説明

付着物除去具

【課題】衣類、布団、カーテン等に付着している粉塵、塵埃等の付着物を効率的に除去できると共に、付着物に含まれるアレルゲン物質を効率的に不活性化させることが可能な付着物除去具を提供する。
【解決手段】付着物除去具の筐体10の平面部中央に、複数列に亘ってブラシ毛11が植設されており、ブラシ毛11の各列の間の領域に筐体10内部に空気を吸い込むための吸込口12が形成されている。また、ブラシ毛11の植設領域を取り囲むように、複数のイオン発生部13が配設されている。付着物除去具の筐体10の内部には、ファンが配置されており、吸込口12とファンとの間にはフィルタが収納されている。更に、筐体10の吸込口12と対向する箇所には、空気の吹出口が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類、布団等に付着している粉塵、塵埃等の付着物を除去する付着物除去具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類、布団、カーテン、ソファー、車両内の座席等に付着した花粉、カビ胞子、ハウスダスト等のアレルゲン物質を含む粉塵、塵埃等の付着物を除去する場合、手、ブラシ、ハタキ等で叩き落としたり、掃除機で吸い取る等の方法が採られていた。
【0003】
しかし、手やブラシ等で叩くだけでは、付着物が周囲に飛び散るだけであり、叩き落とされた付着物が再度衣類等に付着したり、床に落ちた付着物が舞い上がったりする。このような付着物にアレルゲン物質が含まれる場合、アレルギー疾患を有する患者にとっては、辛い空気環境となってしまう。
【0004】
また、掃除機は、衣類等に対して直接使用するにはサイズが大きいので取り扱いが不便であり、衣類等に付着した付着物を効率的に吸い取ることは非常に困難である。また、衣類を床に置いた状態で掃除機を用いるという方法もあるが、掃除機の吸引部は一般的に床や畳等の硬質な材質の物に適用するために形成されているので、衣類の生地を傷めたり、衣類そのものが掃除機内に吸い込まれて取れなくなる等、様々な不具合が発生する虞がある。
【0005】
そこで、操作し易いように小型化され、人の体や衣服に付着した花粉等の付着物を容易に除去できる装置が提案されている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1,2に開示された装置は、衣服等に付着している付着物をブラシで叩いて剥がした後、吸引して捕集するので、叩き落とした付着物が周囲に飛び散ったり、衣服等に再度付着したりせずに確実に除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−159815号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、付着物は静電気を帯びた状態で衣類等に付着している場合が多いので、特許文献1,2に開示された装置のようにブラシで叩くだけでは効率よく衣類等から付着物を除去することは困難である。
【0008】
また、特許文献1,2に開示されたような装置は、吸引した付着物をフィルタによって捕集するので、フィルタが付着物によって目詰まりした場合に、フィルタを掃除するか、新しいフィルタに取り替える必要がある。このような構成の装置では、フィルタの掃除又は取り替え作業の過程で、付着物がフィルタからこぼれ落ちたり、周囲に飛び散ったりする虞がある。もし、フィルタに捕集された付着物がアレルゲン物質を含むものであり、使用者が花粉症等のアレルギー疾患を持つ人であった場合、フィルタの掃除又は取り替え作業が原因でアレルギー症状を引き起こしてしまう可能性がある。
【0009】
また、特許文献1,2に開示された装置では、ファンが発生させる気流によって付着物がフィルタに捕集されるので、ファンが停止している状態では、捕集された付着物がフィルタから容易にこぼれ落ちてしまう。更に、特許文献1,2に開示された装置は小型の装置であるので、使用者が少しの振動を発生させた場合であっても、装置にとっては大きな振動となり、捕集された付着物がフィルタからよりこぼれ落ち易くなる。このような状況では、フィルタが目詰まりするまでもなく、フィルタに少しでも付着物が捕集されていれば、花粉症等のアレルギー疾患を持つ使用者が装置を使用することによってアレルギー症状を引き起こしてしまう可能性もある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、対象物(衣類、布団、カーテン、ソファー、車両内の座席等)に付着している付着物(花粉、カビ胞子、ハウスダスト等のアレルゲン物質を含む粉塵、塵埃等)を効率的に除去することが可能な付着物除去具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る付着物除去具は、対象物に付着している付着物を前記対象物から除去する付着物除去具において、筐体の一面に植設された複数列のブラシ毛と、該ブラシ毛の各列間の領域に設けられた空気の吸込口と、該吸込口から筐体内部に空気を吸い込むためのファンと、該ファンによって吸い込まれた空気が通過するフィルタと、前記筐体に設けられ、イオンを発生させて筐体外部へ放出するイオン発生部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、筐体の一面に複数列に亘って植設されたブラシ毛が、対象物に付着している付着物を叩いて剥離させる。また、ブラシ毛の各列間の領域に空気の吸込口が設けられており、ファンが発生させる気流によって、剥離された付着物が空気と共に筐体内部に吸い込まれる。また、筐体内部に吸い込まれた空気がフィルタを通過することにより、空気と共に吸い込まれた付着物(空気中の粉塵)がフィルタによって除去される。更に、筐体の外部方向へイオンを放出するイオン発生部が設けられており、付着物が静電気によって対象物に付着している場合であっても、付着物の静電気がイオンの働きによって除去されるので、付着物を効率よく除去できる。
【0013】
本発明に係る付着物除去具は、前記イオン発生部が発生させるイオンは、H+ (H2 O)(mは自然数)で表される正イオンと、O2-(H2 O)(nは自然数)で表される負イオンとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、H+ (H2 O)(mは自然数)で表される正イオンと、O2-(H2 O)(nは自然数)で表される負イオンとを発生させる。H+ (H2 O)(mは自然数)及びO2-(H2 O)(nは自然数)の組成を有する正負イオンには、特開2006−218329号公報に示されるように、アレルゲン物質を不活性化する効能がある。よって、対象物から付着物を剥離する際に、付着物の静電気を除去することによって効率よく剥離できると共に、付着物に含まれるアレルゲン物質を不活性化することによりアレルゲン物質により誘発されるアレルギー反応を抑制できる。また、フィルタに捕集された付着物にアレルゲン物質が残存する場合であっても、フィルタに捕集された状態のアレルゲン物質の不活性化が可能となる。
【0015】
本発明に係る付着物除去具は、前記イオン発生部は、発生させたイオンを、前記ブラシ毛が設けられた筐体の一面に対して交差する方向に放出するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ブラシ毛が設けられた一面に対して交差する方向にイオンが放出されるので、ブラシ毛によって対象物から付着物を剥離させる際に、対象物及び付着物に対して効率よくイオンを照射できる。よって、付着物の静電気を効率よく除去できると共に、付着物に含まれるアレルゲン物質を効率よく不活性化させることができる。
【0017】
本発明に係る付着物除去具は、前記イオン発生部は、発生させたイオンを筐体外部へ放出する状態と、筐体内部へ放出する状態との切り替えが可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、イオンを筐体外部へ放出する状態と、筐体内部へ放出する状態との切り替えが可能である。イオンを筐体内部へ放出できることにより、イオンをフィルタに効率よく照射することができ、フィルタに捕集された付着物に含まれるアレルゲン物質を効率よく不活性化できる。よって、フィルタに捕集された付着物が再び筐体外部へ漏れ出るような状況が生じた場合であっても、アレルゲン物質によるアレルギー症状の発生を防止できる。
【0019】
本発明に係る付着物除去具は、前記イオン発生部は、発生させたイオンを放出する放出面と、該放出面が筐体外部を向く状態と筐体内部を向く状態とを、回転することによって切り替えられる回転軸とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、回転軸を回転させることによって、イオンを放出する放出面が筐体外部を向く状態と筐体内部を向く状態とを切り替えることができる。よって、イオンの放出方向を容易に切り替えることができる。
【0021】
本発明に係る付着物除去具は、前記吸込口を塞ぐ蓋部を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、空気の吸込口に蓋部が設けてあるので、蓋部によって吸込口を塞ぐことにより、フィルタに捕集された付着物がフィルタからこぼれ落ちた場合であっても、筐体外部へ漏れ出ることを防止できる。また、吸込口を塞ぐことにより、フィルタに照射されたイオンが筐体外部へ漏れるのを防止できるので、フィルタに捕集されたアレルゲン物質をより確実に不活性化させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、対象物に付着している付着物を効率的に除去できる。また、付着物に含まれるアレルゲン物質を効率よく不活性化させることができるので、フィルタに捕集された付着物が再び空気中に漏れ出るような状況が生じた場合であっても、アレルゲン物質によるアレルギー症状の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1の付着物除去具の縦断面図である。
【図2】実施形態1の付着物除去具のブラシ毛側から見た模式図である。
【図3】イオン発生部の縦断面図である。
【図4】イオン発生部の放出面側から見た模式図である。
【図5】付着物除去具の掃除方法を示す図である。
【図6】実施形態2の付着物除去具のブラシ毛側から見た模式図である。
【図7】実施形態3の付着物除去具のブラシ毛側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る付着物除去具を、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0026】
(実施形態1)
以下に、実施形態1の付着物除去具について説明する。図1は実施形態1の付着物除去具の縦断面図、図2は実施形態1の付着物除去具のブラシ毛側から見た模式図、図3はイオン発生部の縦断面図、図4はイオン発生部の放出面側から見た模式図である。
【0027】
本実施形態1の付着物除去具1は、略矩形の平面部を有する筐体10を有する。筐体10は中空に構成されている。筐体10の平面部中央には、ブラシ毛11が複数列に亘って植設されている。また、ブラシ毛11は、各列において、所定量のブラシ毛を1つの束とし、各束間で所定間隔を保って植設されている。ブラシ毛11は、繊維状の獣毛、植物毛、樹脂毛等であるが、繊維状の毛に限定されず、例えば、針金のような金属毛を用いても良い。
【0028】
また、筐体10の平面部には、ブラシ毛11の各列間の領域に、空気を吸い込むための複数の吸込口12が設けられている。本実施形態1の吸込口12は、図2における左右方向に長いスリット状であるが、例えば上下方向に長いスリット状でもよい。また、吸込口12は、スリット状ではなく、ブラシ毛11の各束間の領域に複数の小孔がマトリクス状に設けられていてもよい。
【0029】
更に、筐体10の平面部には、ブラシ毛11が植設されている領域を取り囲むように、複数のイオン発生部13が配設されている。図2では、6つのイオン発生部13が設けられているが、十分な量のイオンが発生できる構成であれば、イオン発生部13の数は6つに限らない。
【0030】
イオン発生部13のそれぞれは、所謂空気イオン(大気イオン)を発生させる。また、イオン発生部13のそれぞれは、発生させた空気イオンを放出する放出面を有しており、それぞれの放出面が筐体10の外部方向を向いた状態で筐体10に取り付けられている。その結果、イオン発生部13は、発生させた空気イオンを、筐体10の外部方向へ、より具体的には、筐体10の平面部に対して交差(直交)する方向へ放出できる。
【0031】
イオン発生部13が発生させる空気イオンは、H+ (H2 O)m(mは任意の自然数)及びO2-(H2 O)(nは任意の自然数)の組成を有する正負イオンである。即ち、イオン発生部13は、正イオンとして、水素イオン(H+ )の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンを発生させ、負イオンとして、酸素イオン(O2-)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンを発生させる。なお、このような組成を有する正負イオンは、アレルゲン物質に作用してアレルゲン物質を不活性化させることができる。これにより、アレルゲン物質より誘発されるアレルギー反応を抑制できる。
【0032】
イオン発生部13は、図3及び図4に示すように針電極13a及び対向電極13bを有する放電素子を使用している。イオン発生部13は、略直方体状に形成された筐体130の一側面に、図4に示すように、略円形の2つの開口部が長手方向に並べて形成されている。そして、イオン発生電極としての針電極13a,13aが、それぞれの先端を開口部の中央に位置するように設けられている。また、針電極13a,13aの先端を取り囲むように、筐体130に形成された開口部のそれぞれに沿って筐体130の内部側に対向電極13b,13bが設けられている。
【0033】
このような構成のイオン発生部13において、電圧回路部13cによって、一方の針電極13aに正極の高電圧が印加され、他方の針電極13aに負極の高電圧が印加される。また、対向電極13b,13bには、それぞれ対応する針電極13a,13aに印加される電圧の極性と反対(逆)の極性の電圧が印加される。針電極13a,13a及び対向電極13b,13bにそれぞれ高電圧が印加されると、針電極13a,13aの先端部に電圧が集中し、針電極13a,13aと対向電極13b,13bとの間でプラズマ放電が発生する。これにより、針電極13a,13aの周囲の空気が針電極13a,13aの極性にイオン化され、空気中の酸素及び水蒸気が電離してイオンが発生する。また、対向電極13b,13bには、針電極13a,13aと反対の極性の電圧が印加されているので、針電極13a,13aの周囲のイオン化された空気を外部環境に引き出すことができる。
【0034】
具体的には、正極の電圧が印加された針電極13aが設けられた開口部からは正イオンが放出され、負極の電圧が印加された針電極13aが設けられた開口部からは負イオンが放出される。イオン発生部13が、正イオン及び負イオンの両極性のイオンを同時に略同等量発生させた場合、両イオンがカビ菌、ウィルス、アレルゲン物質等の表面に付着して化学反応を起こし、活性物質としての過酸化水素(H2 2 )又は水酸基ラジカル(OH)を生成する。過酸化水素又は水酸基ラジカルは、カビ菌、ウィルス、アレルゲン物質の表面のたんぱく質から水素を抜き取る酸化反応を行なうので、殺菌、ウィルス及びアレルゲン物質を不活性化又は死滅させることができる。
【0035】
付着物除去具1の筐体10の内部には、ファン14が配置されており、ファン14は、ファンモータ(図示せず)により駆動される。ファン14は、例えばプロペラファンであればよい。また、筐体10には、吸込口12と対向する箇所に空気の吹出口15が形成されている。このような構成により、ファン14の駆動に従って、空気が吸込口12から吸い込まれ、筐体10内部を通って吹出口15から吹き出される。なお、吹出口15は、吸込口12と同様にスリット状に設けられていてもよいし、複数の小孔がマトリクス状に設けられていてもよい。
【0036】
筐体10の内部には、吸込口12に面してフィルタ16が収納されている。フィルタ16は、吸込口12から吸い込まれた空気中の塵埃を除去するフィルタであり、付着物除去具1に対して着脱可能に構成されている。筐体10は、例えば、平面部が取り外し可能に構成されており、平面部を取り外すことによってフィルタ16を筐体10から取り外せるように構成されている。
【0037】
また、筐体10には取っ手部20が取り付けてある。使用者は手で取っ手部20を持って付着物除去具1を使用できるので、付着物除去具1の取り扱いが容易である。取っ手部20は中空に構成されており、その内部には、電源部21と、イオン発生部13に高周波電圧を供給する電圧回路部13cとが収納されている。
【0038】
付着物除去具1には、例えば取っ手部20に、動作の開始/終了を指示するための電源スイッチ(図示せず)が設けられており、電源スイッチがオンされた場合、電源部21がファンモータ及び電圧回路部13cへの電力供給を開始する。電源スイッチがオンされて付着物除去具1が動作を開始した場合、ファンモータがファン14の駆動を開始すると共に、イオン発生部13が動作を開始する。
【0039】
このような動作状態の付着物除去具1によって衣類等をブラッシングした場合、ブラシ毛11が衣類等の表面に接する際の物理的な作用によって、衣類等の表面に付着している埃や塵といった塵埃が叩き落とされる。叩き落とされた塵埃は、空気と共に吸込口12から筐体10内部に吸い込まれ、塵埃のみフィルタ16に捕集され、塵埃が除去された空気は、吹出口15から吹き出される。これにより、叩き落とされた塵埃は確実にフィルタ16に捕集されるので、周囲に飛び散る虞がない。
【0040】
また、本実施形態1の付着物除去具1では、イオン発生部13が発生させた空気イオンが衣類等の対象物に向けて放出される。よって、対象物(衣類等)に付着している塵埃が静電気を帯びている場合であっても、空気イオンによって静電気が除去されるので、塵埃を対象物から効率よく除去できる。また、塵埃にカビ胞子や花粉等のアレルゲン物質が含まれる場合であっても、アレルゲン物質が不活性化されるので、アレルギー症状の発生を抑制できる。
【0041】
また、イオン発生部13の開口部が付着物除去具1の筐体10の外部方向に向くように設けられていることにより、イオン発生部13が発生させた空気イオンが、筐体10の平面部に対して直交する方向(筐体10の外部方向)へ放出される。よって、ブラシ毛11が衣類等と接する箇所におけるイオン濃度が高くなることから、静電気の除去及びアレルゲン物質の不活性化を効率よく行なうことができる。更に、空気イオンによって、塵埃に含まれるアレルゲン物質を不活性化させるので、ファン14を停止させた後に、万が一、フィルタ16に捕集された塵埃が付着物除去具1外部へ漏れ出た場合であっても、アレルギー症状の発生を抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態1の付着物除去具1は、電源スイッチがオフされた場合、電源部21がファンモータ及び電圧回路部13cへの電力供給を終了し、動作を終了する。電源スイッチは、例えば、スライドさせることによってオン又はオフするように構成されていてもよく、1回の押下によってオンされ、再度の押下によってオフされるように構成されていてもよい。
【0043】
上述した構成の付着物除去具1によって、室外に干していた衣類(洗濯物)を取り込んだ後にブラッシングした場合、干していた間に衣類に付着したカビ胞子、花粉等のアレルゲン物質を含む塵埃を効率的に除去できる。また、外出先から帰宅した後に付着物除去具1によって衣類をブラッシングした場合には、外出中に衣類に付着したアレルゲン物質を含む塵埃を効率的に除去でき、アレルゲン物質が屋内に入ることを防止できる。
【0044】
図5は付着物除去具1の掃除方法を示す図である。図5に示すように、付着物除去具1の取っ手部20には紐31が取り付けてある。なお、紐31は、取っ手部20ではなく、筐体10に取り付けられていてもよい。付着物除去具1は、使用後に、電源スイッチをオンしたまま、即ち、ファン14及びイオン発生部13を駆動させた状態で、壁や天井などに設けられた掛止部30に紐31を掛止させて一定時間吊るしておく。このとき、イオン発生部13が発生させた空気イオンがファン14によって筐体10内部に吸い込まれ、フィルタ16に衝突し、フィルタ16に付着している塵埃に作用する。具体的には、正負イオンがフィルタ16に付着している塵埃に含まれるアレルゲン物質の表面に構成されているアレルギー反応を誘発させるタンパク質に損傷を与え、アレルゲン物質を不活性化させる。
【0045】
このように、付着物除去具1の使用後にフィルタ16に付着しているアレルゲン物質を不活性化させておくことにより、衣類から塵埃を剥離する際に不活性化されなかったアレルゲン物質を確実に不活性化させることができる。よって、電源スイッチをオフした後に、フィルタ16に捕集されている塵埃がこぼれ落ちた場合、フィルタ16を掃除又は取り替える場合であっても、こぼれ落ちた塵埃によるアレルギー症状の発生を防止できる。
【0046】
(実施形態2)
以下に、実施形態2の付着物除去具1について説明する。なお、本実施形態2の付着物除去具1は、上述した実施形態1の付着物除去具1の構成と類似しており、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、同一の構成に基づく作用効果も実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0047】
図6は実施形態2の付着物除去具1のブラシ毛11側から見た模式図である。本実施形態2の付着物除去具1では、イオン発生部13のそれぞれが、発生させた空気イオンを付着物除去具1の筐体10外部側へ放出する状態と、筐体10内部側へ放出する状態との切り替えが可能に構成されている。その他の構成については上述した実施形態1と同様である。
【0048】
具体的には、イオン発生部13は、筐体130の長手方向両端部に同軸状に突出する軸13dを有する。イオン発生部13は、軸13dを介して付着物除去具1の筐体10に取り付けられており、付着物除去具1の筐体10に対して軸(回転軸)13dを中心に回転できる。イオン発生部13は、少なくとも180°の回転が可能に構成されており、軸13dを中心に回転させることにより、空気イオンの放出面が付着物除去具1の筐体10外側を向く状態と、付着物除去具1の筐体10内側を向く状態とを切り替えられる。なお、イオン発生部13は、軸13dを中心に360°の回転が可能に構成されてもよい。
【0049】
上述した構成により、本実施形態2の付着物除去具1では、発生させた空気イオンを、筐体10の外部へ放出するか、内部へ放出するかの切り替えが可能となる。付着物除去具1によって衣類等をブラッシングする際には、空気イオンの放出方向を筐体10の外部方向としておくことにより、上述した実施形態1と同様の作用及び効果が得られる。
【0050】
また、付着物除去具1の使用後に空気イオンの放出方向を筐体10の内部方向としておくことにより、イオン発生部13が発生させた空気イオンをより確実にフィルタ16に衝突させることができる。なお、このとき、筐体10の平面部とイオン発生部13との間に不要な隙間が発生しないので、フィルタ16へ放出される空気イオンが筐体10外部へ漏れにくい。よって、効果的にフィルタ16に空気イオンを照射することができ、フィルタ16に付着しているアレルゲン物質をより効率的に不活性化させることができる。これにより、フィルタ16に捕集された塵埃が再び空気中に漏れ出るような状況が生じた場合であっても、アレルギー症状の発生をより確実に抑制できる。
【0051】
本実施形態2の付着物除去具1は、使用者が手動で軸13dを中心にイオン発生部13を回転させることによって空気イオンの放出方向(放出面)を切り替える構成であるので、使用者が適宜、且つ手軽に放出方向を切り替えることができる。
このような構成のほかに、例えば、イオン発生部13を付着物除去具1から取り外して空気イオンの放出面(2つの開口部が形成された側面)の向きを切り替えるように構成してもよい。具体的には、イオン発生部13を、空気イオンの放出面が付着物除去具1の筐体10外側を向いた状態と、付着物除去具1の筐体10内側を向いた状態との両方で筐体10に取り付けられるように構成する。この場合、使用者が必要に応じて、付着物除去具1の筐体10からイオン発生部13を取り外し、空気イオンの放出方向を確認して筐体10に再度取り付けることによって、空気イオンの放出方向を容易に切り替えることができる。
【0052】
本実施形態2の付着物除去具1は、電源スイッチがオンされた場合に、ファン14及びイオン発生部13が共に駆動する構成であるが、イオン発生部13のみを駆動させる機能を更に備えてもよい。フィルタ16は吸込口12の近傍に配置されているので、ファン14を駆動させることなく、空気イオンの放出方向を筐体10の内部方向とすることによって、空気イオンをフィルタ16に照射させることができる。よって、付着物除去具1の使用後に空気イオンの放出方向を筐体10の内部方向とし、イオン発生部13のみを駆動させておくことにより、空気イオンをフィルタ16に効率よく衝突させることができる。この場合にも、フィルタ16に捕集されている塵埃に含まれるアレルゲン物質を不活性化させることができるので、フィルタ16に捕集された塵埃が再び空気中に漏れ出るような状況が生じた場合であっても、アレルギー症状の発生を抑制できる。
【0053】
(実施形態3)
以下に、実施形態3の付着物除去具1について説明する。なお、本実施形態3の付着物除去具1は、上述した実施形態2の付着物除去具1の構成と類似しており、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、同一の構成に基づく作用効果も実施形態1,2と同様であるため説明を省略する。
【0054】
図7は実施形態3の付着物除去具1のブラシ毛11側から見た模式図である。本実施形態3の付着物除去具1では、吸込口12に開閉可能な蓋部40が設けられている。その他の構成については上述した実施形態2と同様である。
【0055】
具体的には、付着物除去具1の筐体10内部の吸込口12とフィルタ16との間に、矩形の板状に形成された蓋部40が配置されている。蓋部40には、吸込口12と同様又は一回り大きいサイズのスリットが吸込口12と同数形成されており、各スリットの一端側の端辺に適宜サイズの凸部40aが設けられている。
【0056】
一方、付着物除去具1の筐体10には、取っ手部20が取り付けられた箇所に対向する箇所に、蓋部40の凸部40aに対応した大きさの貫通孔が設けられている。具体的には、後述するように蓋部40はスライド可能に構成されており、蓋部40のスライドに伴って移動する凸部40aの移動距離程度の長さの貫通孔が設けられている。また、貫通孔の幅は、蓋部40の幅と同様又は一回り大きい幅とすればよい。
【0057】
このような構成の蓋部40は、筐体10の貫通孔に凸部40aを貫通させた状態で筐体10内部に取り付けられている。また、蓋部40は、使用者が凸部40aを手で持って、図7中の矢符で示す方向にスライドできるように筐体10に取り付けられている。図6は吸込口12が開放されている状態を、図7は吸込口12が蓋部40によって塞がれている状態をそれぞれ示している。蓋部40のスリットが吸込口12と重なる位置に配置されるように蓋部40をスライドさせた場合、図6に示すように、吸込口12が開放される。また、蓋部40のスリットが吸込口12と重ならない位置に配置されるように蓋部40をスライドさせた場合、図7に示すように、吸込口12が蓋部40によって塞がれる。
【0058】
上述した構成により、本実施形態3の付着物除去具1では、空気イオンの放出方向を筐体10の内部方向に切り替えると共に吸込口12を蓋部40によって閉じた場合には、空気イオンが筐体10外部へ漏れることを確実に防止できる。よって、イオン発生部13が発生させた空気イオンをより効率的にフィルタ16に衝突させることができ、フィルタ16に付着しているアレルゲン物質をより確実に不活性化させることができる。
【0059】
本実施形態3の付着物除去具1も、イオン発生部13のみを駆動させる機能を更に備えてもよい。本実施形態3の付着物除去具1の場合、イオン発生部13が発生させた空気イオンを筐体10内部へ放出する際に蓋部40によって吸込口12を閉じておけるので、空気イオンは筐体10内部に留まることができる。よって、ファン14を駆動させることなく、空気イオンをフィルタ16に効率よく照射させることができる。
【0060】
本実施形態3の付着物除去具1は、上述した実施形態2の付着物除去具1の変形例として説明したが、上述した実施形態1の付着物除去具1の変形例として構成してもよい。具体的には、付着物除去具1を、空気イオンの放出方向の切り替えはできないが、吸込口12の蓋部40の開閉は可能に構成してもよい。この場合、付着物除去具1の使用後に吸込口12の蓋部40を閉じておくことにより、フィルタ16に捕集された塵埃が付着物除去具1の筐体10の外部へ漏れ出るような状況を確実に防止できる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態についてそれぞれ具体的に説明したが、各構成及び動作などは適宜変更可能であって、上述の実施形態に限定されることはない。
【符号の説明】
【0062】
1 付着物除去具
10 筐体
11 ブラシ毛
12 吸込口
13 イオン発生部
14 ファン
40 蓋部
13d 軸(回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付着している付着物を前記対象物から除去する付着物除去具において、
筐体の一面に植設された複数列のブラシ毛と、
該ブラシ毛の各列間の領域に設けられた空気の吸込口と、
該吸込口から筐体内部に空気を吸い込むためのファンと、
該ファンによって吸い込まれた空気が通過するフィルタと、
前記筐体に設けられ、イオンを発生させて筐体外部へ放出するイオン発生部と
を備えることを特徴とする付着物除去具。
【請求項2】
前記イオン発生部が発生させるイオンは、H+ (H2 O)(mは自然数)で表される正イオンと、O2-(H2 O)(nは自然数)で表される負イオンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の付着物除去具。
【請求項3】
前記イオン発生部は、発生させたイオンを、前記ブラシ毛が設けられた筐体の一面に対して交差する方向に放出するようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の付着物除去具。
【請求項4】
前記イオン発生部は、発生させたイオンを筐体外部へ放出する状態と、筐体内部へ放出する状態との切り替えが可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかひとつに記載の付着物除去具。
【請求項5】
前記イオン発生部は、発生させたイオンを放出する放出面と、該放出面が筐体外部を向く状態と筐体内部を向く状態とを、回転することによって切り替えられる回転軸とを有することを特徴とする請求項4に記載の付着物除去具。
【請求項6】
前記吸込口を塞ぐ蓋部を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかひとつに記載の付着物除去具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43011(P2013−43011A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184007(P2011−184007)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】