説明

人工芝巻敷機

【課題】既に敷設した人工芝の上で全ての車輪が走行することなく、人工芝の巻き敷きを行える人工芝巻敷機を提供する。
【解決手段】人工芝72の巻き取りおよび巻き戻しを行う人工芝巻敷装置30を本体1の後部側に設けた。後輪19を左右方向の少なくとも二箇所に設けるとともに、その外面間寸法eを人工芝72の幅寸法Eに対して狭く構成し、前輪13は外面間寸法e内に納まるように構成した。人工芝巻敷装置を後進させて人工芝を巻取って行くときに、後輪は、常に人工芝を巻き取った跡のグランド上で走行でき、人工芝巻敷装置を前進させて人工芝を敷込んで行くときに、後輪は、常に人工芝を敷込む前のグランド上で走行できる。人工芝巻敷機側の荷重により人工芝が損傷される恐れはなくなり、さらには、人工芝巻敷装置が左右方向において上下で傾斜することがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば野球や他目的イベントなどを開催するドームにおいて、このドーム内のグランド上に人工芝を敷込んだり、敷込まれた人工芝を巻き取ったりするのに使用される人工芝巻敷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の人工芝巻敷機としては、たとえば次のような構成が提供されている。すなわち、本体の前部側に、人工芝の巻き取りおよび巻き戻しを行う人工芝巻敷装置が設けられ、また本体の前部で左右方向の少なくとも二箇所に前輪が設けられるとともに、本体の後部に前輪の外面間寸法内に納まる後輪が設けられている。そして、前輪の外面間寸法が、人工芝の幅寸法に対して狭く構成されている。また本体の一側に運転席が設けられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来構成によると、本体とともに人工芝巻敷装置を前進させて人工芝を巻取って行くときに、前輪は、常に人工芝を巻き取った跡のグランド上を走行し、そして、本体とともに人工芝巻敷装置を後進させて人工芝を敷込んで行くときに、前輪は、常に人工芝を敷込む前のグランド上を走行することになる。すなわち、既に敷設した人工芝の上で前輪が走行することなく、人工芝の巻き取りや敷込み(巻き敷き)を行えることになる。また本体の一側に運転席が設けられていることで、人工芝を巻き敷きする際に、人工芝の側端面を基準面として見ながら安易に操作し得る。
【特許文献1】特開平10−167582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ドーム内などで人工芝を巻き敷きするときに、人工芝を1本敷いたのち、人工芝巻敷機の向きを180度変えて次の人工芝を敷込んで行く場合があり、このとき運転席が逆になっていることで、既に敷設した人工芝の側端面を基準面としようとしても、この基準面は見え難いものとなり、既に敷設した人工芝の上で車輪が走行することがある。
【0005】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、既に敷設した人工芝の上で全ての車輪が走行することなく、人工芝の巻き敷きを行える人工芝巻敷機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の人工芝巻敷機は、人工芝の巻き取りおよび巻き戻しを行う人工芝巻敷装置を有する本体に、前輪と後輪と運転席とが設けられた人工芝巻敷機であって、人工芝巻敷装置は本体の後部側に設けられ、後輪は左右方向の少なくとも二箇所に設けられるとともに、その外面間寸法は人工芝の幅寸法に対して狭く構成され、前輪は後輪の外面間寸法内に納まるように構成されていることを特徴としたものである。
【0007】
したがって請求項1の発明によると、本体とともに人工芝巻敷装置を後進させて人工芝を巻取って行くときに、後輪は、常に人工芝を巻き取った跡のグランド上を走行し、そして、本体とともに人工芝巻敷装置を前進させて人工芝を敷込んで行くときに、後輪は、常に人工芝を敷込む前のグランド上を走行することになる。すなわち、既に敷設した人工芝の上で全ての車輪が走行することなく、人工芝の巻き取りや敷込みを行える。
【発明の効果】
【0008】
上記した本発明の請求項1によると、人工芝巻敷装置を後進させて人工芝を巻取って行くときに、後輪は、常に人工芝を巻き取った跡のグランド上で走行でき、そして人工芝巻敷装置を前進させて人工芝を敷込んで行くときに、後輪は、常に人工芝を敷込む前のグランド上で走行できる。すなわち、既に敷設した人工芝の上で全ての車輪を走行させることなく、人工芝の巻き取りや敷込みを行うことができ、したがって、人工芝巻敷機側の荷重により人工芝が損傷される恐れはなくなり、さらには、本体、すなわち人工芝巻敷装置が左右方向において上下で傾斜することがなくて、巻取り作業や敷込み作業を正確に行うことができ、しかも車幅を狭くして小型化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1を、図1、図2に基づいて説明する。
本体(車体)1は、車幅方向の左右フレーム2と、この左右フレーム2の中央部分から前方へ連設される前後フレーム3とにより、平面視でT字状に形成されている。そして前後フレーム3の前端部にはバランスウエイト4などが設けられる。
【0010】
前記左右フレーム2の左右中間部分(少なくとも二箇所)には、それぞれ軸受装置10を介して縦方向の換向軸11が設けられ、これら換向軸11の下部には、車輪軸12などを介して後輪(後輪タイヤ)19が設けられている。なお各後輪19は、それぞれ左右一対の二輪、合計四輪形式に構成されているが、左右方向で三箇所の六輪形式などであってもよい。そして、左右フレーム2の部分にはフロントアクスル装置(図示せず。)が配設されている。
【0011】
前後フレーム3の前端側には、軸受装置15を介して縦方向の換向軸16が設けられ、この換向軸16の下端には旋回台17が設けられる。そして旋回台17には、車輪軸18などを介して前輪(前輪タイヤ)13が設けられる。ここで前輪13は左右一対の二輪形式に構成され、その際に一方の前輪13は走行駆動装置(ホイールインモータなどで図示せず。)が設けられた駆動輪であり、他方の前輪13は従動輪とされている。そして、前後フレーム3の部分にはリヤアクスル装置20が配設されている。
【0012】
前後フレーム3の後部に運転席22が設けられ、この運転席22の前方にはハンドル23が設けられている。そして運転席22の周辺には、テンションアーム開閉用レバー24、サイドシフト用レバー25、ブーム昇降用レバー26、前後進用レバー27などが設けられている。なお、運転席22などは、視野の関係から高い位置に配置されており、そのために乗降用の梯子29が設けられている。
【0013】
前記車体1の後部側には、人工芝の巻き取りおよび巻き戻しを行う人工芝巻敷装置30が配設されている。すなわち、前記左右フレーム2の両端部分には、それぞれ支持部材31を介して左右方向のガイドロッド32が設けられ、これらガイドロッド32にはブーム33が、その基端を介して取り付けられている。その際にブーム33はガイドロッド32に対して、昇降動(上下揺動)自在ならびに左右摺動自在に取り付けられ、そしてブーム33間に左右方向の連結材34が設けられることで、昇降動ならびに左右摺動が一体に行われるよう構成されている。
【0014】
両ブーム33を昇降動させるために、左右フレーム2の下面に設けられたブラケット35とブーム33の先端部との間にブーム昇降用シリンダー36が設けられている。さらに両ブーム33を左右摺動させるために、左右フレーム2の上面に設けられたブラケット37と連結材34側のブラケット38との間にサイドシフト用シリンダー39が設けられている。
【0015】
両ブーム33の遊端(先端)には、マンドレル保持装置40が設けられる。すなわち、両ブーム33の遊端には上面側開放の凹状部41が形成され、この凹状部41を上方側から開閉自在なフック部材42が、左右方向の連結ピン43を介してブーム33側に揺動自在に取り付けられている。前記フック部材42の外面側に係止段部44が形成され、フック部材42が閉動姿勢において、前記係止段部44に対して係脱自在なロック部材45が、左右方向の枢支ピン46を介してブーム33側に揺動自在に取り付けられている。以上の41〜46などにより、マンドレル保持装置40の一例が構成される。
【0016】
両マンドレル保持装置40に保持されるマンドレル70は、中央鍔部70aと、この中央鍔部70aに対して内側に位置された軸部に軸受を介して遊転自在に外嵌される差し込み部70bと、中央鍔部70aに対して外側に位置される被保持部70cなどにより構成される。そして巻芯71の両端部に差し込み部70bを差し込み連結した状態で、被保持部70cを凹状部41に係止させることで、マンドレル保持装置40を介して両ブーム33間で巻芯71を支持自在としている。
【0017】
その際に、左右の両外側に位置される後輪19の外面間寸法eが、巻芯71に巻き取られる(巻芯71から巻き戻される)人工芝72の幅寸法Eに対して狭くなるように、すなわちe<Eとなるように構成されている。ここでe<Eの関係は、サイドシフト用シリンダー39により両ブーム33を左右摺動させて、いずれの摺動限になったときも、外面間寸法eの外側に幅寸法Eが位置されるように設定されている。また前輪13は、後輪19の外面間寸法e内に納まるように構成されている。
【0018】
前記両ブーム33の基部からはブラケット体50が上方へ連設され、これらブラケット体50には、左右方向ピン51を介してテンションアーム52が上下動自在に取り付けられている。そして、テンションアーム52の遊端(先端)間には、コンタクトロール53のロール軸54が回転自在に設けられ、このロール軸54に連動する巻取り用モータ55が、他方のテンションアーム52に設けられている。さらに、両テンションアーム52の遊端側とブラケット体50との間には、コンタクトロール53を上下動させるテンション用シリンダー56が設けられている。以上の31〜56などにより、人工芝巻敷装置30の一例が構成される。
【0019】
なお、左右フレーム2の一側端部分である進行方向(前進方向)Aに対して左側に操作台60が設けられる。
以下に、上記した実施の形態1における人工芝巻敷装置30の各部動作や、走行部動作を説明する。
【0020】
前記ブーム33は、ブーム昇降用シリンダー36の伸縮動によって昇降を行うが、この昇降はロール状人工芝72aの径に合わせて制御される。その際に、ブーム昇降用シリンダー36のテール側をタンクに開放し得る(下降側フリー)ことで、ロール径に応じてブーム33が昇降することになって、ロール状人工芝72aを接地したまま巻取りや敷込みを可能としている。
【0021】
前記ブーム33などは、サイドシフト用シリンダー39の伸縮動によって左右動を行うが、ここでストロークは大きく(たとえば左右各150mm)、以て多少のずれは調整可能である。前記テンションアーム52は、テンション用シリンダー56の伸縮動によって昇降して、コンタクトロール53を上下動させるが、その際にロール押圧を一定に保つ機能が付加されており、また押圧力は調整可能である。
【0022】
前記巻取り用モータ55の回転スピードは調整可能であり、また同期巻きができるように、人工芝72の張力が大きい場合は回転しない。そして後進により人工芝72が緩んで、その張力が小さくなると、巻取り用モータ55は回転して、後進(走行)した分だけ巻き取ることが可能となる。
【0023】
以下に、上記した実施の形態1において、グランド73上に敷設されている人工芝72を巻き取る作業を説明する。
(A)人工芝72に対する巻芯71のセット
これは人手により行われるもので、巻芯71に人工芝72の端部を二〜三回巻き付けたのち、巻芯71の両端部にマンドレル70を、その差し込み部70bを差し込んで連結することにより、人工芝72に巻芯71をセットし得る。
(B)人工芝巻敷装置30による巻芯71のピックアップ
まず人工芝72の幅方向中心に人工芝巻敷装置30の中心が位置しているか否かの確認を行う。そして中心がずれていたとき、サイドシフト用レバー25の操作によりサイドシフト用シリンダー39を伸縮動させ、両ブーム33を一体に左右移動させて中心を合わせる。この前後に、ロック部材45を上方へ解除揺動させるとともにフック部材42を上方へ開動させ、凹状部41を開放させる。この状態で、本体1とともに人工芝巻敷装置30を後進させて、マンドレル70の被保持部70cを凹状部41に係止させる。
【0024】
そして、巻方向スイッチを巻取り側にすることで、自動的にテンション用シリンダー56を伸展動させ、テンションアーム52を下方揺動(閉動)させてコンタクトロール53を、巻芯71に巻き付けているロール状人工芝72aに上方から当接させる。これにより、ロール状人工芝72aの緩みを防止し得る。
【0025】
次いで、フック部材42を下方へ閉動させた状態で、ロック部材45を下方へ揺動させ、その遊端を係止段部44に対して係止させることで、マンドレ保持装置40を介して両ブーム33間で巻芯71を保持しロックし得る。その後に、ブーム昇降用レバー26の操作によりブーム昇降用シリンダー36を伸展動させ、両ブーム33を一体に上方揺動(上昇)させることで巻芯71を持上げ得、以て巻芯71のピックアップを行える。
(C)人工芝巻敷装置30による巻芯71の巻取り
まず、巻取り用モータ55の速度調整ダイヤルで巻取り速度の調整を行う。このとき巻取り用モータ55は、人工芝72の張力が大きいため回らない。次いで、本体1とともに人工芝巻敷装置30を後進させ、人工芝72を巻取って行く。すなわち、後進することによって人工芝72が緩み、このとき巻取り用モータ55により強制回転しているコンタクトロール53が人工芝72に当接していることで、この人工芝72が巻芯71とともに回転され、以て人工芝72が巻き取られる。なおマンドレル70では、その差し込み部70bが巻芯71とともに回転される。
【0026】
このように、本体1とともに人工芝巻敷装置30を後進させ、人工芝72を巻取って行く際に、人工芝72の幅寸法Eに対して後輪19の外面間寸法eが狭いことから、後輪19は、常に人工芝72を巻き取った跡のグランド73上を走行することになる。したがって、人工芝巻敷機側の荷重により人工芝72が損傷される恐れはなくなり、さらには、本体1、すなわち人工芝巻敷装置30が左右方向において上下で傾斜することがなくて、巻取り作業を正確に行える。しかも、車幅を狭くして小型化を促進し得る。
(D)人工芝巻敷装置30からのロール状人工芝72aの取り外し
巻取りを終えたならば、本体1を走行させるなどして、ロール状人工芝72aを格納箇所(格納倉庫)へ運搬する。そして、まずロック部材45を上方へ解除揺動させ、フック部材42を上方へ開動させて凹状部41を開放させる。次いで、ブーム昇降用レバー26の操作によりブーム昇降用シリンダー36を収縮動させ、両ブーム33を一体に下方揺動(下降)させることで、巻芯71とともに下降されるロール状人工芝72aを着地し得る。
【0027】
そして、テンションアーム開閉用レバー24の操作によりテンション用シリンダー56を収縮動させ、テンションアーム52を上方揺動(開動)させて、コンタクトロール53をロール状人工芝72aに対して上方へ離間させる。この状態で本体1を前進させることにより、ロール状人工芝72aに対して人工芝巻敷装置30を外し得る。その後に、巻芯71の両端部からマンドレル70を抜出させることで、前述した(A)の工程へ戻る。
【0028】
以下に、上記した実施の形態1において、グランド73上に人工芝72を敷込む作業を説明する。
(E)人工芝巻敷装置30に対するロール状人工芝72aのセット
まず、ロール状人工芝72aにおける巻芯71の両端部にマンドレル70を、その差し込み部70bを差し込んで連結させる。次いで、ロール状人工芝72aの幅方向中心に人工芝巻敷装置30の中心が位置しているか否かの確認を行い、中心がずれていたとき、サイドシフト用レバー25の操作によりサイドシフト用シリンダー39を伸縮動させることで、両ブーム33を一体に左右移動させて中心を合わせる。この前後に、ロック部材45を上方へ解除揺動させるとともにフック部材42を上方へ開動させて、凹状部41を開放させる。そして、テンションアーム開閉用レバー24の操作によりテンション用シリンダー56を収縮動させ、テンションアーム52を上方揺動(開動)させて、コンタクトロール53を上方へ離間させる。
【0029】
この状態で、本体1とともに人工芝巻敷装置30を後進させて、マンドレル70の被保持部70cに凹状部41を係止させる。次いで、ブーム昇降用レバー26の操作によりブーム昇降用シリンダー36を伸展動させ、両ブーム33を一体に上方揺動(上昇)させることで、巻芯71を持上げ得、以てロール状人工芝72aのピックアップを行える。その後、フック部材42を下方へ閉動させ、ロック部材45を下方へ揺動させて係止段部44に係止させることで、マンドレ保持装置40を介して両ブーム33間で巻芯71を保持しロックし得、以て人工芝巻敷装置30にロール状人工芝72aをセットし得る。
(F)人工芝巻敷装置30による人工芝72の敷込み
セットを終えたならば、本体1を走行させるなどして、ロール状人工芝72aを敷込み開始位置へ運搬する。そして、ブーム昇降用シリンダー36を自動的に収縮動させ、両ブーム33を一体に下方揺動(下降)させることで、巻芯71とともに下降されるロール状人工芝72aを接地させる。次いで、巻方向スイッチを敷込み側にすることで自動的にテンション用シリンダー56を伸展動させ、テンションアーム52を下方揺動(閉動)させて、コンタクトロール53をロール状人工芝72aに上方から当接させる。これにより、ロール状人工芝72aの緩みを防止し得る。
【0030】
この状態で、本体1とともに人工芝巻敷装置30を前進させ、人工芝72を巻戻しながら敷込んで行く。このとき巻取り用モータ55により逆に強制回転しているコンタクトロール53がロール状人工芝72aに当接していることで、このロール状人工芝72aが巻芯71とともに回転され、以て人工芝72が巻き戻される。
【0031】
このように、本体1とともに人工芝巻敷装置30を前進させて人工芝72を敷込んで行く際に、人工芝72の幅寸法Eに対して後輪19の外面間寸法eが狭いことから、後輪19は、常に人工芝72を敷込む前のグランド73上を走行することになる。したがって、人工芝巻敷機側の荷重により人工芝73が損傷される恐れはなくなり、さらには、本体1、すなわち人工芝巻敷装置30が左右方向において上下で傾斜することがなくて、敷込み作業を正確に行える。
(G)人工芝巻敷装置30からの巻芯71の取り外し
敷込みを終えたならば、まずテンションアーム開閉用レバー24の操作によりテンション用シリンダー56を収縮動させ、テンションアーム52を上方揺動(開動)させてコンタクトロール53を上昇させる。次いで、ロック部材45を上方へ解除揺動させ、フック部材42を上方へ開動させて凹状部41を開放させる。この状態で本体1を前進させることで、着地状の巻芯71に対してブーム33を抜出し得、以て人工芝巻敷装置30から巻芯71を外し得る。
【0032】
その後、ブームフローティングスイッチをオフにし、ブーム昇降用レバー26の操作により、ブーム昇降用シリンダー36を伸展動させ、両ブーム33を一体に上方揺動(上昇)させる。そして本体1をロール状人工芝72aの収納箇所へと走行させることで、前述した(E)の工程へ戻る。なお、人工芝巻敷装置30から外した巻芯71の両端部からは、マンドレル70を抜出させる。
【0033】
以上の(A)〜(D)の工程により、ロール状人工芝72aを浮かせた状態で同期巻きにより人工芝72の巻き取り作業を行えるが、これは(E)〜(G)の工程の逆操作によりロール状人工芝72aを接地させた状態で人工芝72の巻取り作業を行ってもよい。また(E)〜(G)の工程により、ロール状人工芝72aを接地させた状態で人工芝72の敷込み作業を行えるが、これは(A)〜(D)の工程の逆操作によりロール状人工芝72aを浮かせた状態で人工芝72の敷込み作業を行ってもよい。
【0034】
次に、上記した実施の形態1において、直進時や横行時や斜行時の換向を説明する。後輪19を直進状態で固定させ、そして前輪13を、直進状態においてハンドル23の操作により前輪ステアで直進換向し得る。また、前輪13を直進状態から横行状態に切り換えかつ固定させ、そして後輪19を直進状態から横行状態に切り換える。この状態で、ハンドル23の操作により後輪ステアで横行換向し得る。さらに各前輪13と後輪19とを独立操作することで、直進斜行や横行斜行などのように、設定された角度での斜行を可能とする。
【0035】
上述したように実施の形態1では、ハンドル23の操作やレバー24〜27群の操作などにより各作動部を動作させることで、ドーム内などで人工芝72を巻き敷きし得る。その際に、たとえば図1の実線イに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して左側に既に人工芝72が敷設されているときには、運転席22に乗込んでハンドル操作やレバー操作を行うことで、既に敷設した人工芝の側端面を容易に十分に確認しながら、この側端面を基準面として巻き敷き作業を行える。
【0036】
また、たとえば図1の仮想線ロに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して右側に既に人工芝72が敷設されているときには、運転席22に乗込んでハンドル操作やレバー操作を行うことで、既に敷設した人工芝の側端面を容易に十分に確認しながら、この側端面を基準面として巻き敷き作業を行える。
【0037】
そして運転席22外でも操作可能に構成されている。すなわち、進行方向(前進方向)Aに対して左側に設けられた操作台60に乗込んでの操作などにより各作動部を動作させることで、ドーム内などで人工芝72を巻き敷きし得る。この場合、たとえば図1の実線イに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対する左側に既に敷設した人工芝72の側端面を容易に十分に確認しながら、この側端面を基準面として巻き敷き作業を行える。その際に操作台60に乗込んでの作業は、この操作台60に予め配設されているハンドルやレバー群を操作することにより可能となり、あるいは操作台60に乗込んでペンダントスイッチ61を操作することにより可能となる。
【0038】
また、たとえば図1の仮想線ロに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して右側に既に敷設されている人工芝72の側端面を基準面として巻き敷き作業を行うときには、左右フレーム2の他側端部分である進行方向(前進方向)Aに対する右側(両側)にも操作台60が設けられることで可能となる。
【0039】
上述した本発明の実施の形態1における操作台60を省略して、運転席22外の作業者が、人工芝巻敷機から離れてペンダントスイッチ61を操作することにより作業を可能としてもよい。
【0040】
以下に、本発明の実施の形態2を、図3、図4に基づいて説明する。なお、この実施の形態2において、前述した実施の形態1(図1、図2)と同一または同様な構成物には同一符号を付して、その詳細は省略する。
【0041】
すなわち、1は本体、2は左右フレーム、3は前後フレーム、4はバランスウエイト、10は軸受装置、11は換向軸、12は車輪軸、13は前輪、15は軸受装置、16は換向軸、17は旋回台、18は車輪軸、19は後輪、20はリヤアクスル装置、21は架台、22は運転席、23はハンドル、24はテンションアーム開閉用レバー、25はサイドシフト用レバー、26はブーム昇降用レバー、27は前後進用レバー、29は梯子、30は人工芝巻敷装置、31は支持部材、32はガイドロッド、33はブーム、34は連結材、35はブラケット、36はブーム昇降用シリンダー、37はブラケット、38はブラケット、39はサイドシフト用シリンダー、40はマンドレル保持装置、41は凹状部、42はフック部材、43は連結ピン、44は係止段部、45はロック部材、46は枢支ピン、50はブラケット体、51は左右方向ピン、52はテンションアーム、53はコンタクトロール、54はロール軸、55は巻取り用モータ、56はテンション用シリンダー、70はマンドレル、70aは中央鍔部、70bは差し込み部、70cは被保持部、71は巻芯、72は人工芝、72aはロール状人工芝、73はグランド、Aは進行方向、Eは人工芝72の幅寸法をそれぞれ示す。
【0042】
この実施の形態2においては、左右フレーム2の一方端部分である進行方向(前進方向)Aに対して右側に運転席22が設けられ、そして本体1の後部側に人工芝巻敷装置30を配設した形式とされている。その際に、左右の両外側に位置される後輪19の外面間寸法eが、巻芯71に巻き取られる(巻芯71から巻き戻される)人工芝72の幅寸法Eに対して狭くなるように、すなわちe<Eとなるように構成されている。ここでe<Eの関係は、サイドシフト用シリンダー39により両ブーム33を左右摺動させて、いずれの摺動限になったときも、外面間寸法eの外側に幅寸法Eが位置されるように設定されている。また前輪13は後輪19の外面間寸法e内に納まるように構成されている。
【0043】
上記した実施の形態2においては、本体1とともに人工芝巻敷装置30を後進させ、人工芝72を巻取って行く際に、人工芝72の幅寸法Eに対して後輪19の外面間寸法eが狭いことから、後輪19は、常に人工芝72を巻き取った跡のグランド73上を走行することになる。したがって、人工芝巻敷機側の荷重により人工芝72が損傷される恐れはなくなり、さらには、本体1、すなわち人工芝巻敷装置30が左右方向において上下で傾斜することがなくて、巻取り作業を正確に行える。しかも、車幅を狭くして小型化を促進し得る。
【0044】
また、本体1とともに人工芝巻敷装置30を前進させて人工芝72を敷込んで行く際に、人工芝72の幅寸法Eに対して後輪19の外面間寸法eが狭いことから、後輪19は、常に人工芝72を敷込む前のグランド73上を走行することになる。したがって、人工芝巻敷機側の荷重により人工芝72が損傷される恐れはなくなり、さらには、本体1、すなわち人工芝巻敷装置30が左右方向において上下で傾斜することがなくて、敷込み作業を正確に行える。
【0045】
上述したように実施の形態2では、ハンドル23の操作やレバー24〜27群の操作などにより各作動部を動作させることで、ドーム内などで人工芝72を巻き敷きし得る。その際に、たとえば図3の実線イに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して左側に既に人工芝72が敷設されているときには、運転席22に乗込んでハンドル操作やレバー操作を行うことで、既に敷設した人工芝の側端面を容易に十分に確認しながら、この側端面を基準面として巻き敷き作業を行える。
【0046】
また、たとえば図1の仮想線ロに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して右側に既に人工芝72が敷設されているときには、運転席22に乗込んでハンドル操作やレバー操作を行うことで、既に敷設した人工芝の側端面を容易に十分に確認しながら、この側端面を基準面として巻き敷き作業を行える。
【0047】
また、たとえば図3の仮想線ロに示されるように、進行方向(前進方向)Aに対して右側に既に敷設されている人工芝72の側端面を基準面として巻き敷き作業を行うときには、左右フレーム2の一側端部分である進行方向(前進方向)Aに対する左側に運転席22が設けられることで可能となる。
【0048】
上記した各実施の形態においては、後輪19として左右一対の二輪形式が示されているが、これは駆動輪のみの一輪形式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1を示し、人工芝巻敷機の平面図である。
【図2】同人工芝巻敷機の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態2を示し、人工芝巻敷機の平面図である。
【図4】同人工芝巻敷機の側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 本体(車体)
2 左右フレーム
3 前後フレーム
13 前輪(前輪タイヤ)
19 後輪(後輪タイヤ)
20 リヤアクスル装置
21 架台
22 運転席
23 ハンドル
24 テンションアーム開閉用レバー
25 サイドシフト用レバー
26 ブーム昇降用レバー
27 前後進用レバー
30 人工芝巻敷装置
33 ブーム
36 ブーム昇降用シリンダー
39 サイドシフト用シリンダー
40 マンドレル保持装置
52 テンションアーム
53 コンタクトロール
55 巻取り用モータ
56 テンション用シリンダー
60 操作台
70 マンドレル
71 巻芯
72 人工芝
72a ロール状人工芝
73 グランド
A 進行方向
e 後輪19の外面間寸法
E 人工芝72の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝の巻き取りおよび巻き戻しを行う人工芝巻敷装置を有する本体に、前輪と後輪と運転席とが設けられた人工芝巻敷機であって、人工芝巻敷装置は本体の後部側に設けられ、後輪は左右方向の少なくとも二箇所に設けられるとともに、その外面間寸法は人工芝の幅寸法に対して狭く構成され、前輪は後輪の外面間寸法内に納まるように構成されていることを特徴とする人工芝巻敷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−282395(P2006−282395A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116238(P2006−116238)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【分割の表示】特願平11−316152の分割
【原出願日】平成11年11月8日(1999.11.8)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】