説明

体形補整用ボトム衣料

【課題】主に下腹部を強力に斜め上方に持ち上げ、合目的的に腹部形状を整え、腹部シルエットを美しく見せる体形補整用ボトム衣料を提供する。
【解決手段】衣料本体を構成する伸縮性の衣料本体表布17と、衣料本体の前面裏側に配置された2枚の伸縮性腹部裏打ち布2・3とを有し、2枚の伸縮性腹部裏打ち布2,3のそれぞれの主伸縮力方向20・21が角度をもってV字状に交差するように重ね合わせられ、それぞれの左右端部が衣料本体表布17に接合され、かつ接合部位の任意の点からその対向する他方接合部位に達するまでの距離である伸縮性腹部裏打ち布の寸法Lが、当該対向する2点間22・23における衣料本体表布の寸法(L’)よりも常に短く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体形を整える衣料に関し、より詳しくは下腹やヒップの形状を整えるための体形補整用ボトム衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
今日衣料は、保温や身体保護という衣料の基本的な機能に加えて、よりスマートでより美しくという欲求を満たす手段としての役割が高まっている。特に、ガードル、ショーツ、ボディスーツなどのファンデーション類や、レオタード、水着、スパッツ、スポーツ用タイツなどの衣料においては、着用者の体形や姿勢を整える点に重点が移っている。
【0003】
例えばファンデーション類などの衣料においては、腹部贅肉やヒップのたるみなどによる膨出を抑えてボディラインを美しく見せること望まれるが、膨出を抑えるために腹部等を強く圧迫することは着用者に苦痛ないし不快感を与えるので好ましくない。このため、この種の衣料においては、体形を美しく整えることができ、それでいて着用者に無用な圧迫を与えることのないものが求められる。このための技術が従来より種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、伸縮性の前部充当部片1と、伸縮性の脇−臀部充当部片2a、2bと縦方向にはほとんど伸びがないか又は縦横両方向とも伸びの少ない後部中央部片3で構成される後部充当部片とからなるガードル本体の前部充当部片1の表側に、腹部ほぼ中央部から左右の脇側に向かって略斜め上に斜行している緊締力を有する伸縮性腹部形状補整用部片5a、5bがその左右のほぼ両脇側縁部7a、7bで衣類本体に取り付けられ、且つ、その前中心部近傍6の一部は前部充当部片1の前中心部近傍部分に接合されているが、実質上その上下の縁部8a、8b、9a、9bはガードル本体に接合されていないショートガードルが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、ショートタイプのガードルの衣料本体9の裏側に少なくとも腹部中央部を覆っている腹部形状補整布11を有しており、前記腹部形状補整布11の周辺縁のうち、脇側の縁13a、13bは、その全長にわたって衣料本体に縫合されていないフリーの状態であり、上辺縁10並びに下辺縁12は、その全長が衣料本体9のウェストライン8ないし衣料本体9のクロッチ布5の前側の縁に縫合されているガードルが提案されている。
【0006】
また、特許文献3では、緊締力の大きさが部位により異なる緊締部を着用者の人体にフィットする部位に含んで構成されるカードル(ショート、ロング)類が提案されている。
【0007】
また、特許文献4では、ガードルの腹部分の上方から下方に向けて斜めに傾いた第1の腹部強緊締部A1aと、この第1の腹部強緊締部A1aの傾きとは反対の方向に傾いた第2の腹部強緊締部A1bとを重ねる等した補整用衣類が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−96309号公報(要約)
【特許文献2】特開2001−303306号公報(要約)
【特許文献3】特開2004−107844号公報(要約)
【特許文献4】特開2005-281899号公報(要約、段落0023―0024、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記各技術にかかる衣料は、よりスマートに、より美しくという着用者の要望を満たすものではある。しかし、本発明者らがこれらの技術について更に検討を重ねたところ、これらの技術に更なる工夫を加えることにより一層シィプアップ効果が高まることを知った。本発明はこの知見に基づいて完成された。
【0010】
本発明の目的は、衣料本体の適所に合目的的かつ合理的に伸縮性裏打ち布を配置することにより、少ない素材量でもって、腹部形状およびヒップ形状を美しく整えることができ、かつ身体に無用な圧迫を与えることのない体形補整用ボトム衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明基本構成は次の通りである。
着用時に少なくとも下腹とヒップとを覆い、伸縮して下腹を押さえることのできる表面左右対称形状の体形補整用ボトム衣料であって、衣料本体を構成する伸縮性の衣料本体表布(17)と、前記衣料本体の前面裏側に配置された2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)と、を有してなり、前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)は、それぞれの主伸縮力方向が角度をもって交差するように重ね合わされ、かつ前記衣料本体の左右対称軸を挟んで対向する両端部(5・13、6・14)近傍が、それぞれ前記衣料本体表布(17)に接合されており、前記接合された部位の任意の点(22)から前記左右対称軸に降ろした垂線が当該対称軸を挟んで対向する他方接合部位点(23)に達するまでの距離である伸縮性腹部裏打ち布(2・3)の展開時寸法が、当該対向する2点間における衣料本体表布の寸法よりも常に短い、ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【0012】
上記基本構成では、衣料本体の前面裏側に、左右の両端部(5・13、6・14)を衣料本体である表布にそれぞれ接合させた状態の2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)が配置されている。この2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)の主伸縮力方向(20・21)は逆向きに交差させられ、かつ上記左右の両端部(5・13、6・14)の伸縮性腹部裏打ち布の寸法(L)が、この間に充当されている表布寸法よりも短く構成してある。つまり、左右の接合部位間に充当されている表布は、伸縮性腹部裏打ち布(2・3)に対し浮き状態になっている。このような構成のボトム衣料を着用する場合、着用し始めの段階ではより長い寸法の表布の伸縮力が殆ど作用しないので、着用開始動作時における伸縮力が弱い。よって、着用開始動作時における着用性がよい。
【0013】
その一方、短い寸法の腹部裏打ち布が伸ばされて、対応する表布と同寸法となる着用動作段階以降においては、腹部裏打ち布と表布の両者の伸縮力が合算された強い伸縮力が作用するようになる。ここで、本発明にかかるボトム衣料は先ず足を衣料に入れ、その後上方に引き上げて着用するものであるので、着用に際して、腹部のたるみやヒップのたるみは上方に引き上げられるが、この際、衣料本体の前面裏側に配置された2枚の伸縮性腹部裏打ち布が、腹部のたるみを身体中央線(左右対称軸)の斜め上方にそれぞれ引っ張り上げるように作用する。そして、着用動作が終了した時点においては、伸縮性腹部裏打ち布と伸縮性の表布の両者が合算した強い伸縮力が、引っ張り上げた形状をそのまま保持するように作用する。これにより、スッキリとした腹部ラインが形成され、かつ維持されることになる。また、伸縮性腹部裏打ち布が充当されていない他の部分においては、表布のみの弱い伸縮力が身体を押圧するのみであるので、身体に無用な圧迫感を与えない。
【0014】
なお、この基本構成における「表面左右対称形状」とは、本ボトム衣料を着用した場合に外見に現れる構造が左右対称形であることをいい、この構造には布自体の模様や裏面構造は含まれない。
【0015】
上記基本構成において、前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布のそれぞれは、前記左右対称軸に対し主伸縮力方向が40度以上、80度以下となるように配置されている構成とすることができる。
【0016】
左右対称軸と伸縮性腹部裏打ち布の主伸縮力方向との交差角度が40〜80度であると、真っ直ぐ上方への引っ張りに比較し、下腹の弛みを広範囲に拡散させ吸収させることができるので、無理なく膨出した下腹の形状を整えることができる。これに対して、伸縮性腹部裏打ち布の主伸縮力方向を前記左右対称軸に対して40度未満とすると、垂直性が強くなるため、弛み肉を広い範囲に拡散させにくくなるとともに、引っ張り上げた状態をそのまま保持させることができにくい。このため、十分な整形効果が得られない。その一方、80度を超えると、伸縮力を身体の横方向から身体の中心方向に作用させることになるので、圧迫感が強くなるとともに、斜め上方への引っ張り効果が得られなくなり、これまた十分な整形効果が得られなくなる。
【0017】
以上からして、左右対称軸に対する角度が小さくなった場合および過度に角度が大きくなった場合には、腹部のたるみや贅肉を周囲に分散させ難くなる。このため、スッキリとした腹部ラインを形成させ、かつ心地よい着用感を得るためには、伸縮性腹部裏打ち布の主伸縮力方向を、好ましくは前記左右対称軸に対してそれぞれ45度以上、75度以下とし、より好ましくは60度以上、70度以下に規制する。
【0018】
また、上記基本構成において、前記伸縮性腹部裏打ち布の接合部位が、前記衣料本体の前面裏側上縁(9)の左右の隅(10・11)のそれぞれと股間部(4)付近とを直線または内側に曲がった曲線で結ぶ前記左右対称軸に対し軸対称な2つの仮想線上にそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【0019】
上記のように、接合部位(5,6)を、前記衣料本体の前面裏側上縁(9)の左右隅(10・11)付近から股間部(4)付近とを結ぶ線分(直線または内側曲線)の上に形成し、かつ左右対称軸に対称な形状とすると、左右斜め上方への均等な引っ張り力が得られると共に、この線分で囲まれる領域に強い伸縮力を及ぼすと、腹部贅肉やたるみを腹部全体に拡散吸収させるのに極めて有効である(図1参照)。
【0020】
この構成において、それぞれの伸縮性腹部裏打ち布の上端(7,8)を、好ましくは衣料本体の左右の上縁隅(10・11)から、対向する接合部位側に斜めに下がる直線状とし、これらの上端(7,8)を左右対称軸上で交差させる配置がよく、更にこの上端(7,8)と主伸縮力方向とが並行であることがより好ましい。伸縮性腹部裏打ち布の上端7・8が左右対称軸上で交差するように配置されていると、交差部の上方領域が斜め上方に持ち上げられた腹部贅肉等の逃がし易くなく、またV字状部が、着用時の圧迫感を減少させるように作用する。また、伸縮性腹部裏打ち布の使用面積が減少する分、コスト低減と衣料の軽量化に資する。
【0021】
また、上記基本構成においては、前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)が、パワー切り替え布からなり、当該パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力は、前記左右対称軸に交差する上端を含む第1領域(102a・103a)および下端を含む第3領域(102c・103c)の両者が、両領域の中間に設けられた第2領域(102b・103b)よりも強いとする構成を付加することができる。
【0022】
伸縮性腹部裏打ち布が、パワー切り替え布からなり、当該パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力が、前記左右対称軸に交差する上端を含む第1領域(102a・103a)および下端を含む第3領域(102c・103c)が両領域の中間に設けられた第2領域(102b・103b)よりも強いとする上記構成であると、表布に接合されていない伸縮性腹部裏打ち布の上端部分および下端部分がめくれ上がることを確実に防止できる。
【0023】
また、上記基本構成においては、前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布が、パワー切り替え布からなり、前記パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力が、上下方向の全幅に対し最下端側1/3幅の下端領域(152c・153c)が、前記下端領域の直上1/3幅の中間領域(152b・153b)よりも強いとする構成を付加することができる。
【0024】
前記パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力が、少なくとも上下方向幅の最下端側1/3幅の領域を強くし、この最下端側の領域の直上1/3幅の中間領域を前者よりも弱くすると、下方から斜め上方への押し上げ力が一層大きくなるので、下腹の膨出を一層効果的に抑制することができる。
【0025】
また、上記各構成の体形補整用ボトム衣料において、前記体形補整用ボトム衣料が、更に大腿を覆うことができ、前記衣料本体の背面裏側の左右両端部寄りには、衣料本体の上端近傍より少なくとも30cm下方にまで延長する帯状の伸縮性側部裏打ち布(203・204)がそれぞれ配置され、前記伸縮性側部裏打ち布(203・204)は、ヒップの両ふくらみの頂点に対応する仮想点(206・207)を通る第1仮想横線(208)が左右の伸縮性側部裏打ち布(203・204)を横切る位置をそれぞれの上端とし、前記左右対称軸に直交し且つ股間部(205)の最下点を通る第2仮想横線(209)が左右の伸縮性側部裏打ち布(203・204)を横切る位置をそれぞれの下端とし、前記上端から下端までの間の伸縮性側部裏打ち布の寸法(203・204)が、対応する表布の寸法によりも短く構成され、且つ前記上端近傍から下端近傍までの間を除く、左右伸縮性側部裏打ち布(203・204)のそれぞれの側縁が前記表布に接合されている構成とすることができる。
【0026】
この構成では、概ね太ももの裏に当接する部分に、伸縮性側部裏打ち布(203・204)が配置され、この伸縮性側部裏打ち布(203・204)の縦方向の側縁は特定部分を除き、表布が浮いた状態で接合されている。ここで特定部分とは、ヒップの両ふくらみ部の頂点に対応する点を含む第1仮想横線(208)が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布を横切る位置を上端とし、前記左右対称軸に直交し且つ股間部の最下点を含む第2仮想横線(209)が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布(203・204)を横切る位置を下端とし、前記上端から下端までの間をいうが、この部分を除く側縁が全て接合されているので、本衣料の着用時の初期段階では伸縮性側部裏打ち布(203・204)のみからなる上下方向の引っ張り力が作用し、その後、伸縮性側部裏打ち布(203・204)と衣料本体表布の伸縮力が合わさった伸縮力が作用する。これにより、着用し易いという効果と、着用後におけるヒップアップ保持作用および歩行補助作用を増大させる効果を得ることができる。
【0027】
また、上記各構成の体形補整用ボトム衣料においては、更に、前記衣料本体の背面裏側のヒップ割目充当部分に、伸縮可能なヒップ割目部裏打ち布(202)が配置され、前記伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)は、ヒップの両ふくらみ頂点に対応する点(206・207)を結ぶ第1仮想横線(208)の位置から、股間部に到るまでの間に表布浮き領域(221)が設けられ、当該表布浮き領域(221)は、当該領域における伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)の上下方向寸法が、相対応する表布の寸法よりも短く構成された領域であり、前記表布浮き領域(221)を除く、前記伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)の周縁が前記表布に接合されている構成を付加することができる。
【0028】
この構成は、衣料本体の背面裏側に、表布浮き領域(221)を有する伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)を配置した点に特徴を有するが、このような伸縮性ヒップ割目部裏打ち布がヒップ割目部分に充当されていると、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)がヒップ内側の両下部を包み込み上方に持ち上げるので、顕著なヒップアップ効果が得られる。
【0029】
また、上記各構成の体形補整用ボトム衣料において、前記体形補整用ボトム衣料が、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、レオタード、スパッツ、水着、スポーツ用タイツから選ばれる衣料である、とすることができる。
ガードル、ショーツ、ボディスーツ、レオタード、スパッツ、水着、スポーツ用タイツから選ばれる衣料において、上記各構成の作用効果が顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、伸縮性腹部裏打ち布の斜め上方向の収縮力により着用時に下腹部を斜め上方に引き上げ、着用完了後にはより強い押圧力によりこの状態を保持するので、腹部をスッキリした美しい形状に整形し維持することができる。
【0031】
また、対応部分の表布よりも寸法を短くした浮かし構造の伸縮性側部裏打ち布を衣料本体の側面に配置した本発明によると、伸縮性側部裏打ち布がヒップを上方に引き上げるよう作用し、また歩行動作に応答して適度に太ももの裏側を上方に引っ張るように作用するので、歩行時における大腿からヒップに至るラインを美しくできる。更にまた、伸縮性側部裏打ち布は、歩行動作に応答して適度な伸縮力で歩行動作を補助するので、歩行し易くなる。
【0032】
また、表布浮き領域を有する伸縮性ヒップ割目部裏打ち布がヒップ割目部に充当された本発明によると、ヒップ割目部裏打ち布が、ヒップの内側の弛みを包み込み、かつこれを上方に引き上げて保持する。よって、ヒップアップされた美しいヒップ形を形成できる。
【0033】
以上から、本発明によると、腹部およびヒップのシルエットを美しき見せることのできる体形補整用ボトム衣料を少ない素材量でもって簡便に実現することができるという顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明を実施するための最良の形態について、ボトム衣料の代表例であるカードルを例として説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものでないことは勿論である。
【0035】
〔実施の形態1〕
図1〜図3に基づいて実施の形態1にかかるガードルを説明する。図1(a)は、実施の形態1にかかるガードル1を裏返した場合における前面裏側面を示す(以下、前面裏側図という)。図1(b)は、ガードル1に取り付けた第1の伸縮性腹部裏打ち布2および第2の伸縮性腹部裏打ち布の形状を示す展開図である。図2はガードル1の技術内容をさらに説明するための補足図である。図3は実施の形態1にかかるガードル1を人が着用した場合における正面図である。
【0036】
図1〜図3は、実施の形態1のガードル1の内容を説明するための概念図であり、写実的に描いた図ではない。図1(a)、(b)においては、衣料裏側の正面に現れる輪郭線を大線で示し、伸縮性腹部裏打ち布2・3の主伸縮力方向を細線で示し、布の接合部分はジグザク線13・14で示してある。また、図3においては、伸縮性腹部裏打ち布2・3が表布の下側になり、外からは必ずしも見えないが、その存在を表すため破線で描いてある。なお、図3の表布部分(17)に描かれた細線は、単に布の存在を描いたものであり、繊維方向を示すものではない。
【0037】
更に、本明細書では、衣料の背面側を下側にし平面上に二次元的に展開した場合における、上側の面を「前面」と称し、その反対側の下側の面を「背面」と称し、衣類の内側を「裏側」と称する。言い換えると、本明細書でいう「前面」および「背面」は、着用時に外から見える外面を意味し、「裏側」または「裏側面」は、着用時に外から直接見えない内側の面(身体側の面)を意味しており、「背面」と「裏側」とは意味を違えて使用している。
【0038】
また、本発明の衣料は左右対称性を有するが、この左右対称性は、人体正面(上記「前面」)または人体背面から着用衣料を見た場合における外見上の対称性であり、外から直接見えない衣料の内側構造を含まない。言い換えると、衣料の内側構造は左右対称でなくともよい。そしてここでいう左右対称性は、身体を装う衣料におけるおおよその対称性であり、数学的な厳格な意味における対称性ではない。なお、各図に記載された左右対称軸は、人体中心線と等価であるものとする。
【0039】
次に本実施の形態1にかかるガードル1の具体的構造を説明する。図1(a)に示すように、ガードル1は、衣料本体を構成する衣料本体表布17と、主伸縮力が衣料本体17の上縁左隅10から斜め右下方向に配向した第1の伸縮性腹部裏打ち布2と、主伸縮力が上縁右隅11から斜め左下方向に配向した第2の伸縮性腹部裏打ち布3とで構成され、第1の伸縮性腹部裏打ち布2と第2の伸縮性腹部裏打ち布3とは、その上端7・8が左右対称軸上でV字状に交差している。
【0040】
上記衣料本体表布17は、縦横方向に伸縮可能な繊維系素材からなる布であり、伸縮性腹部裏打ち布2,3も、縦横方向に伸縮可能な繊維系素材からなる布である。衣料本体表布17と伸縮性腹部裏打ち布2,3とは同一の素材であってもよいが、通常、伸縮性腹部裏打ち布2,3は衣料本体表布17よりも伸縮性に優れた素材を使用する。そして、このガードル1においては、衣料本体表布17よりも伸縮性に優れた伸縮性腹部裏打ち布2,3が使用され、かつその主伸縮力の強さが上下方向の何れの箇所においても均一な素材が使用されている。その形状は、図1(b)に示す通りである。ただし、伸縮性腹部裏打ち布2,3中の細線は繊維自体を示すものではなく、観念的に主伸縮力方向を示す線である。
【0041】
腹部に充当される表布は、図1(a)のジグザグ線で示す接合ライン15・16と衣料本体の上縁9で囲まれる形で示される逆三角形形状の一枚の布である。この逆三角形形状の表布はその周囲に連なる他の表布と接合ライン15・16部分(斜辺部分)において接合されている。なお、「衣料本体表布」というときは、衣料の表側を構成する全ての布を包含する概念で使用されている。
【0042】
腹部に充当される第1の伸縮性腹部裏打ち布2及び第2の伸縮性腹部裏打ち布3は、それぞれの左右端5・13及び6・14が、上記接合ライン15・16を形成する際に表布と重ね合わされて衣料本体表布に接合固定されている。この際、図示し得ないが、接合ライン15と接合ライン16との間の逆三角形形状部分に充当される表布の左右方向寸法と、当該部分に充当される伸縮性腹部裏打ち布2、3の左右方向寸法とは長さを違えて接合する。すなわち、左右対称軸を挟んで軸対称に対向する上記接合ライン上の2つの点22、23を結ぶ距離L(これは伸縮性腹部裏打ち布の寸法である)が、この2点間における衣料本体表布の寸法よりも短くなるように構成される。
【0043】
より詳しくは、図2に示すように、伸縮性腹部裏打ち布2,3の左右方向長(L)が、これに対応する部分の表布の左右方向長(L’とする)よりも短く(L<L’)なるようにして、各布を重ね合わせ、縮性腹部裏打ち布2,3の左右端部5・13、6・14が衣料本体表布に接合され固定される。この実施の形態1では、各布の接合は各布を縫合する方法により接合される。
【0044】
また、上記接合ライン15・16は、衣料本体17の上縁左隅10または上縁右隅11を一方端とし、股間部4近傍を他方端とする内側に凸の軸対称な曲線の上に形成されている。なお、伸縮性腹部裏打ち布2、3の上下方向のサイズは、当該部分の表布よりも小さいので、伸縮性腹部裏打ち布2、3の接合部位は接合ライン15・16の全長ではなく、その一部に重なった状態になる。
【0045】
上記のごとく、伸縮性腹部裏打ち布2,3の左右端部は接合されているが、上端7、8と下端縁(符号なし)は衣料本体17に接合されておらず、伸縮性腹部裏打ち布2,3とこれに対応する表布との間には、L<L’の関係が成立するように構成されている。
【0046】
この構造を採用する主たる理由は、LとL’の差(L−L’)を変えることにより、またL/L’(〔L/L’〕<1)の比率を例えば衣料本体上縁9側と股間側とで変化させることにより、着用し始めから着用終了に到るまでの伸縮力を任意に制御することができるからである。
【0047】
よって、この構造をボトム衣料に採用すると、同一の素材を用いた場合であっても身体整形効果と着心地感との調整を図り易いという顕著な効果が得られると共に、少ない素材量でもって所望の体形補整機能を持ったボトム衣料を実現することができる。ここで、L/L’は、0.84〜0.93程度であり、通常0.89程度、より強く伸縮力を作用させたい場合には、例えば0.85程度とする。0.84以下では表布にだぶつきが生じ、0.93以上では十分な効果が得られない。
【0048】
また例えば、L/L’比が下方(股間側)に行くに従って大きくなるように設定すると、腹部の弛みを上方に持ち上げる力が大きく、かつ腹部の中央部には無用な押圧力を及ぼさない体形補整用ボトム衣料が得られる。
【0049】
更に、実施の形態1の伸縮性腹部裏打ち布2,3は、その上端縁7・8と平行な方向に主伸縮力方向20・21が配向した布であり、布の上端縁7・8が左右対称軸上でV字状に交差し、更に左右対称軸に対する交差角θ1・θ2が共に65度になるように配置されている。図3に実施の形態1にかかるガードル1を着用した場合の正面概念図を示す。この図から判るように、伸縮性腹部裏打ち布2,3が斜めに交差するように配置されていると、腹部中央付近(胃の部分)を必要以上に圧迫しないので好ましい。
【0050】
主伸縮力方向20・21が左右対称軸と交差する交差角θ1、θ2は、必ずしも同じである必要はない。ただし、上記した理由から好ましくは同じとするのがよい。また、この交差角を大きくすると、身体を横締めする力が強くなるが、その分、圧迫感が増し着心地が悪くなると共に、腹部のたるみ肉を上方に持ち上げる効果が減少する。よって、スッキリとした腹部ラインを形成させ且つ着心地性を害さないようにするためには、交差角は、通常、40度以上、80度以下とし、好ましくは45度以上、75度以下、より好ましくは60度以上、70度以下とする。ただし、交差角θ1・θ2の設定値は、表布や伸縮性腹部裏打ち布の伸縮力の強さや、所望する整形力の程度を考量して適正に設定すればよい。
【0051】
また、上記したように伸縮性腹部裏打ち布2,3の上端7,8の交差形状は、下に凸で、両者が左右対称軸上でV字状に交差する構造が好ましい。この構造であると、下腹を強く押圧できる一方、腹部中央部付近には伸縮性腹部裏打ち布が存在しないので、腹部中央部付近を無用に圧迫することがないと共に、伸縮性腹部裏打ち布2,3の主伸縮力方向が斜め上方に軸対称に引っ張り力を及ぼすので、下腹の膨出部分を左右に拡散させ左右対称形のスッキリした腹部シルエットを形成することができるという効果が得られる。ただし、本発明は、この構造に限定されるものではない。例えば上記上端縁7,8が左右対称軸上で交差していなくともよいし、図4に示すように、伸縮性腹部裏打ち布2,3の上端縁7,8が平衡に重なり合う構造でもよい。また、上端縁7と上端縁8の位置が上下にずれた状態で配置された構造でもよい。また、主伸縮力方向が左右対称となっていなくともよい。
【0052】
また、実施の形態1(以下の実施の形態も同様)では、縫い合わせ法により接合されているが、例えば熱融着繊維や接着剤で接着する接合でも良い。接合方法としては、端部5・13,6・14の全長を接合するのでなく、所定間隔ごとの断続的接合でもよく、一定の間隔ごとのスポット接合でもよい。本明細書でいう「接合」とは、裏打ち布が表布と協働して伸縮力を及ぼすことができる状態とすることを意味し、接合部位の形状や接合手段は何ら限定されないからである。
【0053】
また、「本明細書でいう「主伸縮力方向」とは、左右上下の何れの方向にも伸縮する素材においては、より強い伸縮力が得られる方向をいい、左右上下の伸縮力が同等である場合はその何れか一方が主伸縮力方向となる。
【0054】
なお、ガードル1は、大腿部分においても布同士が接合されて円筒形状が形成されている。図1の符号12はこの接合ラインを示している。
【0055】
〔実施の形態2〕
実施の形態1においては、主伸縮力の強さが上下方向において均一な伸縮性腹部裏打ち布を用いたが、実施の形態2では、伸縮性腹部裏打ち布の中央部分の伸縮力に比較し、上端側と下端側の伸縮力が強い構造のパワー切り替え布を用いた。その他の事項については、実施の形態1と同様にして、実施の形態2にかかるガードルを作製した。
【0056】
図5を用いて実施の形態2につき説明する。図5(a)は、実施の形態2にかかるガードル100を裏返した場合における背面裏側図である。図5(a)、(b)において、パワー切り替え布からなる2枚の伸縮性腹部裏打ち布102・103は、上縁を含む上部領域102a,103aと、下縁を含む下端領域102c,103cの伸縮力が、その中央領域102b,103bの伸縮力よりも強く構成されている。なお、図中の濃い線で示す領域がそうでない領域よりも強い伸縮力を持っている部分である。
【0057】
この実施の形態2にかかるガードルにおいても、伸縮性腹部裏打ち布102,103の上縁と下縁は衣料本体表布に接合されていないが、この構造において、上縁と下縁の伸縮力が中央領域102b・103bよりも強くなっているので、上縁と下縁の捲れ上がりが生じ難い。それゆえガードルの着用時に足先が伸縮性腹部裏打ち布に入り込むといったことが防げる。
【0058】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、上記実施の形態2で用いた伸縮性腹部裏打ち布を、図6に示す構造の伸縮性腹部裏打ち布に代えたこと以外は上記実施の形態2と同様である。
【0059】
図6に示す伸縮性腹部裏打ち布152・153は、パワー切り替え布からなる。このパワー切り替え布は、上下方向の全幅長を基準とし、下縁を含む1/3幅である下端領域152c・153cの主伸縮力が、下端領域152c・153cの直上1/3幅の中間領域152b・153bの主伸縮力よりも強く構成されている。更にこの例では上縁を含む1/3幅の上端領域152a・153aの主伸縮力が中間領域152b・153bよりも弱く構成されている。つまり、実施の形態3のガードルには、下方に向って主伸縮力が3段階に強くなる2枚の伸縮性腹部裏打ち布が使用されている。
【0060】
このような伸縮性腹部裏打ち布152・153は、下方の伸縮力がより強くなっているので、このような伸縮性腹部裏打ち布152・153を使用した実施の形態3にかかるガードルは、一層下腹部の弛みを上方に持ち上げる効果に優れる。なお、パワー切り替え布とは布の編み方を変えることにより、1枚の布中に伸縮力の異なる領域を設けた布をいい、図6では線密度で主伸縮力の強さを表している。
【0061】
〔実施の形態4〕
実施の形態4にかかるガードルは、衣料本体前面裏側に、伸縮性腹部裏打ち布が配置され、更に衣料本体背面裏側の左右両側に、伸縮性側部裏打ち布がそれぞれ配置されると共に、衣料本体背面裏側の中央部分に、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布が配置された構造である。この実施の形態におけるお衣料本体前面裏側は、上記実施の形態1と同様としたので、衣料本体前面裏側についての説明は省略する。
【0062】
実施の形態4にかかるガードル200を、図7〜9に基づいて説明する。図7は、衣料本体背面裏側図であり、図7において、衣料本体背面の裏側(人体に直接接する側)の左右それぞれの端部寄りに伸縮性側部裏打ち布203,204が配置され、衣料本体背面の裏側のヒップ割目に対応する部分には、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202が配置されている。
【0063】
伸縮性側部裏打ち布203,204は、衣料本体201の最上端近傍から少なくとも30cm下方までを延びる帯状の布であり、このものは上下方向に伸縮可能な素材からなる。なお、好ましくは横方向にも伸縮可能な素材を用いる。また、伸縮性側部裏打ち布203,204の長さは30cm以上であればよいが、その長さは着用対象者の大きさ(LL,L,M,S等)に合わせるのが好ましく、通常は30cm〜40cm程度である。
【0064】
伸縮性側部裏打ち布203・204のそれぞれの両側縁は、表布浮き領域218・219以外は衣料本体表布に接合されている。上記表布浮き領域218・219は、伸縮性側部裏打ち布の寸法よりも当該領域における表布の寸法の方が長くし、表布を浮いた状態とした領域をいい、この実施の形態では、表布浮き領域の位置は次のようにして定められている。
【0065】
ヒップの両ふくらみ部の頂点に概ね対応する点206・207を結ぶ第1仮想横線208が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布の内側縁と交わる点210・214を上端点とし、左右対称軸に直交し且つ股間部205の最下点を通る第2仮想横線209が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布203・204の外側縁と交わる点213・217を下端点とする。そして、少なくとも上記上端点210から下端点213までの領域218、及び上端点214から下端点217までの間の領域219における伸縮性側部裏打ち布の寸法が、この領域における表布の寸法によりも短くなるように両布を重ねあわせ、少なくとも上記上端点から下端点までの間を除く、伸縮性側部裏打ち布の全ての側縁を表布に縫合または/および接着等して接合する。
【0066】
ここで、この例では、伸縮性側部裏打ち布側縁の接合位置が同一ではなく、内側と外側とで上下にズレを設けてあるが、このようにズラしておくと、衣料を着用した際にボディラインに沿って内側の方が大きく伸びるので、上下のズレが調整され、この過程で体形補整効果が発揮される。よって、このようにするのが好ましいが、このようにすることは必須ではない。
【0067】
すなわち、ヒップの両ふくらみ部の頂点に概ね対応する点206・207を結ぶ第1仮想横線208が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布を横切る位置を上端とし、左右対称軸に直交し且つ股間部205の最下点を通る第2仮想横線209が左右それぞれの伸縮性側部裏打ち布203・204を横切る位置を下端とし、上記上端から下端までの間の伸縮性側部裏打ち布の寸法を、この間の表布の寸法によりも短く構成し、上記上端近傍から下端近傍までの間を除く、伸縮性側部裏打ち布の全ての側縁を表布に接合する構造でよい。
【0068】
次に、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202について説明する。図7において、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202は、衣料本体の背面裏側のヒップ割目充当部分に配置されるものであり、上下左右方向に伸縮可能な素材からなる。伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202は左右対称軸に沿って略三角形ないし下広がりの略ひし形に形成されている。ただし、これらの形状に限定されるものではなく、ヒップを下から持ち上げることのできる形状であればよい。
【0069】
また、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202は、ヒップの両ふくらみ頂点206・207に対応する点を結ぶ第1仮想横線208が横切る位置220から股間部の手前までの間に表布浮き領域221が設けられ、当該表布浮き領域221は、当該領域における伸縮性ヒップ割目部裏打ち布の上下方向寸法が、相対応する表布の寸法よりも短く構成されている。そして、表布浮き領域221を除く、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布の全周縁が衣料本体表布201に縫合等の手段により接着され固定されている。
【0070】
なお、上記した「ヒップの両ふくらみ頂点206・207に対応する点」は、対象とする標準的な着用者を想定した場合における両ヒップ頂点の仮想点であり、個々の着用者が実際に着用した場合におけるヒップトップ点を意味しない。
【0071】
以上のような実施の形態4にかかるカードルを着用した場合における作用効果を、図8および図9を参照しながら説明する。図8は、当該ガードル200を人が着用した場合における背面図であり、図9は、人が着用した場合における側面図である。図8、9においては、説明の都合上、本ガードルの内側に配置されている伸縮性側部裏打ち布203・204、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202、及び伸縮性腹部裏打ち布2・3を顕在化させて描いてあり、これらの図中の矢印は各裏打ち布が人体に作用する伸縮力の主な方向を示している。
【0072】
伸縮性側部裏打ち布203・204は上下方向に伸縮性を有する。よって、ヒップの外側部分を上に持ち上げる作用があるが、この作用は表布より裏打ち布の寸法が短い部分(浮かし構造が形成された部分)218・219において一層強い。218・219部分は、ヒップの両ふくらみ頂点から股間部に到るまでの間に形成されており、ヒップの両下端が当接する部分であるので、この部分が強く上方に持ち上げられてヒップ形状が美しく整うことになる。
【0073】
他方、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202は、ヒップ中央部分を上方に持ち上げるが、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布202には表布浮き領域221が形成されているので、表布浮き領域221がヒップ中央下側を包み込んで、これを上方に持ち上げる。よって、実施の形態4にかかるガードル200は、上記した伸縮性側部裏打ち布203・204の持ち上げ結果と相まって、ヒップシルエットを美しく見せることができる。
【0074】
上記実施の形態1〜4においては、本発明をガードルに適用した場合について説明したが、本発明はガードルに限られるものではなく、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、レオタード、スパッツ、水着、スポーツ用タイツなど、身体に密着させて着用する衣料に広く適用できる。
【0075】
また、上記実施の形態4においては、伸縮性腹部裏打ち布、伸縮性側部裏打ち布、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布の3つの要素を含む形態としたが、伸縮性腹部裏打ち布と伸縮性側部裏打ち布または伸縮性ヒップ割目部裏打ち布の組み合わせでもよい。
【0076】
本発明で使用する表布、伸縮性腹部裏打ち布、伸縮性側部裏打ち布、伸縮性ヒップ割目部裏打ち布を構成する素材としては、伸縮性に加え、通気性、柔軟性、耐久性、保温性などに優れるものが好ましい。このような素材としては、例えばナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、天然性繊維(綿、麻、バンブー)などを用いた布が挙げられ、特に縁始末が不要なヘムパワーネットを使用するのが、肌に跡がつかない、アウターにひびかないなどの点で好ましい。
また、表布の素材としては、伸縮性、緊縮性、耐久性の点でパワーネット、柄パワーネット、トリコット、2ウエイトリコットなどが好適である。なお、これらは例示であって制限的なものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の体形補整用ボトム衣料によると、少ない素材量でもって腹部形状およびヒップ形状を合目的的に美しく整えることができる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1(a)は実施の形態1にかかるガードルの前面裏側の構造を示す前面裏側図であり、図1(b)は当該ガードルに取り付けられる伸縮性腹部裏打ち布の展開図である。
【図2】図1のガードル構造をさらに説明する概略図である。
【図3】図1のガードルの着用状態における正面図である。
【図4】図4(a)は実施の形態1にかかるガードルの別例における前面裏側正面図であり、図4(b)は当該グガードルに取り付けられる裏打ち布の展開図である。
【図5】図5(a)は実施の形態2にかかるガードルの前面裏側の構造を示す前面裏側図であり、図5(b)は当該ガードルに取り付けられる伸縮性腹部裏打ち布の展開図である。
【図6】実施の形態3にかかるガードルに用いた伸縮性腹部裏打ち布の展開図である。
【図7】実施の形態4にかかるガードルの背面裏側の構造を示す背面裏側図である。
【図8】図7のガードルの着用状態における背面図である。
【図9】図7のガードルの着用状態における側面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 実施の形態1にかかるガードル
2 第1の伸縮性腹部裏打ち布
3 第2の伸縮性腹部裏打ち布
4 股間部
5・13 第1の伸縮性腹部裏打ち布の左右端
6・14 第2の伸縮性腹部裏打ち布の左右端
7 第1の伸縮性腹部裏打ち布の上端
8 第2の伸縮性腹部裏打ち布の上端
9 衣料本体の背面上縁
10 衣料本体の背面上縁左端
11 衣料本体の背面上縁右端
12 大腿部を構成する布の接合ライン
15・16前面裏側腹部接合ライン
20 第1の伸縮性腹部裏打ち布の主伸縮力方向
21 第2の伸縮性腹部裏打ち布の主伸縮力方向
22・23伸縮性腹部裏打ち布の接合部位の互いに対向する点
L 伸縮性腹部裏打ち布の両端部間の距離(寸法)
52 第1の伸縮性腹部裏打ち布
53 第2の伸縮性腹部裏打ち布
101 実施の形態2にかかるガードル
102 第1の伸縮性腹部裏打ち布
102a 第1の伸縮性腹部裏打ち布の上部領域
102b 第1の伸縮性腹部裏打ち布の中央領域
102c 第1の伸縮性腹部裏打ち布の下部領域
103 第2の伸縮性腹部裏打ち布
103a 第2の伸縮性腹部裏打ち布の上部領域
103b 第2の伸縮性腹部裏打ち布の中央領域
103c 第2の伸縮性腹部裏打ち布の下部領域
152 第1の伸縮性腹部裏打ち布
152a 第1の伸縮性腹部裏打ち布の上端領域
152b 第1の伸縮性腹部裏打ち布の中間領域
152c 第1の伸縮性腹部裏打ち布の下端領域
153 第2の伸縮性腹部裏打ち布
153a 第2の伸縮性腹部裏打ち布の上端領域
153b 第2の伸縮性腹部裏打ち布の中間領域
153c 第2の伸縮性腹部裏打ち布の下端領域
200 実施の形態4にかかるガードル
201 衣料本体表布
202 伸縮性ヒップ割目部裏打ち布
203・204 伸縮性側部裏打ち布
205 股間部
206・207 ヒップの両ふくらみ頂点の対応点
208 第1仮想横線
209 第2仮想横線
210・214 内側交点
213・217 外側交点
211・215 上記内側交点の近傍点
212・216 上記外側交点の近傍点
218・219 浮かし構造部分
220 ヒップ割目部裏打ち布の表布浮き領域の上端点
221 表布浮き領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に少なくとも下腹とヒップとを覆い、伸縮して下腹を押さえることのできる表面左右対称形状の体形補整用ボトム衣料であって、
衣料本体を構成する伸縮性の衣料本体表布(17)と、
前記衣料本体の前面裏側に配置された2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)と、
を有してなり、
前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)は、それぞれの主伸縮力方向が角度をもって交差するように重ね合わされ、かつ前記衣料本体の左右対称軸を挟んで対向する両端部(5・13、6・14)近傍が、それぞれ前記衣料本体表布(17)に接合されており、
前記接合された部位の任意の点(22)から前記左右対称軸に降ろした垂線が当該対称軸を挟んで対向する他方接合部位点(23)に達するまでの距離である伸縮性腹部裏打ち布(2・3)の展開時寸法が、当該対向する2点間における衣料本体表布の寸法よりも常に短い、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項2】
請求項1に記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)のそれぞれは、前記左右対称軸に対し主伸縮力方向が40度以上、80度以下となるように配置されている、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項3】
請求項1に記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記伸縮性腹部裏打ち布の接合部位は、前記衣料本体の前面裏側上縁(9)の左右の隅(10・11)のそれぞれと股間部(4)付近とを直線または内側に曲がった曲線で結ぶ前記左右対称軸に対し軸対称な2つの仮想線上にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項4】
請求項1に記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布(2・3)は、パワー切り替え布からなり、
当該パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力は、前記左右対称軸に交差する上端を含む第1領域(102a・103a)および下端を含む第3領域(102c・103c)の両者が、両領域の中間に設けられた第2領域(102b・103b)よりも強い、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項5】
請求項1に記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記2枚の伸縮性腹部裏打ち布は、パワー切り替え布からなり、
前記パワー切り替え布の主伸縮力方向における伸縮力は、上下方向の全幅に対し最下端側1/3幅の下端領域(152c・153c)が、前記下端領域の直上1/3幅の中間領域(152b・153b)よりも強い、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記体形補整用ボトム衣料は、更に大腿を覆うことができ、
前記衣料本体の背面裏側の左右両端部寄りには、衣料本体の上端近傍より少なくとも30cm下方にまで延長する帯状の伸縮性側部裏打ち布(203・204)がそれぞれ配置され、
前記伸縮性側部裏打ち布(203・204)は、ヒップの両ふくらみの頂点に対応する仮想点(206・207)を通る第1仮想横線(208)が左右の伸縮性側部裏打ち布(203・204)を横切る位置をそれぞれの上端とし、前記左右対称軸に直交し且つ股間部(205)の最下点を通る第2仮想横線(209)が左右の伸縮性側部裏打ち布(203・204)を横切る位置をそれぞれの下端とし、前記上端から下端までの間の伸縮性側部裏打ち布の寸法(203・204)が、対応する表布の寸法によりも短く構成され、且つ前記上端近傍から下端近傍までの間を除く、左右伸縮性側部裏打ち布(203・204)のそれぞれの側縁が前記表布に接合されている、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記衣料本体の背面裏側のヒップ割目充当部分に、伸縮可能な伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)が配置され、
前記伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)は、ヒップの両ふくらみ頂点に対応する点(206・207)を結ぶ第1仮想横線(208)の位置から、股間部に到るまでの間に表布浮き領域(221)が設けられ、当該表布浮き領域(221)は、当該領域における伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)の上下方向寸法が、相対応する表布の寸法よりも短く構成された領域であり、
前記表布浮き領域(221)を除く、前記伸縮性ヒップ割目部裏打ち布(202)の周縁が前記表布に接合されている、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載の体形補整用ボトム衣料において、
前記体形補整用ボトム衣料は、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、レオタード、スパッツ、水着、スポーツ用タイツから選ばれる衣料である、
ことを特徴とする体形補整用ボトム衣料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−247117(P2007−247117A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75316(P2006−75316)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】