説明

伝導性カーボンブラックを含むレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素及びフレキソ印刷版の製造

レーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素において、レリーフ形成層が、少なくとも150m2/gの比表面積及び少なくとも150ml/100gのDBP数を有する伝導性カーボンブラックを含む。フレキソ印刷版は、レーザー装置により、印刷レリーフが上述のフレキソ印刷要素に彫刻される工程によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のレリーフを形成する層が、少なくとも150m2/gの比表面積及び少なくとも150ml/100gのDBP数を有する伝導性カーボンブラックを含むレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素に関する。本発明は更に、印刷レリーフがレーザー装置により上記フレキソ印刷要素に彫刻される、フレキソ印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版の製造用の直接レーザー彫刻においては、印刷レリーフが、レーザー又はレーザー装置を使用して、この目的に適当なレリーフを形成する層に直接的に彫刻される。この層は、レーザービームが投射される領域において分解され、そしてダスト、気体、蒸気又は煙霧質の形態で除去される。従来の方法−熱的に又は洗浄剤(washout agents)による−のような進展した段階は必要とされない。
【0003】
レーザーによるゴム印刷シリンダー(rubber printing cylinder)の彫刻が1960年代から知られているが、しかしながら、レーザー彫刻は、改良されたレーザー装置が出現する近年においてのみ、商業上広く興味深いものとなった。レーザー装置の改良事項は、特にレーザー光線の良好な集束性、高い出力及びコンピュータ制御された光線の調整を含む。
【0004】
新しい、より効率的なレーザー装置の導入に伴い、しかしながら、レーザー彫刻可能なフレキソ印刷版用の特に適当な材料の探求も、より重要になっている。何れの場合においてのレーザー装置も非常に微細な構造物を彫刻することができなかったので、特に高い分解能(resolution)の印刷版、又は非常に細かいレリーフ要素の印刷要素の彫刻においては、過去において全く問題とされなかった問題が現在発生している。このように、改良されたレーザー装置は、材料に関し新しい必要条件を発生させる。
【0005】
直接レーザー彫刻では、レーザーにより彫刻されたレリーフを形成する層は、次の印刷表面も形成することが特に注意されるべきである。従って、彫刻中に発生する全ての欠点は、印刷において肉眼で見えるものになる。直接レーザー彫刻においては、従って、特にレリーフ要素の端(edge)は、明快な印刷像を得るために、特に精密に形成されなければならない。すりへった端又はレリーフ要素中の溶融材料のビード、すなわち、溶融端は、印刷像に対して相当の逆効果を有する。当然、所望のレリーフ要素が微細になるに従い、これらの因子がより重要になる。EP−B640043(特許文献1)及びEP−B640044(特許文献2)は詳細なレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素、及び適宜、感度を改良するためにレーザーの照射を吸収する材料を追加することが提示されている。詳細には記載されてはいないが、カーボンブラックの使用も提示されている。
【0006】
カーボンブラックは化学的に定義された化合物(compound)ではなく、その代わり、製造工程、粒子サイズ、比表面積又は表面特性に関して非常に多くの異なるカーボンブラックが存在し、そしてそれゆえ、非常に広い範囲の化学的及び物理的特性をも有する。更なる詳細が、例えば、H.Ferch,Pigmentrusse,U.Zorll,Vincentz Verlag,Hanover編集、1995に、言及されている。カーボンブラックは例えば、BET法と構造によって決定される、比表面積でしばしば特徴づけられる。カーボンブラックの分野の当業者(skilled worker)は、構造を、凝集体を形成する基本的(primary)な粒子の結合を意味するものとして理解する。この構造はフタル酸ジブチル(DBP)吸着作用によってしばしば決定される。DBP吸着が高い程、構造が高度(higher)である。
【0007】
伝導性カーボンブラックはカーボンブラックの独得の等級を形成する。一般的に、110ml/100g以上のDBP吸着と比較的高い比表面積を有するカーボンブラックは、伝導性カーボンブラック(Ferch loc.cit.,p82)として参照される。伝導性カーボンブラックは、通常、非常に少量を付加して不伝導性の材料を電気的に伝導性のものにするのに使用される。
【0008】
レーザー彫刻可能な印刷要素中へのカーボンブラックの使用は、EP−A11080883(特許文献3)、WO02/16134(特許文献4)、WO02/54154(特許文献5)又はWO02/083418(特許文献6)にも記載されている。上記刊行物は、しかしながら、伝導性カーボンブラックではなく、比較的小さい比表面積と小さなDBP数を有するカーボンブラックを開示している。
【0009】
EP−A1262315(特許文献7)とEP−A1262316(特許文献8)はフレキソ印刷版の製造のための方法とレーザー装置を開示している。この記載されたレーザー装置は異なる出力及び/又は波長を有する複数のレーザービームを扱い、そして、これにより印刷版の表面領域及びより深い領域を別々に加工できるものである。下部に位置する領域に異なって使用されているフレキソ印刷要素の表面の作成の可能性について参照がなされる。しかしながら、この書類には、表面又は下部に位置する領域のための詳細な化学的組成(composition)が示されていない。
【0010】
【特許文献1】EP−B640043
【特許文献2】EP−B640044
【特許文献3】EP−A11080883
【特許文献4】WO02/16134
【特許文献5】WO02/54154
【特許文献6】WO02/083418
【特許文献7】EP−A1262315
【特許文献8】EP−A1262316
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、溶融端が発生することなく、精密にレリーフ要素を彫刻することも可能にする、1層又は複数の層のレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素を提供することにある。これは、現代式のマルチビームレーザー装置を使用した彫刻に特に適当である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、驚くべきことに、この目的が、最初に定義し明確にした種類の伝導性カーボンブラックを使用することによって達成されることを見出した。このフレキソ印刷要素は溶融端がない状態及び他の逆効果が観察されない状態で、高い分解度で彫刻され得る。上記カーボンブラックが、レーザー照射(laser radiation)に対して最も高い感度を有するものでは決してないので、この結果は特に驚くべきことであった。
【0013】
従って、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版の製造用のフレキソ印刷要素が、少なくとも、他のものの上に配置された、
寸法安定性の支持体、
0.05〜7mmの厚さを有し、少なくとも1種のエラストマー性バインダー(a1)、レーザー照射を吸収する物質(a2)及び、架橋用の成分(a3)を含む層を架橋することにより得られる、少なくとも1種のレリーフを形成する、架橋された、エラストマー性の層(A)、
を含み、
上記レーザー照射を吸収する物質が、少なくとも150m2/gの比表面積及び少なくとも150ml/100gのDBP数を有する伝導性カーボンブラックであることが分かった。
【0014】
特定の実施の形態では、フレキソ印刷要素が更に、支持体と層(A)との間に位置し、少なくとも1種のエラストマー性のバインダー(b1)及び架橋用の成分を含む層を架橋することにより得られる、少なくとも1種の更なる、レリーフを形成する、架橋されたエラストマー性の層(B)を含む。
【0015】
更に、フレキソ印刷版の製造方法は、上記種類のフレキソ印刷要素が使用され、そして印刷レリーフが、レーザー装置により層(A)に及び適宜、層(B)に彫刻され、レーザーによって彫刻されるレリーフ要素の深さが少なくとも0.03mmであるものであることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、以下に詳細に記載される。
【0017】
この新しいフレキソ印刷要素用の適当な寸法安定性の支持体の例は、鉄、アルミニウム、銅又はニッケル等の金属製の又は、ポリエチレンテレフタル酸塩(PTE)、ポリエチレンナフサレート(PEN)、ポリブチレンテレフタル酸塩、ポリアミド、ポリ炭酸塩等のプラスチック製の又適宜、グラスファイバーファブリック及び例えば、グラスファイバーとプラスチックを含む複合材料等の織布及び不織布製の、板、フィルム及び円錐形及び円筒形のチューブ(スリーブ)である。特に適当な寸法安定性の支持体は、寸法安定性の支持体フィルム、例えばポリエステルフィルム、特にPET又はPENフィルム又は鉄、好ましくはステンレススチール、磁化可能なばね鋼、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、クロム、又は銅等の薄いシート又は金属箔等の可撓性の金属支持体である。
【0018】
このフレキソ印刷要素は更に、少なくとも1種のレリーフを形成する架橋されたエラストマー性の層(A)を含む。上述の層は、支持体に直接的に施されて良い。しかしながら、随意に、他の層、例えば、接着(adhesion)促進層、及び/又は弾力のある下部層、及び/又は少なくとも1種の更なるレリーフを形成する架橋されたエラストマー性の層(B)も支持体(substrate)とレリーフ層との間に存在して良い。
【0019】
架橋されたエラストマー性の層(A)は、少なくとも1種のバインダー(a1)、レーザー照射を吸収する物質(substance)(a2)、及び架橋用の成分(a3)を含む層を架橋することによって得られる。層(A)自体はそれゆえ、バインダー(a1)、レーザー照射を吸収する物質(a2)及び、成分(a3)の反応によって製造され、そしてバインダーを含んでも、含んでいなくても良いネットワークを含む。
【0020】
層(A)用に特に適当なバインダー(a1)は、エラストマー性のバインダーである。しかしながら、原則として非エラストマー性のバインダーを使用することも可能である。中でも決定的に重要なことは、架橋された層(A)がエラストマー性の特性を有していることである。この示された層は、例えば、本質的にエラストマーではないバインダーに可塑剤を加えることによりエラストマーの特性をおびて良く、又は、互いに反応させるだけでエラストマー性のネットワークを形成する架橋可能なオリゴマーを使用することが可能である。
【0021】
層(A)用の特に適当なエラストマー性のバインダー(a1)は、重合された単位の形態で組み込まれる(混合される)イソプレン又はブタジエン等の1、3−ジエンモノマーを含むポリマーである。モノマーの組み込み(混合)の方法に依存して、この種類のバインダーは、主鎖及び/又は側基(side group)の成分として架橋可能なオレフィン基を有する。例は、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンゴム、ニトリル/ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン/イソプレンゴム、ポリノールボルンネ(polynorbornene)ゴム、及びエチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)である。
【0022】
バインダー(a1)は、アルケニル芳香族(alkenylaromatics)及び1、3−ジエンの熱可塑性エラストマー性ブロックコポリマーであっても良い。ブロックコポリマーは線状ブロックコポリマー又は遊離基ブロックコポリマーであって良い。通常、これらはA−B−Aタイプの3ブロックコポリマーであるが、しかし、A−Bタイプの2ブロックポリマーであっても良く、又は複数の代わりのエラストマー性及び熱可塑性ブロック、例えばA−B−A−B−Aを有するもので良い。
【0023】
2種以上の異なるブロックコポリマーの混合物が使用されても良い。ジエン単位が異なって結合も良い。これらが完全に又は部分的に水素添加されても良い。スチレン/ブタジエンタイプのブロックコポリマー及びスチレン/イソプレンタイプのそれらの両方が使用されて良い。それらは、例えばKraton(登録商標)の名称で商業的に入手可能である。スチレンの末端ブロック及びランダムなスチレン/ブタジエン中央ブロックを有する、熱可塑性エラストマー性ブロックコポリマーが更に使用されて良くそして、Styroflex(登録商標)の名称で入手可能である。
【0024】
しかしながら、エチレン/プロピレン、エチレン/アクリル酸塩、エチレン/ビニールアセテート又はアクリル酸塩ゴムも層(A)用に原則として使用される。水素添加されたゴム又はエラストマー性ポリウレタン、及びその中でグラフト重合により架橋可能な基が重合分子に組み込まれる変性(modify)されたバインダーが更に適当である。
【0025】
バインダー(a1)の種類と量は、フレキソ印刷要素の印刷レリーフの所望の特性に従って、当業者によって選ばれる。通常、層(A)の全成分の量に基づいて、40〜95質量%の量のバインダーが有用であることがわかった。異なるバインダーの混合物も当然、使用可能である。
【0026】
本発明に従って、レーザー照射を吸収する物質(a2)は比表面積が少なくとも150m2/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックで良い。
【0027】
この比表面積は好ましくは、少なくとも250、特に好ましくは少なくとも500m2/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであって良い。カーボンブラック(a2)は好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるバインダーの混合物も当然に、使用され得る。
【0028】
約1500m2/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjennlack(登録商標)EC300J、Ketjennlack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)の名称で、商業的に入手可能である。
【0029】
カーボンブラック(a2)の種類と量は、印刷レリーフの所望の特性に従って当業者によって選ばれる。この量はまた、層(A)がレリーフ形成層としてのみ存在するのか、又は少なくとも1種の更なるレリーフ形成層(A)及び/又は(B)も存在するのかにも依存している。もし、この新しいフレキソ印刷要素がレリーフ形成層として単層(A)のみを含んでいるならば、層(A)の全成分の量に基づいて、0.5〜20質量%の量のカーボンブラックが有用であることがわかった。3〜18%の量が好ましく、非常に特に好ましくは5〜15%である。もし、上記フレキソ印刷要素が層(A)に加え、更に層(A)及び/又は(B)も含む多層のフレキソ印刷要素であるならば、最上位の層(A)中のカーボンブラックの含有量もより多い量で良く、例えば、35質量%にまで及び、そして特別なケースではそれ以上にもなる。20質量%以上のカーボンブラック含有量を有するこのような最上位の層(A)の厚さは通常、0.3mmを越えるべきではない。
【0030】
架橋(a3)用の成分の種類と量は所望の架橋技術に依存し、そして、従って当業者によって選ばれる。この架橋は、層を加熱することにより、又は電子ビームの照射により、熱化学的に実施されることが好ましい。カーボンブラックが含まれているので、この層は幾分黒くなり、光化学的な架橋が例外的なケースとしてのみ、すなわちカーボンブラック含有量が非常に低い場合のみ、及び/又は層が非常に薄い場合のみ、可能である。
【0031】
重合可能な化合物又はモノマーを層に加えることにより熱架橋が実施され得る。モノマーは少なくとも1種の重合可能な、オレフィン不飽和基を有する。原則として知られた方法において、適当なモノマーは、単又は多官能性アルコール、アミノ、アミノアルコール又はヒドロキシエーテル及びヒドロキシエステル、スチレン又は置換されたスチレン、フマル酸又はマレイン酸のエステル又はアリール化合物を有する、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドである。使用されるモノマーの何れの総量も、レリーフ層の所望の特性に従って当業者によって確立される。通常、しかしながら、層の全成分量に基づいて30質量%を越えるべきではない。
【0032】
更に、熱重合開始剤が加えられ得る。原則として、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱開始剤が重合開始剤、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物、として使用され得る。代表的な加硫剤も架橋用に使用される。
【0033】
熱架橋性(heat-curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
【0034】
もし、使用されたバインダー(a1)が充分な量の架橋可能な基を有していたならば、追加の架橋可能なモノマー又はオリゴマーが必要とされず、その代わりにバインダーが適当な架橋剤によって直接的に架橋され得る。このことは、従来の加硫剤又は過酸化物(peroxide)の架橋剤を使用して直接的に架橋され得る天然ゴム又は合成ゴムの場合に特に可能である。
【0035】
一方、熱架橋に類似して、電子ビームによる架橋が、エチレン不飽和の基を含むモノマーを含む層を電子ビームによって架橋することにより実施され得る。開始剤の添加はここでは必要とされない。電子ビームによって架橋する基を有するバインダーも、モノマーを更に加えることなく、電子ビームによって直接的に架橋され得る。このような基は、特にオレフィン基、陽イオン(protic)基、例えば、−OH、−NH2、−NHR、−COOR又は−SO3H、及び安定化したラジカルを形成し得る基、及びカチオン、例えば、−CR’R“−、−CH(O−CO−CH3)−、−CH(O−CH3)−、−CH(NR’R“)−又は−CH(CO−O−CH3)を含む。陽イオン基を有する化合物が追加的に使用されて良い。例は、末端官能基(terminal functional group)が、ジアルコール、例えば、1、4−ブタンエジオール、1、6−ヘキサンエジオール、1、8−オクタンエジオール又は1、9−ノナンエジオール、ジアミン、例えば、1、6−ヘキサンジアミン又は1、8−ヘキサンジアミン、ジカルボン酸、例えば、1、6−ヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、マレイン酸又はフマル酸等のスペーサーを介して互いに結合する2−又は多官能性モノマーを含む。
【0036】
光化学的な架橋が、上述したオレフィンモノマーを少なくとも1種の光開始剤又は光開始剤系と組み合わせて使用することにより実施され得る。光重合用の適当な開始剤はα−メチルベンゾイン、又はベンゾインエーテル等のベンゾイン又はベンゾイン誘導体、ベンジルケタール等のベンジル誘導体、アクリルアリールホスフィンオキシド、アクリルアリールホスフィンエステル、又は多核キノンとして知られているが、このリストに限られることを意図するものではない。
【0037】
当然、層(A)が随意に、更に成分、例えば、可塑剤、染料、分散剤、接着促進添加剤、静電気防止剤、研磨粒子又は加工助剤も含み得る。このような添加剤の量は、特性を調整するのに役立ち、そして通常、示された要素の層(A)の全成分の量に基づいて、30質量%を超えるべきではない。
【0038】
新しいフレキソ印刷要素がレリーフ形成層として単層(A)のみを含んで良い。それは、他のものの上に位置される2種以上の層でも良く、これらの層が同じ組成(composition)又は異なる組成であり得る。
【0039】
新しいフレキソ印刷要素が、随意に少なくとも1種の更なるレリーフを形成する架橋されたエラストマー性の層(B)を支持体と層(A)との間に有することが可能である。同一の組成又は異なる組成の2以上の層(B)も存在し得る。
【0040】
層(B)は、少なくとも1種のバインダー(b1)及び架橋用の成分(b3)を含む層を架橋することによって得ることができる。適当なバインダー(b1)及び架橋用の成分(b3)が、(a1)及び(a3)のケースで述べたのと同様のリストから当業者によって選ばれ得る。層(B)が、当然、随意に更に成分、例えば、可塑剤、染料、分散剤、吸着促進層、静電気防止剤、加工助剤又は研磨粒子を含み得る。
【0041】
(B)の特に好ましい実施の形態では、バインダー(b1)が熱可塑性エラストマー性のバインダーである。レーザー照射用の吸収体は層(B)にとって絶対的に必須のものというものではないので、US/VIS領域の光が透過する層もまた製造され得る。この場合、層は特に精密で簡潔な方法(elegant manner)で光化学的に架橋されても良い。
【0042】
それにもかかわらず、層(B)はレーザー照射を吸収する物質(b2)を随意に含み得る。レーザー照射の異なる吸収剤の混合物も使用され得る。レーザー照射用の適当な吸収剤は、レーザーの波長の領域において、高い吸収作用を有している。特に適当な吸収剤は、赤外線の近くにおいて、及び電磁スペクトルのより長い波長のVIS領域において高い吸収作用を有するものである。このような吸収剤は、一般的に700〜900nm及び1200〜1600nmの波長を有する高出力(powerful)Nd−YAGレーザー(1064nm)及びIRダイオードレーザーの吸収用に特に適当である。
【0043】
レーザー照射の適当な吸収剤(b2)の例は、赤外線のスペクトル領域において強く吸収する染料、例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニシス、シアニシス、キノン、ジチオレン(dithiolenes)等の金属錯塩染料又は光互変性(photochromic)の染料である。
【0044】
他の適当な吸収剤は、無機顔料、特に濃色(intensely colored)の無機顔料、例えば、酸化クロム、酸化鉄又は酸化鉄水和物である。
【0045】
レーザー照射を吸収する特に適当な物質は、微細化されたカーボンブラックグレードであり、ケース(b2)においての選択は、上記伝導性カーボンブラックに限られない。比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックを使用することも可能である。更に適当なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
【0046】
このレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素は、随意に更なる層も含むことが可能である。
【0047】
このような層の例は、異なる配合(formulation)を含む、エラストマー性の下部層を含み、この下部層は支持体とレーザー彫刻可能な1層又は複数層の間に存在し、必ずしもレーザー彫刻可能である必要はない。このような下部層により、レリーフ印刷要素の機械的特性は、実際の印刷レリーフ層の特性に影響を及ぼすことなく変性され得る。
【0048】
レーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素の寸法安定性の支持体の下部、すなわち、
その上にレーザー彫刻可能なレリーフから向きがそれている支持体の側面が存在する弾力性の基礎構造が同じ目的に役立つ。
【0049】
更なる例は、支持体を、上部に存在する層に接着する、又は互いに異なる層を接着する接着促進層を含む。
【0050】
更に、このレーザー彫刻可能なフレキソ印刷要素は、例えばPETからなり及び各最上層の上に存在し、そしてレーザーによって彫刻される前に除去されるべき保護フィルムによって機械的損傷から保護され得る。表面処理によりその印刷特性においてレリーフ表面が不利な影響を受けないならば、剥離をより容易にするために、保護フィルムは適当な方法で、例えば、珪素添加(siliconization)によって、表面処理され得る。
【0051】
層(A)及び随意に層(B)の厚さは、フレキソ印刷の種類と所望の目的に従って当業者によって適当に選ばれる。
【0052】
層(A)の厚さは通常、0.05〜7mmである。層(A)がレリーフを形成する層としてのみ使用されるならば、厚さは0.2mm未満であるべきではない。1層のフレキソ印刷要素の場合、0.3〜7mmの厚さ、好ましくは0.5〜5mm、特に好ましくは0.7〜4mmが特に有用であることがわかった。
【0053】
第2のレリーフ形成層(B)と組み合わせて層(A)がトップ層として使用されたならば、比較的薄い層(A)も使用されて良い。この場合、0.05〜0.3mm、好ましくは0.07〜0.2mm、例えば約0.1mmの厚さが特に有用であることがわかった。層(A)、層(B)及び更なる何れもの層も合わせた総厚さは、通常、0.3〜7mm、好ましくは0.5〜5mmである。
【0054】
新しいフレキソ印刷要素が層(A)及び(B)を有するならば、トップ層(A)が下部層(B)と同等か又は下部層(B)よりも大きいShoreA硬度を有する時、特に有用であることがわかったが、しかし本発明がこれに限られるものではない。このことは、例えば、架橋の各程度を選択することにより、及び/又はバインダーの適当な選択により達成され得る。この種類の2層フレキソ印刷要素において、天然又は合成ゴムをバインダー(a1)として層(A)用に使用することが特に有用であることがわかった。層(B)用に、バインダー(b1)として、熱可塑性のエラストマー性のバインダー、好ましくは、スチレン/イソプレン又はスチレン/ブタジエンタイプのブロックコポリマー、特に好ましくは、スチレン/ブタジエンタイプのものが有用であることがわかった。2層又は多層フレキソ印刷要素の好ましい実施の形態では、層(B)がレーザー照射用の追加的な吸収体(吸収剤:absorber)を有していない。
【0055】
この新しいフレキソ印刷要素は、例えば、全ての成分を適当な溶媒に溶かし、又は分散させ、そして支持体の上で型にとることにより製造され得る。多層要素の場合、原則として知られた方法で、複数の層が他のものの上で型にとられ(cast)得る。型にとった後、所望により開始材料(starting material)を損傷から保護するカバーシートを施すことが可能である。逆に、カバーシートの上に型をとり、最終的に、それで支持体を層板にする(laminate)ことが可能である。
【0056】
伝導性のカーボンブラックがまず、バインダー又はバインダーの一部と、例えばねっか機(kneader)で事前に完全に混合され、そして更なる成分がこの混合物にのみ加えられることが有用であることがわかった。結果として、層(A)における伝導性カーボンブラックの非常に均一な分布が達成される。そして、選択された架橋技術に従い、原則として知られた方法で、電子ビーム又は光化学作用を有する光の照射により又は加熱によって、架橋が実施され得る。
【0057】
熱可塑性のエラストマー性のバインダーを含む層もまた、原則として知られた方法で、押し出し成形及びカレンダーにかけることにより、カバーシートと支持体フィルムとの間において製造され得る。この技術は、架橋が光化学的に又は電子ビームによって実施される場合に特に望ましい。それは、原則として熱架橋の場合にも使用され得る。ここで、しかしながら、押し出し成形及びカレンダーにかける温度ではまだ分解せず、そして、早まって層を重合しない熱開始剤を確実に使用する必要がある。
【0058】
異なる製造技術の組み合わせを使用することも当然可能である。例えば、層(A)は剥離可能なPETフィルムの上に型にとることができる。層(B)は押し出し成形及びカレンダーにかけることにより支持体フィルムとカバー要素の間において製造され得、カバー要素として使用される層(A)で被覆されたPETフィルムはEP−B084851に記載された手順と同様にして製造され得る。このようにして、しっかりと接着する層板がこの2層間において達成される。そして、層板の全体が電子ビームにより架橋され得る。層(A)が型にとった後直ちに例えば、熱的に架橋され得る。層(B)が層板の集成の後、例えば支持体フィルムを照射することにより光化学的に架橋され得る。
【0059】
新しいフレキソ印刷要素は、直接的なレーザー彫刻によるフレキソ印刷版の製造用に使用されるのが好ましい。しかしながら、印刷レリーフは他の方法、例えば、機械的にも彫刻され得る。
【0060】
直接的なレーザー彫刻において、レリーフ層は、充分な強度のレーザービームにさらされた領域において除去されるか又は少なくとも分離される程度、レーザー照射を吸収する。好ましくは、この層は溶解する前に気化されるか又は熱的又は酸化的に分解され、このため、その分解生成物は高温の気体、蒸気、フューム又は小さな粒子の形態で除去される。
【0061】
伝導性カーボンブラックを含むため、層(A)は良好な吸収性を有し、特に750nm〜12000nmの全赤外線スペクトルの領域で良好な吸収性を有する。このため、それは、10.6μmの波長を有するCO2レーザーにより、又はNd−YAGレーザー(1064nm)、IRダイオードレーザー又は固体レーザーにより、等しく良好に彫刻され得る。
【0062】
層(B)の場合、最適のレーザーの選択は、層の構成内容、特に、レーザー照射の吸収体(b2)が存在するか又は存在しないかに依存する。層(B)用そして代表的にはフレキソ印刷用に使用されるバインダーは、9000nm〜12000nmの領域で、通常、CO2レーザーによる彫刻を追加的なIR吸収体を加えることを必要とせずに可能にする充分な程度に吸収する。同様のことがUVレーザー、例えばエキシマーレーザーに適用される。Nd−YAGレーザー及びIRダイオードレーザーの使用について、通常、レーザー吸収体の添加が必要である。レーザーは連続的、又はパルス状の何れにおいても操作可能である。
【0063】
要素の彫刻される深さは、レリーフの総厚さ及び彫刻される要素の種類に依存し、そして印刷版の所望の特性に従って、当業者により決定される。レリーフ要素の彫刻される深さは、少なくとも0.03mm、好ましくは、0.05mmであり、ここで述べられた個々のドット間の最小の深さである。ネガティブ要素(negative element)が印刷インクでいっぱいになるので、過度に小さなレリーフ深さを有する印刷版は、フレキソ印刷技術による印刷用には不適当である。個々のネガティブドットは通常、より深い深さを有するべきであり、0.2mmのそれ(ドット)のためには、少なくとも0.07〜0.08mmの深さが望ましい。表面が彫刻により除去される場合、0.15mm以上、好ましくは0.3mm以上が望ましい。後者は、当然、対応する厚さのレリーフの場合にのみ可能である。
【0064】
彫刻は、1本のレーザービームのみを有するレーザー装置を使用して実施され得る。しかしながら、2本以上のレーザービームを有するレーザー装置が使用されることが好ましい。レーザービームは全てが同じ波長を有していても良く、また、異なる波長を有するレーザービームが使用されても良い。更に、少なくとも1本のビームが粗い構造用に特に適応され、そして少なくとも1本のビームが微細な構造を刻み込むために特に適応されることが好ましい。このような装置により、特に精密で簡潔(elegant)な方法で高品質の印刷版を製造することができる。
【0065】
例えば、レーザーは、もっぱら、微細構造物を製造するビームが、粗構造物を製造するビームよりも低い出力(power)を有するCO2レーザーで良い。例えば、50〜100Wの出力を有するビームと200Wの2本のビームの組み合わせそれぞれが特に有利であることがわかった。より高出力のCO2レーザーとの組み合わせで、微細な構造を刻み込む用には、レーザーは、Yd/YAGレーザーでも良い。レーザー彫刻に特に適当な複数のビームのレーザー装置及び、適当な彫刻方法が、原則として知られており、そして例えば、EP−A1262315及びEP−A1262316に開示されている。記載された装置は、フレキソ印刷要素が据え付けられる回転するドラムを有しており、そしてドラムが回転される。レーザービームはドラム軸に平行にドラムの一端から他端へとゆっくりと動きそして、適当な方法で調整される。これにより、フレキソ印刷要素の全体の領域が徐々に彫刻され得る。レーザー及び/又はドラムを動かすことにより、ドラムとレーザービームは、互いに相対的に動かすことができる。
【0066】
レリーフ要素の端とレリーフ形成層の最上部の層の部分のみが、微細構造物の製造用のビームによって彫刻されるのが好ましい。より高出力のビームが製造された構造物を深くし、そして、印刷されない窪みを大きく掘るの役に立つ。当然詳細は、彫刻されるべき対象物に依存する。
【0067】
このような複数のビームの装置は、層(A)のみを有する新しいフレキソ印刷要素の彫刻用に使用され得る。これらは、層(A)と1層以上の層(B)を有する複数層のフレキソ印刷要素と組み合わせて特に有利に使用される。この場合、上部層(A)の厚さ及び低出力のレーザービームの出力、及び他のレーザーのパラメーターは、特に互いに有利に調整され、その結果、合わせて、高出力のビームが実質的に層(B)又は(A)と(B)を一緒に彫刻すると同時に、低出力のビームが実質的に層(A)を彫刻する。通常、0.05〜0.3mm、好ましくは0.07〜0.2mmの層の厚さが上部層(A)用に充分なものとなる。
【0068】
得られたフレキソ印刷版は、レーザー彫刻の後の更なる加工段階で続いて有利に洗浄され得る。ある場合では、これ(洗浄)は、圧縮空気で単に吹き飛ばす(blowing off)か、又は払い落とす(brushing off)ことにより実施される。
【0069】
しかしながら、ポリマーの断片を完全に除去できるようにもするために、次の洗浄用に液状の洗浄剤を使用することが好ましい。このことは、例えば、フレキソ印刷版が揮発成分に関して特に厳しい要求が適用される食料品の包装印刷用に使用される場合、特に望ましい。
【0070】
次の洗浄は、水又は水性洗浄剤により非常に特に有利に実施される。水性の洗浄剤は、実質的に水及び随意に少量のアルコールを含み、及び助剤、例えば界面活性剤、乳化剤、分散剤又は塩基を、洗浄工程を援助するために含んで良い。通常、習慣的な水に現像可能(water-developable)なフレキソ印刷版の現像用に使用される混合物を使用することも可能である。
【0071】
次の洗浄用に、原則として、有機溶媒の混合物、特に通常、習慣的に製造されたフレキソ印刷版用の洗浄剤(washout agent)としての用をなす、それら混合物も使用されて良い。例は、例えば、EP−A332070に開示されているような高沸点の脱芳香族化した鉱油の画分、又はEP−A463016に開示されているような水−油乳濁液に基づいた洗浄剤(washout agent)を含む。
【0072】
次の洗浄は、例えば、レリーフ印刷版を単純に浸漬することにより、又は噴霧することにより実施され、又は、機械的手段例えば、ブラシ又はプラッシュ製のパッドにより追加的に補佐される。習慣的なフレキソ洗浄剤(washer)も使用され得る。
【0073】
次の洗浄段階において、追加的なポリマー層の何れの堆積物(deposit)及び残余物も除去される。有利なことに、この層はレーザー彫刻中に形成されるポリマーの飛沫が再びレリーフ層の表面に堅く結合することを防止し、又は少なくとも上述した結合がより起こり難くなるようにする。堆積物は従って、特に容易に除去され得る。通常、次の洗浄段階はレーザー彫刻段階の直後に実施されることが望ましい。
【0074】
新しいフレキソ印刷要素に伝導性カーボンブラックを使用することにより、非常に高い品質のフレキソ印刷版が得られる。伝導性カーボンブラックが、従来のカーボンブラックと全く同等の感度を有しているわけではないが、しかし、そのレリーフが非常に明快な(crisp)端を有し、そして、溶融端の発生が実質的に完全に抑制されたフレキソ印刷版を得ることが可能である。
【0075】
以下の実施例は本発明を例証したものである。
【0076】
実施例1
伝導性カーボンブラックを含む1層のフレキソ印刷要素
以下の開始剤がエラストマー性のレリーフ形成層(A)用に使用された。
【0077】
【表1】

【0078】
上述した新しい構成のフレキソ印刷要素が、押し出し成形(ZSK53twin−screw extruder、Werner&Pfleiderer)、及び次の、接着材形成成分で被覆されたPER支持体フィルム(125μm)及び珪素で被覆された保護フィルムの間において、溶融物をカレンダーにかけることにより製造される。カーボンブラックの均一な計量供給と溶融したポリマーへの混合が確実になるように、カーボンブラックが、フランジで結合されたサイドエクストルーダーで計量しながら供給される。層(A)の厚さは1.02mmである。
【0079】
製造後、カーボンブラックが充填されたフレキソ印刷要素が室温で4日間保管され、そして次にWO03/11596に記載された方法により電子ビームで架橋される。
【0080】
この目的用に、各ケースにおいて、5個のフレキソ印刷要素が中間の層と共にカートンに包装され、そして、電子ビーム(電子エネルギー3.5MeV)で各25kGy、4回(ドーズ:dose)照射される。
【0081】
保護フィルムが剥離された後、1270dpiの分解能を有する試験体が、3本のCO2レーザービームを含むレーザー装置(STK BDE 4131、Kufstein screen technique、 第1ビーム 100 watt、 第2及び第3ビーム 250 watt)によって架橋されたカーボンブラック充填フレキソ印刷要素に彫刻される。試験体は、彫刻の質の評価用に、ドット、固体領域、非印刷部分、微細なポジティブ及びネガティブポイント及び線等の種々の特有の要素を含む。彫刻後、ブラシを使用し、水/界面活性剤混合物で、手作業にて洗浄され、そして乾燥される。試験条件と結果が表1に要約されている。
【0082】
比較例A、B及びC
非伝導性カーボンブラックグレードを含む1層のフレキソ印刷要素
実施例1と同様に、押し出し成形及び、接着物を形成する成分の混合物で被覆されたPET支持体フィルムと珪素被覆保護フィルムの間において、溶融物をカレンダーにかけることにより、フレキソ印刷要素が製造された。エラストマー性の層の組成(composition)は実施例1のものに対応し、しかし、異なる非伝導性カーボンブラックグレードが使用された。各ケースにおいて使用されたカーボンブラックが以下の表に示されている。
【0083】
【表2】

【0084】
カーボンブラック含有フレキソ印刷要素が、実施例1と同様、各25kGy、4回、電子ビーム(電子エネルギー3.5MeV)を照射することによって架橋される。
【0085】
保護フィルムが剥離された後、実施例1の試験体が、レーザーによって、架橋されたフレキソ印刷要素に彫刻される。試験条件及び結果が表1に要約されている。
【0086】
【表3】

【0087】
彫刻結果は、非伝導性カーボンブラックより伝導性カーボンブラックが、改良された分解能をもたらすことを明確に示している。このことは、ネガティブエレメントが、同等の彫刻深さで、より小さな直径を有しているという事実から特に明らかである。この理由は、端がよりより小さい範囲で溶解しているという事実によるものである。
【0088】
更に、記載された堆積(deposits)及び残余物が形成されず、その結果、明快な輪郭の一様な微細な要素をプリントする。
【0089】
表面が平滑なことは、微細なポジティブ要素から明確に明らかである。図1及び図2は、実施例1に従った、及び比較例A、B、及びCに従ったフレキソ印刷版の50μmポジティブドットの光学顕微鏡写真である。
【0090】
図は、伝導性カーボンブラック(実施例1)を使用することにより、他のカーボンブラック(比較例A、B、及びC)と対比して、実質的により滑らかな表面であり、そして表面の汚れがより少なく、そして印刷要素の残余物のより少ないものが得られることを明確に示している。
【0091】
実施例2
層(A)及び層(B)を含む2層フレキソ印刷要素
実施例1に従った、100μmの厚さのエラストマー性の層(A)が、製造された2枚の珪素処理(siliconized)された保護フィルムの間に押し出し成形することにより、最初に製造された。実施例1と同様、電子ビームにより層を架橋した後、珪素処理されたフィルムの1枚がカバー要素を得るために剥離された。
【0092】
光化学的に架橋可能な層(B)用の成分は、nyloflex(登録商標)FAH印刷版(BASF Drucksysteme GmbH)の成分であった。
【0093】
この2層のフレキソ印刷要素はEP−A084851に記載された方法に従った習慣的な方法で、層(B)の成分の溶融押し出し成形(melt extrusion)、及び透明な支持体フィルム及びカバー要素との間において、カレンダーにかけることにより製造された。ここで、層(A)及び珪素処理フィルムを含む上述した層板がカバー要素として使用される。光化学的に架橋可能なエラストマー性の層(B)及び伝導性カーボンブラックを含む上部層(A)を含む層板がこのように製造された。層(B)の厚さは、0.92mmであった。
【0094】
光化学的な架橋用に、層(B)が透明な支持体フィルムを通して20分間、UV/A光にさらされた(nyloflex F III 照射単位、80ワットチューブ)。
【0095】
この記載されたフレキソ印刷要素は、代わりに、上述し、そして層(A)及びFAH板を有するフィルムを含む層板を薄板にすることによって得られ得る。
【0096】
層(A)及び(B)を含む2層フレキソ印刷要素が、異なる分解能(1270dpi、1778dpi、2540dpi)を有する2−ビームレーザーユニット(100W Nd−YAG、250W CO2)を使用して、彫刻される。
【0097】
微細な要素が、Nd−YAGレーザーにより架橋された層(A)に彫刻され、そして、CO2レーザーがより深い領域を彫刻するのに、そして、所望により、粗い領域を彫刻するのに操作された。達成し得る分解能は2540dpiであり、同時に微細な印刷要素の明快な端を形成した。
【0098】
実施例3
層(A)と(B)を含む2層フレキソ印刷要素
以下の組成を有する加硫可能(vulcanizable)な天然ゴム/カーボンブラック混合物が最初にロールミル上において製造された。
【0099】
【表4】

【0100】
この層を、2枚の珪素処理された保護フィルムの間で、150℃で20分間プレスすることにより100μmの厚さの、架橋されたエラストマー性の層(A)が得られる。更なる加工の前に保護フィルムが剥離される。
【0101】
光化学的に架橋可能な層(B)用の成分は、nyloflex(登録商標)FAH印刷版(BASF Drucksysteme GmbH)の成分であった。この2層フレキソ印刷要素が、層(B)の成分の溶融押し出し成形及び、透明な支持体フィルム及びカバー要素の間において、カレンダーにかけることによる、EP−A084851に記載された方法に従った、習慣的な方法で製造された。層(A)と珪素処理されたフィルムを含む上述した層板がカバー要素として使用される。光化学的に架橋可能なエラストマー性の層(B)及び伝導性カーボンブラックを含む上部層(A)を含む層板が、このようにして製造される。層の厚さは0.92mmであった。
【0102】
光化学的な架橋用に、層(B)が透明な支持体フィルムを通して20分間、UV/A光にさらされた(nyloflex F III照射単位、80ワットチューブ)。次に、珪素処理されたシートが剥離された。
【0103】
この記載されたフレキソ印刷要素は、代わりに、上述し、そして層(A)及び製造されたFAH板を有するフィルムを含む層板を薄板にすることによって得られ得る。
【0104】
層(A)と(B)を含むこの2層のフレキソ印刷要素が、異なる分解能(1270dpi、1778dpi、2540dpi)を有する2ビームレーザーユニット(100W Nd−YAG、250W CO2)を使用して彫刻された。
【0105】
微細な要素が、Nd−YAGレーザーにより架橋された層(A)に彫刻され、そして、CO2レーザーがより深い領域を彫刻するのに、そして、所望により、粗い領域を彫刻するのに操作された。達成し得る分解能は2540dpiであり、同時に微細な印刷要素の明快な端を形成した。
【0106】
比較例D
比較用に、実施例2からの2層フレキソ印刷要素が250WCO21本レーザービームユニットのみで彫刻された。
【0107】
スクリーンの再生用に達成し得る分解能は1270dpi以上ではなかった。微細な要素は実施例2よりも粗い構造の側壁を有する。
【0108】
CO2レーザーだけが使用されたときよりも微細な分解能を有するNd/YAGレーザーとCO2レーザーの組み合わせを使用して、微細な要素が彫刻され得る。微細なドットが実質的により鋭く(point)なった。
【0109】
比較例E
比較用に、実施例3からの2層フレキソ印刷要素が250WCO21本レーザービームユニットのみで彫刻された。
【0110】
スクリーンの再生用に達成し得る分解能は1270dpi以上ではなかった。微細な要素は実施例3よりも粗い構造の側壁を有する。
【0111】
CO2レーザーだけが使用されたときよりも微細な分解能を有するNd/YAGレーザーとCO2レーザーの組み合わせを使用して、微細な要素が彫刻され得る。微細なドットが実質的により鋭く(point)なり、そして要素の側壁には残余物がなかった。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、他のものの上に配置された、
寸法安定性の支持体、及び、
0.05〜7mmの厚さを有し、少なくとも1種のバインダー(a1)、レーザー照射を吸収する物質(a2)、及び架橋用の成分(a3)を含む層を架橋することにより得られる、少なくとも1種の、レリーフを形成する架橋されたエラストマー性の層(A)、
を含み、
前記レーザー照射を吸収する物質が、少なくとも150m2/gの比表面積及び少なくとも150ml/100gのDBP数を有する伝導性カーボンブラックである、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版製造用のフレキソ印刷要素。
【請求項2】
前記物質が、少なくとも500m2/gの比表面積及び少なくとも250ml/100gのDBP数を有する伝導性カーボンブラックである、請求項1に記載のフレキソ印刷要素。
【請求項3】
少なくとも、更に、支持体と層(A)との間に位置し、少なくとも1種のバインダー(b1)及び架橋用の成分(b3)を含む層を架橋することにより得られる、レリーフを形成する、架橋されたエラストマー性の層(B)を含む請求項1又は請求項2に記載のフレキソ印刷要素。
【請求項4】
バインダー(b1)が、熱可塑性のエラストマー性のバインダーである請求項3に記載のフレキソ印刷要素。
【請求項5】
層(B)が更にレーザー照射を吸収する物質(b2)を含む請求項3又は請求項4に記載のフレキソ印刷要素。
【請求項6】
層(A)中のバインダー(a1)が天然又は合成ゴムである請求項3〜5の何れかに記載のフレキソ印刷要素。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のフレキソ印刷要素が使用され、印刷レリーフが層(A)及び適宜、層(B)内にレーザー装置によって彫刻され、レーザーによりレリーフ要素に彫刻される深さが少なくとも0.03mmである、フレキソ印刷版の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー装置が、2本以上のレーザービームを有するレーザー装置である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
レーザービームの少なくとも1本が粗構造物の製造用に使用され、そして少なくとも1本が微細構造物の製造用に使用される請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523552(P2006−523552A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505125(P2006−505125)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003954
【国際公開番号】WO2004/091927
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505347592)イクシス、プリント、ゾルツィオーンズ、ドイチュラント、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (8)
【Fターム(参考)】