説明

二次電池システム

【課題】二次電池の内部で発生するガスの吸収効率を高める。
【解決手段】安全弁4が設けられた二次電池11と、ガス吸収装置としてのカートリッジ12とを備えた二次電池システムである。ガス吸収装置は、ガス導入部としてのカートリッジ弁12bと、ガス排出部としてのカートリッジ弁12cを備える。安全弁4とガス導入部12bとは接続され、ガス導入部からガス排出部に到る流通経路の手前に電解液を吸収するための第1の吸収材を備え、前記第1の吸収材よりも前記ガス排出部側にガスを吸収するための第2の吸収材を備える。この二次電池システムは、まず、第1の吸収材13により主に電解液を吸収し、その後第2の吸収材14によりガスを吸収するため、ガス吸収効率が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常時に内部で発生するガスの噴出を防止する機能を備えた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、過充電や短絡等の異常時に内部の温度が上昇し、大量のガスが発生して圧力も上昇する。そのため、二次電池の容器は安全弁を備え、所定の圧力を超えた場合に安全弁を通じて電解液から生成されるガスを安全に排出する。一方、電池内部から放出されるガスは可燃性のものや人体に有毒なものが大量に含まれているため、そのままの形で外部環境へ排出させない仕組みが必要となる。
【0003】
特許文献1は、電池の安全弁から排出される電解液とガスを分離し、電解液を電池に装着しているキャップ内に蓄えるようにして、電解液による弊害を防止することができる電池の構造について開示している。特許文献2は、酸化触媒等の触媒作用により蓄電池内で発生するガスを浄化するガス浄化部を備えたガス処理装置について開示している。特許文献3は、活性炭などのガス吸収材を封入したガス吸収素子を内部に備えた非水電解質二次電池について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−12485号公報
【特許文献2】特開2009−289655号公報
【特許文献3】特開2003−77549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異常時に二次電池内部から排出されるガスの種類は多岐にわたり、二酸化炭素などのほか、水素、炭化水素などの可燃性のもの、一酸化炭素などの有毒なもの、悪臭のガスなども含まれる。さらに、安全弁から排出されるのは、ガスだけでなく、高温で噴出する電解液或いはその蒸気が含まれる場合もある。ガス吸収材が電解液と接触すると、ガスの吸着サイトが埋まったり、吸収材が電解液の成分と反応することでさらに一酸化炭素等の有毒ガスを発生させるといった事象も明らかとなってきた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、二次電池の内部で発生するガスの吸収効率を高めることを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二次電池システムは、安全弁が設けられた1個又は複数個の電池と、ガス吸収装置とを備え、前記ガス吸収装置は、ガス導入部と、前記ガス導入部とは異なる部位に設けられたガス排出部とを備え、前記安全弁と前記ガス導入部とは接続され、前記ガス導入部から前記ガス排出部に到る流通経路の手前に電解液を吸収するための第1の吸収材を備え、前記第1の吸収材よりも前記ガス排出部側にガスを吸収するための第2の吸収材を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成により、安全弁から噴出した電解液及び一酸化炭素を含むガスは、ガス導入部から流通経路に流入後、まず、第1の吸収材で主に電解液を吸収し、その後第2の吸収材で主にガスを吸収することができる。本発明に係る二次電池システムは、第1の吸収材として電解液の成分に対して吸収効率の優れた材料を、第2の吸収材14として一酸化炭素やその他のガスの成分に対して吸収効率に優れた材料をそれぞれ選択することが好ましい。
【0009】
また、上記二次電池システムは、安全弁が設けられた複数個の電池で構成されるとともに、各電池の安全弁が1つの集積配管に接続されていてもよい。すなわち、複数の電池からなる電池モジュールにも適用することができる。
【0010】
また、上記二次電池システムは、流通経路上であって第1の吸収材と第2の吸収材との間に酸化触媒がさらに配置されていてもよい。これにより第2の吸収材におけるガス吸収効率を一層高めることができる。
【0011】
また、上記二次電池システムは、前記第1の吸収材と前記第2の吸収材とを、前記流通経路に対して交差するように区画する仕切体を備え、その仕切体が少なくとも1箇所の貫通部分を有するように構成してもよい。この構成により、安全弁から噴出した電解液及び一酸化炭素を含むガスが第1の吸収材や第2の吸収材を通過する距離を長くすることができ、電解液及び一酸化炭素を含むガスと第1の吸収材や第2の吸収材との接触効率を向上させ、全体的にガス吸収効率をさらに向上させることができる。
【0012】
また、上記二次電池システムは、流通経路上であって第1の吸収材の手前及び/又は第1の吸収材と第2の吸収材との間に熱吸収材が設けられていてもよい。この構成により、安全弁から噴出した電解液及び一酸化炭素を含むガスを熱吸収材で冷却することで第1の吸収材及び第2の吸収材の吸収効率を向上させることができる。また、熱吸収材は第1の吸収材の手間又は第1の吸収材と第2の吸収材との間の両方に配置されていてもよい。
【0013】
また、上記二次電池システムに用いられるガス吸収装置は、取付部材が設けられた密閉容器と、その密閉容器内部に、流通経路と、第1の吸収材と、第2の吸収材とを含む、取付自在にしたカートリッジとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の吸収材で電解液を吸収後、電解液が除去されたガスを第2の吸収材で吸収するため、ガス吸収効率が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の二次電池システム
【図2】カートリッジの内部構造を説明するための断面図
【図3】ガス吸収率測定用の二次電池システム
【図4】第2の実施形態の二次電池システム
【図5】カートリッジの他の構成例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、各実施形態はいずれも例示であり、本発明の限定的な解釈を与えるものではない。各実施形態において、同一又は同種の部材には同一の符号を用いる場合がある。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の二次電池システムの構成を示している。矢印は、非水電解質二次電池11の内部から噴出する電解液及びガスの流通方向を示す。図1に示すように、二次電池システム21は、二次電池11と、ガス吸収装置としてのカートリッジ12とを備える。
【0017】
カートリッジ12は、カートリッジ容器12aの底部に第1のカートリッジ弁12bを、上部に第2のカートリッジ弁12cを有する。これらの弁は、いずれも所定の圧力で開く圧力弁である。
【0018】
カートリッジ12は、第1のカートリッジ弁12bと第2のカートリッジ弁12cとを連通する流通経路12dを有する。流通経路12d上には主に液体を吸収するための第1の吸収材13と、主にガスを吸収するための第2の吸収材14とを有し、それらが少なくとも1箇所の貫通部分を有する板状の仕切体15によって区画されている。二次電池11の安全弁4と第1のカートリッジ弁とは外部に液体や気体が漏出しないように気密性を保持した状態で取付部材3a、12eによって接続されている。
【0019】
安全弁4から噴出した電解液及びガスは、ガス導入部としての第1のカートリッジ弁12bからカートリッジ12内に流入し、第1及び第2の吸収材13、14を通過することで無害化された後、ガス排出部としての第2のカートリッジ弁12cから流出する。
【0020】
図2は、カートリッジの内部構造を説明するための断面図である。図中の矢印は、電解液及びガスの流通方向を示す。電解液やガスをカートリッジ内に長時間滞留させるため、第2のカートリッジ弁12cの開放圧力は、第1のカートリッジ弁のそれよりも高いことが好ましい。
【0021】
仕切体15は、第1の吸収材13と第2の吸収材14が混ざり合わないように仕切ると共に電解液やガスを通過させるための少なくとも1箇所の貫通部分を有するもの、例えば、金属メッシュ、ネット、ろ紙、フィルター、貫通孔を有する板等などでもよい。仕切体15によって、カートリッジ12は、第1及び第2の吸収材13、14による2層構造の状態を保持できる。
【0022】
ただし、第1及び第2の吸収材13、14の大きさや形状や保持方法を工夫して、仕切体15を省略してもよい。例えば、第1の吸収材13及び第2の吸収材14がいずれもカートリッジ容器12aの内部に収まるように、予め塊状に形成して配置してもよく、それらを貫通孔を有する容器又は袋等にそれぞれ収納して配置してもよい。
【0023】
第1の吸収材13は、活性炭又は有機系材料や無機多孔質材料を含む分子化合物を用いることが好ましく、特に活性炭を用いることが好ましい。第2の吸収材14は、有機系材料や無機多孔質材料を含む分子化合物を用いることが好ましく、特に、無機系多孔質材料を含む分子化合物を用いることが好ましい。但し、第1の吸収材13として、第2の吸収材と同一の吸収材を用いてもよい。また、第1及び第2の吸収材13、14は、いずれも複数の材料を混合して用いてもよい。複数の分子化合物の組合せにより電解液や種々のガスを効率よく吸収することができるからである。
【0024】
分子化合物とは、1つの化合物の結晶の三次元網目構造の中にできる隙間に、他の化合物が入りこんでできる一種の付加化合物であり、単独で安定に存在することのできる化合物の2種類以上の化合物が水素結合やファンデルワールス力等に代表される、共有結合以外の比較的弱い相互作用によって結合した化合物である。具体的には、水和物、溶媒化物、付加化合物、包接化合物等が含まれる。このような分子化合物は、分子化合物を形成する化合物と電解液との接触反応により形成することができ、電解液を固体状の化合物に変化させることができる。
分子化合物を形成する材料としては、化合物と電解液との接触反応により、電解液をホスト化合物で包接してなる包接化合物が挙げられる。分子化合物を形成する材料のうち、電解液を包接した包接化合物を形成するホスト化合物としては、有機化合物、無機化合物及び有機・無機複合化合物よりなるものが知られており、また、有機化合物においては単分子系、多分子系、高分子系ホスト等が知られている。
分子化合物は、ガスとの接触効率や容器等に充填した場合の充填効率等を考慮すると、平均粒子径10〜5000[μm]、特に200〜300[μm]であるものが好ましく、その比表面積30[m/g]以上、特に200[m/g]以上であるものが好ましい。
【0025】
第1及び第2の吸収材13、14に用いることができる分子化合物としては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリン類、カリックスアレン類、尿素、デオキシコール酸、コール酸、1,1,6,6−テトラフェニルヘキサ−2,4−ジイン−1,6−ジオール等のアセチレンアルコール類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類、ビス−β−ナフトール等のナフトール類、ジフェン酸ビス(ジシクロヘキシルアミド)等のカルボン酸アミド類、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン類、キチン、キトサン、多孔質シリカ、金属ポーラス構造体、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、活性アルミナ、アパタイト、多孔質ガラス、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、多孔質有機金属化合物、カーボンブラック、ナノカーボン、ゼオライト、酸化チタン、酸化マグネシウム等が好適である。ただし、第1の吸収材13は主に吸収対象である電解液に応じて選択し、第2の吸収材14は主に吸収対象とするガスに応じて選択することが好ましい。
【0026】
−実施例−
図3はガス吸収率測定用の二次電池システムを示している。このシステムにより、以下の15種類のカートリッジを用いて、非水電解質二次電池の安全弁から噴出した一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)の吸収率をそれぞれ調べた。まず、実験で用いた二次電池システムの基本構成について説明する。
【0027】
二次電池システム21aは、二次電池11と、カートリッジ22からなる。カートリッジ22は、ガス導入部としての1つの流入口22bとガス排出部としての複数の流出口22cを備え、流入口22b及び流出口22cの近傍にはろ紙20a、20bが設けられている。また、カートリッジ内部にも第1及び第2の吸収材13,14を仕切るための仕切体としてろ紙25が設けられている。
【0028】
二次電池11は、定格容量0.5[Ah]のリチウムイオン二次電池であり、電解液としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを混合した混合溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解質を含む。
【0029】
カートリッジ22は、第1の吸収材13及び第2の吸収材14の組合せにより、実施例1〜実施例7として(1)〜(7)、比較例1〜比較例8として(8)〜(15)の15種類を用いた。
【0030】
(1)実施例1(#202)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#202を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#202は、Si:Al:Ag:O=8.1:1:1:18.3のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(2)実施例2(#203)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#203を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#203は、Si:Al:Cu:O=40:1:1:80のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(3)実施例3(#204)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#204を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#204は、Si:Al:Ca:O=4.6:2:1:13.2のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(4)実施例4(#207)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#207を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#207は、Si:Al:Ca:O=2:2:1:8のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(5)実施例5(#208)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#208を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#208は、Si:Al:Na:O=2.3:1:1:6.6のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(6)実施例6(#215)
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#215を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#215は、Si:Al:Li:O=1.3:1:1:4.1のモル比で構成される無機多孔質材料である。
(7)実施例7(#207)
第1の吸収材13として活性炭を10[ml]、第2の吸収材14として分子化合物#207を10[ml]用いた。ただし、分子化合物#207は、Si:Al:Ca:O=2:2:1:8のモル比で構成される無機多孔質材料である。
【0031】
(8)比較例1(ブランク)
第1の吸収材13及び第2の吸収材14は、いずれも吸収材無しとした。
(9)比較例2
第1の吸収材13として活性炭を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(10)比較例3
第1の吸収材13として上記分子化合物#202を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(11)比較例4
第1の吸収材13として上記分子化合物#203を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(12)比較例5
第1の吸収材13として上記分子化合物#204を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(13)比較例6
第1の吸収材13として上記分子化合物#207を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(14)比較例7
第1の吸収材13として上記分子化合物#208を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
(15)比較例8
第1の吸収材13として上記分子化合物#215を20[ml]用いた。第2の吸収材14は吸収材無しとした。
【0032】
次に、試験方法について説明する。まず、上記リチウムイオン二次電池の充放電を1サイクル実施した。具体的には、上記リチウムイオン二次電池を、温度25[℃]において、電流0.2[CmA](約5時間率)、電圧3.6[V]、8時間の定電流及び定電圧で充電し、電流0.2[CmA](約5時間率)、終止電圧2.0[V]の定電流で放電した。その後、そのリチウムイオン二次電池に上記(1)〜(15)の15種類のカートリッジをそれぞれ接続して過充電試験を実施した。この過充電試験では、電流5[CmA](約1/5時間率)、電圧50[V]、2時間の定電流及び定電圧で充電した。
【0033】
過充電試験によってリチウムイオン二次電池11の安全弁4から噴出したガス及び電解液をカートリッジ22の流入口22bからカートリッジの内部に流入させ、流出口22cから流出するガスをアルミバッグに回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析装置(HP5890、HEWLETT PACKRD社製)を用いて一酸化炭素及び二酸化炭素の量をそれぞれ測定した。なお、測定条件として、カラム1及び2にはPorapakQ(ポーラスポリマー)を、カラム3には40/60 Molecular Sieve 13X1(合成ゼオライト)を、キャリアガスにはArを用いた。また、注入口(Inlet)及び検出器(TCD)の温度は200[℃]とした。以上の試験を実施して得られた結果は、以下の表1に示す通りである。ここで、比較例1(ブランク)に対する吸収率は、一酸化炭素及び二酸化炭素のそれぞれに対して以下の式1により算出している。
比較例1(ブランク)に対する吸収率=(X−Y)/X×100 (式1)
ただし、Xは比較例1(ブランク)の対象ガスの測定量を、Yは対象とするカートリッジを用いた場合の対象ガスの測定量である。このことから、表中の−(マイナス)は、対象ガスの量が増大したことを示すものと考えられる。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より以下の点が確認された。
(1)活性炭のみの場合、比較例1(ブランク)に比べて一酸化炭素の量が増加し、二酸化炭素の量が10%程度減少した。
(2)分子化合物#207、分子化合物#208、分子化合物#215をそれぞれ単独で用いても比較例1(ブランク)に比べて一酸化炭素の量が増加した。
(3)分子化合物#208及び分子化合物#215は、いずれも比較例1(ブランク)に比べて二酸化炭素の量が大きく増加した。
(4)第1の吸収材として活性炭を用い、かつ、第2の吸収材として分子化合物#207、#208、#215をそれぞれ用いた場合には、比較例1(ブランク)に比べて一酸化炭素の量が約20%以上減少し二酸化炭素の量が50%以上減少した。
【0036】
よって、表1の実施例4〜6と比較例2、比較例6〜8の結果を考慮すると、単純に活性炭と分子化合物#207、分子化合物#208、分子化合物#215のいずれかとを組合せても実施例4〜6ほどの吸収率を期待できないことが確認された。
【0037】
実施例4〜6、比較例2、6〜8において、過充電試験前後の第1の吸収材及び第2の吸収材の重量を測定すると、第1の吸収材の重量は増加し、第2の吸収材の重量はほとんど増加しなかった。具体的には、第2の吸収材の重量は、過充電試験前後で第1の吸収材の重量の増加に対して8分の1程度以下の増加と小さい。これは、第1の吸収材が主に電解液を吸収しているのに対して、第2の吸収材は電解液をほとんど吸収していないためと考えられる。
次に、分子化合物#207による一酸化炭素及び二酸化炭素の吸収率に着目すると、いずれも実施例4>実施例7>比較例6という関係が成立する。すなわち、分子化合物の量が同じでも、下層の活性炭量を増すことで電解液成分を除去するほど、分子化合物#207のガス吸収性能が向上すること、分子化合物がなければ一酸化炭素も二酸化炭素も吸収されないばかりか却って一酸化炭素及び二酸化炭素を放出することが分かる。
【0038】
以上のことから、カートリッジの内部において、流入口から近い順に、主に電解液を吸収するための第1の吸収材、主にガスを吸収するための第2の吸収材を設けることにより、安全弁から噴出した電解液及びガスを効率よく吸収できることが確認された。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で示した二次電池システムは、二次電池を複数並べて用いる形態(以下、このような形態を「モジュール」という。)において、二次電池の各安全弁とカートリッジとを集積配管により接続する構成にも適用できる。
【0040】
図4は、第2の実施形態の二次電池システムの構成を示している。個々の二次電池及びカートリッジはいずれも図1に示すものと同様である。図4に示すカートリッジは任意の場所に配置してもよい。図4に示すように、二次電池システム31は、複数の二次電池21を並置してなるモジュール23と、1つのガス吸収装置32と、1つの集積配管24とを備える。
【0041】
集積配管24は、二次電池21の安全弁の数と同数の分配部24aと、その複数の分配部を1つに集積する本体部24bとを有する。集積配管24の一端24は各二次電池21の安全弁4にそれぞれ接続され、他端はガス吸収装置32に接続される。
【0042】
第2の実施形態の二次電池システムは、複数の二次電池から噴出した電解液及びガスを集中配管24によってまとめてガス吸収装置32によって吸収することができる。このような構成によると、高温の電解液が集中配管を通過する際に冷却され、ガスの発生量が小さくなる利点もある。そのため、第2の実施形態によればガス吸収効率が一層向上する。
【0043】
(第3の実施形態)
図5(a)及び図5(b)は、カートリッジの他の構成例を示している。図中の矢印は、電解液やガスの流通方向を示している。
【0044】
図5(a)に示すカートリッジ42は、カートリッジ容器42aが、2つの仕切体15、18によって、第1のカートリッジ弁42bから第2のカートリッジ弁42cに通じるガスの流通経路42dが3つの領域に区画されており、第1の吸収材13と第2の吸収材14との間に酸化触媒16が充填されている。仕切体18は、仕切体15と同様なものを用いることができる。さらに、第2のカートリッジ弁42cの手前に脱臭フィルター19が設けられている。
【0045】
酸化触媒16は、電解液、ガス、第1の吸収材13、第2の吸収材14やカートリッジの使用態様等に応じて様々なものを用いることができ、例えば、活性アルミナ、多孔質シリカ、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、活性炭等の各種担体にPdX(Xはハロゲン原子)及びCuXを担持させた不均一触媒、金属ポーラス構造体、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、パラジウム化合物、ロジウム化合物、ジルコニウム化合物、白金化合物等が好適である。
【0046】
酸化触媒16によって第1の吸収材13を通過したガスが酸化され、第2の吸収材14によるガスの吸収効率がさらに向上する。また、この二次電池システムは、酸化触媒16を用いることにより第1の吸収材13及び第2の吸収材14に用いる材料の選択余地を広げることができる。
【0047】
第3の実施形態の二次電池システムは、酸化触媒16の代わりに、又は、さらに区画を設けて熱吸収材17を設けても良い。熱吸収材17は、熱容量が大きく伝熱性の高いもの、例えば、金属ビーズ等を用いることができる。熱吸収材17には高温の電解液の蒸気を含むガスを冷却させる効果があるため、第2の吸収材14による電解液やガスの吸収効率をさらに向上させることができる。この場合、熱吸収材17は、第1の吸収材の前に配置することが好ましい。
【0048】
図5(b)に示すカートリッジ42のように、仕切体15の両端付近と仕切体18の中央部付近に貫通部15a、18aを有する板を設けてもよい。このようにすると、電解液やガスの流通経路が複雑になり、電解液やガスの滞留時間が長くなるため、電解液やガスの吸収効率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
4 安全弁
11 二次電池
12、22、42 カートリッジ
12a、22a、42a カートリッジ容器
12b、42b 第1のカートリッジ弁
12c、42c 第2のカートリッジ弁
12d、22d、42d 流通経路
13 第1の吸収材
14 第2の吸収材
15、18 仕切体
15a、18a 貫通部
16 酸化触媒
17 熱吸収材
19 脱臭フィルター
20、25 ろ紙
21、31 二次電池システム
21a ガス吸収率測定用の二次電池システム
22b 流入口
22c 流出口
23 モジュール
24 集積配管
32 ガス吸収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全弁が設けられた1個又は複数個の電池と、ガス吸収装置とを備え、前記ガス吸収装置は、ガス導入部と、前記ガス導入部とは異なる部位に設けられたガス排出部とを備え、前記安全弁と前記ガス導入部とは接続され、前記ガス導入部から前記ガス排出部に到る流通経路の手前に電解液を吸収するための第1の吸収材を備え、前記第1の吸収材よりも前記ガス排出部側にガスを吸収するための第2の吸収材を備えた二次電池システム。
【請求項2】
複数個の電池を備え、各電池の安全弁が1つの集積配管に接続された請求項1記載の二次電池システム。
【請求項3】
前記流通経路上であって前記第1の吸収材と前記第2の吸収材との間に酸化触媒がさらに設けられた請求項1又は請求項2記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記第1の吸収材と前記第2の吸収材とを、前記流通経路に対して交差するように区画する仕切体を備え、その仕切体が少なくとも1箇所の貫通部分を有するように構成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項5】
前記流通経路上であって前記第1の吸収材の手前及び/又は前記第1の吸収材と前記第2の吸収材との間に熱吸収材が設けられた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項6】
前記第1の吸収材及び前記第2の吸収材の少なくとも一方は、分子化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項7】
前記ガス吸収装置は、取付部材が設けられた密閉容器と、前記密閉容器内部に前記流通経路と、前記第1の吸収材と、前記第2の吸収材とを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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