説明

乗移りローラ装置

【課題】搬送装置に容易に取り付けることができる乗移りローラ装置を提供する。
【解決手段】乗移りローラ装置3は、搬送装置1のエンドローラ12に固着する駆動回転磁石体21と、搬送装置1のフレーム体14に固着する取付ブラケット33とを備える。取付ブラケット33には、駆動回転磁石体21の回転より回転する第1従動回転磁石体31を回転可能に取り付ける。取付ブラケット33には、乗移りローラ40を回転可能に取り付け、この乗移りローラ40には第1従動回転磁石体31の回転より回転する第2従動回転磁石体32を固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品点数が少なくて構造が簡単であるばかりでなく、搬送装置に容易に取り付けることができる乗移りローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば物品を一定姿勢のまま一の搬送装置から他の搬送装置へ乗り移らせるために、一の搬送装置の搬送終端部と他の搬送装置の搬送始端部との間に乗移りローラを回転可能に配設することがある。そして、その乗移りローラへ動力を伝達する動力伝達装置としては、タイミングプーリおよびタイミングベルト等を用いた構造が採られている。
【0003】
一方、無発塵、長寿命、低騒音、低コストおよびメンテナンスフリー等の観点から、例えば外周部に磁極を有する駆動回転磁石体と、駆動回転磁石体の近傍に配設され外周部に磁極を有する従動回転磁石体とを備えた無接触動力伝動機構が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭48−88352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、例えば無接触動力伝動機構からの動力で乗移りローラを回転させることが考えられるが、この場合には、搬送装置に対する取り付け易さ等が問題となる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、部品点数が少なくて構造が簡単であるばかりでなく、搬送装置に容易に取り付けることができる乗移りローラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の乗移りローラ装置は、搬送装置の回転体に固着され、外周部に磁極を有する駆動回転磁石体と、前記搬送装置のフレーム体に固着される取付ブラケットと、この取付ブラケットに回転可能に取り付けられ、外周部に磁極を有し、前記駆動回転磁石体の回転より回転する第1従動回転磁石体と、前記取付ブラケットに回転可能に取り付けられた乗移りローラと、この乗移りローラに固着され、外周部に磁極を有し、前記第1従動回転磁石体の回転より回転する第2従動回転磁石体とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の乗移りローラ装置は、請求項1記載の乗移りローラ装置において、乗移りローラの軸方向一端近傍の部分が取付ブラケットに回転可能に取り付けられ、前記乗移りローラの軸方向一端部に第2従動回転磁石体が固着され、前記乗移りローラの軸方向他端部が自由端部となっているものである。
【0008】
請求項3記載の乗移りローラ装置は、請求項1または2記載の乗移りローラ装置において、搬送装置の回転体は、フレーム体に回転可能に取り付けられたエンドローラであり、駆動回転磁石体は、前記エンドローラの軸方向端部に固着されるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、取付ブラケットを搬送装置のフレーム体に固着するとともに駆動回転磁石体を搬送装置の回転体に固着することによって、搬送装置への取付が完了するため、部品点数が少なくて構造が簡単であるばかりでなく、搬送装置に容易に取り付けることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、乗移りローラが軸方向一端近傍の部分で取付ブラケットに回転可能に取り付けられた片支持ローラであるため、構造がより簡単である。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、駆動回転磁石体を搬送装置のエンドローラの軸方向端部に固着することにより、駆動回転磁石体と第1従動回転磁石と第2従動回転磁石とにてエンドローラからの動力を乗移りローラまで適切に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1ないし図4において、1は搬送装置で、この搬送装置1は、上流側搬送装置2から送られてくる物品Wを受け入れて搬送方向に搬送するものである。
【0014】
そして、搬送装置1の搬送始端部および上流側搬送装置2の搬送終端部には、物品Wを一定姿勢のまま上流側搬送装置2から搬送装置1へ乗り移らせる乗移りローラ装置3,4が後付けにより取り付けられている。
【0015】
搬送装置1は、互いに離間対向する対をなすコンベヤフレーム11を備え、両コンベヤフレーム11の搬送始端部および搬送終端部には、軸方向が搬送方向と直交する方向に一致する回転体であるエンドローラ12が回転可能に設けられている。両エンドローラ12間には、図示しないモータ等の駆動手段から出力される動力に基づいて所定方向に回行して物品Wを搬送方向に搬送する無端状の搬送ベルト13が回行可能に掛け渡されている。なお、対をなすコンベヤフレーム11にて搬送装置1のフレーム体14が構成されている。
【0016】
また、エンドローラ12は、フレーム体14の両コンベヤフレーム11の端部にて回転可能に支持された軸部16と、この軸部16に固設され搬送ベルト13の一部が巻かれたローラ部17とを有している。また、図1に示されるように、エンドローラ12の軸部16の端面には、軸部16の軸方向に延びる孔部であるねじ孔部18が形成されている。エンドローラ12の軸部16の軸方向端部は、コンベヤフレーム11の搬送始端部の外面側に形成された略円形状の窪み部20内に配設されている。また、コンベヤフレーム11の搬送始端部の上面側には、上下方向に延びる孔部でねじ孔部10が形成されている。
【0017】
搬送装置1の搬送始端部に設けられた乗移りローラ装置3は、図1ないし図4に示すように、搬送装置1の搬送始端側のエンドローラ12の軸部16の軸方向端部に固定具であるねじ8にて固着され円筒面状の外周部に複数のN−S極(磁極)を有する略円柱状の駆動回転磁石体21と、搬送装置1のフレーム体14の片方のコンベヤフレーム11の搬送始端部に固定具であるねじ9にて固着された乗移りローラユニット22とを備えている。
【0018】
駆動回転磁石体21は、図1に示されるように、例えばエンドローラ12の軸部16の軸方向端部に嵌合固定される芯ずれ防止部材24と、この芯ずれ防止部材24に嵌合固定される磁石部材25とにて構成されている。
【0019】
芯ずれ防止部材24は、エンドローラ12の軸部16の軸方向端部が嵌入される嵌入孔が形成され窪み部20内に配設される軸固定部26と、この軸固定部26に固設された中空軸状部27とを有している。磁石部材25は、芯ずれ防止部材24の中空軸状部27が嵌入される嵌入孔28が形成された円筒状部29と、この円筒状部29の外周側に固設された円筒形状の磁石部30とを有している。この磁石部30は、永久磁石(マグネットリング)21aにて構成され、この永久磁石21aに複数のN−S極が周方向に並んで形成されている。
【0020】
そして、ねじ8が芯ずれ防止部材24の中空軸状部27内に挿通されてエンドローラ12の軸部16のねじ孔部18にねじ込まれることにより、芯ずれ防止部材24および磁石部材25が搬送装置1のエンドローラ12の軸部16に対して固定される。
【0021】
一方、乗移りローラユニット22は、図1に示されるように、搬送装置1のフレーム体14の片方のコンベヤフレーム11の搬送始端部の上面に複数、例えば2本のねじ9にて固着される取付ブラケット33を備えている。
【0022】
取付ブラケット33には上下面に貫通した貫通孔部37が形成されており、ねじ9がその貫通孔部37内に挿通されてコンベヤフレーム11の搬送始端部の上面側のねじ孔部10にねじ込まれることにより、取付ブラケット33がコンベヤフレーム11に対して固定される。なお、取付ブラケット33の下面部には、コンベヤフレーム11の搬送始端部の上側角部分11aに係合する位置決め用段部41が形成されている。
【0023】
また、取付ブラケット33には、駆動回転磁石体21の近傍にこの駆動回転磁石体21と平行状に配設され駆動回転磁石体21の回転より従動回転する第1従動回転磁石体31が支軸34を介して回転可能に取り付けられている。
【0024】
第1従動回転磁石体31は、駆動回転磁石体21より径大状に形成されたもので、駆動回転磁石体21と同様、円筒面状の外周部に複数のN−S極(磁極)を有している。すなわち例えば第1従動回転磁石体31は、駆動回転磁石体21の永久磁石21aと近接対向する円筒形状の磁石部である永久磁石(マグネットリング)31aを外周部に有し、この永久磁石31aに複数のN−S極が周方向に並んで形成されている。また、第1従動回転磁石体31は、軸挿通用孔部35を中心部に有し、この軸挿通用孔部35に取付ブラケット33に固設された支軸34が挿通され、この支軸34にて第1従動回転磁石体31が回転可能に支持されている。
【0025】
また、取付ブラケット33には、物品Wを一定姿勢のまま上流側搬送装置2から搬送装置1へ乗り移らせる1本の軸状の片支持ローラである乗移りローラ40がこの乗移りローラ40の軸方向が搬送方向と直交する状態で回転可能に取り付けられている。すなわち例えば乗移りローラ40の軸方向一端近傍の部分が取付ブラケット33に回転可能に取り付けられている。
【0026】
そして、乗移りローラ40の軸方向一端部には、第1従動回転磁石体31の近傍にこの第1従動回転磁石体31と平行状に配設され第1従動回転磁石体31の回転により従動回転する第2従動回転磁石体32が固着されている。また、この乗移りローラ40の軸方向他端部が自由端部40aとなっている。
【0027】
第2従動回転磁石体32は、駆動回転磁石体21と同径状に形成されたもので、駆動回転磁石体21と同様、円筒面状の外周部に複数のN−S極(磁極)を有している。すなわち例えば第2従動回転磁石体32は、第1従動回転磁石体31の永久磁石31aと近接対向する円筒形状の磁石部である永久磁石(マグネットリング)32aを外周部に有し、この永久磁石32aに複数のN−S極が周方向に並んで形成されている。また、第2従動回転磁石体32は、ローラ挿通用孔部36を中心部に有し、このローラ挿通用孔部36に乗移りローラ40の軸方向一端部が挿通固着され、この第2従動回転磁石体32は乗移りローラ40と一体となって回転する。なお、乗移りローラ40は、取付ブラケット33にて回転可能に支持され、搬送ベルト13の搬送面13aと略同一面上に位置する。
【0028】
そして、図4に示すように、搬送装置1のエンドローラ12の回転により駆動回転磁石体21が回転すると、この駆動回転磁石体21の回転によるN−S極の移動にて磁力作用で第1従動回転磁石体31が回転し、さらにこの第1従動回転磁石体31の回転によるN−S極の移動にて磁力作用で第2従動回転磁石体32が回転し、その結果、乗移りローラ40が所定方向に回転する。
【0029】
なお、上流側搬送装置2の構成部材は、上述した搬送装置1の構成部材と基本的に同一である。また、上流側搬送装置2の搬送終端部に設けられた乗移りローラ装置4の構成部材は、上述した乗移りローラ装置3と基本的に同一であり、乗移りローラ装置の乗移りローラ40は乗移りローラ3と同期して回転する。
【0030】
なお、駆動回転磁石体21の円筒面状の外周面と第1従動回転磁石体31の円筒面状の外周面との間には隙間(約0.5〜1.0mm)が存在し、駆動回転磁石体21と第1従動回転磁石体31とが非接触の状態となっている。また、第1従動回転磁石体31の円筒面状の外周面と第2従動回転磁石体32の円筒面状の外周面との間にも隙間(約0.5〜1.0mm)が存在し、第1従動回転磁石体31と第2従動回転磁石体32とが非接触の状態となっている。このため、このような非接触磁石式の乗移りローラ装置3,4では、無発塵、長寿命、低騒音、低コストおよびメンテナンスフリー等を実現でき、しかも、異常な負荷がかかっても乗移りローラ装置3,4が破損するようなことがない。
【0031】
次に、乗移りローラ装置3の搬送装置1への取付について説明する。
【0032】
図1に示すように、第1従動回転磁石体31を取付ブラケット33に支軸34を介して回転可能に取り付けるとともに、第2従動回転磁石体32が軸方向一端部に固着された乗移りローラ40の軸方向一端近傍の部分を取付ブラケット33に回転可能に取り付けることにより、予め、乗移りローラユニット22を組み立てておく。
【0033】
そして、ねじ9を乗移りローラユニット22の取付ブラケット33の貫通孔部37内に挿通して搬送装置1のフレーム体14の片方のコンベヤフレーム11のねじ孔部10にねじ込むことにより、取付ブラケット33をコンベヤフレーム11の上面部に固着する。
【0034】
また、ねじ8を磁石部材25の内周側に嵌め込まれた芯ずれ防止部材24の中空軸状部27内に挿通してエンドローラ12の軸部16のねじ孔部18にねじ込むことにより、駆動回転磁石体21をエンドローラ12の軸部16の軸方向端部に固着する。
【0035】
このように、乗移りローラ装置3によれば、乗移りローラユニット22の取付ブラケット33を搬送装置1のフレーム体14の片方のコンベヤフレーム11に取り外し可能に固着するとともに、駆動回転磁石体21を搬送装置1のエンドローラ12に取り外し可能に固着することによって、乗移りローラ装置3の搬送装置1への取付が完了するため、部品点数が少なくて構造が簡単であるばかりでなく、搬送装置1に容易に取り付けることができる。よって、例えば必要時に乗移りローラ装置3を搬送装置1に短時間で取り付けることができる一方、不要時には乗移りローラ装置3を搬送装置1から短時間で取り外すことができる。
【0036】
また、乗移りローラ40が軸方向一端近傍の部分で取付ブラケット33に回転可能に取り付けられた片支持ローラであるため、構造がより簡単で、部品点数をより一層少なくできる。
【0037】
なお、搬送装置1や上流側搬送装置2は、ベルトコンベヤには限定されず、ローラコンベヤ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る乗移りローラ装置の取付前の斜視図である。
【図2】同上乗移りローラ装置の取付後の斜視図である。
【図3】同上乗移りローラ装置の取付後の平面図である。
【図4】同上乗移りローラ装置の概略正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 搬送装置
3 乗移りローラ装置
12 回転体であるエンドローラ
14 フレーム体
21 駆動回転磁石体
31 第1従動回転磁石体
32 第2従動回転磁石体
33 取付ブラケット
40 乗移りローラ
40a 自由端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置の回転体に固着され、外周部に磁極を有する駆動回転磁石体と、
前記搬送装置のフレーム体に固着される取付ブラケットと、
この取付ブラケットに回転可能に取り付けられ、外周部に磁極を有し、前記駆動回転磁石体の回転より回転する第1従動回転磁石体と、
前記取付ブラケットに回転可能に取り付けられた乗移りローラと、
この乗移りローラに固着され、外周部に磁極を有し、前記第1従動回転磁石体の回転より回転する第2従動回転磁石体と
を備えることを特徴とする乗移りローラ装置。
【請求項2】
乗移りローラの軸方向一端近傍の部分が取付ブラケットに回転可能に取り付けられ、
前記乗移りローラの軸方向一端部に第2従動回転磁石体が固着され、
前記乗移りローラの軸方向他端部が自由端部となっている
ことを特徴とする請求項1記載の乗移りローラ装置。
【請求項3】
搬送装置の回転体は、フレーム体に回転可能に取り付けられたエンドローラであり、
駆動回転磁石体は、前記エンドローラの軸方向端部に固着される
ことを特徴とする請求項1または2記載の乗移りローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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