説明

作業機械の配管ガード

【課題】アームに配管ガードを取り付けるボルトに剪断力が作用せず、アームに配管ガードを安定に取り付け可能な配管ガードの取付構造を提供する。
【解決手段】配管ガード11を構成する2枚のガード板11aの内面を、アーム8の左右両側面に固定されたナット体13の端面に当接し、各ガード板11aに開設されたボルト貫通孔11cを、これに対応する各ナット体13の取付位置に対向させる。しかる後に、ボルト貫通孔11cに貫通したボルト12の先端部をナット体13に螺合することにより、配管ガード11をアーム8に取り付ける。ガード板11aの内面のアーム8の先端部と接する位置又はナット体13と接する位置にはストッパ14が取り付けられ、ボルト12への剪断力の作用を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の配管ガードに係り、特に、マテリアルハンドリング機(以下、本明細書においては、これを「マテハン機」と略称する。)のアーム先端部に備えるに好適な配管ガードの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
マテハン機は、長大なアームの先端に吊り下げられたグラップル等の作業具を駆動することにより廃棄物処理などの作業を行う作業機械であり、アームの外面の長さ方向には、グラップルに圧油を供給するための油圧ホースが引き回されている(例えば、特許文献1参照。)。なお、マテハン機のアームの先端には、グラップルに代えてマグネットが吊り下げられることもあり、この用途に適用されるマテハン機のアーム外面には、油圧ホースに代えて、或いは油圧ホースと共に、マグネットに電力を供給するための電源コードが引き回されるが、以下においては、一例として、油圧ホースのみをアームに取り付けてなるマテハン機について説明する。
【0003】
油圧ホースは、作業中に処理対象である廃棄物等が衝突して破断する虞があるので、これを防止するため、アームに何らかの配管ガードを備える必要がある。この場合において、油圧ホースの配管部分を全て配管ガードにて覆う構成とすれば、油圧ホースの破断を完全に防止可能であるが、その反面、アームが大型化・大重量化して、マテハン機の操作性が低下する。そこで、多くの機種では、最も油圧ホースの破断が生じやすいアームの先端部分にのみ配管ガードを取り付けている。また、アームに対する配管ガードの取付方法としては、溶接による場合とボルト締結による場合とがあるが、例えば油圧ホースの先端部に取り付けられるカプラの寸法等に応じて配管ガードを最適サイズのものに付け替える必要がある場合には、作業性を良好なものにするため、ボルト締結により配管ガードをアームに取り付けた方が有利である。
【0004】
図4に、従来知られている配管ガードのボルト締結方式を示す。この図から明らかなように、従来の方式は、角筒状の素材をもって形成されるアーム101の左右両側面にナット体102を対向に溶接すると共に、該ナット体102の外方に配管ガード103を構成する2枚のガード板103aを配置し、該ガード板103aに開設されたボルト貫通穴104に貫通したボルト105をナット体102に螺合する。なお、図中の符号103bは2枚のガード板103aを連結する連結部材を示し、図中の符号Hは油圧ホースを示している。連結部材103bの両端はガード板103aに溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−274806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記構成によると、作業中に処理対象である廃棄物等がガード板103aの先端部に衝突する毎に、図4に矢印Aで示す剪断力がボルト105に作用するため、ボルト105が疲労破断しやすく、最悪の場合にはアーム101から配管ガード103が脱落する虞がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業中ボルトに廃棄物等の衝突に起因する剪断力が作用せず、アームに配管ガードを安定に取り付け可能な配管ガードの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するため、油圧ホースが引き回されたアームの両側にボルト及びこれが螺合されるナット体をもって取り付けられるガード板を備えた作業機械の配管ガードにおいて、前記アーム及び前記ガード板のいずれか一方に、前記アームに対する前記ガード板の相対的な変位に起因する剪断力が前記ボルトに作用することを防止するためのストッパを設けたことを特徴とする。
【0009】
かかる構成によると、アーム及びガード板のいずれか一方に設けられたストッパにより、アームに対するガード板の相対的な変位に起因して、ボルトに剪断力が作用することを防止できるので、ボルトの疲労破断、ひいてはアームからの配管ガードの脱落を防止することができる。
【0010】
また本発明は、前記構成の作業機械の配管ガードにおいて、前記ストッパとして柱状又は管状の部材を用い、前記アームの両側に前記ボルト及び前記ナット体をもって前記ガード板を取り付けたとき、前記ガード板に設けたボルト貫通孔と前記ボルトとの間に間隙を有した状態で、前記ガード板の裏面における前記アームの先端部と接する位置又は前記ナット体と接する位置に前記柱状又は管状の部材からなるストッパを固定したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、アームに対してガード板が剪断方向に変位しようとしたとき、アームの先端部又はナット体にストッパである柱状の部材が押し付けられ、それ以上のガード板の変位が防止されるので、ボルトに剪断力が作用せず、その破断を防止することができる。
【0012】
また本発明は、前記構成の作業機械の配管ガードにおいて、前記ストッパとして中心部にねじ穴が形成されたナット体兼用の部材を用いると共に、前記ガード板には当該ナット体兼用のストッパを貫通するためのストッパ貫通孔を開設し、前記ナット体兼用のストッパを前記アームの外側面に固定し、かつ前記ストッパ貫通孔内に前記ナット体兼用のストッパを貫通した状態で、前記ナット体兼用のストッパに開設されたねじ穴に前記ボルトを螺合することを特徴とする。
【0013】
かかる構成によると、アームに対してガード板が剪断方向に変位しようとしたとき、ストッパ貫通孔の周面がナット体兼用のストッパに押し付けられ、それ以上のガード板の変位が防止されるので、ボルトに剪断力が作用せず、その破断を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の作業機械の配管ガードは、アーム及びガード板のいずれか一方に、アームに対するガード板の相対的な変位に起因する剪断力が前記ボルトに作用することを防止するためのストッパを設けたので、ガード板に外力が作用した場合にもボルトに剪断力が作用せず、その破断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る配管ガードが取り付けられるマテハン機の側面図である。
【図2】第1実施形態に係る配管ガードの要部断面図である。
【図3】第2実施形態に係る配管ガードの要部断面図である。
【図4】従来例に係る配管ガードの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明が適用される作業機械の一例として、アームの先端部にグラップルが吊り下げられたマテハン機について説明する。
【0017】
図1に示すように、本例のマテハン機は、履体1を備えた下部走行体2と、運転室3を備え、下部走行体2の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体4と、一端が上部旋回体4に旋回可能に連結され、ブームシリンダ5によって上下方向に駆動されるブーム6と、一端がブーム6に旋回可能に連結され、アームシリンダ7によって上下方向に駆動されるアーム8と、アーム8の先端部に吊り下げられたグラップル9を備えている。グラップル9は、一端が上部旋回体4に搭載された図示しない油圧ポンプに連結され、ブーム6及びアーム8の外面に沿って配管された油圧ホース10を通じて供給される圧油により駆動される。
【0018】
アーム8の先端部には、図1に示すように、油圧ホース10を保護するための配管ガード11が、複数本のボルト12を用いて着脱可能に取り付けられており、例えばマテハン機の処理対象である廃棄物等が油圧ホース10に衝突して、配管ホース10が破断することを防止している。
【0019】
〈配管ガードの第1例〉
以下、第1実施形態に係る配線ガードについて説明する。
【0020】
本例において、アーム8は、図2に示すように、角筒状に形成されており、油圧ホース10が配管される外面の左右両側には、配管ガード11を取り付けるためのナット体13が溶接により対向に固定されている。このナット体13は、アーム8の長さ方向に、所定の間隔を隔てて複数個ずつ固定される。
【0021】
一方、配管ガード11は、2枚の所定形状及び所定サイズのガード板11aと、これら2枚のガード板11aの先端部分を連結する連結部材11bとから構成されており、各ガード板11aの所定位置には、ナット体13に対応する配列で、ボルト貫通孔11cが開設されている。また、各ガード板11aの内面(裏面)には、ボルト貫通孔11cに貫通したボルト12の先端部をナット体13に螺合し、ボルト貫通孔11cとボルト12との間に間隙を有した状態で、アーム8又はナット体13の先端部と接する位置に、ストッパ14が溶接により取り付けられている。ストッパ14としては、柱状又はパイプ状の部材を用いることができる。
【0022】
配管ガード11は、2枚のガード板11aの内面をナット体13の端面に当接し、かつ各ガード板11aに開設されたボルト貫通孔11cを、これに対応する各ナット体13の取付位置に対向させた後、ボルト貫通孔11cに貫通したボルト12の先端部をナット体13に螺合することにより、アーム8に取り付けられる。このとき、各ガード板11aの内面に取り付けられたストッパ14が、ガード板11aの先端部又はナット体13の側面に接するので、作業中に廃棄物等の異物がガード板11aの先端部に衝突した場合にも、その衝突力Fが、ストッパ14を介してナット体13又はガード板11aの先端部で受けられ、ボルト12に剪断力が作用することを防止できる。よって、剪断力が繰り返し作用することに起因するボルト12の疲労破断を防止でき、アーム8からの配管ガード11の脱落を防止することができる。
【0023】
〈配管ガードの第2例〉
次に、第2実施形態に係る配線ガードについて説明する。
【0024】
本例において、アーム8は、図3に示すように、角筒状に形成されており、油圧ホース10が配管される外面の左右両側には、端面中央部にボルト12を螺合するためのねじ穴が開設されたナット体兼用のストッパ15が溶接により対向に固定されている。このナット体兼用のストッパ15は、アーム8の長手方向に、所定の間隔を隔てて複数個ずつ固定される。
【0025】
一方、配管ガード11は、2枚の所定形状及び所定サイズのガード板11aと、これら2枚のガード板11aの先端部分を連結する連結部材11bとから構成されており、各ガード板11aの所定位置には、ナット体兼用のストッパ15に対応する配列で、ストッパ貫通孔11dが開設されている。
【0026】
配管ガード11は、各ガード板11aに開設されたストッパ貫通孔11d内に、アーム8に固定された各ナット体兼用のストッパ15を貫通した後、ナット体兼用のストッパ15に形成されたねじ穴にボルト12の先端部を螺合することにより、アーム8に取り付けられる。かかる構成によると、作業中に廃棄物等の異物がガード板11aの先端部に衝突した場合、その衝突力Fがナット体兼用のストッパ15によって受けられるので、ボルト12への剪断力の作用を防止できる。よって、剪断力が繰り返し作用することに起因するボルト12の疲労破断を防止でき、アーム8からの配管ガード11の脱落を防止することができる。
【0027】
なお、アーム8には、必要に応じて、油圧ホース10に代えて、或いは油圧ホース10と共に、マグネット等の電気式作業具に電力を供給するための電源コードを引き回すこともできる。また、前記実施形態においては、2枚のガード板11aの先端部を連結部材11bにて連結したが、この連結部材11bについては省略することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、マテハン機などの作業機械に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 履体
2 下部走行体
3 運転室
4 上部旋回体
5 ブームシリンダ
6 ブーム
7 アームシリンダ
8 アーム
9 グラップル
10 油圧ホース
11 配管ガード
11a ガード板
11b 連結部材
11c ボルト貫通孔
11d ストッパ貫通孔
12 ボルト
13 ナット体
14 ストッパ
15 ナット体兼用のストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ホースが引き回されたアームの両側にボルト及びこれが螺合されるナット体をもって取り付けられるガード板を備えた作業機械の配管ガードにおいて、
前記アーム及び前記ガード板のいずれか一方に、前記アームに対する前記ガード板の相対的な変位に起因する剪断力が前記ボルトに作用することを防止するためのストッパを設けたことを特徴とする作業機械の配管ガード。
【請求項2】
前記ストッパとして柱状又は管状の部材を用い、前記アームの両側に前記ボルト及び前記ナット体をもって前記ガード板を取り付けたとき、前記ガード板に設けたボルト貫通孔と前記ボルトとの間に間隙を有した状態で、前記ガード板の裏面における前記アームの先端部と接する位置又は前記ナット体と接する位置に前記柱状又は管状の部材からなるストッパを固定したことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の配管ガード。
【請求項3】
前記ストッパとして中心部にねじ穴が形成されたナット体兼用の部材を用いると共に、前記ガード板には当該ナット体兼用のストッパを貫通するためのストッパ貫通孔を開設し、前記ナット体兼用のストッパを前記アームの外側面に固定し、かつ前記ストッパ貫通孔内に前記ナット体兼用のストッパを貫通した状態で、前記ナット体兼用のストッパに開設されたねじ穴に前記ボルトを螺合することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の配管ガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188834(P2012−188834A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51985(P2011−51985)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】