体内用薬剤徐放担体
【課題】生体親和性と保水性が高く、高強度の体内用薬剤徐放担体を提供する。
【解決手段】シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体である。
【解決手段】シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内用薬剤徐放担体に関し、詳しくは、強度が高く、皮膚への親和性が高く、保水性の高い体内用薬剤徐放担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者への薬剤の投与方法としては、経口投与が知られているが、胃腸障害などの副作用や、肝臓をバイパスできず、最初に通過する代謝を回避できないこと、あるいは、治療濃度と毒性濃度間が狭い領域の薬剤の投与制御が困難であるなどの欠点を有している。
【0003】
上記課題を解決する手段として、生体内に一定期間保持される生体内徐放製剤が知られている。こうした生体内徐放製剤においては、薬効成分を安定的に長時間にわたって患部に吸収させるために、薬効成分を多孔性基材などの薬剤担体に保持させることにより、薬剤の浸透を制御する方法が提案されている。
【0004】
このような薬剤担体の材質としては、合成高分子や天然高分子のゲルや多孔質体が用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、合成高分子では生体への親和性が低いこと等の問題があった。
一方、天然高分子では生体への親和性が高いが、強度が低い等の問題があった。そのため、天然高分子では、架橋剤を用いて架橋体とする方法などで、強度を確保する必要があった。
しかしながら、架橋剤を使用した場合には、残存する架橋剤が生体に悪影響を与える懸念がある。
【0005】
ところで、シルクは、天然高分子の中でも、生体親和性が高く、従来から縫合糸などに使用されており、安全性の高いことが知られている。シルクは、セリシン、フィブロインタンパクから形成されており、様々な加工方法が提案されており、例えば、シルクフィブロインを用いたハイドロゲルが提案されている(特許文献2及び3)。しかしながら、薬剤担体として使用するには強度が弱いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−213600号
【特許文献2】特許3412014号
【特許文献3】特公平6−94518号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生体親和性と保水性が高く、高強度の体内用薬剤徐放担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シルクフィブロイン多孔質体がその材料として好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体、及び
(2)前記多孔質体の引張り強度が75〜400kPaである上記1に記載の体内用薬剤徐放担体、及び
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、強度が高く取扱が容易であり、生体親和性が高く、かつ保水性が高く、薬剤を効率的に保持することができるので、薬剤の徐放を行う場合に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例5で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例9で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例10で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例11で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例12で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例2で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例3で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例4で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】比較例5で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】比較例6で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】比較例7で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図20】比較例8で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】比較例9で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】比較例10で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図23】比較例11で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図24】比較例12で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、シルクフィブロイン多孔質体を用いることを特徴とする。
ここで、シルクフィブロイン多孔質体とは、シルクフィブロインを含む、好ましくは、10〜300μmの平均細孔径を有する多孔質体をいう。
【0012】
該シルクフィブロイン多孔質体の引張り強度は、75kPa〜400kPaであることが好ましい。75kPa以上であれば、十分な強度があり、体内用薬剤徐放担体として取扱いが容易になり、体内用薬剤徐放担体の患部への残りが少なくなる。一方、400kPa以下であれば、患部への密着性が保たれる。以上の観点から、引張り強度は80kPa〜300kPaであることがより好ましく、90kPa〜200kPaであることがさらに好ましい。
【0013】
また、本発明の体内用薬剤徐放担体は、吸水した水分を保持する保水率が高いことが好ましい。保水率が高いことで、吸収した滲出液が流出することが無い。より具体的には、保水率が85〜100%であることが好ましい。保水率が85%以上であれば、滲出液を保持するして、漏出液が流れ出すことが少ない。以上の点から、シルクフィブロイン多孔質体の保水率は、87〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。
(保水率の算出方法)
なお、保水率は次のように測定した。多孔質体を60×30×20mmに成形し、測定試料とし、純水中に十分浸漬した試料の重さを測定する(Wc)。これを再度純水中に十分浸漬し、表面を純水で濡らしたガラス製の平板(松浪ガラス製MSAコートマイクロスライドガラス、76×52mm)を45度傾けて設置し、その上に一番広い面(60×30mm面)を下にして長尺方向を上下になるように載せ、10分間静置する。その後、試料の重さを測定する(Wd)。
保水率(%)=100−(Wc−Wd)×100/(Wc)
【0014】
多孔質層の吸水速度は0.1〜1000μl/sであることが好ましく、1〜100μl/sであることがより好ましく、さらに好ましくは20〜30μl/sである。吸水速度が0.1μl/s以上であれば、滲出液を速やかに吸収して、体内用薬剤徐放担体の外に漏らすことが少ない。吸水速度が1000μl/s以下であれば、滲出液を過剰に体内用薬剤徐放担体に吸収するの防ぎ、接触部の湿潤状態を保てる。また、蒸発速度は0.01〜0.2g/m2・sであることが好ましく、0.03〜0.15g/m2・sであることがより好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.1g/m2・sである。蒸発速度が0.01以上であれば、漏出液を継続的に体内用薬剤徐放担体が吸収できる状態に保てる。蒸発速度が0.2g/m2・s以下であれば、体内用薬剤徐放担体を効率的に湿潤状態に保てる。ここで、吸水速度及び蒸発速度は以下のようにして得られる値である。多孔質層の吸水速度及び蒸発速度が上記範囲内であると、本発明の効果が良好となる。
【0015】
(吸水速度の算出方法)
シルクフィブロイン多孔質体(多孔質層)に純水を100μl滴下し、吸収されるまでの時間を測定した。吸水速度は、測定した時間を用いて、下記の式より算出した値である。測定は5回行い、その平均値を吸水速度とした。
吸水速度(μl/s)=純水滴下量/吸水に要した時間
(蒸発速度の算出方法)
シルクフィブロイン多孔質体(多孔質層)を48時間純水中に浸漬し、完全に吸水させた後、温度:40℃、相対湿度:50%の条件に設定した恒温恒湿槽中で金網上に静置し、10分経過までは1分ごとに、10分以降は2分ごとにその重量を測定し、その変化を水の蒸発量の変化とした。蒸発速度は、静置して1分後から30分までの蒸発量の変化から下記の式より算出した値である。
蒸発速度(g/m2・s)=(蒸発量の変化)/多孔質体表面積
【0016】
本発明の体内用薬剤徐放担体はシート状であることが好ましく、シートの形状は、その大きさ、形を任意に設定することができる。また、シートの厚さについても、薬剤の投与量に応じて、任意の厚さを設定することができる。そのシートの全体が、多孔質体であるものを使用することができる。
また、本発明におけるシルクフィブロイン多孔質体は、多孔質層と、その一方の面又は両面に細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする。
【0017】
上記細孔を有しないフィルム層は、実質的に細孔を有しない層であって、細孔を有しない、又は多孔質層と比較して極めて細孔の少ない層である。このようなフィルム層を有することにより、細孔を経由して液状の薬剤が移動する速度、及び蒸発や拡散する速度が遅くなるため、液透過性が低くなる。
フィルム層は表面が面積比で10%以下の細孔を有し、多孔質層は表面が面積比で50〜98%の細孔を有するものであると好ましい。また、フィルム層は、その細孔直径が0.5μm以上の細孔が20個/mm2以下(好ましくは、10個/mm2以下)であると好ましい。ここで、表面の細孔の面積比、細孔の個数及び細孔直径は、走査型電子顕微鏡写真を画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて画像処理することで測定したものである。
また、フィルム層の吸水速度は、0.1〜3.5μl/sであることが好ましく、1.5〜3.5μl/sであることがより好ましく、さらに好ましくは2〜3.5μl/sである。
さらに、フィルム層の蒸発速度は、0.03〜0.07g/m2・sであることが好ましく、0.03〜0.06g/m2・sであることがより好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.05g/m2・sである。吸水速度及び蒸発速度が上記範囲内であると、本発明の効果が良好となる。
【0018】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、多孔質層と、その一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有するシルクフィブロイン多孔質体により構成される。その使用方法としては、患部側に多孔質層が接し、患部とは反対側の対向面にフィルム層を有することが好ましい。このような体内用薬剤徐放担体を使用すると、液状の薬剤を効率よく保持することができ、該薬剤の蒸発や拡散を抑える効果があるためである。
なお、フィルム層の細孔の数は制御することができ、必要に応じて少量の細孔を有するフィルム層とすることもできる。
一方、フィルム層は、細孔が極めて少ないために、表面が平滑である。そのため、該フィルム層を患部側として使用することで、癒着を防止する機能を持たせることや、フィルム層の液透過性を制御することで薬剤の放出速度を制御することができる。
【0019】
本発明の体内用薬剤徐放担体に含ませる薬剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、レセルピン、クロニジンなどの降圧剤、ハイドロサイアザイド、ペンドロフルナサイアザイドなどの降圧利尿剤、ニトログリセリン、ソウサニリソルビドなどの抗狭心症剤、ニトログリセリン、ニトログリコール、イソソルバイトジナイトレイト、エリスリト−ルテトラナイトレイト、ペンタエリト−ルテトラナイトレイトなどの血管拡張剤、ニトラゼパム、メプロバメートなどの抗痙攣(癲癇)剤、フルフェナジン、チオリダジン、ジアゼパム、クロルプロマジンなどの精神安定剤、塩酸ジフェンヒドラジン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾールなどの抗ヒスタミン剤、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオナート、フルメタゾン、ベータメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサイタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベタゾールなどのコルチコステロイド類、アセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナミン酸、インドメタシン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビブロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、L−メントール、カンファーなどの鎮痛消炎剤、ペニシリン、オキシテトラサイクリン、硫酸フラジオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、セファレキシン、テトラサイクリンなどの抗生物質、ビタミンA、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、オクトチアミン、リボフラビン酪酸エステルなどのビタミン剤、ベンゾカイン、リドカイン、アミノ安息香酸エチルなどの麻酔剤などが挙げられる。なお、本発明の体内用薬剤徐放担体に含ませることのできる薬剤は、これらに制限されるものでなく、必要に応じて、吸収助剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジエチル−m−トリアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヒアルロン酸、サリチル酸、クロタミトン、ジエチルセバケート、ラウリルアルコール、ジメチルスルホキシド、デシメチルスルホキシドなどを配合することができ、多孔質層に含浸もしくは塗布することで、保持させることができる。これらの薬剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記薬剤の添加量としては、選択する薬剤により適宜決定されるものであるが、目安的には、形成されるシート状物中に約30〜300mg/12cm2の薬剤が吸収されるように添加される。
【0021】
また、上記薬剤の配合で用いられる溶媒としては、生体内徐放製剤として用いる必要上、人体に有害でないものであり、かつ用いる薬剤や他の生体内徐放製剤の構成部材に対して化学的に不活性なものでなければならないが、使用する薬剤を溶解または分散できるものであれば特に規定はない。具体的には、水、多価アルコールの1種または2種の混合系などを用いることができる。人体への安全性の観点からは水が最も好ましい。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビットなどが挙げられる。また、薬剤を溶剤に溶解する上においての溶解性を向上させるために、水溶性ポリマーを加えることができる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガントゴム、デンプン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
シルクフィブロイン多孔質体は、乾燥することで、硬く、脆くなるので、保湿剤を含ませることも好適な態様である。保湿剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等を使用することができる。なお、このような態様では、薬剤を含浸させる直前まで、水分量を保った状態で、乾燥を防ぐように、本発明の体内用薬剤徐放担体を密閉状態にしておくことが好ましい。
【0023】
次に、シルクフィブロイン多孔質体の製造方法について説明する。
本発明で用いられるシルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロイン水溶液に特定の添加剤を加えて、該水溶液を凍結させ、次いで融解させることにより製造することができる。
ここで用いられるシルクフィブロインは、家蚕、野蚕、天蚕等の蚕から産生されるものであればいずれでもよく、その製造方法も問わない。本発明におけるシルクフィブロイン多孔質体の製造においては、シルクフィブロイン水溶液として用いるが、シルクフィブロインは溶解性が悪く、直接水には溶解することが困難である。シルクフィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、高濃度の臭化リチウム水溶液にシルクフィブロインを溶解後、透析による脱塩、風乾による濃縮を経る手法が簡便である。
シルクフィブロイン多孔質体の製造方法において、シルクフィブロインの濃度は、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液中で0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1.0〜12質量%であることがさらに好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を効率的に製造することができる。
【0024】
前記添加剤としては、脂肪族カルボン酸、アミノ酸が挙げられる。添加剤としては、特に制限はないが、水溶性のものが好ましく、水への溶解度が高いものがより好ましい。また、シルクフィブロイン多孔質体の製造において用いられる脂肪族カルボン酸としては、pKaが、5.0以下のものが好ましく、3.0〜5.0のものがより好ましく、3.5〜5.0のものがさらに好ましい。
【0025】
脂肪族カルボン酸としては、たとえば、炭素数1〜6の飽和または不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸を好ましく用いることができ、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸、3−ブテン酸等が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
アミノ酸としては、特に制限はないが、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン等のモノアミノカルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸(酸性アミノ酸)などの脂肪族アミノ酸、フェニルアラニン等の芳香族アミノ酸、ヒドロキシプロリン等の複素環を有するアミノ酸などがあげられ、中でも形状の調整が容易な観点から酸性アミノ酸や、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン等のオキシアミノ酸が好ましい。同様な観点で、酸性アミノ酸の中でもモノアミノカルボン酸がより好ましく、アスパラギン酸やグルタミン酸が特に好ましく、オキシアミノ酸の中でもヒドロキシプロリンがより好ましい。これらのアミノ酸は、いずれか1種を単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、アミノ酸には、L型とD型の光学異性体があるが、L型とD型を用いた場合に、得られる多孔質体に違いが見られないため、どちらのアミン酸を用いても良い。
【0027】
シルクフィブロイン水溶液に添加する水溶性添加剤の量は、0.1〜18質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.5〜4.0質量%であることがさらに好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を製造することができる。また、18.0質量%以下であれば、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸及び/又は酸性アミノ酸を添加したシルクフィブロイン溶液を静置する際、該溶液がゲル化しにくく、安定して良質なシルクフィブロイン多孔質体が得られる。また、アミノ酸の配合量は、フィブロインに対して、1〜500質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
次に、上記添加剤が加えられた加えたシルクフィブロイン水溶液を型あるいは容器に流し込み、低温恒温槽中に入れて凍結させ、次いで融解することによって、シルクフィブロイン多孔質体を製造する。凍結温度は、添加剤を含有させたシルクフィブロイン溶液が凍結する温度であれば特に制限されないが、−10〜−30℃程度が好ましい。また、凍結時間は、十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、所定の凍結温度で4時間以上であることが好ましい。
なお、凍結の方法としては、シルクフィブロイン溶液を一気に凍結温度まで下げて凍結してもよいが、一旦、−5℃程度に2時間程度保持して過冷却状態とし、その後、凍結温度まで下げて凍結することが、力学的強度の高い多孔質体を得る上で好ましい。−5℃から凍結温度までにかける時間を調整することで、多孔質体の構造や強度をある程度制御することが可能である。
その後に、凍結したシルクフィブロイン溶液を、融解することによってシルクフィブロイン多孔質体が得られる。融解の方法は特に制限はないが、自然融解のほか、恒温槽内に保持する方法などが挙げられる。
【0029】
得られた多孔質体には添加剤が含まれるが、用途に応じて、添加剤を除去する必要がある場合には、適当な方法で多孔質体から添加剤を除去して用いることができる。たとえば、多孔質体を、純水中に浸漬して、添加剤を除去することが最も簡便な方法として挙げられる。あるいは、多孔質体を凍結乾燥することによって、添加剤と水分を同時に除去することが可能である。
【0030】
シルクフィブロイン多孔質体は、スポンジ状の多孔質構造を有しており、通常この多孔質体には凍結乾燥等により水除去を行わなければ水が含まれ、含水状態で堅い構造物である。また、多孔質体を凍結乾燥することにより、シルクフィブロイン多孔質体の乾燥品を得ることができる。
【0031】
このシルクフィブロイン多孔質体は、多孔質体作製時の型や容器を適宜選択することにより、フィルム状、ブロック状、管状、球状等、目的に応じた形状とすることができる。型や容器としては、シルクフィブロイン溶液が流出しない形状・形態のものであれば制限はなく、その素材としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、金、銀、銅などの熱伝導率が高い素材を用いることが、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得る観点から好ましい。また、型や容器の壁の厚さは、その機能と凍結の際の膨張などによる変形などを防止する観点から、0.5mm以上であることが好ましく、取り扱いが容易で、冷却効率的な観点から、より好ましくは1〜3mmである。
【0032】
また、ここで用いられる型や容器は、前記フィルム層の構造や厚さを制御することを目的として、その内側のシルクフィブロイン溶液と接する内壁面に、シートを設けることができる。
該シートとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂からなるシート、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などからなる離型処理されたシートなどが好ましく挙げられる。これらのシートを用いた場合、細孔が少なく平滑なフィルム層を得ることができる。また、フィルム層を設けたくない場合は、ろ紙などといった表面が粗いシートを設けることもできる。これらのシートの採用については、多孔質体の用途に応じて、適宜選択すればよい。
また、シートは、熱伝導を阻害しにくい厚さ1mm以下のものを用いることが好ましい。
【0033】
このシルクフィブロイン多孔質体は、上記した融解する工程に次いで、切削工程を経て得られる。本発明の体外用薬剤徐放担体として好適なシート形状において、多孔質層のみからなる多孔質体とする場合には、容器の材質を選択するほかに、フィルム層を切除することで、表面構造を選択することができる。これにより、多孔質層のみからなる多孔質体からなるシートを得ることができる。具体的には、例えば、テフロンシートなどのシートをその内壁面に設けたブロック状の型あるいは容器を用い、該型あるいは容器から取り出してから、側面の四面のフィルム層を取り除き、多孔質層の部分を切削することで得られる。また、一面のみにテフロンシートなどのシートをその内壁面に設け、その他の面の内壁面にろ紙を設けた型あるいは容器を用い、一面のみにフィルム層を有する多孔質体を得ることもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
シルクフィブロイン水溶液は、フィブロイン粉末(KBセーレン社製、商品名:「フィブロインIM」)を9M臭化リチウム水溶液に溶解し、遠心分離で不溶物を除去したのち、超純水に対して透析を繰り返すことによって得た。得られたシルクフィブロイン水溶液を透析チューブ中で風乾し濃縮した。この濃縮液に蟻酸水溶液を添加し、シルクフィブロイン濃度が5質量%、蟻酸濃度が2質量%であるシルクフィブロイン溶液を調製した。
このシルクフィブロイン溶液をアルミ板で作製した型(内側サイズ;80mm×40mm×4mm)に流し込み、低温恒温槽(EYELA社製NCB−3300)に入れて凍結保存した。
凍結は、予め低温恒温槽を−5℃に冷却しておいて低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後−20℃に冷却後5時間保持した。凍結した試料を自然解凍で室温に戻してから、型から取り出し、超純水に浸漬し、超純水を1日2回、3日間交換することによって、使用した蟻酸を除去した。
【0036】
(力学特性の測定方法)
得られたシルクフィブロイン多孔質体の力学的特性を、INSTRON社マイクロテスター5548型を用いて評価した。作製したシルクフィブロイン多孔質体から40mm×4mm×4mmの試験片を切り出し、この試験片を2mm/minの条件で引っ張った際の最大破断強度(引っ張り強度)と最大ひずみ(伸び)を測定した。また、強度とひずみをグラフ化した時の傾きから弾性率を求めた。その結果を表1に示す。なお、測定結果は、作製した多孔質体から5点の試験片を作製し、さらに異なる日に作製した多孔質体から5点の試験片を切り出し、それら10点について測定を行った平均値を示している。
【0037】
また、得られたシルクフィブロイン多孔質体の構造を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。走査型電子顕微鏡は、Philips社製XL30−FEGを使用して、低真空無蒸着モード、加速電圧10kVで測定を行った。なお、シルクフィブロイン多孔質体の構造は、多孔質体の表面ではなく、多孔質体を切断して露出させた内部を観察した。得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0038】
実施例2〜12及び比較例1〜11
実施例1において、蟻酸に代えて、それぞれ表1〜3に記載する添加剤を用いたこと以外は実施例1同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性、保水率、吸水速度及び蒸発速度の評価結果を表1〜3に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図2〜23に示す。
尚、保水率、吸水速度及び蒸発速度は、前述のようにして測定した。
【0039】
実施例13〜14
実施例1において、それぞれ表2に記載する材質の型を用いたこと以外は実施例1同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その吸水速度の測定結果を表2に示す。
【0040】
比較例12
特許文献2の実施例8では、シルクフィブロイン水溶液に酢酸溶液を加えてゲル状物を析出させ、得られたゲルを凍結乾燥して多孔質体を得ている。その記載の通りの追試ではゲルを生成しなかったが、下記条件でゲル状物及び多孔質体を得た。
まず、5%フィブロイン水溶液50mLにpH2.65酢酸溶液を130mL加え(この段階でpH3.0)、得られた溶液を5℃で40時間静置したところ、ゲルが生成した。得られたゲルを遠心分離して、上澄み液を除去した後に、−30℃で3時間凍結後、凍結乾燥を50時間行ったところ、多孔質体が得られた。その多孔質体の力学的特性評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図24に示す。
【0041】
比較例13
市販のポリウレタンスポンジ(住友スリーエム社製)を用い、測定用サンプル(60mm×30mm×20mm)に切り出し、保水率を測定し、その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
[型の材質]
A:アルミニウム板(テフロンシートあり)
B:鏡面仕上げアクリル板(テフロンシートなし)
C:鏡面仕上げポリスチレン板(テフロンシートなし)
【0046】
表1〜3に示す結果から、脂肪族カルボン酸又はアミノ酸を用いた実施例1〜12のシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度は、水溶性有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、グリセロール、DMSO、DMF、ピリジン、アセトニトリル、アセトンを用いた比較例1〜11のいずれのシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度よりも大きいことがわかる。また、実施例1〜12のシルクフィブロイン多孔質体は、最大ひずみ(伸び)も大きい。さらに、実施例1〜12で作製した多孔質体は、比較例12と比較した場合には、高い引っ張り強度を示した。
また、図1から、実施例1で作製したシルクフィブロイン多孔質体を構成する多孔質層は、比較的薄い壁と数十μmの細孔を有することがわかる。実施例2〜12で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面(図2〜12)についても、ほぼ同様の走査型電子顕微鏡写真を得た。
なお、比較例のシルクフィブロイン多孔質体の断面(図13〜23)も同様の多孔質構造を有するものと、層状構造的なものとがあったが、それら構造と力学的特性との相関は認められなかった。また、比較例12では、明確な多孔質構造を確認することはできなかった。
また、実施例2、5、6及び11で作製したシルクフィブロイン多孔質体の保水率は、比較例2で作製した多孔質体の保水率とほぼ同じであり、98%〜99%の範囲にあることが分かった。なお、比較例12で作製した多孔質体は、非常に脆く、保水率を算出することはできなかった。
【0047】
実施例15〜17
シルクフィブロイン多孔質体の安全性に関する非臨床試験の一環として、ヒトパッチ試験(皮膚感作性パッチ試験)を行った。皮膚感作性パッチ試験は、シルクフィブロイン多孔質体の人体皮膚に対する、刺激性、あるいはアレルギー性の接触皮膚炎を誘起するかどうかを判断するものである。
用いたシートは、実施例1において、アルミ板で作製した型の内側サイズを、264mm×205mm×1mm厚にし、それぞれ添加剤を蟻酸からL−アスパラギン酸(実施例15)、乳酸(実施例16)、及びコハク酸(実施例17)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体シートを得た。これらのシルクフィブロイン多孔質体シートをそれぞれ、試験に供するために、10mm×10mm×1mm厚に切断し、パッチとした。
試験は、試験開始時において、健康な18歳から65歳の日本人女性50名で行った。試験に用いた10mm×10mmのサイズのパッチを、20mm×20mmの低刺激性テープで背中に固定した。また、各々のパッチは、最低15mm離して固定した。また、比較のために、10mm×10mmの綿の不織布を、20mm×20mmの低刺激性テープで固定した。試験は、パッチを添付後48時間後にパッチを取り除き、皮膚反応を観察した。さらに、同じ場所にパッチを貼付し、48時間後の観察を行った。合計9回の貼付と観察を繰り返した。また、その2週間後に、同じ場所にパッチを貼って観察することを48時間置きに4回繰り返した。
その結果、試験途中で、実施例15及び16において、二人の被験者が一度ずつ非常に軽度な紅斑を示したが、試験中に紅斑も消失するという結果となり、結果としてシート状のシルクフィブロイン多孔質体は、非常に低刺激性であり、アレルギー感作性もないことが分かった。
また、実施例17においては、試験途中で、一人の被験者が一度非常に軽度な紅斑を示したが、試験中に紅斑も消失するという結果となり、結果としてシート状のシルクフィブロイン多孔質体は、非常に低刺激性であり、アレルギー感作性もないことが分かった。
【0048】
実施例18
アルミ板で作製した型のサイズを130mm×80mm×12mm(内側サイズ)としたこと以外、実施例6と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を製造した。
シルクフィブロイン多孔質体の安全性に関する非臨床試験の一環として、皮膚一次刺激性試験及び皮膚感作性試験を行った。なお、本試験は、「申請資料の信頼性の基準」(薬事法施行規則第43号)を基準として、「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について」(2003年2月13日付医薬審発第0213001号)と、「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」(2003年3月19日付医療機器審査No.36)に従い行った。
【0049】
(皮膚一次刺激性試験)
実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体を5mm×5mm×5mmのサイズに切り出して試験片とした(多孔質層のみからなるフィブロイン多孔質体)。
次に、シルクフィブロイン多孔質体の生理食塩液抽出液及びゴマ油液抽出物をウサギに塗布し、局所刺激性(組織障害及び炎症誘起性)の有無について検討した。具体的には、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体から切り出された上記試験片に生理食塩液又はゴマ抽を加え、オートクレーブ内で120℃、1時間の条件で抽出し、各試験液とした。また、抽出溶媒(生理食塩液又はゴマ油液)のみを同様な条件で処理し、対象液とした。投与は、1溶媒あたり雄ウサギ6匹を用い、1匹につき、試験液及び対象液をそれぞれ背部の無傷皮膚、擦過傷皮膚に0.5mLずつ投与した。
生理食塩液抽出による試験液では、6例中3例で投与後1時間からごく軽度または軽微な紅斑が認められた。この紅斑は対象液である生理食塩液でもみられ、対象液と同等であった。なお、一次刺激性指数は0.3であり、「無視できる程度の刺激性」と判断された。
ゴマ油液による抽出液では、6例中4例で投与後1時間からごく軽度な紅斑が認められた。この紅斑は対象液であるゴマ油液でもみられ、対象液と同等であった。なお、一次刺激性指数は0.1であり、「無視できる程度の刺激性」と判断された。
【0050】
(皮膚感作性試験)
Maximization Test法により、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体のメタノール抽出液について、雄性モルモット10匹を用いて、モルモット皮膚に対する感作性の有無を検討した。
皮膚感作性試験前に、適切な抽出溶媒を決めるために、アセトンとメタノールを用いて抽出率を算出した。その結果、アセトンよりもメタノールの方が高い抽出率を示したために、皮膚感作性試験に用いる抽出溶媒をメタノールとした。
実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体から切り出された上記試験片に、メタノール10mLを加え、室温で恒温浸とう培養機を用いて抽出した。抽出は24時間以上行った。対照群として、オリーブ油で感作する陰性対照群、及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンで感作する陽性対照群を設けた。各対照群の動物数はそれぞれ5匹とした。
試験液投与群及び陰性対照群とも、抽出液の6.25、12.5、25、50、100%液並びにアセトンで惹起した結果、惹起後24、48及び72時間のいずれの観察時期においても皮膚反応は見られなかった。
一方、陽性対照群では、0.1%1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンの惹起により、5例全例で惹起後、24,48及び72時間後に明らかな陽性反応が認められた。
この試験結果から、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体には、皮膚感作性を示す物質は存在しないと判断された。
このように、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体は、「無視できる程度の皮膚刺激性」と「皮膚感作性を示す物質は存在しない」ことにより、安全性が高く、本発明の体内用薬剤徐放担体として好適に使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、強度が高く取扱が容易であり、生体親和性が高く、かつ保水性が高く、薬剤を効率的に保持することができる体内用薬剤徐放担体を提供することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内用薬剤徐放担体に関し、詳しくは、強度が高く、皮膚への親和性が高く、保水性の高い体内用薬剤徐放担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者への薬剤の投与方法としては、経口投与が知られているが、胃腸障害などの副作用や、肝臓をバイパスできず、最初に通過する代謝を回避できないこと、あるいは、治療濃度と毒性濃度間が狭い領域の薬剤の投与制御が困難であるなどの欠点を有している。
【0003】
上記課題を解決する手段として、生体内に一定期間保持される生体内徐放製剤が知られている。こうした生体内徐放製剤においては、薬効成分を安定的に長時間にわたって患部に吸収させるために、薬効成分を多孔性基材などの薬剤担体に保持させることにより、薬剤の浸透を制御する方法が提案されている。
【0004】
このような薬剤担体の材質としては、合成高分子や天然高分子のゲルや多孔質体が用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、合成高分子では生体への親和性が低いこと等の問題があった。
一方、天然高分子では生体への親和性が高いが、強度が低い等の問題があった。そのため、天然高分子では、架橋剤を用いて架橋体とする方法などで、強度を確保する必要があった。
しかしながら、架橋剤を使用した場合には、残存する架橋剤が生体に悪影響を与える懸念がある。
【0005】
ところで、シルクは、天然高分子の中でも、生体親和性が高く、従来から縫合糸などに使用されており、安全性の高いことが知られている。シルクは、セリシン、フィブロインタンパクから形成されており、様々な加工方法が提案されており、例えば、シルクフィブロインを用いたハイドロゲルが提案されている(特許文献2及び3)。しかしながら、薬剤担体として使用するには強度が弱いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−213600号
【特許文献2】特許3412014号
【特許文献3】特公平6−94518号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生体親和性と保水性が高く、高強度の体内用薬剤徐放担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シルクフィブロイン多孔質体がその材料として好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体、及び
(2)前記多孔質体の引張り強度が75〜400kPaである上記1に記載の体内用薬剤徐放担体、及び
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、強度が高く取扱が容易であり、生体親和性が高く、かつ保水性が高く、薬剤を効率的に保持することができるので、薬剤の徐放を行う場合に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例5で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例9で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例10で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例11で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例12で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例2で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例3で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例4で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】比較例5で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】比較例6で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】比較例7で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図20】比較例8で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】比較例9で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】比較例10で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図23】比較例11で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図24】比較例12で製造される多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、シルクフィブロイン多孔質体を用いることを特徴とする。
ここで、シルクフィブロイン多孔質体とは、シルクフィブロインを含む、好ましくは、10〜300μmの平均細孔径を有する多孔質体をいう。
【0012】
該シルクフィブロイン多孔質体の引張り強度は、75kPa〜400kPaであることが好ましい。75kPa以上であれば、十分な強度があり、体内用薬剤徐放担体として取扱いが容易になり、体内用薬剤徐放担体の患部への残りが少なくなる。一方、400kPa以下であれば、患部への密着性が保たれる。以上の観点から、引張り強度は80kPa〜300kPaであることがより好ましく、90kPa〜200kPaであることがさらに好ましい。
【0013】
また、本発明の体内用薬剤徐放担体は、吸水した水分を保持する保水率が高いことが好ましい。保水率が高いことで、吸収した滲出液が流出することが無い。より具体的には、保水率が85〜100%であることが好ましい。保水率が85%以上であれば、滲出液を保持するして、漏出液が流れ出すことが少ない。以上の点から、シルクフィブロイン多孔質体の保水率は、87〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。
(保水率の算出方法)
なお、保水率は次のように測定した。多孔質体を60×30×20mmに成形し、測定試料とし、純水中に十分浸漬した試料の重さを測定する(Wc)。これを再度純水中に十分浸漬し、表面を純水で濡らしたガラス製の平板(松浪ガラス製MSAコートマイクロスライドガラス、76×52mm)を45度傾けて設置し、その上に一番広い面(60×30mm面)を下にして長尺方向を上下になるように載せ、10分間静置する。その後、試料の重さを測定する(Wd)。
保水率(%)=100−(Wc−Wd)×100/(Wc)
【0014】
多孔質層の吸水速度は0.1〜1000μl/sであることが好ましく、1〜100μl/sであることがより好ましく、さらに好ましくは20〜30μl/sである。吸水速度が0.1μl/s以上であれば、滲出液を速やかに吸収して、体内用薬剤徐放担体の外に漏らすことが少ない。吸水速度が1000μl/s以下であれば、滲出液を過剰に体内用薬剤徐放担体に吸収するの防ぎ、接触部の湿潤状態を保てる。また、蒸発速度は0.01〜0.2g/m2・sであることが好ましく、0.03〜0.15g/m2・sであることがより好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.1g/m2・sである。蒸発速度が0.01以上であれば、漏出液を継続的に体内用薬剤徐放担体が吸収できる状態に保てる。蒸発速度が0.2g/m2・s以下であれば、体内用薬剤徐放担体を効率的に湿潤状態に保てる。ここで、吸水速度及び蒸発速度は以下のようにして得られる値である。多孔質層の吸水速度及び蒸発速度が上記範囲内であると、本発明の効果が良好となる。
【0015】
(吸水速度の算出方法)
シルクフィブロイン多孔質体(多孔質層)に純水を100μl滴下し、吸収されるまでの時間を測定した。吸水速度は、測定した時間を用いて、下記の式より算出した値である。測定は5回行い、その平均値を吸水速度とした。
吸水速度(μl/s)=純水滴下量/吸水に要した時間
(蒸発速度の算出方法)
シルクフィブロイン多孔質体(多孔質層)を48時間純水中に浸漬し、完全に吸水させた後、温度:40℃、相対湿度:50%の条件に設定した恒温恒湿槽中で金網上に静置し、10分経過までは1分ごとに、10分以降は2分ごとにその重量を測定し、その変化を水の蒸発量の変化とした。蒸発速度は、静置して1分後から30分までの蒸発量の変化から下記の式より算出した値である。
蒸発速度(g/m2・s)=(蒸発量の変化)/多孔質体表面積
【0016】
本発明の体内用薬剤徐放担体はシート状であることが好ましく、シートの形状は、その大きさ、形を任意に設定することができる。また、シートの厚さについても、薬剤の投与量に応じて、任意の厚さを設定することができる。そのシートの全体が、多孔質体であるものを使用することができる。
また、本発明におけるシルクフィブロイン多孔質体は、多孔質層と、その一方の面又は両面に細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする。
【0017】
上記細孔を有しないフィルム層は、実質的に細孔を有しない層であって、細孔を有しない、又は多孔質層と比較して極めて細孔の少ない層である。このようなフィルム層を有することにより、細孔を経由して液状の薬剤が移動する速度、及び蒸発や拡散する速度が遅くなるため、液透過性が低くなる。
フィルム層は表面が面積比で10%以下の細孔を有し、多孔質層は表面が面積比で50〜98%の細孔を有するものであると好ましい。また、フィルム層は、その細孔直径が0.5μm以上の細孔が20個/mm2以下(好ましくは、10個/mm2以下)であると好ましい。ここで、表面の細孔の面積比、細孔の個数及び細孔直径は、走査型電子顕微鏡写真を画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて画像処理することで測定したものである。
また、フィルム層の吸水速度は、0.1〜3.5μl/sであることが好ましく、1.5〜3.5μl/sであることがより好ましく、さらに好ましくは2〜3.5μl/sである。
さらに、フィルム層の蒸発速度は、0.03〜0.07g/m2・sであることが好ましく、0.03〜0.06g/m2・sであることがより好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.05g/m2・sである。吸水速度及び蒸発速度が上記範囲内であると、本発明の効果が良好となる。
【0018】
本発明の体内用薬剤徐放担体は、多孔質層と、その一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有するシルクフィブロイン多孔質体により構成される。その使用方法としては、患部側に多孔質層が接し、患部とは反対側の対向面にフィルム層を有することが好ましい。このような体内用薬剤徐放担体を使用すると、液状の薬剤を効率よく保持することができ、該薬剤の蒸発や拡散を抑える効果があるためである。
なお、フィルム層の細孔の数は制御することができ、必要に応じて少量の細孔を有するフィルム層とすることもできる。
一方、フィルム層は、細孔が極めて少ないために、表面が平滑である。そのため、該フィルム層を患部側として使用することで、癒着を防止する機能を持たせることや、フィルム層の液透過性を制御することで薬剤の放出速度を制御することができる。
【0019】
本発明の体内用薬剤徐放担体に含ませる薬剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、レセルピン、クロニジンなどの降圧剤、ハイドロサイアザイド、ペンドロフルナサイアザイドなどの降圧利尿剤、ニトログリセリン、ソウサニリソルビドなどの抗狭心症剤、ニトログリセリン、ニトログリコール、イソソルバイトジナイトレイト、エリスリト−ルテトラナイトレイト、ペンタエリト−ルテトラナイトレイトなどの血管拡張剤、ニトラゼパム、メプロバメートなどの抗痙攣(癲癇)剤、フルフェナジン、チオリダジン、ジアゼパム、クロルプロマジンなどの精神安定剤、塩酸ジフェンヒドラジン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾールなどの抗ヒスタミン剤、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオナート、フルメタゾン、ベータメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサイタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベタゾールなどのコルチコステロイド類、アセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナミン酸、インドメタシン、ジクロフェナック、アルクロフェナック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビブロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、L−メントール、カンファーなどの鎮痛消炎剤、ペニシリン、オキシテトラサイクリン、硫酸フラジオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、セファレキシン、テトラサイクリンなどの抗生物質、ビタミンA、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、オクトチアミン、リボフラビン酪酸エステルなどのビタミン剤、ベンゾカイン、リドカイン、アミノ安息香酸エチルなどの麻酔剤などが挙げられる。なお、本発明の体内用薬剤徐放担体に含ませることのできる薬剤は、これらに制限されるものでなく、必要に応じて、吸収助剤、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジエチル−m−トリアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヒアルロン酸、サリチル酸、クロタミトン、ジエチルセバケート、ラウリルアルコール、ジメチルスルホキシド、デシメチルスルホキシドなどを配合することができ、多孔質層に含浸もしくは塗布することで、保持させることができる。これらの薬剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記薬剤の添加量としては、選択する薬剤により適宜決定されるものであるが、目安的には、形成されるシート状物中に約30〜300mg/12cm2の薬剤が吸収されるように添加される。
【0021】
また、上記薬剤の配合で用いられる溶媒としては、生体内徐放製剤として用いる必要上、人体に有害でないものであり、かつ用いる薬剤や他の生体内徐放製剤の構成部材に対して化学的に不活性なものでなければならないが、使用する薬剤を溶解または分散できるものであれば特に規定はない。具体的には、水、多価アルコールの1種または2種の混合系などを用いることができる。人体への安全性の観点からは水が最も好ましい。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビットなどが挙げられる。また、薬剤を溶剤に溶解する上においての溶解性を向上させるために、水溶性ポリマーを加えることができる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガントゴム、デンプン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
シルクフィブロイン多孔質体は、乾燥することで、硬く、脆くなるので、保湿剤を含ませることも好適な態様である。保湿剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等を使用することができる。なお、このような態様では、薬剤を含浸させる直前まで、水分量を保った状態で、乾燥を防ぐように、本発明の体内用薬剤徐放担体を密閉状態にしておくことが好ましい。
【0023】
次に、シルクフィブロイン多孔質体の製造方法について説明する。
本発明で用いられるシルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロイン水溶液に特定の添加剤を加えて、該水溶液を凍結させ、次いで融解させることにより製造することができる。
ここで用いられるシルクフィブロインは、家蚕、野蚕、天蚕等の蚕から産生されるものであればいずれでもよく、その製造方法も問わない。本発明におけるシルクフィブロイン多孔質体の製造においては、シルクフィブロイン水溶液として用いるが、シルクフィブロインは溶解性が悪く、直接水には溶解することが困難である。シルクフィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、高濃度の臭化リチウム水溶液にシルクフィブロインを溶解後、透析による脱塩、風乾による濃縮を経る手法が簡便である。
シルクフィブロイン多孔質体の製造方法において、シルクフィブロインの濃度は、脂肪族カルボン酸を添加したシルクフィブロイン溶液中で0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1.0〜12質量%であることがさらに好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を効率的に製造することができる。
【0024】
前記添加剤としては、脂肪族カルボン酸、アミノ酸が挙げられる。添加剤としては、特に制限はないが、水溶性のものが好ましく、水への溶解度が高いものがより好ましい。また、シルクフィブロイン多孔質体の製造において用いられる脂肪族カルボン酸としては、pKaが、5.0以下のものが好ましく、3.0〜5.0のものがより好ましく、3.5〜5.0のものがさらに好ましい。
【0025】
脂肪族カルボン酸としては、たとえば、炭素数1〜6の飽和または不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸を好ましく用いることができ、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸、3−ブテン酸等が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
アミノ酸としては、特に制限はないが、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン等のモノアミノカルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸(酸性アミノ酸)などの脂肪族アミノ酸、フェニルアラニン等の芳香族アミノ酸、ヒドロキシプロリン等の複素環を有するアミノ酸などがあげられ、中でも形状の調整が容易な観点から酸性アミノ酸や、ヒドロキシプロリン、セリン、スレオニン等のオキシアミノ酸が好ましい。同様な観点で、酸性アミノ酸の中でもモノアミノカルボン酸がより好ましく、アスパラギン酸やグルタミン酸が特に好ましく、オキシアミノ酸の中でもヒドロキシプロリンがより好ましい。これらのアミノ酸は、いずれか1種を単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、アミノ酸には、L型とD型の光学異性体があるが、L型とD型を用いた場合に、得られる多孔質体に違いが見られないため、どちらのアミン酸を用いても良い。
【0027】
シルクフィブロイン水溶液に添加する水溶性添加剤の量は、0.1〜18質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.5〜4.0質量%であることがさらに好ましい。この範囲内に設定することで、十分な強度を持った多孔質体を製造することができる。また、18.0質量%以下であれば、シルクフィブロイン水溶液に脂肪族カルボン酸及び/又は酸性アミノ酸を添加したシルクフィブロイン溶液を静置する際、該溶液がゲル化しにくく、安定して良質なシルクフィブロイン多孔質体が得られる。また、アミノ酸の配合量は、フィブロインに対して、1〜500質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
次に、上記添加剤が加えられた加えたシルクフィブロイン水溶液を型あるいは容器に流し込み、低温恒温槽中に入れて凍結させ、次いで融解することによって、シルクフィブロイン多孔質体を製造する。凍結温度は、添加剤を含有させたシルクフィブロイン溶液が凍結する温度であれば特に制限されないが、−10〜−30℃程度が好ましい。また、凍結時間は、十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、所定の凍結温度で4時間以上であることが好ましい。
なお、凍結の方法としては、シルクフィブロイン溶液を一気に凍結温度まで下げて凍結してもよいが、一旦、−5℃程度に2時間程度保持して過冷却状態とし、その後、凍結温度まで下げて凍結することが、力学的強度の高い多孔質体を得る上で好ましい。−5℃から凍結温度までにかける時間を調整することで、多孔質体の構造や強度をある程度制御することが可能である。
その後に、凍結したシルクフィブロイン溶液を、融解することによってシルクフィブロイン多孔質体が得られる。融解の方法は特に制限はないが、自然融解のほか、恒温槽内に保持する方法などが挙げられる。
【0029】
得られた多孔質体には添加剤が含まれるが、用途に応じて、添加剤を除去する必要がある場合には、適当な方法で多孔質体から添加剤を除去して用いることができる。たとえば、多孔質体を、純水中に浸漬して、添加剤を除去することが最も簡便な方法として挙げられる。あるいは、多孔質体を凍結乾燥することによって、添加剤と水分を同時に除去することが可能である。
【0030】
シルクフィブロイン多孔質体は、スポンジ状の多孔質構造を有しており、通常この多孔質体には凍結乾燥等により水除去を行わなければ水が含まれ、含水状態で堅い構造物である。また、多孔質体を凍結乾燥することにより、シルクフィブロイン多孔質体の乾燥品を得ることができる。
【0031】
このシルクフィブロイン多孔質体は、多孔質体作製時の型や容器を適宜選択することにより、フィルム状、ブロック状、管状、球状等、目的に応じた形状とすることができる。型や容器としては、シルクフィブロイン溶液が流出しない形状・形態のものであれば制限はなく、その素材としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、金、銀、銅などの熱伝導率が高い素材を用いることが、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得る観点から好ましい。また、型や容器の壁の厚さは、その機能と凍結の際の膨張などによる変形などを防止する観点から、0.5mm以上であることが好ましく、取り扱いが容易で、冷却効率的な観点から、より好ましくは1〜3mmである。
【0032】
また、ここで用いられる型や容器は、前記フィルム層の構造や厚さを制御することを目的として、その内側のシルクフィブロイン溶液と接する内壁面に、シートを設けることができる。
該シートとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂からなるシート、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などからなる離型処理されたシートなどが好ましく挙げられる。これらのシートを用いた場合、細孔が少なく平滑なフィルム層を得ることができる。また、フィルム層を設けたくない場合は、ろ紙などといった表面が粗いシートを設けることもできる。これらのシートの採用については、多孔質体の用途に応じて、適宜選択すればよい。
また、シートは、熱伝導を阻害しにくい厚さ1mm以下のものを用いることが好ましい。
【0033】
このシルクフィブロイン多孔質体は、上記した融解する工程に次いで、切削工程を経て得られる。本発明の体外用薬剤徐放担体として好適なシート形状において、多孔質層のみからなる多孔質体とする場合には、容器の材質を選択するほかに、フィルム層を切除することで、表面構造を選択することができる。これにより、多孔質層のみからなる多孔質体からなるシートを得ることができる。具体的には、例えば、テフロンシートなどのシートをその内壁面に設けたブロック状の型あるいは容器を用い、該型あるいは容器から取り出してから、側面の四面のフィルム層を取り除き、多孔質層の部分を切削することで得られる。また、一面のみにテフロンシートなどのシートをその内壁面に設け、その他の面の内壁面にろ紙を設けた型あるいは容器を用い、一面のみにフィルム層を有する多孔質体を得ることもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
シルクフィブロイン水溶液は、フィブロイン粉末(KBセーレン社製、商品名:「フィブロインIM」)を9M臭化リチウム水溶液に溶解し、遠心分離で不溶物を除去したのち、超純水に対して透析を繰り返すことによって得た。得られたシルクフィブロイン水溶液を透析チューブ中で風乾し濃縮した。この濃縮液に蟻酸水溶液を添加し、シルクフィブロイン濃度が5質量%、蟻酸濃度が2質量%であるシルクフィブロイン溶液を調製した。
このシルクフィブロイン溶液をアルミ板で作製した型(内側サイズ;80mm×40mm×4mm)に流し込み、低温恒温槽(EYELA社製NCB−3300)に入れて凍結保存した。
凍結は、予め低温恒温槽を−5℃に冷却しておいて低温恒温槽中にシルクフィブロイン溶液を入れた型を投入して2時間保持し、その後−20℃に冷却後5時間保持した。凍結した試料を自然解凍で室温に戻してから、型から取り出し、超純水に浸漬し、超純水を1日2回、3日間交換することによって、使用した蟻酸を除去した。
【0036】
(力学特性の測定方法)
得られたシルクフィブロイン多孔質体の力学的特性を、INSTRON社マイクロテスター5548型を用いて評価した。作製したシルクフィブロイン多孔質体から40mm×4mm×4mmの試験片を切り出し、この試験片を2mm/minの条件で引っ張った際の最大破断強度(引っ張り強度)と最大ひずみ(伸び)を測定した。また、強度とひずみをグラフ化した時の傾きから弾性率を求めた。その結果を表1に示す。なお、測定結果は、作製した多孔質体から5点の試験片を作製し、さらに異なる日に作製した多孔質体から5点の試験片を切り出し、それら10点について測定を行った平均値を示している。
【0037】
また、得られたシルクフィブロイン多孔質体の構造を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。走査型電子顕微鏡は、Philips社製XL30−FEGを使用して、低真空無蒸着モード、加速電圧10kVで測定を行った。なお、シルクフィブロイン多孔質体の構造は、多孔質体の表面ではなく、多孔質体を切断して露出させた内部を観察した。得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0038】
実施例2〜12及び比較例1〜11
実施例1において、蟻酸に代えて、それぞれ表1〜3に記載する添加剤を用いたこと以外は実施例1同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その力学的特性、保水率、吸水速度及び蒸発速度の評価結果を表1〜3に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図2〜23に示す。
尚、保水率、吸水速度及び蒸発速度は、前述のようにして測定した。
【0039】
実施例13〜14
実施例1において、それぞれ表2に記載する材質の型を用いたこと以外は実施例1同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を得た。その吸水速度の測定結果を表2に示す。
【0040】
比較例12
特許文献2の実施例8では、シルクフィブロイン水溶液に酢酸溶液を加えてゲル状物を析出させ、得られたゲルを凍結乾燥して多孔質体を得ている。その記載の通りの追試ではゲルを生成しなかったが、下記条件でゲル状物及び多孔質体を得た。
まず、5%フィブロイン水溶液50mLにpH2.65酢酸溶液を130mL加え(この段階でpH3.0)、得られた溶液を5℃で40時間静置したところ、ゲルが生成した。得られたゲルを遠心分離して、上澄み液を除去した後に、−30℃で3時間凍結後、凍結乾燥を50時間行ったところ、多孔質体が得られた。その多孔質体の力学的特性評価結果を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡写真を図24に示す。
【0041】
比較例13
市販のポリウレタンスポンジ(住友スリーエム社製)を用い、測定用サンプル(60mm×30mm×20mm)に切り出し、保水率を測定し、その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
[型の材質]
A:アルミニウム板(テフロンシートあり)
B:鏡面仕上げアクリル板(テフロンシートなし)
C:鏡面仕上げポリスチレン板(テフロンシートなし)
【0046】
表1〜3に示す結果から、脂肪族カルボン酸又はアミノ酸を用いた実施例1〜12のシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度は、水溶性有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、グリセロール、DMSO、DMF、ピリジン、アセトニトリル、アセトンを用いた比較例1〜11のいずれのシルクフィブロイン多孔質体の引っ張り強度よりも大きいことがわかる。また、実施例1〜12のシルクフィブロイン多孔質体は、最大ひずみ(伸び)も大きい。さらに、実施例1〜12で作製した多孔質体は、比較例12と比較した場合には、高い引っ張り強度を示した。
また、図1から、実施例1で作製したシルクフィブロイン多孔質体を構成する多孔質層は、比較的薄い壁と数十μmの細孔を有することがわかる。実施例2〜12で作製したシルクフィブロイン多孔質体の断面(図2〜12)についても、ほぼ同様の走査型電子顕微鏡写真を得た。
なお、比較例のシルクフィブロイン多孔質体の断面(図13〜23)も同様の多孔質構造を有するものと、層状構造的なものとがあったが、それら構造と力学的特性との相関は認められなかった。また、比較例12では、明確な多孔質構造を確認することはできなかった。
また、実施例2、5、6及び11で作製したシルクフィブロイン多孔質体の保水率は、比較例2で作製した多孔質体の保水率とほぼ同じであり、98%〜99%の範囲にあることが分かった。なお、比較例12で作製した多孔質体は、非常に脆く、保水率を算出することはできなかった。
【0047】
実施例15〜17
シルクフィブロイン多孔質体の安全性に関する非臨床試験の一環として、ヒトパッチ試験(皮膚感作性パッチ試験)を行った。皮膚感作性パッチ試験は、シルクフィブロイン多孔質体の人体皮膚に対する、刺激性、あるいはアレルギー性の接触皮膚炎を誘起するかどうかを判断するものである。
用いたシートは、実施例1において、アルミ板で作製した型の内側サイズを、264mm×205mm×1mm厚にし、それぞれ添加剤を蟻酸からL−アスパラギン酸(実施例15)、乳酸(実施例16)、及びコハク酸(実施例17)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体シートを得た。これらのシルクフィブロイン多孔質体シートをそれぞれ、試験に供するために、10mm×10mm×1mm厚に切断し、パッチとした。
試験は、試験開始時において、健康な18歳から65歳の日本人女性50名で行った。試験に用いた10mm×10mmのサイズのパッチを、20mm×20mmの低刺激性テープで背中に固定した。また、各々のパッチは、最低15mm離して固定した。また、比較のために、10mm×10mmの綿の不織布を、20mm×20mmの低刺激性テープで固定した。試験は、パッチを添付後48時間後にパッチを取り除き、皮膚反応を観察した。さらに、同じ場所にパッチを貼付し、48時間後の観察を行った。合計9回の貼付と観察を繰り返した。また、その2週間後に、同じ場所にパッチを貼って観察することを48時間置きに4回繰り返した。
その結果、試験途中で、実施例15及び16において、二人の被験者が一度ずつ非常に軽度な紅斑を示したが、試験中に紅斑も消失するという結果となり、結果としてシート状のシルクフィブロイン多孔質体は、非常に低刺激性であり、アレルギー感作性もないことが分かった。
また、実施例17においては、試験途中で、一人の被験者が一度非常に軽度な紅斑を示したが、試験中に紅斑も消失するという結果となり、結果としてシート状のシルクフィブロイン多孔質体は、非常に低刺激性であり、アレルギー感作性もないことが分かった。
【0048】
実施例18
アルミ板で作製した型のサイズを130mm×80mm×12mm(内側サイズ)としたこと以外、実施例6と同様にして、シルクフィブロイン多孔質体を製造した。
シルクフィブロイン多孔質体の安全性に関する非臨床試験の一環として、皮膚一次刺激性試験及び皮膚感作性試験を行った。なお、本試験は、「申請資料の信頼性の基準」(薬事法施行規則第43号)を基準として、「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について」(2003年2月13日付医薬審発第0213001号)と、「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」(2003年3月19日付医療機器審査No.36)に従い行った。
【0049】
(皮膚一次刺激性試験)
実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体を5mm×5mm×5mmのサイズに切り出して試験片とした(多孔質層のみからなるフィブロイン多孔質体)。
次に、シルクフィブロイン多孔質体の生理食塩液抽出液及びゴマ油液抽出物をウサギに塗布し、局所刺激性(組織障害及び炎症誘起性)の有無について検討した。具体的には、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体から切り出された上記試験片に生理食塩液又はゴマ抽を加え、オートクレーブ内で120℃、1時間の条件で抽出し、各試験液とした。また、抽出溶媒(生理食塩液又はゴマ油液)のみを同様な条件で処理し、対象液とした。投与は、1溶媒あたり雄ウサギ6匹を用い、1匹につき、試験液及び対象液をそれぞれ背部の無傷皮膚、擦過傷皮膚に0.5mLずつ投与した。
生理食塩液抽出による試験液では、6例中3例で投与後1時間からごく軽度または軽微な紅斑が認められた。この紅斑は対象液である生理食塩液でもみられ、対象液と同等であった。なお、一次刺激性指数は0.3であり、「無視できる程度の刺激性」と判断された。
ゴマ油液による抽出液では、6例中4例で投与後1時間からごく軽度な紅斑が認められた。この紅斑は対象液であるゴマ油液でもみられ、対象液と同等であった。なお、一次刺激性指数は0.1であり、「無視できる程度の刺激性」と判断された。
【0050】
(皮膚感作性試験)
Maximization Test法により、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体のメタノール抽出液について、雄性モルモット10匹を用いて、モルモット皮膚に対する感作性の有無を検討した。
皮膚感作性試験前に、適切な抽出溶媒を決めるために、アセトンとメタノールを用いて抽出率を算出した。その結果、アセトンよりもメタノールの方が高い抽出率を示したために、皮膚感作性試験に用いる抽出溶媒をメタノールとした。
実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体から切り出された上記試験片に、メタノール10mLを加え、室温で恒温浸とう培養機を用いて抽出した。抽出は24時間以上行った。対照群として、オリーブ油で感作する陰性対照群、及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンで感作する陽性対照群を設けた。各対照群の動物数はそれぞれ5匹とした。
試験液投与群及び陰性対照群とも、抽出液の6.25、12.5、25、50、100%液並びにアセトンで惹起した結果、惹起後24、48及び72時間のいずれの観察時期においても皮膚反応は見られなかった。
一方、陽性対照群では、0.1%1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンの惹起により、5例全例で惹起後、24,48及び72時間後に明らかな陽性反応が認められた。
この試験結果から、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体には、皮膚感作性を示す物質は存在しないと判断された。
このように、実施例18により製造されたシルクフィブロイン多孔質体は、「無視できる程度の皮膚刺激性」と「皮膚感作性を示す物質は存在しない」ことにより、安全性が高く、本発明の体内用薬剤徐放担体として好適に使用できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、強度が高く取扱が容易であり、生体親和性が高く、かつ保水性が高く、薬剤を効率的に保持することができる体内用薬剤徐放担体を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体。
【請求項2】
前記多孔質体の引張り強度が75〜400kPaである請求項1に記載の体内用薬剤徐放担体。
【請求項1】
シルクフィブロイン多孔質体を用いた体内用薬剤徐放担体であって、該多孔質体が多孔質層と該多孔質層の一方の面のみに細孔を有しないフィルム層を有することを特徴とする体内用薬剤徐放担体。
【請求項2】
前記多孔質体の引張り強度が75〜400kPaである請求項1に記載の体内用薬剤徐放担体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−82140(P2012−82140A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227047(P2010−227047)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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