説明

乗物遅延管理システム及び、乗物遅延管理方法

【課題】交通機関の遅延が生じた場合に、遅延の影響を受けた利用者を管理する管理者の負荷を軽減させることが可能となる乗物遅延管理システムを提供する。
【解決手段】定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶しておき、利用者である発信者が有する発信者端末から、乗物の遅延情報を受信し、遅延情報に基づいて遅延の影響がある路線を特定する。そして、遅延の影響がある路線と、予め記憶された路線情報を比較し遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出し、抽出された路線利用者の端末に対して、遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する。問合せに対して許可を受信した端末から、当該端末の位置情報を受信し、この位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち遅延の影響がある遅延予想者を抽出し、遅延予想者の一覧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物遅延管理システム及び、乗物遅延管理方法に関し、特に、定期的に運行される乗物が遅延した際に、情報通信技術を活用して、利用者や関係者に情報提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの人が、通勤、通学のために交通機関を利用している。特に、大都市圏では交通機関を利用する人の数は莫大である。したがって、定期的に運行される電車やバスが、車両故障や災害により遅延した場合は、かなり多くの人に影響を及ぼす。
【0003】
この遅延の影響を受けた利用者は、通勤、通学先である会社や学校に、いつもの定時に到着することができないため、自分が遅延する予定であることを、会社や学校の管理者に通知しなくてはならない。
【0004】
このような事態に対して、利用者に対して早急に遅延情報を通知すべく、交通機関の利用者が所有する携帯端末に対して運行ダイヤが乱れている情報等を通知するシステムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
さらに、遅延の種類に応じてレベル分けをして、そのレベルに応じて、遅延情報を通知する相手を選択して通知する方法が知られている(例えば、特許文献2)。この方法によれば、遅延情報が会社や学校等の管理者にも共有される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−073331号公報
【特許文献2】特開2006−330964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2であっても、交通機関の遅延の連絡を受ける管理者にとっては、負荷が充分には軽減されていない。すなわち、管理者は、交通機関の遅延が生じた際に、この交通機関を利用する利用者ほぼ全員から、電話やメール等で連絡を個々に受けなくてはならない。しかも、管理者への連絡のタイミングは、利用者が交通機関からの遅延情報を得たタイミングであるため、すべての利用者が同時であることも多く、管理者が少人数である場合は、手に負えない場合も多い。
【0008】
そこで、本発明では、交通機関の遅延が生じた場合に、遅延の影響を受けた利用者を管理する管理者の負荷を軽減させることが可能となる乗物遅延管理システム及び、乗物遅延管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のような解決手段を備える。
【0010】
(1) 定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶する路線情報記憶手段と、
前記利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信する遅延情報受信手段と、
前記遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定する遅延路線特定手段と、
特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出する路線利用者抽出手段と、
抽出された前記路線利用者の端末に対して、前記遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する問合せ送信手段と、
前記問合せに対して、前記路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信する追跡許可受信手段と、
前記位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、前記遅延の影響がある遅延予想者を抽出する遅延予想者抽出手段と、
前記遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力する一覧出力手段と、
を備える乗物遅延管理システム。
【0011】
(1)の発明によれば、定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶しておき、利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信し、遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定する。そして、特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出し、抽出された路線利用者の端末に対して、遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する。そして、問合せに対して、路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信する。さらに、位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、遅延の影響がある遅延予想者を抽出し、遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力する。
【0012】
したがって、交通機関の遅延が生じた場合に、遅延の影響を受けた利用者を管理する管理者にとっては、発信者端末の通知から、自動的に遅延予想者の一覧が出力されることで、管理者の負荷を軽減させることが可能となる。ここで、路線利用者に対して、位置情報を追跡することについての許可を得るようにしたのは、路線利用者の位置情報は個人情報になるため、利用者の許可を得てから位置情報を追跡できることとしている。これにより、各利用者のプライバシーに配慮しつつシステムを実現することが可能である。
【0013】
(2) (1)の発明であって、抽出された前記遅延予想者の端末に対して、前記遅延の影響を回避するための回避ルートを送信する回避ルート送信手段と、をさらに備える乗物遅延管理システム。
【0014】
(2)の発明によれば、抽出された遅延予想者に対して、遅延の影響を回避するための回避ルートを送信することが可能である。
【0015】
(3) (1)の発明であって、前記乗物遅延管理システムは、定期的に、前記遅延予想者の端末に前記遅延情報を送信するとともに、前記遅延予想者の端末の位置情報を受信する定期処理手段を備える乗物遅延管理システム。
【0016】
(3)の発明によれば、定期的に、遅延予想者の端末に遅延情報を送信するとともに、遅延予想者の端末の位置情報を受信することが可能である。
【0017】
(4) (3)の発明であって、前記定期処理手段が前記遅延情報を送信する際に、前記路線利用者の位置情報に基づいて、送信する路線利用者を限定して送信する路線利用者一括送信手段をさらに備える乗物遅延管理システム。
【0018】
(4)の発明によれば、定期処理手段が遅延情報を送信する際に、路線利用者の位置情報に基づいて、送信する路線利用者を限定して送信することが可能である。
【0019】
(5) (1)に記載の乗物遅延管理システムと、前記利用者が有するカードを読取可能なカード読取端末とから構成されるシステムであって、
前記カード読取端末は、
前記路線利用者の端末から前記乗物遅延管理システムへの通信が不可能である場合に、前記カード又は前記路線利用者のIDを読取るカード読取手段と、
前記IDを前記乗物遅延管理システムに送信するID送信手段と、
前記乗物遅延管理システムは、
前記IDを前記カード読取端末から受信すると、当該路線利用者の安否を登録する安否登録手段と、
を備えるシステム。
【0020】
(5)の発明によれば、カード読取端末が路線利用者の端末から乗物遅延管理システムへの通信が不可能である場合に、カード又は路線利用者のIDを読取って、当該IDを乗物遅延管理システムに送信する。そして、乗物遅延管理システムは、IDをカード読取端末から受信すると、当該路線利用者の安否を登録することが可能である。
【0021】
(6) 定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶するステップと、
前記利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信するステップと、
前記遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定するステップと、
特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出するステップと、
抽出された前記路線利用者の端末に対して、前記遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信するステップと、
前記問合せに対して、前記路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信するステップと、
前記位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、前記遅延の影響がある遅延予想者を抽出するステップと、
前記遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力するステップと、
を備える乗物遅延管理方法。
【0022】
(6)の発明によれば、定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶しておき、利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信し、遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定する。そして、特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出し、抽出された路線利用者の端末に対して、遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する。そして、問合せに対して、路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信する。さらに、位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、遅延の影響がある遅延予想者を抽出し、遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力する。
【0023】
したがって、交通機関の遅延が生じた場合に、遅延の影響を受けた利用者を管理する管理者にとっては、発信者端末の通知から、自動的に遅延予想者の一覧が出力されることで、管理者の負荷を軽減させることが可能となる。ここで、路線利用者に対して、位置情報を追跡することについての許可を得るようにしたのは、路線利用者の位置情報は個人情報になるため、利用者の許可を得てから位置情報を追跡できることとしている。これにより、各利用者のプライバシーに配慮しつつシステムを実現することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、交通機関の遅延が生じた場合に、遅延の影響を受けた利用者を管理する管理者の負荷を軽減させることが可能となる乗物遅延管理システム及び、乗物遅延管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適な実施形態である乗物遅延管理システム全体と機能ブロックを示す図である。
【図2】本発明の好適な実施形態である乗物遅延管理システムが実行する遅延予想者出力処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の好適な実施形態である乗物遅延管理システムが実行する遅延予想者出力処理を説明するための模式図である。
【図4】本発明の好適な実施形態である乗物遅延管理システムが実行する遅延予想者出力処理を説明するための模式図である。
【図5】本発明の好適な実施形態である発信者送信データテーブルを示す図である。
【図6】本発明の好適な実施形態である発信者端末10に表示される画面イメージを示す図である。
【図7】本発明の好適な実施形態である遅延管理テーブルを示す図である。
【図8】本発明の好適な実施形態である利用者端末20に表示される画面イメージを示す図である。
【図9】本発明の好適な実施形態であるカード読取端末30に表示される画面イメージを示す図である。
【図10】本発明の好適な実施形態である一括送信管理テーブルを示す図である。
【図11】本発明の好適な実施形態である乗物遅延管理システムが実行する安否情報登録処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ図番号を付している。
【0027】
[乗物遅延管理システムの構成]
図1は、乗物遅延管理システム1の全体構成を示す図である。乗物遅延管理システム1は、交通機関を利用する利用者が使用する発信者端末10、利用者端末20、発信者端末10及び利用者端末20とのデータの送受信を行う遅延管理システム用サーバ200と、利用者の遅延を管理する管理者が利用する管理者端末50とから構成される。
【0028】
また、後述するように、自動販売機やCAT(Credit Authorization Terminal)端末等により実現されるカード読取端末30が、遅延管理システム用サーバ200と通信可能に接続されていてよい。
【0029】
発信者端末10、利用者端末20、管理者端末50及びカード読取端末30は、遅延管理システム用サーバ200と、インターネット網などの公衆回線網を介して接続されていてもよいし、LAN(Local Area Network)やプライベート回線により通信可能に接続されていてよい。
【0030】
発信者端末10は、乗物遅延管理システム1を利用する利用者のうち遅延情報を送信する者が発信者となり、その発信者が利用する端末である。発信者端末10は、具体的には、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、電子書籍端末、スレート端末等であってもよい。すなわち、発信者端末10は、制御部11、データ記憶部12,データ通信部13,タッチパネル部14、GPS部15を備えていれば、家庭用電化製品、業務用電化製品、携帯端末、業務用端末のいずれであってもよい。
【0031】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、データ通信部13として、無線対応通信デバイスを備え、データ記憶部12として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のいずれか又は双方を備える。さらに、タッチパネル部14として、画像を表示する液晶モニタ等の表示部を備え、ユーザからの入力を受付けるタッチパネルや音声入力等の入力部を備える。
【0032】
GPS部15は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信することが可能な装置であって、制御部11との恊働により、GPS衛星までの距離を算出することで、地球上の位置(緯度、経度)を算出することが可能な装置である。
【0033】
遅刻管理システム用サーバ200は、利用者の遅延を管理するサーバである。遅刻管理システム用サーバ200は、制御部201、データ記憶部202,データ通信部203,路線データベース250、利用者データベース270を備える。
【0034】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、データ通信部203として、無線対応通信デバイスを備え、データ記憶部202として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のいずれか又は双方を備える。
【0035】
路線データベース250は、交通機関の路線に関するデータベースであって、利用者の出発地、目的地、出発時間を入力すると、適切な経路を提示するデータベースである。ここで、路線データベース250は、出発地として、乗物が乗車可能となる具体的な場所(駅名やバス停等)の入力がされていなくても、利用者のGPS情報から、出発地を決定する機能を有する。さらに、目的地は、管理者が指定する会社などの所定の場所を予め入力しておいてよい。加えて、路線データベース250は、利用者のGPS情報から、利用者が駅やバス停等の乗車可能となる場所に居るのか、または、利用者が乗物に乗車中であって所定の区間(どの駅とどの駅の間)に居るのかが判別可能である。
【0036】
さらに、路線データベース250は、後述するように、提示した経路において遅延情報を取得すると、遅延情報の遅延時間から回避ルートを提示する機能を有する。
【0037】
利用者データベース270は、乗物遅延システム1を利用する利用者が登録されているデータベースである。利用者は、発信者、路線利用者、遅延予想者が少なくとも含まれ、利用者毎にユーザIDと、メールアドレス、IPアドレス等のアドレス情報又は電話番号が登録される。利用者データベース270には、後述する遅延管理テーブルや一括送信管理テーブル等が記憶されている。
【0038】
制御部201は、適宜、路線データベース250、利用者データベース270にアクセスし、後述する各処理を実行する。
【0039】
遅刻管理システム用サーバ200は、これらのハードウェアの協働により、路線情報記憶手段、遅延情報受信手段、遅延路線特定手段、路線利用者抽出手段、問合せ送信手段、追跡許可受信手段、遅延予想者抽出手段、一覧出力手段、回避ルート送信手段、定期処理手段、路線利用者一括送信手段、及び、安否登録手段を実現する。
【0040】
利用者端末20は、利用者が利用する端末である。ここで、図1及び以下の図2に基づく実施例の説明では、利用者とは発信者を除く利用者とする。すなわち、ここでの利用者とは、遅延管理システム用サーバ200を介して、発信者端末10から送信された遅延情報の情報提供を受ける者である。利用者端末20は、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、電子書籍端末、スレート端末等であってよい。すなわち、利用者端末20は、制御部21、データ記憶部22,データ通信部23,タッチパネル部24、GPS部25を備えれば、家庭用電化製品、業務用電化製品、携帯端末、業務用端末のいずれであってもよい。
【0041】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、データ通信部23として、無線対応通信デバイスを備え、データ記憶部22として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のいずれか又は双方を備える。さらに、タッチパネル部24として、画像を表示する液晶モニタ等の表示部を備え、ユーザからの入力を受付けるタッチパネルや音声入力等の入力部を備える。
【0042】
データ記憶部22には、この利用者端末20を所持する利用者のユーザIDが記憶されていてよい。
【0043】
GPS部25は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信することが可能な装置であって、制御部21との恊働により、GPS衛星までの距離を算出することで、地球上の位置(緯度、経度)を算出することが可能な装置である。GPS部25で算出された位置は、遅刻管理システム用サーバ200に、会員IDとともに対応付けて、逐次、記憶されることが望ましい。
【0044】
利用者端末20は、これらのハードウェアの協働により、各種の手段を実現する。
【0045】
管理者端末50は、利用者の遅延を管理する管理者が利用するための端末である。利用者端末20と同様に、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、電子書籍端末、スレート端末等であってよいし、通常のデスクトップパソコンであってもよい。管理者端末50は、利用者端末20とは使用用途が異なるが、GPS部25を備えないことと、タッチパネル部24がタッチパネルに限定されずキーボードやマウスを含む入力部54であること以外は、ハードウェア構成が同じである。
【0046】
カード読取端末30は、利用者が利用者端末20を利用できないとき(通信混雑等)に、代替的に利用される端末である。カード読取端末30は、自動販売機やCAT(Credit Authorization Terminal)端末等のICカード等を読取り可能な端末である。カード読取端末30は、利用者端末20とは使用用途が異なるが、GPS部25を備えない点と、カード読取部34を備えることを除いて、端末のハードウェア構成は、同じである。
【0047】
カード読取部34は、カード認識部26は、利用者端末20が接触されると、データ記憶部22に記憶されたユーザIDを読み出して受信する。または、カード認識部26は、利用者が所持する所定のICカードが接触されると、当該ICカードに記憶された個人特定情報(ユーザID等)を読み出して受信する。
【0048】
カード読取端末30は、これらのハードウェアの協働により、カード読取手段及びID送信手段を実現する。
【0049】
[遅刻予想者出力処理]
次に、図2を参照して、発信者端末10と遅刻管理システム用サーバ200と利用者端末20が実行する遅延予想者出力処理について説明する。
【0050】
本処理の前提として、遅延管理システム用サーバ200には、利用者のユーザIDと各利用者の通勤区間が登録されている。これは、図7の遅延管理テーブルにおける「ユーザID」と「通勤区間」に対応する。例えば、ユーザID:Aさんは、通勤区間がAE路線で、G駅からA駅までの乗車として登録されている。ここで、各利用者の目的駅は、A駅である。
【0051】
最初に、発信者が発信者端末10に遅延情報を入力し、遅延管理システム用サーバ200に、入力された遅延情報を送信する(ステップS01)。遅延情報は、図5の発信者送信データテーブルに示す情報で構成される。すなわち、遅延情報は、発信者のユーザID、遅延発生位置、遅延影響路線(行先方面の指定もある方が望ましい)、遅延発生時間、遅延予想時間から構成される。
【0052】
遅延情報は、発信者端末10のタッチパネル部14に、図6に示す画面インターフェースを表示して、発信者より入力を詳細に受け付けるのが望ましい。この画面インターフェースは、発信者端末10のアプリケーションを起動することで出力されてもよいし、所定のWebページにアクセスすることで出力されてもよい。
【0053】
図6の例について、あわせて図3を参照して説明する。各利用者はA駅を目的駅とする。発信者となるユーザID:Aさんは、車両50の乗車中に遅延情報を車内放送や車内表示で取得する。Aさんの端末15は、Aさんの上述の入力インターフェースに対する入力に応じて、入力された遅延情報を遅延管理システム用サーバ200に送信する。ここでは、図3のようなトポロジを有する路線で、7時30分に、A駅とG駅の間で信号機故障が発生したとする。この場合、遅延発生位置は、A駅とG駅の間であり、遅延影響路線は、AE路線(A方面行き)であり、遅延発生時間は、7時30分である。遅延予想時間は30分である。
【0054】
なお、発信者端末10が遅延情報を送信したが、誤った遅延情報を送信したと発信者が気づいた場合には、発信者端末10から、遅延取消しボタンを押して、この情報を遅延管理システム用サーバ200へ送信することで、遅延情報を取り消すことが可能に構成してもよい。
【0055】
次に、遅延管理システム用サーバ200は、遅延情報を受信して、遅延路線を特定する(ステップS02)。上述の例では、遅延路線は、AE路線(A方面行き)であると特定できるとも考えられるが、遅延管理システム用サーバ200は、影響がある路線がAE路線(A方面行き)のみであるかを確認する。この確認の方法としては、他の発信者から遅延情報を受信しているか否かで確認したり、交通機関の遅延情報提供サイトからの遅延路線の情報を確認する。この確認により、他の路線でも遅延が発生していると確認できた場合は、遅延が発生している全ての路線を遅延路線とする。
【0056】
遅延管理システム用サーバ200は、遅延路線を特定すると、遅延管理用テーブルに基づいて、路線利用者を抽出する(ステップS03)。例えば、上述の例では、遅延影響路線がAE路線(A方面行き)であるため、このAE路線を利用する利用者のユーザIDとして、Aさん、Bさん、Cさん、Eさんを抽出する。ここで、Dさんについては、BE路線であるため抽出されない。なお、FさんはAE路線の利用者であるが、A方面行きではなく、E方面行きの利用者であるため該当しない(図4参照)。当然ながら、遅延影響がE方面行きも含まれている場合は、Fさんも抽出される。
【0057】
次に、遅延管理システム用サーバ200は、抽出した路線利用者が利用する端末に対して、当該端末の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する(ステップS04)。この問合せとは、図8に示すように、路線利用者の遅延を管理するために、端末の位置情報を遅延管理システム用サーバ200が逐次取得することについての許可を得るための問合せである。
【0058】
路線利用者として抽出されたCさんの端末13(利用者端末20に相当)には、図8に示す遅延情報が表示される(ステップS05)。この表示ととともに、追跡を許可する旨の入力を路線利用者から受付ける(ステップS06)。路線利用者が、「はい」を操作して、遅延を許可した場合(ステップS06:「YES」)には、利用者端末20は、遅延管理システム用サーバ200に利用者端末20のGPS情報を送信する(ステップS07)。路線利用者が、「いいえ」を操作して、遅延を許可しなかった場合(ステップS06:「NO」)には、利用者端末20は、処理を終了する。
【0059】
なお、遅延の理由が大規模な災害である場合は、位置情報を利用者端末20から受信したことで、この利用者の安否が確認できる。仮に、利用者が遅延管理システム用サーバ200の追跡に対して、「いいえ」としても、位置情報を受信しないのみであって、安否情報は送信することが望ましい。大規模な災害により通信の混雑が発生し、利用者端末20が公衆回線網に接続できない場合の安否情報の登録については、後述する安否情報登録処理にて説明する。
【0060】
路線利用者の端末からGPS情報を受信した遅延管理システム用サーバ200は、遅延管理テーブルに基づいて、遅延予想者の抽出を行う(ステップS08)。すなわち、遅延管理システム用サーバ200は、各路線利用者からGPS情報を受信し、各路線利用者の現在位置を判断する。例えば、遅延管理システム用サーバ200は、ユーザID:Cさんが、この時点で、E駅とG駅との間に走行中の車内に居ると判断する。そして、遅延管理テーブルを参照して、Cさんは、通常、AE路線でE駅からA駅までを乗車するため、G駅とA駅の間(A方面行き)の故障発生の影響を受けると判断する。したがって、遅延管理システム用サーバ200は、Cさんが遅延予想者であると抽出する。
【0061】
一方、遅延管理システム用サーバ200は、ユーザID:Eさんについては、EさんのGPS情報から、現在位置がA駅と判断されたため、A駅は、故障発生の影響範囲でないため、Eさんを遅延予想者として抽出しない。
【0062】
次に、遅延管理システム用サーバ200は、抽出した遅延予想者を管理者に通知するための出力を行う(ステップS09)。すなわち、遅延管理システム用サーバ200は、管理者端末50に、遅延予想者を遅延管理テーブルのような一覧に表示可能にする。管理者端末50は、Webブラウザ等の表示アプリケーションにより、遅延管理テーブルが表示される。
【0063】
次に、遅延管理システム用サーバ200は、遅延予想者のうち回避ルートが存在する遅延予想者を抽出し、当該遅延予想者に対して、回避ルートを送信する(ステップS10)。この遅延予想者の抽出は、遅延発生位置と各遅延予想者の現在位置とを比較し、回避ルートが存在するか否かで判断する。
【0064】
そして、該当する遅延予想者の端末には、回避ルートが出力される(ステップS11)。例えば、図9に示すように、ユーザID:Cさんの端末13には、回避ルートが表示される。すなわち、Cさんは、現在位置がE駅G駅間であるため、G駅でBE路線に乗り換えて、今回の遅延を回避することが可能である。
【0065】
なお、回避ルートの提示は、回避するルートによって目的地に到達する時間と、回避しないで遅延予想時間分だけ待ってから目的地に到達する時間とを比較して、前者のほうが、時間が短いと判断された場合にのみ、行われてもよい。
【0066】
さらに、ステップS01からS11を実行した後に、各遅延予想者の移動状況と遅延状況を逐次把握するために、所定時間毎(10分おきなど)に、遅延予想者に、その時点で更新された遅延情報を送信するとともに、各遅延予想者の端末から位置情報を受信してもよい。この際に、更新された時点での遅延の回復に基づいて、さらに、遅延予想者に回避ルートが提示されてもよい。
【0067】
[一括送信処理]
次に、遅延管理システム用サーバ200が実行する一括送信処理について説明する。上述のように、路線内での信号機の故障や災害が発生すると、通信の混雑が発生し、各利用者端末20は、公衆回線網への接続が不可能になる場合がある。そこで、本処理により、所定時間毎に遅延予想者の端末に、更新された遅延情報を送信する際に、近くに居る遅延予想者は一括して遅延情報を送信する。
【0068】
図10に示す一括送信管理テーブルでは、遅延予想者のうち、GPS情報に基づく現在位置によれば、AさんとBさんが位置的に近接していることが判断できるため、更新された遅延情報は、AさんとBさんを一括して送信する。これにより、Aさん又はBさんのいずれかに限定して、更新された遅延情報を送信することが可能である。ここで、AさんとBさんには、遅延情報が一括して送信されることを許可する問合せを送信して、許可を受けてから一括送信を行ってもよい。
【0069】
[安否情報登録処理]
大規模な災害により交通機関が遅延している場合は、通信の混雑が発生し、各利用者端末20が公衆回線網に接続が不可能になる場合がある。そこで、利用者端末20の代わりに、カード読取端末30により利用者の安否を登録する処理が安否情報登録処理である。
【0070】
遅延予想者出力処理のステップS04と同様に、追跡のための問合せを路線利用者の端末(利用者端末20)に送信する(ステップS20)。これを受信した利用者端末20は、遅延情報を表示する(ステップS21)。これを視認した路線利用者は、遅延予想者出力処理と同様に、利用者端末20により位置情報を送信することを試みるが、この際に、通信の混雑により送信ができない。そこで、カード読取端末30を利用して、安否情報を遅延管理システム用サーバ200に送信する。
【0071】
カード読取端末30に対して、路線利用者が利用者端末20又はカードをかざすことで、カード読取端末30のカード読取部34が、利用者端末10又はカードに予め記憶されたユーザID又は端末識別IDを読取る(ステップS23)。カード読取端末30は、読取ったIDを遅延管理システム用サーバ200に送信する(ステップS24)。遅延管理システム用サーバ200は、読取ったIDを受信して、ユーザID毎に安否情報を登録する(ステップS25)。この際に、端末識別IDとユーザIDとが対応付けられたテーブルを参照してもよい。
【0072】
好適な実施形態として、例えば、電車やバスを経由して、飛行機に乗車する場合に、上述した管理者が飛行機に乗車する顧客を管理する管理者であってよい。すなわち、この場合には、航空会社の管理者が、搭乗する顧客のリストのうち、遅刻予想者の一覧を取得することが可能である。例えば、電車等の乗物の遅延により、搭乗困難者となった遅刻予想者の数が、搭乗数に対して所定の割合を占めた場合は、当該航空便を欠航にしたり、遅延させたりすることを判断することが可能である。
【0073】
なお、上記の実施形態では、利用者である発信者が有する発信者端末20から、乗物の遅延情報を受信することを前提として処理が実行される。しかし、例えば、ニュース等の情報源から、管理者が遅延を把握したときに、所定時間、発信者の誰からも連絡がない場合は、予め定めた一人又は複数の登録された代表者(管理者でもよい)に報告を促す通知を、遅延管理システム用サーバ200が、当該代表者の端末へ発信するようにしてもよい。この発信を受信した代表者が、発信者となって、代表者の端末が遅延情報を遅延管理システム用サーバ200に送信してもよい。
【0074】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU,サーバ、装置,各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD−ROMなど)、DVD(DVD−ROM、DVD−RAMなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し記憶して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記憶装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0075】
本発明の対象となる乗物は、電車、路線電車、バス、船舶、モノレール、飛行機等の任意の定期的に運行される乗物であってよい。
【0076】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1 乗物遅延管理システム
10 発信者端末
20 利用者端末
30 カード読取端末
50 管理者端末
200 遅延管理システム用サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶する路線情報記憶手段と、
前記利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信する遅延情報受信手段と、
前記遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定する遅延路線特定手段と、
特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出する路線利用者抽出手段と、
抽出された前記路線利用者の端末に対して、前記遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信する問合せ送信手段と、
前記問合せに対して、前記路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信する追跡許可受信手段と、
前記位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、前記遅延の影響がある遅延予想者を抽出する遅延予想者抽出手段と、
前記遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力する一覧出力手段と、
を備える乗物遅延管理システム。
【請求項2】
抽出された前記遅延予想者の端末に対して、前記遅延の影響を回避するための回避ルートを送信する回避ルート送信手段と、をさらに備える請求項1に記載の乗物遅延管理システム。
【請求項3】
前記乗物遅延管理システムは、定期的に、前記遅延予想者の端末に前記遅延情報を送信するとともに、前記遅延予想者の端末の位置情報を受信する定期処理手段を備える請求項1に記載の乗物遅延管理システム。
【請求項4】
前記定期処理手段が前記遅延情報を送信する際に、前記路線利用者の位置情報に基づいて、送信する路線利用者を限定して送信する路線利用者一括送信手段をさらに備える請求項3に記載の乗物遅延管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の乗物遅延管理システムと、前記利用者が有するカードを読取可能なカード読取端末とから構成されるシステムであって、
前記カード読取端末は、
前記路線利用者の端末から前記乗物遅延管理システムへの通信が不可能である場合に、前記カード又は前記路線利用者のIDを読取るカード読取手段と、
前記IDを前記乗物遅延管理システムに送信するID送信手段と、
前記乗物遅延管理システムは、
前記IDを前記カード読取端末から受信すると、当該路線利用者の安否を登録する安否登録手段と、
を備えるシステム。
【請求項6】
定期的に運行される乗物の路線情報を利用者ごとに予め記憶するステップと、
前記利用者である発信者が有する発信者端末から、前記乗物の遅延情報を受信するステップと、
前記遅延情報に基づいて、遅延の影響がある路線を特定するステップと、
特定された前記遅延の影響がある路線と、予め記憶された前記路線情報を比較し、遅延の影響がある路線を利用する路線利用者を抽出するステップと、
抽出された前記路線利用者の端末に対して、前記遅延情報とともに、当該路線利用者の位置情報を追跡することについての許可を得るための問合せを送信するステップと、
前記問合せに対して、前記路線利用者の端末から、追跡することについての許可を受信するとともに、当該路線利用者の端末から当該端末の位置情報を受信するステップと、
前記位置情報に基づいて、当該路線利用者のうち、前記遅延の影響がある遅延予想者を抽出するステップと、
前記遅延予想者の一覧を、管理者の端末に出力するステップと、
を備える乗物遅延管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−236443(P2012−236443A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105130(P2011−105130)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】