説明

体積ホログラム積層体の製造方法

【課題】本発明は、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を、簡易な工程で製造できる体積ホログラム積層体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、上記基材上に形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層と、上記基材上であり、かつ、上記体積ホログラム層上に接するように形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層と、を有する体積ホログラム形成用基板を用い、上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録するホログラム撮影工程と、上記ホログラム撮影工程を行った後、上記重合性化合物を、上記体積ホログラム層へ移行させる物質移行工程と、上記重合性化合物を重合させる後処理工程と、を有し、上記重合性化合物は、上記ホログラム撮影工程における体積型ホログラムを記録する際に用いられる光によって重合されないものであることを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラムが記録された体積ホログラム層を備える体積ホログラム積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることにより、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一条件の光が当てられると干渉縞による回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。このようなホログラムは、干渉縞の記録形態により、いくつかの種類(表面レリーフ型ホログラム、体積型ホログラム等)に分類される。
【0003】
ここで、上記表面レリーフ型ホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラムが形成されたものである。一方、上記体積型ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞が、屈折率の異なる縞として厚み方向に三次元的に記録されることによってホログラムが形成されたものである。
【0004】
ところで、上記体積型ホログラムは、ホログラム原版を用いて工業的に量産することが可能であり、上記レリーフ型ホログラムよりも工業的生産性に優れるという利点を有するものであるが、工業的に用いられるレーザー光は波長が限定されているのが現状である。このため、工業的に量産された体積型ホログラムのホログラム像を再生する光についても波長が制限されてしまうことから、日常的なホログラムの利用態様において明るいホログラム像を再生することが困難であった。
【0005】
このような問題点に対し、近年では、体積型ホログラムを製造する際に、干渉縞が記録された体積ホログラム層に事後的な処理を施すことによって、当初記録された干渉縞の周期を変化させ、ホログラム像の再生波長を、干渉縞を記録する際に用いられた光の波長と異なるものにする方法が用いられている。
すなわち、体積型ホログラムの再生波長はホログラム層に記録された干渉縞の周期と一致することから、ホログラム層に記録された干渉縞の周期を事後的に変化させることによって、干渉縞の周期を日常的に使用頻度の高い光の波長と一致するように変化させるのである。このように事後的にホログラム層に記録された干渉縞の周期を変化させる方法は、日常的な利用態様において明るいホログラム像を再生可能な体積ホログラム層を作製することができる点において有用である。
【0006】
このようなホログラム像の再生波長を事後的に変化させる方法としては、数々の方法が知られているが、より一般的な方法としては特許文献1に記載された方法を例示することができる。特許文献1には、モノマーおよび/または可塑剤を含む層を、干渉縞が記録された体積ホログラム層に接触させて加熱処理等を行うことにより上記モノマーおよび/または可塑剤を体積ホログラム層に移行させて干渉縞の周期を増大させる方法が開示されている。このような方法は、確かに干渉縞の周期を増大させ、再生波長を長波長方向へシフトできる点において有用である。しかしながら、その一方で干渉縞の周期の可変量が小さいという問題や、工程が煩雑になってしまうという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開平3−46687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を、簡易な工程で製造できる体積ホログラム積層体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、基材と、上記基材上に形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層と、上記基材上であり、かつ、上記体積ホログラム層上に接するように形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層と、を有する体積ホログラム形成用基板を用い、上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録するホログラム撮影工程と、上記重合性化合物を、上記体積ホログラム層へ移行させる物質移行工程と、上記重合性化合物を重合させる後処理工程と、を有することを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記体積ホログラム形成用基板として上記樹脂層と上記体積ホログラム層とが接するように積層されたものを用い、上記ホログラム撮影工程において上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録した後に、上記物質移行工程において上記樹脂層から上記体積ホログラム層へ重合性化合物を移行させることにより、上記体積型ホログラムを構成する干渉縞の周期を事後的に任意に変化させることが可能になる。
このため本発明によれば、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を、簡易な工程で製造することができる。
【0011】
本発明においては、上記重合性化合物が、上記体積ホログラム層から移行されたものであることが好ましい。上記重合性化合物が上記体積ホログラム層から移行されたものであることにより、例えば、上記体積ホログラム層に上記樹脂のみからなる樹脂層を積層した後、上記体積ホログラム層に含まれる重合性化合物を樹脂層に移行させることによって、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板を作製することができる。このため、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法をより簡便な方法で実施することが可能になるからである。また、上記重合性化合物が上記体積ホログラム層から移行されたものであることにより、上記物質移行工程において、上記重合性化合物を上記体積ホログラム層へ移行させやすくなる場合があるからである。
【0012】
本発明においては、上記光重合性材料がラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物を含むものであり、上記重合性化合物が上記カチオン重合性化合物であることが好ましい。これにより本発明によって製造される体積ホログラム積層体をコントラストの高いホログラム像を再生可能なものにできるからである。
また、上記樹脂層に含まれる重合性化合物と、上記体積ホログラム層に含まれる光重合性材料の構成物質と一致させることにより、本発明によってさらに簡易な工程で体積ホログラム積層体を製造することができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を、簡易な工程で製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【図2】分光透過率曲線から回折効率、半値幅、および、再生中心波長を算出する方法を説明する概略図である。
【図3】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法によって製造される体積ホログラム積層体の体積ホログラム層および樹脂層に形成される球状のドメインの一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法によって製造される体積ホログラム積層体の体積ホログラム層および樹脂層に形成される球状のドメインの他の例を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法によって製造される体積ホログラム積層体の体積ホログラム層および樹脂層に形成される球状のドメインの他の例を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例および比較例における体積ホログラム積層体の分光透過率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
上述したように、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層と、上記基材上であり、かつ、上記体積ホログラム層上に接するように形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層と、を有する体積ホログラム形成用基板を用い、上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録するホログラム撮影工程と、上記重合性化合物を、上記体積ホログラム層へ移行させる物質移行工程と、上記重合性化合物を重合させる後処理工程とを有することを特徴とするものである。
【0017】
このような本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図1に例示するように、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、基材1と、上記基材1上に形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層2と、上記樹脂層2上に接するように形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層3とを有する体積ホログラム形成用基板10’を用い(図1(a))、上記体積ホログラム層3に体積型ホログラムを記録するホログラム撮影工程と(図1(b))、上記樹脂層2に含まれる重合性化合物を、上記体積ホログラム層3へ移行させる物質移行工程と(図1(c))、上記体積ホログラム層3へ移行された重合性化合物を重合させる後処理工程と(図1(d))とを有するものであり、少なくとも基材1上に、樹脂層2と、体積型ホログラムが記録された体積ホログラム層3と、を有する体積ホログラム層10(図1(e))を製造することを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、上記体積ホログラム形成用基板として上記樹脂層と上記体積ホログラム層とが接するように積層されたものを用い、上記ホログラム撮影工程において上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録した後、上記物質移行工程において上記樹脂層から上記体積ホログラム層へ重合性化合物を移行させることにより、上記体積型ホログラムを構成する干渉縞の周期を事後的に変化させることが可能になる。これは、体積型ホログラムの再生波長はそれを構成する干渉縞の周期に一致するものであるため、体積型ホログラムが記録された体積ホログラム層中に上記重合性化合物を移行させることにより、既に体積ホログラム層に形成されている干渉縞の周期を増大させる方向に変化させることができるからである。本発明においては、上記重合性化合物の移行量を調整することにより、上記干渉縞の周期を任意の程度に増大させることができるため、上記ホログラム撮影工程において体積型ホログラムを記録する際に用いる光の波長、および、上記重合性化合物の移行量を適宜調整することにより、体積ホログラム層に記録された体積型ホログラムを任意の波長でホログラム像を再生可能になるように、事後的に調整することが可能になる。
このため本発明によれば、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を簡易な工程で製造することができる。
【0019】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、少なくともホログラム撮影工程と、物質移行工程と、後処理工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0020】
1.ホログラム撮影工程
最初に、本発明におけるホログラム撮影工程について説明する。本工程は、基材と、上記基材上に形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層と、上記基材上であり、かつ、上記体積ホログラム層上に接するように形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層と、を有する体積ホログラム形成用基板を用い、上記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録する工程である。
以下、このようなホログラム撮影工程について詳細に説明する。
【0021】
(1)体積ホログラム形成用基板
まず、本工程に用いられる体積ホログラム形成用基板について説明する。本工程に用いられる体積ホログラム形成用基板は、少なくとも体積ホログラム層と、樹脂層と、基材とを有するものである。
【0022】
a.樹脂層
本発明に用いられる樹脂層について説明する。本発明に用いられる樹脂層は、少なくとも重合性化合物と、樹脂とを含むものである。本発明においてはこのような樹脂層が用いられ、後述する物質移行工程において上記重合性化合物を体積ホログラム層へ移行させることにより、任意の波長でホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を製造することができるのである。
【0023】
(重合性化合物)
上記重合性化合物としては、後述する物質移行工程において体積ホログラム層に移行させることが可能であるものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる重合性化合物は、後述する樹脂、体積ホログラム層の組成、および、物質移行工程の実施態様等に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも本発明おいては上記重合性化合物が、上記体積ホログラム層から移行されたものであることが好ましい。これより、例えば、上記体積ホログラム層に上記樹脂のみからなる樹脂層を積層した後、上記体積ホログラム層に含まれる重合性化合物を樹脂層に移行させることによって本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板を作製することができるため、本発明をより簡便な方法で実施することが可能になるからである。また、上記重合性化合物が上記体積ホログラム層から移行されたものであることにより、後述する物質移行工程において上記重合性化合物を体積ホログラム層へ移行させやすくなる場合があるからである。
【0024】
また、本発明に用いられる重合性化合物は、本工程において体積型ホログラムを記録する際に、上記体積ホログラム層に照射される光によって重合されないものであることが好ましい。上記重合性化合物が本工程で体積型ホログラムを記録する際に用いられる光によって重合されてしまうと、後述する物質移行工程において、上記重合性化合物を体積ホログラム層へ移行させることが困難になる恐れがあるからである。
【0025】
本発明に用いられる重合性化合物としては、熱重合性化合物、光重合性化合物等を挙げることができ、本発明においてはこれらのいずれの化合物であっても好適に用いることができる。また、本発明に用いられる重合性化合物は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。なかでも本発明においては上記重合性化合物として後述する体積ホログラム層に含まれる光重合性材料に含まれるものを用いることが好ましい。上記重合性化合物として、上記体積ホログラム層に含まれる光重合性材料と共通するものを用いることにより、樹脂層を形成することが容易になるからである。すなわち、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板は樹脂層と体積ホログラム層とが互いに接するように積層されているものであるため、例えば、体積ホログラム層を形成した後、その上に樹脂層を形成する際に、上記体積ホログラム層に含まれる光重合性材料を樹脂層へ移行させることにより、重合性化合物を含有する樹脂層を容易に形成することが可能になるからである。
【0026】
また、後述する体積ホログラム層に含まれる光重合性材料がラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを含有するものである場合、樹脂層に含有される重合性化合物は、上記カチオン重合性化合物と同一化合物であることが好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、本発明において上記光重合性材料としてラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物を用いることによって、コントラストの高い体積型ホログラムを記録することが可能になるが、この場合、本工程においてはラジカル重合性化合物が選択的に重合されることになる。このため、上記重合性化合物としてカチオン重合性化合物が用いられることにより、本工程において上記重合性化合物が重合され、後述する物質移行工程で重合性化合物の体積ホログラム層への移行が阻害されることが少ないからである。
【0027】
なお、上記カチオン重合性化合物については、後述する「b.体積ホログラム層」の項において詳述するため、ここでの説明は省略する。
【0028】
樹脂層に含有される重合性化合物の量としては、後述する物質移行工程において、所望量の重合性化合物を体積ホログラム層へ移行させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。具体的な含有量は、樹脂層に用いられる樹脂の種類、体積ホログラム層の組成、および、樹脂層の厚み等の種々の要因に依存するものであるが、なかでも本発明においては0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.1質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、さらに1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
(樹脂)
次に、樹脂層に用いられる樹脂について説明する。本発明に用いられる樹脂は所定の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる樹脂は、分子量が比較的大きいものであることが好ましい。樹脂の分子量が大きい方が、後述する物質移行工程において重合性化合物を体積ホログラム層へ移行させることが容易になるため、ホログラム像の再生波長を、本工程において体積型ホログラムを記録する際に用いられる光の波長からより長波長側にシフトさせることが可能になるからである。本発明に用いられる樹脂の分子量は、より具体的には5,000〜1,000,000の範囲内であることが好ましく、なかでも5,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、特に10,000〜300,000の範囲内であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる樹脂の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、またはそれらの2種以上の混合物、共重合体等の可塑性樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂等の紫外線または電子線等の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0031】
なお、本発明に用いられる樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0032】
(任意の化合物)
本発明に用いられる樹脂層には上記樹脂および上記重合性化合物以外に、他の任意の化合物が含まれていてもよい。上記任意の化合物としては特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途に応じて、樹脂層に所望の機能を付与できるものを任意に選択して用いることができる。このような任意の化合物としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等を挙げることができる。本発明においてはこれらの化合物を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ここで、上記酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、滑石、蝋石、カオリン等をそれぞれ挙げることができる。
【0034】
(樹脂層)
本発明に用いられる樹脂層の厚みは、上記樹脂の種類等に応じて所望量の重合性化合物を含有させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。ここで、上記樹脂層の厚みが大きい程、多量の重合性化合物を樹脂層に含有させることが可能になり、これを体積ホログラム層へ移行させることが可能になることから、樹脂層の厚みが大きいほど、再生波長のシフト量の調整幅が広がることになる。このため、上記樹脂層の厚みは再生波長を所望の範囲内にできるように適宜調整することができる。なかでも本発明においては、上記樹脂層の厚みが0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、特に0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.5μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0035】
b.体積ホログラム層
次に、本発明に用いられる体積ホログラム層について説明する。本発明に用いられる体積ホログラム層は、光重合性材料を含有し、後述するホログラム撮影工程において干渉縞が形成されることにより、体積型ホログラムを記録可能なものである。
以下、このような体積ホログラム層について詳細に説明する。
【0036】
(光重合性材料)
まず、本発明に用いられる光重合性材料について説明する。本発明に用いられる光重合性材料としては、所定の光が照射されることによって重合反応を進行させることができ、体積ホログラム層に干渉縞を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、少なくともラジカル重合性化合物またはカチオン重合性化合物の少なくとも一方が用いられることが好ましく、コントラストの高いホログラム像を記録することが可能になるという観点から、特にラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを併用することが好ましい。
さらに、上記光重合性材料としてラジカル重合性化合物が用いられる場合は、当該ラジカル重合性化合物の重合反応を開始させるために、光ラジカル重合開始剤系が用いられることが好ましい。一方、光重合性材料としてカチオン重合性化合物を用いられる場合は、同様の理由により光カチオン重合開始剤系が用いられる好ましい。
さらにまた、上記光重合性材料としてラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とが用いられる場合は、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系が用いられることが好ましい。
【0037】
なお、体積ホログラム形成用基板に体積ホログラム層は、体積型ホログラムが記録される前の状態のものであるため、上記光重合性材料は重合されていない状態で体積ホログラム層中に存在することになる。
【0038】
以下、本発明に用いられるラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、および、光カチオン重合開始剤系について順に説明する。
【0039】
まず、本発明に用いられるカチオン重合性化合物について説明する。本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤系の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。
【0040】
ここで、上記光重合性材料としてラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とが用いられる場合、本工程における体積ホログラムの記録は、通常、干渉露光した際に干渉縞の光強度の大きい部分にてラジカル重合性化合物を重合させた後、全面にエネルギーを照射することによりカチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させることによって行われる。このとき、ホログラム像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常、異なる波長のものが用いられることから、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、ホログラム像を形成する際に用いられる光源の波長で重合しない化合物であることが好ましい。
【0041】
また、上記ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、常温で液状であることが好ましい。
【0042】
このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ケムテク・オクト・(Chemtec.Oct.) J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁(1980)、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌(第26巻、No.5、第179−187頁(1990))等に記載されているような化合物を挙げることができる。
【0043】
より具体的には、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3´,4´−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4´,5´−エポキシ−2´−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、および、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

【0046】
なお、上記式においてnは1〜5の整数を表す。また、mは3もしくは4であり、Rはエチル基もしくはヒドロキシメチル基を表す。
【0047】
本発明においては、これらのいずれのカチオン重合性化合物であっても好適に用いることができるが、なかでも1分子あたり3官能以上の重合性官能基を有するカチオン重合性化合物を使用することが好ましい。これにより、体積ホログラム層中の架橋密度を高くすることができることから、体積ホログラム層の箔切れ性を良好なものとすることができるからである。
【0048】
なお、本発明に用いられるカチオン重合性化合物は1種類のみであってもよく、あるいは、2種以上であってもよい。
【0049】
次に、本発明に用いられるラジカル重合性化合物について説明する。本発明に用いられるラジカル重合性化合物は、体積ホログラム層を形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤系から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば特に限定されるものではないが、本発明においては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。
【0050】
ここで、体積ホログラム層は、例えばレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光等によってラジカル重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、ホログラム像を形成するものである。したがって、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物は、通常、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられる。本発明に用いられるラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の大小関係は特に限定されるものではないが、なかでも材料選択性の面からラジカル重合性化合物の平均屈折率が上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きいことが好ましく、具体的には、平均屈折率の差が0.02以上であることが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物と上記カチオン重合性化合物との平均屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細なホログラム想像を形成することが困難となる場合があるからである。
なお、ここでいう平均屈折率とは、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。また、本発明における平均屈折率は、アッベ屈折計により測定された値を意味するものとする。
【0051】
本発明に用いられるラジカル重合性化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、N−アクリロイルモルホリン、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、イソボニルアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、ジフェン酸(2−メタクリロキシエチル)モノエステル、ベンジルアクリレート、2,3−ジブロムプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、2−(9−カルバゾリル)エチルアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、2−(トリシクロ(5,2,10)ジブロモデシルチオ)エチルアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2,3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、4,5−フェナントレンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ジブロムネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,3−ビス〔2−アクリロキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ〕ベンゼン、ジエチレンジチオグリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン、および上記におけるアクリレートをメタクリレートに変えた化合物、さらには特開平2−247205号公報や特開平2−261808号公報に記載されているような分子内に少なくともS原子を2個以上含む、エチレン性不飽和二重結合含有化合物が挙げられ、これらを1種、または2種以上混合して用いることができる。
【0052】
次に、本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤系について説明する。本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤系は、本工程において体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録する際に、照射される光によって活性ラジカルを生成し、上記ラジカル重合性化合物を重合させることが可能なものであれば特に限定されるものではない。このような光ラジカル重合開始剤系としては、例えば、米国特許第4,766,055号、同第4,868,092号、同第4,965,171号、特開昭54−151024号公報、同58−15,503号公報、同58−29,803号公報、同59−189,340号公報、同60−76735号公報、特開平1−28715号公報、特願平3−5569号および「プロシーディングス・オブ・コンフェレンス・オン・ラジエーション・キュアリング・エイジア」(PROCEEDINGS OF CONFERENCE ON RADIATION CURING ASIA)」(P.461〜477、1988年)等に記載されている開始剤系等を挙げることができる。
【0053】
次に、本発明に用いられる光カチオン重合開始剤系について説明する。本発明に用いられる光カチオン重合開始剤系は、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記カチオン重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては上記ラジカル重合性化合物を重合させるレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光する低感光性のものであることが好ましい。これにより、上記ラジカル重合性化合物が重合する際、カチオン重合性化合物を、ほとんど反応させないで残存させることができるため、体積ホログラム層において大きな屈折率変調を得ることができるからである。
【0054】
ここで、レーザー光やコヒーレンス性の優れた光に対して、低感光性である光カチオン重合開始剤とは、以下の条件で熱分析を行った際、光カチオン重合開始剤系によって開始された光重合に起因するDSC値の最大値が測定試料1mgあたり500mW以下(0mWを含む)であるものを指すものとする。
【0055】
(測定条件)
測定装置:セイコー電子工業(株)製SSC5200H熱分析システムにおいて示差走査熱計量DSC220と光源装置UV−1を使用。
測定試料:対象となる光カチオン重合開始剤系をユニオンカーバイド社製UVR−6110(カチオン重合性化合物)に対して3質量%溶解させることにより調製(有機溶剤を加えて溶解させた後に有機溶剤を蒸発させてもよい。)。
照射光:干渉フィルター(半値幅約10nm)を使用してレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光と同程度に調節した光を200mJ/cm照射。
【0056】
このような光カチオン重合開始剤系としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UV Curing:Science and Technology)」、第23〜76頁、エス・ピーター・パーパス(S.Peter Pappas)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A Technology Marketing Publication)および「コメンツ・インオーガニック・ケミストリ(Coments Inorg.Chem.)」、ビー・クリンゲルト、エム・リーディーカーおよびエイ・ロロフ(B.Klingert,M.Riediker and A.Roloff)、第7巻、第3号、第109〜138頁(1988年)などに記載されているもの等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0057】
また、上記の中でもジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセンスルホネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムなどのスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。
【0058】
なお本発明においては、上記光ラジカル重合開始剤系あるいは光カチオン重合開始剤系として、上記光ラジカル重合開始剤系としての性質と光カチオン重合開始剤系としての性質とを有する開始剤系を用いてもよい。このような開始剤系としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等を挙げることができる。
【0059】
(任意の化合物)
本発明に用いられる体積ホログラム層には、上述した光重合性材料以外に他の任意の化合物が含まれていてもよい。本発明に用いられる任意の化合物としては、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途等に応じて、体積ホログラム層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような任意の化合物としては、例えば、増感色素、微粒子、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤、および、高分子結合剤等を挙げることができる。なかでも本発明においては、特にバインダー樹脂、微粒子、および、増感色素が用いられることが好ましい。バインダー樹脂が用いられることによって、体積ホログラム層を均一にすることができ、また上記ラジカル重合性化合物の重合により形成されたホログラム像を保つことが容易になるからである。
また、微粒子を用いることによって、体積ホログラム層に所望の箔切れ性を容易に付与することができるからである。
さらに、上記光重合性材料は紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を用いることによって可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて体積型ホログラムを記録することが可能となるからである。
【0060】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリメタアクリル酸エステルまたはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、ポリビニルアルコールまたはその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドンまたはその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体またはその半エステル等を挙げることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、および酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。さらに、本発明においてはこれらのバインダー樹脂の1種または2種以上の混合物を用いることもできる。
【0061】
また、本発明においては上記バインダー樹脂としてオリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0062】
さらに、本発明においては上記バインダー樹脂として、ゾル‐ゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。このような樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
R’M(OR’’) (1)
(ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R’は炭素数1〜10のビニル基または(メタ)アクリロイル基、R’’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である)。
【0063】
金属MとしてSiを使用する場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0065】
ここで、体積型ホログラムは干渉縞が屈折率変調または透過率変調として記録され形成されるものである。したがって、バインダー樹脂と上記光重合性材料との屈折率差が大きいことが好ましい。本発明においては、バインダー樹脂と光重合性材料との屈折率差を大きくするために、下記一般式(2)で表される有機金属化合物を添加することもできる。
M’(OR’’’) (2)
(ここで、M’はTi、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R’’’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは金属Mの価数である)。
【0066】
上記(2)式で表される化合物を添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダー樹脂と網目構造を形成するため、バインダ樹脂の屈折率を高くするたけでなく、層の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。したがって、光重合性材料との屈折率差を大きくするには、金属M´は高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。
【0067】
上記微粒子としては、上記の粒径を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば樹脂骨格として低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、(メタ)アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシまたはウレタンや、これらのコポリマーを含む有機微粒子や、シリカ、マイカ、タルク、クレー、グラファイト、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、フェライト、チャイナクレー、カオリン、二酸化チタン、ガラスフレーク、アスベスト、ろう石粉、けい石粉、硫酸バリウム、シェルベン、シャモット、チタニア等の無機粒子等を用いることができ、これらの微粒子を1種、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0068】
上記増感色素としては、干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであり、特に限定されるものではない。本発明に用いられる増感色素の例としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0069】
上記シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3´−ジカルボキシエチル−2,2´−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1´−カルボキシエチル−2,2´−キノシアニンブロミド、1,3´−ジエチル−2,2´−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2´−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3´−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3´−カルボニルビスクマリン、3,3´−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3´−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
【0070】
可視光活性な増感色素は、光学素子のような高透明性が要求される場合には、干渉縞記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解されるなどして無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。
【0071】
(体積ホログラム層)
本発明に用いられる体積ホログラム層は、ガラス転移点温度が100℃以上であることが好ましい。これにより、体積ホログラム層に熱が加えられた場合であっても、安定なものとすることができ、体積ホログラム層を例えば熱転写法等により転写することが可能となるからである。
【0072】
また、本発明に用いられる体積ホログラム層の厚みは、所望のホログラム像を記録できる程度であれば特に限定されるものではないが、通常、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも3μm〜40μmの範囲内であることが好ましく、さらに5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0073】
c.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上述した樹脂層および体積ホログラム層を支持する機能を有するものである。
【0074】
本発明に用いられる基材としては、上記樹脂層および体積ホログラム層を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途に応じて適宜選択して用いることができる。
【0075】
本発明に用いられる基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0076】
また、本発明に用いられる基材の厚みは、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0077】
なお、本発明に用いられる基材と、樹脂層との密着性が不十分である場合には、基材の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカーまたはプライマー処理等の表面処理を施すことによって、基材と樹脂層との間の密着性を向上することができる。プライマーとしては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から基材に合わせたものを選んで使用することができる。
【0078】
d.体積ホログラム形成用基板
本工程に用いられる体積ホログラム形成用基板は、上述した基材、樹脂層および体積ホログラム層を有するものであるが、これらが形成されている態様としては上記樹脂層および体積ホログラム層が接するように積層されている態様であれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板としては、基材上に樹脂層、体積ホログラム層の順で積層されている態様であってもよく、基材上に体積ホログラム層、樹脂層の順で積層されている態様であってもよい。本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板をいずれの態様とするかについては、後述するホログラム撮影工程において体積型ホログラムを記録するために用いられる方法等によって適宜選択することができる。例えば、ホログラム撮影工程においてホログラム原版を用いて体積型ホログラムを記録する方法が用いられる場合は、ホログラム原版を体積ホログラム層に接するように配置することが望ましいため、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板は、基材上に樹脂層、体積ホログラム層の順で積層されている態様であることが好ましい。
【0079】
本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板は、少なくとも上記樹脂層、体積ホログラム層、および基材を有するものであるが、必要に応じて他の任意の構成を有していてもよい。本発明に用いられる任意の構成は特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途に応じて所望の機能を有する構成を用いることができる。このような他の構成としては、例えば、ハードコート層や帯電防止層、印刷層、インキ受容層、および、離型層等を挙げることができる。
【0080】
e.体積ホログラム形成用基板の作製方法
次に、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板を作製する方法について説明する。本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板は、基材上に樹脂層と、体積ホログラム層とを順次、別個に形成する方法によって作製することができる。しかしながら、より簡便な工程で作製可能である点で、基材上に、重合性化合物を含有しない樹脂層を形成した後、上記樹脂層上に体積ホログラム層を形成し、さらに上記体積ホログラム層に含まれる光重合性材料の一部を上記樹脂層上に移行させる方法、あるいは、基材上に、体積ホログラム層を形成した後、上記体積ホログラム層上に重合性化合物を含有しない樹脂層を形成し、さらに上記体積ホログラム層に含まれる重合性材料の一部を上記樹脂層上に移行させる方法を用いることが好ましい。
以下、本発明に用いられる体積ホログラム形成用基板の作製方法の一例としてこのような方法について説明する。
【0081】
まず、上記基材上に重合性化合物を含有しない樹脂層を形成する方法について説明する。上記基材上に重合性化合物を含有しない樹脂層を形成する方法としては、樹脂材料からなる層を形成する方法として一般的に公知の方法を用いることができる。このような方法としては、樹脂の融解物、あるいは、樹脂を溶媒に溶解させた塗工液を上記基材上に塗工する方法や、樹脂からなるフィルムを上記基材上に貼り合わせる方法等を挙げることができる。本発明においては上記樹脂層に用いられる樹脂の種類に応じて、これらのいずれの方法であっても好適に用いることができる。
【0082】
次に、上記樹脂層上に体積ホログラム層を形成する方法について説明する。上記樹脂層上に体積ホログラム層を形成する方法としては、例えば、光重合性材料を溶媒に溶解させた塗工液を上記樹脂層上に塗工する方法や、光重合性材料を含有するフィルムを上記樹脂層上に貼り合わせる方法を挙げることができる。
【0083】
次に、上記体積ホログラム層に含有される光重合性材料を上記樹脂層に移行させる方法について説明する。上記樹脂層と上記体積ホログラム層とは互いに接するように積層されていることから、通常、上記樹脂層および体積ホログラム層を共に加熱することにより、平衡移動の原理によって上記光重合性材料を樹脂層へ移行させることができる。このとき、加熱時間または加熱温度を制御することにより光重合性材料の移行量を任意の調整することが可能である。
なお、上記樹脂層上に体積ホログラム層を形成する方法として、光重合性材料を溶媒に溶解させた塗工液を上記樹脂層上に塗工する方法を用いる場合は、当該塗工液を樹脂層上に塗工した時点で、塗工液が上記樹脂層に浸透することに起因して光重合性材料を樹脂層へ移行させることができるため、別途に上述したような加熱等の処理を施すことが不要になる場合がある。
【0084】
一方、基材上に、体積ホログラム層を形成した後、上記体積ホログラム層上に重合性化合物を含有しない樹脂層を形成し、さらに上記体積ホログラム層に含まれる重合性材料の一部を上記樹脂層上に移行させる方法を用いて体積ホログラム形成用基板を作製する場合、樹脂層と体積ホログラムの形成順を逆にすること以外は、上述した方法によって体積ホログラム形成用基板を作製することができる。
【0085】
(2)体積型ホログラムの撮影方法
次に、本工程において上述した体積ホログラム形成用基板が備える体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録する方法について説明する。
【0086】
体積型ホログラムは、光の干渉によって生じる干渉縞を屈折率の異なる縞として光重合性材料を固定化することによってホログラム像を記録するものである。このため、本工程において体積型ホログラムを記録する方法としても、体積ホログラム層に所定の干渉縞を記録できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、体積ホログラム形成用基板の基材側から参照光を入射し、体積ホログラム層側から物体光を入射し、上記体積ホログラム層内においてこれらの光を干渉させる方法や、体積ホログラム層上にホログラム原版を配置し、基材側から光を入射することによって、当該入射光と上記ホログラム原版によって反射された反射光とを上記体積ホログラム層内において干渉させる方法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの工程であっても好適に用いることができるが、なかでも上述したホログラム原版を用いる方法が好ましい。このような方法よれば簡便に体積型ホログラムを記録することができるからである。
なお、本工程において上述したホログラム原版を用いる方法を採用する場合、本工程に用いられる体積ホログラム形成用基板としては、基材上に樹脂層と、体積ホログラム層がこの順で積層された構成を有するものが用いられる。
【0087】
体積ホログラム層に用いられる光重合性材料として、単独の光重合性化合物を含有するものが用いられる場合、本工程においては当該光重合性化合物を重合させることにより体積型ホログラムが記録されることになる。しかしながら、上記光重合性材料として、2種類以上の光重合性化合物を含有するものが用いられる場合、本工程において少なくとも1種類の光重合性化合物が重合されることによって上記体積型ホログラムが記録されればよい。
なお、上記光重合性材料として上述したラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物とを含有するものを用いる場合、通常、本工程においてはラジカル重合性化合物を重合することにより、体積型ホログラムが記録されることになる。
【0088】
2.物質移行工程
次に、本発明における物質移行工程について説明する。本工程は上述したホログラム撮影工程によって体積型ホログラムが記録された体積ホログラム層に、樹脂層に含まれる重合性化合物を移行させる工程である。また、本工程は上記重合性化合物を上記樹脂層から体積ホログラム層へ移行させることにより、上記体積ホログラム層に記録された干渉縞の周期を任意に増大し、体積ホログラム層に記録された体積型ホログラムを任意の波長で再生可能なものにする工程であるということもできる。
【0089】
本工程において樹脂層から体積ホログラム層へ重合性化合物を移行させる方法としては、所望量の重合性化合物を移行させて体積ホログラム層に記録された干渉縞の周期を所定の範囲にすることができる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、上記樹脂層と上記体積ホログラム層とが互いに接触した状態で所定の時間放置させる方法、上記樹脂層と上記体積ホログラム層とを共に加熱する方法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも上記樹脂層と上記体積ホログラム層とを共に加熱する方法が好ましい。このような方法によれば、加熱時間または加熱温度等を制御することにより、上記重合性化合物の移行量を任意に調整することが容易だからである。
【0090】
3.後処理工程
次に、本発明における後処理工程について説明する。本工程は上述した重合性化合物を重合する工程である。
【0091】
本工程において上記重合性化合物を重合する方法としては、上記重合性化合物の種類に応じて適宜選択されることになる。すなわち、上記重合性化合物が光重合性化合物である場合は、当該光重合性化合物が有する光重合性官能基の種類に応じて、重合反応を誘起できる光を照射する方法が用いられる。一方、上記重合性化合物が熱重合性化合物である場合は、当該熱重合性化合物が有する熱重合性官能基の重合反応を誘起できる程度の加熱処理方法が用いられる。
【0092】
ここで、上述した物質移行工程において上記重合性化合物は体積ホログラム層に移行されていることから、本工程を実施する時点においては樹脂層と体積ホログラム層との両方に上記重合性化合物が含まれることになる。このため、本工程においては、通常、樹脂層および体積ホログラム層に含まれる重合性化合物を同時に重合することになる。
なお、樹脂層および体積ホログラム層中に含まれる重合性化合物は、本工程において重合されることによって固化されるため、以後移行されることがない。このため、本工程において体積ホログラムの再生波長が固定されることになる。
【0093】
4.体積ホログラム積層体
次に、本発明によって製造される体積ホログラム積層体について説明する。本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、上述した体積ホログラム形成用基板が用いられることから、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、基材と、上記基材上に形成された樹脂層、および、上記基材上であり、かつ、上記樹脂層に接するように形成された体積ホログラム層とを有するものとなる。
また、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、上記体積ホログラム層に体積型ホログラム層が記録されたものになるため、少なくとも上記体積ホログラム層は干渉縞が記録されたものになるが、上記樹脂層に含有される重合性化合物の種類によっては上記樹脂層にも干渉縞が形成される場合がある。このとき、上記体積ホログラム層に形成された干渉縞の周期と、上記樹脂層に形成された干渉縞の周期とが異なる場合は、ホログラム像を複数の波長で再生可能になるため、明るいホログラム像を再生可能な体積ホログラム積層体を得ることができる。
【0094】
ここで、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、本発明の体積ホログラムの製造方法によって製造されたことに起因する特徴を有するものになる。すなわち、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、上記体積ホログラム層および上記樹脂層の少なくとも一方に球形のドメインが形成されるという特徴を有するものになる。
【0095】
本発明によって製造される体積ホログラム積層体において、上記体積ホログラム層および上記樹脂層に形成される球状のドメインについて、その一例を示すことにより具体的に説明する。図3〜5は本発明によって製造される体積ホログラム積層体において、上記体積ホログラム層および上記樹脂層に形成される球状のドメインの一例を示す電子顕微鏡写真である。図3〜5に例示するように、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、体積ホログラム層および樹脂層に球状のドメインが形成されたものになる。
【0096】
このように、本発明によって製造される体積ホログラム積層体は、上記体積ホログラム層および上記樹脂層に球状のドメインが形成されるという特徴を有するものになるため、任意の体積ホログラム積層体が本発明の製造方法によって製造されたものであるかどうかについては、上記球状のドメインの存否を確認することにより容易に判断することができる。上記球形のドメインの存否は透過型電子顕微鏡によって上記体積ホログラム層および樹脂層の断面を観察することにより、明瞭に確認することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
1.実施例1
(1)体積ホログラム形成用基板の作製
基材として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラー50T60;東レ(株)製)を用い、上記基材上に重量平均分子量が15000であるポリメチルメタクリレートが溶媒に溶解された樹脂層形成用塗工液をバーコータにて塗布膜厚が2μmとなるように塗布・乾燥することによって、樹脂層を形成した。
【0100】
次に、上記樹脂層上に以下の組成を有する体積ホログラム層形成用塗工液を、アプリケータを使用して、乾燥膜厚10μmとなるように直接塗工して体積ホログラム層を形成した。
【0101】
(体積ホログラム層形成用塗工液)
・ポリ酢酸ビニル 35重量部
(デンカサクノールSN−08H:重合度800;電気化学工業(株)製)
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 25重量部
(デナコールEX−212;ナガセケムテックス(株)製)
・ジフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート 35重量部
(BPEFA;大阪ガスケミカル(株)製)
・ジアリールヨードニウム塩 4重量部
(PI2074;ローディア製)
・2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン
1重量部
・メチルイソブチルケトン 100重量部
・1−ブタノール 100重量部
【0102】
(2)ホログラム撮影工程
次に、上記体積ホログラム層上にホログラム原版をラミネートし、基材側から532nmレーザー光を80mJ/cm入射して、体積型ホログラムを記録した。記録後、ホログラム原版を剥離し、厚み50μmのPETフィルムを上記体体積ホログラム層上にラミネートした。
【0103】
(3)物質移行工程
次いで、上記樹脂層および上記体積ホログラム層を加熱した。このとき加熱条件は、100℃で10分とした。
【0104】
(4)後処理工程
次に、紫外線を全面に照射することにより体積ホログラム層を固定し、体積ホログラム積層体を得た。
【0105】
2.実施例2
ポリメチルメタクリレートとして重量平均分子量が35,000のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により体積ホログラム積層体を作製した。
【0106】
3.実施例3
ポリメチルメタクリレートとして重量平均分子量が100,000のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により体積ホログラム積層体を作製した。
【0107】
4.実施例4
ポリメチルメタクリレートに代えて、重量平均分子量が40,000のポリエステル樹脂(バイロン270 東洋紡績社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により体積ホログラム積層体を作製した。
【0108】
5.比較例
樹脂層を形成せず、基材上に直接体積ホログラム層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法により体積ホログラム積層体を作製した。
【0109】
6.ホログラム記録特性評価
実施例および比較例において得られた体積ホログラム積層体を分光光度計(UV−2450;(株)島津製作所製)にて透過率を測定し、分光透過率曲線から回折効率、半値幅、および、再生中心波長をそれぞれ以下の方法によって算出した。その結果を以下の表1に示す。
【0110】
(回折効率)
分光透過率のピーク透過率A及びベース透過率Bを求め、回折効率=|B−A|/B(%)とした(図2参照)。
【0111】
(半値幅)
ピーク透過率Aにベース透過率Aとピーク透過率Bとの差の半分を加えた透過率(A+|B−A|/2)における分光透過率曲線の左端(C)及び右端(D)を求め、半値幅=|D−C|(nm)とした(図2参照)。
【0112】
(再生中心波長)
半値幅の算出時に求めたCに半値幅の半分を加えた波長(=C+|D−C|/2)を中心波長とした(図2参照)。
【0113】
実施例1〜3および比較例の分光透過率曲線を図3に示す。
【0114】
【表1】

【符号の説明】
【0115】
1 … 基材
2 … 樹脂層
3 … 体積ホログラム層
10 … 体積ホログラム積層体
10’ … 体積ホログラム形成用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成され、光重合性材料を含有する体積ホログラム層と、前記基材上であり、かつ、前記体積ホログラム層上に接するように形成され、樹脂および重合性化合物を含有する樹脂層と、を有する体積ホログラム形成用基板を用い、
前記体積ホログラム層に体積型ホログラムを記録するホログラム撮影工程と、
前記ホログラム撮影工程を行った後、前記重合性化合物を、前記体積ホログラム層へ移行させる物質移行工程と、
前記重合性化合物を重合させる後処理工程と、を有し、
前記重合性化合物は、前記ホログラム撮影工程における体積型ホログラムを記録する際に用いられる光によって重合されないものであることを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光重合性材料が、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物を含むものであり、前記重合性化合物が前記カチオン重合性化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の体積ホログラム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−101399(P2013−101399A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−31074(P2013−31074)
【出願日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【分割の表示】特願2008−48153(P2008−48153)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】