説明

主桁の連続化構造

【課題】 本発明は、複径間桁橋の左径間主桁と右径間主桁とを連続化した部位に対する死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ構成することができると共に、完成後に活荷重に基づく負の曲げモーメントにより加わる引張力に起因する亀裂の発生を有効に防止する主桁の連続化構造を提供する。
【解決手段】 橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁3の桁端3aと橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁3の桁端3aを共通の橋脚2上に支持し、上記左径間主桁の桁端と右径間主桁の桁端を両桁端間に形成された遊間5の主桁上面側端部5aにおいて上記両桁端に亘って延びる連結板7を介し連結すると共に、同遊間の主桁下面側端部5bにおいて非連結状態にし、上記遊間及び連結板をコンクリート15内に埋設して上記左径間主桁と右径間主桁を連続化したことを特徴とする主桁の連続化構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を共通の橋脚上に支持する複径間桁橋における、上記左径間主桁と右径間主桁の連続化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aに示すように、複径間桁橋は橋の長さに応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はPCコンクリート製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間に夫々橋幅方向に並列し架け渡し、共通の橋脚2上に左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aを支持する構成となっている。
【0003】
上記複径間桁橋にあっては、図1Bに示すように、主桁の自重や床版コンクリートの重量等の死荷重、又は走行車両の重量等の活荷重に基づき上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを連続化した部位において大きな負の曲げモーメント(図1Bの−のモーメント、即ち上向きの凸状となるように曲げようとする力)が発生し上記連続化した部位の連結コンクリート15に亀裂が発生する恐れがある。
【0004】
特許文献1は上記左径間主桁の桁端と右径間主桁の桁端間に形成された遊間が存在する状態(上記負の曲げモーメントが発生しない状態)で、上記左径間主桁上と右径間主桁上に床版コンクリートを夫々打設し、該各床版コンクリートの重量による正の曲げモーメント(図1Bの+のモーメント、即ち下向きの凸状となるように曲げようとする力)を各主桁に発生させた後、上記遊間に連結コンクリートを打設し両主桁の連続化を図る方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−19687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら上記特許文献1による主桁の連続化構造においては、死荷重に基づく負の曲げモーメントは減殺することができたとしても、完成後に加わる活荷重に基づく負の曲げモーメントによって上記連結コンクリートに引張力が加わると、該引張力を上記連結コンクリートのみ、即ち引張強度の弱いコンクリート部材のみで受け持つこととなり、上記亀裂の問題を有効に解消することはできない。
又連結コンクリートの打設前に打設した床版コンクリートの重量で主桁個々の桁端が上記遊間の主桁上面側端部を広げるように変位する恐れがある。
【0007】
上記特許文献1においては、上記遊間に打設した連結コンクリートのずれ止めを図る手段として各主桁の桁端面から結合用部材を縦長に突設し連結コンクリート内に埋設する方法を採っているが、両結合用部材は互いに連結されておらず、結局は引張強度の弱いコンクリート部材に引張力を担わせる構造であることに変わりはない。
【0008】
仮に上記両結合用部材を縦長の全長に亘って連結すると、今度は死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺せんとする目的が達成できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記左径間主桁と右径間主桁とを連続化した部位に対する死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ、活荷重に基づく負の曲げモーメントにより上記連続化した部位のコンクリートに加わる引張力を連結板に受け持たせ、上記亀裂の問題を有効に解消することができる主桁の連続化構造を提供する。
【0010】
具体的には、橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を両桁端間に形成された遊間の主桁上面側端部において上記両桁端に亘って延びる連結板を介し連結すると共に、同遊間の主桁下面側端部において非連結状態にし、上記遊間及び連結板をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と右径間主桁を連続化し、上記コンクリートに加わる引張力を上記連結板に受け持たせ、上記亀裂の問題を有効に解消することができる主桁の連続化構造を提供するものである。
【0011】
又上記両主桁及び連結板に設けた連結孔に連結棒を遊挿し、上記両主桁の桁端が個々に上記遊間の主桁上面側端部を広げるように変位するのを防止すると共に、上記連結孔にコンクリートを充填し、連続化構造を強化する。
【0012】
又上記連結板を橋幅方向に間隔を置き並行に配置して該間隔と上記遊間を連通せしめ、上記連結板を上記コンクリート内に埋設し、該コンクリートの均密な充填を図る。
【0013】
好ましくは、上記連結板を板材又はチャンネル材又は平棒材で形成するものである。
【0014】
上記両主桁をH形鋼にて形成した場合には、該H形鋼製主桁の桁端を下フランジをもって上記橋脚上に支持し、該H形鋼製主桁の桁端の上フランジを上記連結板にて連結すると共に、同下フランジを非連結状態にして、上記連続化を図るものである。
【0015】
上記両主桁をコンクリートにて形成した場合には、該コンクリート製主桁の桁端を形鋼継手にて形成し、上記両主桁の桁端を上記形鋼継手をもって橋脚上に支持して、上記連続化を図るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、左径間主桁と右径間主桁とを連続化した部位に対する死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ構成することができると共に、完成後に活荷重に基づく負の曲げモーメントにより上記連続化した部位のコンクリートに加わる引張力を連結板に適切に受け持たせ、該コンクリートに亀裂が生じるのを有効に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】Aは複径間桁橋を概示する側面図、Bは複径間桁橋に発生する曲げモーメントの分布図。
【図2】H形鋼から成る主桁を用いた実施例における、左径間主桁と右径間主桁を連結板で連結した状態を示す説明図。
【図3】上記実施例における連結板による連結を説明する説明図。
【図4】上記実施例に係る主桁の連続化構造を示す橋長方向断面図。
【図5】上記実施例に係る主桁の連続化構造を平面において断面視する図(図4のA−A線断面図)。
【図6】上記実施例に係る主桁の連続化構造を示す橋幅方向断面図(図4のB−B線断面図)。
【図7】H形鋼から成る主桁を用いた他の実施例における、左径間主桁と右径間主桁を連結板で連結した状態を示す説明図。
【図8】上記実施例における連結板による連結を説明する説明図。
【図9】上記実施例に係る主桁の連続化構造を示す橋長方向断面図。
【図10】上記実施例に係る主桁の連続化構造を平面において断面視する図(図9のA−A線断面図)。
【図11】上記実施例に係る主桁の連続化構造を示す橋幅方向断面図(図9のB−B線断面図)。
【図12】上記実施例に係る主桁の連続化構造を示す他の橋幅方向断面図(図9のC−C線断面図)。
【図13】コンクリートから成る主桁を用いた連続化構造の実施例を示す橋長方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
既述した通り、図1Aに示すように、複径間桁橋は橋の長さに応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はPCコンクリート製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間に夫々橋幅方向に並列し架け渡す構成となっている。
【0019】
詳述すると、一つの橋脚2の橋座面2a上に対し支承4を介して左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aが支持されており、該左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3a間、具体的には各桁端3aの夫々の桁端面3b間に遊間5を形成し、該遊間5により上記左径間主桁3と右径間主桁3は上記橋脚2上において途切れた構造を有しており、上記遊間5内に連結コンクリート15を打設して上記左径間主桁3と右径間主桁3の連続化を図っている。
【0020】
本発明においては、図2〜図13に示すように、上記左径間主桁3と右径間主桁3の連続化を図る手段として、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを上記遊間5の主桁上面側端部5aにおいて上記両桁端3aに亘って延びる連結板7を介し連結すると共に、同遊間5の主桁下面側端部5bにおいて非連結状態にし、上記遊間5及び連結板7を連結コンクリート15内に埋設することにより、死荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ構成でき、完成後の活荷重に基づく負の曲げモーメントにより上記連結コンクリート15に加わる引張力を上記連結板7に適切に受け持たせることができる。
【0021】
図2〜図6は上記径間主桁3としてH形鋼を用いた本発明に係る主桁の連続化構造の実施例を示している。
【0022】
図2に示すように、H形鋼から成る左径間主桁3と右径間主桁3は夫々ウェブ3cと該ウェブ3cの上端に沿って延びる上フランジ3dと同下端に沿って延びる下フランジ3eとを有し、該左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aを下フランジ3eをもって共通の橋脚2の橋座面2a上に支承4を介して支持し、上記左径間主桁3と右径間主桁3を連続化する。
【0023】
即ち、まず図3に示すように、上記左径間主桁3の桁端面3bと右径間主桁3の桁端面3b間に形成される遊間5の主桁上面側端部5aにおいて、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを両桁端3aに亘って延びる連結板7を介して連結すると共に、同遊間5の主桁下面側端部5bにおいて非連結状態にする。
【0024】
具体的には、上記両桁端3aの上フランジ3d相互を該上フランジ3d相互の上面8Aに亘って延びる連結板7を介し連結する。同様に上記両桁端3aの上フランジ3d相互を該上フランジ3d相互の下面8Bに亘って延びる連結板7を介し連結する。又上記両桁端3aの下フランジ3e相互は非連結状態にする。
【0025】
上記連結板7は上記両桁端3aの上フランジ3d相互の上面8Aに重畳して配置し、二つの上記連結板7を間隔9を置き並行に配置する。同様に上記連結板7は上記両桁端3aの上フランジ3d相互の下面8Bに重畳して配置し、二つの上記連結板7を間隔9を置き並行に配置する。これにより、上記各間隔9と上記遊間5とを連通せしめ後述する連結コンクリート15の打設時に上記間隔9から空気を抜くことができ、該連結コンクリート15を均密に充填することができる。
【0026】
図3に示すように、上記連結板7に連結孔10を複数穿設し、両桁端3aの夫々の上フランジ3dに上記連結孔10と対応する連結孔11を複数穿設し、両連結孔10,11を一致させて該両連結孔10,11内に連結棒12を挿入し上記左径間主桁3と右径間主桁3とを橋長方向に制限しつつ連結する。
【0027】
本実施例のように上記連結棒12としてボルト12'を用いる場合には、該ボルト12'を各桁端3aの上フランジ3dの下面8B側から挿入し上面8A側から突出した突出端(雄ねじ端)をナット13で締結する。
【0028】
後述する床版コンクリート14と連結コンクリート15を別打ちし該床版コンクリート14を先打ちする場合には、上記ナット13は遊びをもって締結する。又はボルト12'を各桁端3aの上フランジ3dの上面8A側から挿入し下面8B側から突出するように遊挿しナット13による締結をしない。各桁端3aを上方に変位可能に連結し、床版コンクリート14の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントの発生を防止するためである。
【0029】
尚上記ナット13による締結をしない場合には上フランジ3dの下面8Bに重畳配置する連結板7は適宜溶接等をして落下しないように仮固定する。
【0030】
上述のように、上記遊間5の主桁上面側端部5a、即ちH形鋼から成る左径間主桁3と同右径間主桁3の各桁端3aの上フランジ3d相互間において、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを連結板7を介して橋長方向の移動を制限しつつ連結する。
【0031】
又上記遊間5の主桁下面側端部5b、即ちH形鋼から成る左径間主桁3と同右径間主桁3の各桁端3aの下フランジ3e相互間において、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを非連結状態にする。
【0032】
次いで、上記左径間主桁3上及び右径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0033】
換言すると、橋幅方向に隣接する上記左径間主桁3間における上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を閉鎖部材で閉鎖し上記左径間主桁3の各上フランジ3dの上面8A上、又は該各上フランジ3dを一部埋設しつつ床版コンクリート14を打設する。同様に橋幅方向に隣接する上記右径間主桁3間における上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を閉鎖部材で閉鎖し上記右径間主桁3の各上フランジ3dの上面8A上、又は該各上フランジ3dを一部埋設しつつ床版コンクリート14を打設する。
【0034】
又上記床版コンクリート14の打設と同時、或いは床版コンクリート14の打設後、型枠を組んで上記遊間5内に連結コンクリート15を打設する。
【0035】
本実施例にあっては、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを上記遊間5の主桁上面側端部5aにおいてのみ連結板7を介して連結し、上記床版コンクリート14の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントを減殺することができる。
【0036】
即ち、上記ボルト12'の突出端をナット13で完全に締結している場合には、床版コンクリート14の重量に基づく負の曲げモーメントにより上記連結板7が上向きの凸状となるように僅かに変形し、上記負の曲げモーメントを減殺する。この場合には上記床版コンクリート14と同時、或いは床版コンクリート14の打設後、上記遊間5内に連結コンクリート15を打設して、該遊間5及び連結板7を該連結コンクリート15内に埋設する。
【0037】
又は上記ボルト12'の突出端(上フランジ3dの上面8A側に突出した突出端)をナット13で遊びをもって締結している場合には、上記連結板7で連結されている各桁端3aが僅かに上方に変位するのに応じて上記連結板7が変位し上記負の曲げモーメントの発生を防止する。この場合には上記床版コンクリート14の打設後、ナット13を完全に締付けてから上記遊間5内に連結コンクリート15を打設して、該遊間5及び連結板7を該連結コンクリート15内に埋設する。
【0038】
又は上記ボルト12'の突出端(上フランジ3dの下面8B側に突出した突出端)をナット13で締結しない場合には、上記連結板7で連結されている各桁端3aが僅かに上方に変位するのに応じて上記連結板7が変位し上記負の曲げモーメントの発生を防止する。この場合には上記床版コンクリート14と同時、或いは床版コンクリート14の打設後、上記遊間5内に連結コンクリート15を打設して、該遊間5及び連結板7を該連結コンクリート15内に埋設する。
【0039】
尚上述した何れの場合も両桁端3aを橋長方向の移動を制限しつつ連結しているため、床版コンクリート14の重量で左径間主桁3と右径間主桁3の個々の桁端3aが上記遊間5の主桁上面側端部5aを広げるように変位する恐れがない。
【0040】
上記連結コンクリート15が硬化した後、舗装26を施せば、図4〜図6に示す主桁の連続化構造が完成する。
【0041】
上述の通り、本実施例に係る主桁の連続化構造は床版コンクリート14と連結コンクリート15を別打ちする場合と一体打ちする場合の何れの場合にも、床版コンクリート14の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントを減殺しつつ構成することができる。
【0042】
又上記連結コンクリート15の硬化後は、上記左径間主桁3及び右径間主桁3に加わる活荷重又は舗装26の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントによって連結コンクリート15の上方部位に引張力が加わるが、該引張力を上記連結板7に適切に受け持たせ、上記連結コンクリート15に亀裂が生じるのを有効に防止する。
【0043】
図7〜図12は上記径間主桁3としてH形鋼を用いた本発明に係る主桁の連続化構造の他の実施例を示している。
【0044】
図7に示すように、H形鋼から成る左径間主桁3と右径間主桁3は夫々ウェブ3cと該ウェブ3cの上端に沿って延びる上フランジ3dと同下端に沿って延びる下フランジ3eとを有し、該左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aを下フランジ3eをもって共通の橋脚2の橋座面2a上に枕部6を介して支持し、上記左径間主桁3と右径間主桁3を連続化する。
【0045】
即ち、まず図8に示すように、上記左径間主桁3の桁端面3bと右径間主桁3の桁端面3b間に形成される遊間5の主桁上面側端部5aにおいて、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを両桁端3aに亘って延びる連結板7を介して連結すると共に、同遊間5の主桁下面側端部5bにおいて非連結状態にする。
【0046】
具体的には、上記両桁端3aの上フランジ3d相互を該上フランジ3d相互の上面8Aに亘って延びる連結板7を介し連結する。同様に上記両桁端3aの上フランジ3d相互を該上フランジ3d相互の下面8Bに亘って延びる連結板7を介し連結する。又上記両桁端3aの下フランジ3e相互は非連結状態にする。
【0047】
上記連結板7は上記両桁端3aの上フランジ3d相互の上面8Aに重畳して配置し、二つの上記連結板7を間隔9を置き並行に配置する。同様に上記連結板7は上記両桁端3aの上フランジ3d相互の下面8Bに重畳して配置し、二つの上記連結板7を間隔9を置き並行に配置する。これにより、上記各間隔9と上記遊間5とを連通せしめ後述する連結コンクリート15の打設時に上記間隔9から空気を抜くことができ、該連結コンクリート15を均密に充填することができる。
【0048】
図8に示すように、上記連結板7に連結孔10を複数穿設し、両桁端3aの夫々の上フランジ3dに上記連結孔10と対応する連結孔11を複数穿設し、両連結孔10,11を一致させて該両連結孔10,11内に連結棒12を挿入し上記左径間主桁3と右径間主桁3とを橋長方向に制限しつつ連結する。
【0049】
本実施例のように上記連結棒12として逆U字鉄筋12''を用いる場合には、該逆U字鉄筋12''の各自由端を上記上フランジ3dの上面8A側からウェブ3cを跨ぐように上記連結孔10,11内に遊挿する。尚上記上フランジ3dの下面8Bに重畳配置する連結板7は適宜溶接等をして落下しないように仮固定する。
【0050】
この場合には上記両連結孔10,11を逆U字鉄筋12''の各自由端の軸径よりも大径に形成し、該逆U字鉄筋12''の各自由端を上記両連結孔10,11内に遊挿する。これにより、上記左径間主桁3と右径間主桁3を橋長方向に移動するのを制限しつつ、各桁端3aを上方に変位可能に連結する。又両連結孔10,11内にも後述する連結コンクリート15を充填することができ、連続化構造を強化することができる。
【0051】
上述のように、上記遊間5の主桁上面側端部5a、即ちH形鋼から成る左径間主桁3と同右径間主桁3の各桁端3aの上フランジ3d相互間において、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを連結板7を介して橋長方向の移動を制限しつつ連結する。
【0052】
又上記遊間5の主桁下面側端部5b、即ちH形鋼から成る左径間主桁3と同右径間主桁3の各桁端3aの下フランジ3e相互間において、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを非連結状態にする。
【0053】
次いで、橋幅方向に隣接する上記左径間主桁3間における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート24を打設し、連続して上記左径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。同様に橋幅方向に隣接する上記右径間主桁3間における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート24を打設し、連続して上記左径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0054】
換言すると、上記左径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口25'を閉鎖部材で閉鎖し上記左径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて上記スペース内にスラブコンクリート24を打設し、連続して上記左径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0055】
同様に、上記右径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口25'を閉鎖部材で閉鎖し上記右径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口25を通じて上記スペース内にスラブコンクリート24を打設し、連続して上記右径間主桁3上に床版コンクリート14を打設する。
【0056】
又上記スラブコンクリート24及び床版コンクリート14の打設と同時、或いはスラブコンクリート24及び床版コンクリート14の打設後、型枠を組んで上記遊間5を通じて橋脚2の橋座面2a上に連結コンクリート15を打設する。
【0057】
本実施例にあっては、上記左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを上記遊間5の主桁上面側端部5aにおいてのみ連結板7を介して連結し、上記スラブコンクリート24及び床版コンクリート14の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0058】
即ち、上記連結板7で連結されている各桁端3aが僅かに上方に変位するのに応じて上記連結板7が変位し上記負の曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0059】
又上記逆U字鉄筋12''で両桁端3aを橋長方向の移動を制限しつつ連結しているため、スラブコンクリート24及び床版コンクリート14の重量で左径間主桁3と右径間主桁3の個々の桁端3aが上記遊間5の主桁上面側端部5aを広げるように変位する恐れがない。
【0060】
上記連結コンクリート15が硬化した後、舗装26を施せば、図9〜図12に示す主桁の連続化構造が完成する。
【0061】
上述の通り、本実施例に係る主桁の連続化構造はスラブコンクリート24及び床版コンクリート14と連結コンクリート15を別打ちする場合と一体打ちする場合の何れの場合にも、スラブコンクリート24及び床版コンクリート14の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントの発生を防止しつつ構成することができる。
【0062】
又上記連結コンクリート15の硬化後は、上記左径間主桁3及び右径間主桁3に加わる活荷重又は舗装26の重量(死荷重)に基づく負の曲げモーメントによって連結コンクリート15の上方部位に引張力が加わるが、該引張力を上記連結板7に適切に受け持たせ、上記連結コンクリート15に亀裂が生じるのを有効に防止する。
【0063】
又上記H形鋼から成る径間主桁3を用いた図2〜図6の実施例、図7〜図12の実施例の何れにおいても、橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間には該各桁端3aに穿設した通挿孔17を介して橋幅方向に延びるPCケーブル、無垢の線材等の鋼線材から成る連結線材16を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して上記連結コンクリート15内に埋設すると共に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に該各桁端3aに穿設した通挿孔17を介して橋幅方向に延びる上記鋼線材から成る他の連結線材16を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して上記連結コンクリート15内に埋設し上記主桁の連続化構造を強化する。
【0064】
再述すると、上記連結線材16は図4〜図6,図9〜図12に示すように、橋幅方向に並列したH形鋼から成る各主桁3の桁端3aにおけるウェブ3cを貫通するように通挿孔17を介して通挿して橋幅方向両端の主桁3の桁端3aにおけるウェブ3c外側面においてナット18により締結する。
【0065】
又は上記橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる管材16'内に緩挿した連結線材16を通挿して上記連結コンクリート15内に埋設すると共に、上記橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる他の管材16'内に緩挿した連結線材16を通挿して上記連結コンクリート15内に埋設し、上記連結線材16を緊張することにより上記連結コンクリート15にプレストレス力を与え補強することができる。
【0066】
更に上記図7〜図12の実施例の場合には上記左径間主桁3と右径間主桁3の各ウェブ3cの橋長方向の全長に亘り上記連結線材16又は管材16'内に緩挿した連結線材16を橋長方向に間隔を置いて多数本挿通して上記スラブコンクリート24にプレストレス力を与え補強することができる。
【0067】
又上記図7〜図12の実施例の場合には、上記左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aを橋座面2aから立ち上げた連結条材19と連結し、橋座面2aの上面に連結コンクリート15を打設し更に強化を図ることができる。
【0068】
具体的には、図9,図11に示すように、上記連結条材19を上記左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aにおける上フランジ3d,下フランジ3eに設けた貫挿孔23に貫挿し、上記上フランジ3dの上面8Aから突出する連結条材19の突出端(雄ねじ端)にナット20を螺合し、該ナット20を上記上フランジ3dの上面8Aに定着して主桁3の桁端3aを橋脚2に連結する。
【0069】
上記ナット20は上記上フランジ3dの上面8Aに直接定着するか、支圧材21を介して上記上フランジ3dの上面8Aに定着せしめる。
【0070】
上記支圧材21は橋幅方向に並列された桁端3aを橋幅方向に横断するように延在し、各桁端3aの上フランジ3dの上面8Aに架橋載置する。
【0071】
上記支圧材21を使用した場合、上記連結条材19群の他の一部を橋幅方向に隣接する主桁3間の間隔を通して立ち上げ、即ち上フランジ3d間の間隔を通して立ち上げ、支圧材21の主桁3間に延在する部分21a、即ち上フランジ3d間に延在する支圧材部分21aに連結条材19の上端を貫挿してナット20を螺合し、支圧材部分21a上面に定着する。
【0072】
上記連結条材19は例えば鉄筋等の鋼棒にて形成し、該鋼棒の下端をコンクリート製橋脚2に一体に埋設して橋座面2aから立ち上げる。又は鋼棒の他、ケーブルの使用が可能である。
【0073】
連結条材19として鋼棒を用いる場合、コンクリート製橋脚2に埋設した補強鉄筋22の端部を橋座面2aから上方へ突出し、該突出部分で上記鋼棒(連結条材19)を形成する。
【0074】
図13はコンクリート桁から成る左径間主桁3及びコンクリート桁から成る右径間主桁3を架設する複径間桁橋において、上記両主桁3の各桁端3aをH形鋼から成る継手3a'にて形成する実施例を示している。
【0075】
詳述すると、コンクリート桁から成る上記左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3aを夫々ウェブ3cと該ウェブ3cの上端に沿って延びる上フランジ3dと同下端に沿って延びる下フランジ3eとを有する継手3a'にて形成し、該各継手3a'を上記下フランジ3eをもって共通の橋脚2上に枕部6を介して支持し、コンクリート桁から成る上記左径間主桁3と右径間主桁3を連続化する。尚上記左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3a、即ち各継手3a'相互の継手端面3b'間に遊間5が形成されている。
【0076】
上記両主桁3を同一橋脚2上に支持した後、上記両継手3a'を該両継手3a'間に形成された遊間5の主桁上面側端部5aにおいて、両継手3a'の上フランジ3d相互の上面8Aに亘って延びる連結板7を介し連結する。同様に両継手3a'の上フランジ3d相互の下面8Bに亘って延びる連結板7を介し連結すると共に、上記遊間5の主桁下面側端部5bにおいて、上記両継手3a'の下フランジ3e相互は非連結状態にする。
【0077】
上記連結板7による上記両継手3a'の連結及び連結コンクリート15の打設に関しては上述した図7〜図12の実施例と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0078】
又上記連結線材16による強化及び連結条材19による強化に関しても、上述した図7〜図12の実施例と同様に適用できるため、ここではその説明を省略する。
【0079】
本発明にあっては、上記連結板7による連結は上記各実施例のように必ずしも両主桁3の桁端3a又は継手3a'の各上フランジ3dの上面8A及び下面8Bの両面を連結しなくともよく、該各上フランジ3dの上面8A又は下面8Bの何れかを連結するのみでも良い。
【0080】
又本発明にあっては、上記連結板7として板材又はチャンネル材又は平棒材の適用が可能であり、上記両桁端3a又は両継手3a'の上フランジ3d相互に亘り、且つ、該上フランジ3dに重畳して配置できれば、連結板7として上記以外の部材を用いることを包含する。又上記連結板7は引張強度の強い鋼材製の中実板を適用するのが望ましい。
【0081】
又本発明にあっては、上記両桁端3a又は両継手3a'の上フランジ3d相互の上面8Aに配置する連結板7を幅広に形成して、上記各実施例のように間隔9を形成せず1つの連結板7を上記上面8Aに重畳して配置する場合を包含する。
【0082】
更に本発明にあっては、上記したH形鋼から成る主桁3に代えて、T形鋼又はI形鋼又はπ形鋼等の上フランジ3dを有する形鋼から成る主桁3を用い該主桁3の上フランジ3dを上記連結板7で連結し連続化構造を形成する場合を包含する。又上記したH形鋼から成る継手3a'に代えて、T形鋼又はI形鋼又はπ形鋼等の上フランジ3dを有する形鋼から成る継手3a'を用い該継手3a'の上フランジ3dを上記連結板7で連結し連続化構造を形成する場合を包含する。
【符号の説明】
【0083】
1…橋台、2…橋脚、2a…橋座面、3…主桁(左径間主桁、右径間主桁)、3a…桁端、3a'…継手、3b…桁端面、3b'…継手端面、3c…ウェブ、3d…上フランジ、3e…下フランジ、4…支承、5…遊間、5a…主桁上面側端部、5b…主桁下面側端部、6…枕部、7…連結板、8A…上フランジの上面、8B…上フランジの下面、9…間隔、10…連結孔、11…連結孔、12…連結棒、12'…ボルト、12''…逆U字鉄筋、13…ナット、14…床版コンクリート、15…連結コンクリート、16…連結線材、16'…管材、17…通挿孔、18…ナット、19…連結条材、20…ナット、21…支圧材、21a…支圧材部分、22…補強鉄筋、23…貫挿孔、24…スラブコンクリート、25,25'…開口、26…舗装。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を共通の橋脚上に支持し、上記左径間主桁の桁端と右径間主桁の桁端を両桁端間に形成された遊間の主桁上面側端部において上記両桁端に亘って延びる連結板を介し連結すると共に、同遊間の主桁下面側端部において非連結状態にし、上記遊間及び連結板をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と右径間主桁を連続化したことを特徴とする主桁の連続化構造。
【請求項2】
上記両主桁及び連結板に設けた連結孔に連結棒を遊挿し、該連結孔に上記コンクリートを充填したことを特徴とする請求項1記載の主桁の連続化構造。
【請求項3】
上記連結板を橋幅方向に間隔を置き並行に配置して該間隔と上記遊間を連通せしめ、上記連結板を上記コンクリート内に埋設することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の主桁の連続化構造。
【請求項4】
上記連結板を板材又はチャンネル材又は平棒材で形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の主桁の連続化構造。
【請求項5】
上記両主桁をH形鋼にて形成し、該H形鋼製主桁の桁端を下フランジをもって上記橋脚上に支持し、該H形鋼製主桁の桁端の上フランジを上記連結板にて連結すると共に、同下フランジを非連結状態にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の主桁の連続化構造
【請求項6】
上記両主桁をコンクリートにて形成し、該コンクリート製主桁の桁端を形鋼継手にて形成し、上記両主桁の桁端を上記形鋼継手をもって上記橋脚上に支持したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の主桁の連続化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−154060(P2012−154060A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12648(P2011−12648)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【特許番号】特許第4728453号(P4728453)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(301077437)朝日エンヂニヤリング株式会社 (17)
【出願人】(300082140)エコ ジャパン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】