説明

仕切り構造

【課題】潮の干満に影響されることなく、浄化水域を仕切り続けることができる仕切り構造を提供する。
【解決手段】沿岸に沿った海域に浄化水域2を形成するための仕切り構造1であって、前記浄化水域2を沖25側から仕切るように設けられるとともに、前記浄化水域2の満潮時の水位と略同一の高さに形成されて下端部が前記浄化水域2の海底3に接触し、かつ、潮の干満によって沖25及び岸26方向に移動可能な仕切り材8と、該仕切り材8の上端部に設けられて海面上に浮かぶ浮き体9と、前記仕切り材8の下端部に設けられて、前記仕切り材8の下端部が前記海底3に接触した状態を保つとともに、潮の干満によって海底3上を沖25及び岸26方向に移動する錘体19とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り構造に関し、特に、沿岸の海域に形成される浄化水域を沖側から仕切るための仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
海岸、河川、湖等の水域に設けられる汚泥等の流出入を防止する仕切り構造の一例として、水域の仕切りたい位置に汚泥防止膜を設け、この汚泥防止膜を水底に設置したアンカーにワイヤーを介して連結し、汚泥防止膜の内外での汚泥等の流出入を防止するように構成した仕切り構造が知られている。
【0003】
また、仕切り構造の他の例として、特許文献1には、膜体と、膜体の上縁部に連結されて膜体に浮力を与える浮体と、膜体の下縁部を水底に固定するアンカーと、膜体の上縁部を水底に向かって引っ張る係留体とを備え、膜体の内外での汚泥等の流出入を防止するように構成した仕切り構造が提案されている。
【特許文献1】特開2004−204609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような構成の仕切り構造を例えば海岸の浄化水域に適用した場合に、満潮時に水位が上昇すると、水位が上昇した分の海水が汚泥防止膜(膜体)と海底との間の隙間等を介して外側(沖側)から浄化水域内に流入することになるため、汚泥防止膜(膜体)の外側から流入する海水によって浄化効果が低減してしまう。また、浄化水域内で工事を行う場合に、工事によって生じた濁水が汚泥防止膜(膜体)と海底との間の隙間等を介して浄化水域内から外側に流出し、汚濁防止効果が低減してしまう。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、潮の干満に影響されることなく、浄化水域を沖側から仕切り続けることができて、浄化水域内から沖側への浄化水の流出、沖側から浄化水域内への海水の流入を阻止できる仕切り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、沿岸に沿った海域に浄化水域を形成するための仕切り構造であって、前記浄化水域を沖側から仕切るように設けられるとともに、前記浄化水域の満潮時の水位と略同一の高さに形成されて下端部が前記浄化水域の海底に接触し、かつ、潮の干満によって沖及び岸方向に移動可能な仕切り材と、該仕切り材の上端部に設けられて海面上に浮かぶ浮き体と、前記仕切り材の下端部に設けられて、前記仕切り材の下端部が前記海底に接触した状態を保つとともに、潮の干満によって海底上を沖及び岸方向に移動する錘体とを備えてなることを特徴とする。
【0007】
本発明による仕切り構造によれば、仕切り材は、満潮時の浄化水域の水位と略同一の高さに形成されるとともに、上端部に設けられた浮き体によって支持され、さらに下端部を海底に接触した状態に保つ錘体が潮の干満によって海底上を移動可能に構成されているので、潮の干満に追従して仕切り材が沖及び岸方向に移動し、仕切り材によって浄化水域を沖側から仕切り続けることができ、潮の干満に影響されることなく、浄化水域内から沖側への浄化水の流出、沖側から浄化水域内への海水の流入を防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の仕切り構造であって、前記仕切り材は、不透水性を有する膜材又は板材からなることを特徴とする。
【0009】
本発明による仕切り構造によれば、不透水性を有する膜材又は板材からなる仕切り材によって浄化水域が沖側から仕切られ、仕切り材を介して浄化水域内から浄化水が沖側に流出し、沖側から浄化水域内に海水が流入するのが阻止される。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の仕切り構造であって、前記海底は、表面が一定勾配の傾斜面に形成される砂層を有し、該砂層の表面上を前記錘体が沖及び岸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明による仕切り構造によれば、錘体は、海底の砂層の一定勾配の傾斜面からなる表面上を沖及び岸方向に移動することになるので、海底の表面形状によって錘体の移動が影響されることはなく、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に円滑に移動させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の仕切り構造であって、前記海底に、前記錘体の移動範囲を囲むように提体を設け、該提体によって囲まれる部分に前記砂層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明による仕切り構造によれば、浄化水域の海底に不陸が存在する場合に、提体によって囲まれた部分に砂層を形成し、この砂層の表面上を錘体が移動するように構成しているので、海底の状態に影響されることなく、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に円滑に移動させることが可能となる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1から4の何れかに記載の仕切り構造であって、前記沿岸に、一対の止水構造体を岸から沖に向かって延出するように、かつ互いに平行をなすように立設し、該一対の止水構造体間に前記仕切り材を沖及び岸方向に移動可能に設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明による仕切り構造によれば、一対の止水構造体と、一対の止水構造体間に設けられる仕切り材とによって囲まれる部分に浄化水域が形成されることになるので、沿岸の状態に影響されることなく、所望の浄化水域を形成することが可能となる。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の仕切り構造であって、前記一対の止水構造体と前記仕切り材との間には、前記仕切り材を沖及び岸方向に移動可能に支持する案内手段が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明による仕切り構造によれば、一対の止水構造体間に設けられている仕切り材は、案内手段によって沖及び岸方向に移動可能に支持されているので、潮の干満に追従して沖及び岸方向に円滑に移動することが可能となる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の仕切り構造であって、前記一対の止水構造体と前記仕切り材との間には、それらの間をシールするシール手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明による仕切り構造によれば、一対の止水構造体と仕切り材との間はシール手段によってシールされているので、仕切り材と一対の止水構造体との間を介して浄化水域内から沖側に浄化水が流出し、沖側から浄化水域内に海水が流入するのが防止されることになる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、仕切り材を、満潮時の浄化水域の水位と略同一の高さに形成するとともに、上端部に設けられた浮き体によって支持し、さらに、下端部を海底に接触した状態に保つ錘体を潮の干満によって海底上を移動させるように構成したので、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に移動させて、仕切り材によって浄化水域を沖側から仕切り続けることができる。従って、潮の干満に影響されることなく、浄化水域内から沖側への浄化水の流出、沖側から浄化水域内への海水の流入を防止できる。
【0021】
また、仕切り材は、不透水性を有する膜材又は板材から形成されているので、仕切り材を透過して浄化水域内から浄化水が沖側に流出し、沖側から浄化水域内に海水が流入するのが阻止される。
【0022】
さらに、錘体は、海底の砂層の一定勾配の傾斜面からなる表面上を沖及び岸方向に移動することになるので、海底の表面形状によって錘体の移動が影響されることはなく、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に円滑に移動させることができ、潮の干満に影響されることなく、浄化水域内から沖側への浄化水の流出、沖側から浄化水域内への海水の流入を防止できる。
【0023】
さらに、浄化水域の海底に不陸が存在する場合に、提体によって囲まれた部分に砂層を形成し、この砂層の表面上を錘体を移動させるように構成しているので、浄化水域の海底の状態に影響されることなく、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に移動させることができ、潮の干満に影響されることなく、浄化水域内から沖側への浄化水の流出、沖側から浄化水域内への海水の流入を防止できる。
【0024】
さらに、仕切り材を一対の止水構造体間に設けて、仕切り材と一対の止水構造体とによって囲まれる部分に浄化水域を形成しているので、沿岸の状態に影響されることなく、所望の浄化水域を形成することが可能となる。
【0025】
さらに、仕切り材を案内手段によって沖及び岸方向に移動可能に支持しているので、潮の干満に追従して仕切り材を沖及び岸方向に円滑に移動させることが可能となる。
さらに、一対の止水構造体と仕切り材との間をシール手段によってシールしているので、仕切り材と一対の止水構造体との間を介して浄化水域内から沖側に浄化水が流出し、沖側から浄化水域内に海水が流入するのを防止できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、本発明による仕切り構造の一実施の形態が示されていて、図1は仕切り構造の全体を示す平面図、図2は図1のA−A線に沿って見た概略断面図、図3は図2のB−B線に沿って見た概略断面図、図4は図1の仕切り材の下端部の概略図、図5は浄化水域の海底の変形例を示す概略断面図である。なお、図1、図2及び図5は、潮の満潮時と干潮時の状態を示している。
【0027】
すなわち、本実施の形態の仕切り構造1は、図1〜図3に示すように、沿岸に沿った海域に沖25側から仕切られた浄化水域2を形成するのに適用したものであって、一対の止水構造体7、7と、一対の止水構造体7、7間に沖25及び岸26方向に移動可能に設けられる仕切り材8と、仕切り材8を支持する浮き体9と、仕切り材8に鉛直方向下方(海底方向)への荷重を付与する錘体19とを備えている。
【0028】
一対の止水構造体7、7は、コンクリート等からなる壁状の構造物であって、浄化水域2の両側に岸26から沖25に向かって延出するように、かつ互いに平行をなすように立設されている。各止水構造体7は、上端が満潮時の浄化水域2の水面よりも上方に突出するように高さが設定され、満潮時に各止水構造体7を越えて沖25側から浄化水域2内に海水が流入するのを防止している。
【0029】
各止水構造体7は、少なくとも表面が不透水性を有する止水構造に形成され、各止水構造体7を透過して沖25側から浄化水域2内へ海水が流入し、又は各止水構造体7を介して浄化水域2内から沖25側に浄化水が流出するのを防止している。
【0030】
仕切り材8は、ゴム、樹脂等の不透水性を有する膜材又は板材(本実施の形態では膜材)から形成される帯状をなすものであって、一対の止水構造体7、7間に岸26に沿うように、かつ、鉛直方向を向くように設けられ、この仕切り材8と一対の止水構造体7、7とによって囲まれる部分に浄化水域2が形成されている。
【0031】
仕切り材8は、高さ(縦)寸法が満潮時の浄化水域2の水深と略同一長さに、幅(横)寸法が浄化水域2の全幅に亘る長さ(一対の止水構造体7、7間の長さ)に形成され、これにより、満潮時の浄化水域2が全高及び全幅に亘って沖25側から仕切られるようになっている。
【0032】
なお、仕切り材8は、図示はしないが、四方枠組みした枠体にその開口部を閉塞するように張り付け、枠体によって補強するように構成してもよい。
【0033】
浮き体9は、仕切り材8の上端部に所定の間隔ごとに設けられる複数の円柱状の浮き10と、隣接する浮き10、10間を連結するロープ11と、ロープ11の周囲に被嵌される筒状のカバー12とから構成され、この浮き体9によって仕切り材8の上端が浄化水域2の水面上に浮いた状態に保たれている。
【0034】
仕切り材8の幅方向の両端にはシール手段13が設けられ、このシール手段13によって仕切り材8の幅方向の両端と各止水構造体7の内面(浄化水域2側の面)との間が仕切り材8の全高に亘ってシールされている。
【0035】
シール手段13としては、例えば、不透水性を有する材料からなる刷毛13aが挙げられ、この刷毛13aを先端部が各止水構造体7の内面に接触するように、仕切り材8の幅方向の両端に取り付けることで、仕切り材8の幅方向の両端と各止水構造体7の内面との間がシールされ、それらの間を介して浄化水域2内から沖25側に浄化水が流出し、沖25側から浄化水域2内に海水が流入するのが防止される。
【0036】
仕切り材8の幅方向の両端の上端部と各止水構造体7の上端部との間には案内手段15が設けられ、この案内手段15によって仕切り材8が一対の止水構造体7、7間を沖25及び岸26方向に移動可能に支持されている。
【0037】
案内手段15は、例えば、各止水構造体7の上端部に各止水構造体7の全長に亘って張設されるガイドロープ16と、ガイドロープ16に移動可能に取り付けられるリング状の支持部材17と、支持部材17と仕切り材8の幅方向の両端の上端部との間を連結する連結ロープ18とから構成される。案内手段15の支持部材17がガイドロープ16上を移動することにより、仕切り材8が一対の止水構造体7、7間を仕切った状態で沖25及び岸26方向に円滑に移動することになる。
【0038】
支持部材17と仕切り材8とを連結する連結ロープ18には伸縮自在のものが使用され、潮の干満による浄化水域2の水位の変動に影響されることなく、仕切り材8の上端を浄化水域2の水面上に常時位置させ、仕切り材8によって浄化水域2を沖25側から仕切り続けている。
【0039】
なお、案内手段15のガイドロープ16上にストッパー部を設け、このストッパー部に支持部材17を当接させることにより、仕切り材8の沖25及び岸26方向への移動範囲を規制するように構成してもよい。
【0040】
錘体19は、仕切り材8の下端部に所定の間隔ごとに設けられる鉛等からなる複数の錘20を備え、この複数の錘20によって仕切り材8に鉛直方向下方への荷重が付与され、この荷重によって仕切り材8の下端部が浄化水域2の海底3に押し付けられる。
【0041】
錘20は、潮の干満によって仕切り材8が沖25及び岸26方向に移動したときに、仕切り材8に追従して浄化水域2の海底3上を滑るように沖25及び岸26方向に移動する。これにより、潮の干満に影響されることなく、仕切り材8の下端部を浄化水域2の海底3に押し付けることができる。
【0042】
仕切り材8の下端部には、図4に示すように、不透水性を有する材料からなる刷毛状のシール部材14が隣接する錘20、20間を閉塞するように設けられる。これにより、仕切り材8の下端と浄化水域2の海底3との間が確実にシールされ、仕切り材8の下端と海底3との間を介して浄化水域2内から沖25側へ浄化水が流出し、沖25側から浄化水域2内に海水が流入するのが防止される。
【0043】
浄化水域2の海底3は、一定勾配の平坦な傾斜面を有するものであれば修正する必要はないが、好ましくは、海底3に所定の厚みの砂層4を設け、この砂層4の表面5を一定勾配の平坦な傾斜面に形成する修正を行う。このような構成の砂層4を海底3に設けることにより、錘体19の錘20を円滑に沖25及び岸26方向に移動させることができるとともに、仕切り材8の下端と海底3との間を確実にシールすることができる。
【0044】
なお、浄化水域2の海底3に不陸が存在する場合には、図5に示すように、仕切り材8及び錘体19の移動範囲を囲むように提体6を設け、この提体6の内側に表面5が一定勾配の平坦な傾斜面からなる所定の厚みの砂層4を設ければよい。
【0045】
次に、上記のように構成した仕切り構造1の作用について説明する。
まず、図1及び図2に示すように、潮の干満によって沖25側の水位が変化すると、その水位の変化に追従して仕切り材8が沖25及び岸26方向に移動し、浄化水域2の水位が沖25側の水位と同一となり、浄化水域2の水位と沖側25側の水位とが平衡状態に保たれる。
【0046】
つまり、満潮時には、沖25側の水位の変化(上昇)に追従して仕切り材8が岸26方向に移動し、沖25側の水位に浄化水域2の水位が一致した位置に仕切り材8が停止する。この場合、仕切り材8の高さ方向の寸法は、満潮時の浄化水域2の水位と略同一長さに設定されるとともに、仕切り材8の上端は浮き体8によって浄化水域2の水面上に保持され、下端は錘体19によって海底3に接触した状態に保持されているので、満潮時の浄化水域2を全高に亘って仕切ることができ、浄化水域2内から沖25側に浄化水が流出し、又は沖25側から浄化水域2内に海水が流入するようなことはなく、浄化水域2を仕切り続けることができる。
【0047】
また、干潮時には、沖25側の水位の変化(低下)に追従して仕切り材8が沖25方向に移動し、沖25側の水位に浄化水域2の水位が一致した位置に仕切り材8が停止する。この場合、図中、A1の部分の体積(満潮時に増加した分の体積)がA2の部分に移動することになるので、仕切り材8は、上端が下端よりも沖25側に位置した傾斜状態となるが、仕切り材8の上端は浮き体9によって浄化水域2の水面上に保持され、下端は錘体19によって海底3に接触した状態に保持されているので、仕切り材8を介して浄化水域2内から沖25側に浄化水が流出したり、沖側25から浄化水域2内に海水が流入したりすることはなく、浄化水域2を仕切り続けることができる。
【0048】
上記のように構成した本実施の形態による仕切り構造1にあっては、潮の干満によって仕切り材8を沖25及び岸26方向に移動させるとともに、仕切り材8の上端を浮き体9によって浄化水域2の水面上に保持し、さらに、錘体19によって仕切り材8の下端を海底3に接触した状態に保持するようにしたので、潮の干満に影響されることなく、浄化水域2を仕切り材8によって仕切り続けることができ、浄化水域2内から沖25側に浄化水が流出したり、沖25側から浄化水域2内に海水が流入したりするのを防止できる。
【0049】
従って、浄化水域2の水質や底質を浄化する場合に、浄化水域2内に沖25側に海水が流入して浄化効果を低減させるようなことはなく、また、浄化水域2で工事を行っている場合に、浄化水域2で発生した濁水が沖25側に流出して汚濁防止効果を低減させるようなこともなく、浄化水域2としての機能を長期的に維持することができる。
【0050】
なお、上記の説明においては、沿岸に一対の止水構造体7、7を設けるとともに、一対の止水構造体7、7間に仕切り材8を移動可能に設けて、一対の止水構造体7、7と仕切り材8とによって囲まれる部分に浄化水域2を形成したが、止水構造体7を設けずに、仕切り材8のみによって浄化水域2を形成するように構成してもよい。その場合には、仕切り材8を沿岸の海域に円弧状に設け、仕切り材8と岸26との間に浄化水域2を形成すればよい。
【0051】
また、上記の説明においては、仕切り材8を一対の止水構造体7、7間に設けて、仕切り材8と各止水構造体7との間に設けた案内手段15によって仕切り材8の移動範囲を規制したが、満潮時の仕切り材8の位置と干潮時の仕切り材8の位置との中間地点の海底3にアンカーを設置し、各アンカーにワイヤーロープを介して仕切り材8の下端部を連結し、ワイヤーロープによって仕切り材8の移動範囲を規制するように構成してもよい。
【0052】
さらに、上記の説明においては、本発明による仕切り構造1を海の沿岸に浄化水域2を形成する場合に適用したが、水の移動が生じる河川、湖沼等に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による仕切り構造の一実施の形態を示した概略平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿って見た概略断面図である。
【図3】図2のB−B線に沿って見た概略断面図である。
【図4】図1の仕切り材の下端部の概略図である。
【図5】図1の海底の変形例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 仕切り構造
2 浄化水域
3 海底
4 砂層
5 表面
6 提体
7 止水構造体
8 仕切り材
9 浮き体
10 浮き
11 ロープ
12 カバー
13 シール手段
13a 刷毛
14 シール部材
15 案内手段
16 ガイドロープ
17 支持部材
18 連結ロープ
19 錘体
20 錘
25 沖
26 岸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沿岸に沿った海域に浄化水域を形成するための仕切り構造であって、
前記浄化水域を沖側から仕切るように設けられるとともに、前記浄化水域の満潮時の水位と略同一の高さに形成されて下端部が前記浄化水域の海底に接触し、かつ、潮の干満によって沖及び岸方向に移動可能な仕切り材と、
該仕切り材の上端部に設けられて海面上に浮かぶ浮き体と、
前記仕切り材の下端部に設けられて、前記仕切り材の下端部が前記海底に接触した状態を保つとともに、潮の干満によって海底上を沖及び岸方向に移動する錘体とを備えてなることを特徴とする仕切り構造。
【請求項2】
前記仕切り材は、不透水性を有する膜材又は板材からなることを特徴とする請求項1に記載の仕切り構造。
【請求項3】
前記海底は、表面が一定勾配の傾斜面に形成される砂層を有し、該砂層の表面上を前記錘体が沖及び岸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の仕切り構造。
【請求項4】
前記海底に、前記錘体の移動範囲を囲むように提体を設け、該提体によって囲まれる部分に前記砂層を設けたことを特徴とする請求項3に記載の仕切り構造。
【請求項5】
前記沿岸に、一対の止水構造体を岸から沖に向かって延出するように、かつ互いに平行をなすように立設し、該一対の止水構造体間に前記仕切り材を沖及び岸方向に移動可能に設けたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の仕切り構造。
【請求項6】
前記一対の止水構造体と前記仕切り材との間には、前記仕切り材を沖及び岸方向に移動可能に支持する案内手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の仕切り構造。
【請求項7】
前記一対の止水構造体と前記仕切り材との間には、それらの間をシールするシール手段が設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の仕切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114819(P2009−114819A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292323(P2007−292323)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】