説明

作業機械

【課題】狭小作業現場での広範囲の各種作業に適した作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械11は、後部車輪12を有する後部車両13に対し、前部車輪14を有する前部車両15を、垂直方向のアーティキュレート軸16を介して水平方向屈曲可能に連結する。後部車両13と前部車両15との間には、後部車両13に対し前部車両15をアーティキュレート軸16を中心に水平方向に屈曲作動させる1対のアーティキュレート用シリンダ17を設ける。前部車両15の中央部には、前方に突出する凸部23を設け、この凸部23の先端には、垂直方向のスイング軸24によって、作業装置取付板25を水平方向揺動可能に軸支し、この作業装置取付板25に作業装置26を取付ける。前部車両15と作業装置取付板25の一側面に突設された取付部との間には、スイング軸24を中心に作業装置26を水平方向に揺動するスイング用シリンダ28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーティキュレート構造の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示されるように、ホイールタイプの作業機械としては、後部車輪1を有する後部車両2に対し、アーティキュレート軸3を介して、前部車輪4を有する前部車両5が屈曲可能に連結され、この前部車両5に設けられた作業装置取付板6にリフトシリンダ7により回動されるリフトアーム8の基端が軸支され、このリフトアーム8の先端にチルトシリンダ9により回動されるバケット10が軸連結されたホイールローダが知られている。
【0003】
さらに、ホイールタイプの作業機械としては、ホイール式下部走行体に上部旋回体が旋回可能に設けられ、この上部旋回体にフロント作業装置が設けられたホイール式油圧ショベルが知られている(例えば、特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開昭58−210219号公報(第1−2頁、第1図)
【特許文献2】特開平4−360921号公報(第2頁、図9)
【特許文献3】特開2004−196061号公報(第2頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダは、荷の掻集め、運搬車両へのローディングなどのバケット作業には適しているが、地面を深く掘削する掘削作業または他のアタッチメント作業には適さず、作業内容が制限される。
【0005】
一方、ホイール式油圧ショベルは、路面での機動性に富むものの、小回りが利かないためトンネル内などの狭小作業現場での作業には適さない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、狭小作業現場での広範囲の各種作業に適した作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、後部車輪を有する後部車両と、後部車両に対しアーティキュレート軸を介して水平方向屈曲可能に連結された前部車輪を有する前部車両と、後部車両に対し前部車両をアーティキュレート軸を中心に水平方向に屈曲作動させるアーティキュレート用シリンダと、前部車両に設けられた作業装置取付板と、作業装置取付板に取付けられて流体圧アクチュエータによりそれぞれ回動されるブーム、アームおよび作業体が順次連結された作業装置とを具備した作業機械である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の作業機械における作業装置取付板が、前部車両に対しスイング軸を介して水平方向揺動可能に軸支され、前部車両と作業装置取付板との間に設けられスイング軸を中心に作業装置を水平方向に揺動するスイング用シリンダを具備したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、後部車両に対しアーティキュレート用シリンダによりアーティキュレート軸を中心に水平方向に屈曲作動される前部車両に、作業装置取付板を介して、ブーム、アームおよび作業体が順次連結された作業装置を取付けたので、後部車両に後部車輪を、前部車両に前部車輪をそれぞれ有するホイール式であるが、小回りが利く車両をベースにしてトンネル内などの狭小作業現場での広範囲の各種作業に適した作業機械を提供できる。
【0010】
請求項2に記載された発明によれば、後部車両に対しアーティキュレート用シリンダによりアーティキュレート軸を中心に水平方向屈曲可能な前部車両に、さらにスイング用シリンダによりスイング軸を中心に水平方向揺動可能な作業装置取付板を軸支したので、この作業装置取付板に取付けられた作業装置は、アーティキュレート用シリンダによる屈曲動作と、スイング用シリンダによる同一方向のスイング動作とにより、単なるアーティキュレート車両では得られないほど高範囲の水平方向作業角度を定位置で確保でき、また、アーティキュレート用シリンダによる屈曲動作と、スイング用シリンダによる反対方向のスイング動作とにより、後部車両の中心位置に対して作業装置の中心位置を偏心させるオフセット状態に設置でき、所謂油圧ショベルにおけるオフセットブームを用いることなく、オフセットブームと同様のオフセット作業をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
作業機械11は、図1に示されるように後部車輪12を有する後部車両13に対し、前部車輪14を有する前部車両15が、垂直方向のアーティキュレート軸16を介して水平方向屈曲可能に連結されている。
【0013】
後部車両13と前部車両15との間には、図2に示されるように後部車両13に対し前部車両15をアーティキュレート軸16を中心に水平方向に屈曲作動させる1対のアーティキュレート用シリンダ17が、基端側の軸部材18とロッド先端の軸部材19とにより連結されている。すなわち、各アーティキュレート用シリンダ17の基端が軸部材18により後部車両13に連結され、各アーティキュレート用シリンダ17のロッド先端が軸部材19により前部車両15の左右部後側に連結されている。
【0014】
後部車両13上には、図1に示されるようにオペレータOpを覆うキャブ21が設置され、このキャブ21の後部には、エンジンおよびこのエンジンにより駆動される油圧ポンプなどを収納した動力装置22が設置されている。油圧ポンプは、後部車輪12および前部車輪14をそれぞれ駆動する油圧モータ、その他の各種シリンダなどの流体圧アクチュエータに作動圧油を供給する。
【0015】
図2に示されるように、前部車両15の中央部には、前方に突出する凸部23が設けられ、この凸部23の先端には、図1に示されるように垂直方向のスイング軸24によって、作業装置取付板25が前部車両15に対し水平方向揺動可能に軸支され、この作業装置取付板25には作業装置26が取付けられている。
【0016】
図2に示されるように、前部車両15と作業装置取付板25の一側面に突設された取付部27との間には、スイング軸24を中心に作業装置26を水平方向に揺動するスイング用シリンダ28が設けられている。すなわち、スイング用シリンダ28の基端が軸部材29により前部車両15に連結され、スイング用シリンダ28のロッド先端が軸部材30により取付部27の先端に連結されている。
【0017】
図1に示されるように、作業装置26は、作業装置取付板25にブーム31の基端が軸部材32により上下方向回動自在に連結され、このブーム31の先端にアーム33が軸部材34により前後方向回動自在に連結され、このアーム33の先端に作業体としてのバケット35が軸部材36により回動自在に連結され、そして、ブーム31は、作業装置取付板25とブーム背面ブラケット37との間に軸連結された流体圧アクチュエータとしてのブームシリンダ38により回動され、アーム33は、ブーム背面ブラケット41とアーム後端ブラケット42との間に軸連結された流体圧アクチュエータとしてのアームシリンダ43により回動され、バケット35は、アーム後端ブラケット42に基端が軸連結された流体圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ44により、リンク機構45を介して回動される。
【0018】
リンク機構45は、アーム33に軸支された2組のレバープレート46,47と、これらのレバープレート46,47間に軸連結されたリンクプレート48と、このリンクプレート48とバケット35との間に軸連結されたリンクプレート49とで構成され、バケットシリンダ44のロッド先端の動きを、レバープレート46,47でアーム33と平行姿勢に保持されたリンクプレート48およびリンクプレート49を介してバケット35に伝える。
【0019】
作業体としては、作業内容に応じて、バケット35の替わりに、油圧ブレーカ、圧砕機、破砕機、カッタ、フォーク、グラップル、マグネット、放水ノズルなどの他のアタッチメントを取付けると良い。
【0020】
次に、この実施の形態の作用を説明する。
【0021】
トンネル内などの狭小作業現場で方向転換するときは、図2に示されるように後部車両13に対し前部車両15をアーティキュレート用シリンダ17によりアーティキュレート軸16を中心に水平方向に屈曲作動させるとともに、作業装置26を図1に2点鎖線で示されるように前部車両15に引寄せると、小回りが利く。
【0022】
一方、広範囲の作業を定位置で行なうときは、図2に示されるように後部車両13に対しアーティキュレート用シリンダ17によりアーティキュレート軸16を中心に前部車両15を水平方向に屈曲させるとともに、スイング用シリンダ28によりスイング軸24を中心に作業装置取付板25を水平方向に揺動させる。
【0023】
このとき、図2に作業装置26aで示されるように、アーティキュレート用シリンダ17による屈曲動作と、スイング用シリンダ28による同一方向のスイング動作とを組合わせることにより、作業装置26aは、単なるアーティキュレート車両では得られない角度に位置する。
【0024】
さらに、図2に作業装置26bで示されるように、アーティキュレート用シリンダ17による屈曲動作と、スイング用シリンダ28による反対方向のスイング動作とにより、作業装置26bは、後部車両13の中心位置に対して偏心位置にオフセット状態で設置される。
【0025】
次に、この実施の形態の効果を説明する。
【0026】
後部車両13に対しアーティキュレート用シリンダ17によりアーティキュレート軸16を中心に水平方向に屈曲作動される前部車両15に、作業装置取付板25を介して、ブーム31、アーム33およびバケット35が順次連結された作業装置26を取付けたので、後部車両13に後部車輪12を、前部車両15に前部車輪14をそれぞれ有するホイール式であるが、小回りが利く車両をベースにしてトンネル内などの狭小作業現場での広範囲の各種作業(掘削作業、ブレーカ作業、破砕作業、解体作業、マグネット吊り作業または他のアタッチメント作業)に適した作業機械を提供できる。
【0027】
後部車両13に対しアーティキュレート用シリンダ17によりアーティキュレート軸16を中心に水平方向屈曲可能な前部車両15に、さらにスイング用シリンダ28によりスイング軸24を中心に水平方向揺動可能な作業装置取付板25を軸支したので、この作業装置取付板25に取付けられた作業装置26は、アーティキュレート用シリンダ17による屈曲動作と、スイング用シリンダ28による同一方向のスイング動作とにより、単なるアーティキュレート車両では得られないほど高範囲の水平方向作業角度を定位置で確保できる。
【0028】
また、アーティキュレート用シリンダ17による屈曲動作と、スイング用シリンダ28による反対方向のスイング動作とにより、後部車両13の中心位置に対して作業装置26の中心位置を偏心させるオフセット状態に設置でき、所謂油圧ショベルにおけるオフセットブームを用いることなく、同様のオフセット作業をすることができる。
【0029】
本発明は、バケット35に替えて種々のアタッチメントを取付けることで種々の作業が可能な作業機械に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る作業機械の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上作業機械の平面図である。
【図3】従来のホイールローダを示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
12 後部車輪
13 後部車両
14 前部車輪
15 前部車両
16 アーティキュレート軸
17 アーティキュレート用シリンダ
24 スイング軸
25 作業装置取付板
26 作業装置
28 スイング用シリンダ
31 ブーム
33 アーム
35 作業体としてのバケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部車輪を有する後部車両と、
後部車両に対しアーティキュレート軸を介して水平方向屈曲可能に連結された前部車輪を有する前部車両と、
後部車両に対し前部車両をアーティキュレート軸を中心に水平方向に屈曲作動させるアーティキュレート用シリンダと、
前部車両に設けられた作業装置取付板と、
作業装置取付板に取付けられて流体圧アクチュエータによりそれぞれ回動されるブーム、アームおよび作業体が順次連結された作業装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
作業装置取付板は、前部車両に対しスイング軸を介して水平方向揺動可能に軸支され、
前部車両と作業装置取付板との間に設けられスイング軸を中心に作業装置を水平方向に揺動するスイング用シリンダ
を具備したことを特徴とする請求項1記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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