や品質にバラツキが発生するという問題があったので、自動的に適した波長を選択できるアルゴリズムの提供が待たれている。
また、特許文献2においては、複数の波長における差吸光度を用いても、正常果と異常果の分布が重なって分離しない領域がある旨が記載されている。これは、前記複数の波長は、単に複数としただけであって、正常果と異常果の分布がよく分離されるような波長を意図して選択したものではないからである。このように、複数の波長を用いたとしても、波長を意図して選択していないものや、範囲の上端と下端の波長のみを削除したものでは、十分な識別力が得られなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決して、主成分分析における手順をさらに自動化して、分析作業をさらに短縮するとともに、分析者の違いなどによる品質のバラツキの発生を抑え、厳密な分析・識別を可能とする技術を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を講じた。
請求項1に係る主成分分析方法の発明は、
複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、
各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴としている。
請求項2の発明は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析方法であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力して前記データ記憶手段に記憶させ、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求めさせ、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けさせ、
分離度が所定の順位以上の波長を選択させ、
選択された波長を用いて主成分分析させるように構成した。
請求項3の発明では、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項4の発明は、
被検体の識別に用いる主成分分析方法において、
被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析する。
請求項5の発明は、
異種品検査に用いる主成分分析方法において、
異種品を含んだ被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析する。
請求項6に係る主成分分析装置は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析装置であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力させて前記データ記憶手段に記憶させる処理手段と、
前記データ処理手段を用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求める分離度演算手段と、
前記分離度演算手段で求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けする順位付け手段と、
分離度が所定の順位以上の波長を選択する選択手段と、
選択された波長を用いて主成分分析する分析手段と、
を備えている。
請求項7では、
前記分離度演算手段は、以下に示される距離D(λ)を分離度として演算する。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項8では、
前記スペクトルデータとして、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いる。
請求項9では、
前記データ処理手段は、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理する。
請求項10の異種品検出装置は、
複数の対象物を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される前記複数の対象物に近赤外線を照射する照射手段と、
該照射手段によって近赤外線が照射される前記複数の対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光する平面分光器と、
該平面分光器にて平面分光された反射光を近赤外線カメラで電気信号に変換する撮像手段と、
該撮像手段にて得られる前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得て、コンピュータを用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けし、分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択し、選択された波長を用いて主成分分析を行って前記複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段と、
を備えている。
請求項11のプログラムは、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成したプログラムであって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいる。
請求項12のプログラムは、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項13の記録媒体は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成されたプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいるプログラムが記録されている。
請求項14の記録媒体は、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る主成分分析方法によれば、各波長における2以上の変数の分離度を求めて、求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、選択された波長を用いて主成分分析するので、精度の高い分析を行うことができる。
請求項2に係る主成分分析方法によれば、コンピュータを用いて、主成分分析方法における波長の選択を自動化することによって、主成分分析を安定して短時間で行うことができ、被検体の識別や、異種品検査に用いる主成分分析方法をバラツキの少ない安定したものとすることができる。
請求項3に係る主成分分析方法によれば、分離度として距離D(λ)を用いるので、波長の選択を自動化することができる。したがって、分析を行う者の違いによる波長選択のバラツキを防ぐことができるので、安定した分析が可能となる。
請求項4に係る主成分分析方法によれば、被検体を撮像して得たスペクトルデータの各波長から、分離度の良い順に2以上の波長を選択するので、高い識別力で分析することができる。
請求項5に係る主成分分析方法によれば、異頻出を含む被検体を撮像して得たスペクトルデータの各波長から、分離度の良い順に2以上の波長を選択するので、高い識別力で異品種を分析することができる。
請求項6及び7に係る主成分分析装置によれば、コンピュータを用いて、主成分分析方法をバラツキの少ない安定したものとすることができる。
請求項8に係る主成分分析装置によれば、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いることにより、外乱の影響の少ない分析が可能となる。
請求項9に係る主成分分析装置によれば、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理することによって、より精度の高い分析が可能となる。
請求項10に係る異種品検出装置では、対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光器を用いてスペクトルに分解して電気信号に変換するので、安定した異種品検出が短時間で可能となる。
請求項11及び12に係る主成分分析プログラムは、コンピュータにインストールすることによって、バラツキの少ない安定した主成分分析方法を実施できる。
請求項13及び14に係る記録媒体は、コンピュータに読み取らせることによってインストールして、バラツキの少ない安定した主成分分析方法を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明にかかる異種品検出装置の実施形態の構成図である。
図中、1は前記平面分光器を用いた異種品検出装置であり、平面分光器2、撮像手段としての近赤外線カメラ3、照射手段としてのライトガイド4、解析手段としてのコンピュータ5、及び搬送手段11から構成されている。
11は後述する吸着ドラム式の搬送手段であり、図示しないホッパから供給される例えば錠剤等の対象物Tを吸着ドラム12の表面に吸着して、例えば7列で搬送するように構成されている。
図2は、本発明にかかる異種品検出装置の実施形態の要部の平面構成図である。
図2の正面図に示したように、前記吸着ドラム12の表面においては、搬送方向に直角な方向に複数の前記対象物Tが配列された状態で多列搬送されるように構成されている。
【0010】
前記ライトガイド4は前記対象物Tの列に対してできるだけ均等に近赤外線を照射するように構成されている。即ち、前記ライトガイド4は前記対象物Tの列を挟むように一対の近赤外線光源から構成され、各対象物Tにできるだけ陰が生じないように、また、均等に照射されるように配置されている。このライトガイド4の位置は調節可能に配置されている。
前記近赤外線光源としては、例えばハロゲンランプと、近赤外線フィルターと、光ファイバー束等の導光手段とで構成することができる。
そして、前記近赤外線カメラ3は、波長900〜1700 nmの近赤外線領域に対して十分な感度を有したものとする。
なお、6は光量補正板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置に、前記ライトガイド4と同様に固定されている。
前記平面分光器2は、前記対象物Tより反射した近赤外線の反射光が効率よく入射するように配設されている。即ち、近赤外線が照射される対象物Tと前記吸着ドラム11の断面の中心とを結ぶ半径の延長線状に、その光軸を前記対象物Tに向けて配設されている。前記平面分光器2の光軸は調節可能に配置されている。
【0011】
図3は、本発明にかかる異種品検出装置を用いてスペクトルデータを得る様子を示した模式図である。
前記平面分光器2には、前記各対象物Tからの反射光が入射され、搬送方向(副走査方向:矢印Y方向)の幅は微少であって、前記吸着ドラム11の搬送幅方向(主走査方向:矢印X方向)に長く、断面がライン状の光束A(図3参照)を得て、この光束Aを平面分光することによって、例えば、横軸が搬送幅方向の位置、縦軸が波長に対応した平面状の分光スペクトルB(図3参照)が得られる。この平面状の分光スペクトルBの1辺近傍には前記光量補正板6から得られた基準となるスペクトルデータも含まれている。
前記コンピュータ5は、図1に示したように、前記スペクトルデータを取り込むためのデータ入力手段51と、取り込んだスペクトルデータを記憶するとともに、処理に必要なプログラムやデータが記憶されているデータ記憶手段52と、処理内容や処理結果等を表示する表示手段53とを備えている。その他、キーボードやマウスなどの操作情報を入力する手段も備えている。
【0012】
図4は、前記吸着ドラム式の搬送手段に代えて、コンベア式の搬送手段を用いた場合の構成を示した図である。図4において、図1と同じ構成に関しては、同じ符号を付してその説明を省略した。
13はコンベア式の搬送手段であり、例えば、対象物収納部が形成された樹脂シート(PTPシート)の前記対象物収納部に収納されて多列搬送される錠剤等の対象物Tを、送り出しロールから受け取りロールへ搬送するように構成されている。
図5は、本発明にかかる異種品検出装置の要部の平面構成図である。
図5の正面図に示したように、前記PTPシートによって、搬送方向に直角な方向に複数の前記対象物Tが配列された状態で多列搬送されるように構成されている。
【0013】
なお、6は光量補正板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置であって、且つ、前記近赤外線カメラ3の視野内に、前記ライトガイド4と同様に固定されている。
7は、バタツキ防止板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置に、前記ライトガイド4や光量補正板6等と同様に固定されている。このバタツキ防止板7には、対象物Tの撮像を妨げないように透孔71が形成されている。従って、PTPシートで搬送される対象物Tであっても前記透孔71を通して撮像することができる。
前記平面分光器2では、上記同様に、例えば、横軸が搬送幅方向の位置、縦軸が波長に対応した平面状の分光スペクトルB(図3参照)が得られる。
なお、対象物からの近赤外線の反射光はPTPシートのフィルムを透過するので、PTPシートのフィルムの上からであっても異品種の有無を測定することができる。
【0014】
以上のような吸着ドラム式もしくはコンベア式の搬送手段によって対象物は多列搬送されるように構成されている。
そして、前記平面分光器2にて得られた平面状のスペクトルデータは、近赤外線カメラ3の撮像面上に結像し、例えばCCD素子等の撮像素子によって電気信号に変換され、さらにデジタル信号に変換されて、前記コンピュータ5に送信される。
なお、前記搬送手段によって搬送される対象物が所定の位置に到達したタイミングで得られるトリガー信号に同期して画像を取り込み、前記コンピュータ5に送信するように構成することができる。
前記コンピュータ5では、送信されたスペクトルデータを、新たに開発した後述する主成分分析プログラムにより処理し、対象物Tを良品と異種品とに識別する。
後述する主成分分析プログラムは、スペクトル解析に有効なケモメトリックスの一つである主成分分析を自動的に行うプログラムを含んだものである。
【0015】
以上の構成の異種品検出装置における処理は以下の段階に分けることができる。
第1段階:前述したように前記平面分光器2と前記近赤外線カメラ3を用いて画像データを得る。
前記平面分光器2にて得られた平面状のスペクトルデータは、近赤外線カメラ3
で撮像されてデジタル信号としてコンピュータ5に送信される。
コンピュータ5においては、まず、データ入力回路もしくは記録媒体読み取り装 置などのデータ入力手段51を介して取り込まれ、ハードディスクなどのデータ
記憶手段52のファイル記憶領域に記憶される。
第2段階:前記第1段階で得られた画像データをスペクトルデータに変換して、
生データファイル(以下、単に「RAWファイル」と言う。)として出力する。
第3段階:前記スペクトルデータを統計解析処理(前処理)する。
第4段階:前記RAWファイルを、ローディングベクトルを用いて主成分分析する。
第5段階:主成分分析に基づいて判定結果を出力する。
【0016】
なお、データ入力手段51、データ記憶手段52を含むコンピュータ5が、特許請求の範囲に記載された処理手段に対応している。
主成分分析プログラムがインストールされたコンピュータ5は、特許請求の範囲に記載された分離度演算手段、順位付け手段、選択手段、及び分析手段に対応している。
【0017】
前記第4段階において用いるローディングベクトルは、対象物に応じて予め算出しておく必要があり、そのローディングベクトルの算出に際しては、実際に主成分分析して判定する際に用いる装置と同じ装置を用い、同じ条件下で、前述した第1段階〜第3段階を経て、第4段階の主成分分析を行い、良品と異品種とを精度良く識別できるローディングベクトルを算出しておく必要がある。
以下においては、上記構成の平面分光器を用いた異種品検出装置1を用いて、良品と異品種とを良く識別できる分離度の良いローディングベクトルを算出することのできる波長を、予め、複数の波長の中から少なくとも2つ選択する手順を説明する。
【0018】
まず、良品として判定できる対象物を、前記第1段階で撮像して画像データを得て、前記第2段階では、前記第1段階で得られた画像データをスペクトルデータに変換してRAWファイルを出力する。
前記第1段階と第2段階において設定された測定条件は、当該装置を構成するハードウエアの設置条件と、安定した画像データを取得するためのデータ処理条件を含んでいる。このような条件による処理が完了したものがRAWファイルとして出力され、データ記憶手段52に記憶される。
なお、前記測定条件は、概略以下の要素を含んでいる。
<測定条件>
(1)光学系の条件
平面分光器の波長軸分解能:平面分光器の精度に応じて所望の分解能とすることができ
るが、一態様として3.18nmが挙げられる。
近赤外線カメラの使用レンズ:f(焦点距離)=本発明の装置に着脱可能なレンズであ
れば、所望の焦点距離のものを使用できるが、一態様として16mmが挙げら
れる。
平面分光器及びカメラの取得波長:用いるスペクトルに応じて所望の範囲の波長とする
ことができるが、一態様として近赤外領域である900〜1700nmが挙げら
れる。
【0019】
(2)搬送系の条件
取得列数:1列以上の複数列に適宜設定できるが、一態様として10列が挙げられる。
移動速度:本発明の効果を達成できる速度であれば所望の速度に設定できるが、一態様
として、167mm/sが挙げられる。
(3)データ処理系の処理条件
波長軸移動平均数:所望の数に設定できるが、一態様として3が挙げられる。
具体的には、縦軸に反射率、横軸に波長を示したグラフの波長軸方向に対し、 例えば3〜20点の移動平均をとり、波形に乗った微小なノイズの影響を減少さ せることができる。移動平均は3〜20点に限定されるものではなく、さらに少 ない点もしくはさらに多い点での移動平均をとることもできる。
測定位置最適化処理:「有り」が好ましいが「無し」とすることもできる。
具体的には、空間軸方向のポイント毎に反射率を積算して積算値を計算し、縦 軸に積算値、横軸に空間軸ポイント数を示したプロファイル(図6の(A)参照 )に対し一次微分をかけ、その極大値と極小値を対象物の縁(即ち「エッジ」) として認識させ(図6の(B)参照)、両エッジの中点から中心位置と半径とを 得ることができる。(図6の(C)参照)
空間軸平均数:所望の数に設定できるが、一態様として3が挙げられる。
具体的には、測定位置最適化処理により求めた対象物の中心より対象物のエッ ジまでの間の任意のポイント数分において各波長毎の反射率の平均値を求める。 この処理によって、対象物の一点のみの反射光ではなく、対象物の複数個所にお ける反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得ることができる。
【0020】
さらに、前記スペクトルデータを平滑化し、MSC手法によって補正する処理、オートスケール、レンジスケール、分散スケーリング等の処理を採用することもできる。
【0021】
なお、PCA図にプロットしたときに、予め設定された良品範囲内にあれば良品とするが、前記良品範囲外なら異種品としてローディングベクトルの算出には使用しない場合も可能である。
前記測定位置最適化処理で用いたプロファイルに対して一次微分をかけた波形の極大値に対ししきい値を設け、しきい値に満たないデータを欠品として検知することもできる。
欠品を検出した場合には、他の処理が残っている場合でも、それらの処理を省略して、検査対象に対して「欠品」との判定を行い、ローディングベクトルの算出には使用しない場合も可能である。
【0022】
次に、前記第3段階の一部において、前記RAWファイルを主成分分析を実施しやすい形に、以下の解析条件で処理してもよい。
<解析条件>
ラグランジェ補間:波長軸分解能に合わせて適宜設定することができるが、一態様として
2nmが挙げられる。
ここで、ラグランジェ補間とは、前記スペクトルデータをラグランジェの2次
補間を用いて補間する補間処理であり、反射率(吸光度)に変換されたスペク
トルデータが、例えば5nm間隔の場合、このスペクトルデータに対し2次の
Lagrange補間をかけ、例えば2nm間隔の滑らかな波形にすることができる。
統計処理波長:用いるスペクトルに応じて適宜選択できるが、好ましくは近赤外領域
である1000〜1600nmが好ましい。
取得した波長データ(900〜1700nmが好ましいが、更に広い範囲の波長データ を取得することもできる。)のうち、解析に使用する範囲。取得した波長データ のうち、平面分光器及び近赤外線カメラなどのハードウエアに起因する感度の関 係で、波長範囲の両端部分にはノイズが乗りやすいので、処理効率化のために、 両端部分(100nmが好ましいが、更に広い又は狭い範囲を指定することも可能で ある)を削除することができる。
【0023】
さらに、前記第3段階の一部において、主成分分析するためのデータ変換を以下の計算条件の何れかを選択して設定し、請求項9に記載された前処理を実施してもよい。
<前処理としての計算条件>
スペクトルデータの吸収ピークを強調させる為に、例えば一次微分もしくは二次微分をかけることができる。また、ノイズの影響を減少させる為に、所望のポイント数で平滑化を書けることができるが、例えば5ポイント〜25ポイント毎に平滑化をかけることが好ましい。一次微分もしくは二次微分、平滑化は例えばSavitzky-Golayの最小二乗法を用いることができる。又は、MSC手法によって補正処理を行うことは、光の散乱の影響等を排除することに効果的である。その他にも、ノーマライズ、スムーシング、減算、乗算、SNV等の変換処理を採用することもできる。
【0024】
微分 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
例えば、Savitzky-Golayの1次微分・2次微分を用いることができる。
スペクトルの吸収ピークの顕在化、及び、粒子系の違いによるベースライン
シフトの影響低減を図るため、微分処理を行う。
平滑化次数:所望の次数を選択することができるが、0、2、又は4次が好ましい。
例えば、Savitzky-Golay平滑化
スペクトルの平滑化を行う為、Svitzky-Golayの平滑化の演算処理を行う。
平滑化ポイント:所望のポイント数を選択することができるが、5〜25ポイントの
範囲が好ましい。平均化するポイント数
吸光度変換:「無し」又は、「有り」とすることができる。
大きな数値に対して小さな数値を強調するために対数変換を行う。
対数変換として、例えば−log10を積算する
標準化 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
比率で標準化:スペクトルデータを所定値との比に基づいて標準化する処理、
具体的には、スペクトルデータの標準偏差で各波長のデータを割って
標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外する処理。
差分で標準化:スペクトルデータを所定値との差分に基づいて標準化する処理、
具体的には、スペクトルデータの標準偏差と各波長のデータとの差分
を求めて標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外
する処理。
平均化 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
データ集合の中心に原点を移動させる処理
具体的には、スペクトルデータの平均値を各波長のデータより引いて正負の
データに変換する処理。
平均化及び標準化の計算式の例を以下に示す。
【0025】
【数1】
波長選択:本発明のアルゴリズムで自動的に選択する。
【0026】
次に、前記第4段階においては、選択された前記計算条件で主成分分析を行い、ローディングベクトルを算出する。
そして、前記算出されたローディングベクトルを評価する。この評価は、実際には、下記の式を用いて行列計算することにより、主成分得点を算出し、算出した主成分得点を一次元以上のPCA図にプロットする。
S=X・La
S:主成分得点 X:スペクトルデータ La:ローディングベクトル
一般的に、二次元の主成分分析を行うことで十分であるが、三次元以上の主成分分析を行うことも可能である。
このようにして作成されたPCA図もしくは主成分得点に基づいて分離度を算出し、分離度の良いローディングベクトルの算出に用いた波長を、分離度の良い順に並べ替えて、良い方から少なくとも2つの波長を選択する。
【0027】
前記分離度の算出は、以下の距離D(λ)を分離度として用いて演算し、距離を演算するたびに、この距離の大きい順に順位付けして並べ替える。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
良品とするものを着目品目として
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
とする。
【0028】
このようにして、良品と異品種とを精度良く識別できる分離度の良いローディングベクトルを算出することのできる波長を、複数の波長の中から少なくとも2つ選択するのである。
【0029】
以下においては、スペクトルデータの解析に用いる主成分分析プログラムを説明する。この主成分分析プログラムは、本発明にかかる異品種検出装置にも用いることができる。
図7−12は、本発明にかかる主成分分析プログラムのフローチャートである。
前記主成分分析プログラムは、以下の各ルーチンを備えている。
1)自動実行メインルーチン
2)ファイル選択サブルーチン
3)RAWファイル(生データファイル)作成サブルーチン
4)計算条件設定サブルーチン
5)主成分分析サブルーチン
6)INIファイル(初期設定ファイル)作成サブルーチン
なお、前記自動実行メインルーチンは、前記ファイル選択サブルーチン、RAWファイル作成サブルーチン、計算条件設定サブルーチン、主成分分析サブルーチン、もしくはINIファイル作成サブルーチンを、必要に応じて適宜呼び出して処理するように構成されている。
【0030】
前記ファイル選択サブルーチンは、図7に示したように、前記ファイル記憶領域に記憶されたスペクトルデータを含んだファイルを選択して読み出し、操作者がキーボードなどの文字入力手段を用いて検査対象とする品目名を入力すると、スペクトルデータのみからなるRAWファイルと、ファイルの情報を含んだhdr(ヘッダー)ファイルとを別に生成して、データ記憶手段52に記憶させる。
前記計算条件設定サブルーチンは、図8に示したように、前処理や変換処理等の計算条件や、良品範囲などの判定基準が、操作者によって選択・指定されると、それらの指定された条件の組み合わせ数が、コンピュータ5の処理能力の限度を越えているか否かを予測して確認し、越えていた場合は修正を促し、越えていなければ、種々の計算条件が設定された設定ファイルを生成して、データ記憶手段52に記憶させる。
計算条件設定サブルーチンにおいて、コンピュータ5の表示手段53には、以下のような計算条件を設定するための画面が表示される。
この画面が表示されている状態で、マウスやキーボードを用いて、画面の各チェックボックスにチェックマークを付与したり、画面の各選択窓のデータを増減させて設定したりして、計算条件を設定する。
【0031】
この画面では、例えば以下の各計算条件としては、それぞれの括弧内に記載された条件の中から選択、もしくは、括弧内の条件を選択して、それらの条件を組み合わせることができる。
(1)平滑化多項式次数の設定(0,2,4の何れか)
(2)平滑化点数の設定(5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25の何れか)
(3)微分次数の設定(0,1,2の何れか)
(4)微分点数の設定(5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25の何れか)
(5)微分多項式次数の設定(2,4の何れか)
(6)吸光度変換の有無の設定(有り,無しの何れか)
(7)統計前処理の設定(平均化,比率標準化,差分標準化の組み合わせ)
(8)有効列数の設定(数値設定)
(9)良品範囲の設定(σ値を設定)
(10)波長選択数の設定(上限の設定,下限の設定)
これらの設定の組み合わせが複雑すぎて、コンピュータ5の処理能力に対して過大な負荷となることが予測される場合には設定の変更が促される。
【0032】
前記自動実行メインルーチンでは、図9に示したように、
RAWファイルをライン毎に分割して分割ファイルを出力し、結果を出力するための結果出力ファイルを作成してから自動実行ループを開始する。(ステップS1参照)
自動実行ループにおいては、まず、計算条件を、前記設定ファイルにおいて指定された1つの計算条件に変更して、前述した複数の前処理としての計算条件のうちの少なくとも何れか1つの計算条件を用いて変換処理を行う。(ステップS2参照)
【0033】
つぎに、前述した計算式を用いて分離度としての距離D(λ)を演算し(ステップ3参照)、距離を演算するたびに、この距離の大きい順に順位付けして並べ替える(ステップ4参照)。
【0034】
なお、距離の演算は、図10に示したような距離計算サブルーチンで行われる。
この距離計算サブルーチンにおいては、計算ラインを分割されたラインの何れか1つに設定して、そのラインの全データを読み込み、最大値、最小値、平均値、分散、標準偏差を演算し、そのラインにおける距離を計算する。
つぎに、波長範囲を変更して再度、距離を計算する(ステップ5参照)。
そのラインにおける距離の計算を終了した後は、次のラインに変更して(ステップ6参照)、そのラインの全データに対して上記同様の距離の計算を行い、計算した各距離をファイルに書き出して記憶する。(ステップ7参照)。
全てのライン、全ての波長、全ての計算条件における距離の計算を終了したしたことを確認する(ステップ8参照)。
【0035】
以上の自動実行メインルーチンのステップ4における距離距離の大きい順に順位付けする処理は、図11に示したような順序付けサブルーチンで行われる。
この順序付けサブルーチンにおいては、ファイルに書き出された距離データを読み込み(ステップ11参照)、距離の大きい順に並べ替える(ステップ12参照)。
並べ替えた順位に沿った配列に、各距離データを入れる(ステップ13参照)。
前記配列を含んだファイルを順位ファイルとして書き出して記憶する(ステップ14参照)。
【0036】
以上の順序付けサブルーチンを終了後、再び、図9の自動実行メインルーチンに戻り、
選択された別の波長数に設定し(ステップ5参照)、選択された計算ラインに設定する(ステップ6参照)。
そして、ステップ7においては、共分散を計算し、固有値、固有ベクトルを計算し、PCA得点を計算して、計算結果を表示手段53に表示する。
前記ステップ7においては、
計算条件と計算結果をファイルに出力して記憶する。
そして、ローディングベクトルを作成し、良品と判定できる良品範囲ファイルを出力して記憶する。
このような処理を、ステップ8においては、ラインを順次変更しながら、また、波長を順次変更しながら、全ての計算条件で処理する。
なお、前記表示手段53の画面の一部には現在処理中のラインを表示するとよい。
全ての計算条件での処理が終了した後に、結果出力ファイルを閉じて(ステップ9参照)、記憶手段52への書き込みを完了し、この自動実行ルーチンを終了する。
【0037】
前述した自動実行メインルーチンを実行中に表示される画面には、読み込んだ計算条件ファイルに基づいた計算条件が表示される。ここでは、選択された全組み合わせが表示され、1つの計算条件の計算が終了するたびにカウント数が増加されるようにすることができる。
そして、データファイルと条件設定ファイルが正しく読み込まれたことが確認されると、例えば、画面に表示される自動実行ボタンが有効になり、操作者が自動実行ボタンをクリック等することによって、自動実行が開始されるように構成できる。
自動実行中の画面の一部には計算された波形が表示され、着目品目の波形、着目品目以外の波形、距離D、選択された波長領域が、それぞれ識別可能なように色分けして表示されるように構成できる。
また、例えば、画面の一部に表示されたPCA図表示領域には、ローディングベクトルを用いて計算されたPCA得点を順次プロットすることができる。
【0038】
PCA得点は、第1成分、第2成分の2次元空間における広がりの最も大きい方向の成分をX軸、それに直交する方向の成分をY軸となるように回転させ、各軸に投影したときの平均値が0となるように平行移動して表示すると見やすい画面表示とすることができる。
そして、各軸上の標準偏差で正規化してグラフ上にプロットすることでPCA図が生成されて、表示することができる。
選択された計算条件を順次変更しながら計算を行い、現在の計算条件での計算結果と、それまでの計算条件での計算結果の中から最も良い計算結果を、画面に設定された数値表示ボックスに表示することができる。
ここで表示される計算結果としての数値は,着目品目以外の計算値で、最も中心に近い計算結果の中心からの距離を表している。この数値が大きいほど、異種品目を識別する能力が高いと言える。
前記数値表示ボックスの中で、全ラインで最も中心に近い点の距離の最大値を表示するボックスを設けることができる。この値が最も大きくなる計算条件が、最適な計算条件といえる。この数値は、全ての計算条件について、各設定値と共にファイルにも保存されるので、どの条件が最適であったかは,そのファイルを見ることで確認することができる。
【0039】
前記数値表示ボックスの中には、各計算条件で計算した結果が、着目品目以外の点で着目品目の広がりの中心に最も近い点までの距離を「最短距離」として表示され、その最短距離が大きいほど良い結果という判定ができる。
最良値の表示欄は、現在までに計算された条件のうち、最も良い結果が得られた時の最短距離と、その時の条件を表示することができる。計算条件としては、例えば、微分階数、微分点数、微分多項式次数、平滑化点数、平滑化多項式次数、選択波長数の順に表示することができる。
さらに、各計算条件毎に、ライン毎の最短距離が表示される最短距離表示欄、ライン毎の、現在までの最短距離の最大値が表示される最大値表示欄、及び最大値を出した条件の時の良品の広がりが表示される良品σ表示欄などを表示することができる。ここで表示される数値は,着目品目の全データの広がりの標準偏差σで正規化した値とする。
通常の検査では、6σで分離できていれば、生産上の歩留り誤検知率として許容できる範囲であると考えられている(いわゆる「シックスシグマ」)。本発明では、より厳しい条件である7σを用いて表示することもできる。
【0040】
なお、図12に示したINIファイル作成サブルーチンが実行されるときには、検査条件のデフォルトの値が読み込まれるものとする。
まず、操作者は、ローディングベクトルを選択する。
自動実行で作成されたローディングベクトルは、ファイル名から,計算条件がわかるようになっており、それに対応した良品範囲の楕円式も同時に読み込まれる。
検査条件が前記デフォルトの検査条件と異なる場合には、適合する検査条件の書かれた INI ファイルを読み込む。
ローディングベクトルの読込が終わると、操作者は、検査品目名を入力(任意)して、INI ファイルに名前を付けて保存する。
【0041】
次に、本発明の平面分光器を用いた異種品検出装置でインラインの全数検査をする手順の概要を以下に説明する。
1)先ず、同種品もしくは異種品の判定を行う対象の全ての種類の対象物に関して、上述した手順で予めローディングベクトルを作成する。このとき、前記主成分分析プログラムによって波長の選択を自動的に行う。
2)PCA図作成後に良品範囲を設定する。
インライン検査を行う時は、前記ローディングベクトルと前記良品範囲を使用する。
【0042】
3)インライン検査においては、得られたスペクトルデータに対し、先ず平均・平滑・補間処理を行い、次に欠品検査を行う。欠品検査に合格した場合には、測定位置最適化処理を行い、その後に、前処理、変換処理を行う。
4)このスペクトルデータに対し主成分分析を行うために、前記ローディングベクトルと、得られたスペクトルデータを行列計算させることにより主成分得点を算出する。この方法を採ることにより、主成分分析を用いたインライン検査を可能にした。
5)算出した主成分得点は予め作成された良品範囲と比較されて良否判定される。
【0043】
上述したように、本発明にかかる異種品検出装置に用いる前記主成分分析においては、波長の選択を自動的に行うので、操作者の違いによるバラツキの少ない分析を行うことができる。
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0045】
次に、本発明に係る異種品検出装置を、2種類の錠剤品目(A,B)を対象物として、1列又は10列でドラム式の搬送手段を用いて搬送しながら、検査した実施例を示す。
まず、各品目それぞれについて、1列あたり100錠を搬送して波長を測定した。1品目につき3ロットのデータを取得し、それぞれのロットにつき、3つの異なる条件でデータを読み込んだ。錠剤には、印刷又は刻印のあるものも含まれる。
【0046】
この実施例での各種条件は次の通りであった。
<測定対象>
錠剤 :AとBの2種
大きさ:φ6mm
色 :うすい黄色
<測定条件>
使用レンズ : f(焦点距離)=16mm
取得列数 : 1列又は10列
移動速度 : 167mm/s
波長軸分解能 : 3.18nm
取得波長 : 900〜1700nm
波長軸移動平均数: 3
空間軸平均数 : 3
【0047】
<解析条件>
データ数 : 900錠(各列100錠×9条件)
ラグランジュ補間: 2nm
統計処理波長 :1000〜1600nm (取得波長900〜1700nmから上下両端の100nmを除いた)
<計算条件>
微分 :なし
平滑化次数 :2次
平滑化ポイント :15ポイント
吸光度変換 :有り
標準化 :有り
平均化 :有り
選択波長 :本発明に係る主成分分析プログラムにより自動選定
【0048】
(1)分光スペクトル取得
前記測定条件にて、平面分光器(フィンランドSpecim社製)と、近赤外線カメラ(米国Sensors Unlimited社製)とを用いて撮像して平面状のスペクトルデータを得る。
例えば、光量のバラツキやシートのバタツキ等で条件の悪いデータを使用して、識別力の高いローディングベクトルの算出を行う。
【0049】
(2)波長の選択
図13は、微分階数を0、微分点数を5、微分次数を2、平滑化点数を15、平滑化次数を2、吸光度変換有り、統計前処理を平均化+標準化として、波長選択数を50とした場合の主成分分析の結果であり、図13(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図13(b)は、そのPCA図を示している。
比較例として示した図14は、本発明のアルゴリズムによる波長の自動的な選択を行わなかった場合の波形図と、そのPCA図を示している。
本発明によれば、図13(b)に示したように、通常用いられる6σよりも分離が困難である7σでも、2種類の錠剤品目(A,B)のグループが、離れた集合に明確に分離されて(最短距離=8.084)いる。このように、図13(b)によれば、2種類の錠剤品目(A,B)に関しての識別力が高くなっていることが明らかである。なお、図14の比較例では、2種類の錠剤品目(A,B)のグループが近接しており、7σでは分離されていない(最短距離=約2.7)。
【0050】
図15は、波長選択数を75に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図15(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図15(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図15(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=8.720)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図16は、波長選択数を100に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図16(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図16(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図16(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=9.682)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図17は、波長選択数を125に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図17(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図17(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図17(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=7.365)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図18は、波長選択数を150に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図18(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図18(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図18(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=7.626)、識別力が高くなっていることが明らかである。
【0051】
なお、最短距離が長いほど分離が良いことを示すが、50−150の波長選択数のうち波長選択数を100個としたときに最も明確に分離されている(最短距離=9.682)。本発明によれば、波長の選択を自動で行うため、複数の条件(ここでは波長選択数)を全て実行し、最も識別力が高くなる条件を選ぶことができる。
このようにして、本発明によれば、主成分分析における識別力の分析品質の向上とスピードの向上が可能となる。
なお、本発明によれば、1列に限らず10列でも、高い識別力で、且つ優れたスピードで解析が可能であった。
また、錠剤の表面に文字や図形等の印刷があっても、従来の画像処理による識別方法のように影響を受けることなく正確な識別が可能となる。
以上のようにして、複数の条件を全て自動的に実行し、最も識別力が高くなる条件を自動的に選び、その波長を用いてローディングベクトルを作成する。
(3)異種品検出
上記主成分分析の結果を元に異種品の検出を行う。
【0052】
以上のように、主成分分析に用いる条件として、複数の条件を全て自動的に実行し、最も識別力が高くなる条件を自動的に選び、その波長を用いてローディングベクトルを作成するので、分析者の違いによる影響を受けずに、信頼性の高い異種品検出が可能となる。
なお、前記主成分分析プログラムは、例えば、DVD−ROMやCD−ROM等の記録媒体に書き込んで、コンピュータ5に読み取らすことにより、インストールすることができる。
【0053】
本発明に係る主成分分析方法は、上述したような錠剤の異種品検出装置に限らず、例えば、種々の品質検査、定性・定量分析、画像処理等に利用することができる。
品質検査においては、例えば、錠剤識別システムにおいて、識別対象の錠剤の画像をRGBカラー画像で撮影してグレイ画像に変換し、濃淡地ベクトルを抽出し、あらかじめ学習したデータにより識別する場合に、識別力を上げることを目的として主成分分析が用いられているが(例えば、特開平07-287753号公報参照)、このとき、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択してから分析することにより効率のよい識別が可能となる。
また、定性・定量分析においては、例えば、高分子材料に含まれる添加剤の定性分析又は定量分析において、高分子材料に含まれる添加剤の違いによって光の吸収率や反射率が異なる波長を含む近赤外線を用いて近赤外線スペクトルのデータを得て、コンピュータを用いたデータ解析手法によって、高分子材料に含まれる添加剤の違い又は添加量を識別する場合(例えば、特開2004−53440号公報参照)でも、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択して分析すると、感度の高い識別を行うことができる。
また、品質検査においては、例えば、青果物の品質検査において、近赤外線等を青果の中央と下部にあてて吸光度の差をとり、これを主成分分析して熟成を判断する場合(例えば、特許第3481108号公報参照)にも、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択して分析すると、厳密な識別が可能となる。
これらの技術にかぎらず、医学分野における細胞組織の判定等のように種々の分野の定性分析関連にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる異種品検出装置の実施の形態(吸着ドラム式)の側面構成図である。
【図2】前記実施形態の要部の平面構成図である。
【図3】平面分光器の機能を説明する説明図である。
【図4】本発明にかかる異種品検出装置の実施の形態(コンベア式)の側面構成図である。
【図5】前記実施形態の要部の平面構成図である。
【図6】解析手段における測定位置最適化処理の一部を説明する説明図であり、(A)はプロファイルの波形、(B)は微分処理してエッジを検出した波形、(C)は中心位置と半径の算出を説明する図である。
【0055】
【図7】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図8】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図9】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図10】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図11】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図12】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【0056】
【図13】前処理を行い波長選択数50とした場合の波形とPCA図である。
【図14】比較例の場合の波形とPCA図である。
【図15】前処理を行い波長選択数75とした場合の波形とPCA図である。
【図16】前処理を行い波長選択数100とした場合の波形とPCA図である。
【図17】前処理を行い波長選択数125とした場合の波形とPCA図である。
【図18】前処理を行い波長選択数150とした場合の波形とPCA図である。
【符号の説明】
【0057】
1 平面分光器を用いた異種品検出装置
2 平面分光器
3 近赤外線カメラ
4 ライトガイド
5 コンピュータ
51 データ入力手段
52 データ記憶手段
53 表示手段
11 吸着ドラム式の搬送手段
12 吸着ドラム
13 コンベア式の搬送手段
T 対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に際して利用できる主成分分析方法に関し、特には、前記主成分分析方法の実施に際して、前記複数の波長から適した波長を選択する技術に関するものである。
さらには、前記主成分分析手法を利用して、医薬品(錠剤、カプセル剤等)、ゴム栓等のように、ある一つの固定した形を持つ検査対象物(以下、「対象物」という。)に、同じ形の異種品が混入していないかどうかを検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主成分分析方法を用いた異種品検出装置としては、特許文献1に記載された発明などが提案されている。
この異種品検出装置は、搬送される対象物を平面分光器を用いて高い分解能で異種品の検出を可能とすることを目的とした発明であり、順次搬送される複数の対象物に近赤外線を照射して、前記対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光して、反射光のスペクトルデータを得て、主成分分析手法を用いて前記複数の対象物の中から異種品を検出するものである。
前記異種品検出装置に用いた主成分分析手法においては、スペクトルデータの所定の波長帯のデータだけを選択して主成分分析するように構成されている。
【0003】
前記異種品検出装置によれば、平面分光器を用いるとともに、主成分分析手法において特徴のあるアルゴリズムでデータの補間・平滑化等の処理を行うことにより高い分解能が得られ、広範囲にわたる複数点の成分分析をインラインで安定して行うことが可能となった。
このように、搬送される全品のインライン成分モニタリングが可能となり、異種品の混入していない安定した品質の製品を出荷することが可能となったのである。
さらに、前記異種品検出装置によれば、スペクトルデータの所定の波長帯のデータだけを選択して主成分分析を行うことにより、従来より精度の高い異種品検出が可能となったのである。
同様に、波長を選択して主成分分析に用いる方法として、青果物の品質検査において、近赤外線等を青果の中央と下部にあてて吸光度の差をとり、これを主成分分析して熟成を判断する場合において、使用される投射光の一定波長範囲のうちの2波長における吸光度の差を用いることにより、青果物の大小に関わらず正常果と異常果をより正確に判別することを可能した発明(特許文献2)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/038443号パンフレット
【特許文献2】特許第3481108号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記異種品検出装置によれば、主成分分析(Principal Component Analysis.以下においてはPCAと表記する。)におけるPCA図の作成や、計算対象とする波長を種々変更したり、微分回数などの条件を変更して試行錯誤する手順に、自動化できない部分があるので、分析作業を短縮できないという問題があった。また、分析者の違いなどによって判断がバラついてしまうと分析作業の効率や品質にバラツキが発生するという問題があったので、自動的に適した波長を選択できるアルゴリズムの提供が待たれている。
また、特許文献2においては、複数の波長における差吸光度を用いても、正常果と異常果の分布が重なって分離しない領域がある旨が記載されている。これは、前記複数の波長は、単に複数としただけであって、正常果と異常果の分布がよく分離されるような波長を意図して選択したものではないからである。このように、複数の波長を用いたとしても、波長を意図して選択していないものや、範囲の上端と下端の波長のみを削除したものでは、十分な識別力が得られなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決して、主成分分析における手順をさらに自動化して、分析作業をさらに短縮するとともに、分析者の違いなどによる品質のバラツキの発生を抑え、厳密な分析・識別を可能とする技術を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を講じた。
請求項1に係る主成分分析方法の発明は、
複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、
各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴としている。
請求項2の発明は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析方法であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力して前記データ記憶手段に記憶させ、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求めさせ、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けさせ、
分離度が所定の順位以上の波長を選択させ、
選択された波長を用いて主成分分析させるように構成した。
請求項3の発明では、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項4の発明は、
被検体の識別に用いる主成分分析方法において、
被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析する。
請求項5の発明は、
異種品検査に用いる主成分分析方法において、
異種品を含んだ被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析する。
請求項6に係る主成分分析装置は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析装置であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力させて前記データ記憶手段に記憶させる処理手段と、
前記データ処理手段を用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求める分離度演算手段と、
前記分離度演算手段で求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けする順位付け手段と、
分離度が所定の順位以上の波長を選択する選択手段と、
選択された波長を用いて主成分分析する分析手段と、
を備えている。
請求項7では、
前記分離度演算手段は、以下に示される距離D(λ)を分離度として演算する。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項8では、
前記スペクトルデータとして、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いる。
請求項9では、
前記データ処理手段は、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理する。
請求項10の異種品検出装置は、
複数の対象物を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される前記複数の対象物に近赤外線を照射する照射手段と、
該照射手段によって近赤外線が照射される前記複数の対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光する平面分光器と、
該平面分光器にて平面分光された反射光を近赤外線カメラで電気信号に変換する撮像手段と、
該撮像手段にて得られる前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得て、コンピュータを用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けし、分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択し、選択された波長を用いて主成分分析を行って前記複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段と、
を備えている。
請求項11のプログラムは、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成したプログラムであって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいる。
請求項12のプログラムは、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
請求項13の記録媒体は、
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成されたプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいるプログラムが記録されている。
請求項14の記録媒体は、
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る主成分分析方法によれば、各波長における2以上の変数の分離度を求めて、求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、選択された波長を用いて主成分分析するので、精度の高い分析を行うことができる。
請求項2に係る主成分分析方法によれば、コンピュータを用いて、主成分分析方法における波長の選択を自動化することによって、主成分分析を安定して短時間で行うことができ、被検体の識別や、異種品検査に用いる主成分分析方法をバラツキの少ない安定したものとすることができる。
請求項3に係る主成分分析方法によれば、分離度として距離D(λ)を用いるので、波長の選択を自動化することができる。したがって、分析を行う者の違いによる波長選択のバラツキを防ぐことができるので、安定した分析が可能となる。
請求項4に係る主成分分析方法によれば、被検体を撮像して得たスペクトルデータの各波長から、分離度の良い順に2以上の波長を選択するので、高い識別力で分析することができる。
請求項5に係る主成分分析方法によれば、異頻出を含む被検体を撮像して得たスペクトルデータの各波長から、分離度の良い順に2以上の波長を選択するので、高い識別力で異品種を分析することができる。
請求項6及び7に係る主成分分析装置によれば、コンピュータを用いて、主成分分析方法をバラツキの少ない安定したものとすることができる。
請求項8に係る主成分分析装置によれば、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いることにより、外乱の影響の少ない分析が可能となる。
請求項9に係る主成分分析装置によれば、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理することによって、より精度の高い分析が可能となる。
請求項10に係る異種品検出装置では、対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光器を用いてスペクトルに分解して電気信号に変換するので、安定した異種品検出が短時間で可能となる。
請求項11及び12に係る主成分分析プログラムは、コンピュータにインストールすることによって、バラツキの少ない安定した主成分分析方法を実施できる。
請求項13及び14に係る記録媒体は、コンピュータに読み取らせることによってインストールして、バラツキの少ない安定した主成分分析方法を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明にかかる異種品検出装置の実施形態の構成図である。
図中、1は前記平面分光器を用いた異種品検出装置であり、平面分光器2、撮像手段としての近赤外線カメラ3、照射手段としてのライトガイド4、解析手段としてのコンピュータ5、及び搬送手段11から構成されている。
11は後述する吸着ドラム式の搬送手段であり、図示しないホッパから供給される例えば錠剤等の対象物Tを吸着ドラム12の表面に吸着して、例えば7列で搬送するように構成されている。
図2は、本発明にかかる異種品検出装置の実施形態の要部の平面構成図である。
図2の正面図に示したように、前記吸着ドラム12の表面においては、搬送方向に直角な方向に複数の前記対象物Tが配列された状態で多列搬送されるように構成されている。
【0010】
前記ライトガイド4は前記対象物Tの列に対してできるだけ均等に近赤外線を照射するように構成されている。即ち、前記ライトガイド4は前記対象物Tの列を挟むように一対の近赤外線光源から構成され、各対象物Tにできるだけ陰が生じないように、また、均等に照射されるように配置されている。このライトガイド4の位置は調節可能に配置されている。
前記近赤外線光源としては、例えばハロゲンランプと、近赤外線フィルターと、光ファイバー束等の導光手段とで構成することができる。
そして、前記近赤外線カメラ3は、波長900〜1700 nmの近赤外線領域に対して十分な感度を有したものとする。
なお、6は光量補正板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置に、前記ライトガイド4と同様に固定されている。
前記平面分光器2は、前記対象物Tより反射した近赤外線の反射光が効率よく入射するように配設されている。即ち、近赤外線が照射される対象物Tと前記吸着ドラム11の断面の中心とを結ぶ半径の延長線状に、その光軸を前記対象物Tに向けて配設されている。前記平面分光器2の光軸は調節可能に配置されている。
【0011】
図3は、本発明にかかる異種品検出装置を用いてスペクトルデータを得る様子を示した模式図である。
前記平面分光器2には、前記各対象物Tからの反射光が入射され、搬送方向(副走査方向:矢印Y方向)の幅は微少であって、前記吸着ドラム11の搬送幅方向(主走査方向:矢印X方向)に長く、断面がライン状の光束A(図3参照)を得て、この光束Aを平面分光することによって、例えば、横軸が搬送幅方向の位置、縦軸が波長に対応した平面状の分光スペクトルB(図3参照)が得られる。この平面状の分光スペクトルBの1辺近傍には前記光量補正板6から得られた基準となるスペクトルデータも含まれている。
前記コンピュータ5は、図1に示したように、前記スペクトルデータを取り込むためのデータ入力手段51と、取り込んだスペクトルデータを記憶するとともに、処理に必要なプログラムやデータが記憶されているデータ記憶手段52と、処理内容や処理結果等を表示する表示手段53とを備えている。その他、キーボードやマウスなどの操作情報を入力する手段も備えている。
【0012】
図4は、前記吸着ドラム式の搬送手段に代えて、コンベア式の搬送手段を用いた場合の構成を示した図である。図4において、図1と同じ構成に関しては、同じ符号を付してその説明を省略した。
13はコンベア式の搬送手段であり、例えば、対象物収納部が形成された樹脂シート(PTPシート)の前記対象物収納部に収納されて多列搬送される錠剤等の対象物Tを、送り出しロールから受け取りロールへ搬送するように構成されている。
図5は、本発明にかかる異種品検出装置の要部の平面構成図である。
図5の正面図に示したように、前記PTPシートによって、搬送方向に直角な方向に複数の前記対象物Tが配列された状態で多列搬送されるように構成されている。
【0013】
なお、6は光量補正板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置であって、且つ、前記近赤外線カメラ3の視野内に、前記ライトガイド4と同様に固定されている。
7は、バタツキ防止板であり、前記ライトガイド4によって近赤外線が照射される位置に、前記ライトガイド4や光量補正板6等と同様に固定されている。このバタツキ防止板7には、対象物Tの撮像を妨げないように透孔71が形成されている。従って、PTPシートで搬送される対象物Tであっても前記透孔71を通して撮像することができる。
前記平面分光器2では、上記同様に、例えば、横軸が搬送幅方向の位置、縦軸が波長に対応した平面状の分光スペクトルB(図3参照)が得られる。
なお、対象物からの近赤外線の反射光はPTPシートのフィルムを透過するので、PTPシートのフィルムの上からであっても異品種の有無を測定することができる。
【0014】
以上のような吸着ドラム式もしくはコンベア式の搬送手段によって対象物は多列搬送されるように構成されている。
そして、前記平面分光器2にて得られた平面状のスペクトルデータは、近赤外線カメラ3の撮像面上に結像し、例えばCCD素子等の撮像素子によって電気信号に変換され、さらにデジタル信号に変換されて、前記コンピュータ5に送信される。
なお、前記搬送手段によって搬送される対象物が所定の位置に到達したタイミングで得られるトリガー信号に同期して画像を取り込み、前記コンピュータ5に送信するように構成することができる。
前記コンピュータ5では、送信されたスペクトルデータを、新たに開発した後述する主成分分析プログラムにより処理し、対象物Tを良品と異種品とに識別する。
後述する主成分分析プログラムは、スペクトル解析に有効なケモメトリックスの一つである主成分分析を自動的に行うプログラムを含んだものである。
【0015】
以上の構成の異種品検出装置における処理は以下の段階に分けることができる。
第1段階:前述したように前記平面分光器2と前記近赤外線カメラ3を用いて画像データを得る。
前記平面分光器2にて得られた平面状のスペクトルデータは、近赤外線カメラ3
で撮像されてデジタル信号としてコンピュータ5に送信される。
コンピュータ5においては、まず、データ入力回路もしくは記録媒体読み取り装 置などのデータ入力手段51を介して取り込まれ、ハードディスクなどのデータ
記憶手段52のファイル記憶領域に記憶される。
第2段階:前記第1段階で得られた画像データをスペクトルデータに変換して、
生データファイル(以下、単に「RAWファイル」と言う。)として出力する。
第3段階:前記スペクトルデータを統計解析処理(前処理)する。
第4段階:前記RAWファイルを、ローディングベクトルを用いて主成分分析する。
第5段階:主成分分析に基づいて判定結果を出力する。
【0016】
なお、データ入力手段51、データ記憶手段52を含むコンピュータ5が、特許請求の範囲に記載された処理手段に対応している。
主成分分析プログラムがインストールされたコンピュータ5は、特許請求の範囲に記載された分離度演算手段、順位付け手段、選択手段、及び分析手段に対応している。
【0017】
前記第4段階において用いるローディングベクトルは、対象物に応じて予め算出しておく必要があり、そのローディングベクトルの算出に際しては、実際に主成分分析して判定する際に用いる装置と同じ装置を用い、同じ条件下で、前述した第1段階〜第3段階を経て、第4段階の主成分分析を行い、良品と異品種とを精度良く識別できるローディングベクトルを算出しておく必要がある。
以下においては、上記構成の平面分光器を用いた異種品検出装置1を用いて、良品と異品種とを良く識別できる分離度の良いローディングベクトルを算出することのできる波長を、予め、複数の波長の中から少なくとも2つ選択する手順を説明する。
【0018】
まず、良品として判定できる対象物を、前記第1段階で撮像して画像データを得て、前記第2段階では、前記第1段階で得られた画像データをスペクトルデータに変換してRAWファイルを出力する。
前記第1段階と第2段階において設定された測定条件は、当該装置を構成するハードウエアの設置条件と、安定した画像データを取得するためのデータ処理条件を含んでいる。このような条件による処理が完了したものがRAWファイルとして出力され、データ記憶手段52に記憶される。
なお、前記測定条件は、概略以下の要素を含んでいる。
<測定条件>
(1)光学系の条件
平面分光器の波長軸分解能:平面分光器の精度に応じて所望の分解能とすることができ
るが、一態様として3.18nmが挙げられる。
近赤外線カメラの使用レンズ:f(焦点距離)=本発明の装置に着脱可能なレンズであ
れば、所望の焦点距離のものを使用できるが、一態様として16mmが挙げら
れる。
平面分光器及びカメラの取得波長:用いるスペクトルに応じて所望の範囲の波長とする
ことができるが、一態様として近赤外領域である900〜1700nmが挙げら
れる。
【0019】
(2)搬送系の条件
取得列数:1列以上の複数列に適宜設定できるが、一態様として10列が挙げられる。
移動速度:本発明の効果を達成できる速度であれば所望の速度に設定できるが、一態様
として、167mm/sが挙げられる。
(3)データ処理系の処理条件
波長軸移動平均数:所望の数に設定できるが、一態様として3が挙げられる。
具体的には、縦軸に反射率、横軸に波長を示したグラフの波長軸方向に対し、 例えば3〜20点の移動平均をとり、波形に乗った微小なノイズの影響を減少さ せることができる。移動平均は3〜20点に限定されるものではなく、さらに少 ない点もしくはさらに多い点での移動平均をとることもできる。
測定位置最適化処理:「有り」が好ましいが「無し」とすることもできる。
具体的には、空間軸方向のポイント毎に反射率を積算して積算値を計算し、縦 軸に積算値、横軸に空間軸ポイント数を示したプロファイル(図6の(A)参照 )に対し一次微分をかけ、その極大値と極小値を対象物の縁(即ち「エッジ」) として認識させ(図6の(B)参照)、両エッジの中点から中心位置と半径とを 得ることができる。(図6の(C)参照)
空間軸平均数:所望の数に設定できるが、一態様として3が挙げられる。
具体的には、測定位置最適化処理により求めた対象物の中心より対象物のエッ ジまでの間の任意のポイント数分において各波長毎の反射率の平均値を求める。 この処理によって、対象物の一点のみの反射光ではなく、対象物の複数個所にお ける反射光の平均値に基づいたスペクトルデータを得ることができる。
【0020】
さらに、前記スペクトルデータを平滑化し、MSC手法によって補正する処理、オートスケール、レンジスケール、分散スケーリング等の処理を採用することもできる。
【0021】
なお、PCA図にプロットしたときに、予め設定された良品範囲内にあれば良品とするが、前記良品範囲外なら異種品としてローディングベクトルの算出には使用しない場合も可能である。
前記測定位置最適化処理で用いたプロファイルに対して一次微分をかけた波形の極大値に対ししきい値を設け、しきい値に満たないデータを欠品として検知することもできる。
欠品を検出した場合には、他の処理が残っている場合でも、それらの処理を省略して、検査対象に対して「欠品」との判定を行い、ローディングベクトルの算出には使用しない場合も可能である。
【0022】
次に、前記第3段階の一部において、前記RAWファイルを主成分分析を実施しやすい形に、以下の解析条件で処理してもよい。
<解析条件>
ラグランジェ補間:波長軸分解能に合わせて適宜設定することができるが、一態様として
2nmが挙げられる。
ここで、ラグランジェ補間とは、前記スペクトルデータをラグランジェの2次
補間を用いて補間する補間処理であり、反射率(吸光度)に変換されたスペク
トルデータが、例えば5nm間隔の場合、このスペクトルデータに対し2次の
Lagrange補間をかけ、例えば2nm間隔の滑らかな波形にすることができる。
統計処理波長:用いるスペクトルに応じて適宜選択できるが、好ましくは近赤外領域
である1000〜1600nmが好ましい。
取得した波長データ(900〜1700nmが好ましいが、更に広い範囲の波長データ を取得することもできる。)のうち、解析に使用する範囲。取得した波長データ のうち、平面分光器及び近赤外線カメラなどのハードウエアに起因する感度の関 係で、波長範囲の両端部分にはノイズが乗りやすいので、処理効率化のために、 両端部分(100nmが好ましいが、更に広い又は狭い範囲を指定することも可能で ある)を削除することができる。
【0023】
さらに、前記第3段階の一部において、主成分分析するためのデータ変換を以下の計算条件の何れかを選択して設定し、請求項9に記載された前処理を実施してもよい。
<前処理としての計算条件>
スペクトルデータの吸収ピークを強調させる為に、例えば一次微分もしくは二次微分をかけることができる。また、ノイズの影響を減少させる為に、所望のポイント数で平滑化を書けることができるが、例えば5ポイント〜25ポイント毎に平滑化をかけることが好ましい。一次微分もしくは二次微分、平滑化は例えばSavitzky-Golayの最小二乗法を用いることができる。又は、MSC手法によって補正処理を行うことは、光の散乱の影響等を排除することに効果的である。その他にも、ノーマライズ、スムーシング、減算、乗算、SNV等の変換処理を採用することもできる。
【0024】
微分 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
例えば、Savitzky-Golayの1次微分・2次微分を用いることができる。
スペクトルの吸収ピークの顕在化、及び、粒子系の違いによるベースライン
シフトの影響低減を図るため、微分処理を行う。
平滑化次数:所望の次数を選択することができるが、0、2、又は4次が好ましい。
例えば、Savitzky-Golay平滑化
スペクトルの平滑化を行う為、Svitzky-Golayの平滑化の演算処理を行う。
平滑化ポイント:所望のポイント数を選択することができるが、5〜25ポイントの
範囲が好ましい。平均化するポイント数
吸光度変換:「無し」又は、「有り」とすることができる。
大きな数値に対して小さな数値を強調するために対数変換を行う。
対数変換として、例えば−log10を積算する
標準化 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
比率で標準化:スペクトルデータを所定値との比に基づいて標準化する処理、
具体的には、スペクトルデータの標準偏差で各波長のデータを割って
標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外する処理。
差分で標準化:スペクトルデータを所定値との差分に基づいて標準化する処理、
具体的には、スペクトルデータの標準偏差と各波長のデータとの差分
を求めて標準化して、各スペクトルデータ間のバラツキの影響を除外
する処理。
平均化 :「無し」又は、「有り」とすることができる。
データ集合の中心に原点を移動させる処理
具体的には、スペクトルデータの平均値を各波長のデータより引いて正負の
データに変換する処理。
平均化及び標準化の計算式の例を以下に示す。
【0025】
【数1】
波長選択:本発明のアルゴリズムで自動的に選択する。
【0026】
次に、前記第4段階においては、選択された前記計算条件で主成分分析を行い、ローディングベクトルを算出する。
そして、前記算出されたローディングベクトルを評価する。この評価は、実際には、下記の式を用いて行列計算することにより、主成分得点を算出し、算出した主成分得点を一次元以上のPCA図にプロットする。
S=X・La
S:主成分得点 X:スペクトルデータ La:ローディングベクトル
一般的に、二次元の主成分分析を行うことで十分であるが、三次元以上の主成分分析を行うことも可能である。
このようにして作成されたPCA図もしくは主成分得点に基づいて分離度を算出し、分離度の良いローディングベクトルの算出に用いた波長を、分離度の良い順に並べ替えて、良い方から少なくとも2つの波長を選択する。
【0027】
前記分離度の算出は、以下の距離D(λ)を分離度として用いて演算し、距離を演算するたびに、この距離の大きい順に順位付けして並べ替える。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
良品とするものを着目品目として
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
とする。
【0028】
このようにして、良品と異品種とを精度良く識別できる分離度の良いローディングベクトルを算出することのできる波長を、複数の波長の中から少なくとも2つ選択するのである。
【0029】
以下においては、スペクトルデータの解析に用いる主成分分析プログラムを説明する。この主成分分析プログラムは、本発明にかかる異品種検出装置にも用いることができる。
図7−12は、本発明にかかる主成分分析プログラムのフローチャートである。
前記主成分分析プログラムは、以下の各ルーチンを備えている。
1)自動実行メインルーチン
2)ファイル選択サブルーチン
3)RAWファイル(生データファイル)作成サブルーチン
4)計算条件設定サブルーチン
5)主成分分析サブルーチン
6)INIファイル(初期設定ファイル)作成サブルーチン
なお、前記自動実行メインルーチンは、前記ファイル選択サブルーチン、RAWファイル作成サブルーチン、計算条件設定サブルーチン、主成分分析サブルーチン、もしくはINIファイル作成サブルーチンを、必要に応じて適宜呼び出して処理するように構成されている。
【0030】
前記ファイル選択サブルーチンは、図7に示したように、前記ファイル記憶領域に記憶されたスペクトルデータを含んだファイルを選択して読み出し、操作者がキーボードなどの文字入力手段を用いて検査対象とする品目名を入力すると、スペクトルデータのみからなるRAWファイルと、ファイルの情報を含んだhdr(ヘッダー)ファイルとを別に生成して、データ記憶手段52に記憶させる。
前記計算条件設定サブルーチンは、図8に示したように、前処理や変換処理等の計算条件や、良品範囲などの判定基準が、操作者によって選択・指定されると、それらの指定された条件の組み合わせ数が、コンピュータ5の処理能力の限度を越えているか否かを予測して確認し、越えていた場合は修正を促し、越えていなければ、種々の計算条件が設定された設定ファイルを生成して、データ記憶手段52に記憶させる。
計算条件設定サブルーチンにおいて、コンピュータ5の表示手段53には、以下のような計算条件を設定するための画面が表示される。
この画面が表示されている状態で、マウスやキーボードを用いて、画面の各チェックボックスにチェックマークを付与したり、画面の各選択窓のデータを増減させて設定したりして、計算条件を設定する。
【0031】
この画面では、例えば以下の各計算条件としては、それぞれの括弧内に記載された条件の中から選択、もしくは、括弧内の条件を選択して、それらの条件を組み合わせることができる。
(1)平滑化多項式次数の設定(0,2,4の何れか)
(2)平滑化点数の設定(5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25の何れか)
(3)微分次数の設定(0,1,2の何れか)
(4)微分点数の設定(5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25の何れか)
(5)微分多項式次数の設定(2,4の何れか)
(6)吸光度変換の有無の設定(有り,無しの何れか)
(7)統計前処理の設定(平均化,比率標準化,差分標準化の組み合わせ)
(8)有効列数の設定(数値設定)
(9)良品範囲の設定(σ値を設定)
(10)波長選択数の設定(上限の設定,下限の設定)
これらの設定の組み合わせが複雑すぎて、コンピュータ5の処理能力に対して過大な負荷となることが予測される場合には設定の変更が促される。
【0032】
前記自動実行メインルーチンでは、図9に示したように、
RAWファイルをライン毎に分割して分割ファイルを出力し、結果を出力するための結果出力ファイルを作成してから自動実行ループを開始する。(ステップS1参照)
自動実行ループにおいては、まず、計算条件を、前記設定ファイルにおいて指定された1つの計算条件に変更して、前述した複数の前処理としての計算条件のうちの少なくとも何れか1つの計算条件を用いて変換処理を行う。(ステップS2参照)
【0033】
つぎに、前述した計算式を用いて分離度としての距離D(λ)を演算し(ステップ3参照)、距離を演算するたびに、この距離の大きい順に順位付けして並べ替える(ステップ4参照)。
【0034】
なお、距離の演算は、図10に示したような距離計算サブルーチンで行われる。
この距離計算サブルーチンにおいては、計算ラインを分割されたラインの何れか1つに設定して、そのラインの全データを読み込み、最大値、最小値、平均値、分散、標準偏差を演算し、そのラインにおける距離を計算する。
つぎに、波長範囲を変更して再度、距離を計算する(ステップ5参照)。
そのラインにおける距離の計算を終了した後は、次のラインに変更して(ステップ6参照)、そのラインの全データに対して上記同様の距離の計算を行い、計算した各距離をファイルに書き出して記憶する。(ステップ7参照)。
全てのライン、全ての波長、全ての計算条件における距離の計算を終了したしたことを確認する(ステップ8参照)。
【0035】
以上の自動実行メインルーチンのステップ4における距離距離の大きい順に順位付けする処理は、図11に示したような順序付けサブルーチンで行われる。
この順序付けサブルーチンにおいては、ファイルに書き出された距離データを読み込み(ステップ11参照)、距離の大きい順に並べ替える(ステップ12参照)。
並べ替えた順位に沿った配列に、各距離データを入れる(ステップ13参照)。
前記配列を含んだファイルを順位ファイルとして書き出して記憶する(ステップ14参照)。
【0036】
以上の順序付けサブルーチンを終了後、再び、図9の自動実行メインルーチンに戻り、
選択された別の波長数に設定し(ステップ5参照)、選択された計算ラインに設定する(ステップ6参照)。
そして、ステップ7においては、共分散を計算し、固有値、固有ベクトルを計算し、PCA得点を計算して、計算結果を表示手段53に表示する。
前記ステップ7においては、
計算条件と計算結果をファイルに出力して記憶する。
そして、ローディングベクトルを作成し、良品と判定できる良品範囲ファイルを出力して記憶する。
このような処理を、ステップ8においては、ラインを順次変更しながら、また、波長を順次変更しながら、全ての計算条件で処理する。
なお、前記表示手段53の画面の一部には現在処理中のラインを表示するとよい。
全ての計算条件での処理が終了した後に、結果出力ファイルを閉じて(ステップ9参照)、記憶手段52への書き込みを完了し、この自動実行ルーチンを終了する。
【0037】
前述した自動実行メインルーチンを実行中に表示される画面には、読み込んだ計算条件ファイルに基づいた計算条件が表示される。ここでは、選択された全組み合わせが表示され、1つの計算条件の計算が終了するたびにカウント数が増加されるようにすることができる。
そして、データファイルと条件設定ファイルが正しく読み込まれたことが確認されると、例えば、画面に表示される自動実行ボタンが有効になり、操作者が自動実行ボタンをクリック等することによって、自動実行が開始されるように構成できる。
自動実行中の画面の一部には計算された波形が表示され、着目品目の波形、着目品目以外の波形、距離D、選択された波長領域が、それぞれ識別可能なように色分けして表示されるように構成できる。
また、例えば、画面の一部に表示されたPCA図表示領域には、ローディングベクトルを用いて計算されたPCA得点を順次プロットすることができる。
【0038】
PCA得点は、第1成分、第2成分の2次元空間における広がりの最も大きい方向の成分をX軸、それに直交する方向の成分をY軸となるように回転させ、各軸に投影したときの平均値が0となるように平行移動して表示すると見やすい画面表示とすることができる。
そして、各軸上の標準偏差で正規化してグラフ上にプロットすることでPCA図が生成されて、表示することができる。
選択された計算条件を順次変更しながら計算を行い、現在の計算条件での計算結果と、それまでの計算条件での計算結果の中から最も良い計算結果を、画面に設定された数値表示ボックスに表示することができる。
ここで表示される計算結果としての数値は,着目品目以外の計算値で、最も中心に近い計算結果の中心からの距離を表している。この数値が大きいほど、異種品目を識別する能力が高いと言える。
前記数値表示ボックスの中で、全ラインで最も中心に近い点の距離の最大値を表示するボックスを設けることができる。この値が最も大きくなる計算条件が、最適な計算条件といえる。この数値は、全ての計算条件について、各設定値と共にファイルにも保存されるので、どの条件が最適であったかは,そのファイルを見ることで確認することができる。
【0039】
前記数値表示ボックスの中には、各計算条件で計算した結果が、着目品目以外の点で着目品目の広がりの中心に最も近い点までの距離を「最短距離」として表示され、その最短距離が大きいほど良い結果という判定ができる。
最良値の表示欄は、現在までに計算された条件のうち、最も良い結果が得られた時の最短距離と、その時の条件を表示することができる。計算条件としては、例えば、微分階数、微分点数、微分多項式次数、平滑化点数、平滑化多項式次数、選択波長数の順に表示することができる。
さらに、各計算条件毎に、ライン毎の最短距離が表示される最短距離表示欄、ライン毎の、現在までの最短距離の最大値が表示される最大値表示欄、及び最大値を出した条件の時の良品の広がりが表示される良品σ表示欄などを表示することができる。ここで表示される数値は,着目品目の全データの広がりの標準偏差σで正規化した値とする。
通常の検査では、6σで分離できていれば、生産上の歩留り誤検知率として許容できる範囲であると考えられている(いわゆる「シックスシグマ」)。本発明では、より厳しい条件である7σを用いて表示することもできる。
【0040】
なお、図12に示したINIファイル作成サブルーチンが実行されるときには、検査条件のデフォルトの値が読み込まれるものとする。
まず、操作者は、ローディングベクトルを選択する。
自動実行で作成されたローディングベクトルは、ファイル名から,計算条件がわかるようになっており、それに対応した良品範囲の楕円式も同時に読み込まれる。
検査条件が前記デフォルトの検査条件と異なる場合には、適合する検査条件の書かれた INI ファイルを読み込む。
ローディングベクトルの読込が終わると、操作者は、検査品目名を入力(任意)して、INI ファイルに名前を付けて保存する。
【0041】
次に、本発明の平面分光器を用いた異種品検出装置でインラインの全数検査をする手順の概要を以下に説明する。
1)先ず、同種品もしくは異種品の判定を行う対象の全ての種類の対象物に関して、上述した手順で予めローディングベクトルを作成する。このとき、前記主成分分析プログラムによって波長の選択を自動的に行う。
2)PCA図作成後に良品範囲を設定する。
インライン検査を行う時は、前記ローディングベクトルと前記良品範囲を使用する。
【0042】
3)インライン検査においては、得られたスペクトルデータに対し、先ず平均・平滑・補間処理を行い、次に欠品検査を行う。欠品検査に合格した場合には、測定位置最適化処理を行い、その後に、前処理、変換処理を行う。
4)このスペクトルデータに対し主成分分析を行うために、前記ローディングベクトルと、得られたスペクトルデータを行列計算させることにより主成分得点を算出する。この方法を採ることにより、主成分分析を用いたインライン検査を可能にした。
5)算出した主成分得点は予め作成された良品範囲と比較されて良否判定される。
【0043】
上述したように、本発明にかかる異種品検出装置に用いる前記主成分分析においては、波長の選択を自動的に行うので、操作者の違いによるバラツキの少ない分析を行うことができる。
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0045】
次に、本発明に係る異種品検出装置を、2種類の錠剤品目(A,B)を対象物として、1列又は10列でドラム式の搬送手段を用いて搬送しながら、検査した実施例を示す。
まず、各品目それぞれについて、1列あたり100錠を搬送して波長を測定した。1品目につき3ロットのデータを取得し、それぞれのロットにつき、3つの異なる条件でデータを読み込んだ。錠剤には、印刷又は刻印のあるものも含まれる。
【0046】
この実施例での各種条件は次の通りであった。
<測定対象>
錠剤 :AとBの2種
大きさ:φ6mm
色 :うすい黄色
<測定条件>
使用レンズ : f(焦点距離)=16mm
取得列数 : 1列又は10列
移動速度 : 167mm/s
波長軸分解能 : 3.18nm
取得波長 : 900〜1700nm
波長軸移動平均数: 3
空間軸平均数 : 3
【0047】
<解析条件>
データ数 : 900錠(各列100錠×9条件)
ラグランジュ補間: 2nm
統計処理波長 :1000〜1600nm (取得波長900〜1700nmから上下両端の100nmを除いた)
<計算条件>
微分 :なし
平滑化次数 :2次
平滑化ポイント :15ポイント
吸光度変換 :有り
標準化 :有り
平均化 :有り
選択波長 :本発明に係る主成分分析プログラムにより自動選定
【0048】
(1)分光スペクトル取得
前記測定条件にて、平面分光器(フィンランドSpecim社製)と、近赤外線カメラ(米国Sensors Unlimited社製)とを用いて撮像して平面状のスペクトルデータを得る。
例えば、光量のバラツキやシートのバタツキ等で条件の悪いデータを使用して、識別力の高いローディングベクトルの算出を行う。
【0049】
(2)波長の選択
図13は、微分階数を0、微分点数を5、微分次数を2、平滑化点数を15、平滑化次数を2、吸光度変換有り、統計前処理を平均化+標準化として、波長選択数を50とした場合の主成分分析の結果であり、図13(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図13(b)は、そのPCA図を示している。
比較例として示した図14は、本発明のアルゴリズムによる波長の自動的な選択を行わなかった場合の波形図と、そのPCA図を示している。
本発明によれば、図13(b)に示したように、通常用いられる6σよりも分離が困難である7σでも、2種類の錠剤品目(A,B)のグループが、離れた集合に明確に分離されて(最短距離=8.084)いる。このように、図13(b)によれば、2種類の錠剤品目(A,B)に関しての識別力が高くなっていることが明らかである。なお、図14の比較例では、2種類の錠剤品目(A,B)のグループが近接しており、7σでは分離されていない(最短距離=約2.7)。
【0050】
図15は、波長選択数を75に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図15(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図15(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図15(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=8.720)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図16は、波長選択数を100に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図16(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図16(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図16(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=9.682)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図17は、波長選択数を125に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図17(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図17(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図17(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=7.365)、識別力が高くなっていることが明らかである。
図18は、波長選択数を150に変え、微分階数等の他の条件は同条件とした場合の主成分分析の結果であり、図18(a)は、スペクトル上における波長選択領域を示し、図18(b)は、そのPCA図を示している。本発明によれば、図18(b)に示したように、7σで明確に分離されて(最短距離=7.626)、識別力が高くなっていることが明らかである。
【0051】
なお、最短距離が長いほど分離が良いことを示すが、50−150の波長選択数のうち波長選択数を100個としたときに最も明確に分離されている(最短距離=9.682)。本発明によれば、波長の選択を自動で行うため、複数の条件(ここでは波長選択数)を全て実行し、最も識別力が高くなる条件を選ぶことができる。
このようにして、本発明によれば、主成分分析における識別力の分析品質の向上とスピードの向上が可能となる。
なお、本発明によれば、1列に限らず10列でも、高い識別力で、且つ優れたスピードで解析が可能であった。
また、錠剤の表面に文字や図形等の印刷があっても、従来の画像処理による識別方法のように影響を受けることなく正確な識別が可能となる。
以上のようにして、複数の条件を全て自動的に実行し、最も識別力が高くなる条件を自動的に選び、その波長を用いてローディングベクトルを作成する。
(3)異種品検出
上記主成分分析の結果を元に異種品の検出を行う。
【0052】
以上のように、主成分分析に用いる条件として、複数の条件を全て自動的に実行し、最も識別力が高くなる条件を自動的に選び、その波長を用いてローディングベクトルを作成するので、分析者の違いによる影響を受けずに、信頼性の高い異種品検出が可能となる。
なお、前記主成分分析プログラムは、例えば、DVD−ROMやCD−ROM等の記録媒体に書き込んで、コンピュータ5に読み取らすことにより、インストールすることができる。
【0053】
本発明に係る主成分分析方法は、上述したような錠剤の異種品検出装置に限らず、例えば、種々の品質検査、定性・定量分析、画像処理等に利用することができる。
品質検査においては、例えば、錠剤識別システムにおいて、識別対象の錠剤の画像をRGBカラー画像で撮影してグレイ画像に変換し、濃淡地ベクトルを抽出し、あらかじめ学習したデータにより識別する場合に、識別力を上げることを目的として主成分分析が用いられているが(例えば、特開平07-287753号公報参照)、このとき、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択してから分析することにより効率のよい識別が可能となる。
また、定性・定量分析においては、例えば、高分子材料に含まれる添加剤の定性分析又は定量分析において、高分子材料に含まれる添加剤の違いによって光の吸収率や反射率が異なる波長を含む近赤外線を用いて近赤外線スペクトルのデータを得て、コンピュータを用いたデータ解析手法によって、高分子材料に含まれる添加剤の違い又は添加量を識別する場合(例えば、特開2004−53440号公報参照)でも、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択して分析すると、感度の高い識別を行うことができる。
また、品質検査においては、例えば、青果物の品質検査において、近赤外線等を青果の中央と下部にあてて吸光度の差をとり、これを主成分分析して熟成を判断する場合(例えば、特許第3481108号公報参照)にも、本発明に係る主成分分析方法を適用して、分離度の良い波長を自動的に選択して分析すると、厳密な識別が可能となる。
これらの技術にかぎらず、医学分野における細胞組織の判定等のように種々の分野の定性分析関連にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる異種品検出装置の実施の形態(吸着ドラム式)の側面構成図である。
【図2】前記実施形態の要部の平面構成図である。
【図3】平面分光器の機能を説明する説明図である。
【図4】本発明にかかる異種品検出装置の実施の形態(コンベア式)の側面構成図である。
【図5】前記実施形態の要部の平面構成図である。
【図6】解析手段における測定位置最適化処理の一部を説明する説明図であり、(A)はプロファイルの波形、(B)は微分処理してエッジを検出した波形、(C)は中心位置と半径の算出を説明する図である。
【0055】
【図7】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図8】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図9】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図10】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図11】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【図12】本発明にかかる主成分分析プログラムの一部のフローチャートである。
【0056】
【図13】前処理を行い波長選択数50とした場合の波形とPCA図である。
【図14】比較例の場合の波形とPCA図である。
【図15】前処理を行い波長選択数75とした場合の波形とPCA図である。
【図16】前処理を行い波長選択数100とした場合の波形とPCA図である。
【図17】前処理を行い波長選択数125とした場合の波形とPCA図である。
【図18】前処理を行い波長選択数150とした場合の波形とPCA図である。
【符号の説明】
【0057】
1 平面分光器を用いた異種品検出装置
2 平面分光器
3 近赤外線カメラ
4 ライトガイド
5 コンピュータ
51 データ入力手段
52 データ記憶手段
53 表示手段
11 吸着ドラム式の搬送手段
12 吸着ドラム
13 コンベア式の搬送手段
T 対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、
各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項2】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析方法であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力して前記データ記憶手段に記憶させ、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求めさせ、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けさせ、
分離度が所定の順位以上の波長を選択させ、
選択された波長を用いて主成分分析させるように構成したことを特徴とする主成分分析方法。
【請求項3】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項1又は2のいずれか1項に記載の主成分分析方法。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項4】
被検体の識別に用いる主成分分析方法において、
被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項5】
異種品検査に用いる主成分分析方法において、
異種品を含んだ被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項6】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析装置であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力させて前記データ記憶手段に記憶させる処理手段と、
前記データ処理手段を用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求める分離度演算手段と、
前記分離度演算手段で求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けする順位付け手段と、
分離度が所定の順位以上の波長を選択する選択手段と、
選択された波長を用いて主成分分析する分析手段と、
を備えていることを特徴とする主成分分析装置。
【請求項7】
前記分離度演算手段は、以下に示される距離D(λ)を分離度として演算する請求項6に記載の主成分分析装置。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項8】
前記スペクトルデータとして、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いる請求項6乃至7のいずれか1項に記載の主成分分析装置。
【請求項9】
前記データ処理手段は、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の主成分分析装置。
【請求項10】
複数の対象物を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される前記複数の対象物に近赤外線を照射する照射手段と、
該照射手段によって近赤外線が照射される前記複数の対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光する平面分光器と、
該平面分光器にて平面分光された反射光を近赤外線カメラで電気信号に変換する撮像手段と、
該撮像手段にて得られる前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得て、コンピュータを用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けし、分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択し、選択された波長を用いて主成分分析を行って前記複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段と、
を備えていることを特徴とする異種品検出装置。
【請求項11】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成したプログラムであって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいることを特徴とするコンピュータを用いて主成分分析を行うプログラム。
【請求項12】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項11に記載のプログラム。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項13】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成されたプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいるプログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項14】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項13に記載の記録媒体。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項1】
複数の波長を含むスペクトルデータのスペクトル解析に用いる主成分分析方法において、
各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度が良い順に少なくとも2つの波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項2】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析方法であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力して前記データ記憶手段に記憶させ、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求めさせ、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けさせ、
分離度が所定の順位以上の波長を選択させ、
選択された波長を用いて主成分分析させるように構成したことを特徴とする主成分分析方法。
【請求項3】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項1又は2のいずれか1項に記載の主成分分析方法。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項4】
被検体の識別に用いる主成分分析方法において、
被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項5】
異種品検査に用いる主成分分析方法において、
異種品を含んだ被検体を複数の波長を含む光を用いて撮像してスペクトルデータを得て、
得られたスペクトルデータの各波長における2以上の変数の分離度を求め、
求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けし、
分離度が所定の順位以上の波長を選択し、
選択された波長を用いて主成分分析することを特徴とする主成分分析方法。
【請求項6】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いた主成分分析装置であって、
前記データ入力手段を用いて、複数の波長を含むスペクトルデータをコンピュータに入力させて前記データ記憶手段に記憶させる処理手段と、
前記データ処理手段を用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求める分離度演算手段と、
前記分離度演算手段で求めた分離度の良い順に少なくとも2つの波長を順位付けする順位付け手段と、
分離度が所定の順位以上の波長を選択する選択手段と、
選択された波長を用いて主成分分析する分析手段と、
を備えていることを特徴とする主成分分析装置。
【請求項7】
前記分離度演算手段は、以下に示される距離D(λ)を分離度として演算する請求項6に記載の主成分分析装置。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項8】
前記スペクトルデータとして、近赤外領域の波長を用いて得られたスペクトルデータを用いる請求項6乃至7のいずれか1項に記載の主成分分析装置。
【請求項9】
前記データ処理手段は、波長を選択する前にスペクトルデータを前処理する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の主成分分析装置。
【請求項10】
複数の対象物を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送される前記複数の対象物に近赤外線を照射する照射手段と、
該照射手段によって近赤外線が照射される前記複数の対象物から反射される近赤外線の反射光を平面分光する平面分光器と、
該平面分光器にて平面分光された反射光を近赤外線カメラで電気信号に変換する撮像手段と、
該撮像手段にて得られる前記電気信号を解析して前記反射光のスペクトルデータを得て、コンピュータを用いて、各波長における2以上の変数の分離度を求め、求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けし、分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択し、選択された波長を用いて主成分分析を行って前記複数の対象物の中から異種品を検出する解析手段と、
を備えていることを特徴とする異種品検出装置。
【請求項11】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成したプログラムであって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいることを特徴とするコンピュータを用いて主成分分析を行うプログラム。
【請求項12】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項11に記載のプログラム。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【請求項13】
データ入力手段、データ記憶手段、データ処理手段、及びデータ出力手段を備えたコンピュータを用いて主成分分析を行わせるように構成されたプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記データ処理手段を用いて、
各波長における2以上の変数の分離度を求める手順と、
求めた分離度の良い順に、少なくとも2つの波長を順位付けする手順と、
分離度が所定の順位以上の波長を自動的に選択する手順と、
選択された波長を用いて主成分分析する手順と、
を含んでいるプログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項14】
前記分離度として、以下に示される距離D(λ)を用いる請求項13に記載の記録媒体。
距離D(λ)= Max((MinX0(λ)− MaxX1(λ)),(MaxX1(λ)− MinX0(λ)))/σ0(λ)
ただし、
MinX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最小値。
MaxX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最大値。
MaxX0(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目の最大値。
MinX1(λ) :読み込みデータの波長域λでの着目品目以外の最小値。
σ0(λ) :着目品目の波長域λでの標準偏差。
Max(A,B) :A と B の大きい方の値を選択する。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−112887(P2010−112887A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287009(P2008−287009)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】
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