説明

交通信号機用音響装置

【課題】交通信号機用音響装置において、実際の交通量に応じた音響の制御を可能とすること。
【解決手段】交通信号機用音響装置60は、信号制御装置30から取得した予測到達交通流や車両速度、滞留台数をもとに、歩行者用信号機40が青信号のときに、横断歩道1を横断する視覚障害者を誘導するために出力する音響の出力音量Vnを変更する。具体的には、取得した予測到達交通流や車両速度、滞留台数をもとに、交通車両による騒音の程度を表す指標値Cnを算出し、基準音量Vsにこの指標値Cnを乗じることで、次回音量Vnを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号機用音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の道路が交差する交差点には、歩行者用信号機が青表示のときに所定の音響を出力させることで、横断歩道を歩行する視覚障害者を安全に誘導する交通信号機用音響装置(以下、「付加装置」という)が設置されることが多い。ところが、この付加装置には、交通量が少ない夜間等の時間帯には、出力される音響が近所の住民にとって騒音となるといった問題があった。そこで、この問題を解決するため、歩行者用信号機の青点滅点灯(フリッカ)の回数が昼間と夜間とでは異なることを利用し、夜間の出力音量を無音とする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この技術を応用して、夜間に出力音量を小さくすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−36095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術は、何らかの方法で時間帯を特定し、特定した時間帯によって音響の出力音量を変更する技術である。この方法では、実際の交通量による騒音と音響の出力音量とに差が生じてしまう。すなわち、例えば、夜間に交通量が一時的に増加したときでも、出力音量は小さいままであり、音響が視覚障害者に聞こえ難くなってしまう。また、音量の大小ではなく、別の方法で解決する手法も望まれる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、交通信号機用音響装置において、実際の交通量に応じた音響の制御を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の形態は、
他交差点の流出交通流の情報を受信して自交差点の到着交通流を予測し、その予測到着交通流に基づいて自交差点の信号制御パラメータを変更して自交差点の信号を制御するプロファイル信号制御を行う信号制御装置が設置された交差点に設置される交通信号機用音響装置であって、
前記信号制御装置から自交差点の前記予測到達交通流の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記予測到着交通流の情報を用いて、出力する音響の音量及び/又は音高を調整する音響調整手段と、
を備えた交通信号機用音響装置である。
【0007】
この第1の形態によれば、交通信号機用音響装置では、プロファイル信号制御を行う信号制御装置から取得された自交差点の予測到達交通流の情報を用いて、出力する音響の音量及び/又は音高を調整する。つまり、自交差点の実際の交通量に応じて、出力する音響の音量及び/又は音高が変更される。これにより、一時的な交通量の増大や減少にも対応した適切な音響制御が可能となる。また、信号制御装置において信号制御に用いるために算出される自交差点の予測到達交通流を利用するため、実際の交通に応じた音響制御を容易に構成可能である。
【0008】
第2の形態として、第1の形態の交通信号機用音響装置であって、
自交差点を通過する車両の速度情報を取得する速度情報取得手段を更に備え、
前記音響制御手段は、前記予測到達交通流の情報、及び、前記速度情報取得手段により取得された速度情報を用いて前記調整を行う、
交通信号機用音響装置を構成しても良い。
【0009】
この第2の形態によれば、交通信号機用音響装置では、予測到達交通流の情報、及び、自交差点を通過する車両の速度情報を用いて、出力する音響の音量及び/又は音高を調整する。これにより、交差点の実際の交通に応じたより適切な音響制御が可能となる。
【0010】
第3の形態として、第2の形態の交通信号機用音響装置であって、
前記音響調整手段は、前記予測到達交通流の情報及び前記速度情報を用いて、交通車両による騒音の指標値を算出するために定められた所定の指標値算出演算を行って指標値を算出する指標値算出手段を有し、算出された指標値に応じて調整の程度を決定する、
交通信号機用音響装置を構成しても良い。
【0011】
この第3の形態によれば、交通信号機用音響装置では、予測到達交通流の情報及び速度情報を用いて算出した指標値に応じて、出力する音響の音量及び/又は音高の調整の程度を決定する。これにより、交通車両による騒音の程度に応じた、段階的な音響の制御が可能となる。
【0012】
第4の形態として、第3の形態の交通信号機用音響装置であって、
前記指標値算出手段は、自交差点の各方路それぞれに係る前記指標値を算出し、
前記音響調整手段は、自交差点の各方路それぞれに係る前記指標値のうち、所定の悪条件を満たす指標値に応じて調整の程度を決定する、
交通信号機用音響装置を構成しても良い。
【0013】
この第4の形態によれば、交通信号機用音響装置は、自交差点の各方路それぞれに係る指標値のうち、所定の悪条件を満たす指標値に応じて、出力する音響の音量及び/又は音高の調整の程度を決定する。
【0014】
第5の形態として、第1〜第4の形態の交通信号機用音響装置であって、
前記信号制御装置は、前記予測到着交通流を時系列に予測する装置であり、
前記音響調整手段は、歩行者信号が進行現示となる予定期間中の前記予測到達交通流の情報を用いて、前記調整を行う、
交通信号機用音響装置を構成しても良い。
【0015】
この第5の形態によれば、交通信号機用音響装置は、信号制御装置において時系列に予測された予測到達交通流のうち、歩行者信号が進行現示となる予定期間中の予測到達交通流を用いて、出力する音響の音量及び/又は音高の調整を行う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】交通信号機用音響装置(付加装置)が設置された交差点の平面図。
【図2】現示階梯表の一例。
【図3】信号制御装置及び交通信号機用音響装置(付加装置)の機能構成図。
【図4】交通データのデータ構成例。
【図5】信号制御データのデータ構成例。
【図6】指標値算出データのデータ構成例。
【図7】音量制御データのデータ構成例。
【図8】音響制御処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
[交差点における設置例]
図1は、本発明の交通信号機用音響装置(以下、「付加装置」という)が設置された交差点の概略平面図である。この交差点は二本の道路が交差する十字交差点であり、4つの方路それぞれに、交差点へ進入する車両を対象とした車両用信号機10及び車両感知器20が設置されている。また、4つの方路それぞれには横断歩道1が設けられており、横断歩道1それぞれの両端には、該横断歩道1の歩行者を対象とした歩行者用信号機40及びスピーカ50が設置されている。更に、交差点における交通信号を制御する信号制御装置30が設置されているとともに、横断歩道1を歩行する視覚障害者を音響にて誘導する付加装置60が設置されている。
【0019】
車両用信号機10は、制御対象の交通車両に対面するよう、路側に設置された柱の上部に設置されており、信号制御装置30によってその信号表示が制御される。
【0020】
車両感知器20は、例えば、超音波式や光学式であり、感知対象の道路を上方から俯瞰するよう、路側に設置された柱の上部に設置されており、設置位置を通過する車両の存在を感知する。この車両感知器20による感知信号は、随時、信号制御装置30に出力される。
【0021】
歩行者用信号機40は、制御対象の歩行者に対面するよう、路側に設置された柱の上部に設置されており、信号制御装置30によってその信号表示が制御される。
【0022】
スピーカ50は、歩行者用信号機40の近傍に設置され、付加装置60の制御によって所定の音響を出力する。
【0023】
信号制御装置30は、例えば、車両用信号機10が取り付けられた何れかの柱の下方やその近傍に設置され、自交差点の交通信号の全体制御を行う。具体的には、隣接交差点の信号制御装置30との間で流出交通量の情報を送受信することで、自交差点の交通信号を制御するプロファイル信号制御を行う。
【0024】
付加装置60は、例えば、歩行者用信号機40が取り付けられた何れかの柱の下方やその近傍に設置され、歩行者用信号機40が進行現示を表示している間、対応するスピーカ50から所定の音響を出力させることで、横断歩道1を歩行する視覚障害者を誘導する。なお、この付加装置60は、信号制御装置30に内蔵されることにしても良い。
【0025】
[現示]
図2は、この交差点の現示階梯表の一例を示す図である。図2において、実線矢印は通行権が与えられる車両の動線を示し、点線矢印は通行権が与えられる歩行者の動線を示している。この交差点では、一方の道路(主道路)の交通(車両及び歩行者)に通行権を与える現示1φと、他方の道路(従道路)の交通(車両及び歩行者)に通行権を与える現示2φとが交互に表示される2現示制御がなされる。なお、図2は一例であり、この2現示に限らず、3現示以上の多現示方式とすることも可能である。
【0026】
図3は、信号制御装置30、及び、付加装置60の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、信号制御装置30は、機能的には、処理部310と、通信部320と、記憶部330とを備えて構成される。
【0027】
処理部310は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部330に記憶されたプログラムやデータ、車両感知器20からの感知信号などに基づいて、信号制御装置30を構成する各部への指示やデータ転送を行い、信号制御装置30の全体制御を行う。また、処理部310は、信号制御プログラム331に従った信号制御処理を行う。
【0028】
信号制御処理では、車両感知器20からの感知信号をもとに、自交差点の各方路における車両速度を算出する。
【0029】
また、隣接交差点の信号制御装置30と流出交通流の情報の送受信を行うことで、自交差点の交通信号の制御を行う。具体的には、隣接交差点の信号制御装置30から受信した、該隣接交差点の予測流出交通流と、算出した車両速度或いは予め設定した車両速度、交差点距離とをもとに、自交差点の到達交通流を予測する。すなわち、該隣接交差点から自交差点への予測流出交通流を、該隣接交差点から自交差点までの所要時間だけ遅らせて、自交差点への予測される到達交通流とする。本実施形態では、図1に示した4方路の交差点を対象としているため、隣接交差点は4方路それぞれに存在する。従って、処理部310は、各方路について、到達交通流を予測する。なお、4方路に限らず、最大6方路まのでの予測を行うことができる。
【0030】
そして、予測到達交通流や信号制御パラメータをもとに、自交差点の各方路の滞留台数(待ち行列台数)や予測流出交通流を算出し、各方路への予測流出交通流を、該方路の先にある隣接交差点の信号制御装置30へ送信する。
【0031】
ここで、予測流出交通流は、予測対象とする所定の予測期間(例えば、現在時刻から200秒後までの200秒間)における、所定時間間隔(例えば、1秒間隔)の各時刻での流出台数を算出した時系列のデータである。そして、予測到達交通流は、予測流出交通流と同様に、所定の予測期間における所定時間間隔の各時刻での到着台数の時系列データである。
【0032】
自交差点の交通に関するデータは、交通データ333として記憶される。図4は、交通データ333のデータ構成の一例を示す図である。図4によれば、交通データ333は、自交差点の各方路について、予測到達交通流と、予測流出交通流と、車両速度と、滞留台数とを格納している、
【0033】
また、信号制御パラメータは、信号制御データ334として記憶される。図5は、信号制御データ334のデータ構成の一例を示す図である。図5によれば、信号制御データ334は、サイクル長と、スプリットと、オフセットとを格納している。
【0034】
通信部320は、例えば、SS無線装置等の無線或いは有線の通信装置で実現され、付加装置60や隣接交差点の信号制御装置30等の外部装置との通信を行う。この通信部320は、付加装置60と隣接交差点の信号制御装置30それぞれと通信を行う別々の通信装置で構成しても良いし、通信プロトコルが共通であれば、1台の装置で付加装置60と隣接交差点の信号制御装置30それぞれと切り替えて通信する構成としても良い。
【0035】
記憶部330は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で実現され、処理部310が信号制御装置30を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部310の作業領域として用いられ、処理部310が各種プログラムに従って実行した演算結果が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部330には、プログラムとして、信号制御プログラム331が記憶されるとともに、データとして、現示階梯表データ332と、交通データ333と、信号制御データ334とが記憶される。
【0036】
また、図3によれば、付加装置60は、機能的には、処理部610と、点灯状態検出部620と、通信部630と、記憶部640とを備えて構成される。
【0037】
処理部610は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部640に記憶されたプログラムやデータなどに基づいて、付加装置60を構成する各部への指示やデータ転送を行い、付加装置60の全体制御を行う。
【0038】
また、処理部610は、音響制御プログラム641に従った音響制御処理を行う。この音響制御処理では、自交差点の現示階梯表、及び、信号制御パラメータに従って、歩行者用信号機40が青信号の間、所定の音響を該当するスピーカ50から出力させる。
【0039】
例えば、図1に示した十字交差点において、図2に示した現示階梯表に従って交通信号が制御される場合、主道路の歩行者用信号機40が青表示となる階梯番号1の期間に、従道路を横断する横断歩道1のスピーカ50から所定の音響が出力され、従道路の歩行者用信号機40が青表示となる階梯番号6の期間に、主道路を横断する横断歩道1のスピーカ50から、所定の音響が出力される。このとき、進行方向毎に異なる音響を出力させる。
【0040】
ここで、自交差点の現示階梯表は、現示階梯表データ645として記憶されており、これは、信号制御装置30から取得した現示階梯表データ332である。また、信号制御パラメータは、信号制御データ646として記憶されており、これは、信号制御装置30から随時取得される信号制御データ334である。また、スピーカ50から出力される複数種類の音響のデータ(音データ)は、音響DB642として記憶されている。
【0041】
またこのとき、スピーカ50から出力させる音響の出力音量Vnを、次式(1)に従って決定する。
【数1】

【0042】
式(1)において、「Vs」は、予め定められる基準音量Vsである。「Cn」は、交差点の騒音の程度を表す指標値であり、渋滞時には次式(2a)で与えられ、それ以外には次式(2b)で与えられる。
【数2】

【0043】
上式(2a),(2b)において、「Tn」は、現在の交通量Tであり、「Ts」は、基準とする交通量Tである。「Jn」は、現在の滞留台数Jであり、「Js」は、基準とする滞留台数Jである。「Sn」は、現在の車両速度Sであり、「Ss」は、基準とする車両速度Sである。
【0044】
ここで、交通量Tは、信号制御装置30から取得される自交差点の予測到達交通流に基づく値であり、具体的には、所定の判定対象期間(例えば、現在時刻から5分後まで)の平均到達台数とする。また、滞留台数Jは、信号制御装置30から取得される滞留台数(待ち行列台数)である。また、車両速度Sは、信号制御装置30から取得される車両速度に基づく値であり、具体的には、所定期間(例えば、5分間)の平均速度とする。そして、基準交通量Ts、基準滞留台数Js、及び、基準車両速度Ssは、例えば、付加装置60の設置時や管理者が指定した所定タイミングでの値であり、任意の値に設定可能としても良い。
【0045】
ここで、交差点が渋滞時であるか否かは、次式(3)で与えられる判定値Gから判断する。
【数3】

【0046】
すなわち、判定値Gが「1」以上ならば「渋滞時」と判断し、式(2a)式から指標値Cnを算出し、判定値Gが「1」未満ならば「渋滞時ではない」と判断し、式(2b)式から指標値Cnを算出する。
【0047】
このとき、自交差点の方路それぞれについて指標値Cnを算出する。そして、これらの指標値Cnのうちから所定の悪条件(ここでは、最大の値とする)を満たすものを選択し、選択した最大指標値Cnを用いて、式(1)に従って次回音量Vnを算出する。
【0048】
更に、算出した次回音量Vnが、所定の下限音量Vminから上限音量Vmaxの範囲内であるか否かを判定し、範囲外の場合には、この範囲内となるよう、下限音量Vmin又は上限音量Vmaxに補正する。すなわち、次回音量Vnが下限音量Vmiを下回るならば、次回音量Vnを下限音量Vminに変更し、次回音量Vnが上限音量Vmaxを超えるならば、次回音量Vnを上限音量Vmaxに変更する。
【0049】
ここで、指標値Cnの算出に係るデータは指標値算出データ643として記憶され、音響の出力音量に関するデータは音量制御データ644として記憶される。
【0050】
図6は、指標値算出データ643のデータ構成の一例を示す図である。図6によれば、指標値算出データ643は、基準交通量Tsと、基準車両速度Ssと、基準滞留台数Jsと、現在交通量Tnと、現在車両速度Snと、現在滞留台数Jnと、指標値Cnとを格納している。
【0051】
図7は、音量制御データ644のデータ構成の一例を示す図である。図7によれば、音量制御データ644は、基準音量Vsと、下限音量Vminと、上限音量Vmaxと、次回音量Vnとを格納している。
【0052】
点灯状態検出部620は、歩行者用信号機40それぞれの各灯色の点灯状態(点灯や点滅、消灯)をを、歩行者用信号機40の駆動信号に基づいて検出し、検出結果を、随時、処理部610に出力する。
【0053】
通信部630は、例えば、SS無線装置等の無線或いは有線の通信装置で実現され、信号制御装置30等の外部装置との通信を行う。
【0054】
記憶部640は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で実現され、処理部610が付加装置60を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部610の作業領域として用いられ、処理部610が各種プログラムに従って実行した演算結果が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部640には、プログラムとして、音響制御プログラム641が記憶されるとともに、データとして、音響DB642と、指標値算出データ643と、音量制御データ644と、信号制御装置30から取得したデータとして、現示階梯表データ645と、信号制御データ646とが記憶される。
【0055】
[処理の流れ]
図8は、付加装置60において実行される音響制御処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部610が、音響制御プログラム641を実行することで実現される。
【0056】
図8によれば、処理部610は、先ず、基準交通量Ts、基準車両速度Ss、及び、基準滞留台数Jsを設定(初期設定)する(ステップA1)。そして、次回の歩行者用信号機40の青点灯の直前タイミングとなったならば(ステップA3:YES)、自交差点の方路それぞれを対象とした繰り返し処理(ループA)を行う。
【0057】
ループAでは、信号制御装置30から予測到達交通流のデータを取得し、対象方路の現在交通量Tnを算出する(ステップA5)。また、信号制御装置30から車両速度のデータを取得し、現在車両速度Snを算出する(ステップA7)。また、信号制御装置30から滞留台数のデータを取得し、現在滞留台数Jnを算出する(ステップA9)。
【0058】
次いで、式(3)で定義される判定値Gを算出し(ステップA11)、この判定値Gが「1」以上ならば(ステップA13:YES)対象方路が「渋滞時」と判定し、式(2a)に従って、指標値Cnを算出する(ステップA15)。一方、判定値Gが「1」未満ならば(ステップA13:NO)、対象方路が「渋滞ではない」と判定し、式(2b)に従って、指標値Cnを算出する(ステップA17)。ループAはこのように行われる。
【0059】
自交差点の全ての方路を対象とした繰り返し処理(ループA)を行って、各方路の指標値Cnを算出すると、算出した各方路の指標値Cnのうちから、最大のものを選択し(ステップA19)、選択した最大指標値Cnを用いて、式(1)に従って、次回音量Vnを算出する(ステップA21)。
【0060】
次いで、算出した次回音量Vnが、下限音量Vminから上限音量Vmaxの範囲内であるか否かを判定し、範囲外ならば、この範囲内となるように補正する(ステップA23)。
【0061】
そして、次回の歩行者用信号機40の青点灯タイミングとなったならば(ステップA25:YES)、決定した次回音量Vnで、該当するスピーカ50からの音響出力を開始させる(ステップA27)。その後、歩行者用信号機40の青点灯の終了タイミング(青点滅への移行タイミング)となったならば(ステップA29:YES)、音響の出力を終了する(ステップA31)。続いて、本処理を終了するか否かを判断し、終了しないならば(ステップA33:NO)、ステップA3に戻り、終了するならば(ステップA33:YWS)、本処理を終了する。
【0062】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、付加装置60は、信号制御装置30から取得した予測到達交通流や車両速度、滞留台数をもとに、歩行者用信号機40が青信号のときに、横断歩道1を横断する視覚障害者を誘導するために出力する音響の出力音量Vnを変更する。具体的には、取得した予測到達交通流や車両速度、滞留台数をもとに、交通車両による騒音の程度を表す指標値Cnを算出し、基準音量Vsにこの指標値Cnを乗じることで、次回音量Vnを決定する。これにより、実際の交通による騒音の程度に応じた適切な音響制御が可能となる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明の適用は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0064】
(A)音響の音高
例えば、音響の出力音量Vではなく、音響の周波数(音高)Fを変更することにしても良い。音声は、周波数Fが高いほど伝わり易いため、騒音が大きいほど、音響の周波数Fを高くする。具体的には、上述の実施形態において、「音量V」を「周波数F」に読み替えて適用することで実現可能である。すなわち、出力音量Vnの算出式(1)と同様に、基準周波数Fsに指標値Cnを乗じることで、次回周波数Fnを決定する。そして、処理部610が、所定の音響データに周波数変換処理を施してスピーカ50から出力させる。勿論、周波数別の音響データを音響DB642として記憶させておき、ここから読み出しても良い。但し、周波数Fは、人間の可聴周波数の範囲内で変更する。また、音量Vと周波数(音高)Fの両方を変更しても良い。
【0065】
(B)現在交通量Tn
また、指標値Cnの算出に用いる現在交通量Tnを、次に歩行者用信号機40が青表示となる予定期間における予測到達交通流に基づくものとしても良い。具体的には、次の歩行者用信号機40が青表示となる予定期間における各時刻の予測到達台数のうちの最大値や、この予定期間における予測到達台数の平均値とする。或いは、次に歩行者用信号機40が青表示となる予定期間における各時刻について、該当する予測到達台数を用いて指標値Cnを算出し、算出した時刻毎の指標値Cnのうち、所定の悪条件を満たす指標値Cnを、該方路の指標値Cnとしても良い。
【0066】
(C)指標値Cn
また、式(2a),(2b)で与えられる指標値Cnを、道路の車線数や制限速度、幹線道路か否かといった交差点の構成に応じて、交通量T、滞留台数J及び車両速度Sのうちの何れか一つ或いは二つのみを用いて与えられることにしても良い。例えば、指標値Cnは、次式(4)にて与えられることにしても良い。
【数4】

【符号の説明】
【0067】
10 車両用信号機、20 車両感知器、30 信号制御装置
1 横断歩道
40 歩行者用信号機、50 スピーカ
60 交通信号機用音響装置(付加装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他交差点の流出交通流の情報を受信して自交差点の到着交通流を予測し、その予測到着交通流に基づいて自交差点の信号制御パラメータを変更して自交差点の信号を制御するプロファイル信号制御を行う信号制御装置が設置された交差点に設置される交通信号機用音響装置であって、
前記信号制御装置から自交差点の前記予測到達交通流の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記予測到着交通流の情報を用いて、出力する音響の音量及び/又は音高を調整する音響調整手段と、
を備えた交通信号機用音響装置。
【請求項2】
自交差点を通過する車両の速度情報を取得する速度情報取得手段を更に備え、
前記音響制御手段は、前記予測到達交通流の情報、及び、前記速度情報取得手段により取得された速度情報を用いて前記調整を行う、
請求項1に記載の交通信号機用音響装置。
【請求項3】
前記音響調整手段は、前記予測到達交通流の情報及び前記速度情報を用いて、交通車両による騒音の指標値を算出するために定められた所定の指標値算出演算を行って指標値を算出する指標値算出手段を有し、算出された指標値に応じて調整の程度を決定する、
請求項2に記載の交通信号機用音響装置。
【請求項4】
前記指標値算出手段は、自交差点の各方路それぞれに係る前記指標値を算出し、
前記音響調整手段は、自交差点の各方路それぞれに係る前記指標値のうち、所定の悪条件を満たす指標値に応じて調整の程度を決定する、
請求項3に記載の交通信号機用音響装置。
【請求項5】
前記信号制御装置は、前記予測到着交通流を時系列に予測する装置であり、
前記音響調整手段は、歩行者信号が進行現示となる予定期間中の前記予測到達交通流の情報を用いて、前記調整を行う、
請求項1〜4の何れか一項に記載の交通信号機用音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113585(P2012−113585A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263223(P2010−263223)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】