説明

低反射ガラスおよびその製法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロピット状表面または凹凸状表面を有し、ピットまたは凹凸の孔の径をコントロールすることができるゾルゲル膜である低反射ガラスならびにその製法に関し、該低反射ガラスは、刺激純度、反射の低下率等の光学特性が高性能であって、しかも単純かつ安全な工程でもって製造できるので安価であり、また大面積化も可能で均一な膜となり、強固な密着力で耐摩耗性あるいは耐久性等が優れたものとなり、ことに建築用窓材をはじめ、ことに屋内用の各種膜付きガラス物品において有用となる低反射ガラスおよびその製法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術とその問題点】従来、大面積のガラスの反射率を低下させる方法として代表的なものとしては例えば、ガラス表面に、厚さ約100nm程度で屈折率がガラスより低い層を形成する方法、あるいは2層以上に積層した薄膜の多重干渉を利用して予め計算により設計された高屈折率膜・低屈折率膜を交互に積層した多層膜を形成する方法等がある。
【0003】先ず、前者の例としては、特公昭41ー666号公報あるいは特公平2ー14300号公報等に開示されているように、弗化水素等により、ガラス表面をエッチングする方法および珪弗化水素酸のシリカ過飽和水溶液によりシリカのポーラスな被膜を形成する方法がある。
【0004】これらの方法は、製造工程が簡単とは必ずしも言えず製造時間がかかる方法であり、低反射特性はよいとしても大面積化した際に製品面内あるいは製品間の光学特性のバラツキが多いといった問題点があり、比較的高価格な低反射ガラスとなるものである。さらに原料として弗酸を用いるため、人体に対して危険であり、取扱いが厄介である。
【0005】また、その他の方法としては、加熱処理により、燃焼や分解する有機高分子を金属アルコキシド溶液中に添加する方法があり、一度形成されたマイクロピット状が例えば400℃程度以上の加熱処理により緻密化を起こすため、熱処理条件をきびしく制御する必要があって、均一で頑固なマイクロピット状の被膜を得ることが非常に困難である。
【0006】さらに、前記した高屈折率膜・低屈折率膜を交互に積層し、薄膜の多重干渉を利用した反射の低いガラスを製造する方法は、実際に建築用あるいは産業用または車両用等に広く採用されているものの、複雑な作業工程を伴い、必ずしも高効率で経済性が良いとは言えないものであり、また多重干渉を利用した低反射ガラスは斜入射での反射率が高く、しかも刺激純度が高いため、ギラツキ感があるといった問題点もあるものである。さらにまた、例えば特公平3ー23493号公報には防汚性を有する低反射率ガラスが記載されているが、該膜の最終加熱温度は400℃以下、例えば160〜200℃程度にすることとなり、最上膜の硬度や強度が低いものしか得ることができないという問題点がある。本発明は、高い密着性であって耐久性や耐摩耗性とを併せ持ち、薄膜の屈折率が低く、従って反射防止特性に優れてギラツキ感もない低反射ガラスを提供すること、また、前記薄膜の成膜に際して安全で厄介な作業工程がなく、安価に効率よく生産できる低反射ガラスの製法を提供することを目的とする
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明は、従来のかかる問題点に鑑みてなしたものであって、Siアルコキシド系化合物および/またはSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とし、その縮重合度の相違から平均分子量が著しく異なる2種以上のSi系ゾルを組み合わせ、その混合割合を調整したコーティング溶液を用い、また、膜付けに際し塗布環境の相対湿度を調整して該コーティング溶液をガラス基板に塗布し、更に加熱し焼成することによって充分に加熱焼成しても型崩れせず独立してしっかりしたマイクロピット状または凹凸状表面あるいはこれらが適宜共存した特定の膜厚ならびにピットまたは凹凸の孔の特定の径を有するゾルゲル膜を形成する。
【0008】すなわち、本発明は、ガラス基板の表面に形成した薄膜において、該薄膜、Siアルコキシド系化合物及び/又はSiアセチルアセトネート系化合物出発原料とするSiO2 系のゾルであって、その縮重合度の相違により平均分子量を著しく異ならせ、一種のゾルの平均分子量が数千、他の一種以上のゾルの平均分子量が数万乃至数十万とした二種以上のSiO2 系ゾルを、その混合割合を調整して溶剤に溶解してコーティング溶液とし、また該コーティング溶液を、常温下塗布環境の相対湿度を調整して膜付けすることにより、加熱成膜のままでマイクロピット状または凹凸状表面を形成しゾルゲル膜であり、その膜厚が60〜160nm、マイクロピット状または凹凸状表面のピットまたは凹凸の孔の径が50〜200nm、かつ膜の屈折率が1.21〜1.40でガラス基板より低屈折率とした低反射ガラスである
【0009】前記二種以上のSiO2 系のゾルの混合割合において、高平均分子量のゾル1molに対して、低平均分子量のゾルが酸化物換算で0.1〜30molするとよい
【0010】また、本発明はガラス基板の表面に薄膜を形成した低反射ガラスの製法においてa)Siアルコキシド系化合物及び/またはSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とし、縮重合させることにより平均分子量数千の低平均分子量のSiO2 系ゾルと、Siアルコキシド系化合物及び/またはSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とし、縮重合させることにより平均分子量数万乃至数十万の高平均分子量のSiO2 系ゾルを製造し、前記低平均分子量のSiO2 系ゾルと前記高平均分子量のSiO2 系ゾルからなる少なくとも二種のゾルを、前記高平均分子量のゾル1molに対して、低平均分子量のゾルが酸化物換算で0.1〜30molとなるべく混合し、溶剤に溶解してコーティング溶液とし、b)該コーティング溶液を、常温下相対湿度40〜90%における適宜湿度のもと、ガラス基板上に塗布し、c)乾燥後、100℃以上に加熱し、膜の厚みが60〜160nm、マイクロピット状または凹凸状表面のピットまたは凹凸の孔の径が50〜200nm、膜の屈折率が1.21〜1.40の範囲にあるゾルゲル薄膜を形成してなる低反射ガラスの製法、から構成される。
【0011】なお、前記したコーティング溶液は1〜10cp(s)に粘度調整するのがよい。
【0012】また、前記コーティング溶液の酸化物換算固形分濃度が0.01〜10wt%であるのが望まし
【0013】なお、成膜に際し、最終的には、膜を強固にするため 500℃以上で加熱焼成しても、ピット状または凹凸状の表面は消失しない
【0014】前記したように、Siアルコキシド系化合物および/またはSiアセチルアセトネート系化合物出発原料とするのは、両化合物は安定性があって、溶液調製の際、例えば縮重合による平均分子量の制御が容易であり、成膜した前記マイクロピット状表層、凹凸状表層の種々の表面形状を有する酸化物薄膜の透明性や硬度が高く、耐久性にも優れたものとなり、原料として比較的安価で入手し易いものであるので両化合物を用いることとした。
【0015】また、Siアルコキシド系化合物としては、Siにすべてアルコキシ基のみが結合した場合、すなわちメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等のみならず、その一部がメチル基、エチル基等に置換したもの、例えばモノメチルアルコキシド、モノエチルアルコキシド等を含むものである。さらにまた、Siアセチルアセトネート系化合物としては、Siにすべてアセチルアセトン基のみが結合した場合のみならず、その一部がメチルアルコキシ基、エチルアルコキシ基等に置換したものを含むものである。
【0016】さらに、具体的は、例えばテトラメトキシシラン〔Si(OMe)4 Me:CH3 〕、テトラエトキシシラン〔Si(OEt)4 Et:C25 〕、メチルトリエトキシシラン〔MeSi(OEt)3 〕、メチルトリメトキシシラン〔MeSi(OMe)3 〕等が好適であり、また例えばジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等がある。
【0017】前記Siアルコキシド及び/又はSiアセチルアセトナートを出発原料とする平均分子量が著しく異なる二種以上のSiO2 系ゾルを採用することによ、被膜形成した薄膜の表面をマイクロピット状、凹凸状表面とすることができる。混合する2種以上のSiO2 系ゾルの平均分子量は数千(具体的には800〜5,000程度、好ましくは2,000〜3,000程度)のものと、数万から数十万(具体的には50,000〜400,000程度)のものとの組み合わせとするのがよい
【0018】なお、平均分子量の制御は、溶液を調製する際において、触媒の種類(例えば塩酸、硝酸、酢酸等)、その添加量すなわちpH値(例えばpH1〜6、好ましくは2〜4)および反応温度(例えば20〜80°C、好ましくは25〜70°C)等によって、加水分解反応過程あるいは縮重合過程をコントロールすることにより行うものである。ただし、化合物の種類によって反応速度、時間等も異なるが、それは設計者が予め実験のうえ適宜設計すればよい
【0019】また、マイクロピット状表面、凹凸状表面の形状の制御は、混合する2種以上のSiO2 系ゾルの平均分子量が数千と数万から数十万であるゾルの混合割合が、モル比(酸化物換算)で1:0.1〜30程度であり、0.1未満あるいは30を超えると平坦な平面形状となる傾向にある。なかでも1〜20程度が好ましく、より好ましくはマイクロピット状表面では2〜5.5程度、凹凸状表面では5.5〜7程度である。また、前記表面におけるマイクロピットあるいは凹凸の孔の径は、常温下(20℃前後)で膜付けする場合に、塗布環境の相対湿度に影響される兆候があり、相対湿度約40%程度の場合約50nm程度となり、約90%程度の場合約200nm程度となる。
【0020】また、前記Siアルコキシド系化合物あるいはSiアセチルアセトネート系化合物を基とするゾルはアルコール溶媒に溶解するのが一般的であり、該アルコール溶液中の化合物濃度については、0.1wt%程度以上が好ましく、これ未満であれば均一な前記表面形状を有する被膜を形成し難くなり、他方、10wt%程度を超えると、溶液が粘稠となり、クラックの発現等があり、加えて膜付け自体が困難となる。さらにアルコール溶媒としては、イソプロパノールあるいは1ーブタノール等が採用できる。
【0021】ガラス基板への膜付け法としては、ディッピング法、スプレー法、フローコート法あるいはスピンコート法等既知の塗布手段が適宜採用し得る。SiO2 系被膜を積層形成する場合は、前記したようなコーティング溶液を膜付け後、約100°C程度の雰囲気温度下で約30分以内程度の乾燥を行い、さらに次のコーティング溶液を同様に膜付け、乾燥する、という操作を繰返し、最終的には加熱焼成する。
【0022】本発明の2種類の表面形状については、縮重合度の違いにより形成されるものであって、膜を強固にするための加熱焼成(例えば約500°C以上)によっても消失することもなく、しかも独立したピットの溝部あるいは凹部は膜表面から深く形成され、それらピットや凹凸は肉眼では全くの平坦面に見えるが、鏡下(例えば走査電子顕微鏡)観察(倍率5千倍)で明確に認められる。
【0023】膜厚は60〜160nm程度とするのがよく、この範囲外では膜強度および低反射作用をともに満足することができない。マイクロピットまたは凹凸の径は50〜200nmになるようにするのがよく、50nm未満では低反射作用を発揮し得ず、200nmを超えると膜強度が低下する傾向にあり、望ましくは100〜150nm程度が好ましい。また、膜の屈折率を1.21〜1.40にするのがよく、低反射作用を呈す最適な屈折率は1.21程度であって該数値未満では著しくポーラスとなり、膜強度が充分満足し得ず、1.40を超えると低反射の効果を得難い。より望ましく、1.3〜1.39程度とするのが好ましい。なお、これら膜厚、マイクロピットや凹凸の孔の径、ならびに屈折率が前記範囲内で適宜巧みに組み合わさることによって、所期の低反射ガラスを得ることができる。
【0024】なお、公知の例えばHF等によるエッチングでは、膜厚もピットの孔の径の調整も困難であり、また例えばゾルゲル膜での有機高分子物、溶媒、水分の等による多孔質化では、通常250〜300°C付近の加熱で膜全体が一度多孔質化するが、500°C以上で加熱焼成した場合、膜の緻密化、無孔化が起こるもので、いずれのケースにおいても5千倍程度の鏡下(走査電子顕微鏡)観察では明瞭なピットまたは凹凸を確認し難い
【0025】ガラス基板としては、屈折率1. 5以上の無機質の透明板ガラスであって、無色または着色色調や、形状等に特に限定されるものではなく、さらに曲げ板ガラス、各種強化ガラス等が採用でき、単板として勿論、複層ガラスあるいは合せガラスとしても使用できることは言うまでもない。なお、合せガラスに使用する際には空気側となる片面のみ成膜することが好ましい。
【0026】
【作用】本発明のマイクロピット状表面あるいは凹凸状表面を有するゾルゲル法により形成した薄膜は、500℃以上の高温加熱に際しても、平坦化することなく、従来のものより独立性があって深みのある、明確なマイクロピット状あるいは凹凸状表面を呈し、しかも表面形状とピットまたは凹凸の孔の径を調整でき、ガラス基板に強固に付着した堅固な薄膜とすることでき、優れた耐久性を有し、透明で反射防止特性に優れ、また膜形成にあたり、安全性が高く厄介な作業工程がなく、安価に効率よく得られる。
【0027】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0028】実施例1大きさ約100mmx100mm、厚さ約3mmのクリア・フロートガラス基板(n=1.52)を中性洗剤で洗浄後、水濯ぎし、乾燥した後、被膜用のガラス基板とした。
【0029】メチルトリエトキシシランを出発原料とし、その縮重合により生成したSiO2 ゾルの平均分子量が約3,000で固形分濃度が約30wt%の溶液20.0gと、テトラエトキシシランを出発原料とし、その縮重合により生成したSiO2 ゾルの平均分子量が約100,000で固形分濃度が約6wt%の溶液28.6gをビーカーに入れ、低平均分子量のSiO2 分/高平均分子量のSiO2 分を約3.5/1のmol比とし、次いで1ーブタノール約150gで希釈し、8時間撹拌後、約2週間熟成してコーティング溶液を得た。
【0030】次に、成膜ブースで囲まれた温度約23℃、相対湿度約60%の環境下で、前記ガラス基板を前記コーティング溶液中に浸漬し引き上げ速度が約2.3mm/sのスピードで引き上げるディッピング法により、該溶液を前記ガラス基板の両表面に塗布し、3分間程度静置した後、約270°Cで10分間加熱して乾燥ゲル膜を形成した。さらに550℃程度で10分加熱し成膜した。
【0031】得られたSiO2 薄膜は、走査電子顕微鏡(SEM)により、約2万倍の倍率で表面形状状態を観察したところ、図1に示すように、その径が約100〜150nm程度のマイクロピット状の表層を呈し、ポーラスな薄膜であり、またエリプソメータによる測定から、屈折率が1.33であって、膜厚が105nmであった。
【0032】該両面薄膜付ガラス基板の反射率は、JIS Z 8722に基づき求めたところ、図4に示すように、波長約550nmで1.1%、可視光線平均反射率(D65光線ーY値)は1.2%と、反射性能に優れていたさらに該薄膜は布等で強く擦過してもキズを発生するようなことはなかった。
【0033】実施例2実施例1と同様なガラス基板とコーティング溶液を用い、他は実施例1と同様にし、引き上げ速度を3mm/sでディッピング法により膜付けし、3分間静置した後、270℃で10分加熱してゲル膜を形成した。これを600℃で10分間加熱処理して成膜した。
【0034】得られたSiO2 薄膜は、実施例1と比べて緻密化が少々進んでいるものの、実施例1と同一条件で表面形状を観察したところ、図2に示すように、その孔の径が約100nm前後程度のマイクロピット状表面を呈しており、ポーラスな薄膜であった。また実施例1と同様の測定から、屈折率が約1.395であって眼鏡等に広く使われている弗化マグネシウム膜に近い屈折率であり、膜厚が約100nmであった
【0035】該両面薄膜付ガラス基板の反射率は、図4に示すように、約550nmで約3%、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約3.1%であって実施例1に比べると低反射特性はやや低いものの、良好な反射性能を示した
【0036】さらに、テーバー摩耗特性は、摩耗輪がCSー10Fで荷重が500gfの条件により、100回の回転でヘーズ(△H)値が約0.8%であって、耐摩耗性に優れていた。
【0037】比較例1実施例1と同様なガラス基板に、実施例1の平均分子量が約100,000で溶質濃度が約0.4mol%のシリコンエトキシドのブタノール溶液を、実施例1と同様の環境下で、引き上げ速度を約3.5mm/sのスピードでガラス基板の両面にディッピング法で膜付けし、実施例1と同様な条件で加熱処理し成膜した。
【0038】得られた薄膜は、実施例1と同様な測定と評価により、図3に示すように、非常に平坦な表面であって、その屈折率が約1.45と高く、膜厚が約95nmの両面膜付ガラスとなって、その反射率は、図4に示すように、約550nmで最低となり、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約5.2%であり、低反射性能においても実施例より劣っていた
【0039】比較例2実施例2と同様な方法において、ディッピングの引き上げスピードを約0.5mm/sにして膜付けし、実施例2と同条件で加熱成膜したところ、屈折率が約1.40で膜厚が約50nmであって、実施例2に近い表面を有する両面膜付ガラスではあるが、その反射率は400nm以下の波長で最低となり、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約5.7%であり、低反射性能においても実施例より劣っていた
【0040】比較例3実施例2と同様な方法において、ディッピングの引き上げスピードを約6mm/sにして被膜し、実施例2と同条件で加熱成膜したところ、屈折率が約1.39で膜厚が約170nmであって、実施例2に近い表面を有する両面膜付ガラスではあるが、その反射率は780nm以上の波長で最低となり、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約7.1%であり、低反射性能においても実施例より劣っていた
【0041】比較例4実施例1と同様な方法において、1ーブタノールを約50g再添加した溶液を使用し、ディッピングの引き上げスピードを約1mm/sにして被膜し、実施例1と同条件で加熱成膜したところ、屈折率が約1.33で膜厚が約50nmであって、実施例1に近い表面を有する両面膜付ガラスではあるが、その反射率は400nm以下の波長で最低となり、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約5%であり、低反射性能において実施例より劣っていた
【0042】比較例5実施例1と同様な方法において、ディッピングの引き上げスピードを約8mm/sにして被膜し、実施例1と同条件で加熱成膜したところ、屈折率が約1.33で膜厚が約180nmの実施例1に近い表面を有する両面膜付ガラスではあるが、その反射率は780nm以上の波長で最低となり、可視光線反射率(D65光線ーY値)は約6.9%であり、低反射性能において実施例より劣っていた
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、容易な膜形成手段でもって薄膜を安価に効率よく得られ、該薄膜において特異な形状のマイクロピット状あるいは凹凸状表面を呈し、しかもその孔の径を調整することができ、反射防止特性に優れており、密着性、耐候性等に優れる。得られる低反射ガラスは、建築用窓材等をはじめ、各種ガラス物品などに採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の低反射ガラスの走査電子顕微鏡写真で、薄膜表面形状を示した図である。
【図2】実施例2の低反射ガラスの走査電子顕微鏡写真で、薄膜表面形状を示した図である。
【図3】比較例1の低反射ガラスの走査電子顕微鏡写真で、薄膜表面形状を示した図である。
【図4】実施例1、実施例2、比較例1、および通常のガラスにおける、分光反射率(%)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス基板の表面に形成した薄膜において、該薄膜、Siアルコキシド系化合物及び/又はSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とするSi2 系のゾルであって、その縮重合度の相違により平均分子量を著しく異ならせ、一種のゾルの平均分子量が数千、他の一種以上のゾルの平均分子量が数万乃至数十万とした二種以上のSiO2 系ゾルを、その混合割合を調整して溶剤に溶解してコーティング溶液とし、また該コーティング溶液を、常温下塗布環境の相対湿度を調整して膜付けすることにより、加熱成膜のままでマイクロピット状または凹凸状表面を形成したゾルゲル膜であり、その膜厚が60〜160nm、前記マイクロピット状または凹凸状表面のピットまたは凹凸の孔の径が50〜200nm、かつ膜の屈折率が1.21〜1.40でガラス基板より低屈折率としたことを特徴とする低反射ガラス。
【請求項2】 二種以上のSiO2 系のゾルの混合割合において、高平均分子量のゾル1molに対して、低平均分子量のゾルが酸化物換算で0.1〜30molであることを特徴とする請求項1記載の低反射ガラス。
【請求項3】 ガラス基板の表面に薄膜を形成した低反射ガラスの製法において、a)Siアルコキシド系化合物及び/またはSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とし、縮重合させることにより平均分子量数千の低平均分子量のSiO2 系ゾルと、Siアルコキシド系化合物及び/またはSiアセチルアセトネート系化合物を出発原料とし、縮重合させることにより平均分子量数万乃至数十万の高平均分子量のSiO2 系ゾルを製造し、前記低平均分子量のSiO2 系ゾルと前記高平均分子量のSiO2 系ゾルからなる少なくとも二種のゾルを、前記高平均分子量のゾル1molに対して、低平均分子量のゾルが酸化物換算で0.1〜30molとなるべく混合し、溶剤に溶解してコーティング溶液とし、b)該コーティング溶液を、常温下相対湿度40〜90%における適宜湿度のもと、ガラス基板上に塗布し、c)乾燥後、100℃以上に加熱し、膜の厚みが60〜160nm、マイクロピット状または凹凸状表面のピットまたは凹凸の孔の径が50〜200nm、膜の屈折率が1.21〜1.40の範囲にあるゾルゲル薄膜を形成すること、を特徴とする低反射ガラスの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2716330号
【登録日】平成9年(1997)11月7日
【発行日】平成10年(1998)2月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−303711
【出願日】平成4年(1992)11月13日
【公開番号】特開平6−157076
【公開日】平成6年(1994)6月3日
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−127250(JP,A)
【文献】特開 昭62−226840(JP,A)