説明

乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンおよびその製造方法

【課題】本発明は、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造過程において、鬆の発生や乳脂肪の分離を抑制し、さらに冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水を防止せしめることが可能な蒸し焼きプリンの製造法及び該製造法により得られる蒸し焼きプリンを提供することを課題とする。
【解決手段】イモ、乳化剤および安定剤を一定の添加量でほぼ均一にプリン生地に混合することにより、製造過程での脂肪分の分離、鬆の発生を抑制し、さらに冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水防止を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸し焼きプリンは、卵、牛乳等を主な原材料として製造されるデザートである。蒸し焼きプリンの製造において原材料中の乳脂肪を高めると、蒸し焼きプリンのこく味や口当たりの滑らかさ等を向上することができる。しかし、製造過程での乳脂肪分の分離や、卵タンパク質の急激な変性(鬆の発生)が問題となる。このため、加熱条件(温度、時間、蒸気量等)を厳しく管理する必要があった。また、蒸し焼きプリンを冷凍保管すると、氷結晶によってプリン組織が破壊されて、解凍する際に離水が生じてしまい、その結果プリンの風味や食感などの品質も変化してしまう。そのため、現状では冷蔵条件で2〜3週間程度の品質を維持することが限界と考えられており、廃棄率を低く抑えるのが困難であった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、増粘多糖類を使用することが考えられる。例えば、サイリウムシードガムおよびタマリンドシードガムを原材料に添加することを特徴とする全卵を使用した加熱ゲル化食品の鬆抑制剤(特許文献1:特開2006−034284号公報)、植物ステロール類、澱粉、デキストリン、還元デキストリン、ゼラチン、増粘多糖類から選ばれる1種または2種以上および卵黄を含むことで冷凍卵加工食品の冷凍変性を防ぐ技術(特許文献2:特開2007−267704号公報)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−034284号公報
【特許文献2】特開2007−267704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造過程において、良好な風味を保ちつつ、鬆の発生や乳脂肪の分離を抑制し、さらに冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水を防止せしめることが可能な蒸し焼きプリンの製造法及び該製造法により得られる蒸し焼きプリンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、最終製品の乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造において、イモを最終製品に対するイモの乾燥重量として15w/w%〜40w/w%を原材料に添加・混合して製造することで上記課題を解決し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造において、イモを一定の添加量でほぼ均一にプリン生地に混合して使用することにより、製造過程での蒸し焼きプリンの脂肪分の分離、鬆の発生を抑制し、さらに冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水防止を可能としたことを特徴としており、下記の態様が包含される。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1] 最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%、イモの含量が乾燥重量として10w/w%〜40w/w%、乳化剤の含量が0.10w/w%〜0.40w/w%および安定剤の含量が0.02w/w%〜0.07w/w%である蒸し焼きプリン、
[2] 乳化剤のHLBが9以上であることを特徴とする、前記[1]に記載の蒸し焼きプリン、
[3] 卵成分を15〜25w/w%含有することを特徴とする、前記[1]〜[2]のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリン、
[4] イモがサツマイモおよび/またはジャガイモであることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリン、
[5] 最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%の蒸し焼きプリンの製造方法であって、イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることを特徴とする、蒸し焼きプリンの製造方法、
[6] 乳化剤のHLBが9以上であることを特徴とする、前記[5]に記載の蒸し焼きプリンの製造方法、
[7] 卵成分を15〜25w/w%含有せしめることを特徴とする、前記[5]〜[6]のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリンの製造方法、
[8] イモがサツマイモおよび/またはジャガイモであることを特徴とする、前記[5]〜[7]のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリンの製造方法、
[9] イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、蒸し焼きプリンの脂肪分の分離を抑止せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法、
[10] イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、蒸し焼きプリンの鬆の発生を抑制せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法、
[11] イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水を抑止せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法、
からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造過程において、脂肪分の分離や鬆の発生などの不具合を起こすことなく、さらに製造したプリンの冷凍保存も可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。なお、特に明示のない限り添加量は、最終製品である蒸し焼きプリンに対するw/w%を示す。
【0011】
本発明の蒸し焼きプリンは、卵、イモ、乳製品等公知の原料を使用して製造する。本発明において、卵は、全卵、卵黄または卵白のいずれの卵成分も用いることができる。本発明の蒸し焼きプリンの製造において、卵の含量は適宜調整してよいが、最終製品の卵成分の含量が15w/w%〜25w/w%、好ましくは18 w/w %〜22w/w%となるように調整してもよい。
【0012】
本発明において、イモとして、公知のいずれのイモを使用してもよいが、サツマイモおよび/またはジャガイモを使用するのが特に好ましい。
【0013】
サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属の植物で、別名薩摩芋、甘藷、唐芋、琉球芋ともいう。学名はIpomoea batatas L.である。ベニアズマ、鳴門キントキ、高系14号、黄金千貫、山川紫、アヤムラサキ、紅はやと、隼人いも等、多くの品種が知られている。根茎を食用に用いることが多く、食物繊維、デンプンやビタミンCに富む。澱粉糖化酵素(アミラーゼ)を持つため、蒸す、焼く等の緩和な加熱調理を長時間行うと、共存する澱粉の一部マルトースに分解されるため、さらに甘味を増す。また、紫色のアントシアニンや、紅〜オレンジ色のカロチン等の機能性色素を含有する品種もあり、これらを本発明の蒸し焼きプリンの原材料に用いた場合、さらに色彩や栄養にすぐれた製品を製造することができる。本発明においては、いずれの品種のサツマイモも使用することができる。
【0014】
ジャガイモはナス科ナス属の植物で、別名馬鈴薯ともいう。学名はSolanum tuberosum L.である。男爵薯、メークイーン、キタアカリ、等、多くの品種が知られている。地下茎を食用に用い、デンプンやビタミンCに富む。本発明においては、いずれの品種のジャガイモも使用することができる。
【0015】
本発明において、イモはプリン生地にほぼ均一に混合が可能なペースト状で用いることができる。あるいは、固形、半固形、粉末状のイモを他の原材料に混合した後に破砕、裏ごし、攪拌等を行ってほぼ均一になるように混合してもかまわない。本発明の蒸し焼きプリンの製造において、イモは最終製品に対するイモの乾燥重量として10w/w%〜40w/w%、好ましくは20w/w%〜40w/w%、より好ましくは25w/w%〜35w/w%を添加するのがよい。
【0016】
本発明で用いることのできる乳製品としてはバター、バターオイル、クリーム、クリームパウダー、バターミルク、れん乳、牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳、ホエイ、乳タンパク濃縮物、ホエイタンパク濃縮物、乳糖などを挙げることができるが、これらの例に限定されない。本発明の蒸し焼きプリンの製造において、最終製品の乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%、好ましくは6w/w%〜10w/w%となるように乳製品の含量を調整するのがよい。
【0017】
また、本発明の蒸し焼きプリンに香りや味を付与する目的等で他の原材料を添加することもできる。例えば、砂糖、果実、果汁、ナッツ類、香草(バニラ等)、スパイス、シロップ(メープルシロップ、ハチミツ等)など又はその加工品(オレンジピール、果物のジャム、果物の乾燥物等)、あるいは香料、甘味料、調味料、矯味料などの食品添加物等を添加した蒸し焼きプリンを製造することもできるが、本発明においてはこれらの例に限定されない。本発明でいう蒸し焼きプリンにはこれらの製品も含むことができる。
【0018】
本発明の蒸し焼きプリンに砂糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、三温糖、和三盆糖、黒糖、メープルシロップ、蜂蜜、異性化液糖、果糖ぶどう糖液糖、還元水飴(糖アルコール)、トレハロース等の甘味料や、糖分を多く含む食品等を添加することができる。これらの甘味料等は、7w/w%〜30w/w%、好ましくは10w/w%〜15w/w%添加することができるが、甘味料等の種類、他原料の含量等によって適宜調整することができる。
【0019】
本発明の蒸し焼きプリンには、乳化剤を添加することができる。本発明で使用することのできる乳化剤の例として、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンエルカ酸エステル等)、有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等)モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル等)、(植物、卵黄、分別、乳等)レシチン、酵素分解レシチン(例えば、酵素分解大豆レシチン、リゾレシチン等)等を挙げることができ、特に親水性の乳化剤やHLB9以上の乳化剤を用いるのが好ましい。乳化剤は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができ、親水性の乳化剤と他の乳化剤を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の添加量は乳化剤の種類、他原料の含量等によって適宜調整することができるが、例として0.10w/w%〜0.40w/w%、好ましくは0.19w/w%〜0.32w/w%を挙げることができる。
【0020】
本発明の蒸し焼きプリンには、安定剤を添加することができる。本発明で使用することのできる安定剤の例として、ローカストビーンガム、グアーガム、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、カラギーナン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチン、タラガム、寒天、カラギーナン、ジェランガム等を挙げることができる。安定剤は1種類あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。安定剤の添加量は安定化剤の種類、他原料の含量等によって適宜調整することができるが、例として0.02w/w%〜0.07w/w%、好ましくは0.03w/w%〜0.06w/w%を挙げることができる。
【0021】
上記に挙げる卵、イモ、および乳製品等を混合したプリン生地を作成した後に、蒸し焼き工程を行う。蒸し焼きの方法は、蒸し焼きプリンの製造において通常用いられる公知の方法で行うことができる。
【0022】
本発明の蒸し焼きプリンの水分含量は適宜調整することができる。例えば、45w/w%〜75、好ましくは50w/w%〜70w/w%とすることもできるが、これらの例に限定されない。
【0023】
このようにして製造した本発明の蒸し焼きプリンは、イモのデンプンや食物繊維によってプリンの組織の網目構造が強化されるため、蒸し焼きプリンの製造過程において、乳脂肪が高い組成であっても、乳脂肪分の分離や、卵タンパク質の急激な変性(鬆の発生)が抑えられ、まろやかな組織を形成することが可能となった。さらに、この網目構造により凍結による水粒子を包囲するため、製造した蒸し焼きプリンの離水現象が起こりにくくなった。また、蒸し焼きプリンを一旦冷凍した後に解凍〜冷蔵保存しても離水現象が起こりにくくなった。また、イモ特有の自然な風味や食感を楽しむこともできる。
また、乳化剤、安定剤を添加すると、プリン組織の均一性が高まるため、製造した蒸し焼きプリンにおける乳脂肪分の分離、鬆の発生、離水現象がより一層抑制され、また乳のこく味も増すなどの風味も改善される。
【0024】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
[乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造]
最終製品における水分含量58w/w%となるように各種試作品(試作品1〜4)を製造した。各試作品のプリン生地の製造においては、全卵、砂糖、乳製品(クリーム、牛乳又は脱脂濃縮乳)および、以下に示す原料を配合した。乳脂肪分の調整はクリーム、牛乳、濃縮乳の配合を調整して行った。なお、無糖さつまいもペーストはイモの乾燥重量として90.0w/w%のものを用いた。
【0026】
1.プリン生地の調製
プリン生地100gに対し、全卵22g、砂糖13g、乳製品(クリーム、牛乳又は脱脂濃縮乳)におよび下記の原料を混合してプリン生地を調製した(表1)。
試作品1(乳脂肪分7%):
無糖さつまいもペースト 30g
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11)105mg
デカグリセリンモノステアレート(HLB=12)123mg
グアーガム 31mg
λ−カラギーナン 11mg

試作品2(乳脂肪分13%):
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11)195mg
デカグリセリンモノステアレート(HLB=12)228mg
グアーガム 58mg
λ−カラギーナン 20mg

試作品3(乳脂肪分7%):
無糖さつまいもペースト 30g
試作品4(乳脂肪分13%):添加材料なし
【0027】
2.プリンの焼成および冷凍・解凍
耐熱性のあるプリンカップに上記プリン生地を100gずつ充填し、蒸し焼きした。(加熱は中心温度85℃約30分)。このように焼成したプリンを冷凍し、さらに解凍した。冷凍条件は−35℃で20分、解凍条件は5℃〜10℃の冷蔵庫で12時間とした。
【0028】
3.焼成〜冷凍・解凍後の蒸し焼きプリンの物性および風味の評価
焼成〜凍結・解凍後の蒸し焼きプリンの物性および風味を、試作品の温度が10℃である状態にて評価した。
[物性試験(目視観察):プリン側面組織の評価]
冷凍・解凍後の各試作品の側面を目視観察し、乳脂肪分分離および層分離状態を指標に評価を行った。
具体的には、プリンカップから抜き出した各試作品の側面を目視観察して評価を行った。このとき、乳脂肪分の分離がないものを乳脂肪分分離なしの良好な状態として評価した。乳脂肪分の分離があったものを乳脂肪分分離ありの状態として評価した。また、目視観察した時の層分離状態を単層〜層の数として記録した。
【0029】
[物性試験(目視観察):プリン切断面組織の評価]
冷凍・解凍後の各試作品の切断面を目視観察し、プリンの組織(鬆の状態)、プリン組織のゲル化状態(凝固の状態)、プリンの組織(なめらかさ)および鮫肌(切断面のざらつき)の有無を指標に評価を行った。
具体的には、凍結・解凍後の各試作品をプリンカップから抜き出し、さらにナイフで半分に切断し、プリン切断面の組織を目視観察して、鬆の状態、ゲル化状態、なめらかさの良否および鮫肌の有無を評価した。
【0030】
[物性試験(離水率の測定)]
冷凍・解凍後の試作品をさらに10℃で0、2、4、6、8、10時間保存した。後述の測定条件にて、各時点における各試作品の離水率を経時的に測定した。
(測定条件)
各試作品90gをプリンカップから抜き出し、逆さにして、シャーレ内に敷いた濾紙(定性濾紙No.2、φ70mm、ADVANTEC社製)の上に置き、10℃の恒温室において1時間経過後の時点に濾紙中に移行した水分の重量を測定した。離水率は、次式により算出した。数値が小さい方が離水を起こしにくいことを示す。
((1時間後濾紙重量−濾紙本体重量)/90)×100(%)
なお、本発明において「離水を起こさない」とは、離水率が1.0%未満であることを指している。
【0031】
[物性総合判定]
前記の各物性試験の結果から、冷凍・解凍した各試作品の物性を総合的に判定した。評価は、以下の3段階で行った。
○:プリンとして適度な組織を有する。
△:プリンとしての組織にややなめらかさにかける。
×:プリンとしての組織を損なっている。
【0032】
[風味検査]
冷凍・解凍後の各試作品について、官能検査を実施し、なめらかさ、食感、乳のこく味、および総合的なおいしさについて評価を行った(評価者数(N)=10)。評価は、1=悪い、2=やや悪い、3=ふつう、4=やや良好、5=良好の5段階で行い、評価者10名の平均値をそれぞれ算出した。
【0033】
[総合評価]
前記物性試験および風味検査の結果から、冷凍・解凍した各試作品の品質を総合的に判定した。評価は、以下の3段階で行った。
○:プリンとして適度な組織を有し、乳のこく味も有し良好である
△:プリンとしての組織にややなめらかさにかけるが、風味は感じられる
×:プリンとしての組織、風味を損なっている
【0034】
結果を表1に示す。無糖さつまいもペースト、乳化剤および安定剤を併用した試作品1は、冷凍・解凍後も物性・風味がいずれも良好であり、解凍後10時間を経過しても離水を起こさなかった。その一方で、無糖さつまいもペーストを欠いた試作品2は、解凍直後の物性・風味にすぐれるものの、解凍後6時間以降は離水を起こす結果となった。また、乳化剤および安定剤を欠いた試作品3は、乳脂肪分分離、層分離、鬆の発生、ゲル化状態の悪化および保存中の離水発生等の物性や、風味の点で劣った。さらに、無糖さつまいもペースト、乳化剤および安定剤を欠いた試作品4も、乳脂肪分分離、層分離、鬆の発生、ゲル化状態の悪化、および解凍直後〜保存中の離水発生等の物性や、風味の点で劣った。
このことから、冷凍および解凍後のプリンの品質(物性・風味)を良好に保つためには、イモ、乳化剤、安定剤の添加が重要であることがわかった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造過程において、鬆の発生や乳脂肪の分離を抑制し、まろやかな組織を形成することが可能する。さらに、製造した蒸し焼きプリンの離水現象も起こりにくく、また、冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水を防止することもできる。これにより、乳脂肪分に富んだ蒸し焼きプリンの製造過程や、冷凍保存における不具合の解消を可能とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%、イモの含量が乾燥重量として10w/w%〜40w/w%、乳化剤の含量が0.10w/w%〜0.40w/w%および安定剤の含量が0.02w/w%〜0.07w/w%である蒸し焼きプリン。
【請求項2】
乳化剤のHLBが9以上であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸し焼きプリン。
【請求項3】
卵成分を15〜25w/w%含有することを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリン。
【請求項4】
イモがサツマイモおよび/またはジャガイモであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリン。
【請求項5】
最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%の蒸し焼きプリンの製造方法であって、イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることを特徴とする、蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項6】
乳化剤のHLBが9以上であることを特徴とする、請求項5に記載の蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項7】
卵成分を15〜25w/w%含有せしめることを特徴とする、請求項5〜6のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項8】
イモがサツマイモおよび/またはジャガイモであることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項9】
イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、蒸し焼きプリンの脂肪分の分離を抑止せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項10】
イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、蒸し焼きプリンの鬆の発生を抑制せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法。
【請求項11】
イモを乾燥重量として最終製品の10w/w%〜40w/w%、乳化剤を0.10w/w%〜0.40w/w%、および安定剤を0.02w/w%〜0.07w/w%含有せしめることにより、冷凍した蒸し焼きプリンを解凍した際の離水を抑止せしめることを特徴とする、最終製品における乳脂肪分が4w/w%〜15w/w%である蒸し焼きプリンの製造方法。

【公開番号】特開2010−227073(P2010−227073A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81159(P2009−81159)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】