伝送装置および周波数ゆらぎ補償方法
【課題】周波数ゆらぎの伝搬を抑制する。
【解決手段】伝送装置は、比較部、補正部および加算部を備える。比較部は、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと閾値とを比較する。補正部は、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の超過分を解消するように閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う。加算部は、閾値に対して前回の入力パラメータの超過量である補正量を検出し、補正量を今回の比較対象の入力パラメータに累積加算する。
【解決手段】伝送装置は、比較部、補正部および加算部を備える。比較部は、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと閾値とを比較する。補正部は、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の超過分を解消するように閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う。加算部は、閾値に対して前回の入力パラメータの超過量である補正量を検出し、補正量を今回の比較対象の入力パラメータに累積加算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送を行う伝送装置および周波数ゆらぎを補償する周波数ゆらぎ補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の基幹網を支える伝送技術の1つに、OTN(Optical Transport Network)があり、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)で標準化されている。
【0003】
OTNは、SONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)、Ethernet(登録商標)等のクライアント信号を収容し、階梯構造を持つフレームを生成して、WDM(Wavelength Division Multiplexing)などの伝送を行う技術である。
【0004】
一方、近年になって、既存の階梯構造との接続性を維持しながら、多様なクライアント信号をいかに収容して、効率よく信号伝送を実現するかのOTN拡張の議論が高まっている。
【0005】
OTN拡張の一例としては、LO(Lower order)−ODU(Optical Channel Data Unit)、HO(High order)−ODUのクライアント収容方式がある。これは、クライアント信号として、SONET/SDHやEthernet等のデータ信号の他に、例えば、フレーム構造を持った信号も多重化して収容させることで、クライアント信号収容の柔軟性を高めようとするものである。
【0006】
クライアント信号として収容されるフレームがLO−ODUと呼ばれ、LO−ODUの格納先のフレームがHO−ODUと呼ばれる。LO−ODUは、HO−ODUのペイロード領域内にマッピングされて送信され、受信側において、LO−ODUのフレーム同期が検出されてモニタリングが行われる。
【0007】
一方、クライアント信号をODUフレームへ収容する際のマッピング手法としてGMP(Generic Mapping Procedure)が規格化(ITU−T G.709/Y.1331)されている。GMPは、収容先のフレームのペイロード容量以下の任意のビットレートのクライアント信号を収容することができるため、多様なクライアントへのサポートが可能になる。
【0008】
従来技術として、LO−ODUに対するマッピング技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010−541509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
GMPは、収容先のフレームのペイロード容量以下の任意のビットレートのクライアント信号を段階的にマッピング(またはデマッピング)していくことが可能であるが、マッピングの途中で、伝送信号に対する周波数ゆらぎ(周波数偏差)を検出し抑制する仕組みを持っていない。
【0011】
したがって、OTNの伝送装置において、伝送信号の周波数が規格を超えるゆらぎを持ったような場合、マッピングを行っていく過程で、周波数ゆらぎが伝送装置間を伝播してしまうことになる。
【0012】
このように、従来のGMP方式では、マッピングを行っている際に周波数ゆらぎが発生しても、途中経路で補償されないため、周波数ゆらぎが対向の装置へ伝搬してしまい、伝送品質を劣化させるといった問題があった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った伝送装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った周波数ゆらぎ補償方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、伝送装置が提供される。伝送装置は、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較する比較部と、前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の超過分を解消するように前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行う補正部と、前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算する加算部とを有する。
【発明の効果】
【0015】
周波数ゆらぎの伝搬を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】伝送装置の構成例を示す図である。
【図2】ネットワーク構成例を示す図である。
【図3】接続インタフェースの一例を示す図である。
【図4】伝送装置の構成例を示す図である。
【図5】OTNのフレーム階梯構造を示す図である。
【図6】OTUのフレームフォーマットを示す図である。
【図7】LO−ODUのフレームフォーマットを示す図である。
【図8】GMPのマッピングの様子を示す図である。
【図9】周波数伝搬を説明するための図である。
【図10】周波数伝搬を説明するための図である。
【図11】LO−ODUkマッピング部の構成例を示す図である。
【図12】LO−ODUkデマッピング部の構成例を示す図である。
【図13】制御部の構成例を示す図である。
【図14】パラメータ補正制御の動作を示すフローチャートである。
【図15】パラメータ遷移と補正量との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は伝送装置の構成例を示す図である。伝送装置1は、比較部1a、補正部1bおよび加算部1cを備える。
比較部1aは、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと閾値とを比較する。
【0018】
補正部1bは、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の超過分を解消するように閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う。
【0019】
加算部1cは、閾値に対して前回の入力パラメータの超過量である補正量を検出し、補正量を今回の比較対象の入力パラメータに累積加算する。
このように、補正量が累積加算された入力パラメータと、公称周波数に対応する閾値とを比較して、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う構成とした。これにより、信号周波数を閾値内の有効範囲に収めることができるので、周波数ゆらぎが対向装置へ伝搬することを抑制することが可能になる。
【0020】
次に伝送装置1をOTNに適用した例について以降説明する。最初にOTNの構成について説明する。図2はネットワーク構成例を示す図である。ネットワーク100は、OTN2、イーサネットワーク4およびSONET/SDHネットワーク5を備える。
【0021】
イーサネットワーク4は、スイッチ41〜44を含み、メッシュ状に接続している。SONET/SDHネットワーク5は、ADM(Add/Drop Multiplexer)51〜54を含み、リング状に接続している。OTN2は、OTN伝送装置2−1〜2−4を含み、リング状に接続している。
【0022】
また、OTN伝送装置2−1は、スイッチ41、42と接続し、OTN伝送装置2−2は、スイッチ43、ADM51と接続し、OTN伝送装置2−3は、スイッチ44、ADM52と接続し、OTN伝送装置2−4は、ADM53、54と接続している。
【0023】
図3は接続インタフェースの一例を示す図である。OTN伝送装置2−1は(OTN伝送装置2−2〜2−4も同一接続インタフェースを有する)、クライアント側インタフェースとネットワーク側インタフェースを有している。
【0024】
クライアント側インタフェースは、イーサネットワーク4またはSONET/SDHネットワーク5との接続インタフェースであり、ネットワーク側インタフェースは、OTN2内のインタフェースである。
【0025】
クライアント側インタフェースとして、例えば、100GbE(Gigabit Ethernet)、40GbE、OC(Optical Channel)768、FC(Fiber Channel)1200、10GbE、OC192、OC48、1GbEを有している。
【0026】
また、ネットワーク側インタフェースとして、例えば、OTU(Optical Channel Transport Unit)4(112G)、OTU3(43.0G)、OTU2(10.7G)、OTU1(2.5G)を有している。
図4はOTN伝送装置の構成例を示す図である。OTN伝送装置2−1は(OTN伝送装置2−2〜2−4も同一構成)、HOインタフェース部10a、10bおよびLOインタフェース部20−1〜20−nを備え、ADM(Add/Drop Multiplexer)機能を有する装置である。
【0027】
LOインタフェース部20−1〜20−nは、クライアントインタフェース部2a−1、2a−2、LO−ODUkマッピング部2bおよびLO−ODUkデマッピング部2cを含む。
HOインタフェース部10aは、OTUkインタフェース部11a−1、11a−2、OTUkデマッピング部12a、HO−ODUk分離部13a、HO−ODUk多重部14aおよびOTUkマッピング部15aを含む。
【0028】
HOインタフェース部10bは、OTUkインタフェース部11b−1、11b−2、OTUkデマッピング部12b、HO−ODUk分離部13b、HO−ODUk多重部14bおよびOTUkマッピング部15bを含む。
【0029】
LOインタフェース部20−1〜20−nにおいて、クライアントインタフェース部2a−1は、クライアント信号の受信処理を行う。LO−ODUkマッピング部2bは、受信したクライアント信号をLO−ODUkにマッピングする。
【0030】
LO−ODUkデマッピング部2cは、受信したLO−ODUkをクライアント信号にデマッピングする。クライアントインタフェース部2a−2は、クライアント信号の送信処理を行う。
HOインタフェース部10aにおいて、OTUkインタフェース部11a−1は、OTUkの受信処理を行う。OTUkデマッピング部12aは、受信したOTUk信号をHO−ODUkにデマッピングする。HO−ODUk分離部13aは、受信したHO−ODUkを分離してLO−ODUkを出力する。
【0031】
HO−ODUk多重部14aは、受信したLO−ODUkを多重して、HO−ODUkにマッピングする。OTUkマッピング部15aは、受信したHO−ODUkをOTUkにマッピングする。OTUkインタフェース部11a−2は、OTUkの送信処理を行う。
【0032】
HOインタフェース部10bにおいて、OTUkインタフェース部11b−1は、OTUkの受信処理を行う。OTUkデマッピング部12bは、受信したOTUk信号をHO−ODUkにデマッピングする。HO−ODUk分離部13bは、受信したHO−ODUkを分離してLO−ODUkを出力する。
【0033】
HO−ODUk多重部14bは、受信したLO−ODUkを多重して、HO−ODUkにマッピングする。OTUkマッピング部15bは、受信したHO−ODUkをOTUkにマッピングする。OTUkインタフェース部11b−2は、OTUkの送信処理を行う。
【0034】
次にOTNのフレーム構成について説明する。図5はOTNのフレーム階梯構造を示す図である。OTNのフレームは、階梯構造をとり、下位レイヤから上位レイヤに向かって、OPU(Optical Channel Payload Unit)フレーム、ODU(Optical Channel Data Unit)フレーム、OTU(Optical Channel Transport Unit)フレームと呼ばれる。
【0035】
SONET/SDH、Ethernet等のクライアント信号をペイロードとし、このペイロードに制御情報であるオーバヘッド(OH)を付加してOPUフレームが生成される。
また、OPUフレームにオーバヘッドを付加してODUフレームが生成される。さらに、ODUフレームにオーバヘッドと誤り訂正符号(FEC:Forward Error Correction)を付加してOTUフレームが生成される。
【0036】
なお、ペイロードに収容されるクライアント信号には、SONET/SDH、Ethernet等のデータ信号の他に、LO−ODUのフレームも収容可能である。
図6はOTUのフレームフォーマットを示す図である。OTUフレームは、オーバヘッド領域、ペイロード領域およびFEC領域を備える。
【0037】
オーバヘッド領域は、1列目〜16列目の16バイト×4行のフレームサイズを有し、ペイロード領域は、17列目〜3824列目の3808バイト×4行のフレームサイズを有し、FEC領域は、3825列目〜4080列目の256バイト×4行のフレームサイズを有する。
【0038】
オーバヘッド領域には、OPUフレームのオーバヘッドであるOPU−OHと、ODUフレームのオーバヘッドであるODU−OHと、OTUフレームのオーバヘッドであるOTU−OHとが含まれる。さらに、フレームの先頭を示すFAS(Frame Alignment Signal)が含まれる。
【0039】
FASは、1行目の1列目〜6列目に配置され、OTU−OHは、1行目の7列目〜14列目に配置される。ODU−OHは、2行目〜4行目の1列目〜14列目に配置され、OPU−OHは、1行目〜4行目の15列目〜16列目に配置される。
【0040】
図7はLO−ODUのフレームフォーマットを示す図である。LO−ODUフレームは、オーバヘッド領域とペイロード領域を備える。LO−ODUは、ODUフレームにFASが付加されたフレームフォーマットを有しており、オーバヘッド領域には、FAS、ODU−OHおよびOPU−OHが含まれる。
【0041】
なお、LO−ODUがマッピングされるHO−ODUのフレームフォーマットは、ODUフレームと同じフォーマットである(オーバヘッド領域に、ODU−OHおよびOPU−OHが含まれる)。
次にGMPによるマッピング例について説明する。図8はGMPのマッピングの様子を示す図である。OPUフレームに対するGMPのマッピングの状態を示している。
【0042】
OPUのオーバヘッドの一部には、GMP用の制御パラメータが格納される。制御パラメータには、ペイロード領域に格納されるデータ量や、これらのタイミング情報が含まれる。また、GMPでは、ペイロード領域にスタッフがほぼ均等に配置されるように、データおよびスタッフがマッピングされる。
【0043】
OPUkまたはODTUkのフレーム(以下、サーバフレームと呼ぶ)の受信側では、OPUオーバヘッドの情報にもとづいて、デスタッフ処理を行うことにより、送信側と同様のクライアント信号が復元される。
【0044】
また、図中のCnパラメータは、クライアント信号を収容するOPUフレームのペイロード領域で送信すべきクライアント信号のデータ量の理論値である。Cnパラメータは、クライアント信号の周波数とサーバフレームの周波数との差にもとづいて求められ、収容されるクライアント信号のデータ量をnビット単位で表現する。
【0045】
なお、GMPでは、Cnパラメータの他にCmパラメータ、Cndパラメータが算出されるが、これらの詳細な定義および算出方法については後述する。
次にGMPによる周波数伝搬および問題点について説明する。図9、図10は周波数伝搬を説明するための図である。なお、以降に示すパラメータCnは、説明を簡単にするために、上位フレームの周波数を下位フレームの周波数で除算した値として、簡略化して算出している(Cnの詳細な算出方法は後述する)。
【0046】
〔マッピングM1〕第1のOTN伝送装置は、周波数がfcであるクライアント信号30を、周波数がfa1である上位のLO−ODU31のフレームにマッピングする。このとき、fcとfa1との比率(fa1÷fc)であるパラメータCn1を求めて、オーバヘッドに格納する。したがって、LO−ODU31には、パラメータCn1の情報が含まれる。
【0047】
〔マッピングM2〕第1のOTN伝送装置は、周波数がfa1であるLO−ODU31を、周波数がfa2である上位のHO−ODUのフレームにさらにマッピングする。このとき、fa1とfa2との比率であるパラメータCn2(=fa2÷fa1)を求めて、オーバヘッドに格納して、HO−ODU32を生成して外部へ出力する。HO−ODU32には、パラメータCn2の情報が含まれる。
【0048】
〔デマッピングD1〕第2のOTN伝送装置は、第1のOTN伝送装置から伝送されてきた、周波数fa2のHO−ODU32を受信する。HO−ODU32のオーバヘッドにはパラメータCn2が含まれるので、HO−ODU32の周波数fa2とパラメータCn2とから、LO−ODU31の周波数fa1を逆算して求めることができる。したがって、第2のOTN伝送装置は、HO−ODU32をデマッピングしてLO−ODU31を生成することができる。
【0049】
〔マッピングM3〕第2のOTN伝送装置は、周波数がfa1であるLO−ODU31を、周波数がfa3である上位のHO−ODU33のフレームにマッピングする。このとき、fa1とfa3との比率であるパラメータCn3(=fa3÷fa1)を求めて、オーバヘッドに格納して、HO−ODU33を生成して外部へ出力する。HO−ODU33には、パラメータCn3の情報が含まれる。
【0050】
〔デマッピングD2〕第3のOTN伝送装置は、第2のOTN伝送装置から伝送されてきた、周波数fa3のHO−ODU33を受信する。HO−ODU33のオーバヘッドにはパラメータCn3が含まれるので、HO−ODU33の周波数fa3とパラメータCn3とから、LO−ODU31の周波数fa1を逆算して求めることができる。したがって、第3のOTN伝送装置は、HO−ODU33をデマッピングしてLO−ODU31を生成することができる。
【0051】
〔デマッピングD3〕第3のOTN伝送装置は、LO−ODU31のオーバヘッドにはパラメータCn1が含まれるので、LO−ODU31の周波数fa1とパラメータCn1とから、クライアント信号30の周波数fcを逆算して求めることができる。したがって、第3のOTN伝送装置は、LO−ODU31をデマッピングしてクライアント信号30を生成することができる。
【0052】
上記のように、GMPによって、下位フレームから上位フレームへのマッピング、または上位フレームから下位フレームへのデマッピングを行うことができ、また、周波数の変換処理が行われる。
【0053】
しかし、従来のGMPでは、マッピングやデマッピングの途中で、周波数ゆらぎのような障害が発生しても、障害を補償する仕組みを持たないので、周波数ゆらぎが伝搬してしまうことになる。
【0054】
例えば、クライアント装置からOTN伝送装置に向けて送信されるクライアント信号のクロック周波数に±100ppmを超えるゆらぎが生じている場合を想定する。OTN伝送装置は、信号の周波数ゆらぎに対する耐力を持つとし、GMPによってクライアント信号を上位フレームへマッピングしてネットワーク内へ送信する。
【0055】
また、OTN伝送装置は、上位フレームを下位フレームにデマッピングして、クライアント信号を生成し、クライアント信号をクライアント装置に向けて送信する。
このような場合、受信側のクライアント装置に向けて送信されるクライアント信号には、周波数伝搬によって±100ppmを超えるゆらぎが生じている。受信側のクライアント装置がこの周波数ゆらぎに対する耐力を持っていないときには、該クライアント装置でエラーが検出されることになる。
【0056】
このように、従来のGMPでは、マッピング/デマッピングを行っている際に周波数ゆらぎが発生しても、途中経路で補償されないため、周波数ゆらぎが対向の装置へ伝搬してしまい、伝送品質を劣化させてしまう。
【0057】
また、この例では、送信元のクライアント装置の出力段階で周波数ゆらぎが生じているとしたが、伝送信号は、複数のOTN伝送装置間に渡って伝送されて、マッピング/デマッピングが繰り返し行われるので、従来のGMPによって、周波数ゆらぎが伝搬した際に、どこの箇所で生じているかを検出することは困難である。
【0058】
本技術はこのような点に鑑みてなされたものであり、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った伝送装置および周波数ゆらぎ補償方法を提供するものである。
次に図4で示したLO−ODUkマッピング部2bおよびLO−ODUkデマッピング部2cの構成および動作について説明する。図11はLO−ODUkマッピング部の構成例を示す図である。LO−ODUkマッピング部2bは、受信インタフェース部21b、FIFO(First In First Out)22b、制御部23b、マッピング部24bおよび送信インタフェース部25bを備える。
【0059】
なお、制御部23bには、NMS(Network Management System)6が接続し、NMS6を通じて制御情報の設定、または運用状態の認識等を行うことができる。
受信インタフェース部21bは、クライアント信号の受信処理を行う。FIFO22bは、受信インタフェース部21bから送信される書き込みイネーブルWenにもとづいて、受信インタフェース部21bから出力されたクライアント信号を格納する。
【0060】
制御部23bは、書き込みイネーブルWenとフレームパルスFpとを受信し、パラメータCnの補正処理を行う(図13以降で後述)。また、読み出しイネーブルRenと、パラメータCmおよびパラメータ累積Cnd(ΣCnd)を出力する。
【0061】
FIFO22bは、読み出しイネーブルRenにもとづき、クライアント信号を出力する。マッピング部24bは、クライアント信号を上位フレームにマッピングする。また、パラメータCmおよびパラメータΣCndの制御パラメータを上位フレームのオーバヘッドに挿入する。送信インタフェース部25bは、マッピング部24bから出力された上位フレームの送信処理を行う。
【0062】
図12はLO−ODUkデマッピング部の構成例を示す図である。LO−ODUkデマッピング部2cは、受信インタフェース部21c、デマッピング部22c、FIFO23c、制御部24cおよび送信インタフェース部25cを備える。
【0063】
なお、制御部24cには、NMS6が接続し、NMS6を通じて制御情報の設定、または運用状態の認識等を行うことができる。
受信インタフェース部21cは、上位フレームの受信処理を行う。デマッピング部22cは、上位フレームを下位フレームにデマッピングする。FIFO23cは、制御部24cから出力された書き込みイネーブルWenにもとづき、下位フレームを格納する。
【0064】
制御部24cは、デマッピング部22cから出力されたCmパラメータとΣCndパラメータにもとづいて、デスタッフ処理を行う。送信インタフェース部25cは、FIFO23cから出力された下位フレームの送信処理を行う。
【0065】
次に図11のLO−ODUkマッピング部2b内の制御部23bの構成について説明する。図13は制御部の構成例を示す図である。制御部23bは、Cnパラメータ演算部23b−1、加算部23b−2、パラメータ補正制御部23b−3、アラーム通知部23b−4およびCm/ΣCndパラメータ演算部23b−5を備える。
【0066】
なお、図1の加算部1cは、加算部23b−2に該当する。また、図1の比較部1aおよび補正部1bの機能は、パラメータ補正制御部23b−3に含まれる。
Cnパラメータ演算部23b−1は、クライアント信号の書き込みイネーブルWenと、収容すべきサーバフレーム(OPUkまたはOPTDUk)のフレーム周期を示すフレームパルスFpとを受信し、フレーム周期単位に、クライアント信号のクロック数(またはFIFOへの書き込み回数)を認識して、Cnパラメータを算出する。
【0067】
Cnパラメータは、サーバフレームとクライアント信号の周波数から求めた、サーバフレームへ収容すべきクライアント信号のデータ量(nビット単位で表現)に該当する。
ここで、Cnパラメータの算出方法について説明する。クライアント信号のビットレート(bitrate)とトレランス(tolerance)をfclientとし、OPUkのペイロード、またはODTU(Optical channel Data Tributary Unit)kのビットレートとトレランスをfserverとする。
【0068】
さらに、OPUkのペイロードまたはODTUkのビット数(BserverはOPUkまたはODTUkの種類に応じて変化)をBserverとし、nを整数値、tをt番目のフレームとすると、Cnパラメータは以下の式(1)で算出される(int(x)はxの整数部を表す)。
【0069】
Cn(t)=int((fclient/fserver)×(Bserver/n))・・・(1)
なお、nはクライアント毎に決まっており、基本はn=8であり、OC3、OC12、OC48はn=1である。例えばクライアント信号がOC48、サーバフレームの周期が1sec、それぞれの周波数ゆらぎが0である場合には、C1=2488320、C8=311040となる。
【0070】
図13の説明に戻り、加算部23b−2は、Cnパラメータと、パラメータ補正制御部23b−3から出力された補正量とを加算して、Cninパラメータ(入力パラメータ)を生成して出力する。
【0071】
パラメータ補正制御部23b−3は、公称周波数の閾値に該当する、Cninパラメータの最大値および最小値(Cn Max、Cn Min)を受信する。なお、Cn Max/Minの閾値は、NMSから設定可能である。
【0072】
また、最大値と最小値との間を有効範囲として、Cninパラメータの丸めこみ補正(平滑化)処理を行い、補正後のCninパラメータ(以下、Cnpパラメータと呼ぶ)を出力する。
ここで、Cn Max/Min閾値(Cninパラメータの有効範囲)の求め方について説明する。Cn Max/Min閾値は、クライアント信号およびサーバフレームの規格である、クライアント信号の平均周波数(平均ビットレート)、周波数偏差およびサーバフレームの平均周波数、周波数ゆらぎから算出可能である。
【0073】
以下に1GbEをOPU0へマッピングする場合のCn Max/Min閾値の算出例を示す。
C8 max=(fc+100ppm)/(fs−20ppm)×15232=14409.04・・・(2a)
C8 min=(fc−100ppm)/(fs+20ppm)×15232=14405.58・・・(2b)
式(2a)から、小数点以下繰り上げて、C8 max=14410となり、式(2b)から、小数点以下切り捨てて、C8 min=14405と求まる。なお、fcはクライアント信号のビットレート、fsはOPU0のペイロードのビットレートである。また、15232はOPU0のペイロードのバイト数である。
【0074】
図13の説明に戻り、アラーム通知部23b−4は、パラメータ補正制御部23b−3でCninパラメータが補正されたときの補正量を記憶する。そして、外部から与えられるアラーム閾値にもとづき、記憶した補正量がアラーム閾値を超えた場合にアラーム(Cn Out Of Range)を出力する。
【0075】
出力されたアラームは、NMSを通じてオペレータに通知される。なお、補正量は、パラメータ補正制御部23b−3に入力するCninパラメータから最大値または最小値を差し引いた値であって、有効範囲からはみ出した量に該当する。
【0076】
なお、アラーム閾値には、GMPにより算出したCn値の演算誤差によって、アラームが発生する可能性を除去するための保護段数を設定する。例えば、GMP演算精度により、Cnの演算誤差が±1で発生する場合で、補正量が2以上であるときにアラームを出力させるには、アラーム閾値に2を設定する。
【0077】
Cm/ΣCndパラメータ演算部23b−5は、パラメータ補正制御部23b−3から出力された、補正後のCnpパラメータから、CmパラメータおよびΣCndパラメータを算出する。
Cmパラメータとは、CnパラメータをMバイト(m=8×M)単位で表現した値である。Mはクライアント信号毎に決まっており、例えば、1GbEはM=1、OC48はM=2、100GbEはM=80である。したがって、クライアント信号がOC48、サーバフレームの周期が1sec、周波数偏差が0の場合は、Cm=C8/2=155520となる。
【0078】
Cmパラメータの算出式は以下の式(3)となる。
Cm(t)=int((fclient/fserver)×((Bserver/8)/M))・・・(3)
一方、Cndパラメータとは、CnパラメータとCmパラメータとの差分値である。上記のCmパラメータが求められる場合は、CnパラメータをMで割って小数点以下を切り捨てた値(Cm’とする)となるため、CnとCm’×Mとの間に差が生じる。この差がCndパラメータである。
【0079】
例えばCn=101、M=2の場合は、Cm’=101÷2≒50であるから、Cn−Cm’×M=101−50×2=1となり、Cnd=1である。
Cndパラメータの算出式は以下の式(4)となる。
【0080】
Cnd=Cn(t)−(((8×M)/n)×Cm(t))・・・(4)
また、サーバフレーム周期毎にCndパラメータを足し合わせたものがΣCndである(ただし、ΣCndがM以上になった場合には、ΣCndからMを引き、Cmの値をCm’+1)。
【0081】
なお、Cm/ΣCndパラメータ演算部23b−5によって求められたCmパラメータおよびΣCndパラメータの各値は、サーバフレームの受信側のデマッピング処理を行うための制御データとして、サーバフレームのオーバヘッド中のJC(Justification Control)バイトに格納されて転送される。
【0082】
次にパラメータ補正制御の動作について説明する。図14はパラメータ補正制御の動作を示すフローチャートである。
〔S1〕NMSからCn Max/Min閾値およびアラーム閾値が設定される。
【0083】
〔S2〕アラーム通知部23b−4は、動作開始直後や復旧直後に初期化動作を行う。具体的には、補正量の記憶量を0とし、アラームをディセーブル(disable)にする。
〔S3〕Cnパラメータ演算部23b−1は、Cnパラメータを生成する。
【0084】
〔S4〕加算部23b−2は、受信したCnパラメータと補正量とを加算し、加算した値をCninパラメータとして出力する。
〔S5〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cninパラメータが最大値Cn Maxを超えるか否かを判断する。最大値を超える場合はステップS6へ行き、超えない場合はステップS7へ行く。
【0085】
〔S6〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cn Maxを超えた量を補正量(=Cnin−Cn Max)とする。また、最大値Cn MaxをCnpパラメータとする(Cnp←Cn Max)。そして、ステップS10へ行く。
【0086】
〔S7〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cninパラメータが最小値Cn Minを下回るか否かを判断する。最小値を下回る場合はステップS8へ行き、下回らない場合はステップS9へ行く。
【0087】
〔S8〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cn Minを下回った量を補正量(=Cnin−Cn Min)とする。また、最小値Cn MinをCnpパラメータとする(Cnp←Cn Min)。そして、ステップS10へ行く
〔S9〕パラメータ補正制御部23b−3は、最小値Cn Minを下回っておらず、最大値Cn Maxを超えていない場合は(最小値Cn Minと最大値Cn Maxとの間の有効範囲に入っている場合は)、今回の補正量を0とする。
【0088】
〔S10〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cnpパラメータを出力する。
〔S11〕アラーム通知部23b−4は、補正量がアラーム閾値以上であるか否かを判断する。アラーム閾値以上であればステップS12へ行き、そうでなければステップS13へ行く。
【0089】
〔S12〕アラーム通知部23b−4は、アラーム設定をイネーブルにしてアラームを出力する。
〔S13〕アラーム通知部23b−4は、アラーム設定をディセーブルにしてアラーム出力を停止する。
【0090】
このように、補正量が加算されたCninパラメータと、Cn Max/Min閾値とを比較して、CninパラメータがCn Max/Min閾値の範囲内にある場合は、Cninパラメータの値を出力し、CninパラメータがCn Max/Min閾値を超過する場合は、Cn Max閾値の値またはCn Min閾値の値を出力して、Cninパラメータの補正を行う構成とした。これにより、信号周波数のゆらぎが抑制されるので、対向装置へ伝搬することを抑制することが可能になる。
【0091】
また、対向装置のFIFOのアンダーフロー/オーバーフロー(OTN伝送装置耐力)前にアラームを通知することができるので、転送データの崩れを事前に通知することが可能になる。さらに、アラーム通知により、マッピング/デマッピングの過程で、どの装置で許容範囲を超える周波数ゆらぎが発生したかについて、NMSなどでオペレータが認識することができる。
【0092】
なお、上記では、アラーム通知の判定に、Cnパラメータに累積される補正量を用いることで、Cnパラメータの演算誤差によって発生されるアラーム誤通知の抑制を可能にしている。
【0093】
ここで、単純に、クライアント信号の周波数を上位フレームの周波数でカウントすると、期待した範囲内のCnがフレーム毎に算出できる。
しかし、クライアント信号を受信してから上位フレームにマッピングするまでに中間処理が必要な場合、イネーブル制御や中間クロック信号への乗せ替えが発生するため、カウントしたCnが期待する範囲を超える(または下回る)可能性がある。例えば1GbEクライアント信号は、ODU0フレームにマッピングする前に64B/65Bエンコード処理が必要である。
【0094】
演算誤差の大きさは中間処理の構成によって異なるため、演算誤差の大きさに応じてアラーム閾値を可変設定できるように、Cnパラメータに累積される補正量に対するアラーム閾値を外部から設定するようにして、演算誤差によって発生されるおそれのあるアラーム誤通知を抑制している。
【0095】
次にCnpパラメータの遷移と補正量との対応関係について説明する。図15はパラメータ遷移と補正量との対応関係を示す図である。グラフg1は、Cnpパラメータの遷移を示し、縦軸はCnin値、横軸は時間である。また、グラフg1中、点線波形はCninパラメータであり、実線波形はCnpパラメータである。グラフg2は、補正量の遷移を示しており、縦軸は補正量、横軸は時間である。
【0096】
1GbEのクライアント信号をOPU0へマッピングする場合の例を示しており、Cn Max=14410、Cn Min=14405を設定し、アラーム閾値は2とする。周波数ゆらぎが生じているポイントP1〜P3についてみる。
【0097】
まず、ポイントP1では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14404で、補正量=−1、Cnpパラメータ=14405となる。補正量は、アラーム閾値の上限値と下限値との間の範囲にあるのでアラーム通知は行わない。
【0098】
ポイントP2では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14411で、補正量=+1、Cnpパラメータ=14410となる。補正量は、アラーム閾値の上限値と下限値との間の範囲にあるのでアラーム通知は行わない。
【0099】
ポイントP3では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14411、14412と続くと、補正量が+1、+3と変動してアラームが通知される。その後、Cninパラメータが14411、14409、14408と続くと、補正量が+4、+3、+1と変動し、アラームが解除される。
【0100】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 伝送装置
1a 比較部
1b 補正部
1c 加算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送を行う伝送装置および周波数ゆらぎを補償する周波数ゆらぎ補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の基幹網を支える伝送技術の1つに、OTN(Optical Transport Network)があり、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)で標準化されている。
【0003】
OTNは、SONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)、Ethernet(登録商標)等のクライアント信号を収容し、階梯構造を持つフレームを生成して、WDM(Wavelength Division Multiplexing)などの伝送を行う技術である。
【0004】
一方、近年になって、既存の階梯構造との接続性を維持しながら、多様なクライアント信号をいかに収容して、効率よく信号伝送を実現するかのOTN拡張の議論が高まっている。
【0005】
OTN拡張の一例としては、LO(Lower order)−ODU(Optical Channel Data Unit)、HO(High order)−ODUのクライアント収容方式がある。これは、クライアント信号として、SONET/SDHやEthernet等のデータ信号の他に、例えば、フレーム構造を持った信号も多重化して収容させることで、クライアント信号収容の柔軟性を高めようとするものである。
【0006】
クライアント信号として収容されるフレームがLO−ODUと呼ばれ、LO−ODUの格納先のフレームがHO−ODUと呼ばれる。LO−ODUは、HO−ODUのペイロード領域内にマッピングされて送信され、受信側において、LO−ODUのフレーム同期が検出されてモニタリングが行われる。
【0007】
一方、クライアント信号をODUフレームへ収容する際のマッピング手法としてGMP(Generic Mapping Procedure)が規格化(ITU−T G.709/Y.1331)されている。GMPは、収容先のフレームのペイロード容量以下の任意のビットレートのクライアント信号を収容することができるため、多様なクライアントへのサポートが可能になる。
【0008】
従来技術として、LO−ODUに対するマッピング技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010−541509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
GMPは、収容先のフレームのペイロード容量以下の任意のビットレートのクライアント信号を段階的にマッピング(またはデマッピング)していくことが可能であるが、マッピングの途中で、伝送信号に対する周波数ゆらぎ(周波数偏差)を検出し抑制する仕組みを持っていない。
【0011】
したがって、OTNの伝送装置において、伝送信号の周波数が規格を超えるゆらぎを持ったような場合、マッピングを行っていく過程で、周波数ゆらぎが伝送装置間を伝播してしまうことになる。
【0012】
このように、従来のGMP方式では、マッピングを行っている際に周波数ゆらぎが発生しても、途中経路で補償されないため、周波数ゆらぎが対向の装置へ伝搬してしまい、伝送品質を劣化させるといった問題があった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った伝送装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った周波数ゆらぎ補償方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、伝送装置が提供される。伝送装置は、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較する比較部と、前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の超過分を解消するように前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行う補正部と、前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算する加算部とを有する。
【発明の効果】
【0015】
周波数ゆらぎの伝搬を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】伝送装置の構成例を示す図である。
【図2】ネットワーク構成例を示す図である。
【図3】接続インタフェースの一例を示す図である。
【図4】伝送装置の構成例を示す図である。
【図5】OTNのフレーム階梯構造を示す図である。
【図6】OTUのフレームフォーマットを示す図である。
【図7】LO−ODUのフレームフォーマットを示す図である。
【図8】GMPのマッピングの様子を示す図である。
【図9】周波数伝搬を説明するための図である。
【図10】周波数伝搬を説明するための図である。
【図11】LO−ODUkマッピング部の構成例を示す図である。
【図12】LO−ODUkデマッピング部の構成例を示す図である。
【図13】制御部の構成例を示す図である。
【図14】パラメータ補正制御の動作を示すフローチャートである。
【図15】パラメータ遷移と補正量との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は伝送装置の構成例を示す図である。伝送装置1は、比較部1a、補正部1bおよび加算部1cを備える。
比較部1aは、信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと閾値とを比較する。
【0018】
補正部1bは、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の超過分を解消するように閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う。
【0019】
加算部1cは、閾値に対して前回の入力パラメータの超過量である補正量を検出し、補正量を今回の比較対象の入力パラメータに累積加算する。
このように、補正量が累積加算された入力パラメータと、公称周波数に対応する閾値とを比較して、入力パラメータが閾値の範囲内にある場合は、入力パラメータの値を出力し、入力パラメータが閾値を超過する場合は、閾値の値を出力して、入力パラメータの補正を行う構成とした。これにより、信号周波数を閾値内の有効範囲に収めることができるので、周波数ゆらぎが対向装置へ伝搬することを抑制することが可能になる。
【0020】
次に伝送装置1をOTNに適用した例について以降説明する。最初にOTNの構成について説明する。図2はネットワーク構成例を示す図である。ネットワーク100は、OTN2、イーサネットワーク4およびSONET/SDHネットワーク5を備える。
【0021】
イーサネットワーク4は、スイッチ41〜44を含み、メッシュ状に接続している。SONET/SDHネットワーク5は、ADM(Add/Drop Multiplexer)51〜54を含み、リング状に接続している。OTN2は、OTN伝送装置2−1〜2−4を含み、リング状に接続している。
【0022】
また、OTN伝送装置2−1は、スイッチ41、42と接続し、OTN伝送装置2−2は、スイッチ43、ADM51と接続し、OTN伝送装置2−3は、スイッチ44、ADM52と接続し、OTN伝送装置2−4は、ADM53、54と接続している。
【0023】
図3は接続インタフェースの一例を示す図である。OTN伝送装置2−1は(OTN伝送装置2−2〜2−4も同一接続インタフェースを有する)、クライアント側インタフェースとネットワーク側インタフェースを有している。
【0024】
クライアント側インタフェースは、イーサネットワーク4またはSONET/SDHネットワーク5との接続インタフェースであり、ネットワーク側インタフェースは、OTN2内のインタフェースである。
【0025】
クライアント側インタフェースとして、例えば、100GbE(Gigabit Ethernet)、40GbE、OC(Optical Channel)768、FC(Fiber Channel)1200、10GbE、OC192、OC48、1GbEを有している。
【0026】
また、ネットワーク側インタフェースとして、例えば、OTU(Optical Channel Transport Unit)4(112G)、OTU3(43.0G)、OTU2(10.7G)、OTU1(2.5G)を有している。
図4はOTN伝送装置の構成例を示す図である。OTN伝送装置2−1は(OTN伝送装置2−2〜2−4も同一構成)、HOインタフェース部10a、10bおよびLOインタフェース部20−1〜20−nを備え、ADM(Add/Drop Multiplexer)機能を有する装置である。
【0027】
LOインタフェース部20−1〜20−nは、クライアントインタフェース部2a−1、2a−2、LO−ODUkマッピング部2bおよびLO−ODUkデマッピング部2cを含む。
HOインタフェース部10aは、OTUkインタフェース部11a−1、11a−2、OTUkデマッピング部12a、HO−ODUk分離部13a、HO−ODUk多重部14aおよびOTUkマッピング部15aを含む。
【0028】
HOインタフェース部10bは、OTUkインタフェース部11b−1、11b−2、OTUkデマッピング部12b、HO−ODUk分離部13b、HO−ODUk多重部14bおよびOTUkマッピング部15bを含む。
【0029】
LOインタフェース部20−1〜20−nにおいて、クライアントインタフェース部2a−1は、クライアント信号の受信処理を行う。LO−ODUkマッピング部2bは、受信したクライアント信号をLO−ODUkにマッピングする。
【0030】
LO−ODUkデマッピング部2cは、受信したLO−ODUkをクライアント信号にデマッピングする。クライアントインタフェース部2a−2は、クライアント信号の送信処理を行う。
HOインタフェース部10aにおいて、OTUkインタフェース部11a−1は、OTUkの受信処理を行う。OTUkデマッピング部12aは、受信したOTUk信号をHO−ODUkにデマッピングする。HO−ODUk分離部13aは、受信したHO−ODUkを分離してLO−ODUkを出力する。
【0031】
HO−ODUk多重部14aは、受信したLO−ODUkを多重して、HO−ODUkにマッピングする。OTUkマッピング部15aは、受信したHO−ODUkをOTUkにマッピングする。OTUkインタフェース部11a−2は、OTUkの送信処理を行う。
【0032】
HOインタフェース部10bにおいて、OTUkインタフェース部11b−1は、OTUkの受信処理を行う。OTUkデマッピング部12bは、受信したOTUk信号をHO−ODUkにデマッピングする。HO−ODUk分離部13bは、受信したHO−ODUkを分離してLO−ODUkを出力する。
【0033】
HO−ODUk多重部14bは、受信したLO−ODUkを多重して、HO−ODUkにマッピングする。OTUkマッピング部15bは、受信したHO−ODUkをOTUkにマッピングする。OTUkインタフェース部11b−2は、OTUkの送信処理を行う。
【0034】
次にOTNのフレーム構成について説明する。図5はOTNのフレーム階梯構造を示す図である。OTNのフレームは、階梯構造をとり、下位レイヤから上位レイヤに向かって、OPU(Optical Channel Payload Unit)フレーム、ODU(Optical Channel Data Unit)フレーム、OTU(Optical Channel Transport Unit)フレームと呼ばれる。
【0035】
SONET/SDH、Ethernet等のクライアント信号をペイロードとし、このペイロードに制御情報であるオーバヘッド(OH)を付加してOPUフレームが生成される。
また、OPUフレームにオーバヘッドを付加してODUフレームが生成される。さらに、ODUフレームにオーバヘッドと誤り訂正符号(FEC:Forward Error Correction)を付加してOTUフレームが生成される。
【0036】
なお、ペイロードに収容されるクライアント信号には、SONET/SDH、Ethernet等のデータ信号の他に、LO−ODUのフレームも収容可能である。
図6はOTUのフレームフォーマットを示す図である。OTUフレームは、オーバヘッド領域、ペイロード領域およびFEC領域を備える。
【0037】
オーバヘッド領域は、1列目〜16列目の16バイト×4行のフレームサイズを有し、ペイロード領域は、17列目〜3824列目の3808バイト×4行のフレームサイズを有し、FEC領域は、3825列目〜4080列目の256バイト×4行のフレームサイズを有する。
【0038】
オーバヘッド領域には、OPUフレームのオーバヘッドであるOPU−OHと、ODUフレームのオーバヘッドであるODU−OHと、OTUフレームのオーバヘッドであるOTU−OHとが含まれる。さらに、フレームの先頭を示すFAS(Frame Alignment Signal)が含まれる。
【0039】
FASは、1行目の1列目〜6列目に配置され、OTU−OHは、1行目の7列目〜14列目に配置される。ODU−OHは、2行目〜4行目の1列目〜14列目に配置され、OPU−OHは、1行目〜4行目の15列目〜16列目に配置される。
【0040】
図7はLO−ODUのフレームフォーマットを示す図である。LO−ODUフレームは、オーバヘッド領域とペイロード領域を備える。LO−ODUは、ODUフレームにFASが付加されたフレームフォーマットを有しており、オーバヘッド領域には、FAS、ODU−OHおよびOPU−OHが含まれる。
【0041】
なお、LO−ODUがマッピングされるHO−ODUのフレームフォーマットは、ODUフレームと同じフォーマットである(オーバヘッド領域に、ODU−OHおよびOPU−OHが含まれる)。
次にGMPによるマッピング例について説明する。図8はGMPのマッピングの様子を示す図である。OPUフレームに対するGMPのマッピングの状態を示している。
【0042】
OPUのオーバヘッドの一部には、GMP用の制御パラメータが格納される。制御パラメータには、ペイロード領域に格納されるデータ量や、これらのタイミング情報が含まれる。また、GMPでは、ペイロード領域にスタッフがほぼ均等に配置されるように、データおよびスタッフがマッピングされる。
【0043】
OPUkまたはODTUkのフレーム(以下、サーバフレームと呼ぶ)の受信側では、OPUオーバヘッドの情報にもとづいて、デスタッフ処理を行うことにより、送信側と同様のクライアント信号が復元される。
【0044】
また、図中のCnパラメータは、クライアント信号を収容するOPUフレームのペイロード領域で送信すべきクライアント信号のデータ量の理論値である。Cnパラメータは、クライアント信号の周波数とサーバフレームの周波数との差にもとづいて求められ、収容されるクライアント信号のデータ量をnビット単位で表現する。
【0045】
なお、GMPでは、Cnパラメータの他にCmパラメータ、Cndパラメータが算出されるが、これらの詳細な定義および算出方法については後述する。
次にGMPによる周波数伝搬および問題点について説明する。図9、図10は周波数伝搬を説明するための図である。なお、以降に示すパラメータCnは、説明を簡単にするために、上位フレームの周波数を下位フレームの周波数で除算した値として、簡略化して算出している(Cnの詳細な算出方法は後述する)。
【0046】
〔マッピングM1〕第1のOTN伝送装置は、周波数がfcであるクライアント信号30を、周波数がfa1である上位のLO−ODU31のフレームにマッピングする。このとき、fcとfa1との比率(fa1÷fc)であるパラメータCn1を求めて、オーバヘッドに格納する。したがって、LO−ODU31には、パラメータCn1の情報が含まれる。
【0047】
〔マッピングM2〕第1のOTN伝送装置は、周波数がfa1であるLO−ODU31を、周波数がfa2である上位のHO−ODUのフレームにさらにマッピングする。このとき、fa1とfa2との比率であるパラメータCn2(=fa2÷fa1)を求めて、オーバヘッドに格納して、HO−ODU32を生成して外部へ出力する。HO−ODU32には、パラメータCn2の情報が含まれる。
【0048】
〔デマッピングD1〕第2のOTN伝送装置は、第1のOTN伝送装置から伝送されてきた、周波数fa2のHO−ODU32を受信する。HO−ODU32のオーバヘッドにはパラメータCn2が含まれるので、HO−ODU32の周波数fa2とパラメータCn2とから、LO−ODU31の周波数fa1を逆算して求めることができる。したがって、第2のOTN伝送装置は、HO−ODU32をデマッピングしてLO−ODU31を生成することができる。
【0049】
〔マッピングM3〕第2のOTN伝送装置は、周波数がfa1であるLO−ODU31を、周波数がfa3である上位のHO−ODU33のフレームにマッピングする。このとき、fa1とfa3との比率であるパラメータCn3(=fa3÷fa1)を求めて、オーバヘッドに格納して、HO−ODU33を生成して外部へ出力する。HO−ODU33には、パラメータCn3の情報が含まれる。
【0050】
〔デマッピングD2〕第3のOTN伝送装置は、第2のOTN伝送装置から伝送されてきた、周波数fa3のHO−ODU33を受信する。HO−ODU33のオーバヘッドにはパラメータCn3が含まれるので、HO−ODU33の周波数fa3とパラメータCn3とから、LO−ODU31の周波数fa1を逆算して求めることができる。したがって、第3のOTN伝送装置は、HO−ODU33をデマッピングしてLO−ODU31を生成することができる。
【0051】
〔デマッピングD3〕第3のOTN伝送装置は、LO−ODU31のオーバヘッドにはパラメータCn1が含まれるので、LO−ODU31の周波数fa1とパラメータCn1とから、クライアント信号30の周波数fcを逆算して求めることができる。したがって、第3のOTN伝送装置は、LO−ODU31をデマッピングしてクライアント信号30を生成することができる。
【0052】
上記のように、GMPによって、下位フレームから上位フレームへのマッピング、または上位フレームから下位フレームへのデマッピングを行うことができ、また、周波数の変換処理が行われる。
【0053】
しかし、従来のGMPでは、マッピングやデマッピングの途中で、周波数ゆらぎのような障害が発生しても、障害を補償する仕組みを持たないので、周波数ゆらぎが伝搬してしまうことになる。
【0054】
例えば、クライアント装置からOTN伝送装置に向けて送信されるクライアント信号のクロック周波数に±100ppmを超えるゆらぎが生じている場合を想定する。OTN伝送装置は、信号の周波数ゆらぎに対する耐力を持つとし、GMPによってクライアント信号を上位フレームへマッピングしてネットワーク内へ送信する。
【0055】
また、OTN伝送装置は、上位フレームを下位フレームにデマッピングして、クライアント信号を生成し、クライアント信号をクライアント装置に向けて送信する。
このような場合、受信側のクライアント装置に向けて送信されるクライアント信号には、周波数伝搬によって±100ppmを超えるゆらぎが生じている。受信側のクライアント装置がこの周波数ゆらぎに対する耐力を持っていないときには、該クライアント装置でエラーが検出されることになる。
【0056】
このように、従来のGMPでは、マッピング/デマッピングを行っている際に周波数ゆらぎが発生しても、途中経路で補償されないため、周波数ゆらぎが対向の装置へ伝搬してしまい、伝送品質を劣化させてしまう。
【0057】
また、この例では、送信元のクライアント装置の出力段階で周波数ゆらぎが生じているとしたが、伝送信号は、複数のOTN伝送装置間に渡って伝送されて、マッピング/デマッピングが繰り返し行われるので、従来のGMPによって、周波数ゆらぎが伝搬した際に、どこの箇所で生じているかを検出することは困難である。
【0058】
本技術はこのような点に鑑みてなされたものであり、周波数ゆらぎの伝搬を抑制して伝送品質の向上を図った伝送装置および周波数ゆらぎ補償方法を提供するものである。
次に図4で示したLO−ODUkマッピング部2bおよびLO−ODUkデマッピング部2cの構成および動作について説明する。図11はLO−ODUkマッピング部の構成例を示す図である。LO−ODUkマッピング部2bは、受信インタフェース部21b、FIFO(First In First Out)22b、制御部23b、マッピング部24bおよび送信インタフェース部25bを備える。
【0059】
なお、制御部23bには、NMS(Network Management System)6が接続し、NMS6を通じて制御情報の設定、または運用状態の認識等を行うことができる。
受信インタフェース部21bは、クライアント信号の受信処理を行う。FIFO22bは、受信インタフェース部21bから送信される書き込みイネーブルWenにもとづいて、受信インタフェース部21bから出力されたクライアント信号を格納する。
【0060】
制御部23bは、書き込みイネーブルWenとフレームパルスFpとを受信し、パラメータCnの補正処理を行う(図13以降で後述)。また、読み出しイネーブルRenと、パラメータCmおよびパラメータ累積Cnd(ΣCnd)を出力する。
【0061】
FIFO22bは、読み出しイネーブルRenにもとづき、クライアント信号を出力する。マッピング部24bは、クライアント信号を上位フレームにマッピングする。また、パラメータCmおよびパラメータΣCndの制御パラメータを上位フレームのオーバヘッドに挿入する。送信インタフェース部25bは、マッピング部24bから出力された上位フレームの送信処理を行う。
【0062】
図12はLO−ODUkデマッピング部の構成例を示す図である。LO−ODUkデマッピング部2cは、受信インタフェース部21c、デマッピング部22c、FIFO23c、制御部24cおよび送信インタフェース部25cを備える。
【0063】
なお、制御部24cには、NMS6が接続し、NMS6を通じて制御情報の設定、または運用状態の認識等を行うことができる。
受信インタフェース部21cは、上位フレームの受信処理を行う。デマッピング部22cは、上位フレームを下位フレームにデマッピングする。FIFO23cは、制御部24cから出力された書き込みイネーブルWenにもとづき、下位フレームを格納する。
【0064】
制御部24cは、デマッピング部22cから出力されたCmパラメータとΣCndパラメータにもとづいて、デスタッフ処理を行う。送信インタフェース部25cは、FIFO23cから出力された下位フレームの送信処理を行う。
【0065】
次に図11のLO−ODUkマッピング部2b内の制御部23bの構成について説明する。図13は制御部の構成例を示す図である。制御部23bは、Cnパラメータ演算部23b−1、加算部23b−2、パラメータ補正制御部23b−3、アラーム通知部23b−4およびCm/ΣCndパラメータ演算部23b−5を備える。
【0066】
なお、図1の加算部1cは、加算部23b−2に該当する。また、図1の比較部1aおよび補正部1bの機能は、パラメータ補正制御部23b−3に含まれる。
Cnパラメータ演算部23b−1は、クライアント信号の書き込みイネーブルWenと、収容すべきサーバフレーム(OPUkまたはOPTDUk)のフレーム周期を示すフレームパルスFpとを受信し、フレーム周期単位に、クライアント信号のクロック数(またはFIFOへの書き込み回数)を認識して、Cnパラメータを算出する。
【0067】
Cnパラメータは、サーバフレームとクライアント信号の周波数から求めた、サーバフレームへ収容すべきクライアント信号のデータ量(nビット単位で表現)に該当する。
ここで、Cnパラメータの算出方法について説明する。クライアント信号のビットレート(bitrate)とトレランス(tolerance)をfclientとし、OPUkのペイロード、またはODTU(Optical channel Data Tributary Unit)kのビットレートとトレランスをfserverとする。
【0068】
さらに、OPUkのペイロードまたはODTUkのビット数(BserverはOPUkまたはODTUkの種類に応じて変化)をBserverとし、nを整数値、tをt番目のフレームとすると、Cnパラメータは以下の式(1)で算出される(int(x)はxの整数部を表す)。
【0069】
Cn(t)=int((fclient/fserver)×(Bserver/n))・・・(1)
なお、nはクライアント毎に決まっており、基本はn=8であり、OC3、OC12、OC48はn=1である。例えばクライアント信号がOC48、サーバフレームの周期が1sec、それぞれの周波数ゆらぎが0である場合には、C1=2488320、C8=311040となる。
【0070】
図13の説明に戻り、加算部23b−2は、Cnパラメータと、パラメータ補正制御部23b−3から出力された補正量とを加算して、Cninパラメータ(入力パラメータ)を生成して出力する。
【0071】
パラメータ補正制御部23b−3は、公称周波数の閾値に該当する、Cninパラメータの最大値および最小値(Cn Max、Cn Min)を受信する。なお、Cn Max/Minの閾値は、NMSから設定可能である。
【0072】
また、最大値と最小値との間を有効範囲として、Cninパラメータの丸めこみ補正(平滑化)処理を行い、補正後のCninパラメータ(以下、Cnpパラメータと呼ぶ)を出力する。
ここで、Cn Max/Min閾値(Cninパラメータの有効範囲)の求め方について説明する。Cn Max/Min閾値は、クライアント信号およびサーバフレームの規格である、クライアント信号の平均周波数(平均ビットレート)、周波数偏差およびサーバフレームの平均周波数、周波数ゆらぎから算出可能である。
【0073】
以下に1GbEをOPU0へマッピングする場合のCn Max/Min閾値の算出例を示す。
C8 max=(fc+100ppm)/(fs−20ppm)×15232=14409.04・・・(2a)
C8 min=(fc−100ppm)/(fs+20ppm)×15232=14405.58・・・(2b)
式(2a)から、小数点以下繰り上げて、C8 max=14410となり、式(2b)から、小数点以下切り捨てて、C8 min=14405と求まる。なお、fcはクライアント信号のビットレート、fsはOPU0のペイロードのビットレートである。また、15232はOPU0のペイロードのバイト数である。
【0074】
図13の説明に戻り、アラーム通知部23b−4は、パラメータ補正制御部23b−3でCninパラメータが補正されたときの補正量を記憶する。そして、外部から与えられるアラーム閾値にもとづき、記憶した補正量がアラーム閾値を超えた場合にアラーム(Cn Out Of Range)を出力する。
【0075】
出力されたアラームは、NMSを通じてオペレータに通知される。なお、補正量は、パラメータ補正制御部23b−3に入力するCninパラメータから最大値または最小値を差し引いた値であって、有効範囲からはみ出した量に該当する。
【0076】
なお、アラーム閾値には、GMPにより算出したCn値の演算誤差によって、アラームが発生する可能性を除去するための保護段数を設定する。例えば、GMP演算精度により、Cnの演算誤差が±1で発生する場合で、補正量が2以上であるときにアラームを出力させるには、アラーム閾値に2を設定する。
【0077】
Cm/ΣCndパラメータ演算部23b−5は、パラメータ補正制御部23b−3から出力された、補正後のCnpパラメータから、CmパラメータおよびΣCndパラメータを算出する。
Cmパラメータとは、CnパラメータをMバイト(m=8×M)単位で表現した値である。Mはクライアント信号毎に決まっており、例えば、1GbEはM=1、OC48はM=2、100GbEはM=80である。したがって、クライアント信号がOC48、サーバフレームの周期が1sec、周波数偏差が0の場合は、Cm=C8/2=155520となる。
【0078】
Cmパラメータの算出式は以下の式(3)となる。
Cm(t)=int((fclient/fserver)×((Bserver/8)/M))・・・(3)
一方、Cndパラメータとは、CnパラメータとCmパラメータとの差分値である。上記のCmパラメータが求められる場合は、CnパラメータをMで割って小数点以下を切り捨てた値(Cm’とする)となるため、CnとCm’×Mとの間に差が生じる。この差がCndパラメータである。
【0079】
例えばCn=101、M=2の場合は、Cm’=101÷2≒50であるから、Cn−Cm’×M=101−50×2=1となり、Cnd=1である。
Cndパラメータの算出式は以下の式(4)となる。
【0080】
Cnd=Cn(t)−(((8×M)/n)×Cm(t))・・・(4)
また、サーバフレーム周期毎にCndパラメータを足し合わせたものがΣCndである(ただし、ΣCndがM以上になった場合には、ΣCndからMを引き、Cmの値をCm’+1)。
【0081】
なお、Cm/ΣCndパラメータ演算部23b−5によって求められたCmパラメータおよびΣCndパラメータの各値は、サーバフレームの受信側のデマッピング処理を行うための制御データとして、サーバフレームのオーバヘッド中のJC(Justification Control)バイトに格納されて転送される。
【0082】
次にパラメータ補正制御の動作について説明する。図14はパラメータ補正制御の動作を示すフローチャートである。
〔S1〕NMSからCn Max/Min閾値およびアラーム閾値が設定される。
【0083】
〔S2〕アラーム通知部23b−4は、動作開始直後や復旧直後に初期化動作を行う。具体的には、補正量の記憶量を0とし、アラームをディセーブル(disable)にする。
〔S3〕Cnパラメータ演算部23b−1は、Cnパラメータを生成する。
【0084】
〔S4〕加算部23b−2は、受信したCnパラメータと補正量とを加算し、加算した値をCninパラメータとして出力する。
〔S5〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cninパラメータが最大値Cn Maxを超えるか否かを判断する。最大値を超える場合はステップS6へ行き、超えない場合はステップS7へ行く。
【0085】
〔S6〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cn Maxを超えた量を補正量(=Cnin−Cn Max)とする。また、最大値Cn MaxをCnpパラメータとする(Cnp←Cn Max)。そして、ステップS10へ行く。
【0086】
〔S7〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cninパラメータが最小値Cn Minを下回るか否かを判断する。最小値を下回る場合はステップS8へ行き、下回らない場合はステップS9へ行く。
【0087】
〔S8〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cn Minを下回った量を補正量(=Cnin−Cn Min)とする。また、最小値Cn MinをCnpパラメータとする(Cnp←Cn Min)。そして、ステップS10へ行く
〔S9〕パラメータ補正制御部23b−3は、最小値Cn Minを下回っておらず、最大値Cn Maxを超えていない場合は(最小値Cn Minと最大値Cn Maxとの間の有効範囲に入っている場合は)、今回の補正量を0とする。
【0088】
〔S10〕パラメータ補正制御部23b−3は、Cnpパラメータを出力する。
〔S11〕アラーム通知部23b−4は、補正量がアラーム閾値以上であるか否かを判断する。アラーム閾値以上であればステップS12へ行き、そうでなければステップS13へ行く。
【0089】
〔S12〕アラーム通知部23b−4は、アラーム設定をイネーブルにしてアラームを出力する。
〔S13〕アラーム通知部23b−4は、アラーム設定をディセーブルにしてアラーム出力を停止する。
【0090】
このように、補正量が加算されたCninパラメータと、Cn Max/Min閾値とを比較して、CninパラメータがCn Max/Min閾値の範囲内にある場合は、Cninパラメータの値を出力し、CninパラメータがCn Max/Min閾値を超過する場合は、Cn Max閾値の値またはCn Min閾値の値を出力して、Cninパラメータの補正を行う構成とした。これにより、信号周波数のゆらぎが抑制されるので、対向装置へ伝搬することを抑制することが可能になる。
【0091】
また、対向装置のFIFOのアンダーフロー/オーバーフロー(OTN伝送装置耐力)前にアラームを通知することができるので、転送データの崩れを事前に通知することが可能になる。さらに、アラーム通知により、マッピング/デマッピングの過程で、どの装置で許容範囲を超える周波数ゆらぎが発生したかについて、NMSなどでオペレータが認識することができる。
【0092】
なお、上記では、アラーム通知の判定に、Cnパラメータに累積される補正量を用いることで、Cnパラメータの演算誤差によって発生されるアラーム誤通知の抑制を可能にしている。
【0093】
ここで、単純に、クライアント信号の周波数を上位フレームの周波数でカウントすると、期待した範囲内のCnがフレーム毎に算出できる。
しかし、クライアント信号を受信してから上位フレームにマッピングするまでに中間処理が必要な場合、イネーブル制御や中間クロック信号への乗せ替えが発生するため、カウントしたCnが期待する範囲を超える(または下回る)可能性がある。例えば1GbEクライアント信号は、ODU0フレームにマッピングする前に64B/65Bエンコード処理が必要である。
【0094】
演算誤差の大きさは中間処理の構成によって異なるため、演算誤差の大きさに応じてアラーム閾値を可変設定できるように、Cnパラメータに累積される補正量に対するアラーム閾値を外部から設定するようにして、演算誤差によって発生されるおそれのあるアラーム誤通知を抑制している。
【0095】
次にCnpパラメータの遷移と補正量との対応関係について説明する。図15はパラメータ遷移と補正量との対応関係を示す図である。グラフg1は、Cnpパラメータの遷移を示し、縦軸はCnin値、横軸は時間である。また、グラフg1中、点線波形はCninパラメータであり、実線波形はCnpパラメータである。グラフg2は、補正量の遷移を示しており、縦軸は補正量、横軸は時間である。
【0096】
1GbEのクライアント信号をOPU0へマッピングする場合の例を示しており、Cn Max=14410、Cn Min=14405を設定し、アラーム閾値は2とする。周波数ゆらぎが生じているポイントP1〜P3についてみる。
【0097】
まず、ポイントP1では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14404で、補正量=−1、Cnpパラメータ=14405となる。補正量は、アラーム閾値の上限値と下限値との間の範囲にあるのでアラーム通知は行わない。
【0098】
ポイントP2では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14411で、補正量=+1、Cnpパラメータ=14410となる。補正量は、アラーム閾値の上限値と下限値との間の範囲にあるのでアラーム通知は行わない。
【0099】
ポイントP3では、補正量が0のとき、Cninパラメータが14411、14412と続くと、補正量が+1、+3と変動してアラームが通知される。その後、Cninパラメータが14411、14409、14408と続くと、補正量が+4、+3、+1と変動し、アラームが解除される。
【0100】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 伝送装置
1a 比較部
1b 補正部
1c 加算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較する比較部と、
前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の超過分を解消するように前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行う補正部と、
前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算する加算部と、
を有することを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
アラーム通知部をさらに備え、前記アラーム通知部は、アラーム閾値を有して、前記補正量の累積加算値が前記アラーム閾値を超過した場合に、アラームを通知することを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
周波数ゆらぎ補償方法において、
信号周波数に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較し、
前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行い、
前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算することを特徴とする周波数ゆらぎ補償方法。
【請求項4】
アラーム閾値を有して、前記補正量の累積加算値が前記アラーム閾値を超過した場合に、アラームを通知することを特徴とする請求項3記載の周波数ゆらぎ補償方法。
【請求項1】
信号周波数を示すデータ量に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較する比較部と、
前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の超過分を解消するように前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行う補正部と、
前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算する加算部と、
を有することを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
アラーム通知部をさらに備え、前記アラーム通知部は、アラーム閾値を有して、前記補正量の累積加算値が前記アラーム閾値を超過した場合に、アラームを通知することを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
周波数ゆらぎ補償方法において、
信号周波数に対応するパラメータに、公称周波数に対応する閾値を設け、前記パラメータに対して補正量が累積加算された入力パラメータと前記閾値とを比較し、
前記入力パラメータが前記閾値の範囲内にある場合は、前記入力パラメータの値を出力し、前記入力パラメータが前記閾値を超過する場合は、前記閾値の値を出力して、前記入力パラメータの補正を行い、
前記閾値に対して前回の前記入力パラメータの超過量である前記補正量を検出し、前記補正量を今回の比較対象の前記入力パラメータに累積加算することを特徴とする周波数ゆらぎ補償方法。
【請求項4】
アラーム閾値を有して、前記補正量の累積加算値が前記アラーム閾値を超過した場合に、アラームを通知することを特徴とする請求項3記載の周波数ゆらぎ補償方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−248989(P2012−248989A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117800(P2011−117800)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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