説明

二酸化炭素回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム

【課題】吸収液を用いたCO2回収システムにおいて、温度差が小さく有効利用されにくい熱に着目し、吸収液を用いたCO2回収システムの熱の有効利用を図る。
【解決手段】CO2を脱離した吸収液(リーン液)とCO2を吸収した吸収液(リッチ液)とを熱交換した後のリーン液を、CO2を吸収する温度にまで低下させる熱量に着目し、その冷媒として復水器からの水を使用するようにした。さらに、復水器からの水と、リーン液とリッチ液とを熱交換した後のリーン液とを、別の媒体を用いて該媒体を圧縮、膨張させるヒートポンプにより温度差をつけ、熱交換をしやすくした。復水器からの水は、直列に複数接続された低圧給水加熱器によって、蒸気タービンからの抽気蒸気を使って、順次加熱される。復水器からの水を分岐し、一方は最上流の低圧給水加熱器の入口に供給し、一方はヒートポンプによって高温化した後、複数の低圧給水加熱器のうち、最下流の低圧給水加熱器の入口に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収型ボイラシステムであり、特に排ガス中の二酸化炭素を吸収し、脱離回収する石炭焚きボイラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が地球規模の環境問題として取り上げられている。大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球温暖化の主要因であることが明らかにされており、二酸化炭素排出量の削減が重要になっている。
【0003】
石炭火力発電所は二酸化炭素(以下CO2と表記)の大きな排出源の一つであり、排ガス中のCO2を高効率で回収することが課題とされている。
【0004】
排ガス中のCO2を回収する技術としては、特許文献1に示されているように二酸化炭素を吸収液に吸収させ、吸収液から二酸化炭素を脱離する方式がある。この回収システムは、CO2を吸収させる吸収塔と、CO2を脱離させる再生塔から構成され、排ガスを吸収塔に導きCO2を吸収液に吸収させる。その吸収液を再生塔に送りCO2を脱離させる。再生塔で脱離したCO2は、圧縮、液化して地底あるいは海底に貯留する。
【0005】
CO2の脱離には吸収液の加熱が必要であり、再生塔には加熱装置が設けられている。吸収液に再度CO2を吸収させるためには吸収液の低温化が必要であり、再生塔から吸収塔の間に冷却装置が設けられている。この際、高温の吸収液と低温の吸収液とを熱交換することによって熱の有効利用を図っている。しかしながらさらなる熱の有効利用が必要になっており、CO2回収システム内の熱の有効利用のみならず、回収システムに関係するシステムとの連携による熱の有効利用方法が提案されている。
【0006】
特許文献1では、再生塔の上部で、脱離した水蒸気を含むCO2ガスの熱で吸収液を加熱し、熱の有効利用を図っている。特許文献2では、脱離したCO2を圧縮する際の高温熱を利用し、吸収液を加熱することで熱の有効利用を図っている。特許文献3では、復水器の水を再生塔出口のガス冷却媒体として利用し、熱の有効利用を図っている。特許文献4では、ボイラから出た燃焼ガスの熱で吸収液を加熱し、熱の有効利用を図っている。また、特許文献5では、排ガスを圧縮冷却しスワールノズルを用いてCO2を分離しているが排ガス冷却のため復水器と蒸発器を用いた2つの冷凍循環路を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−61777号公報
【特許文献2】特開2008−62165号公報
【特許文献3】特開平3−193116号公報
【特許文献4】特開平7−241440号公報
【特許文献5】特公表2010−500163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これら特許文献は、いずれも温熱と冷熱との温度差が大きく熱交換しやすい箇所に着目して熱を有効利用している。これに対し本発明では、温度差が小さく熱が有効利用されにくい箇所に着目し、吸収液を用いたCO2回収システムの熱の有効利用をさらに図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、石炭を燃焼するボイラと、その下流に排ガスを処理する装置を備えた排ガス処理システムと、排ガス処理システムの途中に、排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液に吸収する吸収塔と二酸化炭素を二酸化炭素吸収液から脱離する再生塔を有する二酸化炭素吸収脱離システムと、前記ボイラで熱回収し、得た高圧蒸気で駆動する蒸気タービンと、発電機と、蒸気を冷却し、液化する復水器と、復水からの水を加熱する給水加熱器を有する水循環システムを有する石炭焚きボイラシステムにおいて、前記吸収塔から前記再生塔へ、および再生塔から前吸収塔へそれぞれ二酸化炭素吸収液を導く配管を有し、その途中で互いの二酸化炭素吸収液が熱交換する液液熱交換器を有し、該液液熱交換器から前記吸収塔へ二酸化炭素吸収液を導く前記配管の途中に、二つの吸収液熱交換器を設け、上流側の吸収液熱交換器の冷却媒体に復水器からの水を使用することを特徴とする。
【0010】
また、二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記復水器と前記給水加熱器の間に復水加熱器を設け、さらに、前記上流側吸収液熱交換器から前記復水加熱器へ熱媒体を導く配管の途中に圧縮機を設け、前記復水加熱器から前記上流側吸収液熱交換器へ熱媒体を導く配管の途中に減圧弁を設けることを特徴とする。
【0011】
また、二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記給水加熱器を複数設け、前記復水器と前記給水加熱器の途中から分岐させた配管に復水加熱器を設け、該復水加熱器で加熱した水を複数の前記給水加熱器のうちより下流側に導き、さらに、前記上流側吸収液熱交換器から前記復水加熱器へ熱媒体を導く配管途中に圧縮機を設け、復水加熱器から上流側吸収液熱交換器へ熱媒体を導く配管途中に減圧弁を設けることを特徴とする。
【0012】
また、二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記圧縮機上流と前記減圧弁下流をつなぐバイパス配管を設け、該配管の途中に熱媒体バイパス弁を設けることを特徴とする。
【0013】
また、二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記復水器と前記給水加熱器の途中で分岐する配管を設け、最上流の前記給水加熱器までの配管と、前記復水加熱器までの配管の途中にそれぞれ弁を設けることを特徴とする。
【0014】
また、二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記下流側吸収液熱交換器の冷媒供給管に冷媒流量を制御する流量調節弁を有し、前記下流側吸収液熱交換器出口の吸収液温度を計測する温度計測手段を有し、該温度計測手段の計測値によって、前記下流側吸収液熱交換器の冷媒流量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、排ガス処理システムと二酸化炭素吸収脱離システムと水循環システムを有する石炭焚きボイラシステムにおいて、吸収塔から再生塔へおよび再生塔から前吸収塔へそれぞれ二酸化炭素吸収液を導く配管を有し、その途中で互いの二酸化炭素吸収液が熱交換する液液熱交換器を有し、液液熱交換器から吸収塔へ二酸化炭素吸収液を導く配管の途中に二つの吸収液熱交換器を設け、上流側の吸収液熱交換器の冷却媒体に復水器からの水を使用することにより、CO2吸収液のリッチ液と熱交換した後のリーン液をCO2吸収温度にまで低下させる際に発生する熱を復水器からの水を加熱する熱として利用することにより、低圧給水加熱器で使用する抽気蒸気量を低減し、ボイラの熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】CO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図。
【図2】本発明実施例1のCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図。
【図3】本発明実施例1におけるCO2回収システムの運用図。
【図4】本発明実施例2のCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図。
【図5A】本発明実施例2のCO2回収システムの最大熱回収までの運用図。
【図5B】本発明実施例2のCO2回収システムの熱回収停止の運用図。
【図6】本発明実施例3のCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図。
【図7A】本発明実施例3のCO2回収システムの最大熱回収までの運用図。
【図7B】本発明実施例3のCO2回収システムの熱回収停止の運用図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を石炭焚きボイラシステムについて説明するが、燃料は石炭に限らず化石燃料であればよい。図1に、CO2回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムの基本構成を示す。図1において排ガスの流れを実線で、蒸気・水の流れを破線で、CO2吸収液の流れを点線で示す。
【0018】
次に、排ガスの流れを説明する。図1において、微粉炭焚きボイラ1で燃焼した後の排ガスは、脱硝装置2で窒素酸化物(以下、NOxと表記)を除去し、エアーヒータ3で燃焼用空気を排ガスで加熱し、熱回収ガスガスヒータ4(以下、熱回収GGHと表記)で排ガスを冷却し、乾式電気集塵器5で排ガス中の煤塵を除去し、脱硫装置6で硫黄酸化物(以下、SOxと表記)を除去し、再加熱ガスガスヒータ7(以下、再加熱GGH)で、白煙防止のため排ガスを加熱して煙突8から排気する。
【0019】
CO2の回収は、排ガスを脱硫装置6の下流からCO2回収システムに導く。排ガス中にはSOxおよびSOxが酸化した硫酸ガスが微量含まれており、これらガスはCO2の吸収液を劣化させるため、アルカリ液を噴霧するNaOH噴霧装置12で除去する。CO2の吸収液は、例えばアルカノールアミンをベースとする水溶液を使用する。
【0020】
次に、CO2吸収液の流れを説明する。吸収塔13で排ガスと吸収液を接触させ、CO2を吸収し、吸収した後の排ガスは再加熱GGH7の前に戻し、煙突8から排気する。吸収液はCO2を吸収する際に発熱する。従ってCO2を効率的に吸収させるためには、吸収液温度は低温のほうが望ましい。
【0021】
CO2を吸収した吸収液は液液熱交換器14で加熱し、再生塔15に導いて吸収液からCO2を脱離させる。効率的にCO2を脱離させるには吸収液の加熱が必要であり、このため蒸気タービンからの抽気蒸気を使った加熱用のリボイラ16を有する。CO2を脱離させる吸収液温度は、吸収液の種類によって異なる。
【0022】
CO2の脱離ガスには蒸気も含まれることから、脱離ガス冷却器18で除湿し、圧縮機19でCO2を圧縮し液化して回収する。
【0023】
再生塔15でCO2を脱離した吸収液は、液液熱交換器14で冷却し、さらに吸収液冷却器17でCO2を吸収する温度にまで冷却した後に吸収塔13に導く。
【0024】
次に、蒸気・水の流れを説明する。石炭焚きボイラ1で熱回収して得た蒸気を高圧タービン21に導き、その排蒸気を石炭焚きボイラ1で再熱して中圧タービン22に導き、その排蒸気を低圧タービン23に導いて発電機24を駆動させる。低圧タービン23の排蒸気は復水器25で冷却して水に戻す。
【0025】
復水器25の水は第1低圧給水加熱器26、第2低圧給水加熱器27、第3低圧給水加熱器28、第4低圧給水加熱器29で順次加熱し、さらに、図示していない高圧給水加熱器で加熱して石炭焚きボイラ1に導き、熱回収する。
【0026】
低圧給水加熱器26〜29では、低圧タービン23からの抽気蒸気の熱を使って復水器25からの水を加熱する。その際、抽気蒸気は低圧給水加熱器26〜29内で凝縮してドレン水となる。ドレン水は水位が常に一定になるように抜き出しており、第1低圧給水加熱器26のドレン水は復水器25へ戻し、第2低圧給水加熱器27のドレン水は第1低圧給水加熱器26へ戻し、第3低圧給水加熱器28のドレン水は第2低圧給水加熱器27へ戻し、第4低圧給水加熱器29のドレン水は第3低圧給水加熱器28へ戻している。下流ほど高温の抽気蒸気が必要であり、復水器からの水を下流に向かって段階的に加熱する。
【0027】
CO2回収システムでの熱損失は、NaOH冷却装置11での除熱、吸収液冷却器17での除熱、脱離ガス冷却器18での除熱である。本発明は、それらの中で吸収液冷却器17での熱損失に着目したものであり、以降、本発明を実施例について説明する。
【実施例1】
【0028】
図2に実施例1のCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム図を示す。吸収液冷却器17の上流に復水加熱用の吸収液冷却器31を設けて復水器25の水を通水し、吸収液のうちのリーン液を除熱し熱回収して、第1低圧給水加熱器26へ導く。
【0029】
吸収塔13のリーン液供給口の温度はT1温度計37で測定する。リーン液供給口の位置におけるリーン液の温度は、CO2を吸収する温度であるT1’(例えば約40度)に保つ必要がある。そこで吸収液冷却器17の冷却水量を調節する流量調節弁V3を設け、冷却水量を増減させることで温度計37の温度をCO2吸収温度T1’に保つ。
【0030】
復水器25と第1低圧給水加熱器26の間に流量調節弁V1を設け、復水器25と流量調節弁V1の間から配管aを分岐し、開閉弁V2を介して復水加熱用吸収液冷却器31に接続する。復水加熱用吸収液冷却器31はさらに流量調節弁V1および第1低圧給水加熱器26と接続している。また、低圧タービン23から蒸気を抽気し、第1低圧給水加熱器26へ導く。その間に開閉弁VL1を設けた。第1低圧給水加熱器26内の圧力は、所定の圧力PL1’に維持し、第1低圧給水加熱器26出口の水温は維持される。
【0031】
図3に実施例におけるCO2回収システムの運用図を示す。復水加熱用吸収液冷却器で熱回収しない時には、流量調節弁V1を開とし開閉弁V2を閉として、復水器25の水を第1低圧給水加熱器26へ直接通水する。開閉弁VL1は開であり、低圧タービン23からの蒸気で水を加熱する。
【0032】
復水加熱用吸収液冷却器31での熱回収準備として、CO2吸収液を吸収塔13と再生塔15の間で循環させ、さらにリボイラ16でCO2吸収液を加熱開始し、CO2を吸収、脱離する温度条件を整える。そのとき、T1温度計37の温度がT1’になるように、流量調節弁V3を調節する。
【0033】
復水加熱用吸収液冷却器31での熱回収開始は、操作(1−1)として開閉弁V2を開とし、さらに操作(1−2)として開閉弁VL1を閉とし、第1低圧給水加熱器26への蒸気供給を停止する。次に操作(1−3)として流量調節弁V1を閉にする。第1低圧給水加熱器26への蒸気供給を停止することにより、復水加熱用吸収液冷却器31への水量が増加し、熱回収量が増加する。低圧タービン23の変動を抑えるため、操作1−3は緩慢操作が望ましい。
【0034】
復水加熱用吸収液冷却器31での熱回収量が増加すれば、復水加熱用吸収液冷却器31出口のリーン液温度は低下する。流量調節弁V3はT1温度計37の温度がT1’になるように制御しており、リーン液の温度低下によって吸収液冷却器17の冷却水量を抑える閉方向へ調節される。
【0035】
ボイラ負荷変動時は、流量調節弁V3によって吸収塔13に供給するリーン液温度T1をT1’になるように制御しており、それ以外の操作は必要としない。ボイラ負荷が増加すれば復水器からの水量が増加するため、流量調節弁V3は開方向に調節され、一方、ボイラ負荷が減少すれば復水器からの水量が減少するため、流量調節弁V3は閉方向へ調節される。
【0036】
復水加熱用吸収液冷却器31出口のリーン液温度がT1’以下であれば、図2の吸収液冷却17は削除することができ、図3の調節弁V3の制御操作を削除することができる。
【0037】
また、復水器からの水の温度が高い場合には、低圧タービン23から第2低圧給水加熱器27、あるいは、第3低圧給水加熱器28、第4低圧給水加熱器29へ導く抽気蒸気を逐次遮断することも可能であり、低圧タービン23からの抽気蒸気を低減することで発電出力を向上させることができる。
【0038】
その際、復水加熱用吸収液冷却器31出口のリーン液温度がT1’以上であれば、T1’に冷却することが必要であり、その冷却熱をさらに熱回収することが望まれる。
【0039】
ところが、復水加熱用吸収液冷却器31出口のリーン液温度は、復水加熱用吸収液冷却器31入口のリーン液温度と復水器からの水温度との間の温度になる一方で、低圧給水加熱器26〜29の後段ほど高温の水でなければ抽気蒸気を低減することはできない。そこで、復水器からの水をより高温にすることが必要になる。
【0040】
復水加熱用吸収液冷却器31での熱回収停止は、操作(1−4)として流量調節弁V1開、操作(1−5)として開閉弁V2閉、操作(1−6)として開閉弁VL1開の順に行い、その間、流量調節弁V3はT1をT1’になるように制御させる。
【実施例2】
【0041】
次に本発明の実施例2として、復水器からの水をより高温にするためにヒートポンプを用いた例を示す。図4に実施例2のヒートポンプを設けたCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図を示す。復水器25の下流に復水加熱器46を設けている。復水加熱器46と、吸収液冷却器17の上流にある熱媒体加熱用吸収液冷却器41との間で、熱媒体を循環させてヒートポンプを構成し熱交換するようにした。
【0042】
ここに、熱媒体加熱用吸収液冷却器41は、図3の復水加熱用吸収液冷却器31と同等である。さらに、熱媒体加熱用吸収液冷却器41の下流に配管bを介して熱媒体圧縮機45を設け、復水加熱器46に熱媒体を導くようにした。その間に、熱媒体圧縮機45を設け、熱媒体を圧縮し、高温にして、復水加熱器46の復水からの水を加熱するようにした。さらに、復水加熱器46の下流に減圧弁47を設け、熱媒体を膨張し低温にして、熱媒体加熱用吸収液冷却器41で熱媒体を加熱するようにした。
【0043】
熱媒体を圧縮、膨張させて熱交換するヒートポンプの原理を用いて、復水器からの水を高温化するとともに、リーン液の熱回収を促進している。また、復水加熱器46で熱回収しない時に、熱媒体を遮断する開閉弁V5と、バイパスする熱媒体バイパス弁V4を設けた。
【0044】
図5Aに実施例のヒートポンプを設けたCO2回収システムの最大熱回収までの運用方法と、ボイラ負荷変動時の運用図を示す。流量調節弁V3は、リーン液を冷却する水量制御弁であり、リーン液温度T1を常時T1’に制御する。
【0045】
復水加熱器46で熱回収する前は、熱媒体バイパス弁V4は開、開閉弁V5は閉とし、復水器からの水は復水加熱器46で熱交換せず、そのまま第1給水加熱器26に導く。第1から第4の給水加熱器26〜29では、開閉弁VL1、開閉弁VL2、開閉弁VL3、開閉弁VL4をそれぞれ開とし、低圧タービンからの抽気蒸気で復水器からの水を加熱する。
【0046】
復水加熱器46で熱回収するため、操作(2−1)として開閉弁V5を開とし、復水加熱器46に熱媒体を通水できるようにする。操作(2−2)として熱媒体バイパス弁V4を閉方向に緩慢操作し、復水加熱器46への熱媒体量を増加させ、最終的に全量を通水する。同時に操作(2−3)として熱媒体圧縮機45を起動させ、復水加熱器46へ熱媒体を通水する。まずは最低負荷とし、熱媒体バイパス弁V4の閉方向速度に合わせて、操作(2−4)として熱媒体圧縮機45の出力を上昇させる。熱媒体バイパス弁V4の閉方向速度と熱媒体圧縮機45の出力上昇を合わせるため、操作(2−2)と操作(2−4)は緩慢操作が望ましい。
【0047】
熱媒体圧縮機45の出力上昇に伴い、熱媒体は加圧され、温度が上昇し、熱交換によって復水器からの水の温度も上昇する。復水器からの水の温度が高くなるにつれて、第1から第4の給水加熱器26〜29での加熱が不要になるため、低圧タービンからの抽気蒸気の供給を遮断できる。熱媒体圧縮機45の出力上昇に合わせ、操作(2−5)として開閉弁VL1、操作(2−6)として開閉弁VL2、操作(2−7)として開閉弁VL3および操作(2−8)として開閉弁VL4を順に閉にする。このように、低圧タービンからの抽気蒸気を減らすことにより、発電機24の出力は向上する。
【0048】
また、熱媒体加熱用吸収液冷却器41で熱回収できる熱量は、熱媒体加熱用吸収液冷却器41出口のリーン液温度がT1’になる時の熱量であり、吸収液冷却器17の冷却水が必要としない、すなわち、流量調節弁V3が閉になった時の熱量である。その時の熱媒体圧縮機45の出力が最大出力であり、操作(2−5)から操作(2−8)の操作も最大出力に達した時点で終える。
【0049】
ボイラ負荷低減時は、復水器からの水量が減るため、操作(2−9)として熱媒体圧縮機45の出力を低減し、熱媒体の温度を下げることで水の過剰加熱を抑える。一方、ボイラ負荷上昇時は、復水器からの水量が増加するため、操作(2−10)として熱媒体圧縮機45の出力を増加させ、熱媒体の温度を上げることで水の加熱量を増加させる。操作(2−9)および操作(2−10)において、システムの安定運用のため、熱媒体圧縮機45の出力変化は緩慢操作が望ましい。
【0050】
図5Bに実施例のヒートポンプを設けたCO2回収システム、熱回収停止の運用図を示す。熱媒体圧縮機45が最大出力、すなわち、流量調節弁V3が閉で、復水加熱器での熱回収が最大負荷になる条件からの熱回収停止方法を示した。
【0051】
操作(2−13)として熱媒体圧縮機45を最大出力から最低負荷まで緩慢操作で低下させる。その間、操作(2−14)から操作(2−17)、すなわち、開閉弁VL4から順に開閉弁VL1までを閉から開とした後、熱媒体圧縮機45を停止する。さらに、操作(2−18)として開閉弁V5を閉とし、操作(2−19)として熱媒体バイパス弁V4を開とする。
【0052】
このように、実施例2はヒートポンプにより復水器からの水を高温にすることができるため、直列に複数ある低圧給水加熱器のうち、高温の最下流の低圧給水加熱器に供給することで、効率的にボイラの熱効率を向上させることができる。また、石炭焚きボイラシステムにおいて、復水器と前記給水加熱器の途中で分岐する配管を設け、最上流の前記給水加熱器までの配管と、前記復水加熱器までの配管の途中にそれぞれ弁を設けることができる。
【実施例3】
【0053】
次に、実施例3について説明する。抽気蒸気量の低減による発電効率の増加は、より下流側の低圧給水加熱器の抽気蒸気を低減させることが有効であり、これを改良したものである。
【0054】
図6に本発明の実施例3のヒートポンプを設けたCO2回収システムを備えた石炭焚きボイラのシステム図を示す。復水器25の下流で分岐し、一方は第1低圧給水加熱器26に導き、その間に開閉弁V6を設けた。他方は流量調節弁V7を介して復水加熱器46を設けた。復水加熱器46と熱媒体加熱用吸収液冷却器41との熱交換は、図5と同じであり、ヒートポンプを構成する。また、復水加熱器46を通過し、加熱された水は、第4低圧給水加熱器29の入口に導いた。
【0055】
図1のシステムにおいて吸収液冷却器17で廃棄されていた熱量がすべて復水器からの水の加熱に使われたときの水温は、第4低圧給水加熱器29入口の水温程度であり、また、第4低圧給水加熱器29に供給する抽気蒸気の温度以下である。
【0056】
復水加熱器46で加熱した水は、第2低圧給水加熱器27の入口、第3低圧給水加熱器28の入口に導いてもよいが、下流側の低圧給水加熱器の抽気蒸気を低減させることが発電効率向上に有効であること、また、低圧給水加熱器では抽気蒸気が凝縮し、そのドレン水の水位を抜き出しで保持する必要があることから、復水加熱器46で加熱された水を第4低圧給水加熱器29の入口に導くことが望ましい。
【0057】
図7Aに実施例のヒートポンプを設けたCO2回収システムの最大熱回収までの運用方法と、ボイラ負荷変動時の運用図を示す。流量調節弁V3は、リーン液を冷却する水量制御弁であり、リーン液温度T1を常時T1’に制御する。
【0058】
復水加熱器46で熱回収する以前は、熱媒体バイパス弁V4は開、開閉弁V5は閉、開閉弁V6は開とし、復水器からの水を直接第1給水加熱器26に導く。第1から第4の給水加熱器26〜29では、開閉弁VL1、開閉弁VL2、開閉弁VL3、開閉弁VL4をそれぞれ開とし、低圧タービンからの抽気蒸気で復水器からの水を加熱する。
【0059】
復水加熱器46で熱回収するため、操作(3−1)として流量調節弁V7を開とし、操作(3−2)として開閉弁V6を閉方向に緩慢操作し、復水器からの水を復水加熱器46に通水する。一方、操作(3−3)として開閉弁V5を開とし、復水加熱器46に熱媒体を通水できるようにする。
【0060】
操作(3−4)として熱媒体バイパス弁V4を閉方向に緩慢操作し、復水加熱器46への熱媒体量を増加させ、最終的に全量熱媒体を通水する。同時に操作(3−5)として熱媒体圧縮機45を起動させ、復水加熱器46へ熱媒体を通水する。まずは最低負荷とし、熱媒体バイパス弁V4の閉方向速度に合わせて、操作(3−6)として熱媒体圧縮機45の出力を上昇させる。開閉弁V6が閉となった時点で、第1低圧給水加熱器26には復水器からの水が供給されなくなることから、操作(3−7)として開閉弁VL1、開閉弁VL2および開閉弁VL3を閉とする。
【0061】
熱媒体圧縮機45の出力上昇にともなってリーン液の熱回収量が増え、吸収液冷却器17の冷却水量が減り、最終的に流量調節弁V3が閉となる。この時が熱媒体圧縮機45の最大出力となる。
【0062】
一方、復水器からの水は、復水加熱器46で熱回収し、熱媒体圧縮機45の出力上昇にともなって温度上昇する。開閉弁VL4は常時開であり、水の温度上昇にともなって抽気蒸気量が低下する。
【0063】
ボイラ負荷低減時は、復水器からの水量が減るため、操作(3−8)として熱媒体圧縮機45の出力を低減し、熱媒体の温度を下げることで水の過剰加熱を抑える。一方、ボイラ負荷上昇時は、復水器からの水量が増加するため、操作(3−9)として熱媒体圧縮機45の出力を増加させ、熱媒体の温度を上げることで水の加熱量を増加させる。操作(3−8)および操作(3−9)において、システムの安定運用のため、熱媒体圧縮機45の出力変化は緩慢操作が望ましい。
【0064】
図7Bに実施例のヒートポンプを設けたCO2回収システムの熱回収停止の運用図を示す。熱媒体圧縮機45が最大出力、すなわち、流量調節弁V3が閉で、復水加熱器での熱回収が最大負荷になる条件からの熱回収停止方法を示す。
【0065】
システムの安定運用のため、操作(3−10)として開閉弁V6を緩慢操作で開方向に調節し、開になった後、流量調節弁V7を緩慢操作で閉方向に調節することが望ましい。これらの操作により、復水加熱器46への水量が低下するため、これに合わせて操作(3−11)として熱媒体圧縮機45の出力を緩慢操作で最低負荷まで低下させる。
【0066】
その間、開閉弁VL1、開閉弁VL2、開閉弁VL3を開にするが、この操作もシステムの安定運用を考慮し、開閉弁VL3、開閉弁VL2、開閉弁VL1の順、すなわち操作(3−13)、操作(3−14)、操作(3−15)で実施することが望ましい。
【0067】
流量調節弁V7が閉になったら操作(3−16)として熱媒体圧縮機45を停止し、操作(3−17)として開閉弁V5を閉とし、熱媒体バイパス弁V4を開とする。
【符号の説明】
【0068】
1: 微粉炭焚きボイラ
2: 脱硝装置
4: 熱回収GGH
5: 乾式電気集塵器
6: 脱硫装置
7: 再加熱GGH
11: NaOH冷却装置
12: NaOH噴霧装置
13: 吸収塔
14: 液液熱交換器
15: 再生塔
17: 吸収液冷却器
18: 脱離ガス冷却器
19: 圧縮機
21: 高圧タービン
22: 中圧タービン
23: 低圧タービン
24: 発電機
25: 復水器
26: 第1低圧給水加熱器
27: 第2低圧給水加熱器
28: 第3低圧給水加熱器
29: 第4低圧給水加熱器
31: 復水加熱用吸収液冷却器
37: T1温度計
41: 熱媒体加熱用吸収液冷却器
45: 熱媒体圧縮機
46: 復水加熱器
47: 減圧弁
V1: 流量調節弁
V2: 開閉弁
V3: 流量調節弁
V4: 熱媒体バイパス弁
V5: 開閉弁
V6: 開閉弁
V7: 流量調節弁
VL1: 開閉弁
VL2: 開閉弁
VL3: 開閉弁
VL4: 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃焼するボイラと、その下流に排ガスを処理する装置を備えた排ガス処理システムと、排ガス処理システムの途中に、排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液に吸収する吸収塔と二酸化炭素を二酸化炭素吸収液から脱離する再生塔を有する二酸化炭素吸収脱離システムと、前記ボイラで熱回収し、得た高圧蒸気で駆動する蒸気タービンと、発電機と、蒸気を冷却し、液化する復水器と、復水からの水を加熱する給水加熱器を有する水循環システムを有する石炭焚きボイラシステムにおいて、
前記吸収塔から前記再生塔へ、および再生塔から前吸収塔へそれぞれ二酸化炭素吸収液を導く配管を有し、その途中で互いの二酸化炭素吸収液が熱交換する液液熱交換器を有し、該液液熱交換器から前記吸収塔へ二酸化炭素吸収液を導く前記配管の途中に、二つの吸収液熱交換器を設け、上流側の吸収液熱交換器の冷却媒体に復水器からの水を使用することを特徴とする石炭焚きボイラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載された二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、
前記復水器と前記給水加熱器の間に復水加熱器を設け、さらに、前記上流側吸収液熱交換器から前記復水加熱器へ熱媒体を導く配管の途中に圧縮機を設け、前記復水加熱器から前記上流側吸収液熱交換器へ熱媒体を導く配管の途中に減圧弁を設けることを特徴とする二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム。
【請求項3】
請求項1に記載された二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、
前記給水加熱器を複数設け、前記復水器と前記給水加熱器の途中から分岐させた配管に復水加熱器を設け、該復水加熱器で加熱した水を複数の前記給水加熱器のうちより下流側に導き、さらに、前記上流側吸収液熱交換器から前記復水加熱器へ熱媒体を導く配管途中に圧縮機を設け、復水加熱器から上流側吸収液熱交換器へ熱媒体を導く配管途中に減圧弁を設けることを特徴とする二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム。
【請求項4】
請求項2または3記載の二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記圧縮機上流と前記減圧弁下流をつなぐバイパス配管を設け、該配管の途中に熱媒体バイパス弁を設けることを特徴とする二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム。
【請求項5】
請求項3記載の二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記復水器と前記給水加熱器の途中で分岐する配管を設け、最上流の前記給水加熱器までの配管と、前記復水加熱器までの配管の途中にそれぞれ弁を設けることを特徴とする二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステムにおいて、前記下流側吸収液熱交換器の冷媒供給管に冷媒流量を制御する流量調節弁を有し、前記下流側吸収液熱交換器出口の吸収液温度を計測する温度計測手段を有し、該温度計測手段の計測値によって、前記下流側吸収液熱交換器の冷媒流量を制御することを特徴とする二酸化炭素の回収システムを備えた石炭焚きボイラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−167918(P2012−167918A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31627(P2011−31627)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】