説明

位置検知装置および防犯センサ

【課題】 信号検知部に内蔵される部品数の削減による小型で電源を要しない、位置検知装置および防犯センサを提供すること。
【解決手段】 圧電材料から成る片持ち梁構造体14の主面上の表面弾性波共振子15および反射器16と、裏面上の磁性薄膜18と、表面弾性波共振子15に接続されたアンテナ13から成る信号検知部10と、信号検知部10に近接して移動可能な物体上の磁性体12と、表面弾性波共振子15の共振周波数と同一の周波数成分のパルス波状の送信電磁波を信号検知部10に送信する機能と、信号検知部10からの返信電磁波を受信する機能と、返信電磁波の位相を解析する機能とを備えた質問器11からなり、片持ち梁構造体14の歪みにより生ずる表面弾性波共振子15と反射器16間の距離の変化に応じた位相の変化を時間軸で解析することにより磁性体12と信号検知部10の相対的な位置情報を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の開閉を認知することが可能な表面弾性波型開閉検知機能とガラス破壊固有のAE(アコースティクエミッション)波を検知可能な表面弾性波型ガラス破壊検知機能を兼備可能な小型のワイヤレス防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の窓の開閉を検知する機能を有するワイヤレス防犯システムは、例えば特許文献1に開示されており、窓の開閉検知に加えて窓ガラスの破壊を検知する機能を有する無線センサシステムは、例えば特許文献2に開示されている。
【0003】
図4は、特許文献1に開示されるワイヤレス防犯システムの使用例を示す図である。2枚窓の開閉状態を監視するために適用されるワイヤレス送信器と永久磁石の必要数を軽減させてコストも軽減できるワイヤレス防犯システムを提供するものである。
【0004】
特許文献1に開示されるワイヤレス防犯システムは、2枚窓の一方の窓枠体の側縁部の幅より小さい寸法に形成されたワイヤレス送信器を、2枚窓の一方の窓枠体の側縁部に取付けるとともに、2枚窓の他方の窓枠体の対応した側縁部あるいは窓ガラスには永久磁石を取り付けた構成となし、上記ワイヤレス送信器から送出されるIDコードに開閉信号を付加した電波信号をセキュリティー受信機で受信検知して、2枚窓の開閉状態を報知するもので、上記ワイヤレス送信器は、複数の接続ピンを導出させたパッケージ内に制御回路部を実装させたICチップを内蔵しており、そのICチップの導電接続部と、上記接続ピンとを選択的にボンディング接続することによってIDコードを固定的に設定した構成となっている。
【0005】
図5は、特許文献2に開示される無線センサシステムの回路構成図である。その目的は、薄型で、且つ電池交換の頻度を大きく減らす若しくは無くすことができる無線センサ装置を提供することであって、本体ハウジングAは、窓体のガラス板の振動を検出してガラス板の破壊を検知するガラス破壊検知部2Aと、窓体の開閉を検知する開閉検知部2Bと、ガラス破壊検知部2Aの検知信号を処理するガラス破壊処理回路3Aと、開閉検知部2Bの検知信号を処理する開閉処理回路3Bと、両処理回路3A,3Bで処理された検知信号の状態に応じた電波信号を送信する超広帯域無線送信回路からなる無線送信回路4と、一次電池1からなる電源部5とを本体ハウジングA内に備えている。
【0006】
ガラス破壊検知部2Aには、ガラス破壊固有のAE(アコースティックエミッション)による振動を検知するために圧電セラミックが利用されている。また、開閉検知部2Bには、マグネットとの距離に応じて開閉するリードスイッチが利用されている。
【0007】
【特許文献1】特許第275611号公報
【特許文献2】特開2007−233626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1や特許文献2にも開示されるような従来の防犯システムやセンサシステムでは、ワイヤレス化すなわち無線化を実現するために窓の開閉検知に用いる近接センサやガラス破壊検知部の他にも、複数の電子回路から構成される信号処理回路や無線送信回路部を必須とする。そのため、部品点数が多くなり、信号検知部自体の小型化には限度がある。また、検知対象物、例えば窓枠体等の寸法や取付け位置の制限を受ける。加えて、各回路部における消費電力を賄うための電源として一次電池、例えば乾電池を利用する場合には、電池消耗に伴う定期的な点検や乾電池の交換作業が必要となるという課題が依然としてあった。
【0009】
そこで、本発明では、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的は、位置検知装置あるいは防犯センサの信号検知部に内蔵される部品点数の削減による信号検知部自体の小型化と、大幅な消費電力削減によって信号検知部自体に電源を要しない、すなわち定期的な点検や乾電池等の電源交換作業を必要としない位置検知装置および防犯センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、圧電材料から成る片持ち梁構造体の主面上の表面弾性波共振子および反射器と、主面に対向する裏面上の磁性薄膜と、表面弾性波共振子に接続されたアンテナから成る信号検知部と、信号検知部に近接して移動可能な物体に取付けられた磁性体と、表面弾性波共振子の共振周波数と同一の周波数成分を含有するパルス波状の第1の送信電磁波を信号検知部に送信する機能と、第1の送信電磁波を受信して表面弾性波共振子および反射器により散乱されて前記アンテナから返信される信号検知部からの第1の返信電磁波を受信する機能と、第1の返信電磁波の位相を解析する機能とを備えた質問器からなり、磁性薄膜と磁性体の磁気的相互作用による片持ち梁構造体の歪みにより生ずる表面弾性波共振子と反射器間の伝搬距離の変化に応じた位相の変化を時間軸で解析することにより磁性体と信号検知部の相対的な位置情報を検知する位置検知装置としている。
【0011】
磁気的相互作用による磁性薄膜の磁歪によって片持ち梁構造体の歪を生じさせても良い。
【0012】
磁気的相互作用による磁性薄膜と磁性体間の磁力に基づく磁気モーメントによって片持ち梁構造体の歪を生じさせても良い。
【0013】
磁性体を開閉可能な2枚窓の一方の窓に取り付け、他方の窓に信号検知部を磁性体に近接した位置関係にあるように配置して取り付け、磁性体と信号検知部の相対的な位置情報を検知することにより、2枚窓の開閉状態を認知する位置検知装置とすることができる。
【0014】
質問器は、表面弾性波共振子の共振周波数と同一の周波数成分を有する連続的な第2の送信電磁波を、信号検知部に送信する機能と、信号検知部からの散乱による第2の返信電磁波の変調成分を解析する機能をさらに備え、2枚窓の他方の窓のガラス破壊に伴って生じるAE(アコースティックエミッション)波の振動による共振周波数の変化と共振周波数の変化に伴う表面弾性波共振子のインピーダンスの変化に応じた第2の返信電磁波の変調成分を周波数軸で解析することにより、窓の開閉検知に加えてガラス破壊を検知する防犯センサとすることができる。
【0015】
本発明の上記の構成によれば、窓に設置する信号検知部自体には、従来必要であった複数の電子回路から構成される信号処理回路や無線送信回路部を必要としない小型のセンサとすることができるものである。
【0016】
また、信号検知部に電子回路を必要としないため、電子回路を駆動するための電源すなわち電池も不要となり、定期的な点検作業の効率が各段に向上することになる。
【0017】
磁性体には、アルニコ、フェライト、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト磁石等の永久磁石を用いることができる。
【0018】
片持ち梁構造体の材料としては、LiTaO3が好適であるが、温度特性に優れた水晶やランガサイト等の圧電単結晶や、PZT等の焼結体でもよく、また、磁性薄膜としては、組成比Co60Fe25Zr15(原子%)のものが好適であるが、強磁性体であるFe、Co、Niや超磁歪材として知られているFeと希土類元素(Tb、Dy等)の混合物質を用いても良い。
【0019】
表面弾性波共振子の共振周波数としては、2.4GHz帯域あるいは950MHz帯域を用いることができ、アンテナとしては、半波長のダイポールアンテナを用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の位置検知装置あるいは防犯センサにおいては、従来の技術に比べ部品点数が大幅に削減でき信号検知部自体の小型化が実現できる。加えて、信号検知部の電子回路を不要としたことにより消費電力が大幅に削減できるため、信号検知部の定期的な点検や乾電池等の電源の交換作業が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本発明の基本的構成および基本的な原理について、図面により詳述する。図1は、本発明の位置検知装置および防犯センサの概念構成図であり、図1(a)は、本発明の実施例に係わる位置検知装置および防犯センサの概念構成図である。図1(b)は、本発明の実施例に係わる表面弾性波型信号検出器からなる信号検知部の概念構成図である。図1(c)は、表面弾性波型信号検出器をA−A’で見た断面図である。
【0023】
本発明の位置検知装置および防犯センサは、図1(a)に示すように、2枚窓の窓枠6および窓ガラス7に対して、信号検知部10、質問器11および磁性体12から構成されている。信号検知部10には、図1(b)に示す表面弾性波型信号検出器が図示しないセラミックパッケージ内に納められており、さらにアンテナを有する。
【0024】
表面弾性波型信号検出器は、図1(b)および図1(c)に示すように、圧電材料から成る片持ち梁構造体14上に表面弾性波共振子15、反射器16、および磁性薄膜18が形成された構造となっており、信号検知部10として、アンテナ13は、表面弾性波共振子15と電気的に接続されている。
【0025】
質問器11は、表面弾性波共振子15の共振周波数f1と同一の周波数成分を含有するパルス波状の第1の送信電磁波を、信号検知部10に送信する機能と、信号検知部10からの散乱による第1の返信波電磁波の返信時間を時間軸で解析する機能と、表面弾性波共振子14の共振周波数と同一の周波数成分を有する連続的な第2の送信電磁波を、信号検知部10に送信する機能と、信号検知部10からの散乱による第2の返信電磁波の変調成分を周波数軸で解析する機能とを備えている。ここでf1としては、前述の通り、2.4GHz帯域あるいは950MHz帯域を用いることができる。
【0026】
磁性体12を開閉可能な2枚窓の一方のガラスに取り付け、窓が閉じた状態においては、他方の1枚のガラスに信号検知部10が取り付けられ、且つ磁性体12に比較的近接した位置にあるように配置している。尚、磁性体12は、アルニコ、フェライト、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト磁石等の永久磁石からなる。
【0027】
図2は、本発明における表面弾性波型信号検出器を位置検出に用いる場合の原理を説明する図である。図2(a)は、磁性体が近傍にある場合の表面弾性波型信号検出器の動作原理に係わる概念図である。面弾性波型信号検出器の近傍にある場合には、磁性体12によって加わる磁場が強く、磁歪効果、あるいは磁気モーメントにより磁性薄膜18に対する歪、あるいは力が生じる。従って、この磁歪効果、あるいは磁気モーメントにより磁性薄膜18が形成された片持ち梁構造体14が変形し、表面弾性波共振子15と反射器16間の伝搬距離が変形しない状態に比較して例えば図2(a)のように収縮する。
【0028】
一方、磁性体12が、遠方にある場合には、磁性体12から発生される磁場19が弱く、磁性薄膜18に生じる磁歪効果、あるいは磁気モーメントは小さいため、片持ち梁構造体は変形しない(図1(c)と同様であり、図示せず)。
【0029】
図2(b)は、質問器11から送信されるパルス波状の第1の送信電磁波と、表面弾性波型信号検出器で散乱された第1の返信電磁波の時間応答特性を示す図である。アンテナ13と、表面弾性波共振子15は電気的に接続されており、質問器11から送信された第1の送信電磁波の電磁エネルギーは、表面弾性波共振子15の表面弾性波の機械振動エネルギーに変換される。ここで、第1の送信電磁波は、表面弾性波共振子15の共振周波数と同一の周波数成分を含有するパルス波状の形態をなしている。
【0030】
磁性体12が遠方にあり、磁性薄膜18の磁歪効果、あるいは磁気モーメントが小さい場合には、質問器11より送信された第1の送信電磁波31と信号検知部10から返信される第1の返信電磁波32の時間差は、図2(b)に示すように、表面弾性波共振子15と反射器16間の距離に対応した時間差t1で表わされる。
【0031】
一方、磁性体12が近傍にあり、磁性薄膜18の磁歪効果、あるいは磁気モーメントが大きな場合には、第1の送信電磁波31と第1の返信電磁波33の時間差は、表面弾性波共振子15と反射器16間の伝搬距離が例えば収縮することにより、図2(b)に示すように、t2(<t1)となる。
【0032】
図2(a)においては、伝搬距離が収縮する様子が描かれているが、磁歪効果、あるいは磁気モーメントの向きによっては、伝搬距離が伸長する場合もある。その場合は、当然に伝搬時間がt1より長くなる。以上の伝搬時間の差異により、磁性体12と信号検知部10との相対的な位置情報を検知することができ、窓が閉じられた状態での時間差と比較することにより、質問器11により2枚窓の開閉状態を監視することが可能である。
【0033】
図3は、本発明における表面弾性波型信号検出器をガラス破壊検出に用いる場合の原理を説明する図である。図3(a)は、ガラスが破壊された場合の表面弾性波型信号検出器の動作原理に係わる概念図である。ガラスが割られると、ガラス破壊固有のAE波34が発生する。このAE波34を表面弾性波型信号検出器が受けて、片持ち梁構造体14は構造体自体の共振周波数f2で共鳴振動をする。
【0034】
片持ち梁構造体14の共振周波数f2は、ガラス破壊固有のAE波の周波数帯(50kHz以上)に合致するように設計される。片持ち梁構造体14が共鳴振動をする場合、アンテナ13からみたインピーダンスは、その共鳴振動に同期して変化する。従って、アンテナ13から散乱される返信電磁波の周波数も、インピーダンスの変化に応じて変化する。
【0035】
図3(b)は、質問器11から送信される連続的な第2の送信電磁波に対する表面弾性波型信号検出器で散乱された第2の返信電磁波の時間応答特性を示す図である。図3(b)に示すように、ガラスが割られた場合には、質問器11より送信される第2の送信電磁波と同一の表面弾性波共振子の共振周波数f1を有する波35を基本波として、前述の共鳴振動に基づく包絡線状の波36が形成される。この包絡線状の波36の周期は、片持ち梁構造体14の共振周波数f2に一致している。
【0036】
図3(c)は、第2の返信電磁波の信号成分のスペクトルを示す図である。このスペクトルは、第2の送信電磁波の周波数f1を基本波として、周波数軸で両側波帯に片持ち梁構造体14の共振周波数f2が存在する形態をとる。質問器11では、このような両側波帯に存在する片持ち梁構造体14の共振周波数f2と同一の周波数、すなわちf1±f2を周波数軸で検知した場合に、ガラスが割れたと認知する。
【0037】
次に、表面弾性波型信号検出器の具体的な構造およびその製造方法について説明する。
【0038】
まず、表面弾性波型信号検出器の構造および製造方法について説明する。片持ち梁構造体14の材料である36度回転Y板のタンタル酸リチウム(LiTaO3)ウエハ上に公知のスパッタリング技術、フォトリソグラフィ技術により、Ti/Al層からなる表面弾性波共振子15および反射器16を形成する。表面弾性波共振子15の共振周波数f1は、2.4GHz帯となるようにTi/Al層電極およびギャップ間隔は0.4μmとする。尚、Al層の厚みは、適度な電気機械結合係数が得るために70nmとすることが望ましい。加えて、表面弾性波共振子15を形成した面に対向する裏面には、同様に公知のスパッタリング技術、フォトリソグラフィ技術により1μm厚のCo−Fe−Zr系磁性薄膜18を形成する。尚、磁歪効果が最大となるように、磁性薄膜18の組成比はCo60Fe25Zr15(原子%)とすることが望ましい。
【0039】
ここで、片持ち梁構造体14の材料としては、前述のLiTaO3の他に、温度特性に優れた水晶やランガサイト等の圧電単結晶や、PZT等の焼結体でもよく、また、磁性薄膜18としては、強磁性体であるFe、Co、Niや超磁歪材として知られているFeと希土類元素(Tb、Dy等)の混合物質でも構わない。
【0040】
次に、支持部の形成には、セラミックパッケージの台座部分にAu−Sn半田で固定する。あるいは、シリコン基板を用いて、LiTaO3基板と陽極接合あるいは直接接合技術によって張り合せることも可能である。ここで、LiTaO3から成る片持ち梁構造体14が磁性薄膜18の磁歪効果により自由に変形可能なように、シリコン基板の一部には、RIE(リアクティブイオンエッチング)やウエットエッチング技術を用いて空洞部が形成されている。尚、本実施の形態の場合、片持ち梁構造体14の寸法として、長さ1.5mm、幅1.0mm、厚み0.25mmとする。
【0041】
アンテナ13は、表面弾性波共振子15の共振周波数f1と一致するように、2.4GHz帯の半波長ダイポールアンテナとする。具体的には、ガラスエポキシ基板上の36μm厚の銅箔を、公知のフォトリソグラフィ技術によりパターン化し、半波長ダイポールアンテナを形成する。
【0042】
加えて、質問器11からの第1の送信電磁波の周波数及び送信電力は、各々2.45GHz、+10dBmとし、受信感度を−80dBmとする。
【0043】
また、移動体である窓ガラスに取り付ける磁性体12である永久磁石としては、長さ50mm、幅40mm、厚み30mmのネオジム鉄ボロン磁石を用いる。
【0044】
また、表面弾性波共振子の共振周波数f1を950MHz帯に存在するように、Ti/Al層電極幅およびギャップ間隔は1.0μmとし、片持ち梁構造体14の寸法は、長さ1.5mm、幅1.0mm、厚み0.25mmとしても良い。
【0045】
このときの片持ち梁構造体14の共振周波数f2は、屈曲振動モードにおいて、60kHzとなる。アンテナ13も、表面弾性波共振子15の共振周波数f1と一致するように、950Hz帯の半波長ダイポールアンテナとする必要がある。
【0046】
(位置検知装置としての実施例)
2枚窓の一方の窓枠体の側縁部に取付けた磁性体12と、他方の窓枠体の側縁部に取付けられた信号検知部10および質問器11によって窓の開閉状態を監視したときの結果を説明する。表面弾性波共振子15の共振周波数f1は、2.4GHz帯とした。
【0047】
一例として、閉状態での磁性体12と信号検知部10の間隔は100mmであり、開状態での間隔は200mmとする。この場合において、質問器11から送信される第1の送信電磁波の送信時間と信号検知部10によって返信され第1の返信電磁波が到着するまでの時間差は、閉状態に相当する間隔100mmにおいては10nsecであるのに対し、開状態に相当する間隔200mmにおいては13nsecであった。尚、質問器11と信号検知部10の間隔は0.5mであった。このように、窓の開閉状態において、明確な差異が認められ、本発明の位置検知装置の効果が検証できた。
【0048】
(ガラス破壊検知機能を有する防犯センサとしての実施例)
表面弾性波共振子15の共振周波数f1を、950MHz帯とした信号検知部10を取り付けた窓ガラスを金属棒で叩き割った場合に、表面弾性波型信号検出器の片持ち梁構造体14の共振周波数f2と同一の60kHzの側波帯信号を有するスペクトルが、質問器11により、図3(c)に見られるように受信できた。
【0049】
なお、表面弾性波共振子15の共振周波数f1としては、位置検知およびガラス破壊検知に対して、特に変える必要はなく、同一の信号検知部を用いて、単に、質問器11からの送信電磁波をパルス波状の第1の送信電磁波とするか連続的な第2の送信電磁波とするかにして、返信電磁波の解析を時間軸で行うか、あるいは周波数軸で行うかの相違である。第1の送信電磁波と第2の送信電磁波は、それぞれに対する返信電磁波の受信および解析の時間を考慮した時間間隔を置いて交互に送信するようにできる。
【0050】
また、窓が開放している状態で、ガラスが破壊されることはあまりないと思われるが、窓が開放している状態においても、その時の片持ち梁構造体14の共振周波数f2を知ることは、位置検知機能による窓の開放状態に応じた共振周波数f2を予め調べておけば問題なく、また、片持ち梁構造体14の共振周波数f2が極端に変化することもないので、同様にガラス破壊の検知が可能である。
【0051】
片持ち梁構造体14の共振周波数f2に対する、磁性薄膜18および片持ち梁構造体14の歪による影響により、ガラス破壊検知の確度が影響されるような場合には、ガラス破壊検知専用の表面弾性波型信号検出器をさらに備えるようにしても良い。
【0052】
すなわち、片持ち梁構造体14と表面弾性波共振子15およびアンテナ13のみからなる表面弾性波型信号検出器をもう一個、信号検知部10内に備えるようにすれば良い。この時、例えば、表面弾性波共振子15およびアンテナ13の共振周波数を、位置検知用の共振周波数と異なるように、いずれか一方を2.4GHz帯、他方を950MHz帯としても問題はない。質問器11にそれに対する機能があれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の位置検知装置および防犯センサの概念構成図、図1(a)は、本発明の実施例に係わる位置検知装置および防犯センサの概念構成図、図1(b)は、本発明の実施例に係わる表面弾性波型信号検出器からなる信号検知部の概念構成図、図1(c)は、表面弾性波型信号検出器をA−A’で見た断面図。
【図2】本発明における表面弾性波型信号検出器を位置検出に用いる場合の原理を説明する図。図2(a)は、磁性体が近傍にある場合の表面弾性波型信号検出器の動作原理に係わる概念図、図2(b)は、質問器から送信されるパルス波状の第1の送信電磁波と、表面弾性波型信号検出器で散乱された第1の返信電磁波の時間応答特性を示す図。
【図3】本発明における表面弾性波型信号検出器をガラス破壊検出に用いる場合の原理を説明する図。図3(a)は、ガラスが破壊された場合の表面弾性波型信号検出器の動作原理に係わる概念図、図3(b)は、質問器から送信される連続的な第2の送信電磁波に対する表面弾性波型信号検出器で散乱された第2の返信電磁波の時間応答特性を示す図、図3(c)は、第2の返信電磁波の信号成分のスペクトルを示す図。
【図4】特許文献1に開示されるワイヤレス防犯システムの使用例を示す図。
【図5】特許文献2に開示される無線センサシステムの回路構成図。
【符号の説明】
【0054】
1 一次電池
2A ガラス破壊検知部
2B 開閉検知部
3A ガラス破壊処理回路
3B 開閉処理回路
4 無線送信回路
5 電源部
6 2枚窓の窓枠
7 窓ガラス
10 信号検知部
11 質問器
12 磁性体
13 アンテナ
14 片持ち梁構造体
15 表面弾性波共振子
16 反射器
17 支持台
18 磁性薄膜
19 磁場
31 第1の送信電磁波
32、33 第1の返信電磁波
34 AE波
35 第2の送信電磁波と同一の周波数成分を有する波
36 共鳴振動に基づく包絡線状の波
100 窓枠体
A 本体ハウジング
C 永久磁石
D ワイヤレス送信器
f1 表面弾性波共振子の共振周波数
f2 片持ち梁構造体の共振周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料から成る片持ち梁構造体の主面上の表面弾性波共振子および反射器と、前記主面に対向する裏面上の磁性薄膜と、前記表面弾性波共振子に接続されたアンテナから成る信号検知部と、
前記信号検知部に近接して移動可能な物体に取付けられた磁性体と、
前記表面弾性波共振子の共振周波数と同一の周波数成分を含有するパルス波状の第1の送信電磁波を前記信号検知部に送信する機能と、前記第1の送信電磁波を受信して前記表面弾性波共振子および前記反射器により散乱されて前記アンテナから返信される前記信号検知部からの第1の返信電磁波を受信する機能と、前記第1の返信電磁波の位相を解析する機能とを備えた質問器からなり、
前記磁性薄膜と前記磁性体の磁気的相互作用による前記片持ち梁構造体の歪みにより生ずる前記表面弾性波共振子と反射器間の伝搬距離の変化に応じた前記位相の変化を時間軸で解析することにより前記磁性体と前記信号検知部の相対的な位置情報を検知することを特徴とする位置検知装置。
【請求項2】
前記磁気的相互作用による前記磁性薄膜の磁歪によって前記片持ち梁構造体の歪を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の位置検知装置。
【請求項3】
前記磁気的相互作用による前記磁性薄膜と前記磁性体間の磁力に基づく磁気モーメントによって前記片持ち梁構造体の歪を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の位置検知装置。
【請求項4】
前記磁性体を開閉可能な2枚窓の一方の窓に取り付け、他方の窓に前記信号検知部を前記磁性体に近接した位置関係にあるように配置して取り付け、前記磁性体と前記信号検知部の相対的な位置情報を検知することにより、前記2枚窓の開閉状態を認知することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の位置検知装置。
【請求項5】
前記質問器は、前記表面弾性波共振子の共振周波数と同一の周波数成分を有する連続的な第2の送信電磁波を、前記信号検知部に送信する機能と、前記信号検知部からの散乱による第2の返信電磁波の変調成分を解析する機能をさらに備え、
前記2枚窓の他方の窓のガラス破壊に伴って生じるAE(アコースティックエミッション)波の振動による前記共振周波数の変化と該共振周波数の変化に伴う前記表面弾性波共振子のインピーダンスの変化に応じた前記第2の返信電磁波の変調成分を周波数軸で解析することにより、ガラス破壊を検知することを特徴とする防犯センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−128543(P2010−128543A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299398(P2008−299398)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】