説明

伸縮性粘着包帯

【課題】長手方向への伸縮性と基材の薄さと柔軟性を維持し、かつ、剥離ライナーをできるだけ少ない作業手順で全て剥離することへの要求を満たしながらも、剥離ライナーを種々の手順に応じて剥離し貼付することへの要求をも満たす、伸縮性粘着包帯を提供すること。
【解決手段】帯状布製基材1の片面上に粘着剤層2と剥離ライナー3とがこの順に積層された構成を有する伸縮性粘着包帯である。当該粘着包帯は、剥離ライナー3を剥がした状態では、長手方向にだけ伸縮性を有する。剥離ライナー3には、少なくとも帯幅方向のミシン目Kが設けられており、任意に選んだ該ミシン目が、当該粘着包帯を長手方向に引っ張り伸ばすことによって、破れて分断線へと変化するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療分野や衛生分野などにおいて、身体の局所的な固定(拘束)や、皮膚表面への医療器具やガーゼの固定などに用いることができる、伸縮性粘着包帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野や衛生分野などでは、帯状を呈する布製基材に粘着剤層が形成されてなる粘着包帯が、極めて多様な状況において様々に用いられており、例えば、身体の局所の動きを拘束する用途(所謂テーピング)や、医療器具(穿刺した状態のカテーテル、経口挿通した状態のチューブなど)を挿入部位の周囲の皮膚に固定する用途、ガーゼなどと共に患部を保護する用途などが挙げられる。
【0003】
粘着包帯を貼り付けたり巻き付けたりすることによって貼付部位の動きを拘束する用途では、非伸縮性の帯状布製基材を用いた粘着包帯が用いられる。また、貼付部位が、屈曲部や湾曲部など、皮膚面が伸縮するような部位である場合には、該貼付部位の動きを拘束しながらも、皮膚の動きに適度に追従する必要もあるので、伸縮性を持った帯状布製基材を用いた粘着包帯(「伸縮性粘着包帯」などと呼ばれている)が用いられる。
【0004】
従来製品化されている伸縮性粘着包帯は、一般的な粘着テープの様に長い帯状を呈しており、その長手方向のみに伸縮性を有し、帯幅方向(長手方向と直角に交わる方向)には実質的に伸縮性を有さない(特許文献1参照)。
このような長手方向のみに伸縮性を有する伸縮性粘着包帯は、皮膚面に貼付する際に、長手方向に適度に伸長させながら貼付することによって、貼付部位の動きを好ましく拘束することができる。
【0005】
一方、皮膚に穿刺したカテーテルや点滴針、口内に挿入したチューブなど、種々の医療器具をそれらの挿入部位(穿刺口や唇)の周囲に伸縮性粘着包帯を用いて固定する場合、該伸縮性粘着包帯は、それら医療器具と皮膚の両方の外形表面に沿って貼り付き、確実に両者を固定しなければならず、しかも、その状態で皮膚や口の動きに適度に追従しなければならない。
しかし、本発明者らが、前記のような粘着包帯の使用状態を詳細に観察したところ、帯幅方向への伸縮性が実質的に無いために、皮膚面や口などの動きに追従しない結果、該粘着包帯が剥離し脱落したり、伸縮性の無い方向についての過剰な応力が皮膚に加わり、長時間の貼付では皮膚にカブレや水泡が発生する場合があることがわかった。
【0006】
そこで本発明者らは、上記の問題を軽減すべく、帯状布製基材をより柔軟にした。
この改良によって、伸縮性粘着包帯は、コシ(剛性)が十分に小さくなり、皮膚や口から突き出した医療器具の曲面に良好に巻き付いて該器具と周囲の皮膚とを互いに良好に固定しながらも、周囲の皮膚の動きにも十分に追従できるようになった。
ところが、前記のように帯状布製基材をより柔軟にし、長手方向にのみ伸縮性を持たせた粘着包帯の使用状況を詳細に調べたところ、取扱い性が悪いと感じている使用者(該粘着包帯を用いて固定や貼付等の作業を行う者)が多いことがわかった。
【0007】
取扱い性が悪いと感じる共通の根本原因は、帯状布製基材を柔軟にしたことによって粘着包帯全体にコシ(剛性)が無くなり、そのために、剥離ライナーを剥がしていく時や、剥離ライナーを剥がした後に、該粘着包帯が手(ゴム手袋を装着している場合が多い)にまとわり付きやすくなったという点にある。
しかし、単に剛性が無いというだけではなく、使用者の貼り方、とりわけ剥離ライナーを剥がして貼付するまでの手順が使用者ごとに異なることが原因で、使用者ごとに取扱い性が悪いと感じる事項が異なっていることもわかった。
【0008】
ここで、実際に医療現場に供給した伸縮性粘着包帯(以下、単に「粘着包帯」ともいう)は、図6(a)のように、長い帯状を呈し、これをその粘着面を覆う剥離ライナーと共にロール状に巻いた一般的な形態である。帯幅は、用途に応じて種々のものが提供されている。
剥離ライナーには、図6(b)のように、該剥離ライナー200の帯状の中央に長手方向に沿った1本の分断線(該剥離ライナーを剥がすときのきっかけとなる切れ目)K10を全長にわたって設けている場合がある。図6(b)では、剥離ライナー200の左端の一部を分断線K10を利用して剥がし、その下の粘着包帯100の粘着面を見せている。
【0009】
本発明者らは、使用者が取扱い性が悪いと感じている事項をより詳細に知るべく、次の(A)、(B)の項目に着目しながら前記粘着包帯の使用状況を観察・調査した。尚、観察の対象とした作業は、腕の内側の皮膚に穿刺された末梢静脈留置針(点滴針)を、両方向に伸縮性を持った粘着包帯で単純に覆い皮膚に固定するという作業である。
(A)使用者は、剥離ライナーに設けられた分断線を利用して、どのように剥離ライナーを剥がし、どのように粘着包帯を目的部位に貼付しているのか。
(B)使用者は、前記(A)の作業のうちのどのような瞬間において取扱い性が悪いと感じているのか。
【0010】
本発明者らの観察・調査の結果、先ず、上記(A)については、個人のスキルや好みによって多種多様であったが、主として、次の(a1)、(a2)の手順が多いことがわかった。
(a1)図7(a)に示すように、粘着包帯100から、粘着剤層の表面を覆っている剥離ライナー200をいったん全て剥がしてしまい、次いで、図7(b)に示すように、粘着包帯の両端縁を両手の指先で保持しながら、該粘着包帯で目的部位(点滴針の穿刺部位)全体を同時に覆うようにまたは端から順次に覆うように貼付する手順。同図に符号Tで示しているのは、点滴針に連結されたチューブである。
(a2)図8(a)に示すように、分断線を利用して粘着包帯100から片方の剥離ライナー210だけを剥がし、図8(b)に示すように、剥離ライナーが残っている半分の領域110の両端部を保持しながら、粘着面が露出した部分で目的部位の半分を覆うように貼付し、次いで、残った剥離ライナーを分断線の側から矢印の方向へ剥がして取り出しながら、残り半分の領域110を順次貼付していく手順。ここで、図8(b)において粘着包帯に描かれた破線は、かくれ線であって、同図の粘着包帯100の半分の領域110の裏側(皮膚側)に、図8(a)に示した剥離ライナー210が残っていることを意味している。
【0011】
次に、上記(B)については、上記(a1)の手順を行う使用者は、剥離ライナーを全て剥がす作業(図7(a))の時点で、粘着面同士が互いに付着したり、手先の意図せぬ部分に付着するなど、剛性が無いことによる取扱い性の悪さを感じている。そして、貼付(図7(b))の時点でも、全面的に剛性が無くなった粘着包帯が手先にまとわりついて離れ難くなったり、粘着面同士が互いに付着したりするといった状況になり易く、ここでも剛性が無いことによる取扱い性の悪さを感じている。しかし、作業ステップが複雑でなく効率が良いことや、貼付の際の目的部位への位置合わせのし易さ等から、上記(a1)の手順は好まれている。
ここで、上記(a1)のような剥離ライナーを全面的に剥がすことを好む使用者は、作業効率の点から、剥離ライナーを一気に全面的に剥がすことを望む場合が多く、その点から、剥離ライナーの分断線の存在が作業の邪魔であり、剥離ライナーを2回に分けて剥がす作業に取扱い性の悪さを感じることが多いということがわかった。
一方、上記(a2)のような手順を好む使用者は、粘着包帯の半分の領域に剥離ライナーが残っているので(図8(b))、上記(a1)の手順ほどは、剛性が無いことに起因する取扱い性の悪さは感じてはいない。しかし、剥離ライナーを剥がした領域に全く触れないように貼付することは困難であるため、やはり、剥離ライナーを剥がした領域のコシの無さについての取扱い性の悪さを感じている。
【0012】
上記のように、剛性の無さに起因した取扱い性の悪さについては、評価が共通しているが、基材の剛性を従来どおり大きくすると、皮膚や口の動きへの追従性が悪いという最初の問題が持ち上がるので、帯状布製基材の柔軟性は変えることはできない。
また、上記(a2)のように剥離ライナーを2回に分けて剥がす手順(分断線が必須である)を好む使用者がいる一方で、上記(a1)のように剥離ライナーを一気に全面的に剥がすこと(分断線が邪魔である)を望む使用者がおり、それらの相反する要求を同時に満たすことは困難であることがわかった。
【0013】
またさらに、次の(a3)のような手順が可能となるように、剥離ライナーの分断線を改善することを望んでいる使用者がいることもわかった。
(a3)図9(a)に示すように、剥離ライナーを2本の分断線によって3分割し、中央の剥離ライナー230だけを剥がし、図9(b)に示すように、粘着面が露出した中央部分で目的部位を覆うように貼付し、次いで、同図のように、残った両側の剥離ライナー220、240を中央部分側から両外側へと剥がしながら、粘着包帯を順次貼付していく手順。
前記(a3)のような手順は、粘着面にほとんど触れることなく貼付を行うことが可能であり、しかも、剥離ライナーを順次剥がして行くにつれて、粘着包帯が皮膚に貼付されていくので、剛性の無い部分の面積が大きくなることもなく、よって、剛性が無いことによる取扱い性の悪さを感じることもない。
前記(a3)のような手順を可能にするためには、剥離ライナーに対して帯幅方向の分断線を2本平行に設ける必要があり、粘着包帯のロール全体では、この2本1組にした分断線を適当な間隔をおいて設ける必要がある。
しかし、そのような分断線の組を設けると、上記(a3)の手順を行う使用者にとっても、その2本1組の分断線がちょうど中央に位置するように粘着包帯を切り取るには、手間がかかり、無駄に捨てる部分が生じる場合もある。
また、そのような2本1組の分断線の組を設けると、分断線が増加するので、上記(a1)において剥離ライナーを一気に全面的に剥がすことを望む使用者にとっては取扱い性がさらに悪くなる。また、上記(a2)の手順を行う使用者にとっても、貼付の手順(特に剥離の方向)が異なるので好ましいことではない。しかし、両者の分断線を加え合わせて、分断線を長手方向と帯幅方向の両方に設けたのでは、上記(a1)において剥離ライナーを一気に全面的に剥がす手順を望む使用者にとってはさらに取扱い性が悪くなり、また、剥離ライナーが直交する分断線で細かく切れるので、結局、上記(a2)、(a3)の操作もスムーズにはできなくなる。
【0014】
以上のように、帯状布製基材をより柔軟にしたことによって生じた取扱い性の低下の問題は、その剛性をもとに戻して解決することはできず、また、剥離ライナーの分断線の変更による対処では、ある使用者にとっての改良が、他の使用者にとっては改悪となるため、使用者全体が取扱い性に満足するように問題を解決することは非常に困難な状況にあることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭62−252495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、上記の問題点を解決し、長手方向への伸縮性を維持し、かつ、剥離ライナーをできるだけ少ない作業手順で全て剥離することへの要求を満たしながらも、剥離ライナーを種々の手順に応じて剥離し貼付することへの要求をも満たす、伸縮性粘着包帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、粘着包帯に対して付与された長手方向への伸縮性に着目し、剥離ライナーに対して帯幅方向のミシン目を付与すれば、該ミシン目は、そのままでは分断線としては機能しないが、使用者が該ミシン目を中心として粘着包帯を長手方向に引張り伸ばすことによって、該ミシン目が破れて1本の分断線に変化することを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
【0018】
(1)帯状布製基材の片面上に、粘着剤層と剥離ライナーとが、この順に積層された構成を有する伸縮性粘着包帯であって、
当該伸縮性粘着包帯は、剥離ライナーを剥がした状態では、長手方向に対してのみ伸縮性を有し、帯幅方向には伸縮性を有さないものであり、かつ、
剥離ライナーには、少なくとも帯幅方向のミシン目が、長手方向に予め定められた間隔をおいて複数設けられており、当該伸縮性粘着包帯を長手方向に引っ張り伸ばすことによって、該ミシン目が破れて分断線へと変化するようになっている、
前記伸縮性粘着包帯。
(2)前記帯幅方向のミシン目が、前記剥離ライナーの長手方向に等しい間隔をおいて設けられている、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(3)前記帯幅方向のミシン目同士の間隔が、5mm〜30mmである、上記(2)記載の伸縮性粘着包帯。
(4)前記剥離ライナーの長手方向には、該剥離ライナーの帯幅の中央を通過する位置に、分断線、ミシン目、または、分断の連鎖を促進し得る形状となっている切れ目が連なってなるジッパーラインが設けられている、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(5)当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での長手方向の伸縮性を、長手方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、該定荷重伸び率が4〜120%である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(6)帯状布製基材が、長手方向に対してのみ伸縮性を有するように編まれた編布からなる基材である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(7)帯状布製基材を構成する繊維が、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿から選ばれる少なくとも一種の低吸水性繊維である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
【発明の効果】
【0019】
先ず、本発明の伸縮性粘着包帯は、帯状布製基材を長手方向だけに伸縮し得るように構成され、かつ、帯状布製基材が従来品よりもより柔軟になっているので、医療器具と皮膚の外形に追従して両者を好ましく固定することができ、しかも、皮膚の動きに柔軟に追従する。これによって、カブレや水泡などの皮膚障害の発生が緩和される。
さらに、カテーテルや経口挿管チューブなどの医療器具を固定する場合でも、確実に固定するだけでなく皮膚面や口の動きに対して適度に追従することができるので、粘着包帯の剥離や脱落も生じにくいという優れた効果を発揮するものである。
また、布製の基材を用いているので通気性に優れ、皮膚障害を起こし難く、特に、低吸水性繊維から得られる帯状布製基材を用いた場合には、当該伸縮性粘着包帯に撥水性を付与することもできるので、水漏れしやすい患部を保護することも可能である。
【0020】
次に、本発明では、長手方向に伸縮可能にした粘着包帯の特性を利用し、剥離ライナーに対して分断線の代わりに帯幅方向のミシン目を付与している。これによって、使用者の相反する種々の要求に同時に応えることが可能になる。即ち、
(イ)長手方向の分断線を付与せず、かつ、帯幅方向のミシン目だけを付与することによって、剥離ライナーが全面的に切れ目なくつながるので、上記(a1)の手順を行う使用者にとっては、剥離ライナーを端から最後まで途切れることなく一気に全て剥がすことが可能になる。
(ロ)長手方向の分断線を付与する態様も本発明に含まれるが、そのような態様では、剥離ライナーを剥がすステップが2回になるため、それを好まない使用者が存在することになる。これに対して、その長手方向の分断線をミシン目、または、ジッパーラインとすることで、剥離ライナーを端から最後まで途切れることなく一気に全て剥がすことも可能になる。以下、長手方向に沿って設けられる、分断線、ミシン目、または、ジッパーラインを総称して、「分断線等」と呼ぶ。
長手方向の分断線等を利用すれば、上記(a2)の手順にて、図8(a)〜図8(b)に示したような貼付作業を行うことも可能になる。
(ハ)図2に示すように、帯幅方向に付与したミシン目のなかから適当な2本のミシン目Ka、Kbを選び、これらのミシン目を、前記(ロ)のように粘着包帯を長手方向に引張ることで破れば、同図の中央部分mの剥離ライナーだけを簡単に剥がすことができるようになる。この操作によって、上記(a3)の手順にて、図9(a)〜図9(b)に示したような貼付作業を行うことが可能になる。
【0021】
また、図3(a)に示すように、大きく間隔をおいた2本の帯幅方向のミシン目Kc、Kdを中央まで破り、それらの間にある長手方向の分断線等Jaを利用し、これらで囲まれた剥離ライナーを剥がすことによって、同図のようにU字状(コの字形)の剥離ライナーを残すことができる。これによって、粘着包帯の剛性が無くとも、剛性を持った剥離ライナーが3方をフレームのように取り囲んでいるので取扱いや貼付作業が容易になる。
【0022】
またさらに、図3(b)に示すように、長手方向の分断線等Jを利用して剥離ライナーを半分(図では上半分)剥離し、中央の帯幅方向のミシン目Keを破ることによって、図8(b)に示す手順の貼付が可能となる。そして、残る半分の剥離ライナーを剥がす際には、図3(b)に示す矢印のように、分断した中央のミシン目Keから剥離ライナーを両側に開くように剥がすことができ、図8(b)と図9(b)とを合わせたような手順が可能になる。
このような手順は、ドレイン等、比較的大型のチューブ類やガーゼ類を皮膚上に貼付する際の作業性が向上するのみならず、粘着包帯の伸縮性が大きくとも、該粘着包帯が伸ばされることなく貼付されるので、貼付後の粘着包帯に応力が残らず、皮膚への物理刺激が低減されるという利点がある。
【0023】
以上のように、本発明の伸縮性粘着包帯は、柔軟でありかつ長手方向への伸縮性を持ちながらも、剥離ライナーに付与したミシン目によって、使用者の相反する要求やさらなる要求を同時に満たすことが可能になっており、ミシン目をどのように破るかによって、従来にはなかった好ましい取り扱い性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の伸縮性粘着包帯の構成を示した模式図であって、図1(a)は、剥離ライナーの外面(剥離性を持った面の裏面)を正視したときの図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
【図2】図2は、本発明による伸縮性粘着包帯において、剥離ライナーに付与したミシン目の破り方を例示した図である。尚、図2(a)では、説明のために1つのミシン目Kが2つに割れて平行な2本の線となっているように描いている。
【図3】図3は、本発明による伸縮性粘着包帯において、剥離ライナーの外面を正視したときの図であって、剥離ライナーに付与したミシン目の他の破り方、剥がし方を例示した図である。また、図3(b)では、ミシン目が破れてつながった分断線Keを、分り易いように二重線で描いている。
【図4】図4は、本発明において、剥離ライナーに設けられるミシン目の態様を例示する模式図である。
【図5】図5は、本発明において、剥離ライナーに長手方向に設けられる分断線等の好ましい態様を例示した図である。
【図6】図6は、本発明に至る前の段階において、本発明者らが改善を加えた伸縮性粘着包帯の形態と、剥離ライナーの分断線の態様とを概略的に示す図である。図6(a)は、医療現場に供給される伸縮性粘着包帯の製品の形態を示す斜視図であり、図6(b)は、剥離ライナーの分断線を示すべく該剥離ライナーの外面を正視したときの図である。
【図7】図7は、本発明に至る前の段階において、本発明者らが改善を加えた伸縮性粘着包帯の貼付手順の一例を示した図である。
【図8】図8は、本発明に至る前の段階において、本発明者らが改善を加えた伸縮性粘着包帯の貼付手順の他の例を示した図である。
【図9】図9は、伸縮性粘着包帯に対して使用者が求める貼付手順の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な態様を例示しながら、本発明による伸縮性粘着包帯(以下、当該粘着包帯ともいう)の全体の構成や各部の構成を詳細に説明する。
当該粘着包帯は、図1(b)に積層構造を示すように、帯状布製基材1の片面上に粘着剤層2と剥離ライナー3とがこの順に積層された構成を有する。当該粘着包帯は、剥離ライナー3を剥がした状態では、帯状布製基材1に付与した伸縮性に起因して、長手方向のみに伸縮性を有するものであり、かつ、剥離ライナー3には、図1(a)に示すように、帯幅方向のミシン目Kが設けられている。
前記のように、粘着包帯に長手方向の伸縮性を与え、かつ、帯幅方向のミシン目を設けたことによって、任意に選んだミシン目Kが、そのミシン目を中心として当該粘着包帯を長手方向に引っ張り伸ばすことによって、破れて分断線へと変化するようになっている。
【0026】
当該粘着包帯の全体的な形態は、一般的な粘着テープと同様、帯状を呈する。よって、図6(a)のように、ロール状に巻いたものとして使用者に提供するのがコンパクトで好ましい。
当該粘着包帯の帯幅や全長は、特に限定はなく、使用者の要求に応じたものを製造すればよい。例えば、帯幅(図1(a)の寸法W1)は、12mm〜100mm程度がよく用いられ、その中から、例えば(12.5mm、25mm、50mm、75mm、100mm)などの段階的に異なる帯幅のものを提供し、使用者が選択できるようにすれば便利である。また、全長は、より長ければ、ロール状に巻いたときの直径がより大きくなるので、例えば、3m〜10m程度が適当である。
【0027】
帯状布製基材は、従来公知の粘着包帯に利用可能な繊維を用いてよく、長手方向のみに伸縮性を有するように形成したものであればよい。剥離ライナーを剥がした後の当該粘着包帯の伸縮性は、該帯状布製基材の伸縮性によってほぼ決定される。
帯状布製基材として利用可能な布素材は、特に限定されるものではないが、織布、編布、不織布などが利用可能であり、長手方向のみに対して回復性の高い伸縮性を付与するためには編布を用いることが好ましい。
編布としては、トリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編を含むタテメリヤス、および平型編、円形編を含むヨコメリヤスが挙げられる。
帯幅方向に伸縮性を抑制しながら、後述する長手方向の伸縮性(後述の「定荷重伸び率」)を満たすためには、タテ繊維およびヨコ繊維の織り方や、編み方、打ち込み繊維の本数、伸縮性繊維の打ち込みなどによって、長手方向の伸縮性を調整すればよい。
【0028】
帯状布製基材を構成する経糸(帯状布製基材の長手方向の機械的特性を支配するように織られまたは編まれる糸)および緯糸(帯状布製基材の帯幅方向の機械的特性を支配するように織られまたは編まれる糸)のそれぞれの材料は、特に限定されず、ポリエステルや、ポリウレタン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿などからなる繊維を用いることができる。
前記材料のうち、当該粘着包帯に撥水性を付与するためには、低吸水性繊維であるポリエステルや、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いることが好ましく、特にポリエステル繊維を用いることが、吸水性が低くて機械的強度も大きいので好ましい。
【0029】
帯状布製基材の経糸や緯糸、または、編み糸としての繊維の太さは、該布製基材に付与する通気性、伸縮性、柔軟性などの観点から、100デニール以下、好ましくは50デニール以下とし、機械的強度の維持、適度な水分輸送能、該布製基材と粘着剤層との密着性などの点から、5デニール以上とすることが好ましい。
帯状布製基材の厚さは、特に限定されるものではないが、貼付操作性や違和感の防止の点からは、10〜150μmが好ましく、20〜75μmがより好ましい。
【0030】
当該粘着包帯の伸縮性は、当該粘着包帯から剥離ライナーを剥がした状態で、測定方向である長手方向または帯幅方向に、0.5〔N/5mm幅〕の荷重(即ち、幅5mm当たり0.5〔N〕の荷重)が加わったときの定荷重伸び率〔(もとの長さからの伸び量ΔL/もとの長さL)×100〕によって規定される。以降、この条件で測定された定荷重伸び率を、単に「定荷重伸び率」という。
該定荷重伸び率は、以下の測定方法によって得ることができる。
(i)剥離ライナーを剥がした当該粘着包帯を、縦100mm、横5mmの長方形の試験片へと切り出す。ここで、当該粘着包帯の長手方向を縦の方向と一致させた試験片(長手方向用試験片)と、当該粘着包帯の帯幅方向を縦の方向と一致させた試験片(帯幅方向用試験片)とを、それぞれ準備する。
(ii)引張り試験機を用い、前記試験片をチャック間距離30mmで固定する。
(iii)速度300mm/minで、破断するまで引張り、荷重とそのときの伸び量とを計測し、S−S曲線(応力−歪み曲線)を得る。長手方向用試験片、帯幅方向用試験片に対して、それぞれの試行は3回とする。
(iv)長手方向用試験片、帯幅方向用試験片について得られたそれぞれのS−S曲線から、長手方向、帯幅方向のそれぞれについて、0.5〔N/5mm幅〕の時の伸び率を算出する。
【0031】
本発明において、粘着包帯に付与される長手方向への伸縮性は、皮膚や医療器具への貼付性を良好にするだけでなく、剥離ライナーの帯幅方向のミシン目を破って分断線とするための必須の要件となっている。
剥離ライナーの帯幅方向のミシン目を破るために最低限必要な長手方向の伸縮性は、ミシン目がどの程度の伸びで破れるかに関係するが、後述する剥離ライナーの材料(主として紙)であれば、微量な伸びを与えれば破断する。よって、当該粘着包帯の長手方向について定荷重伸び率4%以上の伸縮性を確保すれば、該ミシン目を破ることが可能になる。
【0032】
長手方向の定荷重伸び率の値は特に限定はされないが、4%〜120%、より好ましくは40%〜120%、特に70%〜120%であれば、皮膚や医療器具への表面の凹凸に良好に追従して両者の表面によく密着するという効果が強く現れる。その他、貼付後の皮膚の動き等に違和感無く追従すると共に、貼付中の皮膚刺激も軽減される。
また、長手方向の定荷重伸び率を小さくすると、医療器具を皮膚上に固定する性能が向上する。即ち、定荷重伸び率が大きいほど、粘着包帯の皮膚への追従性能が高くなる反面、荷重がかかる医療器具の固定においては、粘着包帯が荷重によって伸びることによる固定性能の低下の恐れが高まる。そこで、長手方向の定荷重伸び率を4〜30%程度に小さく設定すれば、長手方向を器具の荷重がかかる方向に向けて貼付することによって、医療器具を固定する性能が維持されるという効果が強く現れる。その他、粘着包帯を剥離ライナーから剥がすときには、使用者は長手方向に一気に剥がす傾向がある。この場合、長手方向の伸縮性が大きくなるほど、粘着包帯が剥離ライナーから離れる瞬間に生じる弾性収縮が大きくなり、粘着面同士が貼り付く可能性が大きくなる。そこで、長手方向の定荷重伸び率を、4〜30%程度に小さく設定すれば、剥離ライナーを剥がす時の粘着包帯の弾性収縮がより小さくなるので、粘着面の不要な貼り付きが低減されるという利点も得られる。
【0033】
当該伸縮性粘着包帯が〔帯幅方向には伸縮性を有さない〕とは、上記のように規定した定荷重伸び率の値が、帯幅方向に対して4%未満であることを意味する。とりわけ、〔長手方向に伸縮性を有し、帯幅方向に伸縮性を有さない〕という異方性の特徴が顕著になるためには、両者の伸縮性が互いに近似していないことが好ましく、その点からは、帯幅方向の定荷重伸び率は3%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。
【0034】
破断強度は、使用時に粘着包帯にかかる荷重に対する耐久性や操作性の点から、帯幅方向で10〜40〔N/5mm幅〕、長手方向で10〜50〔N/5mm幅〕の強度を有するように調整することが好ましい。
【0035】
粘着剤層は、従来公知の粘着包帯の粘着剤層と同様のものであってよいが、医療器具や皮膚面に粘着固定し得る接着力を有すると共に、帯状布製基材の伸縮性や皮膚面の動きに対して剥がれることなく追従する伸縮性と接着力とを有するものが好ましい。
具体的には、JIS Z0237に規定された方法に準じて、室温下でのベークライト板に対する180°ピーリング接着力試験において、2〜10〔N/20mm幅〕、好ましくは3〜6〔N/20mm幅〕の接着力を発揮するものが望ましい。
このような接着力を発揮する粘着剤としては、特に限定はされないが、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤などを用いることができる。これらのうち粘着特性の調整が容易であることや、低皮膚刺激性であることなどから、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、これに共重合可能な単量体を共重合させ、必要に応じて各種架橋剤による化学的架橋や、電子線や紫外線などの放射線照射による物理的架橋を施したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0036】
主成分単量体としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数2〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40〜99重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲で用いることができ、共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルなどのアルコキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルエステルなどのアルコキシル基含有単量体、2−ビニルピロリドンなどの酸アミド基含有単量体のほか、酢酸ビニルやアミノ基含有単量体などを、目的に応じて適宜一種以上選択して1〜60重量%の範囲で共重合させることができる。
【0037】
粘着剤層の厚さは、皮膚への追従性や固定性などを考慮して適宜決定されることが好ましいが、例えば、10〜180μm、好ましくは15〜150μm、さらに好ましくは20〜80μm程度に設定することが望ましい。
粘着剤層は、帯状布製基材全面に均一厚さに設けてもよいし、ドット状、条状(直線的または曲線的なストライプ状)、格子状、種々の模様を描くパターンなどとして設けてもよい。
粘着剤層を条状に設ける場合の各条の進行パターンは、条状の粘着層同士の間に条状の空間が通気路として機能するように確保されていればよく、例えば、直線状ストライプ、波状ストライプ、三角波状ストライプ、のこぎり波状ストライプ、台形波状ストライプ、これらを組み合わせたストライプなどが好ましいパターンとして挙げられる。これらのうち、皮膚接着力の確保や端縁部の捲れ防止などの点から波状ストライプ(正弦波状ストライプを代表とする、所謂、ウェーブ状の塗工形状)が好ましい。
【0038】
剥離ライナーは、一般的に皮膚へ貼付する医療用粘着テープなどに用いられるものを使用することができる。剥離ライナーの具体的な構成例としては、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙などの表面に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの剥離性を有する剥離剤をコーティング処理したものや、基材(上質紙にレジンをアンカーコートした基材や、上質紙にポリエチレン樹脂などをラミネートした基材など)の表面に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの剥離性能を有する剥離剤をコーティング処理したものなどが挙げられる。
剥離ライナーの厚さは、特に限定はされないが、本発明では、単に剥がすだけでなく、ミシン目に沿って破れることが重要である点から、80〜120μm程度が好ましい厚さである。
【0039】
剥離ライナーに帯幅方向に設けられるミシン目は、図4に示すように、該剥離ライナーの外面を見たときに、短い分断線(切れ目)や、微小な貫通孔(目打ち)が、分断を意図する経路に沿って一定間隔をおいて並んだものである。ミシン目は、その進行方向に直交する方向に手で引っ張ったときに容易に破れるものであればよい。ミシン目の代表的な態様は、破線や点線である。
図4(a)に示す例では、該ミシン目は、短い分断線を有してなる破線である。このような短い分断線は、例えば、切断用の刃物を入れることによって剥離ライナーを部分的に切って形成される。一方、図4(b)に示すような丸穴の貫通孔や、図4(c)に示すような開口形状が長円の穴(所謂、長穴)の貫通孔を有してなる点線や破線は、剥離ライナーを打ち抜いて形成し得る。
図4(a)に示すような短い分断線からなるミシン目の態様は、剥離ライナーを粘着剤層上に積層した後からでも、刃物を入れることで形成可能であるから、製造が容易であり、また、貫通孔に比べて、隣の分断線へと向かう破れを誘発し易いので、好ましい態様である。図4(a)に示す例では、短い分断線が破線を描くように並んでいるが、短い分断線が、一点鎖線、二点鎖線、または、特定の曲線の繰り返しなど、種々のパターンを描くものであってよい。
図4(a)に示す例の場合、短い分断線の個々の長さは、0.3mm〜10mm程度が好ましく、短い分断線同士の間隔(切れていない部分の長さ)は、0.5mm〜3mm程度が好ましい。
図4(b)に示す例の場合、貫通孔の口径は、0.3mm〜2mm程度が好ましく、貫通孔同士の間隔(穴が開いていない部分の長さ)は、0.5mm〜3mm程度が好ましい。
図4(c)に示す例の長円の長さ、間隔、幅は、図5(a)の分断線の長さ、分断線同士の間隔、図4(b)の貫通孔の口径(長円の幅に対応)を参照し決定すればよい。
【0040】
ミシン目の配置パターンは、使用者の要求に応じた本数や間隔とすればよい。
図1(a)はミシン目の配置パターンの好ましい一例を示している。同図の例では、帯幅方向のミシン目Kが、等しい間隔をおいて複数条、平行に設けられている。
帯幅方向のミシン目K同士の間隔W2は、図3(a)の剥がし方や、図9(a)、(b)の貼付手順を可能にする点からは、5mm〜30mmが好ましく、10mm〜25mmがより好ましい。
【0041】
本発明では、剥離ライナーに対して長手方向にも分断線やミシン目を設けてもよい。
しかし、図3(a)のように、長手方向に分断線Jを付与する態様では、剥離ライナーを剥がすステップが2回になるため、それを好まない使用者が存在することになる。また、当該伸縮性粘着包帯は、帯幅方向に伸縮性を持たないので、長手方向にミシン目を設ける場合、そのようなミシン目は、帯幅方向に引っ張り伸ばして破ることが困難であるから、ミシン目で分けられた一方の側の剥離ライナーを起こして剥がして行くことによって該ミシン目を順次破って行くことになる。ミシン目をそのように剥がしながら破っていくと、破れの方向がミシン目から逸脱し、ミシン目ラインのとおりに破れない場合がある。
これに対して、図5に示すような、ジッパーライン(即ち、分断の連鎖を促進し得る形状の切れ目が連なってなる一種のミシン目)であれば、意図したラインのとおりに破れが進行するので好ましい。ジッパーラインの切れ目の詳細な形態は、例えば、菓子などの紙箱の開口に設けられる公知の形態を参照してよい。図5(a)は、Y字状の切れ目が破線状に連なっており、同図に示すように、一方の側の剥離ライナーを剥がして行くと、ある1つのY字状の切れ目の端から生じた破れが、次のY字状の切れ目に達し易い配置構成になっている。図5(b)は、L字状の切れ目の態様を示している。
長手方向の分断線等については、中央に1本設ける態様以外に、必要な位置に複数条設けてもよい。
【0042】
剥離ライナーの外面には、帯幅方向のミシン目の位置に関連付けながら、所定間隔(例えば5cm間隔など)で目印や帯幅方向のラインを印刷しておくことで、ハサミなどで素早く必要な長さに定尺カットすることができるようになるので好ましい。
また、ミシン目に重ねてラインを印刷しておくことで、ミシン目の位置が一目瞭然となり、ミシン目の分断作業を素早く行うことができるようになる。
【実施例】
【0043】
本実施例では、当該粘着包帯を実際に製作し、長手方向への伸縮性を利用したミシン目の破り具合を確認し、かつ、種々のミシン目を利用して剥離ライナーを剥がして貼付を行ない、ミシン目の作用の確認、取扱い性の向上、貼付状態などを確認した。
【0044】
製作した粘着包帯のサンプルは、長手方向の定荷重伸び率を52%とし、帯幅方向の定荷重伸び率を3.6%とした。
サンプルの全体形状は、長さ100mm、帯幅50mmの帯状である。
【0045】
〔布製基材〕
サンプルへの加工前(裁断前)の段階では、布製基材は帯状ではなく、長さ方向の寸法400mm×幅方向の寸法100mmの長方形を呈する原反である。
該布製基材は縦伸縮織布である。縦糸は、ウレタン糸を芯糸とし、綿繊維を巻きつけた伸縮糸である。横糸は、伸縮性の無い綿糸である。厚さは700μmである。
〔粘着剤層〕
粘着剤層の材料:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシルエステル/アクリル酸共重合体)
〔剥離ライナー〕
材料と構造:ポリエチレンバインダーを用いてシリコーン樹脂被膜を張り合わせた紙
厚さ:98μm
〔ミシン目〕
剥離ライナーに付与したミシン目は、図4(a)に示す破線状の切れ目からなるものを、図1(a)に示す配置パターンにて形成したものである。
該破線の短い分断線の個々の長さは2.0mmであり、切れていない部分の長さは1.2mmである。
帯幅方向のミシン目同士の間隔W2は、15mmとした。
【0046】
〔粘着包帯サンプルの製作〕
上記布製基材を用意し、次の加工手順にて、評価用のサンプルを得た。
(イ)剥離ライナー上に、乾燥後の粘着剤層厚が50〜60μm程度となるように粘着剤溶液を塗布し、乾燥機にて加熱乾燥させ、粘着シートを形成した。
(ロ)上記(イ)で得られた粘着シートの粘着剤面に、布製基材を貼り合わせて、ローラーで圧着し、粘着包帯(原反サイズ)を得た。
(ハ)上記(ロ)で得られた粘着包帯を、粘着剤溶液を塗布する際の流れ方向が長手方向となるように、幅50mmの帯状に切り出した。
(ニ)切断跡がミシン目になるように、歯車状に刃が加工された丸刃カッターによって、剥離ライナーの外面から該剥離ライナーのみを切り、帯幅方向のミシン目を付与した。
(ホ)上記(ニ)で得られた粘着包帯を、所定の長手方向の長さとなるように切り出して、評価用のサンプルを得た。
【0047】
〔ミシン目の評価〕
上記のようにして得られたサンプルについて、剥離ライナーのミシン目が破れるかどうかを試したところ、長手方向に当該粘着包帯を両手で引っ張り伸ばすことで、所望のミシン目を容易に破ることができ、分断線へと変化させ得ることがわかった。
また、ミシン目の端部を少し破ることで、その部分から、剥離ライナーを容易に剥離できることも確認した。
【0048】
〔ミシン目を利用した貼付性の評価〕
図2(b)のように当該粘着包帯を引っ張って帯幅方向の2箇所のミシン目Ka、Kbを破り、図9(a)のように中央の剥離ライナーを剥がし、末梢静脈留置針の装置モデルとして針を外した点滴用カテーテルを仮止めした下腕内側に対して、図9(b)のように貼付し、残る剥離ライナーを両側へと剥がす作業を行ったところ、いずれのサンプルも、ミシン目を破り剥離ライナーを剥がす操作および貼付の作業をスムーズに行うことが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明では、先ず、帯状布製基材を従来品よりもより柔軟にしたので、医療器具や皮膚の曲面に対しても好ましく密着するようになった。また、剥離ライナーに帯幅方向のミシン目を付与したので、使用者の用い方に応じて、剥離ライナーを一度に全て剥離し貼付することも、剥離ライナーを多種多様に剥がしながら貼付することも可能になった。
【符号の説明】
【0050】
1 帯状布製基材
2 粘着剤層
3 剥離ライナー
K ミシン目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状布製基材の片面上に、粘着剤層と剥離ライナーとが、この順に積層された構成を有する伸縮性粘着包帯であって、
当該伸縮性粘着包帯は、剥離ライナーを剥がした状態では、長手方向に対してのみ伸縮性を有し、帯幅方向には伸縮性を有さないものであり、かつ、
剥離ライナーには、少なくとも帯幅方向のミシン目が、長手方向に予め定められた間隔をおいて複数設けられており、当該伸縮性粘着包帯を長手方向に引っ張り伸ばすことによって、該ミシン目が破れて分断線へと変化するようになっている、
前記伸縮性粘着包帯。
【請求項2】
前記帯幅方向のミシン目が、前記剥離ライナーの長手方向に等しい間隔をおいて設けられている、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
【請求項3】
前記帯幅方向のミシン目同士の間隔が、5mm〜30mmである、請求項2記載の伸縮性粘着包帯。
【請求項4】
前記剥離ライナーの長手方向には、該剥離ライナーの帯幅の中央を通過する位置に、分断線、ミシン目、または、分断の連鎖を促進し得る形状となっている切れ目が連なってなるジッパーラインが設けられている、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
【請求項5】
当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での長手方向の伸縮性を、長手方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、該定荷重伸び率が4〜120%である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
【請求項6】
帯状布製基材が、長手方向に対してのみ伸縮性を有するように編まれた編布からなる基材である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
【請求項7】
帯状布製基材を構成する繊維が、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿から選ばれる少なくとも一種の低吸水性繊維である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−106719(P2013−106719A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253180(P2011−253180)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)