説明

二酸化炭素発生装置および栽培システム

【課題】吸収材に二酸化炭素を吸収して生成された二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能な二酸化炭素発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】二酸化炭素を含むガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管とガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、前記水蒸気供給手段から前記反応器内への水蒸気の供給量調節および間欠的な供給を行うための制御手段とを備えることを特徴とする二酸化炭素発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素発生装置および栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素を主成分とする燃料を利用するエネルギープラントや化学プラントの高温排気ガス中の二酸化炭素(CO2)ガスの分離方法として、リチウムシリケート等のリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が知られている(特許文献1)。この特許文献1には、吸収材に吸収された二酸化炭素を放出する際、二酸化炭素の吸収時の温度より高い温度で吸収材を加熱することが記載されている。しかしながら、二酸化炭素を吸収した吸収材から温度調節により二酸化炭素を放出する方法では温度上昇、加熱停止に即応して二酸化炭素の放出速度を増加させたり、減少させたりすることが困難で、追従性に劣り、時間遅れを生じる。また、二酸化炭素の放出速度を迅速に増加できないため、大量な二酸化炭素の放出を図ることも実質的に困難になる。
【0003】
一方、二酸化炭素が必要な施設、例えば栽培施設では温室内に光合成の原料の一つとなる二酸化炭素を供給して農産物の生産性を高めることが行われている。例えば、特許文献2には温室の暖房機から排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素および廃熱を利用する廃熱回収兼用二酸化炭素供給システムが開示されている。
【0004】
特許文献2の発明では、温室内への二酸化炭素の供給は暖房機の作動時のみであるため、暖房機を作動させない、例えば温室内が太陽光で暖房される昼間において、二酸化炭素を温室内に供給することができない。
【0005】
このようなことから、二酸化炭素の供給のみを目的として二酸化炭素発生専用のボイラーのような燃焼装置を栽培施設内に置き、常時、二酸化炭素を温室内に供給することが行われている。しかしながら、このような二酸化炭素発生のための専用ボイラーの設置は無駄な燃料を消費し、経済的ではない。
【特許文献1】特開2000−262890
【特許文献2】特開2004−344154
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸収材に二酸化炭素を吸収して生成された二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能な二酸化炭素発生装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、吸収材に二酸化炭素を吸収して生成された二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能な二酸化炭素発生装置を備え、温室内を暖房することが必要な時、例えば夜間において燃焼装置を作動し、その燃焼排ガス中の二酸化炭素を前記二酸化炭素発生装置で吸収させ、温室内の農産物の光合成に必要な昼間にこの発生装置から二酸化炭素を温室内に目的とする量および速度で供給することが可能な栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、二酸化炭素を含むガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管とガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、
前記水蒸気供給手段から前記反応器内への水蒸気の供給量調節および間欠的な供給を行うための制御手段と
を備えることを特徴とする二酸化炭素発生装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によると、二酸化炭素を含むガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管とガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水を噴射するための水噴射手段と、
前記水噴射手段から前記反応器内への水の噴射量調節および間欠的な噴射を行うための制御手段と
を備えることを特徴とする二酸化炭素発生装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によると、農産物を栽培する温室;
前記温室を暖房するための燃焼装置;および
(a)前記燃焼装置の排ガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管と前記ハウスに接続されるガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
(b)前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
(c)前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、
(d)前記水蒸気供給手段から前記反応器内への水蒸気の供給量調節および間欠的な供給を行うための制御手段と
を有する二酸化炭素発生装置;
を備えることを特徴とする栽培システムが提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によると、農産物を栽培する温室;
前記温室を暖房するための燃焼装置;および
(a)前記燃焼装置の排ガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管と前記ハウスに接続されるガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
(b)前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
(c)前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水を噴射するための水噴射手段と、
(d)前記水噴射手段から前記反応器内への水の噴射量調節および間欠的な噴射を行うための制御手段と
を有する二酸化炭素発生装置;
を備えることを特徴とする栽培システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸収材に二酸化炭素を吸収して生成された二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能な二酸化炭素発生装置を提供することができる。
【0013】
本発明によれば、燃料を無駄に消費することなく、温室内の農産物の光合成を適切に行ってその生育を増大させることが可能な栽培システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る二酸化炭素発生装置および栽培システムを図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る二酸化炭素発生装置を示す概略図である。
【0016】
二酸化炭素発生装置1は、リチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材2が内部に充填された反応器3を備えている。ヒーター4は、反応器3の外周に配置され、反応器3を目的とする温度に加熱する。二酸化炭素を含むガス、例えば燃焼排ガスの導入ラインL1およびキャリアガスの導入ラインL2は三方電磁バルブSVを通して主導入ラインL3に接続され、主導入ラインL3は反応器3の上部に接続されている。すなわち、導入ラインL1、L2に導入された燃焼排ガスおよびキャリアガスは三方電磁バルブSVにより切り替え可能に主導入ラインL3を通して反応器3内に導入される。キャリアガスとしては、例えば空気、窒素ガス等を用いることができる。第1開閉バルブV1は、導入ラインL1に介装されている。第2開閉バルブV1および第1マスフローコントローラMF1は、導入ラインL2にキャリアガスの導入源(図示せず)側からこの順序で介装されている。
【0017】
水蒸気発生器5は、水蒸気供給ラインL4を通して主導入ラインL3に接続されている。第3開閉バルブV3および第2マスフローコントローラMF2は、水蒸気供給ラインL4に水蒸気発生器5側からこの順序で介装されている。第3開閉バルブV3は、水蒸気発生器5から反応器3への水蒸気の間欠的な供給(供給、停止)、第2マスフローコントローラMF2は水蒸気発生器5から反応器3への水蒸気の供給量調節をなす制御手段として用いられる。排出ラインL5は、反応器3の下部に接続されている。
【0018】
前記リチウム複合酸化物としては、例えばリチウムシリケート、リチウムジルコネート等を挙げることができる。これらのリチウム複合酸化物は、単独または混合物の形態で用いることができる。例えばリチウムシリケート(Li4SiO4)では、下記の式(1)に示すように二酸化炭素と反応して二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が生成される。
【0019】
Li4SiO4+CO2→Li2SiO3+Li2CO3 …(1)
前記二酸化炭素吸収材は、リチウム複合酸化物の他に炭酸カリウム、炭酸ナトリウムのようなアルカリ炭酸塩を含有することを許容する。
【0020】
前記二酸化炭素吸収材は、粉末状、顆粒状またはペレット状等の種々の形態で前記反応器内に充填される。
【0021】
以下、第1実施形態に係る二酸化炭素発生装置の作用を図1を参照して説明する。
【0022】
ヒーター4により反応器3を、必要に応じ、例えば200〜300℃前後の温度に加熱した状態で第1開閉バルブV1を開いて二酸化炭素を含む燃焼排ガスを燃焼排ガスの導入ラインL1および主導入ラインL3を通して反応器3内に導入する。このとき、燃焼排ガス中の二酸化炭素が反応器3内に充填された例えばリチウムシリケートからなる二酸化炭素吸収材2と前記式(1)に従って反応し、二酸化炭素が吸収されると共に、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が生成される。燃焼排ガスは、反応器3を流通する過程で、その中の二酸化炭素濃度が十分に低減され、その後排出ラインL5を通して系外に排出される。
【0023】
このような式(1)の二酸化炭素の吸収反応が十分に進行した時点で三方電磁バルブSVにより導入ラインL1からキャリアガスの導入ラインL2に切り替える。この導入ラインL2に介装した第2開閉バルブV2を開き、キャリアガス(例えば空気)を導入ラインL2および主導入ラインL3を通して反応器3に導入すると共に、その空気流量を第1マスフローコントローラMF1で調節する。このとき、ヒーター4により反応器3を二酸化炭素の吸収反応温度より高い温度、例えば600〜700℃に加熱することにより、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物の一部が前記式(1)の右側から左側に向かう反応がなされて二酸化炭素を発生すると共に、リチウムシリケート(吸収材)を生成して再生する。二酸化炭素を含む空気は、排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給される。
【0024】
前記反応器3の加熱およびキャリアガスの導入において、水蒸気供給ラインL4に介装された第3開閉バルブV3を開き、水蒸気発生器5の水蒸気をこの供給ラインL4を通して空気が流通する主導入ラインL3に供給すると共に、その水蒸気流量を第2マスフローコントローラMF2で調節することによって、主導入ラインL3から水蒸気を所望量含む空気を反応器3内に導入する。このような水蒸気の反応器3内への導入によって、反応器3内の二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が前記式(1)の右側から左側に向かう反応が迅速になされて、多量の二酸化炭素を発生し、極めて高濃度の二酸化炭素を含む空気が排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給される。第2マスフローコントローラMF2の調節で空気が流通する主導入ラインL3への水蒸気の供給量を増大させることによって、二酸化炭素放出性物質からのCO2放出量がさらに増大する。また、第3開閉弁V3を閉じて水蒸気の主導入ラインL3への供給を停止、つまり反応器3への水蒸気の供給を停止、することによって、前記式(1)の右側から左側に向かう反応が抑えられるため、二酸化炭素の放出量が迅速に減少される。
【0025】
事実、次のような実験例および比較実験例によって第1実施形態に係る二酸化炭素発生装置が従来の温度制御による二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物から二酸化炭素を発生させる場合に比べて迅速かつ多量の二酸化炭素の発生と迅速な二酸化炭素の減少を図ることができることを確認した。
【0026】
(実験例1)
平均粒径1μmの酸化ケイ素粉末と平均粒径1μmの炭酸リチウム粉末とを1:2のモル比で混合し、押出成型により厚さ2mm、直径5mmの成型体を得た。この成型体を大気中、800℃で焼成してリチウムシリケートからなる厚さ約2mm、直径約5mmのペレット状二酸化炭素吸収材を製造した。
【0027】
得られたペレット状二酸化炭素吸収材30mgを白金皿に載せ、この白金皿を熱重量測定装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製商品名:TG−DTA2000S)の天秤部材に支持して加熱炉内に挿入した。加熱炉内を100%二酸化炭素雰囲気にし、600℃に加熱し、その温度を1時間保持した。吸収材(リチウムシリケート)が二酸化炭素を吸収することにより生成した二酸化炭素放出性物質の重量(W1)を天秤部材で計測した。
【0028】
次いで、加熱炉内の温度を600℃に維持した状態で二酸化炭素を100%窒素ガスに切り替えて、前記二酸化炭素放出性物質から二酸化炭素を放出させた。途中で加熱炉内への水蒸気の供給、停止を合計3回行った。1回目と3回目の水蒸気の供給は、加熱炉内の水蒸気濃度が25体積%、2回目の水蒸気の供給は加熱炉内の水蒸気濃度が50体積%、になるように行った。また、水蒸気の供給は約2分間行った。二酸化炭素を放出する過程での二酸化炭素放出性物質の重量(W2)を天秤部材で計測した。
【0029】
このような二酸化炭素吸収直後の二酸化炭素放出性物質の重量(W1)および二酸化炭素放出性物質から二酸化炭素を放出する過程での重量(W2)に基づいて二酸化炭素の放出量を算出した。その結果を図2に示す。
【0030】
(比較実験例1)
実験例1と同様なペレット状二酸化炭素吸収材30mgを白金皿に載せ、この白金皿を実験例1と同様な熱重量測定装置の天秤部材に支持して加熱炉内に挿入した。加熱炉内を100%二酸化炭素雰囲気にし、600℃に加熱し、その温度を1時間保持した。吸収材(リチウムシリケート)が二酸化炭素を吸収することにより生成した二酸化炭素放出性物質の重量(W1)を天秤部材で計測した。
【0031】
次いで、加熱炉内の温度を600℃に維持した状態で二酸化炭素を100%窒素ガスに切り替えて、前記二酸化炭素放出性物質から二酸化炭素を放出した。途中で加熱炉内の温度を上げて約3分間で620℃まで上昇させ、その後600℃まで温度を下げ、再び加熱炉内の温度を上げて約3分間で約650℃まで上昇させる温度制御を行った。二酸化炭素を放出する過程での二酸化炭素放出性物質の重量(W2)を天秤部材で計測した。
【0032】
このような二酸化炭素吸収直後の二酸化炭素放出性物質の重量(W1)および二酸化炭素を放出する過程での二酸化炭素放出性物質の重量(W2)に基づいて二酸化炭素の放出量を算出した。その結果を図3に示す。
【0033】
図2から明らかなように実験例1では、水蒸気の供給に対応して二酸化炭素放出量が迅速に増大し、水蒸気の供給停止により二酸化炭素放出量が迅速に減少することがわかる。また、水蒸気の供給を増大(例えば25体積%から50体積%)することによって、二酸化炭素放出量がさらに増大することがわかる。したがって、水蒸気の供給量を調節することにより、多量の二酸化炭素放出および迅速な二酸化炭素放出が可能になることがわかる。
【0034】
これに対し、温度制御を行う比較実験例1では図3から明らかなように温度を高くすると、二酸化炭素放出量が増大するものの、水蒸気の供給を行う実験例1に比べてその二酸化炭素放出量の増大化が低く、かつその二酸化炭素放出量の増大が緩慢であることがわかる。その上、温度を下げたときの二酸化炭素放出量の低下もだらだらして緩慢であることがわかる。したがって、温度制御では多量の二酸化炭素放出および迅速な二酸化炭素放出が望めないことがわかる。
【0035】
以上、第1実施形態に係る二酸化炭素発生装置1によれば二酸化炭素を含む空気を排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給する際、反応器3内の二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能になるため、二酸化炭素需要設備にその要求に応じた濃度の二酸化炭素を含む空気を円滑に供給することが可能になる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る二酸化炭素発生装置を示す概略図である。なお、図4において前述した図1と同様な部材は同符号を付して説明を省略する。
【0037】
図4に示す第2実施形態に係る二酸化炭素発生装置1は、水供給源6が水供給ラインL6を通して反応器3上部の噴射ノズル7に接続されている。第4開閉バルブV4、第3マスフローコントローラMF3およびポンプPは、前記水供給ラインL6に水供給源6側からこの順序で介装されている。
【0038】
以下、第2実施形態に係る二酸化炭素発生装置の作用を図4を参照して説明する。
【0039】
ヒーター4により反応器3を例えば200〜300℃前後の温度に加熱した状態で第1開閉バルブV1を開いて二酸化炭素を含む燃焼排ガスを燃焼排ガスの導入ラインL1および主導入ラインL3を通して反応器3内に導入する。このとき、燃焼排ガス中の二酸化炭素が反応器3内に充填された例えばリチウムシリケートからなる二酸化炭素吸収材2と前記式(1)に従って反応し、二酸化炭素が吸収されると共に、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が生成される。燃焼排ガスは、反応器3を流通する過程で、その中の二酸化炭素濃度が十分に低減され、その後排出ラインL5を通して系外に排出される。
【0040】
このような式(1)の二酸化炭素の吸収反応が十分に進行した時点で、三方電磁バルブSVにより導入ラインL1からキャリアガス導入ラインL2に切り替える。この導入ラインL2に介装した第2開閉バルブV2を開き、キャリアガス(例えば空気)を導入ラインL2および主導入ラインL3を通して反応器3に導入すると共に、その空気流量を第1マスフローコントローラMF1で調節する。このとき、ヒーター4により反応器3を二酸化炭素の吸収反応温度より高い温度、例えば600〜700℃に加熱することにより、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物の一部が前記式(1)の右側から左側に向かう反応がなされて二酸化炭素を発生すると共に、リチウムシリケート(吸収材)を生成して再生する。二酸化炭素を含む空気は、排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給される。
【0041】
前記反応器3の加熱およびキャリアガスの導入において、水供給ラインL6に介装された第4開閉バルブV4を開き、ポンプPを作動することにより水供給源6の水を水供給ラインL6を通して噴射ノズル7に供給し、このノズル7から所望量の水を反応器3内の二酸化炭素放出性物質に噴射する。水供給ラインL6を流通する水は、その流量が第3マスフローコントローラMF3で調節される。このような反応器3内の二酸化炭素放出性物質への水の噴射によって、前述した第1実施形態の水蒸気供給と実質的に同じ作用、すなわち二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が前記式(1)の右側から左側に向かう反応が迅速になされて、多量の二酸化炭素を発生し、キャリアガスである空気と共に排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給される。第3マスフローコントローラMF3の調節で反応器3内の二酸化炭素放出性物質への水の噴射量を増大させることによって、二酸化炭素放出量がさらに増大する。また、ポンプPの作動停止、第4開閉弁V4の閉鎖によって反応器3内への水噴射を停止することによって、前記式(1)の右側から左側に向かう反応が抑えられるため、二酸化炭素の放出量が迅速に減少される。
【0042】
したがって、第2実施形態に係る二酸化炭素発生装置1によれば二酸化炭素を含む空気を排出ラインL5を通して二酸化炭素需要設備に供給する際、反応器3内の二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量の制御が容易で、かつ二酸化炭素放出量の迅速な増加および減少が可能になるため、二酸化炭素需要設備にその要求に応じた濃度の二酸化炭素を含む空気を円滑に供給することが可能になる。
【0043】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る栽培システムを示す概略図である。
【0044】
野菜、果物、花のような農産物を栽培する温室11には、この温室11を暖房するための燃焼装置21および前記第1実施形態と同様な構造の二酸化炭素発生装置1が隣接して配置されている。
【0045】
燃焼装置21は、図示しない燃焼バーナが内蔵された筐体22を備えている。燃料導入ラインL11は、筐体22内の燃焼バーナに接続されている。熱交換用ガスラインL12は、筐体22内の燃焼バーナの上方に蛇行して配置されている。この熱交換用ガスラインL12は、一端が筐体22の空気取り入れ口23に連通され、他端が筐体22から外部に延出されて温室11に接続されている。ブロアー24は、熱交換用ガスラインL12に介装されている。筐体22内で発生した燃焼排ガスは、燃焼排ガス導入ラインL1を通して前記二酸化炭素発生装置1の三方電磁バルブSVに接続されている。
【0046】
二酸化炭素発生装置1の排出ライン(第1排出ライン)L5は、反応器3内のガスを外部に放出するもので、開閉バルブV5が介装されている。第2排出ラインL6は、第1排出ラインL5の反応器3と開閉バルブV5の間の位置で分岐され、他端が温室11に接続されている。この第2排出ラインL6には、開閉バルブV6が介装されている。なお、二酸化炭素発生装置1は後述する燃焼装置21による温室11の暖房の際に燃焼で発生する二酸化炭素を吸収、除去するのに十分な量の二酸化炭素吸収材2が充填された反応器3を備える。
【0047】
以下、第3実施形態に係る栽培システムの作用を図5を参照して説明する。
【0048】
温室11内の温度を上げる必要がある例えば夜間から朝方にかけて、燃料を燃料導入ラインL11を通して燃焼装置21の燃焼バーナ(図示せず)に供給して燃焼させる。このとき、ブロアー24を作動して筐体22の空気取り入れ口23から空気を筐体22内の燃焼バーナの上方に蛇行して配置された熱交換用ガスラインL12に取りこむことによって、熱交換用ガスラインL12に取り込まれ、流通する空気が燃焼バーナの燃焼炎で加熱される。加熱された空気は、熱交換用ガスラインL12を通して温室11内に供給されて温室内を暖房する。
【0049】
このような温室11内を暖房するための燃焼装置21の燃焼において、二酸化炭素発生装置1のヒーター4により反応器3を例えば200〜300℃前後の温度に加熱し、燃焼排ガスの導入ラインL1および第1排出ラインL5のバルブV1、V5を開き、燃焼装置21の筐体22内で発生した燃焼排ガスを導入ラインL1から三方電磁バルブSV、主導入ラインL3を通して反応器3内に導入する。筐体22内で燃焼排ガスが発生する間、燃焼排ガス中の二酸化炭素が反応器3内に充填された例えばリチウムシリケートからなる二酸化炭素吸収材2と前記式(1)に従って反応し、二酸化炭素が吸収されると共に、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が生成される。燃焼排ガスは、反応器3を流通する過程で、その中の二酸化炭素濃度が十分に低減され、その後、第1排出ラインL5を通して外部に排出される。
【0050】
温室11の暖房が不要になった時点で、燃焼装置21での燃焼を停止し、燃焼排ガスの導入ラインL1および第1排出ラインL5のバルブV1、V5を閉じ、ヒーター4による反応器3の加熱も停止する。
【0051】
一方、温室11の農産物の光合成が盛んになる、例えば晴れた昼間において、三方電磁バルブSVにより導入ラインL1からキャリアガスの導入ラインL2に切り替える。この導入ラインL2に介装した第2開閉バルブV2および第2排出ラインL6の開閉バルブV6を開き、第1排出ラインL5の開閉バルブV5を閉じる。キャリアガス(例えば空気)を導入ラインL2および主導入ラインL3を通して反応器3に導入すると共に、その空気流量を第1マスフローコントローラMF1で調節する。このとき、ヒーター4により反応器3を二酸化炭素の吸収反応温度より高い温度、例えば600〜700℃に加熱することにより、二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物の一部は前記式(1)の右側から左側に向かう反応がなされて二酸化炭素を発生すると共に、リチウムシリケート(吸収材)を生成して再生する。二酸化炭素を含む空気は、第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6を通して温室11内に供給され、二酸化炭素が農産物の光合成のために消費される。
【0052】
温室11内での二酸化炭素の要求消費量が増大する例えば農産物の光合成の増大において、水蒸気供給ラインL4に介装された第3開閉バルブV3を開き、水蒸気発生器5の水蒸気をこの供給ラインL4を通して空気が流通する主導入ラインL3に供給すると共に、その水蒸気流量を第2マスフローコントローラMF2で調節することによって、主導入ラインL3から水蒸気を所望量含む空気を反応器3内に導入する。このような水蒸気の反応器3内への導入によって、前述した実験例1の水蒸気供給と同じ作用、すなわち反応器3内の二酸化炭素放出性物質であるLi2SiO3およびLi2CO3の混合物が前記式(1)の右側から左側に向かう反応が迅速になされて、多量の二酸化炭素を発生し、極めて高濃度の二酸化炭素を含む空気を第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6を通して温室11内に供給することが可能になる。その結果、前記要求消費量に見合った二酸化炭素を第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6から温室11内に迅速に供給できる。また、二酸化炭素の要求消費量がより増大した場合には第2マスフローコントローラMF2の調節で空気が流通する主導入ラインL3への水蒸気の供給量を増大させることによって、二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素放出量をさらに増大させて、より高濃度の二酸化炭素を含む空気を第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6を通して温室11内に供給することが可能になる。このため、温室11内の農産物の光合成が適切になされ、その生育が増大される。
【0053】
所望の時間経過後に水蒸気供給ラインL4の第3開閉弁V3を閉じて水蒸気の主導入ラインL3への供給を停止、つまり反応器3への水蒸気の供給を停止、することによって、前述した実験例1の水蒸気停止と同じ作用、すなわち前記式(1)の右側から左側に向かう反応が抑えられ、二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素放出量が迅速に減し、不必要かつ無駄な二酸化炭素が第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6を通して温室11内に供給されるのを防ぐ。
【0054】
したがって、第3実施形態では燃焼装置21により温室11内を暖房する例えば夜間から朝方にかけて、燃焼装置21で発生する燃焼排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素発生装置1の反応器3に充填された二酸化炭素吸収材2で吸収して貯蔵できる。一方、温室11内の二酸化炭素の要求消費量が増大する例えば農産物の光合成が増大するときに、二酸化炭素発生装置1は反応器3内の二酸化炭素放出性物質からの二酸化炭素の放出量を迅速に増加、減少し、かつその放出量の一層の増加も可能であるため、温室11内の二酸化炭素の要求消費量に見合った濃度の二酸化炭素を含む空気を第1排出ラインL5およびこれから分岐した第2排出ラインL6を通して温室11内に迅速に供給できる。その結果、温室11内の農産物の光合成を適正化してその生育を増大でき、さらに従来のように二酸化炭素発生専用のボイラーのような燃焼装置を栽培施設内に置き、常時、二酸化炭素を温室内に供給する、無駄な燃料の消費を回避でき、経済性の高い栽培システムを実現できる。
【0055】
なお、第3実施形態で説明した二酸化炭素を含むキャリアガス(空気)の温室内への供給において、水蒸気の供給、停止を担う開閉バルブの開閉と、水蒸気量の調節を担うマスフローコントローラの制御を予め決められたタイマー機能によって行ってもよく、または温室内に設置した二酸化炭素の検出器、この検出信号が入力されるマイクロコンピュータのような制御器を用いて水蒸気の間欠的な供給(供給、停止)を担う開閉バルブと水蒸気量の調節を担うマスフローコントローラをフィードバック制御する構成にしてもよい。
【0056】
第3実施形態において二酸化炭素発生装置の反応器は1基に限らず、例えば温室の規模、燃焼装置からの燃焼排ガス量等に応じて2基以上並設させてもよい。
【0057】
また、第3実施形態において二酸化炭素発生装置は第1実施形態と同様な構造のものを用いたが、第2実施形態と同様な構造、すなわち水噴射型の二酸化炭素発生装置を用いても、第3実施形態と同様な効果を有する栽培システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素発生装置を示す概略図。
【図2】本発明の実験例1における二酸化炭素放出性物質への水蒸気の供給、停止時の二酸化炭素放出量を示す特性図。
【図3】比較実験例1における二酸化炭素放出性物質への温度制御時の二酸化炭素放出量を示す特性図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素発生装置を示す概略図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る栽培システムを示す概略図。
【符号の説明】
【0059】
1…二酸化炭素発生装置、2…二酸化炭素吸収材、3…反応器、4…ヒーター、5…水蒸気発生器、6…水供給源、7…噴射ノズル、11…温室、21…燃焼装置、22…筐体、24…ブロアー、L1,L2、L3,L4,L6,L11…導入ライン、L5、L6…排出ライン、L12…熱交換用ガスライン、V1,V2,V3,V4,V5,V6…開閉バルブ、SV…三方電磁バルブ、MF1,MF2,MF3…マスフローコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管とガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、
前記水蒸気供給手段から前記反応器内への水蒸気の供給量調節および間欠的な供給を行うための制御手段と
を備えることを特徴とする二酸化炭素発生装置。
【請求項2】
二酸化炭素を含むガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管とガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水を噴射するための水噴射手段と、
前記水噴射手段から前記反応器内への水の噴射量調節および間欠的な噴射を行うための制御手段と
を備えることを特徴とする二酸化炭素発生装置。
【請求項3】
農産物を栽培する温室;
前記温室を暖房するための燃焼装置;および
(a)前記燃焼装置の排ガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管と前記ハウスに接続されるガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
(b)前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
(c)前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、
(d)前記水蒸気供給手段から前記反応器内への水蒸気の供給量調節および間欠的な供給を行うための制御手段と
を有する二酸化炭素発生装置;
を備えることを特徴とする栽培システム。
【請求項4】
農産物を栽培する温室;
前記温室を暖房するための燃焼装置;および
(a)前記燃焼装置の排ガスおよびキャリアガスが切り替え可能に導入されるガス導入管と前記ハウスに接続されるガス排出管とを有し、内部にリチウム複合酸化物を含む二酸化炭素吸収材が充填された反応器と、
(b)前記反応器内の二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を反応させて生成された二酸化炭素放出性物質を加熱するためのヒーターと、
(c)前記反応器内の前記二酸化炭素放出性物質に水を噴射するための水噴射手段と、
(d)前記水噴射手段から前記反応器内への水の噴射量調節および間欠的な噴射を行うための制御手段と
を有する二酸化炭素発生装置;
を備えることを特徴とする栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−237115(P2008−237115A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82644(P2007−82644)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】