説明

二次電池の電圧測定回路およびこれを用いた保護回路

【課題】直列接続された複数個の二次電池の端子電圧のばらつきの影響のない保護動作を行うことができる二次電池の電圧測定回路を提供する。
【解決手段】直列接続された複数個の二次電池B1,B2,B3に切替回路2を介して差動増幅器3を接続して二次電池B1,B2,B3の個々の端子電圧を検出し、差動増幅器3の出力からマイクロコントローラ4によって二次電池B1,B2,B3の端子電圧のうちの最大値と最小値および平均値を検出し、最大値と充電禁止電圧より低い第1の設定値とを比較すると共に、最小値と第1の設定値より低く放電禁止電圧より高い第2の設定値とを比較し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値とし、最小値が第2の設定値以下の場合は最小値を電池電圧の測定値とし、最大値が第1の設定値より低くかつ最小値が第2の設定値より高い場合は平均値を電池電圧の測定値とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に二次電池の保護に適した電池電圧測定を行う電圧測定回路およびこれを用いた保護回路に係り、特に直列接続された複数個の二次電池のための電圧測定回路および保護回路に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウム二次電池などの非水溶媒系二次電池や鉛蓄電池は、放電や放置で端子電圧が低下し過ぎたり、あるいは逆に充電中に端子電圧が高くなり過ぎると、電池性能が劣化したり、安全性が損なわれることがある。このため、これらの二次電池では端子電圧を監視して、端子電圧が所定範囲内となるように充電や放電を制御して使用する必要があった。
【0003】特に、リチウム二次電池の場合には、例えば端子電圧が4.5V以上になると電解液の分解によりガスが発生し、その結果電池内部の圧力が上昇して安全弁が作動し、漏液することがある。また、端子電圧が2V以下となると、負極に使われている集電体の銅が電解液内に溶解し始めて電池性能が劣化する。そのため、リチウム二次電池を使用する場合には、充電時には端子電圧が上昇して充電禁止電圧Vovに達すると充電電流を遮断し、放電時には端子電圧が低下して予め設定した放電禁止電圧Vuvに達すると放電電流を遮断する機能を有する保護回路を介して充放電を行うようにすることが一般的である。
【0004】充電禁止電圧Vovは、電解液の分解が始まる電圧より若干低い電圧(例えば4.35V)に設定され、放電禁止電圧Vuvは、負極の銅が溶解し始める電圧より若干高い電圧(例えば2〜2.5V)に設定される。複数個の二次電池を直列接続して用いる場合は、個々の電池の端子電圧を測定し、これらを充電禁止電圧Vovおよび放電禁止電圧Vuvと比較して、個々の端子電圧が充電禁止電圧Vovまで上昇したか否かと放電禁止電圧Vuvまで低下したか否かの判定を行い、その判定結果に従って充放電を制御している。
【0005】ところで、近年、電池パック内に電子回路を内蔵させ、この電子回路によって二次電池の端子電圧、電池温度、充電量等の電池の状態を表すデータを充電器や負荷である電池パックの使用機器に送信してきめ細かい制御を行うようになってきているが、二次電池の端子電圧に関しては直列接続された全ての電池の端子電圧の合計に相当する値を出力している。上述した保護回路を動作させる場合は、この直列接続された複数の二次電池の端子電圧の合計から平均値を求め、これを充電禁止電圧Vovや放電禁止電圧Vuvと比較することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、直列接続された複数個の二次電池の各々の容量が異なっていたり、充電量が異なったりしている場合、各電池の端子電圧にばらつきが生じる。上述した二次電池の電圧測定方法では、このような電池毎に端子電圧がばらついている場合でも、それらの端子電圧の合計から平均値を求め、充電禁止電圧や放電禁止電圧と比較して保護動作を行っている。
【0007】このため、充電時には容量が最小の電池や充電量が最大の電池の端子電圧が他の電池より早く充電禁止電圧に達しても、二次電池の端子電圧が平均的に高いと、平均値は充電禁止電圧に達しないために充電を停止させることができず、過充電を起こしてしまう不都合がある。また、放電時には逆に、容量が最小の電池や充電量が最小の電池の端子電圧が他の電池より早く放電禁止電圧に達しても、電池の端子電圧が平均的に高いと放電を停止させることができず、過放電を起こしてしまうという不都合がある。
【0008】本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、直列接続された複数個の二次電池の端子電圧のばらつきの影響のない確実な保護動作を行うことができる二次電池の電圧測定回路およびこれを用いた保護回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、通常は直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を電池電圧の測定値とするが、それぞれの端子電圧のうち最大値がある程度以上大きい場合や、最小値がある程度以下に小さい場合には、それらの最大値または最小値を電池電圧の測定値とするようにしたものである。
【0010】すなわち、本発明に係る第1の二次電池の電圧測定回路は、直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最大値を検出する最大値検出手段と、複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、最大値と充電禁止電圧より低い第1の設定値とを比較し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値とし、最大値が第1の設定値より低い場合は記平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする。
【0011】本発明に係る第2の二次電池の電圧測定回路は、直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最小値を検出する最小値検出手段と、複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、最小値と放電禁止電圧より高い第2の設定値とを比較し、最小値が第2の設定値以下の場合は最小値を電池電圧の測定値とし、最小値が第2の設定値より高い場合は平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】本発明に係る第3の二次電池の電圧測定回路は、上述した第1および第2の電圧測定回路の機能を兼ね備えたものであり、直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最大値を検出する最大値検出手段と、複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最小値を検出する最小値検出手段と、複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、最大値と充電禁止電圧より低い第1の設定値とを比較すると共に、最小値と第1の設定値より低く放電禁止電圧より高い第2の設定値とを比較し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値とし、最小値が第2の設定値以下の場合は最小値を電池電圧の測定値とし、最大値が第1の設定値より低くかつ最小値が第2の設定値より高い場合は平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする。
【0013】また、本発明に係る第1の二次電池の保護回路は、上述した第1または第3の電圧測定回路により得られる測定値と充電禁止電圧とを比較し、測定値が充電禁止電圧まで上昇したとき二次電池の充電を禁止する手段を具備したことを特徴とする。
【0014】本発明に係る第2の二次電池の保護回路は、上述した第2または第3の電圧測定回路により得られる前記測定値と放電禁止電圧とを比較し、測定値が放電禁止電圧まで低下したとき二次電池の放電を禁止する手段を具備したことを特徴とする。
【0015】本発明に係る第3の二次電池の保護回路は、上述した第3の電圧測定回路により得られる測定値と充電禁止電圧および放電禁止電圧とを比較し、測定値が充電禁止電圧まで上昇したとき二次電池の充電を禁止し、測定値が放電禁止電圧まで低下したとき二次電池の放電を禁止する手段を具備したことを特徴とする。
【0016】このように本発明では、通常の場合、つまり直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の最大値が第1の設定値より低い場合や、最小値が第2の設定値より高い場合には平均値を電池電圧の測定値として出力し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を、また最小値が第2の設定値以下の場合には最小値をそれぞれ電池電圧の測定値として出力する。
【0017】従って、例えば二次電池の端子電圧にばらつきがあり、充電時に容量が最小の電池や充電量が最大の電池の端子電圧が他の電池より早く充電禁止電圧に達した場合や、放電時は容量が最小の電池や充電量が最小の電池の端子電圧が他の電池より早く放電禁止電圧に達した場合、それらを電池電圧の測定値から直ちに検出して充電停止や放電停止の保護動作を行うことができ、過充電や過放電を確実に防止することが可能となる。
【0018】また、通常は複数個の二次電池の端子電圧の平均値を電池電圧の測定値として出力するため、二次電池の保護動作を行っていないときの充電状態や放電状態をモニタすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の電圧測定回路を示すブロック図である。同図において、二次電池群1は複数個(この例では3個)の二次電池B1,B2,B3を直列接続して構成されている。二次電池B1,B2,B3は、例えばリチウムイオン二次電池のような非水溶媒系二次電池、あるいは鉛蓄電池である。二次電池B1の正極端子は端子aに、二次電池B1の負極端子と二次電池B2の正極端子は端子bに、二次電池B2の負極端子と二次電池B3の正極端子は端子cに、二次電池B3の負極端子は端子dにそれぞれ接続されている。
【0020】切替回路2は、切替接点e,f,gと共通接点kからなる第1の切替スイッチSW1と、切替接点h,i,jと共通接点lからなる第2の切替スイッチSW2とで構成され、スイッチSW1とSW2は連動している。すなわち、共通接点kが切替接点eに切り替えられたとき、共通接点lは切替接点hに切り替えられ、共通接点kが切替接点fに切り替えられたとき、共通接点lは切替接点iに切り替えられ、共通接点kが切替接点gに切り替えられたとき、共通接点lは切替接点jに切り替えられる。そして、切替回路2の第1の切替スイッチSW1の切替接点e,f,gは二次電池群1の端子a,b,cにそれぞれ接続され、第2の切替スイッチSW2の切替接点h,i,jは二次電池群1の端子b,c,dにそれぞれ接続されている。
【0021】切替回路2の第1および第2の切替スイッチSW1,SW2の共通端子k,lは、差動増幅器3の入力端子m,nにそれぞれ接続される。差動増幅器3はオペアンプAと複数個の抵抗からなり、入力端子m,n間の電圧差に相当する電圧を出力端子Pに発生する。これら切替回路5と差動増幅器3によって、二次電池群1における二次電池B1,B2,B3の個々の端子電圧を測定する電圧測定回路が構成されている。
【0022】差動増幅器3の出力端子Pは、マイクロコントローラ4の入力端子ANに接続される。マイクロコントローラ4はA/Dコンバータを内蔵しており、このA/Dコンバータは入力端子ANに入力される差動増幅器3の出力電圧をディジタル値に変換する。このA/Dコンバータにより得られたディジタル値から、マイクロコントローラ4での内部のプログラムによるソフトウェア処理により、切替回路2と差動増幅器3およびA/Dコンバータで測定された二次電池B1,B2,B3のそれぞれ端子電圧のうちの最大値を検出する最大値検出と、二次電池B1,B2,B3のそれぞれ端子電圧のうちの最小値を検出する最小値検出と、二次電池B1,B2,B3のそれぞれ端子電圧の平均値を検出する平均値検出、およびこれらに基づく電池電圧測定が行われる。
【0023】この際、マイクロコントローラ4は内部カウンタの値Nに基づいて、切替回路2の切替スイッチSW1,SW2の切替接点を選択するための制御信号を出力端子Qより出力する。この出力端子Qからの制御信号によって、共通端子kとlは内部カウンタの値がN=1のときは切替接点eとhにそれぞれ切り替えられ、N=2のときは切替接点fとiにそれぞれ切り替えられ、N=3のときは切替接点gとjにそれぞれ切り替えられる。
【0024】次に、このように構成された図1の二次電池の電圧測定回路の動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。回路が動作開始すると、初期状態としてN=1とする(ステップS1)。この場合、切替回路2のスイッチSW1,SW2は二次電池B1を選択し(ステップS2)、差動増幅器3は二次電池B1の端子電圧に相当する電圧を発生する。この差動増幅器3の出力電圧は、マイクロコントローラ4の入力端子ANに入力される。マイクロコントローラ4では、差動増幅器3の出力電圧をA/Dコンバータでディジタル値V(AN)に変換した後、メモリ値D(1)として記憶する(ステップS3)。ここで、ステップS4によりN+1→Nを実行すると、N=2となるから、N=4か否かを判定するステップS5を介してステップS2に戻る。
【0025】次に、N=2より切替回路2のスイッチSW1,SW2は今度は二次電池B2を選択し(ステップS2)、差動増幅器3の出力は二次電池B2の端子電圧に相当する電圧を発生する。この差動増幅器3の出力電圧は、マイクロコントローラ4の入力端子ANに入力される。マイクロコントローラ4では、N=1の場合と同様、差動増幅器3の出力電圧をA/Dコンバータでディジタル値V(AN)に変換した後、メモリ値D(2)として記憶する(ステップS3)。ここで、ステップS4によりN+1→Nを実行するとN=3となるから、N=4か否かを判定するステップS5を介してステップS2に戻る。
【0026】次に、N=3より切替回路2のスイッチSW1,SW2は二次電池B3を選択し(ステップS2)、差動増幅器3は二次電池B3の端子電圧に相当する電圧を発生する。この差動増幅器3の出力電圧は、マイクロコントローラ3の入力端子ANに入力される。マイクロコントローラ3では、N=1およびN=2の場合と同様に、差動増幅器3の出力電圧をA/Dコンバータでディジタル値V(AN)に変換した後、メモリ値D(3)として記憶する(ステップS3)。ここで、ステップS4によりN+1→Nを実行するとN=4となり、ステップS5でYESとなるから、今度はステップS6に進む。
【0027】ステップS6では、メモリ値D(N)(N=1,2,3)のうちの最小値をメモリ値D(min)として、最大値をメモリ値D(max)として、またメモリ値D(N)(N=1,2,3)の平均値をメモリ値D(mean)として、それぞれ記憶する。
【0028】次に、ステップS7で最大値D(max)と充電禁止電圧Vov(例えば4.5V)より低い適当な値(例えば4V)に予め定められた第1の設定値V1を比較し、D(max)≧V1の場合は(ステップS7でYES)、電池電圧の測定値D(out)としてD(max)を出力する(ステップS8,S12)。
【0029】ステップS7でD(max)<V1の場合は(ステップS7でNo)、ステップS9に進んで、最小値D(min)と放電禁止電圧Vuv(例えば2〜2.5V)より高い適当な値(例えば3.6V)に予め定められた第2の設定値V2を比較し、D(min)≦V2の場合は(ステップS9でYes)、電池電圧の測定値D(out)としてD(min)を出力する(ステップS10,S12)。また、D(min)>V2の場合は(ステップS9でNO)、D(out)として平均値D(mean)を出力する(ステップS11,S12)。
【0030】ステップS12で電池電圧の測定値D(out)を出力した後、ステップS1に戻り、以上の処理を繰り返す。次に、図3を参照して本実施形態の電圧測定回路を用いた二次電池の保護回路について説明する。図3においては、図1に示した構成にスイッチ素子である電界効果トランジスタ(FET)5,6が追加されている。
【0031】すなわち、本実施形態では二次電池B1,B2,B3が直列接続された二次電池群1における電池B1の正極端子は+側の外部接続端子7に接続され、電池B3の負極端子は第1のFET5のソースに接続され、FET5のドレインは第2のFET6のドレインに接続され、FET6のソースは−側の外部接続端子8に接続されている。第1のFET5には、その寄生ダイオードD1が充電時に順方向となるように並列に接続されており、また第2のFET6には放電時に順方向となるように並列に接続されている。
【0032】外部接続端子7,8間には、充電時には充電器が接続され、放電時には負荷である電池パックの使用機器が接続される。また、第1および第2のFET5,6のゲートは、それぞれマイクロコントローラ4の制御端子R,Sに接続されている。
【0033】本実施形態では、マイクロコントローラ4は前述のようにして電池電圧を測定して得られた測定値D(out)を充電時には充電禁止電圧Vovと比較して、過充電防止動作を行う。すなわち、電池電圧の測定値D(out)が充電禁止電圧Vovまで上昇すると、マイクロコントローラ4の制御端子Sが低レベルとなり、第2のFET6が非導通状態となることによって充電が停止され、二次電池群1の過充電が防止される。
【0034】さらに、マイクロコントローラ4は放電時には電池電圧の測定値D(out)と放電禁止電圧Vuvと比較して、過放電防止動作を行う。すなわち、電池電圧の測定値D(out)が放電禁止電圧Vuvまで低下すると、マイクロコントローラ4の制御端子Rが低レベルとなり、第1のFET5が非導通状態となることによって放電が停止され、二次電池群1の過放電が防止される。
【0035】このように本実施形態では、電池電圧の測定値D(out)として、D(max)≧V1の場合は最大値D(max)を出力し、D(min)≦V2の場合は最小値D(min)を出力する。従って、この測定値D(out)を用いることにより、二次電池B1,B2,B3の端子電圧のばらつきの影響を受けず確実に保護動作を行うことができる。
【0036】すなわち、二次電池B1,B2,B3の端子電圧にばらつきがあり、充電時に容量が最小の電池や充電量が最大の電池の端子電圧が他の電池より早く充電禁止電圧に達した場合や、放電時に容量が最小の電池や充電量が最小の電池の端子電圧が他の電池より早く放電禁止電圧に達した場合、それらを電池電圧の測定値から直ちに検出して充電停止や放電停止保護動作を行うことができ、過充電や過放電を確実に防止することが可能となる。
【0037】また、通常の場合、つまりD(max)<V1かつD(min)>V2の場合には、平均値D(mean)を電池電圧の測定値D(out)として出力することにより、二次電池B1,B2,B3の上述した過充電や過放電に対する保護動作を行っていないときの充電の進行状態や放電の進行状態をモニタすることが可能となる。
【0038】すなわち、上述のようにD(max)≧V1の場合にD(max)を出力し、D(min)≦V2の場合にD(min)を出力する方法では、D(max)≧V1でもD(min)≦V2でもない場合に、充電器や使用機器側で二次電池の充電状態や放電状態を知ることはできないが、D(max)<V1かつD(min)>V2の場合に平均値D(mean)を出力するようにすれば、二次電池B1,B2,B3の充電状態や放電状態が全体的にどの程度進んでいるかを把握することができる。
【0039】さらに、上記実施形態によれば差動増幅器3の出力端子Pの電圧から二次電池B1,B2,B3の端子電圧の最大値、最小値および平均値の全ての検出をマイクロコントローラ4によって行っているため、切替回路2および差動増幅器3が二次電池群1と共に電池パック側にあり、マイクロコントローラ4が充電器や使用機器などの外部機器側にある場合、電池パックと外部機器間の接続線数を最小限にすることができる。
【0040】本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、次のように種々変形して実施することができる。
(1)上記実施形態では、二次電池を3個直列接続した例で説明したが、2個あるいは4個以上の二次電池を直列接続した場合や、複数の二次電池を並列接続したセルブロックを複数個直列接続した場合にも、本発明の電圧測定回路および保護回路を適用することができる。
【0041】(2)上記実施形態では、第1の設定値V1と第2の設定値V2で電池電圧の測定値D(out)が不連続に変化するが、V1またはV2の近傍あるいはその両方でD(out)が連続的に変化するようにスムージング処理を行うようにすることも可能である。
【0042】(3)上記実施形態では、D(max)≧V1の場合のD(max)を電池電圧の測定値D(out)とし、D(min)≦V2の場合のD(min)を電池電圧の測定値D(out)としたが、D(max)とV1の比較、D(min)とV2の比較のいずれか一方を省略してもよい。その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値として出力し、また最小値が第2の設定値以下の場合には最小値を電池電圧の測定値として出力することにより、二次電池の端子電圧にばらつきがあり、充電時に容量が最小の電池や充電量が最大の電池の端子電圧が他の電池より早く充電禁止電圧に達した場合や、放電時に容量が最小の電池や充電量が最小の電池の端子電圧が他の電池より早く放電禁止電圧に達した場合、それらを電池電圧の測定値から直ちに検出して充電停止や放電停止の保護動作を行うことができ、過充電や過放電を確実に防止することが可能となる。
【0044】また、最大値が第1の設定値より低い場合や、最小値が第2の設定値より高い場合の通常の状態では、複数個の二次電池の端子電圧の平均値を電池電圧の測定値として出力するため、二次電池の保護動作を行っていないときの充電状態や放電状態をモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の電圧測定回路の構成を示すブロック図
【図2】同実施形態の動作を説明するためのフローチャート
【図3】本発明の一実施形態に係る二次電池の保護回路の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1…二次電池群
B1,B2,B3…二次電池
2…切替回路
3…差動増幅器
4…マイクロコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最大値を検出する最大値検出手段と、前記複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、前記最大値と充電禁止電圧より低い第1の設定値とを比較し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値とし、最大値が第1の設定値より低い場合は前記平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする二次電池の電圧測定回路。
【請求項2】直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最小値を検出する最小値検出手段と、前記複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、前記最小値と放電禁止電圧より高い第2の設定値とを比較し、最小値が第2の設定値以下の場合は最小値を電池電圧の測定値とし、最小値が第2の設定値より高い場合は前記平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする二次電池の電圧測定回路。
【請求項3】直列接続された複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最大値を検出する最大値検出手段と、前記複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧のうちの最小値を検出する最小値検出手段と、前記複数個の二次電池のそれぞれの端子電圧の平均値を検出する平均値検出手段と、前記最大値と充電禁止電圧より低い第1の設定値とを比較すると共に、前記最小値と第1の設定値より低く放電禁止電圧より高い第2の設定値とを比較し、最大値が第1の設定値以上の場合は最大値を電池電圧の測定値とし、最小値が第2の設定値以下の場合は最小値を電池電圧の測定値とし、最大値が第1の設定値より低くかつ最小値が第2の設定値より高い場合は前記平均値を電池電圧の測定値とする測定手段とを具備したことを特徴とする二次電池の電圧測定回路。
【請求項4】請求項1または3に記載の電圧測定回路により得られる前記測定値と前記充電禁止電圧とを比較し、測定値が充電禁止電圧まで上昇したとき前記二次電池の充電を禁止する手段を具備したことを特徴とする二次電池の保護回路。
【請求項5】請求項2または3に記載の電圧測定回路により得られる前記測定値と前記放電禁止電圧とを比較し、測定値が放電禁止電圧まで低下したとき前記二次電池の放電を禁止する手段を具備したことを特徴とする二次電池の保護回路。
【請求項6】請求項3に記載の電圧測定回路により得られる前記測定値と前記充電禁止電圧および前記放電禁止電圧とを比較し、測定値が充電禁止電圧まで上昇したとき前記二次電池の充電を禁止し、測定値が放電禁止電圧まで低下したとき前記二次電池の放電を禁止する手段を具備したことを特徴とする二次電池の保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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