説明

作業環境安全対策案決定方法

【課題】効果的な作業環境安全対策案を迅速に決定可能、かつ、適正な品質及びコストをもって、必要かつ十分な安全対策を行える安全対策案を決定可能な作業環境安全対策案決定方法を提供する。
【解決手段】リスクレベル毎の安全対策案データを、コンピュータ91に入力して記憶させる対策案記憶工程と、事故発生の虞がある環境要因を撮影してコンピュータ91に入力して記憶させる撮影工程Aと、撮影工程Aにて撮影した画像から明るさ画像と目立ち画像と視認性画像とを作成する画像処理工程Bと、明るさ画像に基づいて得た明るさ評価と、目立ち画像に基づいて得た目立ち評価と、視認性画像に基づいて得た視認性評価と、によって、環境要因で事故発生の可能性が有るか否かの判定を行う光環境判定工程と、を備え、リスクレベルに対応する環境要因の安全対策案を対策案記憶工程にて記憶した安全対策案データによって決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業環境安全対策案決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などの作業場において、段差や階段で事故が発生するのを防ぐために、注意喚起用のテープ(例えば、特許文献1参照)を貼り付ける安全対策や、照明を増設して段差を容易に作業者が確認できるようにする安全対策が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業環境の安全対策は、作業者(対策検討者)の主観で、照明の増設や注意喚起テープの貼設等の安全対策案が決定されており、過剰な安全対策案がそのまま対策として実施される場合や、効果の低い安全対策案が実施され、コストと品質(レベル)のバランス(効率)が悪いという問題があった。また、作業者毎に立案する対策案が異なるといった問題や、対策案の立案に時間がかかるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、効果的な作業環境安全対策案を迅速に決定可能、かつ、適正な品質(レベル)及びコストをもって、必要かつ十分な安全対策を行える安全対策案を決定可能な作業環境安全対策案決定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の作業環境安全対策案決定方法は、リスクレベル毎の安全対策案データを、コンピュータに入力して記憶させる対策案記憶工程と、事故発生の虞がある環境要因を撮影してコンピュータに入力して記憶させる撮影工程と、上記撮影工程にて撮影した画像から明るさ画像と目立ち画像と視認性画像とを作成する画像処理工程と、上記明るさ画像に基づいて得た明るさ評価と、上記目立ち画像に基づいて得た目立ち評価と、上記視認性画像に基づいて得た視認性評価と、によって、上記環境要因で事故発生の可能性が有るか否かの判定を行う光環境判定工程と、を備え、上記光環境判定工程の判定が上記環境要因で事故発生の可能性が有るという判定の場合に、上記環境要因で事故が発生した場合の怪我の程度を表わす傷害程度見積点と、上記環境要因に人が近づく頻度を表わす頻度見積点と、上記環境要因で事故が発生することの危険検知の可能性と危険回避の可能性に基づいた危険発生確率見積点と、を合計した事故見積点を算出する事故見積点算出工程と、上記事故見積点算出工程にて算出された上記事故見積点によってリスクレベルを判定するリスクレベル判定工程と、上記リスクレベル判定工程にて判定された上記リスクレベルに対応する上記環境要因の安全対策案を上記対策案記憶工程にて記憶した上記安全対策案データによって決定する作業環境安全対策案決定工程と、を具備する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業場の階段等の環境要因を容易に分析でき、その環境要因に最適な作業環境安全対策案が得られる。適正なコストかつ適正な品質の安全対策案を容易かつ迅速に得ることができ、無駄がなく効果の高い(効率の良い)安全対策案を決定できる。労働衛生法や労働安全衛生マネジメントシステムに対応した作業場(職場や事業所)の作業環境管理(環境づくり)を、効率良く支援できる。客観的かつ科学的な画像処理により、危険・有害性の事前評価(リスクアセスメント)を行え、効果的な安全衛生管理を確立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態を示す工程説明図である。
【図2】本発明の実施の一形態を示す工程説明図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示す工程説明図である。
【図4】本発明の実施の一形態を示す工程説明図である。
【図5】本発明の実施の一形態を示す工程説明図である。
【図6】見積点数表の一例を示す正面図である。
【図7】表示画面に表示される表の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の作業環境安全対策案決定方法(システム)は、工場や工事現場等の作業場において、怪我等の事故発生の虞がある(原因となる)環境要因(危険有害要因)に対して、安全対策案を決定するための方法である。
環境要因(対象)は、ものや場所及びその周囲であって、具体的なものや場所としては、段差、階段、梁、柱、ピット(穴)等の構造に区分される対象と、ドア、掲示板、製造完成品や半完成品及び部品等の製品、従業員(人)、台車、手すり、コンベア、レール等の設備に区分される対象と、制御盤、フォークリフト等の機械に区分される対象と、白線、仕切り板等のゾーニングに区分される対象と、である。
【0010】
図1に於て、先ず、カメラ92で環境要因を撮影し、撮影した画像(写真データ)を、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ91に入力して記憶させる撮影工程Aを行う。モニタ等の表示画面90は、撮影した画像(記憶した写真データ)を表示する。
【0011】
次に、図2に示すように、撮影した画像(記憶した写真データ)をもとに、画像処理して輝度分布画像を作成し、その輝度分布画像をさらに画像処理して、明るさ画像21と、目立ち画像22と、視認性画像23と、の三種類の光環境画像を作成する画像処理工程Bを行う。
【0012】
明るさ画像21は、人(従業員や労働者等の作業者)が環境要因を目でみて感じる明るさの度合いを表わす画像で、表示画面90に表示される。環境要因が明るいか暗いかを定量的に視認可能な画像である。
また、「特に暗い」から順次「暗い」、「やや暗い」、「どちらでもない」、「やや明るい」、「明るい」、「特に明るい」になるにつれて、青色から順次、緑色、黄色、橙色、赤色へと次第に変化するように色分けされた画像である。
明るさ画像21の横には、明るさレベル(尺度)バー31が表示される。
明るさレベルバー31は、色が下から上へいくにつれて、青色から順次、緑色、黄色、橙色、赤色へと次第に変化するグラデーション(色階調)で表わされる。
明るさレベルバー31には、明るさの尺度となる明るさ指数が下から上に目盛として「1」、「3」、「5」、「7」、「9」、「11」、「13」と割り振られている。また、明るさ指数を言葉で表現した明るさ度合評価(尺度コメント)が、「1」は「特に暗い」、「3」は「暗い」、「5」は「やや暗い」、「7」は「どちらでもない」、「9」は「やや明るい」、「11」は「明るい」、「13」は「特に明るい」というように、明るさ指数に対応して表示されている。環境要因を7段階の明るさ指数及び明るさ度合評価で大別して定量的に評価可能としているとも言える。
【0013】
目立ち(度)画像22は、人が環境要因を目でみて目立つと感じる度合いを表わす画像で、表示画面90に表示される。環境要因が目立っているか目立たないかを定量的に視認可能な画像である。なお、「目立つ」には、大きく分けて「明るくて目立つ」と「暗くて目立つ」の2つあり、明るさは異なるが目立つ度合いとしては同じである。
そして、目立ち画像22は、「(暗く)特に目立つ」から順次、「(暗く)目立つ」、「(暗く)やや目立つ」、「目立たない」になるにつれて、空色から青色を介して黒色へ変化するように色分けされ、かつ、「目立たない」、「(明るく)やや目立つ」、「(明るく)目立つ」、「(明るく)特に目立つ」になるにつれて、黒色から赤色を介してピンク色へ次第に変化するように色分けされた画像である。
目立ち画像22の横には、目立ちレベル(尺度)バー32が表示される。
目立ちレベルバー32は、色が下から上へいくにつれて、空色から青色を介して黒色、その後、黒色から赤色を介してピンク色へと次第に変化するグラデーション(色階調)で表わされる。目立ち(度)の尺度となる目立ち(度)指数が下から上に目盛として「13」、「9」、「5」、「0」、「5」、「9」、「13」と割り振られている。また、目立ち指数を言葉で表現した目立ち度合評価が、下から順に「13」は「(暗く)特に目立つ」、「9」は「(暗く)目立つ」、「5」は「(暗く)やや目立つ」、「0」は「目立たない」、「5」は「(明るく)やや目立つ」、「9」は「(明るく)目立つ」、「13」は「(明るく)特に目立つ」、というように、目立ち指数に対応して表示されている。
環境要因を「0」、「5」、「9」、「13」の4段階の目立ち指数及び目立ち度合評価で大別して定量的に評価可能としているとも言える。
なお、暗い側の指数を「−13」「−9」等、負の数で表わし、絶対値で4段階に大別して評価可能とするも良い。また、目立ち画像22及び目立ちレベルバー32の色階調は、「暗く特に目立つ」から「明るく特に目立つ」側に向かうにつれて、青色から白色を介して赤色へ次第に変化するものとするも良い。
【0014】
視認性画像(視認性評価画像)23は、人が環境要因を目でみた場合の環境要因の見え易さの度合いを表わす画像で、表示画面90に表示される。環境要因が見え易いか見えにくいか定量的に視認可能な画像である。
また、「見えない」から順次、「見える」、「よく見える」「特によく見える」になるにつれて、白色から黒色へと次第に変化するように色分けされた画像である。
視認性画像23の横には、視認性レベル(尺度)バー33が表示される。
視認性レベルバー33は、色が下から上へいくにつれて、白色から灰色を介して黒色へと次第に変化するグラデーション(色階調)で表わされる。
視認性レベルバー33には、視認性の尺度となる視認性指数が下から上に目盛りとして「1」、「2」、「3」、「4」、と割り振られている。また、視認性指数を言葉で表現した視認性度合評価が、「1」は「見えない」、「2」は「見える」、「3」は「よく見える」、「4」は「特によく見える」、というように、視認性指数に対応して表示されている。環境要因を、「1」、「2」、「3」、「4」の4段階の視認性指数及び視認性度合評価で大別して定量的に評価可能としているとも言える。
なお、視認性画像23及び視認性レベルバー33の色階調は、「見えない」から順次、「見える」、「よく見える」「特によく見える」になるにつれて、黒色から灰色を介して白色へと、次第に変化するグラデーション(色階調)で表わして良い。或いは、「見えない」に対応する箇所を、白色又は黒色とし、それ以外を黒色又は白色とした2色で表示するも良い。又は、「見えない」から順次、「見える」、「よく見える」「特によく見える」になるにつれて、黒色から順次、青色、赤色、橙色、黄色、白色へと次第に変化する色階調とするも良い。
【0015】
各画像(明るさ画像21、目立ち画像22、視認性画像23)は、各色に応じた各指数(明るさ指数、目立ち指数、視認性指数)が割り振られ、色と指数を対応させている。なお、各画像21,22,23及び各レベルバー31,32,33の色階調や指数の値、度合評価の言葉(尺度コメント)は、上述した以外のものとするも自由である。
なお、撮影した画像(写真データ)から、輝度分布画像と明るさ画像21と目立ち画像22と視認性画像23とを作成する(画像処理する)方法は公知技術である。
【0016】
そして、画像処理工程Bの後に、各指数を入力してコンピュータ91に記憶させる画像評価(指数入力)工程Cを行う。
図3に示すように、画像評価(指数入力)工程Cに於て、表示画面90は、画像評価表(指数入力表)を表示する。
ここで、画像評価表に入力される各指数は、人(使用者等の作業者)が目視で、画像内の環境要因の色が各レベルバー31,32,33のどの色に近いか確認し、その確認した色が表示されているどの指数(目盛)に近いかを読み取って、一番近い指数(目盛の値)を近似指数としてキーボード等の入力手段93で入力したものである。
なお、入力される各指数は、各画像が表示画面90に表示されている際に、マウスやキーボード等の入力手段93で画像内の環境要因を選択すると、その選択した箇所に対応する指数が自動入力されるようにするも良い。入力される指数は選択範囲(位置)の色に対応する指数の平均値又は最大値又は最小値とするも良い。
また、入力される指数は目盛として表示されている指数以外の値、例えば、明るさ画像21においては「13」と「11」の間の値である「12」等を入力可能とするも良い。
【0017】
そして、コンピュータ91は、予め入力されて記憶していた光環境評価基準を読み出す。
光環境評価基準とは、下記表1に示すように、指数に「セーフ」又は「リスク」を関連づけた(対応させた)ものである。「セーフ」は、事故発生の可能性が無い(極めて低い)という評価であり、「リスク」は、事故発生の可能性が有る(高い)という評価である。
読み出した光環境評価基準と、入力された各指数と、によって、視認性評価と、目立ち評価と、明るさ評価と、を得る光環境評価工程Dが行われる。各画像(明るさ画像、目立ち画像、視認性画像)に基づいて各評価(明るさ評価、目立ち評価、視認性評価)を得る。表示画面90は、明るさ評価と目立ち評価と視認性評価との結果を示す光環境評価表を表示する。
【0018】
【表1】

【0019】
なお、光環境評価基準は、指数を所定範囲毎に区分けし、その区分けした範囲に評価を対応させたものとするも良い。例えば、視認性指数が「1」以上「2」未満を「リスク」、「2」以上を「セーフ」とし、目立ち指数が「0」以上〜「7」未満を「リスク」、「7」以上を「セーフ」とし、明るさ指数が「1」以上「8」未満を「リスク」、「8」以上を「セーフ」とするも良い。また、目立ち指数に負の数(マイナスの値)を設けた場合は、絶対値で区分けする。
【0020】
光環境評価工程D後、コンピュータ91は、予め入力されて記憶していた光環境判定基準を読み出す。
光環境判定基準とは、明るさ評価と目立ち評価と視認性評価の内、1つでも「リスク」の評価がある場合に、環境要因で事故発生の可能性が有ると判定するというもので、言い換えると、3つ全てが「セーフ」の評価である場合に、環境要因で事故発生の可能性が無い(極めて低い)と判定するというものである。
【0021】
コンピュータ91は、明るさ評価と、目立ち評価と、視認性評価と、読み出した光環境判定評価基準と、によって、環境要因で事故発生の可能性が有るか否かの光環境判定工程Eを行う。なお、図示省略するが判定結果を表示画面90に表示させる。
光環境判定工程Eの判定が、「環境要因で事故発生の可能性が無い」という判定の場合に、「環境要因に安全対策は不要」という安全対策案が決定され、表示画面90に「環境要因に安全対策は不要」が表示された後、本発明の作業環境安全対策案決定方法が終了する。
光環境判定工程Eの判定が、「環境要因で事故発生の可能性が有る」という判定の場合は、事故見積評価工程Fに進む。
【0022】
図4に示すように、事故見積評価(点数入力)工程Fは、表示画面90に見積評価表(点数入力表)が表示され、環境要因で事故が発生した場合の怪我の程度を表わす傷害程度見積点と、環境要因に人(労働者や従業員)が近づく頻度を表わす頻度見積点と、環境要因で事故が発生することの危険を検知する可能性と、その環境要因で危険に気づいた場合にその危険(怪我等)を回避できる可能性と、に基づいた危険発生確率見積点と、が入力される。
【0023】
ここで、入力される各見積点(傷害程度見積点、頻度見積点、危険発生確率見積点)は、人が環境要因の現状(現場)を目視し、図6に示すような見積点数表(シート)10に表示されている見積点、及び、見積点に対応した(見積判断)基準を、判断材料とし、入力手段93にてコンピュータ91に入力される点数である。
なお、この見積点数表10に記載されている見積点及び見積判断基準を予めコンピュータ91に入力して記憶させ、入力手段93で各見積点又は各基準を選択入力することで、見積点が自動入力されるようにするも良い。
【0024】
そして、事故見積評価工程F後に、コンピュータ91は、入力された各見積点を合計して事故見積点を算出する事故見積点算出工程Gを行う。事故見積点(見積点の総合点)は、表示画面90内の見積点数結果表に表示される。
【0025】
事故見積点算出工程Gの後、コンピュータ91は、予め入力され記憶していたリスクレベル判定基準を読み出す。
リスクレベル判定基準とは、下記表2に示すように、事故見積点の範囲を5段階に分け、3〜6点はリスクレベル1、7〜9点はリスクレベル2、10〜12点はリスクレベル3、13〜14点はリスクレベル4、15点以上はリスクレベル5としたものである。
【0026】
【表2】

【0027】
そして、コンピュータ91は、算出した事故見積点と、読み出したリスクレベル判定基準と、によって、リスクレベルを判定(レベル分け)するリスクレベル判定工程Hを行う。
リスクレベル判定工程Hにおいてリスクレベルは表示画面90内のリスクレベル表に表示される。
また、表示画面90は、図示省略するが、リスクレベルと共に、リスクレベル1及びリスクレベル2の場合は「対策不要」と表示し、リスクレベル3、4、5の場合は「対策必要」と表示させるも良い。
【0028】
リスクレベル判定工程H後に、コンピュータ91は、予め、入力され記憶していたリスクレベル毎の安全対策データを読み出す。
安全対策案データは、下記表3に示すように、各リスクレベルと、安全対策案と、を関連づけたものである。表3に記載されているLEDテープとは、粘着面を有する帯状部材に複数のLEDを並設したものであり、明るさや色の設定、発光パターン(点滅や色変化)の設定が可能で、特に、階段や通路、区分け線等の対策に有効である。また、表3に記載されている以外の装置や器具、例えば、手摺りにLEDが内蔵されたものや、センサーランプ等を、安全対策案に含ませても良い。
【0029】
【表3】

【0030】
そして、コンピュータ91は、判定されたリスクレベルに対応する安全対策案を、安全対策データによって決定する作業環境安全対策案決定工程Iを行う。
表示画面90内の対策案表に、環境要因と、リスクレベルと、対策案と、が表示される。
例えば、リスクレベル1、2の場合は、対策不要という対策案が表示される。リスクレベル3、4、5の場合は、蓄光テープやLEDテープ等の貼設を促す対策案が表示される。安全対策案の表示後に、本発明の作業環境安全対策案決定方法が終了する。
【0031】
なお、環境要因は、撮影工程Aから画像評価工程Cの間で、入力、又は、予めコンピュータ91に入力されて記憶させた環境要因リストから選択して入力する。
なお、安全対策データは、リスクレベル及び環境要因と、安全対策案と、を関連づけたものとするも良い。つまり、同じリスクレベルであっても、環境要因によって、対策案が異なるようにすることで、より適切で細分化された効率良い安全対策案が得られる。
【0032】
また、図5に於て、予め光環境評価基準をコンピュータ91に入力して記憶させる光環境評価基準記憶工程Jと、予め光環境判定基準をコンピュータ91に入力して記憶させる光環境判定基準記憶工程Kと、予めリスクレベル判定基準をコンピュータ91に入力して記憶させるリスクレベル判定基準記憶工程Lと、予め安全対策データをコンピュータ91に入力して記憶させる対策案記憶工程Mと、の時間的前後は、順不同であって、何れが先でも後でも良い。なお、本発明において「予め」とは、撮影工程Aよりも前のことを言う。
【0033】
従来は、この段差(環境要因)は明るいから「事故の虞がない」というように人が感覚的に判断していた。しかし、明るくとも、周囲が同じ明るさで段差が目立たず、事故が起こる場合があった。本発明は、明るさや目立ち度、視認性を定量化(数値化)にすることで、作業者の個人差(感覚)的な判断に左右されずに、安全な作業環境づくりが可能となる。また、明るさや目立ち度、視認性が十分な段差(環境要因)を過剰に明るくするようなことを防止でき、適切で効率のよい(品質と費用のバラスが良い)対策案が得られる。
【0034】
なお、本発明は、設計変更可能であって、表示画面90には、画像評価表、光環境評価表、見積評価表、リスクレベル表、対策案表を、夫々、組み合わせた表を表示させるも良く、行や列を増やして複数の環境要因について同時に表示するようにしても良い。例えば、図7に示すような表を表示し、対策欄の「要」を選択入力すると、対策案が表示されるように設けても良い。
なお、コンピュータ91は、ハードディスクやRAMやROM等の記憶手段、CPU等の演算処理手段等を備えたものであれば良く、図示したノート型に限らず、デスクトップ型や、タブレット型とするも良い。表示画面90は、コンピュータ91に別体として設けても良い。また、印刷手段等を設け、表示画面90に表示された内容を紙等に出力可能に構成しても良い。
【0035】
以上のように、本発明の作業環境安全対策案決定方法は、リスクレベル毎の安全対策案データを、コンピュータ91に入力して記憶させる対策案記憶工程Mと、事故発生の虞がある環境要因を撮影してコンピュータ91に入力して記憶させる撮影工程Aと、撮影工程Aにて撮影した画像から明るさ画像21と目立ち画像22と視認性画像23とを作成する画像処理工程Bと、明るさ画像21に基づいて得た明るさ評価と、目立ち画像22に基づいて得た目立ち評価と、視認性画像23に基づいて得た視認性評価と、によって、環境要因で事故発生の可能性が有るか否かの判定を行う光環境判定工程Eと、を備え、光環境判定工程Eの判定が環境要因で事故発生の可能性が有るという判定の場合に、環境要因で事故が発生した場合の怪我の程度を表わす傷害程度見積点と、環境要因に人が近づく頻度を表わす頻度見積点と、環境要因で事故が発生することの危険検知の可能性と危険回避の可能性に基づいた危険発生確率見積点と、を合計した事故見積点を算出する事故見積点算出工程Gと、事故見積点算出工程Gにて算出された事故見積点によってリスクレベルを判定するリスクレベル判定工程Hと、リスクレベル判定工程Hにて判定されたリスクレベルに対応する環境要因の安全対策案を対策案記憶工程Mにて記憶した安全対策案データによって決定する作業環境安全対策案決定工程Iと、を具備するので、労働衛生法や労働安全衛生マネジメントシステムに対応した作業場(職場や事業所)の作業環境管理(環境づくり)を、効率良く支援できる。客観的かつ科学的な画像処理(解析)をもって、危険・有害性の事前評価(リスクアセスメント)を行え、効果的な安全衛生管理を確立できる。先ず、画像を用いた光環境評価にて、環境要因のリスク分析を行い、その後、リスクレベルを判定して対策案を決定する2段階判定(評価)を行うため、不要な対策の実施(コスト)を軽減でき、対策が本当に必要な環境要因に適切な安全対策案(改善案)を得ることができる。第1段階の判定(光環境判定工程E)で、光環境という視点から対策が不要な環境要因を判定でき、不要な検討時間や対策の実施を防ぐことができ、効率の良い作業環境改善活動を支援できる。
【符号の説明】
【0036】
21 明るさ画像
22 目立ち画像
23 視認性画像
91 コンピュータ
A 撮影工程
B 画像処理工程
E 光環境判定工程
G 事故見積点算出工程
H リスクレベル判定工程
I 作業環境安全対策案決定工程
M 対策案記憶工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リスクレベル毎の安全対策案データを、コンピュータ(91)に入力して記憶させる対策案記憶工程(M)と、
事故発生の虞がある環境要因を撮影してコンピュータ(91)に入力して記憶させる撮影工程(A)と、
上記撮影工程(A)にて撮影した画像から明るさ画像(21)と目立ち画像(22)と視認性画像(23)とを作成する画像処理工程(B)と、
上記明るさ画像(21)に基づいて得た明るさ評価と、上記目立ち画像(22)に基づいて得た目立ち評価と、上記視認性画像(23)に基づいて得た視認性評価と、によって、上記環境要因で事故発生の可能性が有るか否かの判定を行う光環境判定工程(E)と、を備え、
上記光環境判定工程(E)の判定が上記環境要因で事故発生の可能性が有るという判定の場合に、上記環境要因で事故が発生した場合の怪我の程度を表わす傷害程度見積点と、上記環境要因に人が近づく頻度を表わす頻度見積点と、上記環境要因で事故が発生することの危険検知の可能性と危険回避の可能性に基づいた危険発生確率見積点と、を合計した事故見積点を算出する事故見積点算出工程(G)と、
上記事故見積点算出工程(G)にて算出された上記事故見積点によってリスクレベルを判定するリスクレベル判定工程(H)と、
上記リスクレベル判定工程(H)にて判定された上記リスクレベルに対応する上記環境要因の安全対策案を上記対策案記憶工程(M)にて記憶した上記安全対策案データによって決定する作業環境安全対策案決定工程(I)と、を具備することを特徴とする作業環境安全対策案決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221363(P2012−221363A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88389(P2011−88389)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)