説明

低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物及びその製造方法

【課題】 ガラス等の低収縮率物品の周縁部に熱収縮率の異なる樹脂製の枠体を一体化するにあたり、その樹脂製の枠体が温度変化によって収縮しガラス等の低収縮率物品が反るのを防止する。
【解決手段】 ガラス2の周縁部に樹脂製の枠体3を形成するにあたり、ガラス2の周縁端部にEPDMゴム発泡体等の緩衝材4を設け、これを金型5、7内にセットし、ガラス2周縁部の緩衝材4の周囲にジシクロペンタジエン樹脂を射出成形して一体化する。そして、緩衝材4によって樹脂製枠体3の収縮分を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば矩形状のガラスや陶器、セラミックス等の低収縮率物品の周縁部に枠体を一体成形する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば屋外に設置される太陽電池パネルの周縁部には、設置用の枠体が設けられることが多く、この際、枠体と電池パネルの熱収縮率の差を吸収するため、電池パネルの端縁に弾性体を装着するような技術が知られている。この際、太陽パネルと枠体を別個に形成し、太陽パネルの端縁に弾性体を取付けた後、枠体に形成される開口溝に弾性体ごと挿入して組み立てるような技術が一般的である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−243685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ガラス等の低収縮率物品(以下、本明細書では、矩形状のガラス、陶器、セラミックス等の熱収縮率の低い物品を指称するものとする。)の周縁部に熱収縮率の異なる樹脂を射出成形して一体化物を製造すると、その射出成形時及び成形後の温度変化によって一体化物中の樹脂が収縮し、その結果、一体化物が反り、ガラス等の低収縮率物品にヒビが発生したりするような不具合があった。
【0004】
一方、前記技術のように、枠体と電池パネル等を別個に形成していたため、これらを手作業で組み付ける方法は作業が煩雑で、手間がかかるとともに、組付作業にミスが生じた場合、設置不良を招いたりする問題があった。
【0005】
そこで本発明は、矩形状のガラスや陶器、セラミックス等の低収縮率物品の周縁部に熱収縮率の異なる樹脂製の枠体を一体化するにあたり、その樹脂製の枠体が温度変化によって収縮し反るのを防止すると共に、例えば太陽電池パネルとして用いる場合には、作業の簡素化を図り、確実に屋根の所定位置に組み付けて設置不良を招かないようにする低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、低収縮率物品の周縁部に枠体が一体化される一体化物であって、前記低収縮率物品の周縁端部に緩衝材が設けられ、その周囲を覆うように樹脂製枠体が射出成形により一体化されるようにした。このような一体化物にすることにより、その樹脂製の枠体が温度変化によって収縮し反るのを防止すると共に、例えば太陽電池パネルとして用いる場合には、組付作業の簡素化が図れるとともに、組付作業を確実にすることができる。
【0007】
この際、製造方法としては、低収縮率物品の周縁端部に緩衝材を設ける工程と、この緩衝材の周囲を覆うように樹脂製枠体を射出成形により一体化する工程とを設けるようにし、好ましくは、前記緩衝材が発泡体からなり、該発泡体は連続気泡と独立気泡とを有する。
このように、緩衝材が発泡体からなり、該発泡体は連続気泡と独立気泡とを有するものにすれば、成形後に樹脂製枠体が収縮しても、緩衝材が潰れて枠体の収縮分を吸収することができ、低収縮率物品に反りやヒビ等が発生しない。また、緩衝材としては、全気泡のうち少なくとも連続気泡が半分以上含まれる発泡体が好ましく、その場合、緩衝材の潰れる量が多くなって樹脂製枠体の収縮分を吸収し易くなる。
【0008】
また、前記緩衝材を、前記樹脂製枠体に包み込まれることが好ましい。
このように樹脂製枠体の外部に緩衝材を露出させないことで、特に緩衝材が発泡体の場合に、緩衝材内部に雨等の水分が浸入したり、埃等が入り込んだりするような不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
低収縮率物品の周縁部に樹脂製の枠体を一体化するにあたり、低収縮率物品の周縁端部に緩衝材を設けた後、その周囲を覆うように樹脂製枠体を射出成形で一体化することにより、その樹脂製の枠体が温度変化によって収縮し反るのを防止すると共に、例えば太陽電池パネルとして用いる場合には、組付作業の簡素化が図れるとともに、確実な組み付けが行なわれるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで、図1は本発明に係る低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物の一例を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は縦断面図、図2は図1のA−A線断面図で、(a)は緩衝材をガラス端面に設けた構成例、(b)は緩衝材でガラス端面を包み込んだ構成例、図3はガラス端面に緩衝材を設けた状態を示す図2に対応した説明図、図4は射出成形金型で成形する場合の一例を示す説明図、図5は試験に使用した一体化物の反りを説明するための説明図である。
【0011】
本発明の低収縮率物品の周縁部に枠体が一体化される一体化物1(以下、「一体化物」という。)は、図1に示すように、低収縮率物品としてのガラス2と、ガラス2の周縁部には、図2に示すような緩衝材4が設けられ、該緩衝材を包み込むように樹脂製の枠体3がガラス2と一体化されている。
【0012】
そして、このような一体化物1を太陽電池パネルに用いる場合、透光性を有するガラス2が受光面側として(ガラス2が太陽光を直接受けるように)屋上等に設置されるが、予め樹脂製の枠体3を一体化しておくことにより、運搬時や設置作業時等に作業者がガラス2端部で怪我をしたり、ガラス2が破損したりする等の不具合を抑制することができる。
そして本発明では、この樹脂製の枠体3の成形について特徴を有しており、以下、この枠体3の成形について説明する。
【0013】
従来の特許文献1に記載されているような枠体は、前述のように、枠体として別個に独立して形成され、後工程において、受光面ガラスの周囲に嵌め込まれて一体化される成形方法であるが、本発明では、この枠体3を、射出成形によりガラス2と一体に成形するようにしている。
【0014】
このため、本実施例では、図3に示すように、ガラス2の周囲に緩衝材4を設ける。この緩衝材4は、図3(a)に示すように、緩衝材4のガラス2と接する面に粘着剤層が塗布されるものをガラス2の端面に貼着してもよく、或いは図3(b)に示すように、ガラス2の端面に溝を形成し、この溝を受光面ガラス2の端面に嵌め込んだものでもよい。また、この溝の形状としては、入り口はガラス厚みより小さく(狭く)、奥に行く程大きく(広がる)形状が好ましい。
【0015】
また、この緩衝材4の材質は、後述するように射出成形時及び射出成形後の樹脂収縮に伴って、ガラス2のヒビ割れや変形等を防止するために充分な緩衝作用を発揮するものであればよく、例えば、連続気泡と独立気泡とを有する発泡体が挙げられる。そして、全気泡を100とした場合、連続気泡/独立気泡とは80/20〜20/80の割合からなるものがよい。連続気泡が全気泡の80%を超える発泡体であると、樹脂を射出成形する際に該発泡体中に樹脂が入り込み易く、その結果、成形後の環境下において樹脂製の枠体が収縮した場合、緩衝材が潰れ難くなり低収縮率物品に反りやヒビ等が発生する虞がある。連続気泡が全気泡の20%未満の発泡体であると、緩衝材が潰れ難くなり低収縮率物品に反りやヒビ等が発生する虞がある。さらに、この発泡体としては、耐熱性に優れ、且つ樹脂収縮に追従出来る弾力性を有するものが好ましく、例えばEPDM(エチレンポロピレンジエン3元共重合体)ゴム発泡体が挙げられる。
【0016】
次に、この緩衝材4を取付けたガラス2を図4に示すように金型5にセットして真空引き等により保持した後、もう一方の金型6を閉じて空間7を画成し、空間7内に樹脂を射出する。そして、ガラス2と枠体3を一体成形する。
そして本実施例では、この樹脂素材としてジシクロペンタジエンとしている。なお、樹脂素材としては、ABS樹脂、PP樹脂、PC樹脂等を用いてもよい。
【0017】
この際、図2に示すように、緩衝材4は樹脂製の枠体3に包み込まれた状態になるようにし、緩衝材4を外部に露出させないようにしている。このことにより、特に緩衝材4が発泡体の場合に、緩衝材4の内部に雨等の水分が浸入したり、埃等が入り込んだりするような不具合を防止することができる。
【0018】
次に、緩衝材4の選定に関する実験結果について説明する。
400mm×400mmの角ガラスの周囲に緩衝材4を貼り付けた。この際、ジシクロペンタジエンの樹脂収縮量が7.5/100000で、ガラスの収縮量が0と仮定し、樹脂反応温度が150℃、環境温度が20℃であったことから、樹脂収縮量を7.5/100000×(150−20)×40=3.9(mm)と計算し、片側1.95mmの収縮を吸収できるよう緩衝材の厚みを決定した。
【0019】
また、緩衝材の種類として、表1に示されるウレタンゲル、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、EPDMゴム発泡体の4種類を選定し、ウレタンゲルは4mm、発泡スチロールは4mm、発泡ポリエチレンは4mm、EPDMゴム発泡体は4mmとした。
【0020】
【表1】

【0021】
そして、緩衝材を使用しない場合をテストNo1、ウレタンゲルを緩衝材にした場合をテストNo2、発泡スチロールを緩衝材にした場合をテストNo3、発泡ポリエチレンを緩衝材にした場合をテストNo4、EPDMゴム発泡体を緩衝材にした場合をテストNo5とし、図5に示すような成形品の反り(最大値)を各辺A、B、C、Dで測定した結果、表2のような試験結果が得られた。
ここで、評価基準の×はガラスが割れてしまったもの、△はガラスは割れないものの反り値が2mm以上のもの、○は反り値が2mm以内のものである。
【0022】
【表2】

【0023】
この試験の結果、緩衝材としてテストNo5のEPDMゴム発泡体を使用した場合は、成形品のいずれの辺においても変形が2mm以内であり、評価が良好であることが確認されたが、この試験に用いたEPDMゴム発泡体のエプトシーラーNo686(日東電工社製)は、連続気泡と独立気泡とを有する発泡体であり、圧縮力を加えると、薄い状態に潰れるような特性を有していた。
【0024】
この結果、緩衝材4として、連続気泡と独立気泡とを有する発泡体を使用すると、収縮率の異なる物品の間に介在させることにより、両者の収縮差を吸収して割れや変形等を効果的に防止できることが確認された。
【0025】
また、枠体3を成形するにあたり、射出成形で一体成形することにより、最終製品の品質を均一かつ良好にできることも確認された。
【0026】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば実施例のようなガラス2の裏面側に樹脂製の枠体を設けることは必須のものではなく、また、低収縮率物品もガラスに限られるものではなく、セラミックスや陶器類やその他の収縮率の低い物品にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
低収縮率物品の周縁部に樹脂製の枠体を一体化するにあたり、周縁部に緩衝材を設けて、射出成形により枠体を一体成形することで、その樹脂製の枠体が温度変化によって収縮し反るのを防止すると共に、例えば太陽電池パネルの製造以外にも広い分野での利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物の一例を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は縦断面図
【図2】図1のA−A線断面図で、(a)は緩衝材をガラス端面に設けた構成例、(b)は緩衝材でガラス端面を包み込んだ構成例
【図3】ガラス端面に緩衝材を設けた状態を示す図2に対応した説明図
【図4】射出成形金型で成形する場合の一例を示す説明図
【図5】試験に使用した一体化物の反りを説明するための説明図
【符号の説明】
【0029】
1…一体化物、2…ガラス、3…枠体、4…緩衝材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低収縮率物品の周縁部に枠体が一体化される一体化物であって、
前記低収縮率物品の周縁端部に緩衝材が設けられ、
その周囲を覆うように樹脂製枠体が射出成形により一体化されることを特徴とする低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物。
【請求項2】
低収縮率物品の周縁端部に緩衝材を設ける工程と、
この緩衝材の周囲を覆うように樹脂製枠体を射出成形により一体化する工程を備えたことを特徴とする低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物の製造方法。
【請求項3】
前記緩衝材は、発泡体からなり、
該発泡体は連続気泡と独立気泡とを有することを特徴とする請求項2に記載の低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物の製造方法。
【請求項4】
前記緩衝材は、前記樹脂製枠体に包み込まれることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の低収縮率物品と樹脂製枠体との一体化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−239146(P2009−239146A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85527(P2008−85527)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】