説明

交流モータの制御装置および制御方法

【課題】電圧の位相制御を行う交流モータの動作状態における電流オフセットを検出し、電圧波形を制御することで電流オフセットを抑制、除去する交流モータの制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】電流検出手段97U〜97Wおよび位相検出手段95を備える交流モータ9の電流オフセット量を考慮して電圧波形を制御する交流モータの制御装置1であって、トルク指令値Treqに基づいて電圧位相θvを設定する手段12と、各相電流iu〜iwからそれぞれオフセット量IU0、IV0、IW0を検出する手段11と、電気角の半周期ごとに電圧波形をパルス幅変調波形pwmまたは矩形波形に切り替え制御するタイミングtmgを得る手段13と、オフセット量IU0、IV0、IW0の正負に応じて半周期ごとにパルス幅変調波形pwmと矩形波形に切り替える手段16と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流モータの制御装置および制御方法に関し、より詳細には、ステータの電機子巻線に通電される電流のオフセット量を考慮した制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交流モータの駆動装置にインバータを適用する技術が普及し、旧態と比較して格段に制御性能が向上している。インバータを適用した駆動装置の制御では、ステータの電機子巻線に流れる各相の電流およびロータの回転位相を検出するとともに、外部からのトルク指令値に基づき、矩形波電圧の位相を制御したり、パルス幅変調(PWM)方式により電圧実効値を制御したりして出力トルクを調整する場合が多い。さらに、電流に重畳している直流成分などのオフセット量を検出し、これを低減するように制御することもある。このような電流オフセットを検出する技術の例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のモータの制御装置は、駆動電流を出力するインバータ部と、駆動電流値を検出する電流値検出手段と、オフセット値判別手段と、信号処理部とを備えている。オフセット値判別手段は、モータに駆動電流が通電されていない状態で、電流値検出信号から直流レベルのオフセット値を検出するようになっている。また、信号処理部は、電流値検出信号からオフセット値を除外した制御信号を作成して、制御を行うようにしている。これにより、オフセット値を調整するための特段の調整回路が不必要となって制御装置を小型化、簡略化でき、さらに、モータの回転制御を高精度に行える、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−149882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の制御装置では、モータに駆動電流が通電されていない非駆動状態で電流オフセットを検出するので、電流値検出手段のゼロ点誤差を検出して補正することができる。しかしながら、電流オフセットは検出誤差に起因する仮想的な量に限定されず、駆動時に直流成分などが重畳して実際に発生し得る量である。また、モータの動作状況に依存して電流オフセットが変化する場合も生じ得る。例えば、電源ケーブルの特性が三相間でばらついていると、電流が流れているときにだけ電流オフセットが発生する。また、ロータの回転位相の検出誤差があると、検出誤差の大小や正負に応じて電流オフセットが変化し得る。特許文献1の制御装置は、モータの動作状態で発生する実際の電流オフセットを検出できず、電流オフセットの変化も検出できない。
【0006】
また、トルク指令値に基づいて矩形波電圧の位相を制御する制御装置では、電気角の180°ごとに矩形波の正負をスイッチングするが、正負の電圧振幅を可変に制御する機能をもたない。したがって、仮に電流オフセットが発生していると、これを除去することができない。
【0007】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、電圧の位相制御を行う交流モータの動作状態における電流オフセットを検出し、電圧波形を制御することで電流オフセットを抑制、除去する交流モータの制御装置および制御方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る交流モータの制御装置の発明は、ステータの電機子巻線に電圧を印加したときに流れる各相の電流を検出する電流検出手段、およびロータの回転位相を検出する位相検出手段を備える交流モータを制御対象として、前記各相の電流のオフセット量を考慮して前記電圧波形を制御する交流モータの制御装置であって、外部からのトルク指令値に基づいて、前記ロータの回転位相上で前記電圧を印加する電圧位相を設定する電圧位相設定手段と、前記電流検出手段が検出した前記各相の電流からそれぞれ前記オフセット量を検出するオフセット検出手段と、前記位相検出手段が検出した前記ロータの回転位相から得られる電気角の半周期ごとに、前記電圧波形をパルス幅変調波形または矩形波形に切り替え制御するタイミングを得るスイッチング制御手段と、検出した前記オフセット量が正値であると前記電圧波形を正の前記パルス幅変調波形と負の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量が負値であると前記電圧波形を負の前記パルス幅変調波形と正の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量がゼロであると前記電圧波形を正および負の前記矩形波形に切り替える波形切替え手段と、を有する。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、周波数および電圧振幅が可変の正弦波波形の前記電圧振幅を設定する電圧振幅設定手段と、所定周波数で所定電圧振幅の三角波状のキャリア波形と前記正弦波波形との大小比較結果に基づくオンオフ制御により前記パルス幅変調波形を生成するパルス幅変調手段とをさらに有する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量が大きいほど前記正弦波波形の電圧振幅を小さく設定し、前記オフセット量が小さいほど前記正弦波波形の電圧振幅を大きく設定し、前記パルス幅変調手段は、前記正弦波波形が前記キャリア波形を越えている時間帯をパルス幅変調のオン時間とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2または3において、前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量と前記正弦波波形の電圧振幅との関係をあらかじめ保持している。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項2または3において、前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量の大きさに応じて前記正弦波波形の電圧振幅をフィードバック制御する。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、出力トルクを検出するトルク検出手段をさらに有し、前記電圧位相設定手段は前記トルク指令値および検出された前記出力トルクに応じてフィードバック制御により前記電圧位相を設定する。
【0014】
請求項7に係る交流モータの制御方法の発明は、ステータの電機子巻線に電圧を印加したときに流れる各相の電流を検出する電流検出手段、およびロータの回転位相を検出する位相検出手段を備える交流モータを制御対象とし、前記各相の電流のオフセット量を考慮して前記電圧波形を制御する交流モータの制御方法であって、外部からのトルク指令値に基づいて、前記ロータの回転位相上で前記電圧を印加する電圧位相を設定する電圧位相設定ステップと、前記電流検出手段が検出した前記各相の電流からそれぞれ前記オフセット量を検出するオフセット検出ステップと、前記位相検出ステップで検出した前記ロータの回転位相から得られる電気角の半周期ごとに、前記電圧波形をパルス幅変調波形または矩形波形に切り替え制御するタイミングを得るスイッチング制御ステップと、検出した前記オフセット量が正値であると前記電圧波形を正の前記パルス幅変調波形と負の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量が負値であると前記電圧波形を負の前記パルス幅変調波形と正の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量がゼロであると前記電圧波形を正および負の前記矩形波形に切り替える波形切替えステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る交流モータの制御方法の発明では、外部からのトルク指令値に基づいて電圧位相を設定し、各相の電流からそれぞれオフセット量を検出し、電気角の半周期ごとに電圧波形をパルス幅変調波形または矩形波形に切り替え制御し、オフセット量の正値、負値、およびゼロに対応して電圧波形を選択制御する。つまり、電流オフセットが発生しているときに、電流オフセットと同じ極性のパルス幅変調波形および異なる極性の矩形波形を交互に切り替える。これにより、電圧波形を正負で意図的に不均等にして、電流オフセットを抑制、除去することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、所定周波数で所定電圧振幅のキャリア波形と、周波数および電圧振幅が可変の正弦波波形との大小比較結果に基づくオンオフ制御によりパルス幅変調波形を生成する。これにより、パルス幅変調のオン時間を制御して、パルス幅変調波形の実効値を自在に制御できる。したがって、電流オフセットの正負および絶対値の大小に応じて、電圧波形の正負の不均等の度合いを可変に設定することができ、電流オフセットを良好に除去することができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、オフセット量が大きいほど正弦波波形の電圧振幅を小さく設定し、オフセット量が小さいほど正弦波波形の電圧振幅を大きく設定し、正弦波波形がキャリア波形を越えている時間帯をパルス幅変調のオン時間とする。つまり、オフセット量が大きいほど正弦波波形の電圧振幅が小さくなってオン時間が減少するので、電流オフセットと同じ極性のパルス幅変調波形の実効値が小さくなる。一方、電流オフセットと異なる極性の矩形波形の実効値は一定である。したがって、電圧波形の正負の不均等の度合いが大きくなり、大きなオフセット量を過不足なく除去することができる。また、オフセット量が小さいほど正弦波波形の電圧振幅が大きくなってオン時間が増加するので、電流オフセットと同じ極性のパルス幅変調波形の実効値が異なる極性の矩形波形の実効値に接近する。したがって、電圧波形の正負の不均等の度合いが小さくなり、小さなオフセット量を過不足なく除去することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、オフセット量と正弦波波形の電圧振幅との関係をあらかじめ保持している。したがって、検出されたオフセット量に基づいて直ちに正弦波波形の電圧振幅を求めることができ、制御が簡易化される。
【0019】
請求項5に係る発明では、オフセット量の大きさに応じて正弦波波形の電圧振幅をフィードバック制御する。したがって、フィードバック制御により電圧振幅が適正化されて電流オフセットが確実に抑制され、概ね一定の動作状態ではオフセット量はゼロに収束する。
【0020】
請求項6に係る発明では、出力トルクを検出するトルク検出手段をさらに有し、トルク指令値および検出された出力トルクに応じてフィードバック制御により電圧位相を設定する。電流オフセットの除去に加えて出力トルクのフィードバック制御を行うことで制御を一層高精度化でき、交流モータの良好な動作を実現できる。
【0021】
請求項7に係る交流モータの制御方法の発明は、請求項1の各手段を行う各ステップを有している。本発明は、制御方法としても実施でき、その効果は請求項1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態の交流モータの制御装置および制御対象となる交流モータを含む全体構成を説明する図である。
【図2】実施形態の制御装置の機能手段を説明するブロック図である。
【図3】オフセット検出手段が電流のオフセット量を検出する方法を模式的に説明する図である。
【図4】実施形態の制御装置による電圧制御の処理フローを示すフローチャートの図である。
【図5】実施形態の交流モータの制御装置でオフセット量が大きいときの動作を模式的に説明する図であり、(1)はPWM手段内の正弦波波形およびキャリア波形、(2)は波形切替え手段から指令される制御信号の波形が示されている。
【図6】図5と同様に、オフセット量が中程度の大きさのときの動作を模式的に説明する図である。
【図7】図5と同様に、オフセット量が小さいときの動作を模式的に説明する図である。
【図8】別の実施形態の制御装置の機能手段を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の交流モータの制御装置について、図1〜図7を参考にして説明する。図1は、実施形態の交流モータの制御装置1および制御対象となる交流モータ9を含む全体構成を説明する図である。交流モータ9の駆動源としては、インバータ回路2、直流電源3、およびドライバ回路4を組み合わせて用いる。制御装置1は、ドライバ回路4に制御信号CU、CV、CWを送出してインバータ回路2を駆動することで最終的に交流モータ9を制御する。まず、図1を参考にして全体構成を詳述する。
【0024】
交流モータ9は、Y結線された三相の電機子巻線92、93、94を有するステータ91、および図略の磁極対を有するロータを主に構成されている。本実施形態では、電機子巻線92、93、94の極数、およびロータの磁極対の数量に特別な制約はない。ロータの回転位相を検出する位相検出手段として、位相センサ95が設けられている。位相センサ95の検出方式に制約はなく、例えばレゾルバを用いることができる。位相センサ95の位相検出信号θ1は位相処理装置96に送出され、位相処理装置96によって制御装置1が取得できる形態の位相検出信号θ2に信号変換される。
【0025】
インバータ回路2は、直流電源3の直流電圧Edcの波形をパルス幅変調波形(PWM波形、以降ではパルス幅変調をPWMと略記する)または矩形波形に変換して位相制御しつつ出力する回路であり、図示されるように三相ブリッジ回路で構成されている。すなわち、直流電源3の正側端子3Uと負側端子3Lの間に、U相正側スイッチング素子22UUとU相負側スイッチング素子22ULとが直列接続されている(符号の第1添字のU、V、Wは相を示し、第2添字のUは正側、Lは負側を示す)。両スイッチング素子22UU、22ULの間にU相出力端子24Uが設けられている。同様に、V相正側スイッチング素子22VUとV相負側スイッチング素子22VLとの間にV相出力端子24Vが設けられ、W相正側スイッチング素子22WUとW相負側スイッチング素子22WLとの間にW相出力端子24Wが設けられている。6個のスイッチング素子22UU〜22WLには、例えば電界効果トランジスタ(FET)が用いられ、通電制御信号DUU〜DWLによりそれぞれを独立して導通状態および遮断状態に切り替え制御できるように構成されている。
【0026】
インバータ回路2の三相の出力端子24U、24V、24Wはそれぞれ、電源ケーブル25U、25V、25Wによりステータ91の三相の電機子巻線92、93、94の印加端に接続されている。電源ケーブル25U、25V、25Wの途中には、電流検出手段として各相に電流センサ97U、97V、97Wが設けられている。電流センサ97U、97V、97Wが検出する線電流は、電機子巻線92、93、94の相電流に一致している。電流センサ97U、97V、97Wの検出方式に制約はなく、例えば、シャント抵抗を用いたセンサやホール効果を応用したセンサなどを用いることができる。電流センサ97U、97V、97Wの電流検出信号iu、iv、iwは、制御装置1に送出される。
【0027】
制御装置1は、マイコン1Mを有してソフトウェアで動作し、制御ロジックを実行する。制御装置1は、所定のサンプリング間隔T1で位相処理装置96から位相検出信号θ2を取得し、内部で電気角θeに変換する。さらに、制御装置1は、電気角θeの前回値からの変化分をサンプリング間隔T1で除算して回転速度を求め、回転数Nを演算する。また、制御装置1は、サンプリング間隔T1で電流センサ97U、97V、97Wから三相の電流検出信号iu、iv、iwを取得する。さらに、制御装置1は、外部から動作指令値としてトルク指令値Treqを受け取る。
【0028】
制御装置1は、トルク指令値Treqに基づくとともに、電気角θeおよび後述する電流のオフセット量IU0、IV0、IW0を考慮して、3相の制御信号CU、CV、CWを生成しドライバ回路5に送出する。制御信号CU、CV、CWは、オンとオフの切り替えタイミングを制御する信号である。また、制御装置1は、リセット信号RSTによりドライバ回路4をリセットする機能を有している。
【0029】
ドライバ回路4は、制御装置1から受け取った制御信号CU、CV、CWを変換して通電制御信号DUU〜DWLを生成し、6個のスイッチング素子22UU〜22WLに送出する。これにより、各スイッチング素子22UU〜22WLが開閉制御され、直流電源3の直流電圧Edcを電機子巻線92、93、94に印加する時間帯が制御される。印加される電圧はPWM波形または矩形波形であり、PWM波形の実効値は矩形波形のそれよりも小さくなる。また、各相の電機子巻線92、93、94はインダクタンス分を含むので、流れる電流の波形は概ね正弦波状になる。
【0030】
次に、制御装置1が有する機能手段について説明する。図2は、実施形態の制御装置1の機能手段を説明するブロック図である。図示されるように、制御装置1は、オフセット検出手段11、電圧位相設定手段12、スイッチング制御手段13、電圧振幅設定手段14、PWM手段15、および波形切替え手段16を有している。
【0031】
オフセット検出手段11は、電流センサ97U、97V、97Wから取得した三相の電流検出信号iu、iv、iwから、各相の電流のオフセット量IU0、IV0、IW0を検出する。図3は、オフセット検出手段11が電流のオフセット量IU0を検出する方法を模式的に説明する図である。オフセット量IU0、IV0、IW0の検出方法は三相で同一であるので、ここではU相を例にして説明する。図3の横軸は位相(電気角θe)、縦軸はU相の電流検出信号iuを示し、実線のグラフは実際に電機子巻線92に流れているU相電流波形であり、白丸はサンプリング間隔T1で取得した離散的な瞬時値を示している。
【0032】
オフセット検出手段11は、電気角θeの1周期にわたって、白丸の瞬時値を加算した和を求める。次に、和をサンプリング個数で除算する平均値演算によってU相オフセット量IU0を求める。前述したように電流波形は概ね正弦波形であり、オフセット量がないときには1周期中の瞬時値は正負で半数ずつとなって和が概ねゼロになる。一方、オフセット量があるときには、各瞬時値がオフセット量だけ偏移するので、和は概ねオフセット量にサンプリング個数を乗算した値になる。したがって、前述した平均値演算によってU相オフセット量IU0を求めることができる。図3には、正のオフセット量IU0が生じている場合が例示されている。オフセット検出手段11は、検出した三相のオフセット量IU0、IV0、IW0を電圧振幅設定手段14および波形切替え手段16に送出する。
【0033】
電圧位相設定手段12は、外部からのトルク指令値Treqに基づいて、電気角θeで表されたロータの回転位相上で電圧を印加する電圧位相θvを設定する。電圧位相θvは、トルク指令値Treqだけでなく、回転数Nも参照して定めるようにしてもよい。実用的には、電圧位相θvは周知のd−q座標変換法を用いて演算することができる。また、トルク指令値Treqおよび回転数Nをパラメータとする一覧表形式のマップから求めるようにしてもよい。電圧位相設定手段12は、求めた電圧位相θvをスイッチング制御手段13に送出する。
【0034】
スイッチング制御手段13は、位相センサ95が検出したロータの回転位相θ1から得られる電気角θeの半周期ごとに、電圧波形をPWM波形または矩形波形に切り替え制御するタイミングを得る。つまり、スイッチング制御手段13は、検出されている現在の電気角θeを電圧位相設定手段12から取得した電圧位相θvと比較することで、三相の電圧を順番に120°ずつ遅らせながら正負を切り替える制御タイミングtmgを設定する。制御タイミングtmgは、電気角の1周期中に三相で各2回発生する。スイッチング制御手段13は、制御タイミングtmgを波形切替え手段16に送出する。
【0035】
電圧振幅設定手段14は、周波数および電圧振幅が可変の正弦波波形sinの電圧振幅Esを設定する。詳述すると、電圧振幅設定手段14は、オフセット量IU0、IV0、IW0(厳密にはオフセット量の絶対値)が大きいほど、当該相の制御に用いる正弦波波形sinの電圧振幅Esを小さく設定し、オフセット量IU0、IV0、IW0が小さいほど正弦波波形sinの電圧振幅Esを大きく設定する。また、オフセット量IU0、IV0、IW0がゼロであると、正弦波波形sinの電圧振幅Esを無限に大きく設定し、実際上は装置の性能上の上限レベルで飽和する。正弦波波形sinの電圧振幅Esは、各相で異なる値(UEs、VEs、WEs)とすることができる。電圧振幅設定手段14は、設定した電圧振幅EsをPWM手段15に送出する。
【0036】
本実施形態で、電圧振幅設定手段14は、オフセット量IU0、IV0、IW0の大きさに応じて正弦波波形sinの電圧振幅Esをフィードバック制御する。しかしながら、これに限定されず、電圧振幅設定手段14は、オフセット量IU0、IV0、IW0と正弦波波形sinの電圧振幅Esとの関係をあらかじめ保持し、この関係にしたがって電圧振幅Esを設定するようにしてもよい。
【0037】
なお、電圧振幅設定手段14で実施するとは限らないが、制御装置1は正弦波波形sinの周波数fsを設定する機能を有する。制御装置1は、回転数指令値を受け取って回転数を制御する場合に、回転数指令値に対応して周波数fsを設定する。また、制御装置1は、回転数制御機能を有さない場合に、例えば、現在検出されている回転数Nを維持するように周波数fsを設定する。
【0038】
PWM手段15は、所定周波数で所定電圧振幅の三角波状のキャリア波形Crと正弦波波形sinとの大小比較結果に基づくオンオフ制御によりPWM波形pwmを生成する。詳述すると、PWM手段15は、正弦波発生回路により電圧振幅Es、周波数fsの正弦波波形sinを発生する。また、PWM手段15は、キャリア波発生回路により一定周波数で一定電圧振幅の二等辺三角形状のキャリア波形Crを発生する。キャリア波形Crの形状は二等辺三角形状に限定されず、立ち上がりと立ち下がりの傾きが異なっていてもよい。
【0039】
そして、PWM手段15は、比較回路によりキャリア波形Crと正弦波波形sinとの大小比較を行い、正弦波波形sinがキャリア波形Crを越えている時間帯をオン時間Tonとする。また、正弦波波形sinがキャリア波形Crを越えていない時間帯をオフ時間Toffとする。これにより、PWM手段15は、オン時間Tonおよびオフ時間Toffが交互に発生する2値信号波形、すなわちPWM波形pwmを生成する。PWM手段15は、PWM波形pwmを波形切替え手段16に送出する。
【0040】
波形切替え手段16は、オフセット検出手段11から各相のオフセット量IU0、IV0、IW0を受け取り、スイッチング制御手段13から制御タイミングtmgを受け取り、PWM手段15からPWM波形pwmを受け取る。そして、波形切替え手段16は、各相のオフセット量IU0、IV0、IW0の正値、負値、およびゼロに応じ、所定の制御タイミングtmgで、電気角θeの正負の半周期ごとに当該相の電圧波形をPWM波形pwmまたは矩形波形sqrに切り替える。すなわち、波形切替え手段16は、オフセット量が正値であると正のPWM波形pwmと負の矩形波形sqrに切り替え、オフセット量が負値であると負のPWM波形pwmと正の矩形波形sqrに切り替え、オフセット量がゼロであると正および負の矩形波形sqrに切り替える。
【0041】
上述のように電気角θeの正負の半周期ごとに各相の電圧波形を切り替えることで、各相の制御信号CU、CV、CWを生成できる。波形切替え手段16は、制御信号CU、CV、CWをドライバ回路4に指令する。
【0042】
次に、制御処理フローについて説明する。図4は、実施形態の制御装置1による電圧制御の処理フローを示すフローチャートの図である。図4に示されるフローチャートは、交流モータ9の動作中に継続的に繰り返して実行される。図中のステップS1で、電圧位相設定手段12は電圧位相θvを設定する。次のステップS2で、オフセット検出手段11は、電流センサ97U、97V、97Wから電流検出信号iu、iv、iwを取得する。ステップS3で、オフセット検出手段11は、各相電流のオフセット量IU0、IV0、IW0を演算する。
【0043】
ステップS4で、電圧振幅設定手段14は、各相について正弦波波形sinの電圧振幅Esを設定する。次のステップS5で、PWM手段15は、正弦波発生回路により電圧振幅Esの正弦波波形sinを発生する。さらにステップS6で、PWM手段15は、比較回路によりキャリア波形Crと正弦波波形sinとを大小比較して、PWM波形pwmを生成する。
【0044】
さらにステップS7で、スイッチング制御手段13は、検出されている現在の電気角θeを設定された電圧位相θvと比較することで、正負の切替えの制御タイミングtmgを設定する。ステップS8で、波形切替え手段16は、オフセット量IU0、IV0、IW0の正値、負値、およびゼロに応じて、各相の制御信号CU、CV、CWを生成し、ドライバ回路4に指令する。ドライバ回路4は、通電制御信号DUU〜DWLをインバータ回路2に送出し、インバータ回路2から交流モータ9に印加される電圧波形が制御される。これにより、電圧制御の処理フローの1サイクルが終了し、以下繰り返される。
【0045】
次に、実施形態の交流モータの制御装置1の動作、作用について説明する。図5は実施形態の交流モータの制御装置1でオフセット量が大きいときの動作を模式的に説明する図であり、(1)はPWM手段15内の正弦波波形sinおよびキャリア波形Cr、(2)は波形切替え手段16から指令される制御信号CU、CV、CWの波形が示されている。同様に、図6はオフセット量が中程度の大きさのときの動作を模式的に説明する図であり、図7はオフセット量が小さいときの動作を模式的に説明する図であり、ともに(1)(2)は同じ波形が示されている。
【0046】
図5の(1)で、横軸は位相(電気角θe)、縦軸は電圧でキャリア波形Crの電圧振幅を100%としている。図中で、PWM手段15の正弦波波形sin(Usin、Vsin、Wsin)は、U相では実線、V相では一点鎖線、W相では破線でそれぞれ示されている。また、キャリア波形Crは細い実線で示されている。図5の(2)で、横軸は位相(電気角θe)、縦軸はU相、V相、およびW相制御信号CU、CV、CWの波形のオンおよびオフが示されている。なお、上述した横軸および縦軸の表示は、図6および図7でも共通になっている。
【0047】
図5はオフセット量が大きいときを示し、具体的には、U相およびV相オフセット量IU0、IV0が同程度に大きな正値で、W相オフセット量IW0は絶対値がU相およびV相と同程度に大きな負値のときが例示されている。本実施形態では、オフセット量が大きいほど正弦波波形sinの電圧振幅Esを小さく設定し、図の例では、各相正弦波波形Usin、Vsin、Wsinの各電圧振幅UEs、VEs、WEsは、キャリア波形Crの振幅の略50%に設定されている。
【0048】
ここで、U相制御信号CUを例にして、その生成方法を詳細に説明する。図5の(1)で、U相正弦波波形Usinの正の半波がキャリア波形Crを越えている離散的な7つの時間帯がオン時間Ton1〜Ton7(図中の太線)に定められる。また、U相正弦波波形Usinがキャリア波形Crを越えていない時間帯がオフ時間Toffに定められる。これらのオン時間Ton1〜Ton7およびオフ時間Toffの切替えを示すU相PWM波形Upwmは、U相制御信号CUに反映される。
【0049】
すなわち、U相オフセット量IU0が正値であるので、制御装置1は電圧波形を正のU相PWM波形Upwmと負のU相矩形波形Usqrに切り替えて、図5の(2)に示されるU相制御信号CUが生成される。図示されるように、U相制御信号CUは、位相0から180°までの正の半周期ではU相PWM波形Upwmとされるので、オン時間Ton1〜Ton7およびオフ時間Toffの切替え制御タイミングが反映される。また、U相制御信号CUは、位相180°から360°までの負の半周期では負のU相矩形波形Usqrに切り替えられ、常にオン状態とされる。
【0050】
これにより、U相電圧波形は正負で意図的に大きく不均等なものとなり、電圧実効値が負側で大きく、正側で小さく制御される。したがって、U相オフセット量IU0の大きな正値が除去される。
【0051】
また、V相制御信号CVは、V相オフセット量IV0がU相と同じ正値で大きさも同程度であるので、概ねU相制御信号CUの波形を120°遅らせた波形になる。すなわち、V相制御信号CVは、位相120°から300°までの正の半周期でV相PWM波形Vpwmとされてオンおよびオフの切替え制御タイミングが反映され、位相300°から120°までの負の半周期では負のV相矩形波形Vsqrに切り替えられ、常にオン状態とされる。これにより、V相電圧波形は正負で意図的に大きく不均等なものとなり、V相電圧実効値が負側で大きく、正側で小さく制御され、V相オフセット量IV0の大きな正値が除去される。
【0052】
また、W相制御信号CWは、U相およびV相と異なりW相オフセット量IW0が負値であるので、概ねU相制御信号CUの波形の正負を反転し、さらに240°遅れた波形になる。すなわち、W相制御信号CWは、位相240°から60°までの正の半周期で正のW相矩形波形Wsqrとされて常にオン状態とされ、位相60°から240°までの負の半周期では負のW相PWM波形Wpwmとされてオンおよびオフの切替え制御タイミングが反映される。これにより、W相電圧波形は正負で意図的に大きく不均等なものとなり、W相電圧波形の電圧実効値が正側で大きく、負側で小さく制御され、W相オフセット量IW0の大きな負値が除去される。
【0053】
次に、図6は、オフセット量が中間の大きさのときを示し、具体的には、U相およびV相オフセット量IU0、IV0が中程度の大きさの正値で、W相オフセット量IW0が同程度に大きな負値のときが例示されている。本実施形態では、オフセット量が小さくなるにつれて正弦波波形の電圧振幅を大きく設定し、図の例では、各相正弦波波形Usin、Vsin、Wsinの各電圧振幅はキャリア波形Crの振幅を越えて大きく設定され、図略の部分は飽和している。
【0054】
図6の(1)で、U相正弦波波形Usinの正の半波がキャリア波形Crを越えている離散的な3つの時間帯がオン時間Ton8〜Ton10(図中の太線)に定められる。また、U相正弦波波形Usinがキャリア波形Crを越えていない時間帯がオフ時間Toffに定められる。図5の(1)と比較して、正弦波波形Usinの電圧振幅が大きいことに起因して、オン時間Ton8〜Ton10の総和は、オン時間Ton1〜Ton7の総和よりも大きくなっている。オン時間Ton8〜Ton10およびオフ時間Toffの切替えを示すU相PWM波形Upwmは、U相制御信号CUに反映される。
【0055】
すなわち、U相オフセット量IU0が正値であるので、電圧波形を正のU相PWM波形Upwmと負のU相矩形波形Usqrに切り替えて、図6の(2)に示されるU相制御信号CUが生成される。図5の(2)と同様に、U相制御信号CUは、位相0から180°までの正の半周期ではU相PWM波形Upwmとされ、オン時間Ton8〜Ton10およびオフ時間Toffの切替え制御タイミングが反映される。また、U相制御信号CUは、位相180°から360°までの負の半周期では負のU相矩形波形Usqrに切り替えられ、常にオン状態とされる。
【0056】
また、V相制御信号CVは、概ねU相制御信号CUの波形を120°遅らせた波形になる。さらに、W相制御信号CWは、概ねU相制御信号CUの波形の正負を反転し、さらに240°遅れた波形になる。これにより、各相の電圧波形は正負で意図的に中程度に不均等なものとなり、各相オフセット量IU0、IV0、IW0の中程度の正値および負値がちょうど除去される。
【0057】
次に、図7は、オフセット量が小さいときを示し、具体的には、U相およびV相オフセット量IU0、IV0が小さい正値で、W相オフセット量IW0がゼロに近い負値のときが例示されている。本実施形態では、オフセット量が小さいほど正弦波波形の電圧振幅を大きく設定し、図7の(1)では、各相正弦波波形Usin、Vsin、Wsinの各電圧振幅は、図6の(1)よりもさらに大きく設定され、飽和の時間帯が増加している。
【0058】
図7の(1)で、U相正弦波波形Usinの正の半波がキャリア波形Crを越えている離散的な3つの時間帯がオン時間Ton11〜Ton13(図中の太線)に定められる。また、U相正弦波波形Usinがキャリア波形Crを越えていない時間帯がオフ時間Toffに定められる。図6の(1)と比較して、オン時間Ton11〜Ton13はそれぞれ、オン時間Ton8〜Ton10よりわずかに大きくなっている。オン時間Ton11〜Ton13およびオフ時間Toffの切替えを示すU相PWM波形Upwmは、U相制御信号CUに反映される。
【0059】
すなわち、U相オフセット量IU0が正値であるので、電圧波形を正のU相PWM波形Upwmと負のU相矩形波形Usqrに切り替えて、図7の(2)に示されるU相制御信号CUが生成される。図5の(2)と同様に、U相制御信号CUは、位相0から180°までの正の半周期ではU相PWM波形Upwmとされ、オン時間Ton11〜Ton13およびオフ時間Toffの切替え制御タイミングが反映される。また、U相制御信号CUは、位相180°から360°までの負の半周期では負のU相矩形波形Usqrに切り替えられ、常にオン状態とされる。
【0060】
また、V相制御信号CVは、概ねU相制御信号CUの波形を120°遅らせた波形になる。
【0061】
さらに、図7の(1)で、W相正弦波波形Wsinの負の半波がキャリア波形Crよりも下方に越えている1つの時間帯がオン時間Ton14(図中の太い破線)に定められる。また、W相正弦波波形Wsinがキャリア波形Crをよりも下方に越えていない時間帯がオフ時間Toffに定められる。オン時間Ton14は、半周期の両端が少し欠けただけの広い時間幅になっている。オン時間Ton14およびオフ時間Toffの切替えを示すW相PWM波形Wpwmは、W相制御信号CWに反映される。
【0062】
すなわち、W相オフセット量IW0がゼロに近い負値であるので、電圧波形を正のW相矩形波形Wsqrと負のW相PMW波形Upwmに切り替えて、図7の(2)に示されるW相制御信号CWが生成される。W相制御信号CWは、位相240から60°までの正の半周期では正のW相矩形波形Wsqrとされて常にオン状態とされ、位相60°から240°までの負の半周期では負のW相PWM波形Wpwmとされてオン時間Ton14の切替え制御タイミングが反映される。
【0063】
これにより、各相の電圧波形は正負で意図的にわずかに不均等なものとなり、各相オフセット量IU0、IV0、IW0のわずかな正値および負値がちょうど除去される。
【0064】
さらに、いずれかの相のオフセット量がゼロであると、当該相の電圧波形を正および負の矩形波形に切り替える。これは、従来から行われている交流モータの矩形波制御に相当する。
【0065】
なお、図5〜図7は例であって、各相の正弦波波形の電圧振幅UEs、VEs、WEsは、各相のオフセット量IU0.IV0、IW0の大きさに応じ独立して設定される。また、各相のPWM波形pwmと矩形波形sqrの組み合わせも、各相のオフセット量IU0、IV0、IW0の正負に応じてそれぞれ設定される。また、キャリア波形Crの波形および周期も限定されない。例えば、キャリア波形Crの周期がさらに短いキャリア波発生回路を用いたときには、図の例よりもオン時間Tonが多数個に分かれて定められる。
【0066】
実施形態の交流モータの制御装置1によれば、図5〜図7で説明したように電流オフセットが発生しているときに、電流オフセットと同じ極性のPWM波形pwmおよび異なる極性の矩形波形sqrを交互に切り替える。さらに、オフセット量が大きいほど正弦波波形sinの電圧振幅Esを小さく設定し、オフセット量が小さいほど正弦波波形sinの電圧振幅Esを大きく設定し、正弦波波形sinがキャリア波形Crを越えている時間帯をオン時間Tonとする。これにより、電圧波形を正負で意図的に不均等にし、さらに、オフセット量の大小に合わせて不均等の比率を制御するので、オフセット量を過不足なく除去することができる。
【0067】
また、オフセット量の大きさに応じて正弦波波形sinの電圧振幅Esをフィードバック制御する。したがって、フィードバック制御により電圧振幅Esが適正化されて電流オフセットが確実に抑制され、略一定の動作状態ではオフセット量はゼロに収束する。
【0068】
次に、トルク検出手段17を有する別の実施形態の交流モータの制御装置10について説明する。図8は、別の実施形態の制御装置10の機能手段を説明するブロック図である。図2と比較すればわかるように、別の実施形態の制御装置10は、トルク検出手段17をさらに有している。図示されるように、トルク検出手段17は、三相の電流検出信号iu、iv、iw、三相の制御信号CU、CV、CW、および直流電源3の直流電圧Edcの情報を取得する。これにより、トルク検出手段17は、交流モータ9に入力される有効電力を演算でき、さらに有効電力を交流モータ9から出力される出力トルクToutに換算することができる。トルク検出手段17は、出力トルクToutの情報を電圧位相設定手段120に送出する。電圧位相設定手段120は、トルク指令値Treqに出力トルクToutが一致するようにフィードバック制御を行って電圧位相θvを設定する。
【0069】
別の実施形態によれば、電流オフセットIU0、IV0.IW0のフィードバック制御による除去に加えて、出力トルクToutのフィードバック制御を行うことで制御を一層高精度化でき、交流モータ9の良好な動作を実現できる。
【0070】
なお、別の実施形態の制御装置10内部のトルク検出手段17に代えて、トルクセンサを交流モータの出力軸に設け、実測した出力トルクToutの情報を制御装置10に取り込むようにしてもよい。
【0071】
また、実施形態の制御装置1、10の各機能手段11〜17、120は、マイコン1Mによる制御ロジックの実行によって機能する。したがって、本発明は、各機能手段11〜17、120をそれぞれ機能ステップとして実行する制御方法としても実施可能である。本発明は、交流モータ9の構造や巻線結線方式などを問わず実施でき、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、10:交流モータの制御装置 1M:マイコン
11:オフセット検出手段 12、120:電圧位相設定手段
13:スイッチング制御手段 14:電圧振幅設定手段
15:PWM手段(パルス幅変調手段) 16:波形切替え手段
17:トルク検出手段
2:インバータ回路
22UU、22UL:U相正側、U相負側スイッチング素子
22VU、22VL:V相正側、V相負側スイッチング素子
22WU、22WL:W相正側、W相負側スイッチング素子
24U、24V、24W:U相、V相、W相出力端子
25U、25V、25W:電源ケーブル
3:直流電源 3U:正側端子 3l:負側端子
4:ドライバ回路
9:交流モータ
91:ステータ 92〜94:電機子巻線 95:位相センサ
96:位相処理装置 97U、97V、97W:電流センサ
iu、iv、iw:電流検出信号 IU0、IV0、IW0:オフセット量
θ1、θ2:位相検出信号 θv:電圧位相 tmg:制御タイミング
Treq:トルク指令値 Tout:出力トルク
sin、Usin、Vsin、Wsin:正弦波波形
Es、UEs、VEs、WEs:電圧振幅
pwm、Upwm、Vpwm、Wpwm:PWM波形(パルス幅変調波形)
sqr、Usqr、Vsqr、Wsqr:矩形波形
Cr:キャリア波形
Ton1〜Ton14:オン時間
CU〜CW:制御信号 DUU〜DWL:通電制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの電機子巻線に電圧を印加したときに流れる各相の電流を検出する電流検出手段、およびロータの回転位相を検出する位相検出手段を備える交流モータを制御対象として、前記各相の電流のオフセット量を考慮して前記電圧波形を制御する交流モータの制御装置であって、
外部からのトルク指令値に基づいて、前記ロータの回転位相上で前記電圧を印加する電圧位相を設定する電圧位相設定手段と、
前記電流検出手段が検出した前記各相の電流からそれぞれ前記オフセット量を検出するオフセット検出手段と、
前記位相検出手段が検出した前記ロータの回転位相から得られる電気角の半周期ごとに、前記電圧波形をパルス幅変調波形または矩形波形に切り替え制御するタイミングを得るスイッチング制御手段と、
検出した前記オフセット量が正値であると前記電圧波形を正の前記パルス幅変調波形と負の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量が負値であると前記電圧波形を負の前記パルス幅変調波形と正の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量がゼロであると前記電圧波形を正および負の前記矩形波形に切り替える波形切替え手段と、
を有する交流モータの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、周波数および電圧振幅が可変の正弦波波形の前記電圧振幅を設定する電圧振幅設定手段と、所定周波数で所定電圧振幅の三角波状のキャリア波形と前記正弦波波形との大小比較結果に基づくオンオフ制御により前記パルス幅変調波形を生成するパルス幅変調手段とをさらに有する交流モータの制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量が大きいほど前記正弦波波形の電圧振幅を小さく設定し、前記オフセット量が小さいほど前記正弦波波形の電圧振幅を大きく設定し、
前記パルス幅変調手段は、前記正弦波波形が前記キャリア波形を越えている時間帯をパルス幅変調のオン時間とする交流モータの制御装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量と前記正弦波波形の電圧振幅との関係をあらかじめ保持している交流モータの制御装置。
【請求項5】
請求項2または3において、前記電圧振幅設定手段は、前記オフセット量の大きさに応じて前記正弦波波形の電圧振幅をフィードバック制御する交流モータの制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、出力トルクを検出するトルク検出手段をさらに有し、前記電圧位相設定手段は前記トルク指令値および検出された前記出力トルクに応じてフィードバック制御により前記電圧位相を設定する交流モータの制御装置。
【請求項7】
ステータの電機子巻線に電圧を印加したときに流れる各相の電流を検出する電流検出手段、およびロータの回転位相を検出する位相検出手段を備える交流モータを制御対象とし、前記各相の電流のオフセット量を考慮して前記電圧波形を制御する交流モータの制御方法であって、
外部からのトルク指令値に基づいて、前記ロータの回転位相上で前記電圧を印加する電圧位相を設定する電圧位相設定ステップと、
前記電流検出手段が検出した前記各相の電流からそれぞれ前記オフセット量を検出するオフセット検出ステップと、
前記位相検出ステップで検出した前記ロータの回転位相から得られる電気角の半周期ごとに、前記電圧波形をパルス幅変調波形または矩形波形に切り替え制御するタイミングを得るスイッチング制御ステップと、
検出した前記オフセット量が正値であると前記電圧波形を正の前記パルス幅変調波形と負の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量が負値であると前記電圧波形を負の前記パルス幅変調波形と正の前記矩形波形に切り替え、前記オフセット量がゼロであると前記電圧波形を正および負の前記矩形波形に切り替える波形切替えステップと、
を有する交流モータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85372(P2013−85372A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223463(P2011−223463)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】