説明

二番物搬送構造

【課題】 処理に必要な滞留を確保して枝梗処理を十分に行い得る二番物搬送構造を提供する。
【解決手段】 持上式の二番物還元搬送装置19から二番物を受取る上部受取口21Bと、その上部受取口21Bより取り入れた二番物に落下処理を加えて選別処理部に排出する下部排出口21Aとを有する補助還元装置21を設ける。補助還元装置21における上部受取口21Bから下部排出口21Aに至る落下経路bに、羽根21bを備えた回転体21Dと回転体21Dに対向して壁面に配置される受け刃体21Fとを落下経路bに沿って交互に配置して構成した二番物再処理機構Aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体からなる二番物再処理機構を備えている二番物搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
選別処理部の一端に横送り搬送された二番物を選別処理部に戻す為に斜め上方に持上げ搬送する二番物還元搬送装置を設け、二番物還元搬送装置の搬送終端位置より二番物を横送りしながら選別処理部に向けて搬送する補助還元装置を設け、補助還元装置として、左右方向に横架させたロータ軸に複数の脱粒羽根を備えた回転体を設けて、枝梗処理用の二番物再処理機構を構成しているものがある(特許文献1参照)。
また、上下向き姿勢の持上げ式の二番物還元搬送装置を設け、二番物還元搬送装置の搬送終端位置より二番物を横送りしながら選別処理部に向けて搬送する補助還元装置を設け、補助還元装置として、左右方向に横架させたオーガ式の回転体を設けて、枝梗処理用の二番物再処理機構を構成しているものがある(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−275096号公報(段落番号〔0020〕〔0021〕、及び、図5,7,20,21)
【特許文献2】特開2005−328736号公報(段落番号〔0012〕、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1,2に記載されている発明は、一方が羽根式の回転体で他方がオーガ式の回転体である点で相違はあるものの、二番物還元搬送装置で持上げ搬送した二番物に回転体単独で再処理を加えるものであるために、回転体には二番物を搬送する機能が主として求められており、枝梗処理機能としては十分でない面があった。
【0005】
本発明の目的は、処理に必要な滞留を確保して枝梗処理を十分に行い得る二番物搬送構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、持上式の二番物還元搬送装置から二番物を受取る上部受取口と、その上部受取口より取り入れた二番物に落下処理を加えて選別処理部に排出する下部排出口とを有する補助還元装置を設け、前記補助還元装置における前記上部受取口から前記下部排出口に至る落下経路に、回転体と前記回転体に対向して壁面に配置される受け刃体とからなる二番物再処理機構を備えている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
補助還元装置として、回転体と壁面から突設された受け刃体とを備え、両者で二番物に対して処理を行うので、回転体単独で二番物に処理を加える場合に比べて処理が能力が高い。
しかも、二番物は下降経路を自重で降りながら処理を受けることになる。したがって、回転体には搬送能力はあまり要求されないところから、回転体はその回転によって受け刃体との協働で、二番物に揉み処理または解し処理を加えるだけのものでよい。そして、回転体と受け刃体とが下降経路内に位置するので、下降面積を狭めることになり二番物が滞留しやすい。このことによって、滞留した二番物に対して回転体と受け刃体とで時間を掛けて処理を加えることができ、枝梗を除去する能力が高い。
【0008】
〔効果〕
二番物の再処理を、回転体と受け刃体とを配置した下降経路で行うという構成によって、十分な二番物の滞留時間を確保することができ、枝梗の除去能率を高めることができ、良品質の穀粒を提供できる二番物搬送構造を提示することができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記回転体を前記二番物還元搬送装置から二番物を受け取る上部受取部位においては、螺旋状のオーガに構成するとともに、その下方における回転体を、羽根を備えた回転体に構成し、前記羽根を備えた回転体に対向して前記受け刃体を配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、前記回転体を前記二番物還元搬送装置から二番物を受け取る上部受取部位においては、螺旋状のオーガに構成することによって、二番物還元搬送装置から投入される二番物を受け入れて搬送しやすく、回転体と受け刃体との処理空間に滞留なく送り込むことができる。
上記螺旋状のオーガによって補助還元装置に導入された二番物に対しては、下降経路に配置された羽根を備えた回転体と受刃体とで枝梗処理を加えることができる。
このように、枝梗処理を加える羽根を備えた回転体の上方に螺旋状のオーガを備えた回転体を配置するという、夫々の部位に応じた回転体の形式の採用によって、下降経路に滞留なく二番物を導入することができ、枝梗処理機能を十分に発揮させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
コンバインは、図1に示すように、クローラ式走行装置1を備えた走行機体2の前端に刈取前処理部3を配置するとともに、刈取前処理部3から搬送された穀稈に脱穀処理を加える脱穀装置30、走行機体2の右横側部に脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク4を搭載して構成されている。
【0012】
図1に示すように、穀粒タンク4には排出用の底スクリュウ4Aが設けてあり、穀粒タンク4の後面の下端に底スクリュウ4Aの排出口を設ける。穀粒タンク4の後面には、縦送りスクリュウコンベア5が取り付けてあり、縦送りスクリュウコンベア5を穀粒タンク4の後面の下端に設けたベベルギヤ連結ケース6を介して底スクリュウ4Aの排出口に接続してある。
【0013】
図1に示すように、コンバインにおいては、縦送りスクリュウコンベア5の上端には旋回筒7を設けてあり、旋回筒7の横側面に上下揺動自在に横送りスクリュウコンベア8が取り付けられて、旋回筒7の内部空間を通して縦送りスクリュウコンベア5が持上げ搬送した穀粒を横送りスクリュウコンベア8に受け渡すべく構成してある。
図1に示すように、横送りスクリュウコンベア8の先端部には、横送りスクリュウコンベア8で送られる穀粒を機外に搬出するための穀粒搬出口9Dが設けられている。
ここに、縦送りスクリュウコンベア5と横送りスクリュウコンベア8とを穀粒搬出装置と称する。
【0014】
図1及び図2に示すように、縦送りスクリュウコンベア5と横送りスクリュウコンベア8には穀粒を搬送する縦送りスクリュウ5A、横送りスクリュウ8Aが設けてある。縦送りスクリュウ5Aは、ベベルギヤ連結ケース6において底スクリュウ4Aとベベルギヤ連動され、横送りスクリュウ8Aは、旋回筒7において縦スクリュウ5Aとベベルギヤ連動されている。
【0015】
底スクリュウ4Aは穀粒タンク4から運転席側に突出した伝動軸に入力プーリ10を設けてあり、エンジンEからの動力を受けるように構成してある。運転部には操作レバー23があり、穀粒搬出装置に対する操作が可能となっている。したがって、操作レバー23によって、底スクリュウ4A、縦送りスクリュウ5A、横送りスクリュウ8Aを駆動して、穀粒を穀粒搬出口9Dより機外に搬出可能である。
【0016】
脱穀装置30での脱穀処理物の搬送構造について説明する。図2及び図3に示すように、脱穀フィードチェーン24によって搬送される穀稈に対して扱き処理を加える扱胴11を軸支した扱室aの下方に受網12を配置するとともに、受網12を通して漏下する脱穀処理物を揺動選別する選別処理部としての選別処理装置Bとその選別処理装置Bに選別風を供給する唐箕装置13とを備えて脱穀選別構造を構成している。
【0017】
図2及び図3に示すように、選別処理装置Bは、受網12より漏下する脱穀処理物を比重選別しながら後方に搬送するグレンパン14と、グレンパン14からの脱穀処理物を受取り選別処理を加えるチャフシーブ15と、穀粒を選別するグレンシーブ16とを備えて構成されている。グレンシーブ16の下方には、穀粒を選別室の一方に横送りする一番物横送り搬送装置17Aと、その一番物横送り搬送装置17Aの終端位置から穀粒を受け取って穀粒タンク4に搬送する一番物縦送り搬送装置17Bを設けてある。
【0018】
図2及び図3に示すように、チャフシーブ15の搬送後半部からの二番物を選別室の一方に横送りする二番物横送り搬送装置18と、その二番物横送り搬送装置18の終端位置から二番物を受け取って選別処理装置Bに搬送する二番物還元搬送装置19を設けてある。
【0019】
図4に示すように、二番物横送り搬送装置18の終端と二番物還元搬送装置19の始端との接続部位には送り込み装置20が設けてあり、送り込み装置20は、二番物横送り搬送装置18の横送りスクリュウ18Aの終端位置に設けられた回転羽根体20Aとその回転羽根体20Aを囲むケース20Cの内面に突設されている複数個の受け刃体20Bとを備えて、二番物横送り搬送装置18で送られて来た二番物に対して解し処理を加えて、二番物還元搬送装置19に送り込むべく構成してある。
【0020】
図2〜図4に示すように、二番物還元搬送装置19には略全長に亘って縦送り搬送スクリュウ19Aが軸支してあり、上端位置に、縦送り搬送スクリュウ19Aが持上げ搬送してきた二番物を次ぎの工程に送り込む送り込み羽根19Bを設けてある。
二番物還元搬送装置19に平行に上下向き姿勢の補助還元装置21を設けてあり、二番物還元搬送装置19から送り込まれた二番物を下方に設けた下部排出口21Aから選別処理装置Bに送り込むべく構成してある。
【0021】
補助還元装置21の構成について説明する。図4及び図5に示すように、補助還元装置21は、二番物を受取る上部受取口21Bと、その上部受取口21Bより取り入れられ落下処理を加えられた二番物を選別処理装置Bに排出する下部排出口21Aとを有する。補助還元装置21における上部受取口21Bから下部排出口21Aに至る落下経路bに、二番物再処理機構Aを備えている。
【0022】
図4及び図5に示すように、二番物再処理機構Aは、上部受取口21Bに臨む螺旋状のオーガ21aを備えた回転体21Cと、その下方に位置する羽根21bを備えた回転体21Dと、羽根21bを備えた回転体21Dに対向する状態でケース21Gの内面に突設された受け刃体21Fとで構成されている。そして、ケース21G内において二番物が落下する落下経路に沿って一定間隔で羽根21bを複数箇所に亘って備えた回転体21Dと、羽根21bの上下間隔の各間に設けた受け刃体21Fとで、二番物から枝梗を除去処理すべく構成してある。
つまり、回転体21Dと受け刃体21Fとは、上下方向に沿って交互に配置されており、上下方向に亘って複数層に配置された回転体21Dと受け刃体21Fとで、何回にも二番物に処理を加えることができる。
下部排出口21Aに臨む部位には、送り込み羽根21cを備えた回転体21Eを設けてある。
【0023】
図4及び図5に示すように、オーガ21aを備えた回転体21Cと羽根21bを備えた回転体21Dと送り込み羽根21cを備えた回転体21Eとを同一駆動軸21Jに取付け、この駆動軸21Jをケース21Gの上端より突設させる。一方、二番物還元搬送装置19の縦送り搬送スクリュウ19Aのスクリュウ軸19aを、二番物還元搬送装置19の搬送ケース19Cの上端より突設させる。そして、二番物還元搬送装置19より突設させたスクリュウ軸19aと、補助還元装置21より突設させた駆動軸21Jに動力伝達し、補助還元装置21の回転体21C、21D、21Eを駆動すべく構成してある。
【0024】
以上のような構成により、二番物の補助還元装置21内での充填率が高くなり、かつ、二番物は落下しながら羽根21bを備えた回転体21Dとケース21Gの内面に突設された受け刃体21Fとに複数回に亘って接触することとなり、枝梗処理効率が向上する。
【0025】
次に、扱室a内において枝梗処理を行う装置Cについて説明する。図2、図3、及び、図6に示すように、扱胴11を備えた扱室aの前壁cより扱胴軸11Aに平行にかつ受網12の横側方において扱室aの後端部に向けて駆動軸22Bを延出するとともに、この駆動軸22Bに一体回転する羽根22aを備えた回転体22Aを取付けてある。一方、前壁cの内面より駆動軸22Bに沿った姿勢のブラケット22cを延出するとともに、ブラケット22cに複数の受け刃体22dを立設し、回転体22Aと受け刃体22dとによって、扱室a内において枝梗処理を行う装置Cを構成する。尚、回転体22Aを扱胴11の右横側方部分に対応させて設けたので、受網12より右横側方部分に滞留する脱穀処理物を選別処理装置Bの左側に寄せることができ、選別処理装置Bでの脱穀処理物の偏在を均すことができる。
【0026】
駆動軸22Bを前壁cに支持するとともに、その前壁cより突出させて、その駆動軸22Bの突出した軸部分に入力ギヤ22bを装着する。図3に示すように、前壁cの前方に、エンジン動力をうける原動軸から扱胴軸11Aに取り付けた扱胴プーリ11Bに動力を伝達するベルト25が巻回してあり、このベルト25によって駆動されるアイドルプーリ27に出力ギヤ26を取り付けて、この出力ギヤ26と前記駆動軸22Bの入力ギヤ22bとを咬合させて、エンジンEからの動力を駆動軸22Bに伝達するようにしてある。
【0027】
図1に示すように、横送りスクリュウコンベア8の先端部には、横送りスクリュウコンベア8で送られる穀粒を機外に搬出するための穀粒搬出口9Dが設けられているが、この穀粒搬出口9Dにおいて枝梗処理を行うことができる枝梗処理装置Dについて説明する。
【0028】
図7に示すように、横送りスクリュウ8Aを収納した円形断面の横送りスクリュウケース8Bにおける先端に、穀粒搬出口9Dを備えた搬出ケース9を連結固定するとともに、横送りスクリュウ8Aの先端軸8aを搬出ケース9の先端壁9Aにベアリング9bで回転可能に支持する。搬出ケース9における先端壁9Aに対向する状態で横送りスクリュウコンベア8の搬送始端側に傾斜壁9Bを下端側程先端壁9Aに近接する状態に垂下する。先端壁9Aと傾斜壁9B、及び、この先端壁9Aと傾斜壁9Bとの横側方をカバーする横側壁9Cとで横送りスクリュウ8Aで送られてきた穀粒を下向きに誘導するガイド筒を形成し、ガイド筒の下端に穀粒搬出口9Dを形成する。
【0029】
図7に示すように、スクリュウケース8Bとガイド筒との連結部位で傾斜壁9Bの上端から先端壁9Aに向けて横送りスクリュウ軸に平行な状態で、ピアノ線で編んだ漏下網9Eを張設するとともに、この漏下網9Eに横送りスクリュウ8Aの回転方向に沿った姿勢の複数の受け刃体9Fを横送りスクリュウ8Aの軸線方向に沿って一定間隔で立設してある。
【0030】
図1及び図7に示すように、横送りスクリュウ8Aの先端軸8aには、先端軸8aの円周方向に沿って複数枚の羽根8bが、先端軸8aの軸線方向に一定間隔で植設されており、各羽根8bは、先端軸8aの軸線方向において隣接する受け刃体9F同士の間に位置するように構成してある。
以上のような構成により、穀粒搬出口9Dにおいて枝梗処理を行うことができる枝梗処理装置Dを構成する。
【0031】
したがって、以上のような構成により、横送りスクリュウ8Aによって搬送される穀粒内に枝梗付き着粒が混入していても、前記した羽根8bと受け刃体9Fとで枝梗が除去され、穀粒は漏下網9Eより漏下し、枝梗処理が進むこととなる。このように、穀物搬出口9D近くに枝梗処理装置Dを設けているので、穀粒を搬出する最終工程においても処理機能を確保でき、かつ、刈取中ではなく、搬出中に枝梗処理を行うこととなるので、動力不足が起こることはなく、そのような点を考慮する必要はない。
【0032】
〔別実施形態〕
(1) 補助還元装置21としては、必ずしも、上下向き姿勢に設置する必要はなく、斜め姿勢で設置してもよい。
(2) 補助還元装置21としては、上部受取口21Bに対応して設けた螺旋状のオーガを備えた回転体を装備する必要はなく、この部分においても、羽根21bを備えた回転体21Dを設けてもよい。
(3) 二番物再処理機構Aとして、羽根21bを備えた回転体21Dの代わりに、螺旋状のオーガを備えた回転体を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コンバンインの側面図
【図2】脱穀選別装置を示す縦断側面図
【図3】脱穀選別装置を示す縦断正面図
【図4】二番物還元搬送装置と補助還元装置を示す縦断側面図
【図5】補助還元装置の横断平面図
【図6】扱室内において枝梗処理を行う装置を示す横断平面図
【図7】穀物搬出口に設けた枝梗処理装置を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0034】
19 二番物還元搬送装置
21 補助還元装置
21A 下部排出口
21B 上部受取口
21C、21D 回転体
21F 受け刃体
21a オーが
21b 羽根
A 二番物再処理機構
B 選別処理部
b 落下経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持上式の二番物還元搬送装置から二番物を受取る上部受取口と、その上部受取口より取り入れた二番物に落下処理を加えて選別処理部に排出する下部排出口とを有する補助還元装置を設け、前記補助還元装置における前記上部受取口から前記下部排出口に至る落下経路に、回転体と前記回転体に対向して壁面に配置される受け刃体とからなる二番物再処理機構を備えている二番物搬送構造。
【請求項2】
前記回転体を前記二番物還元搬送装置から二番物を受け取る上部受取部位においては、螺旋状のオーガに構成するとともに、その下方における回転体を、羽根を備えた回転体に構成し、前記羽根を備えた回転体に対向して前記受け刃体を配置してある請求項1記載の二番物搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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