説明

体温計

【課題】環境に影響をうけやすい体温測定に際し、体温を正しく評価するための情報を測定する装置を提供する。
【解決手段】被測定者に装着する測定装置と、測定装置で測定された体温情報を蓄積する体温記憶装置とを備える体温計であって、測定装置は、身体表面または深部の体温を測定する体温測定手段と、体温測定手段に測定時刻に達したことを知らせる第1の計時手段と、体温測定手段で測定した体温情報を記憶する第1の記憶手段と、第1の記憶手段に記憶されている体温情報を前記体温記憶装置に送信する送信手段とを有し、体温記憶装置は、測定装置から送信される体温情報を受信する受信手段と、受信手段にて受信した体温情報を記憶する第2の記憶手段と、時刻を計時する第2の計時手段と、環境情報を測定する環境測定手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の体温を測定する体温計、特に連続的に測定する体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、体温を測定することは、身体の新陳代謝の状態を知る上で重要であるといわれている。低体温は新陳代謝を不活発にし、免疫力を低下させるため、さまざまな病気の原因になる。冷え性の人は、新陳代謝が不活発であることは痩せにくいため、その状態で食事制限等のダイエットを始めると充分な栄養が供給されなくなるため、さらに冷え性が悪化してしまうと言われている。
【0003】
また女性においては、基礎体温を測定することは、妊娠可能期間や次回月経開始日等の情報を得るだけではなく、低体温症や更年期障害の発見、治療に有効である。基礎体温の測定に際しては、舌下で測定する体温測定が一般的であるが、正しい基礎体温を取得するためには、毎朝、同時刻に起床前の体温を測定しなければならない。予測式であれば、90秒程度で測定可能とされるが、0.4℃の差をもって低温期と高温期の判断を必要とする基礎体温計では、予測式の誤差が正しい体温変化周期を捕らえることが困難になり、実測で5分程度の測定が必要になってしまっている。
【0004】
基礎体温を無意識、非侵襲に測定する方法として、就寝中、長時間体温を測定することにより、正しい基礎体温を測定する研究が行われてきた。体温センサを被検体から離脱しないように脱着自在な装着手段に装備し、就寝中に体温を測定するものが提案されている(たとえば特許文献1参照)。また、就寝前に下着内部の収納部に体温測定装置を挿入し、就寝中に体温測定データを蓄積し、起床後に情報表示装置に収納すると体温情報が情報表示装置に伝送される構成がある(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2655601号公報(2頁)
【特許文献2】特開2005−164405号公報(3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、被測定者の体温を就寝中に測定することは可能である一方、体温は室温の影響を受け、夏場は高め、冬場は低めに出ることもわかっている。このため、1日ごとに気温が変わるような季節の変わり目では、室温、及び湿度の環境変化が、0.4℃の差を持って低温期、及び高温期、ならびに約1ヶ月に周期性の判断を必要とする基礎体温の測定への影響も大きい。
【0006】
また、体温は脳の視床下部にある体温中枢で調整されているが、脳障害を持つ患者においては、脳障害が視床下部に及ぶ場合、正常体温を保つことができない。このような患者の場合、体温の測定のみでは、疾病のために発熱しているのか、環境温度が高いために発熱しているかどうかの判断は困難である。
【0007】
そこで本発明は、環境状態を加味した身体の状態を判断するための情報を得ることを目的とし、詳しくは、体温の測定と同時に、室温、湿度などの環境を測定し、測定した体温情報と環境情報を同期することにより、身体の正しい情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の体温計は、被測定者に装着する測定装置と、測定装置で測定された体温情報を蓄積する体温記憶装置とを備える体温計であって、
測定装置は、身体表面または深部の体温を測定する体温測定手段と、
体温測定手段に測定時刻に達したことを知らせる第1の計時手段と、
体温測定手段で測定した体温情報を記憶する第1の記憶手段と、
第1の記憶手段に記憶されている体温情報を前記体温記憶装置に送信する送信手段とを有し、
体温記憶装置は、測定装置から送信される体温情報を受信する受信手段と、受信手段にて受信した体温情報を記憶する第2の記憶手段と、
時刻を計時する第2の計時手段と、
環境情報を測定する環境測定手段とを有することを特徴とするものである。
【0009】
また、環境情報は、室温、または湿度情報を含むことが好ましい。
【0010】
さらに、測定装置は、第1の計時手段から通知される時刻情報により、体温測定手段で被測定者の身体表面または深部の体温を測定し、測定した体温情報を第1の計時手段から通知される時刻情報とともに第1の記憶手段に記憶し、送信手段は、第1の記憶手段に記憶されている体温情報と時刻情報を対にして送信することが好ましい。
【0011】
また、測定装置は、第1の計時手段から通知される時刻情報により、体温測定手段で被測定者の身体表面または深部の体温を測定し、測定した体温情報を第1の計時手段から通知される時刻情報とともに第1の記憶手段に記憶し、所定数の体温情報を測定し終わると、送信手段は、第1の記憶手段に記憶されている体温情報と時刻情報を送信することが好ましい。
【0012】
さらに、体温記憶装置は、第2の計時手段より通知される時刻情報により、環境測定手段で環境情報を測定し、測定した環境情報を第2の計時手段から通知された時刻情報とともに第2の記憶手段に記憶することが好ましい。
【0013】
また、体温記憶装置は、測定装置より送信された時刻情報と対になった体温情報と、体温記憶装置で測定した時刻情報と対になった環境情報とを照らし合わせ、時系列順に第2の記憶手段に記憶することが好ましい。
【0014】
さらに、第1の計時手段と第2の計時手段は、同期することにより、測定した体温情報と環境情報を時系列で一致させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、就寝中に体温測定とともに室温、湿度など環境情報を測定するため、体温変化が身体本来のものであるのか、または環境によるものであるかを判断することが可能になり、より正しい身体情報を得ることが可能になる。また、数年にわたる体温変化と環境変化を監視することが可能になり、健康管理の観点からも、環境変化が身体に及ぼす影響を調べることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の体温計について図を用いて詳細に説明する。
【0017】
(第一の実施形態)
はじめに、図1を用い本発明の1つの実施形態を説明する。
本実施形態の体温計は、被測定者の身体に密着させて体温を測定する測定装置100と、測定装置で測定された体温情報を受信し、蓄積、記憶し、さらに室温、及び湿度を測定する体温記憶装置110とから構成される。
【0018】
まず、測定装置100について説明する。第1の計時手段101は、時刻をカウントしており、あらかじめ設定された間隔、または所定の時刻になると、時刻情報102を出力する。体温測定手段103は、第1の計時手段101から時刻情報102が送られてくると、被測定者に密着したセンサにより体温を測定し、第1の計時手段101から送られてきた時刻情報102と体温情報を対にして、体温情報104として第1の記憶手段105に出力する。第1の記憶手段105は、体温測定手段103から送られた測定時刻を含む体温情報104をいったん記憶するとともに、送信手段106に出力する。送信手段106は、あらかじめ設定されている送信時刻に達すると、体温情報104を送信する。
【0019】
次に、体温記憶装置110について説明する。第2の計時手段111は、時刻をカウントしており、あらかじめ設定された間隔、または所定の時刻になると、時刻情報112を出力する。環境測定手段113は、第2の計時手段111から時刻情報が送られてくると、体温記憶装置110に装備された気温センサ、及び湿度センサーにより、室温、及び湿度を測定し、第2の計時手段111から送られてきた時刻情報112と環境測定データを対にして、環境情報114として第2の記憶手段115に出力する。第2の記憶手段115は、環境測定手段113から送られた測定時刻を含む環境情報114、及び受信手段116で受信した体温情報104を記憶する。
【0020】
測定装置100が体温測定後、体温情報104を速やかに体温記憶装置110に送信する場合について、図2を用いて説明する。体温測定手段103は、第1の計時手段101から時刻情報102が送られると(ステップ201)、体温をセンサにて測定する(ステップ202)。時刻情報102と体温測定データは、対になった体温情報104として、いったん第1の記憶手段105に記憶され(ステップ203)、送信手段106は第1の記憶手段105に格納されている時刻と体温を体温情報104として送信する(ステップ204)。送信が正常に完了すると(ステップ205)、第1の記憶手段105に格納されている体温情報は消去される(ステップ206)。
【0021】
測定装置100が体温測定後、体温情報を速やかに体温記憶装置110に送信する場合について、体温記憶装置110が受信した体温情報104と、室温、及び湿度の環境情報114を格納する手順について、図3を用いて説明する。受信手段115が体温情報104を受信すると(ステップ301)、第2の記憶手段115に空きメモリがあるかどうか調べられ(ステップ304)、空きメモリがあれば時系列で最新の格納場所に体温情報104が格納される(ステップ305)。もし体温情報104を受信せず、環境測定手段113が第2の計時手段111より時刻情報112を送られた時は(ステップ302)、環境測定手段113にて室温、及び湿度を測定し(ステップ303)、同様に空きメモリがあるかどうか調べ(ステップ302)、空きメモリがあれば時系列に第2の記憶手段115の最新の格納場所に環境情報が格納される(ステップ305)。空きメモリがない場合は、環境の測定を終了する。
【0022】
(第二の実施形態)
次に、測定装置100が体温測定後、体温情報104を測定装置100内の第1の記憶手段105に蓄積格納しておき、被測定者が起床時に体温記憶装置110に装備する受信手段115に装着した時に、体温情報104がまとめて転送される一実施形態について説明する。
【0023】
まず、測定装置100について図4を用いて説明する。体温測定手段103は、第1の計時手段101から時刻情報102が送られると(ステップ401)、体温をセンサにて測定する(ステップ402)。時刻情報102と体温測定データが対になった体温情報104として、第1の記憶手段105に記憶される(ステップ403)。測定終了かどうか判定され(ステップ404)、測定終了条件が成立したら、送信手段106は第1の記憶
手段105に格納されている全部の時刻と体温を体温情報104として送信する(ステップ405)。送信が正常に完了すると(ステップ406)、第1の記憶手段105に格納されている体温情報は消去される(ステップ407)。測定終了条件としては、あらかじめ設定された時刻に到達したか、あらかじめ設定された回数に到達したか、または、体温記憶装置110に装着されたことを検知する手段を装備しておき、体温記憶装置110に装着されたことを検知した時、測定終了条件とするなど、の方法がある。
【0024】
次に、体温記憶装置110が受信した体温情報104と、室温、及び湿度の環境情報114を格納する手順について、図5、図6及び図7を用いて説明する。
体温記憶装置110は、被測定者が就寝中、所定の時間間隔で室温、及び湿度を測定し、測定時間とともに環境情報として、図7のように第2の記憶手段115に記憶している。番号は、データの格納された順番を表し、時刻は測定時刻、室温、及び湿度は測定されたデータを表す。
受信手段116が体温情報104を受信すると、いったん体温情報104を図6のように第2の記憶手段115に格納する(ステップ501)。
まず、図7の最初の環境情報の時刻(23:30:00)を読み取り(ステップ502)、さらに最初の体温情報の時刻(23:15:00)を読み取る(ステップ503)。環境情報の時刻と体温情報の時刻を比較し(ステップ504)、早い方の時刻の情報を図8の表に格納する。この例では図6、図7のように体温情報の時刻(23:15:00)の方が早いので、体温情報を登録する(ステップ508)。体温情報が格納されたので、次の体温情報時刻(23:30:00)を読み取り(ステップ509)、環境情報の時刻と体温情報の時刻を比較し(ステップ504)、この例では環境情報の時刻が早いので、図8の表に環境情報を登録する(ステップ505)。このように図の体温情報と、図の環境情報の時刻を比較して、すべてのデータの比較が終了したら(ステップ507)、終了とする。このような手順により、時系列的に整列した体温情報と環境情報の図8の表が完成する。
【0025】
図9は、本実施形態を用い、被測定者の体温、及び室温を測定した例である。データ901は体温測定装置で測定した体温、データ902は体温記憶装置で測定した室温を表す。
【0026】
図10は、本実施形態に用いられる体温計の構成例である。図10(a)は体温記憶装置1000で、室温、湿度を測定する環境センサ1001、時刻設定などの操作ボタン1002、時刻、あるいは測定した温度を表示する表示パネル1003から構成される。図10(b)は被測定者に装着する体温測定装置1010で、体温を測定する体温センサ1011、測定した体温情報を送信する送信機1012、制御部1013から構成される。被測定者の皮膚に貼り付けられるように、体温センサ1011側には粘着性のシリコンが塗布されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す体温計のブロック図である。
【図2】第一の実施形態に用いられる体温測定装置のROMに記憶されているプログラムのフローチャートである。
【図3】第一の実施形態に用いられる体温記録装置のROMに記憶されているプログラムのフローチャートである。
【図4】第二の実施形態に用いられる体温測定装置のROMに記憶されているプログラムのフローチャートである。
【図5】第二の実施形態に用いられる体温記録装置のROMに記憶されているプログラムのフローチャートである。
【図6】体温測定装置のRAMに記憶される体温情報を示す図である。
【図7】体温記録装置のRAMに記憶される環境情報を示す図である。
【図8】体温記録装置のRAMに記憶される体温情報および環境情報を示す図である。
【図9】体温情報および環境情報を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に用いられる体温計の概略図である。
【符号の説明】
【0028】
100 体温測定装置
101 第1の計時手段
102 時刻情報
103 体温測定手段
104 体温情報
105 第1の記憶手段
106 送信手段
110 体温記憶装置
111 第2の計時手段
112 時刻情報
113 環境測定手段
114 環境情報
115 第2の記憶手段
116 受信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に装着する測定装置と、該測定装置で測定された体温情報を蓄積する体温記憶装置とを備える体温計であって、
前記測定装置は、身体表面または深部の体温を測定する体温測定手段と、
該体温測定手段に測定時刻に達したことを知らせる第1の計時手段と、
前記体温測定手段で測定した体温情報を記憶する第1の記憶手段と、
該第1の記憶手段に記憶されている体温情報を前記体温記憶装置に送信する送信手段とを有し、
前記体温記憶装置は、前記測定装置から送信される体温情報を受信する受信手段と、
該受信手段にて受信した体温情報を記憶する第2の記憶手段と、
時刻を計時する第2の計時手段と、
環境情報を測定する環境測定手段とを有する体温計。
【請求項2】
前記環境情報は、室温または湿度情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の体温計。
【請求項3】
前記測定装置は、前記第1の計時手段から通知される時刻情報により、前記体温測定手段で被測定者の身体表面または深部の体温を測定し、測定した体温情報を前記第1の計時手段から通知される時刻情報とともに前記第1の記憶手段に記憶し、前記送信手段は、前記第1の記憶手段に記憶されている体温情報と時刻情報とを対にして送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体温計。
【請求項4】
前記測定装置は、前記第1の計時手段から通知される時刻情報により、前記体温測定手段で被測定者の身体表面または深部の体温を測定し、測定した体温情報を前記第1の計時手段から通知される時刻情報とともに前記第1の記憶手段に記憶し、所定数の体温情報を測定し終わると、前記送信手段は、前記第1の記憶手段に記憶されている体温情報と時刻情報とを送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体温計。
【請求項5】
前記体温記憶装置は、前記第2の計時手段より通知される時刻情報により、前記環境測定手段で環境情報を測定し、測定した環境情報を前記第2の計時手段から通知された時刻情報とともに前記第2の記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の体温計。
【請求項6】
前記体温記憶装置は、前記測定装置より送信された時刻情報と対になった体温情報と、前記体温記憶装置で測定した時刻情報と対になった環境情報とを照らし合わせ、時系列順に前記第2の記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−74847(P2009−74847A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242341(P2007−242341)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】