説明

余裕深度処分ピット内充填材打設システムおよび打設方法

【課題】構造が簡単で且つ短距離の移送で充填材を打設でき、充填材のフレッシュ性状を変化させない余裕深度処分ピット内充填材打設システムおよび打設方法を提供する。
【解決手段】トンネル1内に設けられた余裕深度処分施設の処分ピット6内に並列される放射性廃棄物の容器7の周囲の隙間に充填モルタル8を打設し、さらに容器7の上部に遮蔽コンクリート9を打設するための余裕深度処分ピット内充填材打設システムであって、処分ピット6上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車20と、走行台車20に配置され下端部に開閉バルブ30が設けられた打設ホッパー21と、各部の作動を遠隔操作する制御装置60と、を備えており、制御装置60は、走行台車20を所望のトンネル軸方向位置に走行させる走行指示部と、充填モルタルまたは遮蔽コンクリートの打設量に応じて開閉バルブ30を開閉させる開閉指示部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余裕深度処分ピット内充填材打設システムおよび打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
余裕深度処分施設は、低レベル放射性廃棄物のうち放射性濃度が比較的高いものを埋設する施設であって、例えば地下50m程度の深度に掘削した処分空洞内に廃棄物を埋設処分するものである。廃棄物は角型容器に収容されて処分ピット内に縦横に複数列・複数段に積み上げられて定置される。角型容器の周囲には充填材(充填モルタルおよび上部遮蔽コンクリート)によって遮蔽体が形成され、放射線を遮蔽する。
【0003】
ところで、充填材の充填作業は、定置した放射性廃棄物が曝露した状態での作業となることから、処分空洞の両端を遮蔽扉で遮蔽して、内部を隔離し完全無人化施工とする必要がある。従来提案されている充填作業は、安全区域から処分ピットまで延びる配管を設け、高圧ポンプによって、充填材を圧送するというものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−341093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の充填方法では、処分空洞の限られたスペースの中で多数の配管を配置するために配管施工が複雑で圧送時に充填材が閉塞する虞があること、また、長距離圧送となるのでポンプおよび配管への負担が大きく特殊車両と高圧配管が必要となる問題がある。また、充填材のフレッシュ性状が、長距離圧送により変化してしまう問題もあると考えられる。
【0006】
このような観点から、本発明は、構造が簡単で且つ短距離の移送で充填材を打設でき、充填材のフレッシュ性状の変化を抑制できる余裕深度処分ピット内充填材打設システムおよび打設方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、請求項1に係る発明は、トンネル内に設けられた余裕深度処分施設の処分ピット内に並列される放射性廃棄物の容器の周囲の隙間に充填モルタルを打設し、さらに前記容器の上部に遮蔽コンクリートを打設するための余裕深度処分ピット内充填材打設システムであって、前記処分ピット上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車と、前記走行台車に配置され下端部に開閉バルブが設けられた打設バケットと、各部の作動を遠隔操作する制御装置と、を備えており、前記制御装置は、前記走行台車を所望のトンネル軸方向位置に走行させる走行指示部と、前記充填モルタルまたは前記遮蔽コンクリートの打設量に応じて前記開閉バルブを開閉させる開閉指示部とを備えていることを特徴とする余裕深度処分ピット内充填材打設システムである。
【0008】
このような構成によれば、走行台車を打設位置上まで走行させて開閉バルブを開弁すれば、充填モルタルと遮蔽コンクリートを打設バケットから短距離で落下させて打設できるので、充填材(充填モルタルと遮蔽コンクリート)のフレッシュ性状の変化を抑制できる。また、従来のように長距離配管を必要としないので、装置の構造が単純となり、コストやメンテナンス負担を低減できる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記開閉バルブが、トンネル幅方向に間隔をあけて複数設けられており、前記容器は、その周囲に格子状の隙間が形成されるように配列されており、前記隙間のうち、トンネル幅方向に延在してトンネル軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にXn通りとしたときに、前記制御部は、前記充填モルタルを、トンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが奇数番の前記Xn通りに順次打設した後に、トンネル軸方向他端部から一端部に向かってnが偶数番の前記Xn通りに順次打設するように、あるいはトンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが偶数番の前記Xn通りに順次打設した後に、トンネル軸方向他端部から一端部に向かってnが奇数番の前記Xn通りに順次打設するように、前記走行台車を移動させるとともに前記開閉バルブを開閉させることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、充填モルタルが隙間にバランスよく打設されるので、打設された充填モルタルの表面を均さなくても平坦度を高めることができる。
【0011】
さらに、前記隙間のうち、トンネル軸方向に延在してトンネル幅方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にYm通りとしたときに、前記充填モルタルは、前記Xn通りと複数の前記Ym通りとの各交点から打設されることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、充填モルタルが打設位置からXn通りとYm通りの両方に直接広がるので、充填モルタルの表面の平坦度をより一層高めることができる。
【0013】
また、前記処分ピットを跨いで配置されトンネル軸方向に移動可能なフィニッシャーをさらに備え、前記制御部は、前記遮蔽コンクリートの打設完了後に、前記フィニッシャーを移動させることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、フィニッシャーによって遮蔽コンクリートの表面の平坦度を高めることができる。
【0015】
さらに、請求項5に係る発明は、トンネル内に設けられた余裕深度処分施設の処分ピット内に並列される放射性廃棄物の容器の周囲の隙間に充填モルタルを打設し、さらに前記容器の上部に遮蔽コンクリートを打設するための余裕深度処分ピット内充填材打設方法であって、前記容器を、その周囲に格子状の隙間が形成されるように配列し、前記隙間のうち、トンネル幅方向に延在してトンネル軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にXn通りとしたときに、前記処分ピット上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車に設けられた打設バケットから前記充填モルタルを前記隙間に打設するに際して、前記充填モルタルをトンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが奇数番または偶数番の前記Xn通りに順次打設する充填材第一打設工程と、トンネル軸方向他端部から一端部に向かって未打設の前記Xn通りに順次打設する充填材第二打設工程とを備えていることを特徴とする余裕深度処分ピット内充填材打設方法である。
【0016】
このような方法によれば、充填モルタルと遮蔽コンクリートを打設バケットから短距離で落下させて打設できるので、充填材(充填モルタルと遮蔽コンクリート)のフレッシュ性状の変化を抑制できる。また、従来のように長距離配管を必要としないので、装置の構造が単純となり、コストやメンテナンス負担を低減できる。さらに、充填モルタルを隙間にバランスよく打設できるので、打設された充填モルタルの表面を均さなくても平坦度を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、前記隙間のうち、トンネル軸方向に延在してトンネル幅方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にYm通りとしたときに、前記充填材第一打設工程と前記充填材第二打設工程とにおいて、前記充填モルタルを、前記Xn通りと複数の前記Ym通りとの各交点から打設することを特徴とする。
【0018】
このような方法によれば、充填モルタルが打設位置からXn通りとYm通りの両方に直接広がるので、充填モルタルの表面の平坦度をより一層高めることができる。
【0019】
さらに、本発明は、前記遮蔽コンクリートの打設完了後に、前記処分ピットを跨いで配置されたフィニッシャーをトンネル軸方向に移動させて、前記遮蔽コンクリートの表面を均して平坦仕上げをおこなう仕上げ工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
このような方法によれば、フィニッシャーによる表面仕上げによって遮蔽コンクリートの表面の平坦度を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造が簡単で且つ短距離の移送で充填材を打設でき、充填材のフレッシュ性状を変化させることがないといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トンネルを幅方向に切った断面図である。
【図2】トンネルを軸方向に切った断面図である。
【図3】トンネル内の処分ピットを示した平面図である。
【図4】打設システムの打設装置を示した概略構成図である。
【図5】打設システムの平坦仕上げ装置を示した概略構成図である。
【図6】充填モルタルの打設工程を示したトンネルの断面図である。
【図7】遮蔽コンクリートの平坦仕上げ工程を示したトンネルの断面図である。
【図8】処分ピット内の容器の並列状態を示した拡大平面図である。
【図9】打設試験における充填モルタルの充填高さの計測点を示した平面図である。
【図10】打設試験における遮蔽コンクリートの表面高さの計測点を示した平面図である。
【図11】打設試験における充填モルタルの第一試験の打設手順を説明するための平面図である。
【図12】打設試験における充填モルタルの第一試験の充填高さを示したコンタ図である。
【図13】打設試験における充填モルタルの第二試験の打設手順を説明するための平面図である。
【図14】打設試験における充填モルタルの第二試験の充填高さを示したコンタ図である。
【図15】打設試験における充填モルタルの第三試験の打設手順を説明するための平面図である。
【図16】打設試験における充填モルタルの第三試験の充填高さを示したコンタ図である。
【図17】打設試験における遮蔽コンクリートの第一試験の表面仕上げ手順を説明するための平面図である。
【図18】打設試験における遮蔽コンクリートの第一試験の表面高さを示したコンタ図である。
【図19】打設試験における遮蔽コンクリートの第二試験の表面仕上げ手順を説明するための平面図である。
【図20】打設試験における遮蔽コンクリートの第二試験の表面高さを示したコンタ図である。
【図21】打設試験における遮蔽コンクリートの第三試験の表面仕上げ手順を説明するための平面図である。
【図22】打設試験における遮蔽コンクリートの第三試験の表面高さを示したコンタ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る余裕深度処分ピット内充填材打設システムは、地下50m程度より深い余裕深度に掘削されたトンネル(処分空洞)内に放射性廃棄物を埋設処分する際に、放射性廃棄物の容器の周囲に充填モルタルおよび遮蔽コンクリートを打設するためのものである。
【0024】
図1に示すように、トンネル1内には、底部および側部から内側に向けて、埋戻し材層2(鉄筋コンクリート)、緩衝材層3(ベントナイト)の底部3a、低拡散材層5(モルタル)の底部5aが構築され、その内側に鉄筋コンクリート造の処分ピット6の底部6aと側壁部6bが構築され、低拡散材層5の側部5bが構築される。前記埋戻し材層2、緩衝材層3の底部3a、低拡散材層5(モルタル)の底部5a、側部5b、および処分ピット6の底部6a、側壁部6bは、上部が開口した状態で構築される。処分ピット6の底部6a、側壁部6bの内部には、放射性廃棄物の容器7が複数並列される。容器7は、直方体形状の角型容器にて構成されており、処分ピット6の内壁や隣り合う容器7との間には、隙間があけられている。容器7は、縦横に複数列、上下に複数段に積み上げられて定置される。前記の隙間には、充填モルタル8が充填される。充填モルタル8が容器7の上端高さまで充填されたら、容器7および充填モルタル8を覆うように遮蔽コンクリート9が打設されて遮蔽層10が構築される。遮蔽層10が構築されたなら、その上部に処分ピット6の天板部6cが構築される。その後、緩衝材層3の側部3b、低拡散材層5の上部5c、緩衝材層3の上部3cが順次構築され、その上に上部埋戻し材層2c(セメント系あるいは土質系)が構築される。
【0025】
図2および図3は、処分ピット6の底部6aと側壁部6bが構築されて上部が開口した状態を示している。図示するように、処分ピット6が設けられるトンネル1は、主要坑道11から分岐して構築されている。トンネル1は、複数が所定の間隔をあけて並列して形成されている。主要坑道11は、処分ピット6に打設される遮蔽コンクリート9の天端と同等のレベルの底面を有するように構築されている。主要坑道11からは、移動式バケット15やコンクリートフィニッシャー16がトンネル1内に搬入される。トンネル1の主要坑道11とは逆側には、連絡坑道12が構築されて連通されている。連絡坑道12は、トンネル1の底面と同等のレベルの底面を有するように構築されている。連絡坑道12からは、充填モルタル8や遮蔽コンクリート9などを搬送するコンクリートミキサー車(図示せず)がトンネル1内に搬入される。トンネル1の連絡坑道12側端部には、移動式バケット15などを昇降させる昇降台17が設けられている。トンネル1の底面のレベルで、コンクリートミキサー車から移動式バケット15にモルタルやコンクリートを供給した後に、昇降台17によって移動式バケット15を上段に搬送し、充填モルタル8や遮蔽コンクリート9を打設する。
【0026】
処分ピット6は、トンネル1の軸方向に所定の長さごとに分割されている。隣り合う処分ピット6は、トンネル幅方向に延在する側壁部6bによって区画されている。処分ピット6の幅方向両側の側壁部6bの上端面には、トンネル軸方向に延材するガイドレール18が敷設されている。ガイドレール18は、主要坑道11側の端部から、昇降台17まで延在して形成されており、その上を移動式バケット15やコンクリートフィニッシャー16などが走行する。各処分ピット6の内部には、放射性廃棄物を収容する容器7が並列される。容器7の並列作業から遮蔽コンクリート9で処分ピット6を閉塞するまでの間は、作業者が立ち入ることができないので遠隔作業を行う。トンネル1内には、処分ピット6と、主要坑道11および連絡坑道12を区画するための開閉式隔壁19が、処分ピット6のエリアを挟むように設けられている。
【0027】
余裕深度処分ピット内充填材打設システムは、処分ピット6上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車20と、この走行台車に配置された打設バケット21と、トンネル軸方向に移動可能なフィニッシャー(コンクリートフィニッシャー16)と、各部の作動を遠隔操作する制御装置60とを備えている。走行台車20と打設バケット21は、移動式バケット15の構成部材である。
【0028】
図4に示すように、走行台車20は、トンネル幅方向に延在して処分ピット6を跨ぐフレーム22と、フレーム22に複数設けられガイドレール18(図3参照)上を回転する車輪23とを備えている。フレーム22は、平面視で矩形枠状を呈しており、ガイドレール18に沿った一対の車輪支持部22aと、これら車輪支持部22a,22aを連結するように配置された一対の連結部22bとで構成されている。車輪支持部22aには、それぞれ車輪23が複数個ずつ設けられている。複数の車輪23そのうち一の車輪(例えば進行方向一端の車輪)23には、エンコーダ(図示せず)が設けられており、走行台車20の走行位置を計測するようになっている。また、予備のエンコーダが、別の車輪(例えば進行方向他端の車輪)23に取り付けられており、前記エンコーダの故障時に使用するようになっている。連結部22bは、一対の車輪支持部22a間に架け渡されている。連結部22bは、走行台車20の進行方向前後に一対設けられ、所定の間隔をあけて配置されている。前後の連結部22b,22bの間に、打設バケット21が配置される。各連結部22bの上には、その長手方向(トンネル幅方向)に延在するガイドレール24がそれぞれ敷設されている。
【0029】
また、連結部22bの上には、レーザ距離計25が設けられており、移動式バケット15、ひいては打設位置の位置検出精度を高めている。レーザ距離計25は、単一方向のみ測距するもので、走行台車20が所定位置に停止した後に用いられ、車輪23のスリップなどによるエンコーダの計測値誤差を最終補正する。さらに、フレーム22には、IDタグ検知装置26が設けられており、トンネル1内の各部に設けられた位置情報を発信するIDタグ(図示せず)を検知することでも、走行台車20の走行位置を確認するようになっている。
【0030】
フレーム22には、各種信号を送受信する送受信機38が設けられている。送受信機38は、車輪23に設けられたエンコーダからの回転数データ、レーザ距離計25やIDタグ検知装置26からの取得データなどを制御装置60に送信する。また、送受信機38は、制御装置60から送信された作動信号(車輪23に設けられたモータの作動信号など)を受信する。
【0031】
図6に示すように、フレーム22には、パンタグラフ43が設けられている。パンタグラフ43は、トンネル1の側面に敷設された坑内給電架線41に接触することで受電して移動式バケット15の各装置に給電するようになっている。
【0032】
図4に示すように、打設バケット21は、ガイドレール24上を走行する車輪支持フレーム28に支持されており、連結部22bの長手方向に移動可能となっている。車輪支持フレーム28は、一対設けられており、走行台車20の進行方向前後に所定の間隔をあけて配置されている。車輪支持フレーム28は、ガイドレール24上を回転する複数の車輪27を備えている。車輪27は、各車輪支持フレーム28にそれぞれ複数個設けられている。車輪27には、モータおよびエンコーダ(図示せず)が設けられており、打設バケット21のトンネル幅方向位置を計測するようになっている。エンコーダは予備のものも設けられている。
【0033】
打設バケット21は、平面視でトンネル幅方向に長い長方形形状を呈しており、その下端部には一対の開口部29が形成されている(図3参照)。開口部29には開閉バルブ30を備えた打設用配管31が接続されている。打設用配管31の下流側部分は、可撓性の部材で形成されており、打設点の高さを調整可能となっている。具体的には、打設用配管31に介添棒32を取り付け、その下流端にワイヤー33を接続して、ワイヤー33をウインチ34で巻き上げることで、打設用配管31の下流端を引き上げるようになっている。ウインチ34は、車輪支持フレーム28に支持されており、打設バケット21と一緒にトンネル幅方向に移動する。ウインチ34には、モータのエンコーダ(図示せず)が設けられており、ウインチ34の巻上量を検知して制御することで、打設用配管31の下流端の高さ位置を調整する。
【0034】
車輪支持フレーム28の上方には、ビデオカメラ35と二次元レーザセンサ36とレーザ距離計37が設けられている。ビデオカメラ35は、遠隔操作における各部の動作確認をするための施工用カメラである。ビデオカメラ35は、両方の車輪支持フレーム28にそれぞれ複数台固定されており、打設バケット21の内部や、打設用配管31の打設状態や、打設位置などを撮影できるように配置されている。二次元レーザセンサ36は、容器7の周囲の隙間に向けて配置されており、充填モルタル8の出来形検測に使用する。二次元レーザセンサ36も車輪支持フレーム28に固定されており、車輪支持フレーム28を移動させることで複数の検測断面を取得する。レーザ距離計37は、打設バケット21の位置を測定するためのものであり、両方の車輪支持フレーム28のトンネル幅方向両側にそれぞれ設けられている。レーザ距離計37は、トンネル幅方向外側を向いて配置されており、トンネル1の側壁間との距離を計測する。
【0035】
車輪支持フレーム28には、各種信号を送受信するアンテナ39が設けられている。アンテナ39は、各種取得データ(車輪27やウインチ34に設けられたエンコーダからの回転数データ、ビデオカメラ35、二次元レーザセンサ36からの映像データ、レーザ距離計37からの測定データなど)を制御装置60に送信する。また、アンテナ39は、制御装置60から送信された各種作動信号(車輪27に設けられたモータの作動信号、ウインチ34の作動信号や、開閉バルブ30の開閉信号など)を受信する。
【0036】
コンクリートフィニッシャー16は、遮蔽コンクリート9の表面を平坦仕上げするためのものである。コンクリートフィニッシャー16は、図5に示すように、ガイドレール18上を回転する車輪50を備えている。コンクリートフィニッシャー16は、進行方向前進側に排土板形状のスクリードブレード57が装着された公知のフィニッシャーに、位置測定装置や各種信号の送受信機を設けることで遠隔操作可能に構成されている。
【0037】
具体的には、複数の車輪50のうち一の車輪50には、エンコーダ(図示せず)が設けられており、コンクリートフィニッシャー16の走行位置を計測するようになっている。また、予備のエンコーダが、別の車輪50に取り付けられており、前記エンコーダの故障時に使用するようになっている。コンクリートフィニッシャー16には、ビデオカメラ51と三次元レーザセンサ52とレーザ距離計53,54とIDタグ検知装置55がそれぞれ設けられている。ビデオカメラ51は、コンクリートフィニッシャー16の前後を撮影可能に配置されており、遮蔽コンクリート9の表面の仕上げ状態の確認に用いられる。三次元レーザセンサ52は、遮蔽コンクリート9の表面に向けて配置されている。三次元レーザセンサ52は、演算によって立体的な表示を可能としており、遮蔽コンクリート9の出来形検測に使用する。レーザ距離計53は、トンネル軸方向を向いて配置されており、コンクリートフィニッシャー16の走行位置を計測する。レーザ距離計54は、トンネル幅方向外側を向いて配置されており、トンネル1の側壁間との距離を計測する。IDタグ検知装置55は、トンネル1内の各部に設けられた位置情報を発信するIDタグ(図示せず)を検知することで、コンクリートフィニッシャー16の走行位置を確認する。IDタグは、移動式バケット15の位置確認を行うものと共通である。
【0038】
コンクリートフィニッシャー16には、各種信号を送受信するアンテナ56が設けられている。アンテナ56は、各種取得データ(車輪50に設けられたエンコーダからの回転数データ、ビデオカメラ51、三次元レーザセンサ52からの映像データ、レーザ距離計53,54からの測定データなど)を制御装置60に送信する。また、アンテナ56は、制御装置60から送信された各種作動信号(車輪50に設けられたモータの作動信号や開閉バルブ30の開閉信号など)を受信する。
【0039】
図7に示すように、コンクリートフィニッシャー16には、パンタグラフ44が設けられている。パンタグラフ44は、トンネル1の側面に敷設された坑内給電架線41に接触することで受電して、コンクリートフィニッシャー16の各部に給電するようになっている。
【0040】
図4及び図5に示すように、制御装置60は、処分ピット6から離れて配置され、作業員が遠隔操作を行うための制御室(図示せず)に設けられている。制御装置60は、図示しない受信部と、表示部と、作動指示部と、送信部と、記憶部を有している。制御装置60は、各部の動作が適宜為されるようにプログラムされたマイクロコンピュータにて構成されている。受信部は、移動式バケット15の送受信機38から送信された、車輪23に設けられたエンコーダからの回転数データ、レーザ距離計25やIDタグ検知装置26からの取得データなどを受信して表示部に送信する。また、受信部は、コンクリートフィニッシャー16のアンテナ56から送信された、車輪50に設けられたエンコーダからの回転数データ、ビデオカメラ51、三次元レーザセンサ52からの映像データ、レーザ距離計53,54からの測定データなどを受信して表示部に送信する。表示部では、受信した各種データがモニターなどの表示装置に表示され、作業員が各種状態を目視する。
【0041】
作動指示部は、走行台車20を所望のトンネル軸方向位置に走行させる走行指令を作成する走行指示部と、充填モルタル8または遮蔽コンクリート9の打設量に応じて開閉バルブ30を開閉させる開閉指令を作成する開閉指示部を備えている。また、作動支持部は、その他に打設バケット21の移動指令を作成する移動指示部も備えている。前記の各指令は、送信部に送られる。記憶部には、後記する充填モルタル8の打設位置および打設順序、遮蔽コンクリート9の打設位置および打設順序、並びにコンクリートフィニッシャー16の移動順序が予め入力されている。作動指示部は、記憶部から各種情報を取り出して、打設位置および打設順序の情報を合わせて、各作動指令を送信部に送信する。送信部は、受信した作動指令に基づいて、車輪27や車輪50に設けられたモータの作動信号や、開閉バルブ30の開閉信号を送信する。
【0042】
以下に、移動式バケット15を用いて充填モルタル8を処分ピット6内に並列された容器7の周囲の隙間に充填する手順を説明する。図8に示すように、容器7は、処分ピット6内に、周囲に格子状の隙間が形成されるように配列されている。ここで、前記隙間のうち、トンネル幅方向に延在してトンネル軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端(図8中、左側の端)から順にXn通り(X1、X2、X3…通り)とし、トンネル軸方向に延在してトンネル幅方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端(図8中、下側の端)から順にYm通り(Y1、Y2、Y3…通り)とする。
【0043】
充填モルタル8を打設するに際しては、昇降台17によって、移動式バケット15を連絡坑道12レベルに移動させておき、連絡坑道12から搬入されたコンクリートミキサー車(図示せず)から、コンクリートポンプを用いて充填モルタル8を打設バケット21内に積み込む。その後、昇降台17を上昇させて、打設すべき処分ピット6上に走行させる。そして、ビデオカメラ35の映像やレーザ距離計37の計測データより打設位置を確認した後、ウインチ34を回転させてワイヤー33を送り出し打設用配管31を所定の高さに下降させる。その後、開閉バルブ30を開弁して、充填モルタル8を隙間に打設する。充填モルタル8の打設中は、ビデオカメラ35の映像で、打設バケット21内の充填モルタル8の残量や打設状況を監視する。なお、遮蔽コンクリート9の打設においても、前記と同様の作業工程を行う。
【0044】
ここで、充填モルタル8の打設位置と打設順序について説明する。本実施形態では、充填モルタル8を、トンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが奇数番のXn通り(X1、X3、X5…通り)に順次打設した(充填材第一打設工程)後に、トンネル軸方向他端部から一端部に向かって未打設のnが偶数番のXn通り(X8、X6、X4…通り)に順次打設する(充填材第二打設工程)。つまり、充填モルタル8を一端から奇数番目の奇数番Xn通りで、小さい数字のXn通りから大きい数字のX通りにかけて順次打設(Xn通りを一つ飛ばしで順次打設)した後に、充填モルタル8を他端側から偶数番X通りで、大きい数字のXn通りから小さい数字のXn通りにかけて順次打設(未打設のXn通りを逆方向から一つ飛ばしで順次打設)する。なお、本実施形態では、奇数番Xn通りを先に打設した後に偶数番Xn通りを打設しているが、偶数番Xn通りを先に打設して奇数番Xn通りを後で打設するようにしてもよい。また、本実施形態では、充填材第一打設工程と充填材第二打設工程とを備えて移動式バケット15が一往復しているが、打設量が多い場合は、さらに充填材第三打設工程、充填材第四打設工程…と適宜追加してもよい。
【0045】
Xn通り上では、複数のYm通りとの各交点を打設位置とする。本実施形態では、両端のY1通りおよびY6通りからそれぞれ一つ内側に入ったY2通りおよびY5通りとの交点を打設位置とする。つまり、図8に示す二箇所ずつ位置する交点C1から交点C4へと順次打設した後、交点C5から交点C8の順に打設する。なお、打設位置は、Xn通りと、前記したY2通りおよびY5通りとの交点に限定されるものではなく、処分ピット6の広さやYm通りの本数に応じて、適宜変更可能である。たとえば、Xn通りと、一番外側のYm通りとの交点であってもよいし、両端からそれぞれ二つ内側に入ったYm通りとの交点であってもよい。さらに、本実施形態では、打設位置は、Xn通りと、二本のYm通りとの交点としているが、Ym通りの本数が多いときは、三本以上のYm通りとの交点で打設するようにしてもよい。なお、打設位置は、充填モルタル8の広がりを考慮すると原則的にXn通りとYm通りとの交点が好ましいが、必ずしもXn通りとYm通りとの交点に限定されるものではない。打設位置の箇所数に応じてトンネル幅方向にバランスよく打設できるように、交点と交点の間の溝部分に打設してもよい。たとえば、本実施形態の隙間の形状において打設位置を三箇所とする場合は、Xn通りと、Y2通りおよびY5通りとの二つの交点と、Xn通り上で、Y3通りとY4通りの中間点を打設位置とする。
【0046】
次に、遮蔽コンクリート9の打設位置と打設順序、および表面仕上げについて説明する。遮蔽コンクリート9の打設も移動式バケット15を用いて行う。本実施形態では、遮蔽コンクリート9を、他端(図8中、右側の端)のXn通り(X8通り)から一つ内側に入ったXn通り(X7通り)から、一端(図8中、左側の端)へと、各Xn通り毎に順次打設する。Xn通り上では、両端のYm通り(Y1通り)およびYm通り(Y6通り)からそれぞれ一つ内側に入ったYm通り(Y2通り)およびYm通り(Y5通り)との交点を打設位置とする(遮蔽コンクリート打設工程)。なお、遮蔽コンクリート9の打設位置および打設順序は、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0047】
遮蔽コンクリート9の打設が終了したら、移動式バケット15を打設の完了していない隣の処分ピット6上に移動させて、コンクリートフィニッシャー16を遮蔽コンクリート9上に移動させる。仕上げ作業は、コンクリートフィニッシャー16を前進させて、スクリードブレード57の前面を使って、押しながら遮蔽コンクリートの表面を剥ぎ取るように仕上げる押し仕上げ施工を行う(仕上げ工程)。
【0048】
以上のような構成の余裕深度処分ピット内充填材打設システムによれば、走行台車20を打設位置上まで走行させて開閉バルブ30を開弁すれば、充填モルタル8と遮蔽コンクリート9を打設バケット21から短距離で落下させて打設できるので、充填材(充填モルタル8と遮蔽コンクリート9)の移動距離を短くできる。したがって、充填モルタル8のフレッシュ性状の変化を抑制できる。また、本実施形態によれば、トンネル1内には、移動式バケット15とコンクリートフィニッシャー16と坑内給電架線41を設ければよく、従来のように長距離配管を必要としないので、装置の構造が単純となり、コストやメンテナンス負担を低減できる。また、開閉バルブ30は2ヶ所だけであるので、トラブル発生リスクが大幅に減少する。さらには、レーザ距離計37、エンコーダなどの計測装置や、ビデオカメラ35、二次元レーザセンサ36などの監視装置によって、施工状況に応じた精度の高い遠隔操作を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、前記のように充填モルタル8を少量ずつ処分ピット6の平面全体に渡って分散して打設したことによって、充填モルタル8が各隙間にバランスよく打設されるので、打設された充填モルタル8の表面を均さなくてもセルフレベリング効果によって、平坦度を高めることができる。
【0050】
一方、遮蔽コンクリート9においては、充填モルタル8よりも流動性が低いが、打設完了後にコンクリートフィニッシャー16で仕上げ加工を行うことで、遮蔽コンクリート9の表面の平坦度を高めることができる。
【0051】
次に、充填モルタル8および遮蔽コンクリート9の平坦度について行った確認実験について説明する。確認試験は、格子状に形成した隙間Sに充填モルタルを打設した実験(図9参照)と、同規模の底面積の枠内に遮蔽コンクリートを打設した実験(図10参照)をそれぞれ行った。打設バケットとして、容量2.0mのバケットを2基用いた。バケットの下部には5インチの吐出口が形成されている。なお、放射性廃棄物の容器の大きさは1.6m×1.6mと設定して隙間Sを形成した。コンクリートフィニッシャーとして、エンジン式バイブレータを装備した簡易フィニッシャーを用いた。
【0052】
充填モルタルの確認実験では、図9中、Xn通りとYm通りの各交点において、充填モルタルの表面高さを計測した。交点の円の中の数字は、計測ポイントを示す。遮蔽コンクリートの確認実験では、図10中、格子状に組まれた通り線の交点において、遮蔽コンクリートの表面高さを計測した、交点の円の中の数字は、計測ポイントを示す。
【0053】
充填モルタルと遮蔽コンクリートの配合は、下記の表1に示すようになっている。なお、充填モルタルについては、放射性廃棄物が発熱することを考慮して、高温環境下で60分間高い流動性を保持するものとした。
【0054】
【表1】

【0055】
充填モルタルの確認試験は、図11,13,15に示す3つのケースの打設手順について行った。図15に示す打設順序が本実施形態の打設手順である。図11,13に示す打設手順は、比較例である。
【0056】
充填モルタルの第一試験では、2台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に充填モルタルを積み込んだ。図11に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ充填モルタルを、X1通りとY2通りとの交点、およびX1通りとY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点5,13)に0.25mずつ打設した後、X3通りとY2通りとの交点、およびX3通りとY4通りとの交点(太線の四角にて囲む計測点7,15)に0.25mずつ打設する。計測点7,15の打設が完了したら、2台めのコンクリートミキサー車から充填モルタルを積み込み、計測点5,13に打設した後、計測点7,15に打設する。
【0057】
この第一試験によれば、充填モルタルの表面は、硬化後、図12に示すように、最終的に打設した計測点7,15の周囲が高い形状となる。具体的な数値は、下記の表2に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は157mmであり、最大値は171mm、最小値は125mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は46mmである。2台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は316mmであり、最大値は330mm、最小値は300mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は30mmである。さらに、硬化後の充填モルタルでは、充填高さの平均値は315mmであり、最大値は329mm、最小値は300mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は29mmである。
【0058】
【表2】

【0059】
充填モルタルの第二試験は、3台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に充填モルタルを積み込む。図13に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ充填モルタルを、X1通りとY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点13)に0.5m打設した後、X4通りとY2通りとの交点(太線の四角にて囲む計測点8)に0.5m打設する。計測点8の打設が完了したら、2台めのコンクリートミキサー車から充填モルタルを積み込み、計測点13に1.0m打設した後、計測点8に1.0m打設する。その後、3台めの充填モルタルは、2台めと同様の打設を行う。
【0060】
この第二試験によれば、充填モルタルの表面は、硬化後、図14に示すように、最終的に打設した計測点8の周囲が高い形状となる。具体的な数値は、下記の表3に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は153mmであり、最大値は183mm、最小値は115mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は68mmである。2台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は460mmであり、最大値は474mm、最小値は447mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は27mmである。3台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は764mmであり、最大値は779mm、最小値は751mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は28mmである。さらに、硬化後の充填モルタルでは、充填高さの平均値は764mmであり、最大値は777mm、最小値は751mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は26mmである。
【0061】
【表3】

【0062】
充填モルタルの第三試験は、3台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に充填モルタルを積み込む。図15に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ充填モルタルを、X1通りとY2通りとの交点、およびX1通りとY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点5,13)に0.25mずつ打設した後、X3通りとY2通りとの交点、およびX3通りY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点7,15)に0.25mずつ打設する。計測点7,15の打設が完了したら、2台めのコンクリートミキサー車から充填モルタルを積み込み、X4通りとY2通りとの交点、およびX4通りとY4通りとの交点(太線の四角にて囲む計測点8,16)に0.25mずつ打設した後、X2通りとY2通りとの交点、およびX2通りとY4通りとの交点(太線の四角にて囲む計測点6,14)に0.25mずつ打設する。計測点6,14の打設が完了したら、3台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ充填モルタルを、X1通りとY2通りとの交点、およびX1通りとY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点5,13)に0.25mずつ打設した後、X3通りとY2通りとの交点、およびX3通りとY4通りとの交点(太線の円にて囲む計測点7,15)に0.25mずつ打設する。
【0063】
この第三試験によれば、充填モルタルの表面は、硬化後、図16に示すように、全体的に略平坦な形状となる。具体的な数値は、下記の表4に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は154mmであり、最大値は175mm、最小値は137mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は38mmである。2台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は476mmであり、最大値は485mm、最小値は465mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は20mmである。3台めのコンクリートミキサー車分の充填モルタルの打設が完了した時点で、充填高さの平均値は804mmであり、最大値は809mm、最小値は796mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は13mmである。さらに、硬化後の充填モルタルでは、充填高さの平均値は803mmであり、最大値は809mm、最小値は798mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は11mmである。
【0064】
【表4】

【0065】
以上の充填モルタルの第一試験から第三試験の結果を比較すると、いずれのケースでも、硬化後の最大レベル差は、平均値±2cmの範囲内であるので、管理基準目標値の条件を満たしている。その中でも、本実施形態に対応する第三試験のように、打設地点を多数設定し少量ずつ打設するとともに、Xn通りに一つ飛ばしで打設し、戻り方向では、未打設のXn通りに一つ飛ばしで打設することで、硬化後の最大レベル差が11mmと最小値となることが確認された。つまり、本実施形態の打設手順が、比較例と比べて高いセルフレベリング性の改善効果が得られることが確認された。なお、充填モルタルについては、硬化後の仕上がり時の表面の平坦性の要求レベルに応じて、平坦性を重視するか、施工の合理性を重視するのかを判断し、打設手順を適宜選定すれば、より合理的な施工が可能となる。
【0066】
遮蔽コンクリートの確認試験は、図17,19,21に示す3つのケースの打設手順および仕上げ手順について行った。図19に示すケースが本実施形態のコンクリートフィニッシャーの仕上げ手順である。
【0067】
遮蔽コンクリートの第一試験は、4台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に遮蔽コンクリートを積み込む。図17に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ遮蔽コンクリートを、太線の円にて囲む計測点9,19に0.5mずつ打設した後、太線の四角にて囲む計測点8,18に0.5mずつ打設し、さらに、太線の三角にて囲む計測点7,17に0.5mずつ打設する。その後、2台めのコンクリートミキサー車から遮蔽コンクリートを積み込み、計測点9,19、計測点8,18、計測点7,17の順に各点にそれぞれ0.67mずつ打設する。3台めのコンクリートミキサー車からの遮蔽コンクリートも2台めと同様の順序および打設量で遮蔽コンクリートを打設する。4台めのコンクリートミキサー車からの遮蔽コンクリートは、1台めと同様の順序および打設量で遮蔽コンクリートを打設する。遮蔽コンクリートの打設が完了したら、コンクリートフィニッシャーを計測点7,17から計測点9,19へ向かう方向へと後退させ、前進側に装着した排土板形状のスクリードブレードの後面を使って、引きながら遮蔽コンクリートの表面を均すように仕上げる引き仕上げ施工を行う。
【0068】
この第一試験によれば、遮蔽コンクリートの表面は、仕上げ後、図18に示すように、打設順序が遅い地点とコンクリートフィニッシャーの移動方向下流側の地点が高くなっており、その間の中間部分が低くなっている。具体的な数値は、下記の表5に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点で、表面高さの平均値は108mmであり、最大値は132mm、最小値は66mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は66mmである。以下、2台め、3台め、4台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点では、最大レベル差は、それぞれ43mm、48mm、94mmである。コンクリートフィニッシャーによる仕上げ後は、表面高さの平均値は524mmであり、最大値は540mm、最小値は506mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は34mmである。
【0069】
【表5】

【0070】
遮蔽コンクリートの第二試験は、3台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に遮蔽コンクリートを積み込む。図19に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ遮蔽コンクリートを、太線の円にて囲む計測点7,17に0.5mずつ打設した後、太線の四角にて囲む計測点8,18に0.5mずつ打設し、さらに、太線の三角にて囲む計測点9,19に0.5mずつ打設する。その後、2台めのコンクリートミキサー車から遮蔽コンクリートを積み込み、計測点9,19、計測点8,18、計測点7,17の順に各点にそれぞれ0.67mずつ打設する。3台めのコンクリートミキサー車からの遮蔽コンクリートは、1台めと同様の順序で、各点にそれぞれ0.67mずつ打設する。遮蔽コンクリートの打設が完了したら、コンクリートフィニッシャーを、計測点9,19から計測点7,17へ向かう方向へと前進させ、前進側に装着した排土板形状のスクリードブレードの前面を使って、押しながら遮蔽コンクリートの表面を剥ぎ取るように仕上げる押し仕上げ施工を行う。
【0071】
この第二試験によれば、遮蔽コンクリートの表面は、仕上げ後、図20に示すように、全体的に略平坦となっている。具体的な数値は、下記の表6に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点で、表面高さの平均値は490mmであり、最大値は511mm、最小値は439mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は72mmである。以下、2台め、3台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点では、最大レベル差は、それぞれ56mm、75mmである。コンクリートフィニッシャーによる仕上げ後は、表面高さの平均値は756mmであり、最大値は770mm、最小値は736mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は34mmである。硬化後の表面高さの平均値は756mmであり、最大値は768mm、最小値は718mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は50mmである。
【0072】
【表6】

【0073】
遮蔽コンクリートの第三試験は、7台のコンクリートミキサー車に分けてバケット内に遮蔽コンクリートを積み込む。図21に示すように、打設手順は、まず、1台めのコンクリートミキサー車から積み込んだ遮蔽コンクリートを、太線の円にて囲む計測点9,19に0.5mずつ打設した後、太線の四角にて囲む計測点8,18に0.5mずつ打設し、さらに、太線の三角にて囲む計測点9,19に0.5mずつ打設する。その後、2台めのコンクリートミキサー車から遮蔽コンクリートを積み込み、計測点9,19、計測点8,18、計測点7,17の順に各点にそれぞれ0.67mずつ打設する。3台めから6台めのコンクリートミキサー車からの遮蔽コンクリートも、2台めと同様の順序および打設量で打設する。7台めのコンクリートミキサー車からの遮蔽コンクリートは、1台めと同様の順序および打設量で打設する。遮蔽コンクリートの打設が完了したら、コンクリートフィニッシャーを、計測点7,17から計測点9,19へ向かう方向へと後退させて引き仕上げ施工を行った後、計測点9,19から計測点7,17へ向かう方向へと前進させて押し仕上げ施工を行う。なお、本試験では、押し仕上げ施工後10分後に、図21の右側半面で実験的に再震動仕上げを実施した。
【0074】
この第三試験によれば、遮蔽コンクリートの表面は、仕上げ後、図22に示すように、全体的に略平坦となっている。具体的な数値は、下記の表7に示すように、1台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点で、表面高さの平均値は116mmであり、最大値は139mm、最小値は69mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は70mmである。以下、2台めから7台めのコンクリートミキサー車分の遮蔽コンクリートの打設が完了した時点では、最大レベル差は、それぞれ126mm、76mm、91mm、55mm、56mm、60mmである。コンクリートフィニッシャーによる引き仕上げ後(仕上げ後1)は、表面高さの平均値は1008mmであり、最大値は1026mm、最小値は968mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は58mmである。コンクリートフィニッシャーによる押し仕上げ後(仕上げ後2)は、表面高さの平均値は1006mmであり、最大値は1017mm、最小値は971mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は46mmである。再振動仕上げ後(仕上げ後3)は、表面高さの平均値は1007mmであり、最大値は1017mm、最小値は971mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は46mmである。硬化後の表面高さの平均値は1005mmであり、最大値は1016mm、最小値は978mmとなっている。最大値から最小値を減算した最大レベル差は38mmである。
【0075】
【表7】

【0076】
以上の遮蔽コンクリートの第一試験から第三試験の結果を比較すると、いずれのケースでも、仕上げ前の最大レベル差が、およそ50〜100mmの範囲で大きい数値となっていた。これは、遮蔽コンクリートは、充填モルタルに比べて流動性が劣るためであると考えられる。また、コンクリートフィニッシャーを用いた平坦仕上げを行うと、最大レベル差が50mm以下となり、仕上げ効果が得られることが確認された。仕上げ手順の違いによる平坦仕上げ性状の違いについては、いずれのケースにおいても、最大レベル差が許容値以下になる結果が概ね得られたが、前進側に装着した排土板形状のスクリードブレードの前面を使って、押しながら遮蔽コンクリートの表面を剥ぎ取るように仕上げた押し仕上げ施工(第二試験)の性状が最も良好であることが分かった。
【0077】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、本実施形態では、コンクリートフィニッシャー16を移動式バケット15と別体で設けているが、フィニッシャーを移動式バケット15に装着して、走行台車20を走行させることで遮蔽コンクリート9の表面仕上げを行うようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、打設バケット21が走行台車20に対してトンネル幅方向に移動可能であったが、これに限定されるものではなく、走行台車20に固定してもよい。この場合、打設バケットの開口部は、その個数に応じて、トンネル幅方向にバランスよく配置しておく。
【符号の説明】
【0079】
1 トンネル
6 処分ピット
7 容器
8 充填モルタル
9 遮蔽コンクリート
16 コンクリートフィニッシャー
20 走行台車
21 打設バケット
30 開閉バルブ
60 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に設けられた余裕深度処分施設の処分ピット内に並列される放射性廃棄物の容器の周囲の隙間に充填モルタルを打設し、さらに前記容器の上部に遮蔽コンクリートを打設するための余裕深度処分ピット内充填材打設システムであって、
前記処分ピット上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車と、前記走行台車に配置され下端部に開閉バルブが設けられた打設バケットと、各部の作動を遠隔操作する制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、前記走行台車を所望のトンネル軸方向位置に走行させる走行指示部と、前記充填モルタルまたは前記遮蔽コンクリートの打設量に応じて前記開閉バルブを開閉させる開閉指示部とを備えている
ことを特徴とする余裕深度処分ピット内充填材打設システム。
【請求項2】
前記開閉バルブは、トンネル幅方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記容器は、その周囲に格子状の隙間が形成されるように配列されており、
前記隙間のうち、トンネル幅方向に延在してトンネル軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にXn通りとしたときに、
前記制御部は、前記充填モルタルを、トンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが奇数番の前記Xn通りに順次打設した後に、トンネル軸方向他端部から一端部に向かってnが偶数番の前記Xn通りに順次打設するように、あるいはトンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが偶数番の前記Xn通りに順次打設した後に、トンネル軸方向他端部から一端部に向かってnが奇数番の前記Xn通りに順次打設するように、前記走行台車を移動させるとともに前記開閉バルブを開閉させる
ことを特徴とする請求項1に記載の余裕深度処分ピット内充填材打設システム。
【請求項3】
前記隙間のうち、トンネル軸方向に延在してトンネル幅方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にYm通りとしたときに、
前記充填モルタルは、前記Xn通りと複数の前記Ym通りとの各交点から打設される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の余裕深度処分ピット内充填材打設システム。
【請求項4】
前記処分ピットを跨いで配置されトンネル軸方向に移動可能なフィニッシャーをさらに備え、
前記制御部は、前記遮蔽コンクリートの打設完了後に、前記フィニッシャーを移動させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の余裕深度処分ピット内充填材打設システム。
【請求項5】
トンネル内に設けられた余裕深度処分施設の処分ピット内に並列される放射性廃棄物の容器の周囲の隙間に充填モルタルを打設し、さらに前記容器の上部に遮蔽コンクリートを打設するための余裕深度処分ピット内充填材打設方法であって、
前記容器を、その周囲に格子状の隙間が形成されるように配列し、
前記隙間のうち、トンネル幅方向に延在してトンネル軸方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にXn通りとしたときに、
前記処分ピット上をトンネル軸方向に走行可能な走行台車に設けられた打設バケットから前記充填モルタルを前記隙間に打設するに際して、前記充填モルタルをトンネル軸方向一端部から他端部に向かってnが奇数番または偶数番の前記Xn通りに順次打設する充填材第一打設工程と、トンネル軸方向他端部から一端部に向かって未打設の前記Xn通りに順次打設する充填材第二打設工程とを備えている
ことを特徴とする余裕深度処分ピット内充填材打設方法。
【請求項6】
前記隙間のうち、トンネル軸方向に延在してトンネル幅方向に間隔をあけて並ぶ複数の隙間を一端から順にYm通りとしたときに、
前記充填材第一打設工程と前記充填材第二打設工程とにおいて、前記充填モルタルを、前記Xn通りと複数の前記Ym通りとの各交点から打設する
ことを特徴とする請求項5に記載の余裕深度処分ピット内充填材打設方法。
【請求項7】
前記遮蔽コンクリートの打設完了後に、前記処分ピットを跨いで配置されたフィニッシャーをトンネル軸方向に移動させて、前記遮蔽コンクリートの表面を均して平坦仕上げをおこなう仕上げ工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の余裕深度処分ピット内充填材打設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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