説明

二軸混練押出機

【課題】2本の混練スクリュが設けられた混練部と、スクリュ駆動用の駆動モータと、混練部と駆動モータとを連結する変速部とを有する二軸混練押出機において、両混練スクリュをスラスト方向で適正に保持し、変速部のコンパクト化や故障の防止、長寿命化を図るようにした二軸混練押出機を提供する。
【解決手段】二軸混練押出機1は、第1混練スクリュ12aに作用する変速部4向きの軸力を検出する軸力検出部8と、第1混練スクリュ12aのスラスト荷重を支持する第1スラスト軸受部5と、第1スラスト軸受部5を介して第1混練スクリュ12aに軸方向の背圧を負荷する軸力付与部7と、軸力検出部8の検出値に基づいて軸力付与部7を制御する軸力制御部9とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸混練押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸混練押出機は、バレル内に設けられた左右一対の混練室に対して混練スクリュがそれぞれ回転自在に挿通された混練部と、これら両混練スクリュ用の回転駆動力を発生する駆動モータと、混練部と駆動モータとの間を連結して駆動モータの回転駆動力を減速又は増速し且つ各混練スクリュへ分配する変速部とを有している。
駆動モータで混練スクリュを回転させつつ、バレルに設けられた材料投入ホッパからプラスチック等の被混練材料を投入すると、この被混練材料は両混練スクリュの回転で溶融、混練作用を受けながらバレル先端へ向けて圧送され、バレル先端に設けられたダイ部から押し出されるようになる。ダイ部での樹脂圧は高圧となり、各混練スクリュは大きなスラスト荷重を受けることになるため、各混練スクリュに個別に対応させてスラスト軸受を設け支持しているのが普通である。
【0003】
なお、多くの二軸混練押出機では、両混練スクリュの軸間距離は小さいため、それぞれのスラスト軸受を同位置に並べて配置することはできず、軸方向にズラして配置せざるを得なかった。しかも、これらスラスト軸受を設ける位置には変速部があって構造的に密となっており、スペース的なゆとりがない。そのため、一方のスラスト軸受だけは、多段型スラスト軸受(小型のスラスト軸受を軸方向に重ね合わせたもの)を設けることが多い。
しかし、それでもなおスペース的理由からバックアップ力として十分量となる段数のスラスト軸受を装備できなかったり、段数の増加に伴って軸方向に長大となり、変速部としての出力軸が長軸化するためにねじれ剛性が低下したりするといった問題があった。
【0004】
そこで、スラスト軸受を保持するケーシング部を変速部のケーシングと分割可能にすることで、十分な大きさのスラスト軸受を装着可能にすることが提案されている(特許文献1)。
一方、混練スクリュ先端のダイ内面に突出部を設けることで、混練スクリュに作用する圧力を低減させ、スラスト荷重を小さくする試みもなされていた(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−240769号公報
【特許文献2】特開平11−320550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スラスト軸受のケーシング部を分割させる提案(特許文献1)は、装置が受けるスラスト荷重があまり変位しない場合には有効であるが、多品種少量生産に用いられる混練押出機のように、混練される製品や運転条件によりスラスト荷重が大きく変位する場合には不向きであった。
また、混練スクリュの先端に突出部を設けて圧力の低減を図る提案(特許文献2)は、混練スクリュの先端で圧損を生じさせることになるため、ダイ部での昇圧不足が生じる不具合があった。
【0006】
このようなことから、混練スクリュをスラスト方向において適正に保持させる好適な解決手段は未だ確立していないのが実情であった。そのため二軸混練押出機において、変速部まわりのコンパクト化や故障の防止、長寿命化などは重要な課題とされていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、両混練スクリュをスラスト方向において適正に保持できるようにし、もって変速部まわりのコンパクト化や故障の防止、長寿命化などを図るようにした二軸混練押出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る二軸混練押出機は、バレル内の混練室に挿通され且つ駆動モータで回転駆動される第1混練スクリュ及び第2混練スクリュとを備えたものであって、前記第1混練スクリュ又は第2混練スクリュに作用するスラスト荷重を検出する軸力検出部と、前記第1混練スクリュにスラスト力を付与可能な第1軸力付与部と、前記軸力検出部が検出したスラスト荷重に抗するスラスト力を前記第1軸力付与部に発生させる軸力制御部と、を有していることを特徴とする。
【0008】
なお、第1混練スクリュに作用する変速部向きの軸力と、第2混練スクリュに作用する変速部向きの軸力とは、原則として同等と見なすことができる(厳密には多少の差異を有する場合がある)ため、軸力検出部は、これらのうちいずれの軸力を検出するものであってもよいとする。
このような構成であると、第1軸力付与部により第1混練スクリュに対し適切なスラスト力を付与することができ、第1混練スクリュを支持する第1スラスト軸受部に対する負荷を低減できる。第1スラスト軸受部は、構造的に密であってスペース的なゆとりがない部分に設けられることが常であるため、そのコンパクト化にも寄与できる。
【0009】
また、第1スラスト軸受部は十分量のバックアップ力を確保されコンパクト化が図れるため、軸方向スペースが徒に長大となることもない。むしろ、変速部が具備する出力軸として軸方向のコンパクト化(短軸化)が可能である。そのため、ねじれ剛性を高める利点に繋がり、変速部まわりでの故障の防止、長寿命化が図れる等の利点となる。
好ましくは、前記軸力検出部は、混練室の先端側へ圧送された被混練材料の内圧を検出可能な圧力センサを有したものとするとよい。
前記第2混練スクリュにスラスト力を付与可能な第2軸力付与部を備え、前記軸力制御部は、前記軸力検出部が検出したスラスト荷重に抗するスラスト力を前記第2軸力付与部に発生させるよう構成されてもよい。
【0010】
こうすることで、第2混練スクリュについてもスラスト力を付与でき、第2混練スクリュを支持する第2スラスト軸受部のコンパクト化(短軸化)が可能である。
すなわち、変速部全体として(両方の混練スクリュに関して)軸方向のコンパクト化(短軸化)が可能になるから、更に一層、ねじれ剛性を高める利点に繋がる。従って、変速部まわりでの故障の防止、長寿命化についても更に好適に作用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る二軸混練押出機であれば、混練スクリュを軸心方向において適正に保持できるものであり、もって変速部まわりのコンパクト化や故障の防止、長寿命化などを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る二軸混練押出機の一実施形態を示している。
二軸混練押出機1は、混練部2及びそれ用の回転駆動力を発生する駆動モータ3と、これら混練部2と駆動モータ3との間を連結する状態に配置された変速部4とを有している。変速部4の内部及び外部に、第1混練スクリュ12aを支持する第1スラスト軸受部5、第2混練スクリュ12bを支持する第2スラスト軸受部6が設けられている。
このうち第1スラスト軸受部5の上流側(駆動モータ3側)には、第1混練スクリュ12aにスラスト力を付与可能な軸力付与部7(第1軸力付与部)が設けられている。また、第1混練スクリュ12a又は第2混練スクリュ12bに作用するスラスト荷重を検出する軸力検出部8と、軸力検出部8が検出したスラスト荷重に抗するスラスト力を軸力付与部7に発生させる軸力制御部9とが設けられている。
【0013】
混練部2は、左右でめがね孔状にくり抜かれた状態で設けられた一対の混練室10a,10bを有したバレル11に対し、各混練室10a,10b内で第1混練スクリュ12a及び第2混練スクリュ12bがそれぞれ回転自在に挿通され構成されている。
バレル11には、上流側寄りに材料投入ホッパ(図示せず)が設けられ、下流側(駆動モータ3とは反対側)となるバレル先端にダイ部16が設けられている。
第1混練スクリュ12a,第2混練スクリュ12bは、それぞれ駆動モータ3の駆動モータ軸3aから変速部4を介して回転駆動力が入力される入力軸部17a,17bと、この入力軸部17a,17bから下流側へ延びたスクリュ部18a,18bとを有している。
【0014】
スクリュ部18a,18bは、ロータセグメントやニーディングディスクセグメント等の混練セグメントと送りセグメントとが軸方向に適宜配置されたもので、混練スクリュ12a,12bの回転時には、半溶融又は溶融状態に加熱された被混練材料を混練室10a,10b内で混練しつつ下流側へ向けて圧送できるようになっている。
変速部4は、駆動モータ3の駆動モータ軸3aと連結される入力軸20と、この入力軸20へ入力された回転駆動力を減速又は増速しつつ、混練部2の各混練スクリュ12a,12bへ向けて2系統へ分配する複数段のギヤ部21とを有したものである。
【0015】
本実施形態で示した変速部4では、第1混練スクリュ12aの入力軸部17aへ駆動力を伝える部分でギヤ部21が密配置となっており、スペース的にあまり余裕がない。また、第2混練スクリュ12bの入力軸部17bとの間で連動ギヤ22が配置されているために、入力軸部17aの後端が閉塞されたスペースとなっている。
第1スラスト軸受部5は、第1混練スクリュ12aに生じる軸心向き(変速部4向き)のスラスト荷重を支持可能な状態に設けられたものである。
上述したように、変速部4は、第1混練スクリュ12aの入力軸部17aへ駆動力を伝える部分にスペース的余裕がなく、且つ、連動ギヤ22で閉塞されたスペースとなっているため、この第1スラスト軸受部5は多段構造(小型のスラスト軸受を軸方向に複数重ね合わせた構造)とされて、変速部4の内部に配置されるようになっている。
【0016】
第2スラスト軸受部6は、第2混練スクリュ12bに生じる軸心向き(変速部4向き)のスラスト荷重を支持可能な状態に設けられたものである。
変速部4において、第2混練スクリュ12bの入力軸部17bへ駆動力を伝える部分は、変速部4を通り抜けた後端側を開放させているため、この第2スラスト軸受部6としては、十分な大きさのものが変速部4を通り抜けた位置に配置されている。
軸力付与部7は、第1混練スクリュ12aの入力軸部17aを下流側に押すことで第1混練スクリュ12aに軸方向のスラスト力を付与可能となったもので、変速部4内において第1スラスト軸受部5の背後に設けられている。
【0017】
本実施形態において軸力付与部7は油圧のアクチュエータ(油圧シリンダ)としてあり、第1混練スクリュ12aの軸方向に沿ってピストン部が出入り動作するように設置されている。軸力付与部7は油圧ポンプなどの油圧発生源25と圧力調整部26とを有したものとなっている。
軸力検出部8は、混練部10a,10b内に取り付けられた圧力センサである。この圧力センサは被混練材料の内圧を計測するものである。この軸力検出部8で検出された圧力は軸力制御部9へ入力される。
【0018】
軸力制御部9では、例えば、計測された圧力に第1混練スクリュ12aの受圧面積や断面積を乗じることで、第1混練スクリュ12aに加わるスラスト荷重を求めることができる。さらに、軸力制御部9は、求められた第1混練スクリュ12aのスラスト荷重を基にして、そのスラスト荷重に抗するスラスト力を第1混練スクリュ12aに付与させる。さらには、第1混練スクリュ12a又は第2混練スクリュ12bに作用するスラスト荷重が無いとき(装置の停止中など)と発生しているとき(装置の稼働中)とを判断して軸力付与部7のオンオフを切り替えたり、スラスト荷重が発生しているとき、その大きさに釣り合うように軸力付与部7の発生圧を制御したりする。
【0019】
次に、上記構成の二軸混練押出機1の動作状況を説明する。
駆動モータ3により、変速部4を介して混練部2の両混練スクリュ12a,12bを回転駆動させ、材料投入ホッパから被混練材料を投入すると、被混練材料は混練スクリュ12a,12bの回転を受けて混練室10a,10b内で溶融、混練、昇圧作用を受けながら下流側へ向けて圧送され、ダイ部16から押し出されるようになる。
ダイ部16へ被混練材料が圧送され、この被混練材料に圧力が加わっていることが軸力検出部8で検出され、この検出値が軸力制御部9に入力されると、軸力制御部9は検出値(材料圧)を第1混練スクリュ12aの受圧面積に乗じ、第1混練スクリュ12a又は第2混練スクリュ12bのスラスト荷重を求める。
【0020】
このようにして求めたスラスト荷重の全て又は何割かを相殺すべく、油圧発生源25から圧力調整部26を経て調整された油圧が軸力付与部7へ供給され、第1混練スクリュ12aを下流側へ押すようにする。
かくして、変速部4の内部(即ち、構造的に密であってスペース的なゆとりがない部分)に設けられた第1スラスト軸受部5に対し、軸力付与部7により最適な背圧が負荷され、バックアップされた状態となる。
それ以降、軸力制御部9は時々刻々と変化するスラスト荷重に応じて圧力調整部26の設定圧力を随時調整し、常に第1スラスト軸受部5に作用するスラスト荷重が許容内に入るように調整する。これにより、第1スラスト軸受部5が分担するスラスト荷重を低減することができるので、結果として、第1スラスト軸受部5を小型化することができる。
【0021】
また、第1スラスト軸受部5には常に適正な軸力が作用することになるので、故障防止や長寿命化にも繋がる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更することができる。
例えば、図4に示すように、第2スラスト軸受部6を押圧することで第2混練スクリュ12bに軸方向のスラスト荷重を負担可能な第2軸力付与部30を設けることができる。第2軸力付与部30も油圧のアクチュエータ(油圧シリンダ)とすればよく、これに伴って第2油圧発生源31と第2圧力調整部32とを有したものとすればよい。
【0022】
この場合、軸力制御部9は、軸力検出部8の検出値に基づいて第2軸力付与部30をも駆動制御させるようにする。すると、第2混練スクリュについても、変速部4が具備する出力軸として軸方向のコンパクト化(短軸化)が可能である。
すなわち、変速部4の全体として軸方向のコンパクト化(短軸化)が可能になるから、更に一層、ねじれ剛性を高める利点に繋がる。従って、変速部4まわりでの故障の防止、長寿命化についても更に好適に作用する。
バレル11の途中に樹脂流量調整用の絞り機構などが設けられている場合は、この部分にも圧力センサを取り付けて、ダイ部圧力と共にスラスト荷重を求めるようにすればよい。
【0023】
なお、実際の二軸混練押出機では、バレル11内面のせん断力によるスラスト荷重や、変速部4内のはすば歯車40に生じるスラスト荷重等も存在するため、各運転条件に応じた補正を施すとよい。はすば歯車40に生じるスラスト荷重は、駆動モータ3の駆動力を検出することで求めることができる。例えば、駆動モータ3の駆動力より算出したはすば歯車40に作用するトルクをT、はすば歯車40の基準円直径をD、はすばの捩れ角をβとすると、はすば歯車に生じるスラスト力Fxは、Fx=(2T/D)・tanβで求まる。
【0024】
変速部4の出力軸などに歪みゲージを取り付け、この歪みゲージで得られる検出信号をテレメータやスリップリングなどで取り出すようにすることで、第1混練スクリュ12aや第2混練スクリュ12bの軸カを直接的に検出することも可能である。このような構成を、軸力検出部8として採用することが可能である。
また図5に示すように、第1混練スクリュ12a又は第2混練スクリュ12bに対し、それらの軸移動で容量が拡縮変化するような油圧室42を設け、この油圧室42内の圧力を測定することによって第1混練スクリュ12aや第2混練スクリュ12bのスラスト荷重を直接的に検出することもできる。このような構成を、軸力検出部8として採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る二軸混練押出機の一実施形態を模式的に示した平面断面図である。
【図2】本発明に係る二軸混練押出機の別実施形態を模式的に示した平面断面図である。
【図3】軸力検出部の別実施形態を具備した二軸混練押出機の平面断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 二軸混練押出機
2 混練部
3 駆動モータ
4 変速部
5 第1スラスト軸受部
6 第2スラスト軸受部
7 軸力付与部(第1軸力付与部)
8 軸力検出部
9 軸力制御部
10a,10b 混練室
11 バレル
12a,12b 混練スクリュ
30 第2軸力付与部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル内の混練室に挿通され且つ駆動モータで回転駆動される第1混練スクリュ及び第2混練スクリュとを備えた二軸混練押出機において、
前記第1混練スクリュ又は第2混練スクリュに作用するスラスト荷重を検出する軸力検出部と、
前記第1混練スクリュにスラスト力を付与可能な第1軸力付与部と、
前記軸力検出部が検出したスラスト荷重に抗するスラスト力を前記第1軸力付与部に発生させる軸力制御部と、
を有していることを特徴とする二軸混練押出機。
【請求項2】
前記軸力検出部は、混練室の先端側へ圧送された被混練材料の内圧を検出可能な圧力センサを有していることを特徴とする請求項1に記載の二軸混練押出機。
【請求項3】
前記第2混練スクリュにスラスト力を付与可能な第2軸力付与部を備え、
前記軸力制御部は、前記軸力検出部が検出したスラスト荷重に抗するスラスト力を前記第2軸力付与部に発生させるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸混練押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−220433(P2009−220433A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68015(P2008−68015)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【特許番号】特許第4310366号(P4310366)
【特許公報発行日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】